説明

衝突保護メモリシステムおよび衝突保護メモリシステムにデータを伝送するための方法

衝突保護メモリ(CPM)のためのシステムおよび方法を提供する。このCPMは、側壁を含むハウジングを含み、その側壁の少なくとも一部分は、無線周波(RF)放射を少なくとも部分的に通す。ハウジングは、ハウジングの外部から密閉可能な内部空洞を含む。このCPMは、ハウジングの内部に位置する受信機も含む。その受信機は、側壁の少なくとも一部分を介して送信機に通信可能に結合するように構成される。このCPMは、その受信機に通信可能に結合される、乗物の動作に関係するデータを記憶するためのメモリをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般に衝突保護メモリ(CPM)に関し、より具体的には、CPMにデータを記憶するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のクラッシュレコーダは、乗物の動作データおよびパフォーマンスデータ、ならびに複数の客室の音源および映像源を記録することが求められる。データ源および信号源の量と帯域幅が増えるにつれて、クラッシュレコーダのCPM部分との間のデータ帯域幅は増え続ける。さらに、衝突生存性要件は、CPM内の電子装置に対する衝突事象にしばしば関連する高温火災の影響を減らすために、CPM内外の電気信号経路の数を最小限に留めることを要求する。
【0003】
現在のCPMは、12本以上の導線を使用する、独占権下にある電気的インターフェイスを利用する。CPMのハウジングを貫くその数本の導電線は、衝突事象などの異常事象に多くの場合関連する火災からの過度の熱を伝える。その過度の熱はCPM内部の回路内に伝達し、その回路内に記憶されたデータに危険をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/31709号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、衝突保護メモリ(CPM)は、側壁を含むハウジングを含み、その側壁の少なくとも一部分は、無線周波(RF)放射を少なくとも部分的に通す。ハウジングは、ハウジングの外部から密閉可能な内部空洞を含む。このCPMは、ハウジングの内部に位置する受信機も含む。その受信機は、側壁の少なくとも一部分を介して送信機に通信可能に結合するように構成される。このCPMは、その受信機に通信可能に結合される、乗物の動作に関係するデータを記憶するためのメモリをさらに含む。
【0006】
別の実施形態では、密閉されたハウジングで囲まれた保護メモリシステムにデータを伝送するための方法は、ハウジングの内部空洞の中に受信機を配置するステップと、ハウジングの外部に近接して送信機を配置するステップと、その送信機から受信機にハウジングを介してデータ信号および電力のうちの少なくとも一方を伝送するステップとを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、フライトデータレコーダは、乗物の動作に関係する複数のデータ信号を受け取るように構成されるデータ取得ユニットと、CPMシステムとを含む。そのCPMは、側壁を含むハウジングを含み、その側壁の少なくとも一部分は、無線周波(RF)放射を実質的に通す。ハウジングは、ハウジングの外部から密閉可能な内部空洞を含む。このフライトデータレコーダは、側壁の少なくとも一部分を介して送信機に通信可能に結合するように構成される、ハウジングの内部に位置する受信機も含む。このフライトデータレコーダは、受信機によって受け取られる複数のデータ信号を記憶するように構成される、受信機に通信可能に結合されるメモリデバイスをさらに含む。
【0008】
図1〜2は、本明細書に記載するシステムおよび方法の例示的実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の例示的実施形態によるフライトデータレコーダの概略的ブロック図である。
【図2】本発明の例示的実施形態による、保護メモリシステムにデータを伝送するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、本発明の諸実施形態を限定としてではなく例として示す。本発明は、メモリコンポーネント上に記憶されたデータを工業的応用、商業的応用、および住宅応用の過酷な環境から守るためのシステムおよび方法への一般的応用を有すると考えられる。
【0011】
本明細書で使用するとき、単数形で説明され、語「a」もしくは「an」の後に続く要素またはステップは、複数形の要素またはステップを除外することが明確に説明されていない限り、複数形の要素またはステップを除外するものではないと理解すべきである。さらに、本発明の「一実施形態」について言及することは、列挙する特徴を同様に含むさらなる実施形態があることを除外するものとして解釈されることを目的とするものではない。
【0012】
図1は、本発明の例示的実施形態によるフライトデータレコーダ100の概略的ブロック図である。この例示的実施形態では、フライトデータレコーダ100は、複数のデータ信号104を受け取り、記憶用に一連のデータパケット106を生成するように構成されるデータ取得ユニット102を含む。フライトデータレコーダ100は、コンジット113および送信機114と受信機116との組合せを介してデータ取得ユニット102に通信可能に結合される衝突保護メモリ(CPM)112を含む。送信機114および受信機116は協働して、少なくとも1つの側壁118を含むCPM112のハウジング117を介し、データパケット106を伝達する。代替的実施形態では、送信機114および受信機116は、側壁118を介してデータを双方向に伝送するように構成されるそれぞれのトランシーバの一部である。送信機114および受信機116は、これだけに限定されないが、Bluetooth、ZigBee、ウルトラワイドバンド(UWB)、ワイヤレスUSBなどの標準プロトコルを使用して通信することができる。この例示的実施形態では、CPM112は、乗物(不図示)の動作に関係するデータを記憶するために使用されるメモリデバイス120を含む。CPM112は、側壁118を介して送電器または1次コイル124に結合するように構成される、受電器または2次コイル122も含む。1次コイル124は、側壁118の外側に位置し、2次コイル122は、側壁118の内側で1次コイル124に向かい合って位置し、空洞128の中にある装置に電力を供給するように構成される。側壁118は、2次コイル122および1次コイル124、ならびに送信機114および受信機116がある特定の部分においてのみ、無線周波(RF)および/または磁場を実質的に通すことができる。あるいは、側壁118は、CPM112の全体にわたりRF放射および/または磁場を実質的に通すことができる。1次コイル124は、電源126に電気的に結合される。
