説明

表示パネル、表示パネルの製造方法及び表示装置

【課題】反射率が高く、コントラストの優れた表示パネルの提供。
【解決手段】溶媒中に少なくとも一種の白色又は着色粒子を分散した分散液5を封入したセル3が連続して形成されているシート2からなる表示パネル1であって、セル3間の隔壁6の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネル、表示パネルの製造に適したハニカム構造シートの製造方法、表示パネルの製造方法、表示装置及び画像表示用電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や静止画、動画等の所謂画像の表示用端末としては、CRTや液晶ディスプレイが広く用いられている。これらはデジタルデータを瞬時に表示し、書き換えることができるが、装置を手軽に持ち歩くことは容易ではない。また、自発光デバイスであるため長時間の作業では眼が疲労することや、電源をオフにすると表示が維持されないなどの難点がある。一方、文字や静止画を書類などとして配布や保存するときは、プリンタ等にて紙媒体に記録されている。この紙媒体は、いわゆるハードコピーとして、広く使用されている。ハードコピーは多重散乱による反射を見ることになるので、自発光デバイスより視認性がよく、疲れにくい。また、軽量でハンドリングに優れていることから、自由な姿勢で読むことができる。しかし、ハードコピーは使用された後は廃棄される。一部はリサイクルされるが、そのリサイクルには、多くの労力と費用を要するなど省資源の点からは課題がある。一方、情報機器の発達に伴い、書類作成などの情報の処理をコンピュータ上で行うようになり、表示用端末上で文章を読む機会が大幅に増えている。
【0003】
このような状況において、ディスプレイとハードコピーの両方の長所を持った、書き換えが可能で記録性がある目に優しい、ペーパーライクな表示媒体へのニーズが高まっている。最近は、高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等を用いた表示媒体が、反射型で明るい表示ができ、かつメモリー性のある表示媒体として注目されている。中でも電気泳動素子を用いた表示媒体は、表示品質、表示動作時の消費電力の点で優れており、例えば、特許文献1などにその原理的な発明が開示されている。
【0004】
代表的な電気泳動方式の表示媒体では、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する電気泳動粒子を分散させた分散液を封入してある表示パネルを、一組の透明電極で挟んで電圧を印加することにより表示機能を発揮している。電気泳動粒子は、分散媒中で粒子表面に電荷を帯びており、一方の透明電極側に電気泳動粒子の電荷を吸引する電圧を印加すると、電気泳動粒子がその透明電極側に吸引され集積して電気泳動粒子の色が観測され、電気泳動粒子の電荷と反発する電圧を与えた場合には、電気泳動粒子は反対側の透明電極側に移動するため分散媒の色が観測される。この色の変化を利用することにより表示を行うことができる。
【0005】
このような電気泳動方式の表示媒体を用いた電気泳動表示素子は、ひとつ一つの画像表示素子であって、画像表示装置とするためには、微細な領域に配置された多くの電気泳動表示素子の集合体が必要となる。そこで、これらの素子を配置するための構造物が必要になる。複数の中空構造の集合体であるハニカム構造のシートは、このような微細な素子を区分して高密度に配置するのに好適な画像表示素子用構造体として知られている。それぞれのハニカムの中に電気泳動粒子と分散媒を配置して一つずつの画像素子とし、全体として画像表示装置とすることができる。
【0006】
例えば、特許文献2には、電気泳動ディスプレイとその製造方法が開示されている。この電気泳動ディスプレイは、マイクロエンボス加工または画像露光により形成されたカップ状の凹部が複数あり、凹部に溶媒及び溶媒中に分散した帯電色素粒子の分散物が充填され、分散物よりも小さい比重を有し、分散物と非混和性であるシーリング組成物のオーバーコート層を硬化させることによって形成し、分散物を凹部内に閉じ込めるように封止されている。
【0007】
マイクロエンボス加工の場合、予めパターンを設けた雄型によって導体フィルム上にコーティングした熱可塑性物または熱硬化物の前駆体層をエンボス加工する。その後、前駆体層が放射線、冷却、溶媒蒸発または他の手段によって硬化されて型から取り出される。この方法で壁の厚みを薄くしようとすると、雄型の凹部(凸部と凸部の間)が非常に薄くすることになる。
【0008】
また、画像露光による構造体形成の場合には、放射線硬化性層をコーティングした導電性フィルムを画像露光し、その後、露光領域が硬くなってから非露光領域を除去する。この方法の場合、マスクを通して放射線を照射したり、細く絞った放射線で直接放射線硬化性層にパターンを描画したりする。
【0009】
ハニカム構造体の製法としては、特許文献3に記載のハニカム構造物を有する生分解性フィルムからなる癒着防止材の製法が開示されている。このハニカム構造物は、生分解ポリマーとリン系界面活性剤にて形成され、界面活性剤の効果にてハニカム構造物の生体への癒着を防止する機能を持っている。また、このハニカム構造物の膜厚は、およそ13μmである。
【特許文献1】特開2004−189487号公報
【特許文献2】特許第3680996号公報
【特許文献3】国際公開2004/148680号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
画像表示用構造体(以下、ハニカム構造シートともいう。)を電気泳動ディスプレイなどの画像表示装置用の表示パネルとして応用する際、高反射率、高コントラストの表示画像を得るためには、ハニカム構造シートのセルの開口率が大きいこと、すなわち、表示パネルのセル構造における隔壁の厚さが薄いことが好適である。また、画像表示装置の表示部パネルとしては、各表示素子の形状や表示素子となるセルの隔壁の厚さが均一であることが求められる。
【0011】
特許文献2に記載のマイクロエンボス加工法で製造したハニカム構造シートの場合、隔壁の厚さを薄くしようとすると、雄型の凹部(凸部と凸部の間)が非常に薄くなり、前駆体が凹部に十分入り込まず型形状を忠実に転写できなかったり、前駆体の強度が足りず、離型する際に型の凹部に前駆体の一部が残ってしまったりして、壁の厚さの薄い中空構造体を作ることが難しい。また、加熱樹脂を用いているので硬化のための冷却時間が必要で、サイクルタイムが長くなるという問題があった。ハニカム構造シートの各セルを仕切っている壁の厚みは特に記載されていないが、雄型への転写と剥離という工程を考えれば、隔壁の厚さやアスペクト比には限界がある。例えば、発明者等の検討によれば、型形状を転写するマイクロエンボス加工では、隔壁厚みが10μm以下の薄肉で、画像表示用の表示パネルとして好適な高さである50ミクロン以上のマイクロエンボス構造形成は、困難であると考えられる。
【0012】
