説明

衣服の着用補助具

【課題】高齢者等が通常のシャツやブラウスを身に付ける際にいつでも使用することができ、それらの衣服の着用動作に伴う負担を効果的に低減することが可能である上、使用時でも通常のシャツやブラウスを装着した状態と変わらない外観を提供することが可能な衣服の着用補助具を提供する。
【解決手段】着用補助具1は、ボタンを挿通可能な切り込み4が設けられているとともに表面に複数の係合突起体5,5・・およびループ体6,6・・が植設された略円形の第一シート体2と、当該第一シート体2と略同一な外形を有しており表面にボタンが逢着されているとともに裏面に係合体と係合可能な複数のループ体6,6・・および係合突起体5,5・・が植設された第二シート体3とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者等が衣服を着用する際の着用動作を補助するために用いられる補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体が不自由な人等は、衣服を着たり脱いだりするのに多くの時間を要する。また、衣服の着脱に伴って、身体に大きな負担がかかってしまう。殊に、複数のボタンが逢着されたシャツやブラウスを装着する際には、その傾向がより顕著なものとなる。かかる事情から、特許文献1の如く、一枚の布によって形成されており、周囲に点在するように設けられた雄スナップと雌スナップとを係合させるだけで容易に装着させることを可能とした介護用の衣服も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−226807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような介護用の衣服は、形状が特殊であるため、一見すると直ちに介護用の衣服であることが分かってしまうので、高齢者や手が不自由な人等が着用することを望まない、という不具合がある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の介護用の衣服が有する問題点を解消し、高齢者等が通常のシャツやブラウスを身に付ける際にいつでも使用することができ、それらの衣服の着用動作に伴う負担を効果的に低減することが可能である上、使用時でも通常のシャツやブラウスを装着した状態と変わらない外観を提供することが可能な衣服の着用補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、ボタンを挿通可能な切り込みが設けられているとともに表面に複数の係合体が植設された略円形の第一シート体と、その第一シート体と略同一な外形を有しており表面にボタンが逢着されているとともに裏面に前記係合体と係合可能な複数の被係合体が植設された第二シート体とからなることを特徴とする衣服の着用補助具である。なお、本発明における略円形とは、正規の円形のみならず、楕円形や、四隅を円弧状に面取りした矩形および多角形等の形状を含むものである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、第一シート体の表面および第二シート体の裏面の双方に、U字状に屈曲した複数の係合突起体と、それらの係合突起体と係合可能な複数のループ体とが植設されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または請求項2に記載の衣服の着用補助具を複数セットにしてなる衣服の着用補助具セットである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の衣服の着用補助具を利用すれば、介護者等が、予め、衣服の全てのボタンに第一シートを係止させ、衣服の全てのスリットに第二シートを係止させた状態にしておくことにより、被介護者が、第一シート体の表面と第二シート体の裏面とを重ね合わせて押圧するだけで、第一シート体の係合体と第二シート体の被係合体とが係合し合った状態となり、衣服のボタン逢着部分の前方にスリット形成部分を位置させて保持することが可能となる。それゆえ、請求項1に記載の衣服の着用補助具は、高齢者等が通常のシャツ、ブラウスやパジャマ等の衣服を身に付ける際にいつでも使用することができ、それらの衣服の着用動作に伴う負担を効果的に低減することができる。その上、使用時でも通常のシャツ、ブラウスやパジャマを着用した状態と変わらない外観を提供することが可能である。加えて、使用後には、衣服から取り外すことができるので、前身頃の重ね合わせ部分に面ファスナー等の一対の係合手段を直接的に縫い付けた衣服の如く、クリーニングやアイロン掛けの繰り返しによって第一シート体と第二シート体との係合手段の機能が損なわれる、という事態が生じない。
【0010】
請求項2に記載の衣服の着用補助具は、第一シート体の表面および第二シート体の裏面の双方に、U字状に屈曲した複数の係合突起体と、その係合突起体と係合可能な複数のループ体とが植設されているため、第一シート体の表面と第二シート体の裏面とを当着させるだけで、きわめて容易に両者を接合させた状態で保持することができる。また、第一シート体と第二シート体とを引き剥がすだけで、きわめて容易に第一シート体と第二シート体との接合状態を解除することができる。
【0011】
