説明

衝撃吸収粘着剤シートおよびその製造方法

【課題】表示特性に悪影響を及ぼさず、歩留まりに優れた衝撃吸収粘着剤シートおよびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の衝撃吸収粘着剤シートは、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層を有し、該衝撃吸収粘着剤層の側面がテーパ面であり、該テーパ面のテーパ角が65°以上である。本発明の衝撃吸収粘着剤シートの製造方法は、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層にレーザー光を照射して切断する工程を含み、該衝撃吸収粘着剤層の切断面をテーパ面とし、該テーパ面のテーパ角を65°以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収粘着剤シートおよびその製造方法に関する。より詳細には、液晶表示装置等の画像表示装置に供される衝撃吸収粘着剤シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その画像形成方式から、液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、偏光子の両面に偏光子保護フィルムを貼り合わせたものが用いられている。また、液晶パネルの光学補償を目的として、位相差フィルム等の光学補償フィルムを、偏光板と前記ガラス基板との間に配置させることも行われている。
【0003】
上記ガラス基板が外的衝撃により割れるのを防止するため、ガラス基板の視認側に衝撃吸収粘着剤層を設けることが開示されている(特許文献1参照)。衝撃吸収粘着剤層の配置は、例えば、偏光板の視認側、偏光板とガラス基板との間が提案されている。
【0004】
携帯電話等のモバイル機器においては、通常、液晶ディスプレイの視認側にプラスチックシート等から形成された保護層が設けられている。また、外的衝撃による液晶ディスプレイの破損を防止するため、液晶ディスプレイと保護層との間に、空間(空気層)が設けられている。しかし、保護層と空気層との界面、および、空気層と液晶ディスプレイとの界面において、反射が生じて視認性の低下を引き起こすという問題がある。そこで、耐衝撃性を確保しつつも、視認性の向上、さらには、プラスチックシート(モバイル機器)の薄型化を目的として、空気層の代わりに上記の衝撃吸収粘着剤層が用いられている。
【0005】
ところで、通常、上記衝撃吸収粘着剤層は、適用される上記の光学素子の大きさに合わせて切断される。しかし、衝撃吸収粘着剤層は、実用上十分な耐衝撃性能を得るために、代表的には数百ミクロンの厚みを有する。したがって、切断時に切断面が変形し得、画像表示装置の表示特性に悪影響を及ぼすという問題がある。その一方で、歩留まりよく切断することも望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−173462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、表示特性に悪影響を及ぼさず、歩留まりに優れた衝撃吸収粘着剤シートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の衝撃吸収粘着剤シートは、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層を有し、該衝撃吸収粘着剤層の側面がテーパ面であり、該テーパ面のテーパ角が65°以上である。
【0009】
別の形態における本発明の衝撃吸収粘着剤シートは、基材と、衝撃吸収層を含み、該基材の片側に並設された複数の衝撃吸収粘着剤片とを有し、該衝撃吸収粘着剤片の側面がテーパ面であり、該テーパ面のテーパ角が65°以上である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記複数の衝撃吸収粘着剤片が前記基材の片側に間隔をあけて並設され、隣り合う衝撃吸収粘着剤片の側面下端と側面下端との距離が30μm以上である。
【0011】
本発明の別の局面においては、衝撃吸収粘着剤シートの製造方法が提供される。本発明の衝撃吸収粘着剤シートの製造方法は、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層にレーザー光を照射して切断する工程を含み、該衝撃吸収粘着剤層の切断面をテーパ面とし、該テーパ面のテーパ角を65°以上とする。
【0012】
好ましい実施形態においては、衝撃吸収粘着剤層の切断面と切断面との距離が少なくとも30μm以上である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記レーザー光が少なくとも400nm以下および/または1.5μm以上の波長の光を含む。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記レーザーがCOレーザーである。
【0015】
好ましい実施形態においては、基材と、衝撃吸収層を含み該基材の片側に並設された複数の衝撃吸収粘着剤片とを有する衝撃吸収粘着剤シートを製造する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示特性に悪影響を及ぼさず、歩留まりに優れた衝撃吸収粘着剤シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シートの概略断面図である。
【図2】(a)〜(b)は、本発明の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0019】
A.全体構成