画像露光による構造体形成法で製造したハニカム構造シートの場合には、マスクを通して放射線を照射したり、細く絞った放射線で直接放射線硬化性層にパターンを描画したりするが、放射線硬化性層内での放射光の回り込み、散乱等で高アスペクト比の壁面を作るのは難しい。また、フォトリソグラフィーを利用する方法は、工程が多くなるためコストが高くなり易く、特に面積が大きなハニカム構造シートの形成には不向きである。
【0013】
このような問題点に鑑み、本発明の目的は、反射率が高く、コントラストの優れた表示パネル及びその製造方法、並びにこの表示パネル用のハニカム構造シートの製造方法、この表示パネルを用いた表示装置及びこの表示装置を備えた画像表示用電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下に、本発明の課題を解決するための手段を記載する。
本発明は、溶媒中に少なくとも一種の白色又は着色粒子を分散した分散液を封入したセルが連続して形成されているシートからなる表示パネルであって、セル間の隔壁の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする表示パネルを含む。
【0015】
本発明は、前記セルのシート表面との隔壁の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする前記表示パネルを含む。
【0016】
本発明は、前記セルにおけるセル間の隔壁とシート表面との隔壁の交叉部は、曲率半径0.1〜50μmの曲面で形成されていることを特徴とする前記表示パネルを含む。
【0017】
本発明は、前記セル間の隔壁は、水溶性樹脂又は紫外線照射により硬化した樹脂からなることを特徴とする前記表示パネルを含む。
【0018】
本発明は、前記セルにおける一方のシート表面との隔壁は、厚さ0.1〜10μmの樹脂で形成されていることを特徴とする前記表示パネルを含む。
【0019】
本発明は、前記セルにおける両方のシート表面との隔壁は、厚さ0.1〜10μmの樹脂で形成されていることを特徴とする前記表示パネルを含む。
【0020】
本発明は、所定の間隔で配置された複数の凹部を備えた基板表面を、変形可能な被覆材料で前記凹部に空隙を残すように覆う被覆工程と、
前記空隙中の気体が膨張して基板表面を被覆した被覆材料に前記複数の凹部に対応したセルを形成してハニカム構造のシートとする発泡工程と、
前記ハニカム構造のシートを硬化させる硬化工程と、
前記硬化したハニカム構造のシートを基板表面から剥離する剥離工程と、
剥離したハニカム構造のシートのセルの開口部の大きさを調整する調製工程とを有することを特徴とするハニカム構造シートの製造方法を含む。
【0021】
本発明は、前記調製工程と同時に又は調製工程に続いて、ハニカム構造のシートのセルとシート表面との隔壁を除去してハニカム構造のシートの両側にセルの開口部を形成する開口部形成工程を有することを特徴とする前記ハニカム構造シートの製造方法を含む。
【0022】
本発明は、前記調製工程及び/又は開口部形成工程は、硬化したハニカム構造のシートを可溶な溶剤によりハニカム構造のシートの一部を溶解する工程を含むことを特徴とする前記ハニカム構造シートの製造方法を含む。
【0023】
本発明は、前記硬化したハニカム構造のシートの表面に、シートを溶解しない揮発性材料を塗布し該揮発性材料を気化させながら、シートを可溶な溶剤の気体を結露させる工程を含むことを特徴とする前記ハニカム構造シートの製造方法を含む。
【0024】
本発明は、前記変形可能な被覆材料は、乾燥により硬化する水に溶解した樹脂又は紫外線照射により硬化する紫外線硬化樹脂であることを特徴とする前記ハニカム構造シートの製造方法を含む。
【0025】
本発明は、前記セルが連続して形成されているシートは、前記ハニカム構造シートの製造方法により製造されたハニカム構造のシートであることを特徴とする前記表示パネルを含む。
【0026】
本発明は、シート面にそって一方が開口しており、隔壁の厚さが0.01〜10μmであるセルが連続して形成されているハニカム構造のシートの各セルに、溶媒中に少なくとも一種の白色又は着色粒子を分散した分散液を注入し、前記分散液を注入したシートの開口部を樹脂で封止したことを特徴とする表示パネルの製造方法を含む。
【0027】
本発明は、前記セルのシート表面との隔壁の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする前記表示パネルの製造方法を含む。
【0028】
本発明は、前記セルにおけるセル間の隔壁とシート表面との隔壁の交叉部は、曲率半径0.1〜50μmの曲面で形成されていることを特徴とする前記表示パネルの製造方法を含む。
【0029】
本発明は、前記セル間の隔壁は、水溶性樹脂又は紫外線照射により硬化した樹脂からなることを特徴とする前記表示パネルの製造方法を含む。
【0030】
本発明は、前記セルにおける一方又は両方のシート表面に臨む隔壁は、厚さ0.1〜10μmの樹脂で形成されていることを特徴とする前記表示パネルの製造方法を含む。
【0031】
本発明は、前記表示パネルの両面に電圧を印加する電極層を備えたことを特徴とする表示装置を含む。
【0032】
本発明は、前記電極層のうち、少なくとも一方の電極層は透明電極層であることを特徴とする前記表示装置を含む。
【0033】
本発明は、前記表示装置を備えたことを特徴とする、電子ペーパー、電子ブック、電子ノート、電子表示時刻表、電子表示広告板、電子表示案内板、及び電子表示地図を含む画像表示用電子機器を含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、反射率が高く、コントラストの優れた表示パネル及びその製造方法、並びにこの表示パネル用のハニカム構造シートの製造方法、この表示パネルを用いた表示装置及びこの表示装置を備えた画像表示用電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の表示パネルは、溶媒中に少なくとも一種の白色又は着色粒子を分散した分散液を封入したセルが連続して形成されているシートからなる表示パネルであって、セル間の隔壁の厚さが0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。本発明の表示パネルの一例を図1に断面図として示す。図1に示す表示パネル1は、シート面に沿って複数のセル3が連続して並んだハニカム構造シート2の各セル3中に表示機能を持つ微細粒子を含む分散液5が封入されており、ハニカム構造シート2の片側は各セル3を封止する封止樹脂4で覆われた構造になっている。ここで、ハニカム構造シート2中のセル間の隔壁6の厚さが0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。ハニカム構造シート2中のセル間の隔壁6の厚さは、図1で示すように、各セルとセルとを区切る隔壁である。
【0036】
なお、図1,図2には、表示パネルの断面図を示しているが、この表示パネルを図の上方又下方から見たときのハニカム構造シート中のセルの配置は、例えば、同じ大きさ、形状のセルが正方格子状又は六方最密状に配置していることが好ましい。しかし、本発明の表示パネルは、このような配置に限定されるものではなく、セルの配置や大きさが不均一の場合も含む。
【0037】
