説明

表皮一体の発泡成形体の成形金型

【課題】表皮一体の発泡成形体の成形において、発泡体に通風路となる空間部を成形性良く形成できるようにする。
【解決手段】パッド20(発泡体)を発泡成形するキャビティ空間45内に面状の表皮材10をセットして、この表皮材10にパッド20を一体的に接着させた状態に発泡成形する表皮一体の発泡成形体の成形金型40である。この成形金型40は、型締めにより上記キャビティ空間45内にセットされた表皮材10の一部の面上に押し当てられ、パッド20に上記表皮材10の押し当てられた一部の面上に開口する形の通風路21(空間部)を形成するコア型44を有する。コア型44は、その表皮材10の一部の面上に押し当てられる押当て面44B1上に突起44B2が形成され、突起44B2が押当て面44B1に先行して表皮材10の一部の面上に押し当てられて、パッド20の発泡成形時の発泡原料の侵入を阻止する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮一体の発泡成形体の成形金型に関する。詳しくは、発泡体を発泡成形するキャビティ空間内に面状の表皮材をセットして、この表皮材に発泡体を一体的に接着させた状態に発泡成形する表皮一体の発泡成形体の成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、そのクッション体となるパッドが、表皮材と一体的に接着された状態となって発泡成形されたものが知られている。ここで、下記特許文献1には、上記パッドを表皮材と一体的に接着させた状態に発泡成形させる方法が開示されている。この開示では、ウレタン原料を発泡させてパッドを成形する際に、予め表皮材を成形型内にセットした状態でウレタン原料を発泡させることにより、成形されたパッドが表皮材と一体的に接着された状態となって形成される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−142244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記開示の従来技術において、パッドにシート内に設けられた空調装置から送られる風を表皮材の裏面へと導いてシート表面側へ通風させられるようにする通風路を形成する場合、型締めされる上型側に、通風路を形成するためのコア型を設け、このコア型の先端部面を表皮材に押し付けた状態にして型締めしてパッドを発泡成形することにより、パッドに表皮材の裏面まで連通する通風路を形成することができる。しかし、このような構成では、コア型が表皮材に強く押し付けられ過ぎると、表皮材の周りに浮き上がりが生じ、パッドと一体接着させた成形後の見栄えが悪くなってしまうことがある。また、コア型の押し付け力が弱いと、ウレタン原料がその発泡圧によってコア型と表皮材との間に入り込んでしまい、通風路の開口を塞いでしまうおそれがある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、表皮一体の発泡成形体の成形において、発泡体に通風路となる空間部を成形性良く形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の表皮一体の発泡成形体の成形金型は次の手段をとる。
第1の発明は、発泡体を発泡成形するキャビティ空間内に面状の表皮材をセットして、この表皮材に発泡体を一体的に接着させた状態に発泡成形する表皮一体の発泡成形体の成形金型である。この成形金型は、型締めにより上記キャビティ空間内にセットされた表皮材の一部の面上に押し当てられ、発泡体に上記表皮材の押し当てられた一部の面上に開口する形の空間部を形成するコア型を有する。コア型は、その表皮材の一部の面上に押し当てられる押当て面上に突起が形成され、突起が押当て面に先行して表皮材の一部の面上に押し当てられて、発泡体の発泡成形時の発泡原料の侵入を阻止する構成となっている。
【0006】
この第1の発明によれば、コア型が、突起によってその一部が先行して表皮材に押し当てられる構成となることで、コア型の表皮材への押し込み量を、押当て面全体が強く押し込まれ過ぎないように調整しやすくなる。詳しくは、コア型は、押当て面の表皮材への押し込み量が少なくても、これに先行して押し込まれる突起によって十分な押し込み量が確保されるため、押当て面全体が強く押し込まれ過ぎないように押し込み量を調整しやすくなる。したがって、表皮材のコア型によって押し付けられた周りに浮き上がりを生じさせにくくすることができ、成形後の見栄えが悪くならないように発泡体に空間部を成形性良く形成することができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、表皮材は、外皮となる外側表皮材の内面側にワディング材が一体的に積層された積層構造となっており、コア型は、その押当て面に形成された突起がワディング材に食い込んだ状態となって押し当てられる構成となっているものである。