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シート100の概略断面図である。衝撃吸収粘着剤シート100は、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層10を有する。衝撃吸収粘着剤シート100は、衝撃吸収粘着剤層10の一方の側に配置された第1のセパレーター(基材)21と、衝撃吸収粘着剤層10の他方の側に配置された第2のセパレーター22とをさらに有する。図1(b)は、本発明の別の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シート200の概略断面図である。衝撃吸収粘着剤シート200は、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層10を有する。衝撃吸収粘着剤シート200は、衝撃吸収粘着剤層10の一方の側に配置された第1のセパレーター(基材)21と、衝撃吸収粘着剤層10の他方の側に配置された第2のセパレーター22と、衝撃吸収粘着剤層10と第1のセパレーター21との間に配置された偏光板30と、偏光板30と第1のセパレーター21との間に配置された粘着剤層40とをさらに有する。図1(c)は、本発明の別の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シート300の概略断面図である。衝撃吸収粘着剤シート300は、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層10を有する。衝撃吸収粘着剤シート300は、衝撃吸収粘着剤層10の一方の側に配置されたセパレーター(基材)20と、衝撃吸収粘着剤層10の他方の側に配置された偏光板30と、衝撃吸収粘着剤層10とセパレーター20との間に配置された支持層50と、支持層50とセパレーター20との間に配置された粘着剤層40とをさらに有する。
【0020】
図1(a)〜(c)に示すように、本発明の衝撃吸収粘着剤シートは、任意の適切な層(フィルム)をさらに有し得る。図示しないが、本発明の衝撃吸収粘着剤シートは、任意の適切な光学補償層をさらに有していてもよい。このような光学補償層の種類、数、配置等は、目的に応じて適宜選択され得る。また、例えば、図1(c)に示すような形態において、偏光板30の衝撃吸収粘着剤層10が形成されていない側に、表面処理層が設けられていてもよい。各層の詳細については後述する。
【0021】
図2(a)は、本発明の別の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シート400の概略断面図である。衝撃吸収粘着剤シート400は、第1のセパレーター(基材)21と、第1のセパレーター21の片側に並設された衝撃吸収粘着剤片10’,10’,10’とを有する。衝撃吸収粘着剤シート400は、各衝撃吸収粘着剤片10’の第1のセパレーター21が配置されていない側に配設された第2のセパレーター22をさらに有する。図2(b)は、本発明の別の好ましい実施形態による衝撃吸収粘着剤シート500の概略断面図である。衝撃吸収粘着剤シート500は、第1のセパレーター(基材)21と、第1のセパレーター21の片側に並設された衝撃吸収粘着剤片10’,10’,10’とを有する。衝撃吸収粘着剤シート500は、各衝撃吸収粘着剤片10’の第1のセパレーター21が配置されていない側に配設された第2のセパレーター22と、衝撃吸収粘着剤片10’と第1のセパレーター21との間に配置された偏光板30と、偏光板30と第1のセパレーター21との間に配置された粘着剤層40とをさらに有する。図2(a)〜(b)に示すように、基材の片側に複数の衝撃吸収粘着剤片を設けることにより、光学素子等への積層時の作業性に優れ得る。さらに、歩留まりにも優れ得る。
【0022】
B.衝撃吸収粘着剤層(衝撃吸収粘着剤片)
上記衝撃吸収粘着剤層10(衝撃吸収粘着剤片10’)の側面11,11は、テーパ面である。当該テーパ面のテーパ角は65°以上であり、90°に近ければ近いほどよい。このような構成とすることにより、画像表示装置の表示特性に悪影響を及ぼさず、歩留まりにも優れ得る。好ましくは75°以上、さらに好ましくは80°以上である。このようなテーパ角を有することにより、セパレーター(基材)との剥離性に優れ得る。その結果、光学素子への積層時の作業性に優れ得る。なお、本明細書において、「テーパ面」とは、側面が実質的にテーパ状である場合も含有する。「実質的にテーパ状である」とは、画像表示装置の表示特性に悪影響を与えない範囲で側面が平滑でない場合も包含する趣旨である。また、「テーパ角」は、図1〜2に示すθであり、衝撃吸収粘着層(衝撃吸収粘着剤片)下面の上面からの延出幅xと衝撃吸収粘着剤層の厚みyとから算出される値である。
【0023】
好ましくは、上記複数の衝撃吸収粘着剤片10’は上記基材21の片側に間隔をあけて並設されている。隣り合う衝撃吸収粘着剤片10’,10’の間隔(側面11と側面11との距離)は、衝撃吸収粘着剤シートの構成等に応じて、任意の適切な値に設定し得る。側面上端11aと側面上端11aとの距離L1は、好ましくは70μm以上、さらに好ましくは90〜230μm、特に好ましくは110〜170μmである。側面下端11bと側面下端11bとの距離L2は、好ましくは30μm以上、さらに好ましくは30〜120μm、特に好ましくは30〜60μmである。隣り合う衝撃吸収粘着剤片の間隔がこのような範囲であることにより、基材からの剥離性に優れ得、光学素子への積層時の作業性に優れ得る。また、隣り合う衝撃吸収粘着剤層の側面同士が再融着するのを防止し得、テーパ面が良好に保たれ、画像表示装置の表示特性が優れ得る。一方で、歩留まりにも優れ得る。
【0024】
なお、図2(a)に示す形態において、隣り合う第2のセパレーター22の側面上端22a同士の距離L3は、好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100〜350μm、特に好ましくは120〜310μmである。図2(b)に示す形態において、隣り合う第2のセパレーター22の側面上端22a同士の距離L4は、好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100〜410μm、特に好ましくは120〜370μmである。また、隣り合う粘着剤層40の側面下端40a同士の距離L5は、好ましくは30μm以上、さらに好ましくは30〜100μm、特に好ましくは30〜50μmである。