図2には、本発明の表示パネルの他の例を示している。図2に示す表示パネルは、ハニカム構造シート2のセル3の両側のシート面が開口しており、封止樹脂7のフィルムがその両側の開口部を封止している構造である。この場合もセル間の隔壁6は、同じように厚さが0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。
【0038】
ハニカム構造シート2中のセル間の隔壁6の厚さが10μm以下、好ましくは5μm以下と薄くすることにより、表示素子となるセル3の部分と、表示機能に寄与しないセル間の隔壁6の部分との比率を考慮すると、セル3の部分の比率が大きくなる。表示機能を持つセル3の部分が多くなれば、表示パネルとしては表示装置としたときの反射率やコントラストといった表示特性が向上する。一方、ハニカム構造シート2中のセル間の隔壁6の厚さが0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上とすることにより、セルの強度、言い換えれば表示パネルの強度が十分に保たれる。また、ハニカム構造シートの製造上もにおいても、均質でセル間の隔壁の厚さのむらのないものが製造しやすい。
【0039】
さらに、本発明の表示パネルは、ハニカム構造シート2中のセルとシート表面との隔壁の厚さが0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmであることが好まし。セルとシート表面との隔壁の厚さは、図1におけるセルとシート表面との隔壁7,及び開口部側のセルとシート表面との隔壁8である。また、図2においては両側の開口部側のセルとシート表面との隔壁8である。この場合、それぞれ封止樹脂の4,4a,4bの厚さは含んでいない。
【0040】
ハニカム構造シート2中のセルとシート表面との隔壁7,8は、表示装置としたときに光の透過面になり、電圧印加の際の電極間の中間層となるためできるだけ薄いことが好ましい。セルとシート表面との隔壁7,8の厚さを10μm以下、好ましくは5μm以下と薄くすることにより、表示パネル1としては表示装置としたときの反射率やコントラストといった表示特性が向上する。また、低電圧を印加するだけで表示機能を十分に発揮する表示装置を製造することができる。一方、ハニカム構造シート2中のセル間の隔壁7,8の厚さが0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上とすることにより、セル3の強度、言い換えれば表示パネル1の強度が十分に保たれる。また、ハニカム構造シート2の製造上においても、セルとシート表面との隔壁7,8の厚さのむらのないものが製造しやすい。
【0041】
従来、マイクロエンボス加工や画像露光によりハニカム構造シートを製造していたが、マイクロエンボス加工の場合、フィルムに型を押し当て、型形状を転写することでセル構造を形成していた。この場合、フィルム厚みは100μm程度が下限であり、それにセル構造となる凹部を形成するので、凹部の側壁であるセル間の隔壁や底部の隔壁の厚さを10μm以下にすることは難しかった。また、画像露光の場合、フィルム上にレジスト膜を形成し、レジストに凹部を形成する。そのため、凹部のセル間の隔壁や底部の隔壁の厚さはフィルムの厚さとなり、10μm以下のフィルムを製造したり取り扱ったりすることは難しいため、凹部の底部の厚さを10μm以下にすることは難しかった。本発明におけるハニカム構造シート2は、後述する製造方法により、このような薄い隔壁とすることが可能となっている。
【0042】
本発明の表示パネル1は、ハニカム構造シート2のセル間の隔壁6とセルとシート表面との隔壁7,8との交叉部は、曲率半径0.1〜50μmの曲面で形成されていることが好ましい。図1又は図2に示した表示パネル1のように、本発明の表示パネルの各セル3は、直方体(図1,2の断面図においては長方形)に近い形をしている。そして、セル間の隔壁6とセルとシート表面との隔壁7,8が交叉する交叉部9は、図1,2に示した断面図において、曲率半径0.1〜50μmの曲面で形成されていることが好ましい。
【0043】
このようなセル3を備えた表示パネル1を電気泳動表示パネル等に使用すると、表示パネル1の強度が向上する。特に、表示パネル1に曲げ応力をかけて使用する場合でも、十分な強度を得ることができる。ハニカム構造シート2としては、隔壁と隔壁の交叉部分9を肉厚にすることにより強度を上げることができる。交叉部9の曲率半径を0.1〜50μmとしたが、さらに好ましくは1〜10μm程度とすることが望ましい。1μm以下では軽く表示パネルを反らせる程度の強度はあるが、表示パネルを丸めたりするには十分な強度でない。10μm以上だと表示特性、特に反射率の面で特性が落ちてくることがある。
【0044】
本発明の表示パネルにおいて、セル間の隔壁すなわちハニカム構造シート2は、水溶性樹脂又は紫外線照射により硬化した樹脂からなることが好ましい。水溶性樹脂として、ポリウレタン、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどがあり、紫外線硬化樹脂として、アルコキシアクリレート、エポキシアクリレートなどがある。このような樹脂は、後述する本発明のハニカム構造シートの製造方法に適した樹脂原料から得られた樹脂である。
【0045】
さらに、ハニカム構造シート2の一方に開口部がある図1の場合は、セルの開口部は封止樹脂の層4で封止されており、封止樹脂の層4の厚さが0.1〜10μmであることが好ましい。また、ハニカム構造シート2の両側に開口部がある図2の場合は、両側のセルの開口部は封止樹脂の層4a,4bで封止されており、封止樹脂の層4a,4bの厚さが両側とも0.1〜10μmであることが好ましい。
【0046】
ハニカム構造シート2中のセルの封止樹脂の層4,4a,4bは、表示装置としたときに光の透過面になり、電圧印加の際の電極間の中間の層となるため、できるだけ薄いことが好ましい。封止樹脂の層4,4a,4bの厚さを10μm以下、好ましくは5μm以下と薄くすることにより、表示パネル1としては表示装置としたときの反射率やコントラストといった表示特性が向上する。また、低電圧を印加するだけで表示機能を十分に発揮する表示装置を製造することができる。一方、封止樹脂の層4,4a,4bの厚さが0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上とすることにより、セルの強度、言い換えれば表示パネルの強度が十分に保たれる。また、表示パネル1の製造上においても、均質で厚さのむらのない封止樹脂の層4,4a,4bが形成しやすい。
【0047】
図3には、本発明の表示装置の断面図を示した。この表示装置は、図1に示した表示パネルを使用しており、図3において、PET樹脂層などの上部から保護膜13、ITO電極などの透明電極層14、接着剤層15、封止膜16、セル12中に分散液を封入されたハニカム構造シート17、ハニカム構造シート17と電極19とを接着する接着層18,及び電極19からなっている。セル12中の分散液は、例えば白色の電気泳動粒子と青色の粒子分散用の非極性溶媒の組み合わせなどである。ここで、封止膜16,セル12中に分散液を封入されたハニカム構造シート17が、すでに説明した図1に示した本発明の表示パネルからなっている。図1に示した本発明の表示パネルを使用した場合は、ハニカム構造シート17と接着層18の間にも封止膜が形成されている。この形態の表示装置においては、電極19はアルミ箔や銀箔、金箔、銅箔などの不透明素材を用いてもよいが、少なくとも保護膜13、透明電極層14、接着剤層15、封止膜16は透明素材を用いる。これらの層は、表示装置として使用する際に光を透過させる必要があるからである。
