表示パネル、該表示パネルの製造方法及び製造装置
【課題】プラズマディスプレイパネルなどの表示パネル内の特性の高い均一性と信頼性を、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現する。
【解決手段】フリットガラスを軟化温度以上の加熱により軟化させて2枚の基板の周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、同軟化温度よりも低い温度で同フリットガラスを固化させた状態でパネルの内部を高コンダクタンスで排気した後、再び同フリットガラスを同軟化温度以上の加熱により軟化させて同2枚の基板の周囲を密着させる。これにより、同パネル内の特性の高い均一性と信頼性が、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現する。
【解決手段】フリットガラスを軟化温度以上の加熱により軟化させて2枚の基板の周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、同軟化温度よりも低い温度で同フリットガラスを固化させた状態でパネルの内部を高コンダクタンスで排気した後、再び同フリットガラスを同軟化温度以上の加熱により軟化させて同2枚の基板の周囲を密着させる。これにより、同パネル内の特性の高い均一性と信頼性が、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示パネル、該表示パネルの製造方法及び製造装置に係り、特にプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、PDP)やフィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display、FED)などのように、少なくとも一方の基板に隔壁が形成された2枚の基板の周囲を溶融ガラスを介して張り合わせた後、加熱封着して内部を排気することにより製造される表示パネル、該表示パネルの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)やフィールドエミッションディスプレイ(FED)などの表示パネルは、2枚の基板の周囲がフリットガラス(溶融ガラス)を介して加熱封着され、真空排気する工程により製造される。プラズマディスプレイパネルでは、ガス放電によって発生した紫外線によって蛍光体が励起発光し、表示動作が行われる。
【0003】
図1は、反射型AC面放電型のカラープラズマディスプレイパネルの1つの放電セルの断面の一例を示す図である。
この放電セルは、1つの画素セルに対応し、表示面側となる透明なガラス板である前面基板1上に透明電極2,2が形成されている。この透明電極2,2は、この図1の面に対して垂直方向に複数本形成され、1つの放電セルに対して放電ギャップGを挟んで一対の走査電極及び維持電極として設けられ、面放電電極対が構成されている。同一放電セル内で、これらの隣り合う透明電極2の間にパルス状のAC電圧が印加され、表示放電が行われる。透明電極2,2は、酸化錫(SnO2 )やインジウムチンオキサイド(Indium Tin Oxide、ITO)などで形成され、低抵抗化のために、バス電極3,3が重なるように形成されている。
【0004】
バス電極3,3は、銀などの金属厚膜、あるいはクロム/銅/クロム、クロム/アルミなどの多層薄膜や、アルミニウム薄膜などの金属薄膜で形成されている。バス電極3,3を銀の厚膜で形成する場合、コントラスト向上のために若干の黒色顔料が混合され、銀の厚膜と透明電極2,2との間に黒色顔料を多く混合した銀の厚膜や黒色顔料層を挟む2層構造が採用されることが多い。黒色顔料は、コバルト、鉄、ニッケルなどの酸化物や導電性の酸化ルテニウムなどが用いられる。この面放電電極対(透明電極2,2及びバス電極3,3)の上は、透明誘電体層4で被覆されている。透明誘電体層4は、通常、低融点鉛ガラスや酸化亜鉛系の低融点ガラスを主成分とする厚膜ペーストを基板上に塗布、又は、これらを主成分とする厚膜シートを基板上に貼付し、軟化温度(「軟化点」ともいう)程度、あるいは、それ以上の温度で焼成することにより形成される。この場合、膜厚は10μm乃至40μm程度である。また、透明誘電体層4を被覆するように保護層5が形成されている。この保護層5は、通常、蒸着法やスパッタ法によって形成されるMgOの薄膜であり、膜厚は0.5μm乃至2μm程度である。この保護層5の役割は、放電開始電圧の低減、及び放電による表面スパッタの抑制である。
【0005】
一方、背面基板6上には、表示データが書き込まれるデータ電極7が面放電電極対(透明電極2,2及びバス電極3,3)と直行する方向に、放電セル毎に1本形成されている。
データ電極7は、銀などの金属厚膜、クロム/銅/クロム、クロム/アルミなどの金属多層薄膜、あるいはアルミニウム薄膜などの金属薄膜で形成されている。このデータ電極7の上は、白色誘電体層8で被覆されている。白色誘電体層8は、低融点鉛ガラスや酸化亜鉛系低融点ガラスと白色の顔料とが混合され、透明誘電体層4と同様の方法で形成されている。白色の顔料は、白色誘電体層8の反射率を上げ、輝度及び発光効率を向上させるために、通常、酸化チタン粉末やアルミナ粉末が用いられる。なお、この白色顔料は、用いられないこともあり、さらに、この白色誘電体層8が形成されないこともある。この白色誘電体層8の上には、隔壁9が形成されている。
【0006】
隔壁9の材料は、低融点鉛ガラスや酸化亜鉛系低融点ガラスとアルミナなどの骨材の混合物である。この隔壁9により放電空間10が囲われ、また、1つの放電セルが画成される。隔壁9のディメンジョンは、たとえば、トリオピッチが0.81mmの場合、隔壁幅50μm、高さ120μm程度であり、アスペクト比が高い。隔壁9の表示面側から見た形状は、たとえば、梯子状、格子状、ストライプ状、ハニカム状などである。この隔壁9の形成は、通常、サンドブラスト法によって行われる。また、白色誘電体層8及び隔壁9の放電空間10を囲う面に、各放電セルの発光色に対応する蛍光体11が塗布されている。この蛍光体11は、たとえばスクリーン印刷法やディスペンサー法によって塗布される。
【0007】
さらに、背面基板6の周囲にフリットガラスが形成され、前面基板1と同背面基板6とが張り合わされて気密封止されている。この場合、通常、ディスペンサー法やスクリーン印刷法により、フリットガラスペーストが塗布され、焼成して形成される。なお、この図1は、1つの放電セルの断面図なので、フリットガラスは図示されていない。フリットガラスは、通常、背面基板6上に形成されるが、前面基板1上でもよく、また、両方の基板上に形成しても良い。
【0008】
図2は、図1のカラープラズマディスプレイパネルの前面基板1と背面基板6とを張り合わせる封着及び排気工程を示す図である。
この封着工程では、同図2に示すように、隔壁9が形成された背面基板6と前面基板1とが組み合わせられる。この場合、背面基板6の周囲にフリットガラス12が形成され、隔壁9を囲うように前面基板1が張り合わせられる。そして、前面基板1及び背面基板6の周囲が治具(封着クリップ21)により圧着され、フリットガラス12が軟化する温度よりも高い温度で加熱される。この段階では、フリットガラス12の膜厚が隔壁9よりも高いので、2枚の基板の間には隙間が生じる。この後、加熱が進行し、フリットガラス12が軟化することにより、隔壁9の頂部と前面基板1とが密着する。排気管22は、前面基板1及び背面基板6の封着と同時に排気管フリットガラス23によって同背面基板6に接着される。前面基板1及び背面基板6が密着された後、排気工程に移り、パネル内部のガスが排気管22を経て真空排気される。この排気工程は、上記封着工程と独立して行ってもよく、また、連続して行うこともできる。
【0009】
図3は、封着工程と排気工程とを連続して行う場合の、パネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図であり、縦軸に温度及びパネル真空度、及び横軸に時間がとられている。また、特性曲線Aは温度プロファイル、及び特性曲線Bがパネル内の圧力変化を示す。
封着クリップ21によって組み合わされた2枚の基板1,6は、図3に示すように、徐々にフリットガラス12の軟化温度(通常、410℃〜430℃程度)以上(たとえば、450℃程度)まで加熱される(時刻t1)。この温度が数分から数十分キープされ、2枚の基板1,6の周囲は軟化したフリットガラス12でシール(接着)され、パネル内と外部とが遮断された状態になる(時刻t2)。この段階では、2枚の基板1,6は完全には密着していない。さらに、この温度を維持することによって、封着クリップ21の圧力で徐々に基板1,6が密着する(時刻t3)。この後、温度をフリットガラス12の軟化温度よりも低下させる(時刻t4)。この時点でフリットガラス12は固化し、封着が完了している。この後、時刻t5からパネル内を真空排気(真空引き開始)する。
【0010】
時刻t5のときの温度は、フリットガラス12の軟化点より若干低い400℃程度である。この温度を数時間から数十時間保った後、時刻t6から時刻t7にかけて室温まで冷却する。そして、放電空間10の内部に、放電可能なガス、たとえばNeとXeとの混合ガスやHeとNeとXeとの混合ガスを40kPaから70kPa程度の圧力で封入する。また、真空排気の途中で、パネル内に洗浄ガスを導入して数分から数十分保持し、その後、洗浄ガスを排気する工程を行うこともある。洗浄ガスは、酸素、希ガス、窒素、水素などのガス、もしくは、これらのうちのいくつかの混合ガスで構成されている。温度を380℃から420℃程度に保った状態でパネル内に同洗浄ガスを導入することにより、同パネル内部の汚染物質や水分が分解され、洗浄ガスと一緒に排気される。この洗浄ガスの導入、保持及び排気を数回繰り返すことにより、より良い状態でパネル内の洗浄が行われる。