【0025】
衝撃吸収粘着剤片10’の側面11がテーパ面とされ、かつ、上記テーパ角を満足し、さらには、隣り合う衝撃吸収粘着剤片10’,10’の間隔が上記範囲を満足し得ることにより、剥離性が格段に向上し得る。その結果、作業性が格段に優れ得る。
【0026】
上記衝撃吸収粘着剤層10(衝撃吸収粘着剤片10’)は、少なくとも衝撃吸収層を含む。以下、衝撃吸収層について説明する。
【0027】
B−1.衝撃吸収層
上記衝撃吸収層は、任意の適切な粘着剤で形成され得る。具体例として、(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤が挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーを構成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0028】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基含有の単量体とを共重合して得られる。水酸基含有の単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0029】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを重合する際には、任意の適切な重合開始剤を用い得る。重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)−フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0030】
上記重合に際し、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記衝撃吸収層の20℃での動的貯蔵弾性率G´は、好ましくは1×10Pa以下であり、さらに好ましくは1×10〜7×10Paである。優れた衝撃吸収能を得ることができるからである。
【0032】
上記衝撃吸収層の厚みは、好ましくは100〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜600μmである。厚みが100μm未満では、十分な衝撃吸収能が得られないおそれがある。一方、厚みが1000μmを超えると、視認性の問題が生じやすい。
【0033】
なお、上記衝撃吸収層としては、例えば、特開2005−173462号公報に記載のガラス割れ防止粘着剤層を採用してもよい。
【0034】
B−2.その他の層
上記衝撃吸収粘着剤層(衝撃吸収粘着剤片)は、上記衝撃吸収層の片面もしくは両面に配置された下塗り層をさらに含んでいてもよい。下塗り層を設けることにより、被着体に対する衝撃吸収層の粘着特性を向上させることができる。上記下塗り層を形成する材料としては、任意の適切な材料が採用され得る。具体例として、粘着性組成物を架橋させて形成される下塗り層について説明する。
【0035】
上記粘着性組成物は、好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマーとイソシアネート系化合物とを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリレート系モノマーおよび/またはメタクリレート系モノマー(本明細書において(メタ)アクリレートという)から合成される重合体または共重合体をいう。(メタ)アクリル系ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。好ましい分子配列状態は、ランダム共重合体である。
【0036】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを単独重合または共重合して得られる。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18程度、さらに好ましくは1〜10である。
【0037】
上記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、iso−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、iso−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、iso−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、iso−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ一トが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上組み合わせる場合、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は、好ましくは3〜9である。