【0048】
この表示装置11は、透明電極層14と電極19との間に電圧を印加することにより、各セル中の分散媒(例えば青色)中の電気泳動粒子(例えば白色粒子)を透明電極層14側(セル12上部)に引き寄せたり、電極19側(セル12下部)に引き寄せたりして透明電極14側(上部)から白色又は青色を観察させる。この場合、セル12ごとに印加電圧を制御すれば、それぞれのセルごとに観察する色が制御できる。この表示装置11は、本発明の表示パネルを使用しているので、光の反射率やコントラストといった表示特性が優れた表示装置とすることができる。
【0049】
本発明の表示装置を組み込んだ画像表示用電子機器、例えば、従来からの画像表示装置、ディスプレイは勿論、電子ペーパー、電子ブック、電子ノート、電子手帳、電子表示時刻表、電子表示広告板、電子表示案内板、及び電子表示地図などの具体的な画像表示装置が製造できる。
【0050】
本発明のハニカム構造シートの製造方法について説明する。本発明におけるハニカム構造シートの製造方法の概略を図4に示す。図4(a)は、本発明のハニカム構造シート製造用の基板の断面図である。この基板22は、表面に開口部を持つ複数の中空部、すなわち凹部23を備えている。基板22の凹部23の開口が狭くなっているが、ハニカム構造シートを形成する材料を付着させるのに好都合である。
【0051】
なお、図4では凹部23を六方最密充填構造に配置したが、凹部23を正方格子状に配置してもよい。また、基板22は、剛性のある金属やガラス、セラミックスなどの無機物、又はハニカム構造シートを形成する材料を変形させる際に変形しないような樹脂などの有機物やその複合材料で形成してもよい。例えば、基板材料としてニッケル、シリコン、ガラス上にレジスト剤パターンを形成したもの、銅張り板(銅/ポリイミド積層基板)、ガラス、その他の樹脂材(ポリイミド、PTE、アクリル等)が挙げられる。具体例としては、電析によるニッケル型、ガラス上にレジスト剤パターンを形成したもの、銅張り板(銅/ポリイミド積層基板)、エッチングしたガラス、シリコンなどが挙げられる。
【0052】
図4(b)は、基板表面を本発明のハニカム構造シート製造用の変形可能な樹脂21で覆った状態の断面図である。このような変形可能な樹脂21の層が形成された基板を真空チャンバ内に導入し、減圧状態にすると、凹部23に保持されている空気が膨張する。このとき、凹部23は、変形可能な樹脂21で密閉されているので、図4(c)に示すように、空気の膨張により変形可能な樹脂21の層が変形して中空の空間が形成される。そして、真空チャンバ内の減圧とを調整することにより、基板20表面には、非常に隔壁の薄い連続したセル構造を備えたハニカム構造シート27が形成される。また、ハニカム構造シート27の各セルの深さも、減圧する真空度により決定される。すなわち、高真空にすると凹部の空気が膨張する量が大きいので、各セルの深さは深くなる。低真空だと膨張量が小さいので、各セルの深さは浅くなる。高真空の場合膨張量が大きいので、変形可能な樹脂21の上部表面(天井)が薄くなり、最終的に天井に開口が形成される。このようにして、片側に開口部を有するハニカム構造シート27と、両面に開口部を有するハニカム構造シート27が形成される。
【0053】
最後に、図4(d)に示すように、基板20から変形した樹脂のハニカム構造シート27を硬化させてから、基板20から剥離し、ハニカム構造シート27が得られる。凹部23が基板上に正方格子状に配置されていればセルが正方格子に配置されたハニカム構造シート27となり、六方最密状に配置されていればセルは六方最密に配置されたハニカム構造シート27となる。変形した樹脂の硬化に当たっては、乾燥により硬化する樹脂材料、例えばゼラチンやポリウレタン樹脂を用いたときは、ハニカム構造シート27を乾燥してやればよい。また、紫外線照射により硬化する樹脂を用いてハニカム構造シート27を形成したときは、硬化前のハニカム構造シート27に紫外線を照射して硬化させればよい。
【0054】
これらのハニカム構造シートの製造方法において、変形可能な材料としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、プルラン、アルブミン、CMC,ポリアクリル酸、セルロース、デンプン、ゼラチン、アルギン酸塩、グアーガム、アラビアガム、カラーギナン、トラガント、ペクチン、デキストリン、カゼイン、コラーゲン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、酸化エチレン、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム、サイクロデキストリン、タンニン酸、カラヤガム、ジュランガム、ファーセレラン、トラントガム、レシチン、キチンキトサン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、リグニンスルホン酸、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンイミン、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンオキサイド、ポリアリルアミン、ウレタンアクリル系UV硬化樹脂、エポキシアクリル系UV硬化樹脂、アルコキシアクリル系UV硬化樹脂、などが挙げられる。具体的には、例えばポリウレタンであれば、ハイドランWLS−201(大日本インキ化学工業製)、水溶性樹脂である。ゼラチンでは、MC−243(ゼライス株式会社製)を使用し、5〜30wt%程度に水に溶解させ使用できる。ポリビニルアルコールでは、ポバールPVA117(クラレ製)を使用でき、例えばポリビニルアルコールを5〜30wt%程度に水に溶解させて使用すればよい。
【0055】
本発明で使用するハニカム構造シートの形状は、図4(c)で示すように、壁面および天井部の厚さが変形性を有する樹脂の表面張力により形成されているので、従来の製造方法におけるマイクロエンボス加工または画像露光に対し、壁面および天井部の厚さを薄くすることが可能である。また、開口部が狭くなっている形状、及び壁面と開口部がある壁面あるいはその対向する壁面との交差部がある曲率半径を有し太くなる形状が容易に形成できる。
【0056】
更に、すでに説明した本発明表示パネルのセルにおける各部分の厚さや曲率半径は、変形可能な樹脂を基板上に形成するときの厚さ、ハニカム構造シートを形成するときの減圧条件(気圧)、変形可能な樹脂の材質よって制御することが可能である。変形可能な樹脂を基板上に形成するときの厚さが薄いほど各部分の厚さが薄く、曲率半径を小さくすることができる。減圧の気圧が低いほど各部分の隔壁の厚さが薄く、曲率半径を小さくすることができる。変形可能な樹脂の材質の粘度が小さいほど各部分の厚さが薄く、曲率半径を小さくすることができる。また、基板上に形成された凹部の体積や凹部間距離には最適値があるので、変形可能な樹脂の材質や減圧の程度などを調整して所望のハニカム構造シートを形成することができる。