【0011】
上記のカラープラズマディスプレイパネルの他、従来、この種の技術としては、たとえば、次のような文献に記載されたものがある。
特許文献1に記載されたプラズマディスプレイパネルは、前面基板と、背面基板と、これらの基板の間に形成される放電空間と、同放電空間を画素毎に区切る隔壁と、容器外周部に両基板を封止するためのシールフリットと、隔壁と前面基板との間に封着温度よりも相対的に軟化点温度が高いガラスからなるスペーサとを備える。同パネルの製造方法では、同スペーサは、前面基板と隔壁との間に所定の間隙をもって形状を保持し排気パスを確保する。排気が完了した後にスペーサの軟化点以上の温度で加熱することにより、同スペーサを溶融させて前面基板と隔壁との間隙を塞ぐ。この後、パネル内に放電ガスを封入する。
【特許文献1】特開2002−260537号公報(要約書、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のカラープラズマディスプレイパネルの製造方法では、次のような問題点があった。
すなわち、封着時にフリットガラス12が十分に軟化して2枚の基板1,6が密着した後、排気工程や、洗浄ガスによるパネル内洗浄工程に対応した処理が行われる。ところが、多くの場合、プラズマディスプレイパネルは、各放電セルが隔壁9によって区切られているため、パネル内の排気コンダクタンスは著しく低い。基板が密着する前(すなわち、図3中の時刻t3まで)は排気コンダクタンスが比較的高いが、排気は、後の時刻t5から行われるので、排気コンダクタンスの低い状態で行われる。特に、隔壁9が、格子状、梯子状やハニカム状の場合、放電セルが完全に閉じた構造となっているため、非常に排気コンダクタンスが低くなる。
【0013】
排気コンダクタンスを高くするために、隔壁9に数μmから数十μmの段差を設け、隙間を形成する方法もあるが、製造プロセスが複雑になり、また隣接する放電セル間の干渉により動作マージンが狭くなるという欠点がある。また、ストライプ形状の隔壁もあるが、上下方向(データ電極が延びる方向)の干渉が強いため、電極形状や駆動方法に大きな制約が生じ、また、隔壁側面に塗布する蛍光体の面積が減るため、輝度発光効率が低下するという欠点がある。
【0014】
また、図4に示すように、封着時に2枚の基板1,6が密着する前の排気コンダクタンスが高い段階で真空引きを開始する方法もあるが、実際に高コンダクタンスの状態で意味がある排気時間は、基板1,6がシールされてから密着するまでのわずかな時間(時刻t2〜時刻t3)でしかない。従って十分な排気ができない。また、基板1,6がシールされた段階が不明確なため、温度を下げるタイミング(時刻t4)の設定が難しい。これが早すぎると、基板1,6がシールされていない可能性があり、また、遅すぎると、フリットガラス12が軟化している高温で長時間真空排気を行うので、同フリットガラス12中の気泡が成長して外気がリークする可能性が高くなる。このため、この方法を実際の生産に適用することは効果が少ない上に非常に困難が伴う。また、この排気コンダクタンスの問題は、単に排気工程にとどまらず、パネル内を洗浄ガスによって洗浄する際も障害になる。すなわち、排気コンダクタンスが低い場合、排気管近傍と離れた場所とでは洗浄状態が異なり、完成後のパネルの均一性を大きく悪化させるという問題点がある。この発明が解決しようとする課題としては、この問題点が一例として挙げられる。
【0015】
また、特許文献1に記載されたプラズマディスプレイパネルの製造方法では、前面基板と隔壁とがガラススペーサにより所定の間隙をもって接合され、加熱工程で、封着温度よりも相対的に高い温度でパネルが加熱されて同ガラススペーサが溶融され、間隙が埋められるが、この発明とは、構成が異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法に係り、前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記軟化温度よりも低い温度で前記溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気した後、再び前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法に係り、前記溶融性封着材は、第1の軟化温度を有する第1の溶融性封着材と該第1の軟化温度よりも低い第2の軟化温度を有する第2の溶融性封着材との2層構造に構成され、前記第2の溶融性封着材を、前記第1の軟化温度よりも低く、かつ前記第2の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記第2の軟化温度よりも低い温度で前記第2の溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気し、前記第1及び第2の溶融性封着材を前記第1の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
溶融性封着材が軟化して第1の基板と第2の基板との周囲が密着する前に、温度が一旦溶融性封着材の軟化温度以下に下がり、同溶融性封着材が固化した状態で当該表示パネルの内部が高コンダクタンスで排気される。この後、温度が溶融性封着材の軟化温度以上になり、第1の基板と第2の基板との周囲が密着する。このため、表示パネル内の特性の高い均一性と信頼性が、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現できる。
【0019】
また、第2の溶融性封着材が、第1の軟化温度よりも低く、かつ第2の軟化温度以上の加熱により軟化することにより、第1の基板と第2の基板との周囲が隙間を含む状態で接着され、この後、第2の軟化温度よりも低い温度で第2の溶融性封着材が固化した状態で表示パネルの内部が高コンダクタンスで排気される。この後、第1及び第2の溶融性封着材が第1の軟化温度以上の加熱により軟化して第1の基板と第2の基板との周囲が密着する。このように、第2の溶融性封着材と第1の溶融性封着材とが異なる時間帯で軟化するので、最初の高コンダクタンスの状態と、第1の基板と第2の基板とが完全に密着する低コンダクタンスの状態との区別が明確になり、より温度及び圧力の制御がしやすくなる。
【実施例1】
【0020】
図5は、この発明の第1の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図であり、縦軸に温度及びパネル真空度、及び横軸に時間がとられている。また、特性曲線Aは温度プロファイル、及び特性曲線Bがパネル内の圧力変化を示す。
同図5、図1及び図2を参照して、この例のプラズマディスプレイパネルの製造方法について説明する。
図2中の封着クリップ21によって組み合わされた2枚の基板1,6は、同図5に示すように、徐々にフリットガラス12の軟化温度(通常、410℃〜430℃程度)以上(たとえば、450℃程度)まで加熱される(時刻t1)。この温度が数分から数十分保持されるため、2枚の基板1,6の周囲は、軟化したフリットガラス12で隙間を含む状態でシールされる(時刻t2)。ここで、「シール」とは、2枚の基板1,6の外周部が接着されたことを示すが、同基板1,6が密着したことは意味しないものとする(以下、同様)。
【0021】
この後、2枚の基板1,6が密着する前に、一旦、フリットガラス12の軟化温度よりも低い温度(たとえば、400℃程度)に下げる(時刻t3)。この段階では、フリットガラス12は固化している。このため、基板1,6が密着していない状態、すなわち高コンダクタンスの状態が維持される。この状態で真空排気を行う(時刻t4)。パネルの中央部では、大気圧により2枚の基板1,6が密着するが、周辺部では、隙間がある状態でフリットガラス12が固化しているので、従来の密着した状態よりも、はるかに高コンダクタンスである。この場合、排気時間は数時間から数十時間程度であるが、コンダクタンスが高いので、基板が密着している従来の方法と比べ、数分の一の排気時間で同等の結果が得られる。排気を所定の時間行った後、再び温度をフリットガラス12の軟化温度以上(たとえば、450℃程度)に上げて基板1,6を密着させる(時刻t5)。この場合、基板1,6の密着をすばやく行うために、温度を時刻t1の場合よりも若干高め(たとえば、460℃程度)にしても良い。この後、温度を室温まで下げる(時刻t6)。この後、従来と同様に放電ガスを封入する。
【0022】
以上のように、この第1の実施例では、フリットガラス12を軟化温度以上の加熱により軟化させて基板1,6の周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、同軟化温度よりも低い温度で同フリットガラス12を固化させた状態でパネルの内部を排気した後、再び同フリットガラス12を同軟化温度以上の加熱により軟化させて同基板1,6の周囲を密着させるようにしたので、同パネル内の特性の高い均一性と信頼性が、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現する。
【実施例2】
【0023】
図6は、この発明の第2の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図6に示すように、第1の実施例と同様に、フリットガラス12の軟化温度(例えば、420℃程度)以上に2枚の基板1,6を加熱するが、同基板1,6がシールされる時刻t3よりも前から同基板1,6間の減圧を開始する。同図6では、時刻t2より前の時刻t1から減圧を開始しているが、時刻t3より前であれば、どのタイミングでも良い。この段階では、基板1,6はシールされていないので、排気速度を遅く設定した方が良い。時刻t3で基板1,6がシールされると、減圧の速度が上がってくる。そして、基板1,6が密着する前に温度をフリットガラス12の軟化温度より下げる(時刻t4)。この場合、温度を400℃程度に下げ、第1の実施の形態と同様に、高コンダクタンスの状態で数十分から数十時間排気(このとき、最初の減圧より排気速度を上げると良い)を行い、時刻t6で再び温度を450℃まで上げ、基板1,6を密着させ、この後、室温まで下げて放電ガスを封入する(時刻t7)。