請求項3に記載の衣服の着用補助具セットは、複数の着用補助具をセットにしてなるものであるので、複数のボタンを逢着したシャツやブラウスの着用時に簡便に用いることができ、それらの衣服の着用に伴う高齢者等の負担を効果的に軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】着用補助具を示す正面図である。
【図2】着用補助具を示す鉛直断面図(図1におけるA−A線断面図)である。
【図3】着用補助具を使用してワイシャツを着用する様子を示す説明図である(aは着用補助具を使用する前の状態を示したものであり、bは第一シート体を装着した状態を示したものであり、cは第二シート体を装着した状態を示したものである)。なお、左側は鉛直断面図であり、右側は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る衣服の着用補助具(以下、単に着用補助具という)の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
[着用補助具の構造]
図1、図2は、着用補助具を示したものであり、着用補助具1は、第一シート体2および第二シート体3によって構成されている。第一シート体2は、ポリエステルによって形成された面ファスナーを略円形に裁断することによって形成されている。そして、ボタンを挿通可能な直線状の切り込み4が設けられている。また、表面には、係合体として機能する屈曲状の多数の係合突起体(雄型突起)5,5・・と、被係合体として機能する(すなわち、係合突起体5,5・・と係合可能な)ループ状の多数のループ体(雌型突起)6,6・・とが混在するように突設されている。なお、ループ体6,6・・は、係合突起体5,5・・よりも高く形成されている。
【0015】
一方、第二シート体3は、第一シート体2と同様に、ポリエステルによって形成された面ファスナーを略円形に裁断することによって形成されており、第一シート体2と略同一な外形を有している。そして、表面にボタン7が逢着されており、裏面には、第一シート体2の表面と同様に、係合体として機能する屈曲状の多数の係合突起体5,5・・と、被係合体として機能するループ状の多数のループ体6,6・・とが混在するように突設されている。
【0016】
[着用補助具の使用方法]
図3は、高齢者や体の不自由な人等の被介護者がワイシャツを着用する場合における着用補助具セット(着用補助具1,1・・をワイシャツのボタンの分だけセットにしてなるもの)の使用状態を示したものである。図3(a)の如く、当該ワイシャツYは、前身頃の片方の側端縁際に、ボタンBが逢着されており、他方の側端縁際に、当該ボタンBを係止させるための縦長なスリットSが設けられている。被介護者が、着用補助具1,1・・を使用してワイシャツYを着用する場合には、予め、介護者等が、図3(b)の如く、第一シート体2の切り込み4に、第一シート体2の裏面側から、ワイシャツYのボタンBを挿通させておく。そのように、切り込み4にワイシャツYのボタンBを挿通させると、第一シート体2がボタンBの後方に係止され、第一シート体2の表面の係合突起体5,5・・およびループ体6,6・・がボタンBの周囲に配置された状態となる。介護者は、複数の着用補助具1,1・・を使用して、上記した方法と同様な方法により、予め、ワイシャツYの全てのボタン(前身頃および袖口等のもの)B,B・・を、各着用補助具1,1・・の第一シート体2の切り込み4に挿通させておく。
【0017】
さらに、介護者等は、予め、ワイシャツYのスリットSに、ワイシャツYの生地の裏側から、第二シート体3の表面側のボタン7を挿通させておく。そのように、スリットSに第二シート体3のボタン7を挿通させると、第二シート体3がスリットSの後方に係止され、第二シート体3の裏面の係合突起体5,5・・およびループ体6,6・・が、ワイシャツYのスリットSの後方に配置された状態となる。介護者は、上記した方法と同様な方法により、予め、ワイシャツYの全てのスリット(前身頃および袖口等のもの)S,S・・に、各着用補助具1,1・・の第二シート体3のボタン7を挿通させておく。
【0018】
上記の如く、予め、ワイシャツYの全てのボタンB,B・・に第一シート2,2・・を係止させ、ワイシャツYの全てのスリットS,S・・に第二シート3,3・・を係止させた状態にしておくことによって、被介護者は、容易にワイシャツY,Y・・を着用することが可能となる。すなわち、被介護者が上記の如く着用補助具1,1・・が装着されたワイシャツYに袖を通すと、ワイシャツYの全てのボタンB,B・・の逢着部分において、ボタンB,B・・に係止された第一シート体2,2・・の表面と、スリットS,S・・に係止された第二シート体3,3・・の裏面とが対峙した状態となる。
【0019】
被介護者は、それらの第一シート体2,2・・の表面と、第二シート体3,3・・の裏面とを重ね合わせて、第一シート体2,2・・と第二シート体3,3・・とを手で挟んで押圧することにより、第一シート体2,2・・の表面の係合突起体5,5・・およびループ体6,6・・と、第二シート体3,3・・の裏面のループ体6,6・・および係合突起体5,5・・とを係合させて、ワイシャツYの全てのボタンB,B・・の逢着部分の前方に、ワイシャツYのスリットS,S・・形成部分を位置させて保持することが可能となる。そして、そのように第一シート体2,2・・の表面と第二シート体3,3・・の裏面とが係止された状態を外部から見ると、ワイシャツYのスリットS,S・・の前方に、第二シート体3,3・・のボタン7,7・・が位置した状態になっているため、ワイシャツYのスリットS,S・・にワイシャツYのボタンB,B・・が係止されているかの如く見える。