【0013】
一実施形態では、CPM112は、セラミック材料などの非金属材料で作られる。様々な実施形態において、CPM112は、RF放射を少なくとも部分的に通す金属材料で作られる。例えば、CPM112は、金属材料および非金属材料を含む複合材料で作ることができる。CPM112外部の送信機とCPM112内部に位置する受信機とを使用し、側壁118を介してデータ信号および電力を伝送することにより、側壁118を貫通する電線および/または金属導線をなくし、またはその数を大幅に減らすことができる。ハウジングの側壁118を貫いて伸びる電線がないと、CPM112の空洞128内への伝熱のための伝導経路が最小限に抑えられる。
【0014】
一実施形態では、ハウジング117は、空洞128にアクセスできるようにする取外し可能な側壁または蓋130を含む。様々な実施形態において、蓋130は、側壁118の材料とは異なる材料で作ることができる。例えば、側壁118を金属または複合材で作ることができ、蓋130をセラミック材料で作ることができ、その逆も同様である。側壁118と蓋130とを同様の材料で作ることもできる。
【0015】
図2は、密閉されたハウジングで囲まれた保護メモリシステムにデータを伝送するための方法200の流れ図である。この例示的実施形態では、方法200は、ハウジングの内部空洞の中に受信機を配置するステップ202と、ハウジングの外部に近接して送信機を配置するステップ204と、その送信機から受信機にハウジングを介してデータおよび電力のうちの少なくとも一方を伝送するステップ206とを含む。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語プロセッサは、中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、および本明細書に記載の機能を実行することができる他の任意の回路またはプロセッサを指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「ソフトウェア」と「ファームウェア」とは置き換えることができ、プロセッサ119が実行するためにメモリ内に記憶される任意のコンピュータプログラムを含む。プロセッサ119は、CPM112内で使用することができ、またはCPM112の要件にもよるがなくてもよい。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語メモリには、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、および不揮発性RAM(NVRAM)メモリが含まれ得る。上記のメモリの種類は例示的に過ぎず、したがって、フライトデータレコーダ100とともに使用可能なメモリの種類に関して限定するものではない。
【0019】
上記の詳述に基づいて理解されるように、上記に記載した本開示の諸実施形態は、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せもしくはサブセットを含む、コンピュータプログラミング技法またはエンジニアリング技法を使用して実装することができ、その技術的効果は、CPMの外装ハウジングを介してデータ信号および/または電力を無線で伝送することである。CPMのハウジングの側壁を貫く金属導線をなくすと、熱による損傷を受けやすいコンポーネントが配置されるCPMの空洞内への熱の侵入が減る。その結果生じるコンピュータ可読コード手段を有するそのような任意のプログラムは、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の中に具体化しまたは与え、それによりコンピュータプログラム製品、すなわち論じられた本開示の諸実施形態による製造品を作成することができる。そのコンピュータ可読媒体は、これだけに限定されないが、例えば固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、読取り専用メモリ(ROM)などの半導体メモリ、および/またはインターネットや他の通信ネットワークもしくはリンクなどの任意の送信/受信媒体とすることができる。このコンピュータコードを含む製造品は、ある媒体からコードを直接実行することにより、ある媒体から別の媒体にコードをコピーすることにより、またはネットワークを介してコードを伝送することにより、作成しかつ/または使用することができる。
【0020】
保護メモリシステムにデータを伝送するための上記に記載したシステムおよび方法の諸実施形態は、CPMの側壁を貫く伝熱経路を与えることなしに、CPM上にデータを記憶するための費用効果が高く高信頼の手段を提供する。より具体的には、本明細書に記載したシステムおよび方法は、CPM外装の内外に通じる導電線およびCPMの中に伝わる熱をなくすことにより、火災を伴う衝突の間CPM内のメモリデバイスの生存性を高める無線データ/電力インターフェイスの独特の応用例を提供する。その結果、本明細書に記載したシステムおよび方法は、異常事象および調査中に、データを記憶することおよびその後データを回復することを費用効果が高く高信頼の方法で促進する。
【0021】
保護メモリシステムにデータを伝送するための例示的システムおよび方法を上記に詳述した。示したシステムは本明細書に記載した特定の実施形態に限定されず、むしろ各々のコンポーネントは、本明細書に記載した他のコンポーネントから独立にかつ別々に利用することができる。各システムコンポーネントは、他のシステムコンポーネントと組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本書は、最良の形態を含む本発明を開示するために、さらに任意の装置またはシステムを作成/使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施できるようにするために複数の例を使用する。特許性のある本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義し、当業者なら思いつく他の例を含むことができる。そうした他の例が特許請求の範囲の文言と相違ない構造的要素を有する場合、またはそうした他の例が、特許請求の範囲の文言との相違がごくわずかな等価の構造的要素を含む場合、そうした他の例も特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【符号の説明】
【0023】
100 フライトデータレコーダ
102 データ取得ユニット
104 データ信号
106 データパケット
112 衝突保護メモリ(CPM)