【0024】
図7は、図2のカラープラズマディスプレイパネルの要部、及び、この実施例の排気工程で用いられる排気装置の要部を示す構成図である。
この排気装置は、圧力ゲージ31と、バルブ32と、バルブ33と、流量調節バルブ34と、バルブ35と、バルブ36と、真空ポンプ37と、バルブ38と、洗浄ガス貯蔵部39と、バルブ40と、放電ガス貯蔵部41とから構成されている。この排気装置では、最初に遅い排気速度で排気する場合、バルブ32を閉じ、かつバルブ33,35,36を開いた状態で流量調節バルブ34を経由して真空ポンプ37によりパネル内を排気する。そして、図6中の時刻t5に達したとき、バルブ33及びバルブ35を閉じ、かつバルブ32を開いた状態で、速い排気速度で真空ポンプ37によりパネル内を真空に引く。
【0025】
以上のように、この第2の実施例では、基板1,6の周囲を隙間を含む状態でシールする前の段階から当該表示パネルの内部を排気するようにしたので、第1の実施例と比較して高コンダクタンス状態での排気時間が長くとれるので、トータルの排気時間がより短くて済むという利点がある。
【実施例3】
【0026】
図8は、この発明の第3の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図8に示すように、第2の実施例と同様に、時刻t3よりも前から基板1,6間の減圧を開始するが、時刻t3で基板1,6がシールされたとき、このシールのタイミングを検出する操作を行う。このタイミングの検出は、たとえば図7中の圧力ゲージ31で行う。すなわち、減圧を行っている状態で基板1,6の周囲がフリットガラス12で全てシールされると、排気速度が上がり、基板1,6の間の気体の圧力が時刻t3以前より大きく下がる。この変化を圧力ゲージ31で読み取る。この場合、予め設定された圧力の閾値に基づいて時刻t3でシールを検出した後、温度を速やかにフリットガラス12の軟化温度以下に下げる(時刻t4)。また、この閾値は、気体の圧力の変化率に対応して設定したものでもよい。
【0027】
上記シールのタイミングを検出する操作を速やかに行うことにより、基板1,6がなるべく密着しない、すなわち、より高コンダクタンスの状態でフリットガラス12が固化されるので、排気の効率が大幅に向上する。また、フリットガラス12が軟化した状態で真空に引く時間がより短くなるため、同フリットガラス12中の気泡が成長して外気がリークする危険性も低減される。また、シールを検出する操作を導入することにより、ほぼ理想的に高コンダクタンス状態で排気が行われる。
【実施例4】
【0028】
図9は、この発明の第4の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図9に示すように、時刻t5までは第3の実施例と同様の処理を行う。この後、時刻t6で、パネル内に所定のガス、たとえば放電ガスや洗浄ガスを導入し、大気圧までの復圧を行う。放電ガスは、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの混合ガス、洗浄ガスは、酸素、水素、窒素、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe)などの混合ガスである。
【0029】
そして、時刻t7で、温度をフリットガラス12の軟化点以上に上げるが、上記復圧により、フリットガラス12内部の気泡が成長して外気がリークする危険性が極めて少なくなる。この場合、温度を時刻t2の場合より高くしても、上記復圧により発泡の危険性がなくなるので、より短時間で安全確実に基板1,6が密着する。この後、時刻t8で、大気圧から真空引きが開始し、温度を室温まで下げる(時刻t9)。なお、上記復圧では、圧力が大気圧となっているが、大気圧より低い圧力、たとえば40kPa(約300Torr)程度でも、ほぼ同様の結果が得られる。
【実施例5】
【0030】
図10は、この発明の第5の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図10に示すように、時刻t5までは第4の実施例と同様の処理を行うが、パネルの内部に所定のガスを導入して所定時間保持することにより、復圧のタイミングの時刻t6から昇温の時刻t7までの間隔を長くしている。これは、復圧を洗浄ガスで行い、時刻t6から時刻t7の時間を十分にとって洗浄効果を高めるためである。時刻t6から時刻t7までの時間は、たとえば30分程度であるが、この時間は、パネルの大きさやパネル内の構造や汚染状況により数分から数時間行うこともある。時刻t7以降は、第4の実施例と同様の処理を行う。また、復圧の圧力は、第4の実施例と同様であるが、できるだけ大気圧、もしくはそれに近い圧力が望ましい。
【0031】
また、時刻t3から時刻t7では、基板1,6が完全には密着していないので、高コンダクタンスではあるが、パネル内を真空に引いているときは、同パネルの中央部が大気圧で押しつぶされている。一方、パネルの周辺部では、基板1,6間に隙間があるので、高い排気コンダクタンスを確保できるが、洗浄ガスでパネル内を洗浄する場合は、同洗浄ガスの圧力でパネルの中央部にも間隙を作り、より多くの洗浄ガスで効率的に洗浄を行うことがより好ましい。
【実施例6】
【0032】
図11は、この発明の第6の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図11に示すように、上記実施例5と同様のガス洗浄を複数回繰り返す。すなわち、時刻t6で洗浄ガスの導入により復圧して所定時間保持した後、時刻t7で再び真空排気する。この後、時刻t8で復圧し、温度を上げて基板1,6を密着させる。このように、高コンダクタンスの状態でガス洗浄と排気とを繰り返すことにより、より効率的にパネル内が洗浄される。この実施例では、ガス洗浄を2回行っているが、より多数回行っても良い。
【実施例7】
【0033】
図12は、この発明の第7の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。さらに、同図12では、この例の製造方法に用いられる封着炉内の圧力が特性曲線Cにより示されている。
この例の製造方法に用いられる封着炉は、炉内が減圧される構造となっている。そして、同図12に示すように、上記各実施例と同様に、シール後に温度を下げ、高コンダクタンスの状態でパネル内の真空引きを行う(時刻t5)。このとき、パネル中央部は、大気圧で押されるので、ほぼ密着する。パネル周囲は、隙間があるので、コンダクタンスは高いが、より高コンダクタンスとするために、特性曲線Cに示すように、この段階で封着炉内を減圧する。これにより、大気圧で押しつぶされていたパネル中央部が元に戻り、パネル全面に亘って極めて高い排気コンダクタンスが確保される。
【実施例8】
【0034】
図13は、この発明の第8の実施例であるカラープラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合の前面基板1と背面基板6とを張り合わせる工程を示す図であり、図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この例の封着工程では、同図13に示すように、背面基板6の周囲に、図2中のフリットガラス12に代えて、高軟化点フリットガラス12a及び同高軟化点フリットガラス12aの上に低軟化点フリットガラス12bが形成され、2層構造に構成されている。高軟化点フリットガラス12aは、隔壁9の高さよりも高く設定され、また、軟化温度が比較的高く、たとえば440℃程度である。低軟化点フリットガラス12bは、高軟化点フリットガラス12aよりも軟化温度が低く、たとえば420℃程度である。
【0035】
図14は、図13に示す封着及び排気工程を行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、背面基板6を前面基板1と組み合わせた後、同図14に示すように、温度を低軟化点フリットガラス12bの軟化温度以上、かつ高軟化点フリットガラス12aの軟化温度以下、たとえば430℃に上げる(時刻t2)。すると、低軟化点フリットガラス12bのみが軟化して基板1,6の周囲がシールされる(時刻t3)。減圧は、この時刻t3より前の任意のタイミング(たとえば、図14では時刻t1)から始めているので、シールのタイミング(時刻t3)は検出され、すぐに温度が低軟化点フリットガラス12bの軟化温度以下、たとえば400℃程度に下げられる(時刻t4)。続いて、排気速度の高い真空引きを開始する(時刻t5)。所定の時間、たとえば数時間から数十時間真空排気を行った後、今度は、高軟化点フリットガラス12aの軟化温度以上、たとえば450℃まで温度を上げる(時刻t6)。これで、高軟化点フリットガラス12aも軟化し、基板1,6が完全に密着する。
【0036】
このように、低軟化点フリットガラス12bと高軟化点フリットガラス12aとが異なる時間帯で軟化するので、最初の高コンダクタンスの状態(時刻t3から時刻t6)と、最終的に基板1,6が完全に密着する低コンダクタンスの状態(時刻t6以降)との区別が非常に明確になり、より温度及び圧力の制御がしやすくなる。
【0037】
この実施例では、シールを検出してから温度を下げる方法を例にして説明したが、上記第1の実施例や第2の実施例のように、シールを検出しない方法でも、時刻t3から時刻t4の段階では、高軟化点フリットガラス12aが軟化していないので、温度を下げずに高コンダクタンスの状態が維持され、より確実に温度及び圧力の制御が可能となる。また、この実施例で、第4、第5又は第6の実施例と同様に、放電ガスや洗浄ガスによる復圧を行っても良い。