【0057】
ハニカム構造シートの製造方法をいくつかの実施形態を示して説明する。
(実施形態1)
実施形態1のハニカム構造シートの製造方法を図5に示した。図5(a)は、微小な複数の凹部を設けた剛性のある基板20上にハニカム構造シートの原料となる紫外線で硬化する変形可能な樹脂21を塗布し、その上に紫外線を透過する押圧板28を密着させた断面図である。この場合、基板20と変形可能な樹脂21と、及び変形可能な樹脂21と押圧板28とはしっかり密着させる。ただし、基板20表面に形成されている凹部23中には空間が残っていることが重要である。
【0058】
この状態から、図5(b)に示すように、押圧板28を基板20から引き上げるようにして離間させる。そうすると、基板20と変形可能な樹脂21と、及び変形可能な樹脂21と押圧板28とはしっかり密着しているので、剥離しないが、基板20表面の凹部に残っていた空気が膨張して変形可能な樹脂21の内部に空隙を形成する。この空隙はそれぞれの凹部23に対応してセル構造となり、変形可能な樹脂21のシート全体としては、ハニカム構造シートを形成する。
【0059】
この状態ではセル内は減圧になっているので、図5(c)に示すように、押圧板28の上部から紫外線を照射して変形可能な樹脂21を紫外線硬化させる。変形可能な樹脂21が硬化してしまえば、ハニカム構造シートは変形しなくなるので、押圧板28及び基板20から剥離して完成したハニカム構造シート27とすることができる。
【0060】
(実施形態2)
実施形態2のハニカム構造シートの製造方法を図6に示した。図6(a)は、微小な複数の凹部を設けた剛性のある基板20上にハニカム構造シートの原料となる乾燥により硬化する変形可能な樹脂21を塗布した。この場合、基板20と変形可能な樹脂21とはしっかり密着させる。ただし、基板20表面に形成されている凹部23中には空間が残っていることが重要である。
【0061】
この状態から、図6(b)に示すように、基板20と変形可能な樹脂21とを減圧環境下に導入する。そうすると、基板20と変形可能な樹脂21とはしっかり密着しているので、剥離しないが、基板20表面の凹部に残っていた空気が膨張して変形可能な樹脂21の内部に空隙を形成する。この空隙はそれぞれの凹部23に対応してセル構造となり、変形可能な樹脂21のシート全体としては、ハニカム構造シートを形成する。
【0062】
この状態ではセル内は減圧になっているので、図6(c)に示すように、そのまま減圧にしておき、又は減圧状態を保ったまま乾燥気流を導入して変形可能な樹脂21を乾燥硬化させる。変形可能な樹脂21が硬化してしまえば、ハニカム構造シートは変形しなくなるので、常圧に戻して、基板20から剥離すれば、ハニカム構造シート27とすることができる。
【0063】
次に、上述の本発明のハニカム構造シートの製造方法により得られたハニカム構造シートを用いた本発明の表示パネルの製造方法について説明する。本発明の表示パネルの製造方法を図7に例示した。図7(a),(b)のハニカム構造シートの製造方法は、実施形態2図示したハニカム構造シート27の製造方法と同様である。すなわち、図7(a)は、微小な複数の凹部を設けた剛性のある基板20上にハニカム構造シートの原料となる乾燥により硬化する変形可能な樹脂21を塗布した。この場合、変形可能な樹脂21としてゼラチン水溶液を用いた。基板20と変形可能な樹脂21とはしっかり密着させる。ただし、基板20表面に形成されている凹部23中には空間が残っていることが重要である。
【0064】
この状態から、図7(b)に示すように、基板20と変形可能な樹脂21とを減圧環境下に導入する。そうすると、基板20と変形可能な樹脂21とはしっかり密着しているので、剥離しないが、基板20表面の凹部に残っていた空気が膨張して変形可能な樹脂21の内部に空隙25を形成する。この空隙はそれぞれの凹部23に対応してセル構造となり、変形可能な樹脂21のシート全体としては、ハニカム構造シートを形成する。この状態ではセル内は減圧になっているので、そのまま減圧にしておき、又は減圧状態を保ったまま乾燥気流を導入して変形可能な樹脂21を乾燥硬化させる。ゼラチンが乾燥してゲル化し、硬化してしまえば、ハニカム構造シートは変形しなくなるので、常圧に戻してもハニカム構造シート27が破壊することはない。この場合、図7(b)にはセル25の上部が開口している状態を示しているが、セル25の上部は開口していても開口していなくてもよい。
【0065】
この状態から、図7(c)に示すように、基板20に付いたままのハニカム構造シート27の表面に封止材となるべき樹脂製の剥離シート29を付着させる。そして、図7(d)に示すように、基板20からハニカム構造シート27を剥離シート29とともに剥離する。
【0066】
剥離シート29とともに剥離したハニカム構造シート27は、図7(e)に示すように、上下ひっくり返して、基板20に付着していた面である開口部側を上にして、それぞれのセルに表示用の電気泳動分散液30などの表示用の材料を注入し、開口部を樹脂フィルムなどで封止してやればよい。図12(c)に封止材料36での封止の断面図を示した。
【0067】
基板20から剥離したハニカム構造シート27は、基板20や変形可能な樹脂21の性質などの製造条件によっては、開口部が十分開口していない場合がある。そのような場合は、分散液30が十分注入できなかったり、できあがった表示パネルの反射率やコントラストといった表示特性を劣化させたりする。そこで、セルの開口部の大きさを調整する方法について説明する。図8は、セル開口部の大きさを調節する方法を示した模式図である。
【0068】
図8は、図7(d)に示した剥離シート29とともに剥離したハニカム構造シート27を、密閉した開口部調整容器31に導入して、セル25の開口部26にハニカム構造シート27を形成している樹脂を可溶な溶媒蒸気に暴露する。この場合であれば、ハニカム構造シート27を形成している樹脂がゼラチンであるので、水蒸気に暴露をすればよい。ここで、ハニカム構造シート27のセル25の開口部26は、水蒸気が結露するような温度にしておくことが好ましい。樹脂をかような溶媒は通常液体状態で樹脂を溶解するからである。図9に、溶媒蒸気が、セルの隔壁に結露して液体となり、樹脂の隔壁を溶解する様子を示した。図9(a)は、樹脂に対して不溶性な揮発性材料34を表面に塗布したハニカム構造シートが、樹脂に対して可溶な可溶性溶剤35の蒸気雰囲気中に配置されている図である。図9(b)は、シート表面から揮発性材料34が気化して、可溶性溶剤35の蒸気がシートの表面で結露し、結露した可溶性溶剤35はシート表面の隔壁の薄い部分を溶解して飽和し、セル間の隔壁に近い部分に凝集する。このようにして、シート表面のセルの開口部を形成したり拡大したりすることができる。
【0069】
図10には、実際ゼラチンにより形成させたハニカム構造シートのセルの開口部を水蒸気の暴露によって拡大した写真を示した。暴露した時間の経過によって開口部の大きさが、当初直径40μmであったものが40秒後にはφ80μmまで拡大している。