【0038】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、上記アルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの共重合体であってもよい。この場合、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜6、最も好ましくは4〜6である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0039】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ―3―メチルブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数と同数以上である。さらに、水酸基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは2〜8、さらに好ましくは4〜6である。このように、炭素数を調整することにより、後述するイソシアネート系化合物との反応性に優れ得る。例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートとして、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルを用いる場合は、アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートまたはブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0041】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートの共重合量は、好ましくは0.01〜10モル%、さらに好ましくは0.1〜10モル%、特に好ましくは0.2〜5モル%、最も好ましくは0.3〜1.1モル%である。前記範囲の共重合量であれば、密着性、耐久性、応力緩和性に優れる下塗り層が得られ得る。
【0042】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、上記アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレートの他に、他の成分を共重合させて得ることもできる。他の成分としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が好ましく用いられる。他の成分の共重合量は、アルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して100重量部以下であることが好ましく、より好ましくは50重量部以下である。
【0043】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100万以上、さらに好ましくは120万〜300万、特に好ましくは120万〜250万である。
【0044】
上記イソシアネート系化合物としては、2,4−(または2,6−)トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー;これらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパン等の多価アルコールと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化合物;ビュレット型化合物;さらには任意の適切なポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
上記イソシアネート系化合物として、市販品をそのまま用い得る。市販のイソシアネート系化合物としては、例えば、三井武田ケミカル(株)製 タケネートシリーズ(商品名「D−110N,500,600,700等」)、日本ポリウレタン工業(株)コロネートシリーズ(例えば、商品名「L,MR,EH,HL等」)等が挙げられる。
【0046】
上記イソシアネート系化合物の配合量は、目的に応じて適切な量が設定され得る。例えば、配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部、さらに好ましくは0.3〜1.0重量部、特に好ましくは0.4〜0.8重量部である。イソシアネート系化合物の配合量を前記範囲とすることによって、適度な応力緩和性および優れた熱安定性を示し得る。さらに、過酷な(高温,多湿)環境下でも、密着性が良好となり得る。
【0047】
上記粘着性組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤をさらに含有し得る。添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、カップリング剤、増粘剤、顔料等が挙げられる。
【0048】
上記その他の添加剤の配合量は、目的に応じて適切な量が設定され得る。配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0を超え5重量部以下である。
【0049】
上記下塗り層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは10〜30μm、特に好ましくは20〜25μmである。
【0050】
C.偏光板
上記偏光板30は、代表的には、偏光子と該偏光子の少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する。
【0051】
C−1.偏光子
上記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0052】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0053】
C−2.保護フィルム
上記保護フィルムとしては、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムが採用され得る。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。上記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であり得る。TAC、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ガラス質系ポリマーが好ましく、TACがさらに好ましい。
【0054】
上記保護フィルムは、透明で、色付きが無いことが好ましい。具体的には、厚み方向の位相差値が、好ましくは−90nm〜+90nmであり、さらに好ましくは−80nm〜+80nmであり、最も好ましくは−70nm〜+70nmである。
【0055】