【0008】
この第2の発明によれば、コア型の突起が、表皮材のワディング材に対して食い込んで押し当てられる構成となることで、表皮材の外皮となる外側表皮材を傷つけることなく発泡体の発泡成形をより見栄え良く行うことができる。また、外側表皮材の内面側にワディング材が積層されていることにより、このワディング材の弾発力によって、発泡体に空間部が形成されることによる表皮材の外側からの感触や見栄えの悪化を良好に防ぐことができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第2の発明において、ワディング材は、通気性の異なる2つの層が一体的に積層された2層構造となっており、通気性の低い側の層が、発泡体が発泡成形されるキャビティ空間内側に面し、通気性の高い側の層が、外側表皮材の内面側に面する構成となっているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、ワディング材を構成する通気性の低い側の層が、発泡体が発泡成形されるキャビティ空間内側に面して配されることにより、発泡体の発泡成形時に発泡原料がワディング材に含浸して硬化してしまわないようにその侵入を防ぐことができる。また、通気性の高い側の層が、外側表皮材の内面側に面して配されることにより、外側表皮材側の通気性を良好に維持することができる。
【0011】
第4の発明は、上述した第1から第3のいずれかの発明において、コア型に形成される突起が、コア型の押当て面上に内外に並んで突出する多重の環状形状に形成されているものである。
この第4の発明によれば、コア型に形成される突起が、コア型の押当て面上に内外に並ぶ多重の環状形状に形成されていることにより、各環状の突起が表皮材に押し当てられる干渉量にばらつきが生じても、その多重構造によって発泡原料の侵入をより好適に阻止できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の表皮一体の発泡成形体が適用されたシートクッションの外観平面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】表皮材を成形金型内にセットした状態を示した断面図である。
【図4】成形金型を型締めした状態を示した断面図である。
【図5】パッドを発泡成形した状態を示した断面図である。
【図6】成形後に上型を離型した状態を示した断面図である。
【図7】コア型の押し込み量が浅い状態を示した要部断面図である。
【図8】コア型に突起が形成されていない場合におけるコア型の押し込み量が深すぎる状態を示した要部断面図である。
【図9】コア型に突起が形成されていない場合におけるコア型の押し込み量が浅すぎる状態を示した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1の表皮一体の発泡成形体の成形金型の構成について、図1〜図9を用いて説明する。本実施例の表皮一体の発泡成形体の成形金型は、図1〜図2に示すように、車両用シートのシートクッション1のクッション体を構成するパッド20を発泡成形するための成形金型40(図5参照)として構成されている。ここで、パッド20が本発明の「発泡体」に相当する。詳しくは、この成形金型40は、図4〜図5に示すように、パッド20をその型内で発泡成形する際に、その型内に予め表皮材10を敷設した状態にセットしておくことにより、パッド20を表皮材10と一体的に接着させた状態に成形できるように構成されている。また、この成形金型40は、上記パッド20の発泡成形により、後述するコア型44によって、成形されたパッド20内に、後述するシートクッション1内に配設される空調装置(ベンチレーター30:図2参照)から送られる風を通すことのできる通風路21(本発明の「空間部」に相当する。)を形成することができるようになっている。以下、上記シートクッション1の基本構成、及び成形金型40の具体的な構成について説明する。
【0015】