【0070】
図11は、実際に開口部を形成した際の開口部調整装置の簡略図を示した。溶剤加熱装置33から発生した溶剤蒸気35は、ハニカム構造シート27の表面で結露しハニカム構造シートの薄い隔壁を開口させたり、開口部を拡大させたりする。なお、ハニカム構造シートは、温度調節装置37により溶剤が適当に結露する程度に温度調節されている。
【0071】
以下に具体的な実施例を示して本発明を説明する。
(実施例1)
ハニカム構造シート(1)の製造
変形可能な被覆材料として、水溶性樹脂であるポリウレタンを使用した。ポリウレタンは、ハイドランWLS−201(大日本インキ化学工業製)を使用した。スリットコーターを用いて、図6(a)に示すような基板上にポリウレタン膜を形成する。この基板上に形成したポリウレタン膜を減圧にして、凹部の空気を膨張させる。減圧下でポリウレタン中の残留水分を蒸発させ、完全に乾燥、固化させる。減圧する真空度が1kPa以下程度の場合、セルの天井に開口が空き、両面に開口部を有するハニカム構造シート(1)となる。ポリウレタンを変形可能な材料として使用した場合、各セルの隔壁厚さが1〜10μm、開口部およびそれに対向する壁の厚さが1〜10μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が5〜50μmのハニカム構造シート(1)が作製できる。
【0072】
(実施例2)
ハニカム構造シート(2)の製造
変形可能な被覆材料として、水溶性樹脂であるゼラチンを使用した。ゼラチンは、MC−243(ゼライス株式会社製)を使用した。ゼラチンを5〜30wt%程度に水に溶解させる。この溶液をスリットコーターを用いて、図6(a)に示すような基板上にゼラチン膜を形成する。これを減圧にし、空気を膨張させる。減圧下でゼラチン中の残留水分を蒸発させ、完全に乾燥、固化させる。ゼラチン濃度と減圧する真空度により天井に開口が空くか否かが決定される。ゼラチン濃度が薄い場合減圧する真空度が低くとも天井に開口が形成され、ゼラチン濃度が濃い場合減圧する真空度が高くないと天井に開口が形成されない。ゼラチンを変形可能な材料として使用した場合、各セルの壁厚さが0.01〜5μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが0.01〜2μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が0.1〜20μmのハニカム構造シート(2)が作製できる。
【0073】
(実施例3)
ハニカム構造シート(3)の製造
変形可能な被覆材料として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコールを使用した。ポリビニルアルコールは、ポバールPVA117(クラレ製)を使用した。ポリビニルアルコールを5〜30wt%程度に水に溶解させる。この溶液をスリットコーターを用いて、図6(a)に示すような基板上にポリビニルアルコール膜を形成する。これを減圧し、空気を膨張させる。減圧下でポリビニルアルコール中の残留水分を蒸発させ、完全に乾燥、固化させる。ポリビニルアルコール濃度と減圧する真空度により天井に開口が空くか否かが決定される。ポリビニルアルコール濃度が薄い場合減圧する真空度が低くとも天井に開口が形成され、ポリビニルアルコール濃度が濃い場合減圧する真空度が高くないと天井に開口が形成されない。ポリビニルアルコールを塑性変形性の材料として使用した場合、各セルの壁厚みが3〜10μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが1〜10μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が10〜50μmのハニカム構造シート(3)が作製できる。
【0074】
(実施例4)
ハニカム構造シート(4)の製造
変形可能な被覆材料として、紫外線硬化樹脂であるアルコキシアクリレートを使用した。アルコキシアクリレートは、PEG400DA(ダイセルサイテック製)を使用した。アルコキシアクリレート中にフッ素系界面活性剤ノベックFC−4430(3M製)を添加し、アルコキシアクリレートの表面張力を弱くし、変形性を持たせる。この溶液をスリットコーターを用いて、図6(a)に示すような基板上にアルコキシアクリレート膜を形成する。これを減圧し、空気を膨張させる。減圧する真空度が50kPa程度に達したときに、紫外線を照射し、アルコキシアクリレートを硬化させる。アルコキシアクリレートを塑性変形性の材料として使用した場合、各セルの壁厚みが0.01〜3μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが0.01〜1μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が0.01〜5μmのハニカム構造シート(4)が作製できる。
【0075】
(実施例5)
ハニカム構造シート(5)の製造
変形可能な被覆材料として、紫外線硬化樹脂であるエポキシアクリレートを使用した。エポキシアクリレートは、AQ9(荒川化学工業製)を使用した。エポキシアクリレート中にフッ素系界面活性剤ノベックFC−4430(3M製)を添加し、エポキシアクリレートの表面張力を弱くし、塑性変形性を持たせる。この溶液をスリットコーターを用いて、図6(a)に示すような基板上にエポキシアクリレート膜を形成する。これを減圧し、空気を膨張させる。減圧する真空度が50kPa程度に達したときに、紫外線を照射し、エポキシアクリレートを硬化させる。エポキシアクリレートを塑性変形性の材料として使用した場合、各セルの壁厚みが0.01〜5μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが0.01〜1μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が0.1〜5μmのハニカム構造シート(5)が作成できる。
【0076】
(実施例6)
表示パネル(1)及び表示装置(1)の製造
図3に示すような表示パネル及び表示装置を作成した。実施例1で作製した片側に開口を有する六方最密のハニカム構造シート(1)を用いた。ハニカム構造シート(1)の各セルの壁厚さは約2μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが約1μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が約5μmのものを用いた。各セルの底部(あるいは天井部)とITO膜付のPETフィルムが接着層1で接着した。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。図12に示すようにハニカム構造シート(1)とPETフィルムを接着してから、ハニカム構造シート(1)を基板20から剥離する。各セル25中に電気泳動液30を注入し、開口部が封止されている。封止材料36は電気泳動液と相溶しない水溶性樹脂を使用する。水溶性樹脂として、ポリウレタン、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどを使用することができる。これらの水溶性樹脂をスリットコーターを用いて、電気泳動液上に膜を形成し、乾燥させて封止を行い、表示パネル(1)とする。この封止膜の膜厚は約5μmであった。この封止した膜と電圧駆動回路とが接着層2で接着され表示装置(1)となる。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。封止した膜が薄いほど、電圧の降下が少なく、低電圧で駆動することができる。