上記保護フィルムの厚みとしては、上記の好ましい厚み方向の位相差が得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。具体的には、保護フィルムの厚みは、好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下であり、特に好ましくは1〜500μmであり、最も好ましくは5〜150μmである。
【0056】
上記偏光子と上記保護フィルムとの積層は、任意の適切な粘着剤層または接着剤層を介して積層される。
【0057】
例えば、図1(c)において、偏光子の上側(衝撃吸収粘着剤層10が形成されていない側)に設けられる保護フィルムには、必要に応じて、表面処理層が設けられ得る。表面処理層の具体例としては、ハードコート処理層、反射防止処理層、スティッキング防止処理層、アンチグレア処理層等が挙げられる。
【0058】
D.支持層
上記支持層50は、代表的には、プラスチックフィルムで形成され得る。また、支持層は、プラスチックフィルムの単一層であってもよく、プラスチックフィルムの積層体であってもよい。プラスチックフィルムは、光学フィルムとして使用し得る、任意の適切な材料で形成され得る。具体例として、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂等が挙げられる。なお、上記支持層は、延伸処理が施されたプラスチックフィルムであってもよい。
【0059】
上記支持層の20℃での動的貯蔵弾性率G´は、好ましくは2×10Pa以上、さらに好ましくは2×10〜1×1011Pa、特に好ましくは5×10〜1×1010Paである。このような動的貯蔵弾性率G´を有することにより、自己支持性に優れ得る。その結果、よりリワーク性に優れ、気泡の発生をより効果的に抑制し得る衝撃吸収粘着剤層付偏光板が得られ得る。
【0060】
上記支持層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは5〜500μmであり、さらに好ましくは10〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。このような厚みを有することにより、自己支持性に優れ得る。その結果、よりリワーク性に優れ、気泡の発生をより効果的に抑制し得る衝撃吸収粘着剤層付偏光板が得られ得る。
【0061】
上記支持層は、光学的に等方性であってもよく、光学的に異方性(複屈折性)であってもよい。支持層が光学的に等方性を有する場合、得られる衝撃吸収粘着剤層付偏光板は、液晶表示装置の表示特性に実質的に影響を与えることなく用いられ得る。支持層が光学的に異方性を有する場合、当該支持層は光学補償層としても機能し得る。支持層が光学的に異方性を有する場合、その光学特性(例えば、Δnd、Rth)は、補償すべき液晶セルの駆動モード等に応じて適切に設定され得る。なお、本明細書において、「光学的に等方性」とは、実質的に光学的に等方性を有する場合も含む。「実質的に光学的に等方性を有する」とは、Δndが10nm未満であり、かつ、Rthの絶対値が10nm未満である場合をいう。
【0062】
E.粘着剤層
上記粘着剤層40を形成する材料としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。具体例として、上記B−2項に記載の下塗り層が採用され得る。
【0063】
F.セパレーター(基材)
上記セパレーター(基材)20,21,22は、代表的には、支持基材と、該支持基材の少なくとも片側(上記衝撃吸収粘着剤層が配置される側)に配置された剥離性付与層とを含む。後述の剥離性付与層を形成する剥離剤の種類、塗布量を適宜選択することにより、セパレーターの剥離力を容易に調節し得る。
【0064】
上記支持基材としては、任意の適切なプラスチックフィルムが採用され得る。また、支持基材は、プラスチックフィルムの単一層であってもよく、プラスチックフィルムの積層体であってもよい。プラスチックフィルムは、セパレーターとしての機能を発揮し得る限り、任意の適切な材料で形成され得る。具体例として、ナイロン類;ポリ塩化ビニル等のハロゲン含有ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類等が挙げられる。中でも、打ち抜き加工性等の点からポリエステルフィルムが好ましい。また、支持基材の材料としては、上記剥離性付与層(例えば、シリコーン樹脂)に対して、触媒毒となる成分を含まないものが好ましい。なお、支持基材の表面は、金属蒸着が施されていてもよい。
【0065】
上記剥離性付与層は、任意の適切な剥離剤で形成され得る。具体例として、縮合型や付加型等の熱硬化型シリコーン系剥離剤、紫外線や電子線等による放射線硬化型シリコーン系剥離剤等のシリコーン系剥離剤;(メタ)アクリル酸のフッ素含有エステルと、炭素数8以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル等とを重合して得られたアクリル系共重合体を含むフッ素系剥離剤;炭素数12〜22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、炭素数8以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル等とを重合して得られたアクリル系共重合体を含む長鎖アルキル系剥離剤(特公昭29−3144号公報、特公昭29−7333号公報)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、シリコーン系剥離剤である。
【0066】
上記剥離性付与層としては、例えば、特開2004−346093号公報に記載の離型層を採用してもよい。
【0067】
上記セパレーターの厚みは、代表的には15〜100μm程度であり、好ましくは30〜100μm程度である。
【0068】
G.製造方法