シートクッション1は、図2に示すように、その骨格を成すクッションフレーム2と、クッション体を構成するパッド20と、パッド20の表面全体を覆った状態となって設けられる表皮材10と、から成る。クッションフレーム2は、図示しないシートクッション1の周縁部の骨格を成す枠状の本体部上に、パッド20を底面側から支えるSバネ或いは板状パネル等の支持構造が架け渡された構成となっている。パッド20は、その発泡原料となるウレタン樹脂を図5で後述する成形金型40のキャビティ空間45内に注入して発泡成形することにより、このキャビティ空間45の形状によって、シートクッション1の外観形状を形作る形状に形成されている。表皮材10は、図2に示すように、ファブリック材より成る面状の布カバー11と、布カバー11の裏面側(内面側)に位置しウレタン樹脂の発泡成形体より成る薄板状のワディング材12と、が一体的に積層された状態で設けられた積層構造となっている。ここで、布カバー11が本発明の「外側表皮材」に相当する。
【0016】
上記ワディング材12は、詳しくは、パッド20よりも通気性の低いウレタン樹脂の発泡成形体より成る低通気層12Bと、低通気層12Bよりも通気性の高いウレタン樹脂の発泡成形体より成る高通気層12Aと、が一体的に積層された2層構造から成り、低通気層12Bがパッド20に面し、高通気層12Aが布カバー11の裏面に面するように、それぞれ配置されている。上記ワディング材12は、図4〜図5に示すように、表皮材10が成形金型40の型内にセットされてパッド20が発泡成形される際には、低通気層12Bがキャビティ空間45内に面した状態となって配置される。これにより、ワディング材12は、図5に示すように、その低通気層12Bの裏面(図示上面)上でパッド20の発泡成形が行われるため、発泡原料がワディング材12(低通気層12B)に含浸して硬化する部分が生じず、パッド20を良好に発泡成形させられるようになっている。また、図2に示すように、ワディング材12は、その高通気層12Aが布カバー11に面して配されていることにより、布カバー11の裏面側に高通気層12Aが位置して表皮材10の表面部に良好な通気性を発揮させられるようになっている。
【0017】
ところで、図1〜図2に示すように、上記パッド20には、シートクッション1の下部に配設された空調装置(ベンチレーター30)から送られる風を、パッド20内でシート幅方向(図1の紙面左右方向)に広く分散させて配風し、これら配風した各風を表皮材10の裏面へと導いて表皮材10を通してシート表面側へと通風させられるようにする通風路21が形成されている。これら通風路21は、パッド20の中央底面部に形成された空洞が、パッド20の内部でシート幅方向に複数に分岐されてそれぞれがシート前方側へ延びるように形作られて形成されている。そして、図1に示すように、上記分岐されてシート前方側へ延びる各通風路21には、各通風路21を表皮材10の裏面部へと連通させる複数の円管状の開口部21Aが形成されている。そして、図2に示すように、上記各通風路21の上流側の吸込み口となるパッド20の底面中央部に形成された上記空洞の開口部には、ベンチレーター30の排気口に接続されたダクト33が接続されている。
【0018】
ここで、ベンチレーター30は、クッションフレーム2の底部に固定されて設けられており、その円盤状の本体容器の底面にシート下方向に開口する空気の取入口32が形成され、この取入口32から取り入れた空気を容器内に設けられたファン31の回転によってダクト33から外へ送り出す構成となっている。したがって、上記ダクト33から送り出された風は、パッド20内の通風路21を通ってシート幅方向に分散されて配風され、各通風路21に形成された各開口部21Aから表皮材10を通過してシートクッション2の表面側へと通風される。ここで、上記各通風路21は、図5に示すように、後述する成形金型40によってパッド20を各通風路21の溝を形作った状態に発泡成形させた後、図2に示すように、パッド20の底面部に別途下側から蓋をするように底部パッド22を組み付けることによって、パッド20の内部に空洞部として形成された構成となっている。以下、上記パッド20を表皮材10と一体的に発泡成形し、パッド20に各通風路21及び開口部21Aを形成する成形方法について説明する。
【0019】