【実施例9】
【0038】
図15は、この発明の第9の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを説明するための模式図であり、同図(a)は、同実施例と比較するための従来の工程を示す図、及び同図(b)が、同実施例の工程を示す図である。
従来の封着工程及び排気工程では、同図(a)に示すように、パネル51は、図2中の基板1,6が封着クリップ21で固定された状態で、各カート(台車)52毎に複数枚搭載されている。この枚数は、通常、数枚から数十枚である。各カート52には、図示しない真空排気装置が設けられ、外部からの制御でパネル51の内部を真空に引いたり、洗浄ガスや放電ガスを導入するようになっている。そして、特性曲線Aに示す炉の温度プロファイルのように設定されたトンネル炉の左から右へ複数のカート52を通してパネル51を順次搬送することにより、熱処理が行われる。実際の生産では、トンネル炉が一杯に満たされる以上の台数のカート52が次々に移動することにより、封着工程及び排気工程が連続的に行われる。
【0039】
一方、この例の封着工程及び排気工程では、同図(b)に示すように、トンネル炉が、温度を一旦下げてから再び上げる特性曲線Aのような温度プロファイルに設定されている。
カート52は、左から右へ進行し、そのまま一定速度で動いても良いが、シールを検出する機構を設けた場合、シールの検出から温度を下げる領域に達するまで遊び期間Dを設けると、より良い。カート52は、シールを検出(E)すると移動速度を上げ、遊び期間Dを経て温度が下がった領域に入る。このトンネル炉の機構により、シールの検出Eから温度を下げるまでの工程が速やかに行われ、より高コンダクタンスの状態が得られて排気効率が向上する。
【0040】
上記第1乃至第8の実施例の封着工程及び排気工程は、バッチ処理でも連続処理でも適用可能であるが、この第9の実施例に示すように、連続処理に適用することにより、より優れた生産性が得られる。
【実施例10】
【0041】
図16は、第1乃至第9の実施例のいずれか一つの製造方法により製造されたプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマ表示装置の電気的構成の一例を示す概略のブロック図である。
このプラズマ表示装置は、アナログインタフェース60と、PDPモジュール70とから構成されている。アナログインタフェース60は、クロマ・デコーダを備えるY/C(輝度色)分離回路61と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路62と、PLL(位相ロック)回路を有する同期信号制御回路63と、画像フォーマット変換回路64と、逆γ変換回路65と、システム・コントロール回路66と、PLE(Peak Luminance Enhancement)制御回路67とから構成されている。PDPモジュール70は、デジタル信号処理制御回路71と、パネル部72と、DC/DCコンバータを内蔵するモジュール内電源回路73とから構成されている。デジタル信号処理制御回路71は、入力インタフェース信号処理回路74と、フレームメモリ75と、メモリ制御回路76と、ドライバ制御回路77とから構成されている。
【0042】
パネル部72は、PDP82と、同PDP82の走査電極を駆動する走査ドライバ78Aと、同PDP82の維持電極を駆動する維持ドライバ78Bと、データ電極を駆動するデータドライバ79A,79Bと、PDP82及び走査ドライバ78Aにパルス電圧を供給する高圧パルス回路80A,80Bと、同高圧パルス回路80A,80Bで発生する余剰電力を回収する電力回収回路81とから構成されている。
【0043】
このプラズマ表示装置では、概略的には、インタレースに対応したアナログ映像信号がアナログ・インタフェース60でデジタル映像信号に変換され、同デジタル映像信号がPDPモジュール70に供給される。たとえば、図示しないテレビチューナなどから出力されたアナログ映像信号は、Y/C分離回路61でR,G,Bの各色の輝度信号に分離された後、A/D変換回路62でデジタル映像信号に変換される。
【0044】
また、PDP82の入力信号に対する表示輝度の特性は線形的に比例するが、通常の映像信号はCRTの特性に合わせて予め補正(γ変換)されている。このため、A/D変換回路62においてアナログ映像信号のA/D変換が行われた後、逆γ変換回路65で逆γ変換が行われる。この逆γ変換において、線形特性に復元されたデジタル映像信号が生成される。このデジタル映像信号は、R,G,B映像信号としてPDPモジュール70へ出力される。
【0045】
また、アナログ映像信号には、A/D変換用のサンプリングクロック及びデータクロック信号が含まれていないため、同期信号制御回路63に内蔵されているPLL回路で、アナログ映像信号と同時に供給される水平同期信号を基準としてサンプリングクロック及びデータクロック信号が生成され、PDPモジュール70へ出力される。また、アナログインタフェース60のPLE制御回路67は、PDPモジュール70に対して輝度の制御を行う。具体的には、平均輝度レベルが所定値以下である場合には表示輝度を上昇させ、平均輝度レベルが所定値を超える場合には表示輝度を低下させる。PLE制御回路67では、平均輝度レベルに応じて輝度制御データが設定され、入力インタフェース信号処理回路74内の図示しない輝度レベル制御回路へ送出される。
【0046】
システム・コントロール回路66からは、各種制御信号がPDPモジュール70へ送出される。たとえば、入力インタフェース信号処理回路74に入力されたR,G,B映像信号の平均輝度レベルは、同入力インタフェース信号処理回格74内の図示しない入力信号平均輝度レベル演算回路により計算され、たとえば10ビットデータとして出力される。デジタル信号処理制御回路71では、入力インタフェース信号処理回路74でこれらの各種信号が処理された後、制御信号がパネル部72に送出される。同時に、メモリ制御回路76及びドライバ制御回路77からメモリ制御信号及びドライバ制御信号がパネル部72に送出される。
【0047】
PDP82は、たとえば1365×768画素(放電セル、画素セル)を有している。同PDP82では、走査ドライバ78Aで走査電極が駆動され、維持ドライバ78Bで維持電極が駆動され、かつデータドライバ79A,79Bでデータ電極が駆動されることにより、これらの画素のうちの所定の画素の発光又は非発光が制御され、R,G,B映像信号に対応した表示が行われる。この場合、ドライバ制御回路77により、表示画面の1フィールド期間が、階調レベルに基づいて重み付けされた複数のサブフィールドに分割され、かつ、同各サブフィールドに、走査期間、維持期間及び予備放電期間が設定される。
【0048】
走査期間では、各走査電極に走査パルスが線順次に印加されると同時に各データ電極に同走査パルスに同期した表示データパルスが印加されることにより、選択された放電セルにアドレス放電が発生する。維持期間では、各維持電極と各走査電極とに維持パルスが交互に印加されて各放電セルが発光する。予備放電期間では、維持期間で発光した放電セルに対する維持消去放電、及び全ての放電セルに対するプライミング放電が行われる。また、ロジック用電源により、デジタル信号処理制御回路71及びパネル部72にロジック用電力が供給される。また、表示用電源からモジュール内電源回路73に直流電力が供給され、この直流電力の電圧が所定の電圧に変換された後、パネル部72に供給される。
【0049】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記各実施例では、AC面放電型の反射型プラズマディスプレイパネルを例に説明したが、この発明は、他の方式のプラズマディスプレイパネルにも適用できる。また、この発明は、たとえば、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display、FED)など、2枚の基板をフリットガラスによって封着する工程により製造する表示パネル全般に適用できる。また、上記各実施例では、溶融性封着材として、フリットガラスが用いられているが、フリットガラスと同様の機能を有する素材であれば、他のものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】反射型AC面放電型のカラープラズマディスプレイパネルの1つの放電セルの断面の一例を示す図である。
【図2】図1のカラープラズマディスプレイパネルの前面基板1と背面基板6とを張り合わせる封着及び排気工程を示す図である。
【図3】封着工程と排気工程とを連続して行う場合の、パネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図4】封着工程と排気工程とを連続して行う場合の、パネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化の他の例を示す図である。
【図5】この発明の第1の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図6】この発明の第2の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図7】図2のカラープラズマディスプレイパネルの要部、及び、この実施例の排気工程で用いられる排気装置の要部を示す構成図である。