【0077】
この表示装置(1)においては、白反射率38%、黒反射率1%、コントラスト38の表示特性が得られる。比較として、同じ電気泳動液を深さが50μmで10mm角のセルで表示させたときの表示特性は、白反射率43%、黒反射率1%、コントラスト43となった。
【0078】
(実施例7)
表示装置(2)の製造
図3に表示装置の構成を示す。ハニカム構造シートは実施例2で作製した片側に開口を有する六方最密のハニカム構造シート(2)を用いた。ハニカム構造シートの各セルの壁厚みは約2μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが約1μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が約5μmのものを用いた。各セルの底部(あるいは天井部)と電圧駆動回路とが接着層1で接着されている。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。ハニカム構造シートと電圧駆動回路を接着してから、ハニカム構造シート(2)を基板から剥離する。各セル中に電気泳動液が注入され、開口部が封止される。封止は電気泳動液と相溶しない水溶性樹脂を使用する。水溶性樹脂として、ポリウレタン、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどを使用することができる。これらの水溶性樹脂をスリットコーターを用いて、電気泳動液上に膜を形成し、乾燥させて封止を行う。この封止膜の膜厚は約5μmである。この封止した膜とITO膜付のPETフィルムとが接着層15で接着されている表示装置(2)が得られる。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。封止した膜が薄いほど、表示特性が良く、反射率を大きくすることができる。
【0079】
表示装置(2)において、白反射率38%、黒反射率1%、コントラスト38の表示特性が得られる。比較として、同じ電気泳動液を深さが50μmで10mm角のセルで表示させたときの表示特性は、白反射率43%、黒反射率1%、コントラスト43となる。
【0080】
(実施例8)
表示装置(3)の製造
図3に表示装置の構成を示す。ハニカム構造シートは実施例3で作製された両側に開口を有する六方最密のハニカム構造シート(3)を用いた。ハニカム構造シートの各セルの壁厚みは約2μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが約1μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が約5μmのものを用いた。各セルの開口を有する天井部と電圧駆動回路とが接着層15で接着されている。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。中空構造物と電圧駆動回路を接着してから、ハニカム構造シート(3)を基板から剥離する。各セル中に電気泳動液が注入され、開口部が封止されている。封止は電気泳動液と相溶しない水溶性樹脂を使用する。水溶性樹脂として、ポリウレタン、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどを使用することができる。これらの水溶性樹脂をスリットコーターを用いて、電気泳動液上に膜を形成し、乾燥させて封止を行う。この封止膜の膜厚は約5μmである。この封止した膜とITO膜付のPETフィルムとが接着層15で接着されて表示装置(3)が得られる。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。封止した膜が薄いほど、表示特性が良く、反射率を大きくすることができる。
【0081】
表示装置(3)において、白反射率40%、黒反射率1%、コントラスト40の表示特性が得られる。比較として、同じ電気泳動液を深さが50μmで10mm角のセルで表示させたときの表示特性は、白反射率43%、黒反射率1%、コントラスト43となる。
【0082】
(実施例9)
表示装置(4)の製造
図3に表示装置の構成を示す。ハニカム構造シートは実施例4で作製された両側に開口を有する六方最密のハニカム構造シート(4)を用いた。中空構造物の各セルの壁厚みは約2μm、開口部およびそれに対向する壁厚みが約1μm、各セルの壁と開口部あるいはそれに対向する壁との交差部の曲率半径が約5μmのものを用いた。各セルの底部(あるいは天井部)とITO膜付のPETフィルムが接着層15で接着されている。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。中空構造物とPETフィルムを接着してから、ハニカム構造シートを基板から剥離する。各セル中に電気泳動液が注入され、開口部が封止されている。封止は電気泳動液と相溶しない水溶性樹脂を使用する。水溶性樹脂として、ポリウレタン、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどを使用することができる。これらの水溶性樹脂をスリットコーターを用いて、電気泳動液上に膜を形成し、乾燥させて封止を行う。この封止膜の膜厚は約5μmである。この封止した膜と電圧駆動回路とが接着層15で接着されて表示装置(4)が得られる。接着には紫外線硬化接着剤、エポキシ系接着剤などが使用することができる。封止した膜が薄いほど、電圧の降下が少なく、低電圧で駆動することができる。
【0083】
表示装置(4)において、白反射率41%、黒反射率1%、コントラスト41の表示特性が得られる。比較として、同じ電気泳動液を深さが50μmで10mm角のセルで表示させたときの表示特性は、白反射率43%、黒反射率1%、コントラスト43となる。
【0084】
実施例6〜9で作成した表示装置(1)〜(4)の白反射率と、その比較サンプルの白反射率に対する六方最密セルの白反射率の比率を表1に示した。
【0085】
【表1】

使用した六方最密セルのセル間のピッチは150μmで、セルの壁厚みがであった。これから、セルの開口率0.97が算出できる。実施例6〜9において、セルの開口部分の上に天井、封止層、接着層がある。これらが反射率をわずかに低下させている。実施例9は比較サンプルに対し接着層のみが増えている構成で、最も反射率の低下が少なくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の表示パネル(1)の断面図
【図2】本発明の表示パネル(2)の断面図
【図3】本発明の表示装置の断面図
【図4】ハニカム構造形成の説明図ハニカム構造の製造方法(1)
【図5】ハニカム構造の製造方法(1)