本発明の衝撃吸収粘着剤シートの製造方法は、衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層にレーザー光を照射して切断する工程を含む。代表的には、衝撃吸収粘着剤層と所望の上記各層(フィルム)を積層して積層体を作製した後、当該積層体にレーザー光を照射して(例えば、レーザーアブレーション等によって)切断する方法が採用される。上記各層(フィルム)の積層順序および積層方法は、任意の適切な方法が採用され得る。以下、具体的に説明する。
【0069】
図2(a)に示す衝撃吸収粘着剤シートは、第1のセパレーター(基材)と衝撃吸収粘着剤層と第2のセパレーターとをこの順で積層して積層体を作製した後、該積層体の基材が配置されていない側(第2のセパレーター側)からレーザー光を照射して、基材に達するまで積層体を切断することにより得られ得る(ハーフカット)。図2(b)に示す衝撃吸収粘着剤シートは、第1のセパレーター(基材)と粘着剤層と偏光板と衝撃吸収粘着剤層と第2のセパレーターとをこの順で積層して積層体を作製した後、該積層体の基材が配置されていない側(第2のセパレーター側)からレーザー光を照射して、基材に達するまで積層体を切断することにより得られ得る(ハーフカット)。図1(a)および(b)に示す衝撃吸収粘着剤シートは、それぞれ、図2(a)および(b)に示す衝撃吸収粘着剤シートをさらに切断することにより得られ得る。つまり、第1のセパレーター(基材)21の衝撃吸収粘着剤片10’が形成されていない部分を切断することにより得られ得る。第1のセパレーター(基材)21の切断方法は、任意の適切な方法を採用し得る。
【0070】
図1(c)に示す衝撃吸収粘着剤シートは、セパレーター(基材)と粘着剤層と支持層と衝撃吸収粘着剤層と偏光板とをこの順で積層して積層体を作製した後、上記積層体にレーザー光を照射して完全に切断することにより得られ得る(フルカット)。フルカットの場合、レーザー光の照射方向は、形成する層の種類等に応じて適宜変更し得る。このように、切断深さを調節することにより、所望の衝撃吸収粘着剤シートが得られ得る。
【0071】
上記ハーフカットの場合であってもフルカットの場合であっても、隣り合う衝撃吸収粘着剤層の切断面と切断面との距離が、少なくとも30μm以上となるように切断することが好ましい。すなわち、ハーフカットの場合、切断後、図2に示すように、隣り合う衝撃吸収粘着剤片の側面下端11bと側面下端11bとの距離L2が30μm以上となるように切断することが好ましい。さらに好ましくは30〜120μm、特に好ましくは30〜60μmである。切断面同士が再融着するのを防止し得、光学素子への積層時の作業性に優れ得る。さらに、歩留まりにも優れ得る。切断面と切断面との距離がこのような範囲であることにより、得られた衝撃吸収粘着剤シートは、基材からの剥離性に優れ得、光学素子への積層時の作業性に優れ得る。また、隣り合う切断面同士が再融着するのを防止し得、テーパ面が良好に保たれ、画像表示装置の表示特性が優れ得る。一方で、歩留まりにも優れ得る。
【0072】
上記レーザー光は、好ましくは、少なくとも400nm以下および/または1.5μm以上の波長の光を含む。さらに好ましくは2〜30μm、特に好ましくは8〜12μmの波長の光を含む。上記衝撃吸収粘着剤層をはじめとする各層(フィルム)の形成材が、レーザー光を効率的に吸収し得、良好に切断し得るからである。その結果、上記所望のテーパ角および側面(切断面)同士の距離を容易に達成し得る。
【0073】
上記レーザーとしては、任意の適切なレーザーを採用し得る。具体例としては、COレーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザーが挙げられる。好ましくは、COレーザーである。COレーザー光は上述の好ましい波長の光を含み得るからである。また、COレーザーは、照射の出力条件の適用範囲が広く、上記切断深さを容易に制御し得、さらには、上記所望のテーパ角を容易に達成し得、切断面にも優れ得る。また、上記切断面同士の距離を容易に達成し得、切断面同士が再融着するのを抑制し得る。さらに、生産性に優れ得る。
【0074】
レーザー光の照射条件(出力条件、移動速度、回数)は、切断対象、切断深さ等に応じて任意の適切な条件を採用し得る。出力条件は、COレーザーを用いる場合、代表的には10〜800Wである。好ましくは10〜200W、さらに好ましくは10〜100Wである。移動速度は、COレーザーを用いる場合、代表的には50〜700mm/秒であり、好ましくは100〜500mm/秒である。回数は、代表的には1〜2回である。
【0075】
H.使用方法
本発明の衝撃吸収粘着剤シートの使用方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記基材(セパレーター)を剥離して、この剥離面を光学素子表面に貼着させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例中の部および%は重量基準である。
【0077】
〔製造例1:衝撃吸収層の製造〕
冷却管、窒素導入管、温度計、紫外線照射装置および攪拌装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート83.6部、4−ヒドロキシブチルアクリレート16.4部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア−651」)0.05部と1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「イルガキュアIr−184」)0.05部を入れ、紫外線を照射して重合処理して、重合率が10%のアクリル系ポリマー・モノマー混合液を得た。次に、この混合液100部に対して、架橋剤としてトリメチルプロパントリアクリレート0.2部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「イルガキュアIr−184」)0.15部とを混合し、塗布液を得た。