【図8】この発明の第3の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図9】この発明の第4の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図10】この発明の第5の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図11】この発明の第6の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図12】この発明の第7の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図13】この発明の第8の実施例であるカラープラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合の前面基板1と背面基板6とを張り合わせる工程を示す図である。
【図14】図13に示す封着及び排気工程を行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図15】この発明の第9の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを説明するための模式図である。
【図16】第1乃至第9の実施例のいずれか一つの製造方法により製造されたプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマ表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 前面基板
6 背面基板
9 隔壁
12 フリットガラス(溶融性封着材)
12a 高軟化点フリットガラス(第1の溶融性封着材)
12b 低軟化点フリットガラス(第2の溶融性封着材)
31 圧力ゲージ(検出手段)
32,33,35,36,38,40 バルブ(表示パネルの製造装置の一部)
34 流量調節バルブ(表示パネルの製造装置の一部)
37 真空ポンプ(表示パネルの製造装置の一部)
39 洗浄ガス貯蔵部(表示パネルの製造装置の一部)
41 放電ガス貯蔵部(表示パネルの製造装置の一部)
51 パネル(表示パネル)
52 カート(台車、表示パネルの製造装置の一部)
82 PDP(プラズマディスプレイパネル、表示パネル)
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示パネル、該表示パネルの製造方法及び製造装置に係り、特にプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、PDP)やフィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display、FED)などのように、少なくとも一方の基板に隔壁が形成された2枚の基板の周囲を溶融ガラスを介して張り合わせた後、加熱封着して内部を排気することにより製造される表示パネル、該表示パネルの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)やフィールドエミッションディスプレイ(FED)などの表示パネルは、2枚の基板の周囲がフリットガラス(溶融ガラス)を介して加熱封着され、真空排気する工程により製造される。プラズマディスプレイパネルでは、ガス放電によって発生した紫外線によって蛍光体が励起発光し、表示動作が行われる。
【0003】
図1は、反射型AC面放電型のカラープラズマディスプレイパネルの1つの放電セルの断面の一例を示す図である。
この放電セルは、1つの画素セルに対応し、表示面側となる透明なガラス板である前面基板1上に透明電極2,2が形成されている。この透明電極2,2は、この図1の面に対して垂直方向に複数本形成され、1つの放電セルに対して放電ギャップGを挟んで一対の走査電極及び維持電極として設けられ、面放電電極対が構成されている。同一放電セル内で、これらの隣り合う透明電極2の間にパルス状のAC電圧が印加され、表示放電が行われる。透明電極2,2は、酸化錫(SnO2 )やインジウムチンオキサイド(Indium Tin Oxide、ITO)などで形成され、低抵抗化のために、バス電極3,3が重なるように形成されている。
【0004】
バス電極3,3は、銀などの金属厚膜、あるいはクロム/銅/クロム、クロム/アルミなどの多層薄膜や、アルミニウム薄膜などの金属薄膜で形成されている。バス電極3,3を銀の厚膜で形成する場合、コントラスト向上のために若干の黒色顔料が混合され、銀の厚膜と透明電極2,2との間に黒色顔料を多く混合した銀の厚膜や黒色顔料層を挟む2層構造が採用されることが多い。黒色顔料は、コバルト、鉄、ニッケルなどの酸化物や導電性の酸化ルテニウムなどが用いられる。この面放電電極対(透明電極2,2及びバス電極3,3)の上は、透明誘電体層4で被覆されている。透明誘電体層4は、通常、低融点鉛ガラスや酸化亜鉛系の低融点ガラスを主成分とする厚膜ペーストを基板上に塗布、又は、これらを主成分とする厚膜シートを基板上に貼付し、軟化温度(「軟化点」ともいう)程度、あるいは、それ以上の温度で焼成することにより形成される。この場合、膜厚は10μm乃至40μm程度である。また、透明誘電体層4を被覆するように保護層5が形成されている。この保護層5は、通常、蒸着法やスパッタ法によって形成されるMgOの薄膜であり、膜厚は0.5μm乃至2μm程度である。この保護層5の役割は、放電開始電圧の低減、及び放電による表面スパッタの抑制である。
【0005】
一方、背面基板6上には、表示データが書き込まれるデータ電極7が面放電電極対(透明電極2,2及びバス電極3,3)と直行する方向に、放電セル毎に1本形成されている。
データ電極7は、銀などの金属厚膜、クロム/銅/クロム、クロム/アルミなどの金属多層薄膜、あるいはアルミニウム薄膜などの金属薄膜で形成されている。このデータ電極7の上は、白色誘電体層8で被覆されている。白色誘電体層8は、低融点鉛ガラスや酸化亜鉛系低融点ガラスと白色の顔料とが混合され、透明誘電体層4と同様の方法で形成されている。白色の顔料は、白色誘電体層8の反射率を上げ、輝度及び発光効率を向上させるために、通常、酸化チタン粉末やアルミナ粉末が用いられる。なお、この白色顔料は、用いられないこともあり、さらに、この白色誘電体層8が形成されないこともある。この白色誘電体層8の上には、隔壁9が形成されている。
【0006】
隔壁9の材料は、低融点鉛ガラスや酸化亜鉛系低融点ガラスとアルミナなどの骨材の混合物である。この隔壁9により放電空間10が囲われ、また、1つの放電セルが画成される。隔壁9のディメンジョンは、たとえば、トリオピッチが0.81mmの場合、隔壁幅50μm、高さ120μm程度であり、アスペクト比が高い。隔壁9の表示面側から見た形状は、たとえば、梯子状、格子状、ストライプ状、ハニカム状などである。この隔壁9の形成は、通常、サンドブラスト法によって行われる。また、白色誘電体層8及び隔壁9の放電空間10を囲う面に、各放電セルの発光色に対応する蛍光体11が塗布されている。この蛍光体11は、たとえばスクリーン印刷法やディスペンサー法によって塗布される。
【0007】
さらに、背面基板6の周囲にフリットガラスが形成され、前面基板1と同背面基板6とが張り合わされて気密封止されている。この場合、通常、ディスペンサー法やスクリーン印刷法により、フリットガラスペーストが塗布され、焼成して形成される。なお、この図1は、1つの放電セルの断面図なので、フリットガラスは図示されていない。フリットガラスは、通常、背面基板6上に形成されるが、前面基板1上でもよく、また、両方の基板上に形成しても良い。
【0008】
図2は、図1のカラープラズマディスプレイパネルの前面基板1と背面基板6とを張り合わせる封着及び排気工程を示す図である。
この封着工程では、同図2に示すように、隔壁9が形成された背面基板6と前面基板1とが組み合わせられる。この場合、背面基板6の周囲にフリットガラス12が形成され、隔壁9を囲うように前面基板1が張り合わせられる。そして、前面基板1及び背面基板6の周囲が治具(封着クリップ21)により圧着され、フリットガラス12が軟化する温度よりも高い温度で加熱される。この段階では、フリットガラス12の膜厚が隔壁9よりも高いので、2枚の基板の間には隙間が生じる。この後、加熱が進行し、フリットガラス12が軟化することにより、隔壁9の頂部と前面基板1とが密着する。排気管22は、前面基板1及び背面基板6の封着と同時に排気管フリットガラス23によって同背面基板6に接着される。前面基板1及び背面基板6が密着された後、排気工程に移り、パネル内部のガスが排気管22を経て真空排気される。この排気工程は、上記封着工程と独立して行ってもよく、また、連続して行うこともできる。
【0009】
図3は、封着工程と排気工程とを連続して行う場合の、パネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図であり、縦軸に温度及びパネル真空度、及び横軸に時間がとられている。また、特性曲線Aは温度プロファイル、及び特性曲線Bがパネル内の圧力変化を示す。
封着クリップ21によって組み合わされた2枚の基板1,6は、図3に示すように、徐々にフリットガラス12の軟化温度(通常、410℃〜430℃程度)以上(たとえば、450℃程度)まで加熱される(時刻t1)。この温度が数分から数十分キープされ、2枚の基板1,6の周囲は軟化したフリットガラス12でシール(接着)され、パネル内と外部とが遮断された状態になる(時刻t2)。この段階では、2枚の基板1,6は完全には密着していない。さらに、この温度を維持することによって、封着クリップ21の圧力で徐々に基板1,6が密着する(時刻t3)。この後、温度をフリットガラス12の軟化温度よりも低下させる(時刻t4)。この時点でフリットガラス12は固化し、封着が完了している。この後、時刻t5からパネル内を真空排気(真空引き開始)する。
【0010】