【0020】
一方、被介護者がワイシャツYを脱ぐ際には、ワイシャツYの全てのボタンB,B・・の逢着部分において、重なり合っている第一シート体2,2・・と第二シート体3,3・・とを引き剥がすだけで、容易にワイシャツYの前身頃を開放することができる。
【0021】
[着用補助具の効果]
着用補助具1は、上記の如く、ボタンを挿通可能な切り込み4が設けられているとともに表面に複数の係合体(係合突起体5,5・・およびループ体6,6・・)が植設された略円形の第一シート体2と、当該第一シート体2と略同一な外形を有しており表面にボタンが逢着されているとともに裏面に係合体と係合可能な複数の被係合体(ループ体6,6・・および係合突起体5,5・・)が植設された第二シート体3とからなるものである。したがって、着用補助具1は、高齢者等が通常のシャツ、ブラウスやパジャマ等を身に付ける際にいつでも使用することができ、それらの衣服の着用動作に伴う負担を効果的に低減することができる。その上、使用時でも通常のシャツ、ブラウスやパジャマ等を着用した状態と変わらない外観を提供することができる。
【0022】
加えて、着用補助具1によれば、予め、ボタン7の種類が異なる複数の第二シート体3,3・・を用意しておき、TPOに合わせて使用する第二シート体3,3・・を変える(すなわち、ボタン7を変える)ことにより、違った雰囲気の装いを楽しむことも可能となる。
【0023】
さらに、着用補助具1は、上記の如く、第一シート体2の表面および第二シート体3の裏面の双方に、U字状に屈曲した複数の係合突起体5,5・・と、それらの係合突起体5,5・・と係合可能な複数のループ体6,6・・とが植設されているため、第一シート体2の表面と第二シート体3の裏面とを当着させるだけで、きわめて容易に両者を接合させた状態で保持することができる。また、第一シート体2と第二シート体3とを引き剥がすだけで、きわめて容易に第一シート体2と第二シート体3との接合状態を解除することができる。
【0024】
[着用補助具の変更例]
なお、本発明の着用補助具の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、第一シート体、第二シート体等の材質、大きさ、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更できる。
【0025】
たとえば、本発明に係る着用補助具は、上記実施形態の如く、第一シート体および第二シート体を円形にしたものに限定されず、楕円形やハート形等の別の形状にしたものに変更することも可能である。
【0026】
また、本発明に係る着用補助具は、上記実施形態の如く、第一シート体の表面および第二シート体の裏面の双方にU字状に屈曲した複数の係合突起体と当該係合突起体と係合可能な複数のループ体とを植設したものに限定されず、第一シート体の表面、第二シート体の裏面のいずれか一方に、U字状に屈曲した複数の係合突起体を植設し、他方に、当該係合突起体と係合可能な複数のループ体を植設したもの等に変更することも可能である。加えて、第一シート体、第二シート体は、上記実施形態の如く、ポリエステルによって形成されたものに限定されず、ナイロン等の他の素材によって形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の着用補助具は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、高齢者等が衣服を装着する際に利用する補助具として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・着用補助具
2・・第一シート体
3・・第二シート体
4・・切り込み
5・・係合突起体
6・・ループ体
7・・ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンを挿通可能な切り込みが設けられているとともに表面に複数の係合体が植設された略円形の第一シート体と、
その第一シート体と略同一な外形を有しており表面にボタンが逢着されているとともに裏面に前記係合体と係合可能な複数の被係合体が植設された第二シート体とからなることを特徴とする衣服の着用補助具。
【請求項2】
第一シート体の表面および第二シート体の裏面の双方に、U字状に屈曲した複数の係合突起体と、それらの係合突起体と係合可能な複数のループ体とが植設されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服の着用補助具。
【請求項3】
請求項1、または請求項2に記載の衣服の着用補助具を複数セットにしてなる衣服の着用補助具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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