先ず、図3〜図5を用いて、成形金型40の基本構成について説明する。成形金型40は、図3に示すように、表皮材10が面着された状態にセットされる下側の成形型を構成する下型41及びフロントフラップ型43と、これら下側の成形型に対して型締めされる上側の成形型を構成するコア型44及び上型42と、を有する。下型41は、その型面上に表皮材10がセットされ、図5に示すように、パッド20の発泡成形により、シートクッション1の大部分の表面形状を形作る型構成となっている。フロントフラップ型43は、ヒンジ43Aまわりの回転により型締め・型開きされる構成となっており、その型締めにより下型41と連続した型面を形成して、シートクッション1の前側部分の形状を形作る型構成となっている。コア型44は、ヒンジ44Aまわりの回転により型締め・型開きされる構成となっており、図4に示すように、その型締めにより、下型41上にセットされた表皮材10の面部上の部分部分を押圧した状態となる複数の円柱状の押当て部44Bを備えている。これらコア型44及び各押当て部44Bは、図5に示すように、それらの形状により、型締め後に発泡成形されるパッド20に対して上述した通風路21及び開口部21Aを形作るようになっている。
【0020】
ここで、図4に示すように、上述したコア型44の各押当て部44Bが押し当てられる表皮材10のワディング材12の低通気層12Bの各面部には、各押当て部44Bの断面形状よりもひとまわり小さな断面正円形状に貫通した貫通孔12B1が形成されている。そして、図3に示すように、上記低通気層12Bの各貫通孔12B1が形成された面部に押し当てられるコア型44の各押当て部44Bには、それらの底面側の平坦な押当て面44B1上から2重の環状形状に突出する突起44B2が形成されている。これら突起44B2は、それぞれ、上記低通気層12Bに形成された各貫通孔12B1の孔径よりもひとまわり大きな径をもつ円筒状に突出して形成されており、図4に示すように、コア型44が型締めされることにより、それぞれ、各貫通孔12B1を外周側から取り囲んだ状態となる位置でそれぞれ低通気層12Bの面上に押し込まれて食い込んだ状態となる構成となっている。上記各突起44B2は、詳しくは、各押当て部44Bの円板面状を成す各押当て面44B1の外周縁部の位置と、この外周縁部から半径方向内方側に一定の離間距離をおいた内周部側の位置とにおいて、それぞれ円筒状に突出した形に形成されている。より詳しくは、各突起44B2の断面形状は、それらの先端側に向かって先細となっていく断面三角状の形に突出して形成されている。このように、各突起44B2が先細の断面形状とされていることにより、低通気層12Bの局所的な部分だけを押し撓ませやすくなっており、低通気層12Bが広く面で押されて押し撓まされることがないようになっている。
【0021】
上記構成のコア型44は、上述したように各押当て部44Bに突起44B2が形成された構成となっていることにより、その型締めを行った際には、それらの押当て面44B1(円板面状の底面)が低通気層12Bの面上に押し当てられるのに先行して、各突起44B2が低通気層12Bの面上に押し当てられる。したがって、各押当て面44B1が低通気層12Bの面上に到達して押し当てられた状態となる時には、既に、各突起44B2が低通気層12B内に深くまで押し込まれた状態となるため、各押当て面44B1を低通気層12Bに対して深くまで押し込まなくても、各突起44B2によって低通気層12Bに対して十分な押し込み力を発揮させられるようになる。
【0022】
したがって、上記のように各押当て部44Bの押し込み量を深くまで設定しなくても十分な押し込み力を発揮させられることから、図7に示すように、各押当て部44Bの押し込み量が各押当て面44B1が低通気層12Bに当たる位置まで到達しない比較的浅いものであっても、パッド20の発泡成形時に、発泡原料を低通気層12Bの各貫通孔12B1内に侵入させない一定の押し込み力を各突起44B2によって発揮させることができる。詳しくは、各突起44B2は、各押当て部44Bにおいて内外に2重に設けられているため、パッド20の発泡成形時に、発泡原料がその発泡圧によって低通気層12Bを下方側へ押し撓ませながら外側の突起44B2を突破して内側に侵入してきても、内周側に設けられたもう1つの突起44B2によって、発泡原料の侵入を防ぐことができる。
【0023】