時刻t5のときの温度は、フリットガラス12の軟化点より若干低い400℃程度である。この温度を数時間から数十時間保った後、時刻t6から時刻t7にかけて室温まで冷却する。そして、放電空間10の内部に、放電可能なガス、たとえばNeとXeとの混合ガスやHeとNeとXeとの混合ガスを40kPaから70kPa程度の圧力で封入する。また、真空排気の途中で、パネル内に洗浄ガスを導入して数分から数十分保持し、その後、洗浄ガスを排気する工程を行うこともある。洗浄ガスは、酸素、希ガス、窒素、水素などのガス、もしくは、これらのうちのいくつかの混合ガスで構成されている。温度を380℃から420℃程度に保った状態でパネル内に同洗浄ガスを導入することにより、同パネル内部の汚染物質や水分が分解され、洗浄ガスと一緒に排気される。この洗浄ガスの導入、保持及び排気を数回繰り返すことにより、より良い状態でパネル内の洗浄が行われる。
【0011】
上記のカラープラズマディスプレイパネルの他、従来、この種の技術としては、たとえば、次のような文献に記載されたものがある。
特許文献1に記載されたプラズマディスプレイパネルは、前面基板と、背面基板と、これらの基板の間に形成される放電空間と、同放電空間を画素毎に区切る隔壁と、容器外周部に両基板を封止するためのシールフリットと、隔壁と前面基板との間に封着温度よりも相対的に軟化点温度が高いガラスからなるスペーサとを備える。同パネルの製造方法では、同スペーサは、前面基板と隔壁との間に所定の間隙をもって形状を保持し排気パスを確保する。排気が完了した後にスペーサの軟化点以上の温度で加熱することにより、同スペーサを溶融させて前面基板と隔壁との間隙を塞ぐ。この後、パネル内に放電ガスを封入する。
【特許文献1】特開2002−260537号公報(要約書、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のカラープラズマディスプレイパネルの製造方法では、次のような問題点があった。
すなわち、封着時にフリットガラス12が十分に軟化して2枚の基板1,6が密着した後、排気工程や、洗浄ガスによるパネル内洗浄工程に対応した処理が行われる。ところが、多くの場合、プラズマディスプレイパネルは、各放電セルが隔壁9によって区切られているため、パネル内の排気コンダクタンスは著しく低い。基板が密着する前(すなわち、図3中の時刻t3まで)は排気コンダクタンスが比較的高いが、排気は、後の時刻t5から行われるので、排気コンダクタンスの低い状態で行われる。特に、隔壁9が、格子状、梯子状やハニカム状の場合、放電セルが完全に閉じた構造となっているため、非常に排気コンダクタンスが低くなる。
【0013】
排気コンダクタンスを高くするために、隔壁9に数μmから数十μmの段差を設け、隙間を形成する方法もあるが、製造プロセスが複雑になり、また隣接する放電セル間の干渉により動作マージンが狭くなるという欠点がある。また、ストライプ形状の隔壁もあるが、上下方向(データ電極が延びる方向)の干渉が強いため、電極形状や駆動方法に大きな制約が生じ、また、隔壁側面に塗布する蛍光体の面積が減るため、輝度発光効率が低下するという欠点がある。
【0014】
また、図4に示すように、封着時に2枚の基板1,6が密着する前の排気コンダクタンスが高い段階で真空引きを開始する方法もあるが、実際に高コンダクタンスの状態で意味がある排気時間は、基板1,6がシールされてから密着するまでのわずかな時間(時刻t2〜時刻t3)でしかない。従って十分な排気ができない。また、基板1,6がシールされた段階が不明確なため、温度を下げるタイミング(時刻t4)の設定が難しい。これが早すぎると、基板1,6がシールされていない可能性があり、また、遅すぎると、フリットガラス12が軟化している高温で長時間真空排気を行うので、同フリットガラス12中の気泡が成長して外気がリークする可能性が高くなる。このため、この方法を実際の生産に適用することは効果が少ない上に非常に困難が伴う。また、この排気コンダクタンスの問題は、単に排気工程にとどまらず、パネル内を洗浄ガスによって洗浄する際も障害になる。すなわち、排気コンダクタンスが低い場合、排気管近傍と離れた場所とでは洗浄状態が異なり、完成後のパネルの均一性を大きく悪化させるという問題点がある。この発明が解決しようとする課題としては、この問題点が一例として挙げられる。
【0015】
また、特許文献1に記載されたプラズマディスプレイパネルの製造方法では、前面基板と隔壁とがガラススペーサにより所定の間隙をもって接合され、加熱工程で、封着温度よりも相対的に高い温度でパネルが加熱されて同ガラススペーサが溶融され、間隙が埋められるが、この発明とは、構成が異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法に係り、前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記軟化温度よりも低い温度で前記溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気した後、再び前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法に係り、前記溶融性封着材は、第1の軟化温度を有する第1の溶融性封着材と該第1の軟化温度よりも低い第2の軟化温度を有する第2の溶融性封着材との2層構造に構成され、前記第2の溶融性封着材を、前記第1の軟化温度よりも低く、かつ前記第2の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記第2の軟化温度よりも低い温度で前記第2の溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気し、前記第1及び第2の溶融性封着材を前記第1の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
溶融性封着材が軟化して第1の基板と第2の基板との周囲が密着する前に、温度が一旦溶融性封着材の軟化温度以下に下がり、同溶融性封着材が固化した状態で当該表示パネルの内部が高コンダクタンスで排気される。この後、温度が溶融性封着材の軟化温度以上になり、第1の基板と第2の基板との周囲が密着する。このため、表示パネル内の特性の高い均一性と信頼性が、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現できる。
【0019】
また、第2の溶融性封着材が、第1の軟化温度よりも低く、かつ第2の軟化温度以上の加熱により軟化することにより、第1の基板と第2の基板との周囲が隙間を含む状態で接着され、この後、第2の軟化温度よりも低い温度で第2の溶融性封着材が固化した状態で表示パネルの内部が高コンダクタンスで排気される。この後、第1及び第2の溶融性封着材が第1の軟化温度以上の加熱により軟化して第1の基板と第2の基板との周囲が密着する。このように、第2の溶融性封着材と第1の溶融性封着材とが異なる時間帯で軟化するので、最初の高コンダクタンスの状態と、第1の基板と第2の基板とが完全に密着する低コンダクタンスの状態との区別が明確になり、より温度及び圧力の制御がしやすくなる。
【実施例1】
【0020】
図5は、この発明の第1の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図であり、縦軸に温度及びパネル真空度、及び横軸に時間がとられている。また、特性曲線Aは温度プロファイル、及び特性曲線Bがパネル内の圧力変化を示す。
同図5、図1及び図2を参照して、この例のプラズマディスプレイパネルの製造方法について説明する。
図2中の封着クリップ21によって組み合わされた2枚の基板1,6は、同図5に示すように、徐々にフリットガラス12の軟化温度(通常、410℃〜430℃程度)以上(たとえば、450℃程度)まで加熱される(時刻t1)。この温度が数分から数十分保持されるため、2枚の基板1,6の周囲は、軟化したフリットガラス12で隙間を含む状態でシールされる(時刻t2)。ここで、「シール」とは、2枚の基板1,6の外周部が接着されたことを示すが、同基板1,6が密着したことは意味しないものとする(以下、同様)。
【0021】
この後、2枚の基板1,6が密着する前に、一旦、フリットガラス12の軟化温度よりも低い温度(たとえば、400℃程度)に下げる(時刻t3)。この段階では、フリットガラス12は固化している。このため、基板1,6が密着していない状態、すなわち高コンダクタンスの状態が維持される。この状態で真空排気を行う(時刻t4)。パネルの中央部では、大気圧により2枚の基板1,6が密着するが、周辺部では、隙間がある状態でフリットガラス12が固化しているので、従来の密着した状態よりも、はるかに高コンダクタンスである。この場合、排気時間は数時間から数十時間程度であるが、コンダクタンスが高いので、基板が密着している従来の方法と比べ、数分の一の排気時間で同等の結果が得られる。排気を所定の時間行った後、再び温度をフリットガラス12の軟化温度以上(たとえば、450℃程度)に上げて基板1,6を密着させる(時刻t5)。この場合、基板1,6の密着をすばやく行うために、温度を時刻t1の場合よりも若干高め(たとえば、460℃程度)にしても良い。この後、温度を室温まで下げる(時刻t6)。この後、従来と同様に放電ガスを封入する。
【0022】
以上のように、この第1の実施例では、フリットガラス12を軟化温度以上の加熱により軟化させて基板1,6の周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、同軟化温度よりも低い温度で同フリットガラス12を固化させた状態でパネルの内部を排気した後、再び同フリットガラス12を同軟化温度以上の加熱により軟化させて同基板1,6の周囲を密着させるようにしたので、同パネル内の特性の高い均一性と信頼性が、低コスト、高スループット及び高歩留まりで実現する。
【実施例2】
【0023】