上記で得られた塗布液を、基材(厚み100μmのポリエステル系セパレーター、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製の「PETセパMRF」)上に塗布し、その上面を、前記基材よりも剥離力が軽い基材(厚み75μmのポリエステル系セパレーター、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製の「PETセパMRN」)で覆い、積層体を得た。得られた積層体を−15℃で冷却しながら、紫外線ランプにより、4,000mJ/cmの紫外線を照射して光重合させて、厚み204μmの衝撃吸収層を作製した。得られた衝撃吸収層の20℃での動的貯蔵弾性率G´は1×10Paであった。
【0078】
〔製造例2:下塗り層の製造〕
冷却管、攪拌羽、温度計が付属した4つ口フラスコ中に、ブチルアクリレート100部、アクリル酸5部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部および過酸化ベンゾイル0.2部を酢酸エチル100部と混合した溶液を加え、60℃で7時間反応させて、固形分40%のアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系化合物(コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)を固形分で1部加えて、さらに酢酸エチルを加えて、固形分30%の下塗り剤溶液を調製した。得られた下塗り剤溶液を、基材(厚み38μmのポリエステル系セパレーター)上に、リバースロールコート法で塗工し、150℃で3分間乾燥して溶剤を揮発させ、下塗り層を作製した。得られた下塗り層の乾燥後の厚みは23μmであった。
【0079】
〔実施例1〕
上記で得られた衝撃吸収層の片側の基材(「PETセパMRN」)を剥離し、この剥離面に上記で得られた下塗り層および第1のセパレーター(基材)をこの順で積層した。次いで、衝撃吸収層のもう片側の基材(「PETセパMRF」)を剥離し、この剥離面に上記で得られた下塗り層および第2のセパレーターをこの順で積層した。第1のセパレーターとして、厚み75μmのPETフィルム(東洋メタライジング(株)製、商品名「MDAR」)を用いた。第2のセパレーターとして、厚み75μmのPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、商品名「MRV」)を用いた。このようにして、第1のセパレーター(75μm)/衝撃吸収粘着剤層(250μm)/第2のセパレーター(75μm)の構成を有する積層体Aを作製した。
【0080】
上記で得られた積層体AにCOレーザー(澁谷工業製、商品名「SILAS−SAM(SPL2305型)」)でレーザー光を照射し、第2のセパレーターおよび衝撃吸収粘着剤層を切断(ハーフカット)して、図2(a)に示すような衝撃吸収粘着剤シートを作製した。得られた衝撃吸収粘着剤片の寸法は、縦40mm×横30mmであった。レーザー光による切断は、出力:50W、移動速度400mm/秒、ピント66mm、照射回数1回の条件で行った。なお、ピントとは、レーザーのレンズの最表面から積層体(第2のセパレーター)表面までの距離を意味する。
【0081】
〔実施例2〕
ピントを64mmにしたこと以外は実施例1と同様にして衝撃吸収粘着剤シートを作製した。
【0082】
〔実施例3〕
出力を25W、移動速度を200mm/秒にしたこと以外は実施例1と同様にして衝撃吸収粘着剤シートを作製した。
【0083】
〔実施例4〕
出力を25W、移動速度を200mm/秒、ピントを64mmにしたこと以外は実施例1と同様にして衝撃吸収粘着剤シートを作製した。
【0084】
〔実施例5〕
出力を25W、移動速度を200mm/秒、ピントを62mmにしたこと以外は実施例1と同様にして衝撃吸収粘着剤シートを作製した。
【0085】
〔実施例6〕
上記で得られた衝撃吸収層の片側の基材(「PETセパMRN」)を剥離し、この剥離面に上記で得られた下塗り層、厚み100μmの偏光板(日東電工株式会社製、商品名:TEG1465DUHC)、上記で得られた下塗り層、および、第1のセパレーター(基材)をこの順で積層した。次いで、衝撃吸収層のもう片側の基材(「PETセパMRF」)を剥離し、この剥離面に上記で得られた下塗り層および第2のセパレーターをこの順で積層した。第1のセパレーターおよび第2のセパレーターとしては、それぞれ実施例1と同様のセパレーターを採用した。このようにして、第1のセパレーター(75μm)/粘着剤層(23μm)/偏光板(100μm)/衝撃吸収粘着剤層(250μm)/第2のセパレーター(75μm)の構成を有する積層体Bを作製した。
【0086】
上記で得られた積層体BにCOレーザー光を照射し、第2のセパレーター、衝撃吸収粘着剤層、偏光板および粘着剤層を切断(ハーフカット)して、図2(b)に示すような衝撃吸収粘着剤シートを作製した。得られた衝撃吸収粘着剤片の寸法は、縦40mm×横30mmであった。レーザー光による切断は、出力:75W、移動速度400mm/秒、ピント66mm、照射回数1回の条件で行った。
【0087】
〔実施例7〕
上記で得られた衝撃吸収層の片側の基材(「PETセパMRN」)を剥離し、この剥離面に上記で得られた下塗り層、支持層、上記で得られた下塗り層、および、セパレーター(基材)をこの順で積層した。次いで、衝撃吸収層のもう片側の基材(「PETセパMRF」)を剥離し、この剥離面に上記で得られた下塗り層および偏光板(日東電工株式会社製、商品名:TEG1465DUHC)をこの順で積層した。セパレーターとして、厚み75μmのPETフィルム(東洋メタライジング(株)製、商品名「MDAR」)を用いた。支持層として、実質的に光学的に等方性を示すフィルム(厚み60μm、動的貯蔵弾性率G´=2×10Pa、Δnd[590]=5nm、Rth[590]=7nm、日本ゼオン製、商品名:ゼオノアZF−14)を用いた。このようにして、セパレーター(75μm)/粘着剤層(23μm)/支持層(60μm)/衝撃吸収粘着剤層(250μm)/偏光板(100μm)の構成を有する積層体Cを作製した。
【0088】