このように、各押当て部44Bに突起44B2を設けたことにより、各押当て部44Bの押し込み量を深くまで設定しなくても各押当て部44Bに十分な押し込み力を発揮させることができる。したがって、図8に示すように、コア型44の各押当て部44Bに上述した突起44B2が設けられていない構成の場合、各押当て部44Bを低通気層12Bへの十分な押し込み力を発揮させるために、それらの円板面状の押当て面44B1を低通気層12Bに深く押し込むことによって発生する、表皮材10の貫通孔12B1内での浮き上がりを、本実施例の構成では防止することができ、成形後に離型した際に、上記表皮材10の浮き上がりが表皮材10の弾性により表面側に押し出されて露呈する凸形状の発生を防止することができる。また、図9に示すように、同じくコア型44の各押当て部44Bに上述した突起44B2が設けられていない構成の場合、コア型44の各押当て面44B1を低通気層12Bに押し込む押し込み量が浅いために、各押当て部44Bの押し付け力が発泡原料の発泡圧に負けて、発泡原料が低通気層12Bの各貫通孔12B1内に侵入して各貫通孔12B1を塞いでしまうことを、本実施例の構成では防止することができる。
【0024】
続いて、本実施例の成形金型40の使用方法、すなわち、成形金型40によって、パッド20を表皮材10に一体的に接着させた状態に発泡成形する方法ついて説明する。先ず、図3に示すように、フロントフラップ型43を型締めして下型41と連続した型面を形成した後、この型面上に表皮材10を敷設して真空引きにより表皮材10を各型面に密着させた状態にセットする。次に、図4に示すように、コア型44を型締めし、コア型44の各押当て部44Bを表皮材10の低通気層12Bの面上に押し付けた状態にして、この型内に発泡原料を注入して上型42を型締めし、この型締めによって形成されたキャビティ空間45内で発泡原料を発泡させる。これにより、図5に示されるように、キャビティ空間45内に発泡原料が発泡充填されてパッド20が形成され、その発泡成形時における化学反応によって、パッド20が表皮材10と一体的に接着された状態となって形成される。これにより、図6に示すように、成形されたパッド20に、表皮材10の低通気層12Bの各貫通孔12B1と連通した形の開口部21Aと通風路21とが形成される。
【0025】
このように、本実施例の表皮一体の発泡成形体の成形金型(成形金型40)によれば、コア型44が、突起44B2によってその一部が先行して表皮材10に押し当てられる構成となることで、コア型44の表皮材10への押し込み量を、押当て面44B1全体が強く押し込まれ過ぎないように調整しやすくなる。詳しくは、コア型44は、押当て面44B1の表皮材10への押し込み量が少なくても、これに先行して押し込まれる突起44B2によって十分な押し込み量が確保されるため、押当て面44B1全体が強く押し込まれ過ぎないように押し込み量を調整しやすくなる。したがって、表皮材10のコア型44によって押し付けられた周り(貫通孔12B1内)に浮き上がりを生じさせにくくすることができ、成形後の見栄えが悪くならないようにパッド20(発泡体)に通風路21(空間部)を成形性良く形成することができる。
【0026】
また、コア型44の突起44B2が、表皮材10のワディング材12に対して食い込んで押し当てられる構成となることで、表皮材10の外皮となる布カバー11(外側表皮材)を傷つけることなくパッド20の発泡成形をより見栄え良く行うことができる。また、布カバー11の裏面側(内面側)にワディング材12が積層されていることにより、このワディング材12の弾発力によって、パッド20に通風路21が形成されることによる表皮材10の外側からの感触や見栄えの悪化を良好に防ぐことができる。
【0027】
また、ワディング材12を構成する通気性の低い側の層(低通気層12B)が、パッド20が発泡成形されるキャビティ空間45内側に面して配されることにより、パッド20の発泡成形時に発泡原料がワディング材12に含浸して硬化してしまわないようにその侵入を防ぐことができる。また、通気性の高い側の層(高通気層12A)が、布カバー11の内面側に面して配されることにより、布カバー11側の通気性を良好に維持することができる。
【0028】
また、コア型44に形成される突起44B2が、コア型44の押当て面44B1上に内外に並んで突出する多重の環状形状に形成されていることにより、各環状の突起44B2が表皮材10に押し当てられる干渉量にばらつきが生じても、その多重構造によって発泡原料の侵入をより好適に阻止できるようにすることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、上記実施例では、表皮材10として、外皮となる布カバー11(本発明の「外側表皮材」に相当する。)の内面側にワディング材12が一体的に積層された積層構造とされたものを例示したが、表皮材は単層構造で構成されるものであってもよい。