図6は、この発明の第2の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図6に示すように、第1の実施例と同様に、フリットガラス12の軟化温度(例えば、420℃程度)以上に2枚の基板1,6を加熱するが、同基板1,6がシールされる時刻t3よりも前から同基板1,6間の減圧を開始する。同図6では、時刻t2より前の時刻t1から減圧を開始しているが、時刻t3より前であれば、どのタイミングでも良い。この段階では、基板1,6はシールされていないので、排気速度を遅く設定した方が良い。時刻t3で基板1,6がシールされると、減圧の速度が上がってくる。そして、基板1,6が密着する前に温度をフリットガラス12の軟化温度より下げる(時刻t4)。この場合、温度を400℃程度に下げ、第1の実施の形態と同様に、高コンダクタンスの状態で数十分から数十時間排気(このとき、最初の減圧より排気速度を上げると良い)を行い、時刻t6で再び温度を450℃まで上げ、基板1,6を密着させ、この後、室温まで下げて放電ガスを封入する(時刻t7)。
【0024】
図7は、図2のカラープラズマディスプレイパネルの要部、及び、この実施例の排気工程で用いられる排気装置の要部を示す構成図である。
この排気装置は、圧力ゲージ31と、バルブ32と、バルブ33と、流量調節バルブ34と、バルブ35と、バルブ36と、真空ポンプ37と、バルブ38と、洗浄ガス貯蔵部39と、バルブ40と、放電ガス貯蔵部41とから構成されている。この排気装置では、最初に遅い排気速度で排気する場合、バルブ32を閉じ、かつバルブ33,35,36を開いた状態で流量調節バルブ34を経由して真空ポンプ37によりパネル内を排気する。そして、図6中の時刻t5に達したとき、バルブ33及びバルブ35を閉じ、かつバルブ32を開いた状態で、速い排気速度で真空ポンプ37によりパネル内を真空に引く。
【0025】
以上のように、この第2の実施例では、基板1,6の周囲を隙間を含む状態でシールする前の段階から当該表示パネルの内部を排気するようにしたので、第1の実施例と比較して高コンダクタンス状態での排気時間が長くとれるので、トータルの排気時間がより短くて済むという利点がある。
【実施例3】
【0026】
図8は、この発明の第3の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図8に示すように、第2の実施例と同様に、時刻t3よりも前から基板1,6間の減圧を開始するが、時刻t3で基板1,6がシールされたとき、このシールのタイミングを検出する操作を行う。このタイミングの検出は、たとえば図7中の圧力ゲージ31で行う。すなわち、減圧を行っている状態で基板1,6の周囲がフリットガラス12で全てシールされると、排気速度が上がり、基板1,6の間の気体の圧力が時刻t3以前より大きく下がる。この変化を圧力ゲージ31で読み取る。この場合、予め設定された圧力の閾値に基づいて時刻t3でシールを検出した後、温度を速やかにフリットガラス12の軟化温度以下に下げる(時刻t4)。また、この閾値は、気体の圧力の変化率に対応して設定したものでもよい。
【0027】
上記シールのタイミングを検出する操作を速やかに行うことにより、基板1,6がなるべく密着しない、すなわち、より高コンダクタンスの状態でフリットガラス12が固化されるので、排気の効率が大幅に向上する。また、フリットガラス12が軟化した状態で真空に引く時間がより短くなるため、同フリットガラス12中の気泡が成長して外気がリークする危険性も低減される。また、シールを検出する操作を導入することにより、ほぼ理想的に高コンダクタンス状態で排気が行われる。
【実施例4】
【0028】
図9は、この発明の第4の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図9に示すように、時刻t5までは第3の実施例と同様の処理を行う。この後、時刻t6で、パネル内に所定のガス、たとえば放電ガスや洗浄ガスを導入し、大気圧までの復圧を行う。放電ガスは、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの混合ガス、洗浄ガスは、酸素、水素、窒素、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe)などの混合ガスである。
【0029】
そして、時刻t7で、温度をフリットガラス12の軟化点以上に上げるが、上記復圧により、フリットガラス12内部の気泡が成長して外気がリークする危険性が極めて少なくなる。この場合、温度を時刻t2の場合より高くしても、上記復圧により発泡の危険性がなくなるので、より短時間で安全確実に基板1,6が密着する。この後、時刻t8で、大気圧から真空引きが開始し、温度を室温まで下げる(時刻t9)。なお、上記復圧では、圧力が大気圧となっているが、大気圧より低い圧力、たとえば40kPa(約300Torr)程度でも、ほぼ同様の結果が得られる。
【実施例5】
【0030】
図10は、この発明の第5の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図10に示すように、時刻t5までは第4の実施例と同様の処理を行うが、パネルの内部に所定のガスを導入して所定時間保持することにより、復圧のタイミングの時刻t6から昇温の時刻t7までの間隔を長くしている。これは、復圧を洗浄ガスで行い、時刻t6から時刻t7の時間を十分にとって洗浄効果を高めるためである。時刻t6から時刻t7までの時間は、たとえば30分程度であるが、この時間は、パネルの大きさやパネル内の構造や汚染状況により数分から数時間行うこともある。時刻t7以降は、第4の実施例と同様の処理を行う。また、復圧の圧力は、第4の実施例と同様であるが、できるだけ大気圧、もしくはそれに近い圧力が望ましい。
【0031】
また、時刻t3から時刻t7では、基板1,6が完全には密着していないので、高コンダクタンスではあるが、パネル内を真空に引いているときは、同パネルの中央部が大気圧で押しつぶされている。一方、パネルの周辺部では、基板1,6間に隙間があるので、高い排気コンダクタンスを確保できるが、洗浄ガスでパネル内を洗浄する場合は、同洗浄ガスの圧力でパネルの中央部にも間隙を作り、より多くの洗浄ガスで効率的に洗浄を行うことがより好ましい。
【実施例6】
【0032】
図11は、この発明の第6の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、同図11に示すように、上記実施例5と同様のガス洗浄を複数回繰り返す。すなわち、時刻t6で洗浄ガスの導入により復圧して所定時間保持した後、時刻t7で再び真空排気する。この後、時刻t8で復圧し、温度を上げて基板1,6を密着させる。このように、高コンダクタンスの状態でガス洗浄と排気とを繰り返すことにより、より効率的にパネル内が洗浄される。この実施例では、ガス洗浄を2回行っているが、より多数回行っても良い。
【実施例7】
【0033】
図12は、この発明の第7の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。さらに、同図12では、この例の製造方法に用いられる封着炉内の圧力が特性曲線Cにより示されている。
この例の製造方法に用いられる封着炉は、炉内が減圧される構造となっている。そして、同図12に示すように、上記各実施例と同様に、シール後に温度を下げ、高コンダクタンスの状態でパネル内の真空引きを行う(時刻t5)。このとき、パネル中央部は、大気圧で押されるので、ほぼ密着する。パネル周囲は、隙間があるので、コンダクタンスは高いが、より高コンダクタンスとするために、特性曲線Cに示すように、この段階で封着炉内を減圧する。これにより、大気圧で押しつぶされていたパネル中央部が元に戻り、パネル全面に亘って極めて高い排気コンダクタンスが確保される。
【実施例8】
【0034】
図13は、この発明の第8の実施例であるカラープラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合の前面基板1と背面基板6とを張り合わせる工程を示す図であり、図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この例の封着工程では、同図13に示すように、背面基板6の周囲に、図2中のフリットガラス12に代えて、高軟化点フリットガラス12a及び同高軟化点フリットガラス12aの上に低軟化点フリットガラス12bが形成され、2層構造に構成されている。高軟化点フリットガラス12aは、隔壁9の高さよりも高く設定され、また、軟化温度が比較的高く、たとえば440℃程度である。低軟化点フリットガラス12bは、高軟化点フリットガラス12aよりも軟化温度が低く、たとえば420℃程度である。
【0035】
図14は、図13に示す封着及び排気工程を行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
この例の製造方法では、背面基板6を前面基板1と組み合わせた後、同図14に示すように、温度を低軟化点フリットガラス12bの軟化温度以上、かつ高軟化点フリットガラス12aの軟化温度以下、たとえば430℃に上げる(時刻t2)。すると、低軟化点フリットガラス12bのみが軟化して基板1,6の周囲がシールされる(時刻t3)。減圧は、この時刻t3より前の任意のタイミング(たとえば、図14では時刻t1)から始めているので、シールのタイミング(時刻t3)は検出され、すぐに温度が低軟化点フリットガラス12bの軟化温度以下、たとえば400℃程度に下げられる(時刻t4)。続いて、排気速度の高い真空引きを開始する(時刻t5)。所定の時間、たとえば数時間から数十時間真空排気を行った後、今度は、高軟化点フリットガラス12aの軟化温度以上、たとえば450℃まで温度を上げる(時刻t6)。これで、高軟化点フリットガラス12aも軟化し、基板1,6が完全に密着する。