上記で得られた積層体CにCOレーザー光を照射し、積層体Cを切断(フルカット)して、図1(c)に示すような衝撃吸収粘着剤シートを作製した。当該衝撃吸収粘着剤シートの衝撃吸収粘着剤層の寸法は、縦40mm×横30mmであった。レーザー光による切断は、出力:100W、移動速度400mm/秒、ピント66mm、照射回数1回の条件で行った。
【0089】
〔比較例1〕
UVレーザー(Electro Scientific Industries,Inc.製、商品名「5330」)を用いてレーザー光を照射したこと、出力を20W、移動速度を2mm/秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、衝撃吸収粘着剤シートを作製した。
【0090】
〔比較例2〕
連続自動裁断機(スーパーカッター、先端角度45°両刃)を用いて切断したこと以外は、実施例1と同様にして、衝撃吸収粘着剤シートを作製した。
【0091】
〔比較例3〕
ウォータージェット法を用いて切断したこと以外は、実施例1と同様にして、衝撃吸収粘着剤シートを作製した。なお、切断条件は、水押出圧力:350MPa,先端径(水押出径):φ0.1mm、移動速度:2mm/秒であった。
【0092】
各実施例および各比較例で得られた衝撃吸収粘着剤シートについて表1にまとめる。なお、得られた衝撃吸収粘着剤シートについて以下の方法により評価した。
1.テーパ角の測定
(実施例1〜5について)
衝撃吸収粘着剤片の第2のセパレーターからの延出幅(図2(a)のL6)を測定して得られた値と、衝撃吸収粘着剤片の厚みと第2のセパレーターの厚みとの合計(325μm)とから、テーパ角を算出した。
(実施例6について)
粘着剤層の第2のセパレーターからの延出幅(図2(b)のL7)を測定して得られた値と、粘着剤層の厚みと偏光板の厚みと衝撃吸収粘着剤片の厚みと第2のセパレーターの厚みとの合計(448μm)とから、テーパ角を算出した。
(実施例7について)
セパレーターの偏光板からの延出幅(図1(c)のL8)を測定して得られた値と、セパレーターの厚みと粘着剤層の厚みと支持層の厚みと衝撃吸収粘着剤片の厚みと偏光板の厚みとの合計(508μm)とから、テーパ角を算出した。
2.切断面の評価
衝撃吸収粘着剤層(衝撃吸収粘着剤片)の切断面(側面)を顕微鏡で観察した。
〈評価結果〉
○:平滑であった
×:うねり、凹凸等が生じていた
3.再融着について
切断時または切断後、隣り合う衝撃粘着剤層(衝撃吸収粘着剤片)同士が再融着するか否か観察した。
〈評価結果〉
○:再融着は生じなかった
×:再融着が生じた
4.剥離性の評価
得られた衝撃吸収粘着剤シートまたは衝撃吸収粘着剤片10個について、セパレーター(基材)を剥がした。その際、剥がし易さ、糊欠け(衝撃吸収粘着剤層(衝撃吸収粘着剤片)の一部がセパレーターに付着する)の有無について評価した。
〈評価結果〉
○:剥離性に優れていた
×:剥離性に劣っていた
【0093】
【表1】

【0094】
表1から明らかなように、実施例1〜7は、テーパ角が65°以上であり歩留まりに優れていた。また、切断面は平滑で、テーパ面を形成していた。一方、比較例1は、切断面は概ね平滑であったものの、隣り合う衝撃粘着剤片の側面下端部同士が再融着してテーパ面を形成していなかった。したがって、テーパ角を測定できなかった。比較例2は、実質的にテーパ角は90°であるが、隣り合う衝撃粘着剤片同士が再融着してしまった。比較例3では、ハーフカット(第2のセパレーターおよび衝撃吸収粘着剤層のみを切断)ができず、フルカット(第1のセパレーターも切断)された。また、切断面同士が再融着してしまった。したがって、テーパ角を測定できなかった。比較例2および比較例3では、切断面同士が再融着してテーパ面を形成していなかった。
【0095】
実施例1〜3および実施例6〜7は、剥離性に特に優れていた。テーパ角が比較的小さかった実施例4および実施例5では、衝撃吸収粘着剤片と第2のセパレーターとが一体となって剥離せず、第2のセパレーターのみが剥離してしまうものがあった。比較例1は、上述のように再融着したこともあり、剥がしにくくまた糊欠けが生じ、剥離性に劣っていた。比較例2および比較例3は、切断面同士の再融着度合いが大きく、剥離性を評価できなかった。なお、比較例1および3以外は生産性に優れていた。特に、実施例1〜2および実施例6〜7は、生産性に優れていた。
【0096】
実施例1および比較例1で得られた衝撃吸収粘着剤片を携帯電話の画像に供した。その結果、比較例1に比べて実施例1は、視認性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の衝撃吸収粘着剤シートは、液晶表示装置等の画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0098】
10 衝撃吸収粘着剤層
10’ 衝撃吸収粘着剤片
20 セパレーター(基材)
21 第1のセパレーター(基材)
22 第2のセパレーター
30 偏光板
40 粘着剤層
50 支持層
100 衝撃吸収粘着剤シート
200 衝撃吸収粘着剤シート
300 衝撃吸収粘着剤シート
400 衝撃吸収粘着剤シート
500 衝撃吸収粘着剤シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収層を含む衝撃吸収粘着剤層を有し、
該衝撃吸収粘着剤層の側面がテーパ面であり、該テーパ面のテーパ角が65°以上である、衝撃吸収粘着剤シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100510(P2013−100510A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275681(P2012−275681)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2006−211662(P2006−211662)の分割
【原出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】