また、上記実施例では、ワディング材12として、パッド20と面する側に低通気層12Bを、布カバー11と面する側に高通気層12Aを配した2層構造としたものを例示したが、これも単層構造とされたものであってもよい。なお、ワディング材が単層構造で構成される場合、ワディング材がパッドとは含浸しにくい低通気な構成とされる場合には、通風路(本発明の「空間部」に相当する。)から送られる風を表皮材の表面側に通過させにくくなるおそれがあるため、上記実施例で示した構成と同じように、ワディング材に通風路と連通するように貫通孔を設けるとよい。また、ワディング材が通気性の高い構成とされる場合には、上記実施例で示したような通風路と連通する貫通孔は必ずしも必要ではなくなるが、パッドの発泡成形時に発泡原料が含浸して硬化を伴いやすくなることに留意が必要である。なお、表皮材の外皮を構成する外側表皮材は、上記実施例で示した布カバー11のような通気性の高い材質のものを用いても良いが、本革のような通気性の低い材質のものを用いることもできる。但し、その場合には、表皮材の通気性を担保できるように、表皮材に細かな多数の孔を設けるなど、通気性を付与するための何らかの手段を設ける必要がある。
【0030】
また、上記実施例では、コア型に形成される突起の形状として、コア型の押当て面上に内外に並ぶ多重(2重)の環状形状(円筒形状)に形成されたものを例示したが、3重以上の多重形状とされるものであってもよく、また、最外周側の環状突起の突出量を最も大きくするなど、その突出量を突起ごとに異ならせるように構成してもよい。また、突起は、必ずしも環状に形成されていなくてもよく、必要となる箇所に断片的に突出して形成されるものであってもよい。また、環状に突出する形の場合、角筒状等の円筒状以外の形に突出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 シートクッション
2 クッションフレーム
10 表皮材
11 布カバー(外側表皮材)
12 ワディング材
12A 高通気層
12B 低通気層
12B1 貫通孔
20 パッド(発泡体)
21 通風路(空間部)
21A 開口部
22 底部パッド
30 ベンチレーター
31 ファン
32 取入口
33 ダクト
40 成形金型
41 下型
42 上型
43 フロントフラップ型
43A ヒンジ
44 コア型
44A ヒンジ
44B 押当て部
44B1 押当て面
44B2 突起
45 キャビティ空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を発泡成形するキャビティ空間内に面状の表皮材をセットして、該表皮材に前記発泡体を一体的に接着させた状態に発泡成形する表皮一体の発泡成形体の成形金型であって、
型締めにより前記キャビティ空間内にセットされた前記表皮材の一部の面上に押し当てられ、前記発泡体に前記表皮材の押し当てられた一部の面上に開口する形の空間部を形成するコア型を有し、
該コア型は、その前記表皮材の一部の面上に押し当てられる押当て面上に突起が形成され、該突起が前記押当て面に先行して前記表皮材の一部の面上に押し当てられて前記発泡体の発泡成形時の発泡原料の侵入を阻止する構成となっていることを特徴とする表皮一体の発泡成形体の成形金型。
【請求項2】
請求項1に記載の表皮一体の発泡成形体の成形金型であって、
前記表皮材は、外皮となる外側表皮材の内面側にワディング材が一体的に積層された積層構造となっており、前記コア型は、その前記押当て面に形成された前記突起が前記ワディング材に食い込んだ状態となって押し当てられる構成であることを特徴とする表皮一体の発泡成形体の成形金型。
【請求項3】
請求項2に記載の表皮一体の発泡成形体の成形金型であって、
前記ワディング材は、通気性の異なる2つの層が一体的に積層された2層構造となっており、通気性の低い側の層が前記発泡体が発泡成形される前記キャビティ空間内側に面し、通気性の高い側の層が前記外側表皮材の内面側に面する構成であることを特徴とする表皮一体の発泡成形体の成形金型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171262(P2012−171262A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36715(P2011−36715)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】