113 コンジット
114 送信機
116 受信機
117 ハウジング
118 側壁
119 プロセッサ
120 メモリデバイス
122 受電器、2次コイル
124 送電器、1次コイル
126 電源
128 空洞
130 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を備えるハウジングであって、前記側壁の少なくとも一部分は無線周波(RF)放射を少なくとも部分的に通し、前記ハウジングは前記ハウジングの外部から密閉可能な内部空洞を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの前記内部に位置する受信機であって、前記側壁の前記少なくとも一部分を介して送信機に通信可能に結合するように構成される、受信機と、
前記受信機に通信可能に結合される、乗物の動作に関係するデータを記憶するためのメモリと
を備える、衝突保護メモリ(CPM)システム。
【請求項2】
前記ハウジングの側壁を貫いて伸びる電線がない、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項3】
前記ハウジングがセラミック材料からなる、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項4】
前記ハウジングが、前記空洞にアクセスできるようにする取外し可能な側壁を備える、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項5】
前記取外し可能な側壁がセラミック材料からなる、請求項4記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項6】
前記ハウジングの前記外部に位置する送信機をさらに備える、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項7】
前記受信機が、前記側壁の前記一部分を介してデータ信号および電力のうちの少なくとも一方を受け取るように構成される、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項8】
前記受信機が、Bluetooth、ZigBee、ウルトラワイドバンド(UWB)、およびワイヤレスUSBのうちの少なくとも1つを含む形式でデータを受け取るように構成される、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項9】
前記受信機が、前記空洞の中に位置する誘導コイルであって、前記空洞の中にある装置に電力を供給するように構成される、誘導コイルを含む、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項10】
前記メモリが、前記受信機に通信可能に結合される乗物の前記動作に関係するデータを記憶するように構成される、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項11】
前記受信機がトランシーバの受信部分であり、前記トランシーバは、前記ハウジングの外部に位置する受信機にデータを伝送するようにさらに構成される、請求項1記載の衝突保護メモリシステム。
【請求項12】
密閉されたハウジングで囲まれた保護メモリシステムにデータを伝送するための方法であって、
前記ハウジングの内部空洞の中に受信機を配置するステップと、
前記ハウジングの外部に近接して送信機を配置するステップと、
前記送信機から前記受信機に前記ハウジングを介してデータおよび電力のうちの少なくとも一方を伝送するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記受信機をメモリデバイスに通信可能に結合するステップをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記送信機から前記受信機に前記ハウジングを介してデータを伝送するステップが、前記送信機から前記受信機に、無線周波(RF)放射を実質的に通す前記ハウジングの一部分を介してデータを伝送するステップを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記送信機から前記受信機に前記ハウジングを介してデータを伝送するステップが、前記送信機から前記受信機に無線でデータを伝送するステップを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
乗物の動作に関係する複数のデータ信号を受け取るように構成されるデータ取得ユニットと、
衝突保護メモリ(CPM)システムと
を備えるフライトデータレコーダであって、
前記衝突保護メモリ(CPM)システムは、
側壁を備えるハウジングであって、前記側壁の少なくとも一部分は無線周波(RF)放射を実質的に通し、前記ハウジングは前記ハウジングの外部から密閉可能な内部空洞を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの前記内部に位置する受信機であって、前記側壁の前記少なくとも一部分を介して送信機に通信可能に結合するように構成される、受信機と、
前記受信機を介して受け取られる前記複数のデータ信号を記憶するように構成される、前記受信機に通信可能に結合されるメモリと
を備える、フライトデータレコーダ。
【請求項17】
前記ハウジングがセラミック材料からなる、請求項16記載のフライトデータレコーダ。
【請求項18】
前記受信機が、前記側壁の前記一部分を介してデータ信号および電力のうちの少なくとも一方を無線で受け取るように構成される、請求項16記載のフライトデータレコーダ。
【請求項19】
前記受信機が、前記空洞の中に位置する誘導コイルであって、前記空洞の中にある装置に電力を供給するように構成される、誘導コイルを含む、請求項16記載のフライトデータレコーダ。
【請求項20】
前記受信機がトランシーバの受信部分であり、前記トランシーバは、前記ハウジングの外部に位置する受信機にデータを伝送するようにさらに構成される、請求項16記載のフライトデータレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522310(P2012−522310A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503455(P2012−503455)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/025997
【国際公開番号】WO2010/114663
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】