【図6】ハニカム構造の製造方法(2)
【図7】表示パネルの製造方法(1)
【図8】セル開口部の形成方法
【図9】セル開口部の形成の説明図
【図10】開口部の拡大状況を示す写真 (a)ハニカム形成時の開口部、(b)溶剤蒸気への暴露20秒後の開口部、(c)溶剤蒸気への暴露40秒後の開口部
【図11】セル開口部の形成の例
【図12】表示パネルの製造方法(2)
【符号の説明】
【0087】
1:表示パネル 2:ハニカム構造シート 3:セル
4,4a,4b:封止樹脂 5:分散液 6:セル間の隔壁
7:セルとシート表面との隔壁 8:開口部側のセルとシート表面との隔壁
9:セル間の隔壁とセルとシート表面との隔壁との交叉部 10:封止樹脂厚さ
11:表示装置 12:セル 13:保護膜
14:透明電極層 15:接着剤層 16:封止膜
17:ハニカム構造シート 18:接着層 19:電極
20:基板 21:変形可能な樹脂 22:シート表面の隔壁
23:凹部 24:凹部の開口部 25:空間(セル)
26:セルの開口部 27:ハニカム構造シート 28:押圧板
29:剥離用シート 30:分散液 31:開口部調整容器
32:溶剤 33:加熱装置 34:揮発性材料
35:可溶性溶剤 36:封止材料 37:温度制御装置
38:開口部調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に少なくとも一種の白色又は着色粒子を分散した分散液を封入したセルが連続して形成されているシートからなる表示パネルであって、セル間の隔壁の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記セルのシート表面との隔壁の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記セルにおけるセル間の隔壁とシート表面との隔壁の交叉部は、曲率半径0.1〜50μmの曲面で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記セル間の隔壁は、水溶性樹脂又は紫外線照射により硬化した樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記セルにおける一方のシート表面との隔壁は、厚さ0.1〜10μmの樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記セルにおける両方のシート表面との隔壁は、厚さ0.1〜10μmの樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示パネル。
【請求項7】
所定の間隔で配置された複数の凹部を備えた基板表面を、変形可能な被覆材料で前記凹部に空隙を残すように覆う被覆工程と、
前記空隙中の気体が膨張して基板表面を被覆した被覆材料に前記複数の凹部に対応したセルを形成してハニカム構造のシートとする発泡工程と、
前記ハニカム構造のシートを硬化させる硬化工程と、
前記硬化したハニカム構造のシートを基板表面から剥離する剥離工程と、
剥離したハニカム構造のシートのセルの開口部の大きさを調整する調製工程とを有することを特徴とするハニカム構造シートの製造方法。
【請求項8】
前記調製工程と同時に又は調製工程に続いて、ハニカム構造のシートのセルとシート表面との隔壁を除去してハニカム構造のシートの両側にセルの開口部を形成する開口部形成工程を有することを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造シートの製造方法。
【請求項9】
前記調製工程及び/又は開口部形成工程は、硬化したハニカム構造のシートを可溶な溶剤によりハニカム構造のシートの一部を溶解する工程を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のハニカム構造シートの製造方法。
【請求項10】
前記硬化したハニカム構造のシートの表面に、シートを溶解しない揮発性材料を塗布し該揮発性材料を気化させながら、シートを可溶な溶剤の気体を結露させる工程を含むことを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造シートの製造方法。
【請求項11】
前記変形可能な被覆材料は、乾燥により硬化する水に溶解した樹脂又は紫外線照射により硬化する紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載のハニカム構造シートの製造方法。
【請求項12】
前記セルが連続して形成されているシートは、請求項7〜11のいずれか一項に記載のハニカム構造シートの製造方法により製造されたハニカム構造のシートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示パネル。
【請求項13】
シート面にそって一方が開口しており、隔壁の厚さが0.01〜10μmであるセルが連続して形成されているハニカム構造のシートの各セルに、溶媒中に少なくとも一種の白色又は着色粒子を分散した分散液を注入し、前記分散液を注入したシートの開口部を樹脂で封止したことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記セルのシート表面との隔壁の厚さが0.01〜10μmであることを特徴とする請求項13に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記セルにおけるセル間の隔壁とシート表面との隔壁の交叉部は、曲率半径0.1〜50μmの曲面で形成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記セル間の隔壁は、水溶性樹脂又は紫外線照射により硬化した樹脂からなることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記セルにおける一方又は両方のシート表面に臨む隔壁は、厚さ0.1〜10μmの樹脂で形成されていることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜6及び請求項12のいずれか一項に記載の表示パネルの両面に電圧を印加する電極層を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項19】
前記電極層のうち、少なくとも一方の電極層は透明電極層であることを特徴とする請求項18のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の表示装置を備えたことを特徴とする、電子ペーパー、電子ブック、電子ノート、電子表示時刻表、電子表示広告板、電子表示案内板、及び電子表示地図を含む画像表示用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−224769(P2008−224769A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59118(P2007−59118)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】