【0036】
このように、低軟化点フリットガラス12bと高軟化点フリットガラス12aとが異なる時間帯で軟化するので、最初の高コンダクタンスの状態(時刻t3から時刻t6)と、最終的に基板1,6が完全に密着する低コンダクタンスの状態(時刻t6以降)との区別が非常に明確になり、より温度及び圧力の制御がしやすくなる。
【0037】
この実施例では、シールを検出してから温度を下げる方法を例にして説明したが、上記第1の実施例や第2の実施例のように、シールを検出しない方法でも、時刻t3から時刻t4の段階では、高軟化点フリットガラス12aが軟化していないので、温度を下げずに高コンダクタンスの状態が維持され、より確実に温度及び圧力の制御が可能となる。また、この実施例で、第4、第5又は第6の実施例と同様に、放電ガスや洗浄ガスによる復圧を行っても良い。
【実施例9】
【0038】
図15は、この発明の第9の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを説明するための模式図であり、同図(a)は、同実施例と比較するための従来の工程を示す図、及び同図(b)が、同実施例の工程を示す図である。
従来の封着工程及び排気工程では、同図(a)に示すように、パネル51は、図2中の基板1,6が封着クリップ21で固定された状態で、各カート(台車)52毎に複数枚搭載されている。この枚数は、通常、数枚から数十枚である。各カート52には、図示しない真空排気装置が設けられ、外部からの制御でパネル51の内部を真空に引いたり、洗浄ガスや放電ガスを導入するようになっている。そして、特性曲線Aに示す炉の温度プロファイルのように設定されたトンネル炉の左から右へ複数のカート52を通してパネル51を順次搬送することにより、熱処理が行われる。実際の生産では、トンネル炉が一杯に満たされる以上の台数のカート52が次々に移動することにより、封着工程及び排気工程が連続的に行われる。
【0039】
一方、この例の封着工程及び排気工程では、同図(b)に示すように、トンネル炉が、温度を一旦下げてから再び上げる特性曲線Aのような温度プロファイルに設定されている。
カート52は、左から右へ進行し、そのまま一定速度で動いても良いが、シールを検出する機構を設けた場合、シールの検出から温度を下げる領域に達するまで遊び期間Dを設けると、より良い。カート52は、シールを検出(E)すると移動速度を上げ、遊び期間Dを経て温度が下がった領域に入る。このトンネル炉の機構により、シールの検出Eから温度を下げるまでの工程が速やかに行われ、より高コンダクタンスの状態が得られて排気効率が向上する。
【0040】
上記第1乃至第8の実施例の封着工程及び排気工程は、バッチ処理でも連続処理でも適用可能であるが、この第9の実施例に示すように、連続処理に適用することにより、より優れた生産性が得られる。
【実施例10】
【0041】
図16は、第1乃至第9の実施例のいずれか一つの製造方法により製造されたプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマ表示装置の電気的構成の一例を示す概略のブロック図である。
このプラズマ表示装置は、アナログインタフェース60と、PDPモジュール70とから構成されている。アナログインタフェース60は、クロマ・デコーダを備えるY/C(輝度色)分離回路61と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路62と、PLL(位相ロック)回路を有する同期信号制御回路63と、画像フォーマット変換回路64と、逆γ変換回路65と、システム・コントロール回路66と、PLE(Peak Luminance Enhancement)制御回路67とから構成されている。PDPモジュール70は、デジタル信号処理制御回路71と、パネル部72と、DC/DCコンバータを内蔵するモジュール内電源回路73とから構成されている。デジタル信号処理制御回路71は、入力インタフェース信号処理回路74と、フレームメモリ75と、メモリ制御回路76と、ドライバ制御回路77とから構成されている。
【0042】
パネル部72は、PDP82と、同PDP82の走査電極を駆動する走査ドライバ78Aと、同PDP82の維持電極を駆動する維持ドライバ78Bと、データ電極を駆動するデータドライバ79A,79Bと、PDP82及び走査ドライバ78Aにパルス電圧を供給する高圧パルス回路80A,80Bと、同高圧パルス回路80A,80Bで発生する余剰電力を回収する電力回収回路81とから構成されている。
【0043】
このプラズマ表示装置では、概略的には、インタレースに対応したアナログ映像信号がアナログ・インタフェース60でデジタル映像信号に変換され、同デジタル映像信号がPDPモジュール70に供給される。たとえば、図示しないテレビチューナなどから出力されたアナログ映像信号は、Y/C分離回路61でR,G,Bの各色の輝度信号に分離された後、A/D変換回路62でデジタル映像信号に変換される。
【0044】
また、PDP82の入力信号に対する表示輝度の特性は線形的に比例するが、通常の映像信号はCRTの特性に合わせて予め補正(γ変換)されている。このため、A/D変換回路62においてアナログ映像信号のA/D変換が行われた後、逆γ変換回路65で逆γ変換が行われる。この逆γ変換において、線形特性に復元されたデジタル映像信号が生成される。このデジタル映像信号は、R,G,B映像信号としてPDPモジュール70へ出力される。
【0045】
また、アナログ映像信号には、A/D変換用のサンプリングクロック及びデータクロック信号が含まれていないため、同期信号制御回路63に内蔵されているPLL回路で、アナログ映像信号と同時に供給される水平同期信号を基準としてサンプリングクロック及びデータクロック信号が生成され、PDPモジュール70へ出力される。また、アナログインタフェース60のPLE制御回路67は、PDPモジュール70に対して輝度の制御を行う。具体的には、平均輝度レベルが所定値以下である場合には表示輝度を上昇させ、平均輝度レベルが所定値を超える場合には表示輝度を低下させる。PLE制御回路67では、平均輝度レベルに応じて輝度制御データが設定され、入力インタフェース信号処理回路74内の図示しない輝度レベル制御回路へ送出される。
【0046】
システム・コントロール回路66からは、各種制御信号がPDPモジュール70へ送出される。たとえば、入力インタフェース信号処理回路74に入力されたR,G,B映像信号の平均輝度レベルは、同入力インタフェース信号処理回格74内の図示しない入力信号平均輝度レベル演算回路により計算され、たとえば10ビットデータとして出力される。デジタル信号処理制御回路71では、入力インタフェース信号処理回路74でこれらの各種信号が処理された後、制御信号がパネル部72に送出される。同時に、メモリ制御回路76及びドライバ制御回路77からメモリ制御信号及びドライバ制御信号がパネル部72に送出される。
【0047】
PDP82は、たとえば1365×768画素(放電セル、画素セル)を有している。同PDP82では、走査ドライバ78Aで走査電極が駆動され、維持ドライバ78Bで維持電極が駆動され、かつデータドライバ79A,79Bでデータ電極が駆動されることにより、これらの画素のうちの所定の画素の発光又は非発光が制御され、R,G,B映像信号に対応した表示が行われる。この場合、ドライバ制御回路77により、表示画面の1フィールド期間が、階調レベルに基づいて重み付けされた複数のサブフィールドに分割され、かつ、同各サブフィールドに、走査期間、維持期間及び予備放電期間が設定される。
【0048】
走査期間では、各走査電極に走査パルスが線順次に印加されると同時に各データ電極に同走査パルスに同期した表示データパルスが印加されることにより、選択された放電セルにアドレス放電が発生する。維持期間では、各維持電極と各走査電極とに維持パルスが交互に印加されて各放電セルが発光する。予備放電期間では、維持期間で発光した放電セルに対する維持消去放電、及び全ての放電セルに対するプライミング放電が行われる。また、ロジック用電源により、デジタル信号処理制御回路71及びパネル部72にロジック用電力が供給される。また、表示用電源からモジュール内電源回路73に直流電力が供給され、この直流電力の電圧が所定の電圧に変換された後、パネル部72に供給される。
【0049】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記各実施例では、AC面放電型の反射型プラズマディスプレイパネルを例に説明したが、この発明は、他の方式のプラズマディスプレイパネルにも適用できる。また、この発明は、たとえば、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display、FED)など、2枚の基板をフリットガラスによって封着する工程により製造する表示パネル全般に適用できる。また、上記各実施例では、溶融性封着材として、フリットガラスが用いられているが、フリットガラスと同様の機能を有する素材であれば、他のものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】反射型AC面放電型のカラープラズマディスプレイパネルの1つの放電セルの断面の一例を示す図である。
【図2】図1のカラープラズマディスプレイパネルの前面基板1と背面基板6とを張り合わせる封着及び排気工程を示す図である。
【図3】封着工程と排気工程とを連続して行う場合の、パネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図4】封着工程と排気工程とを連続して行う場合の、パネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化の他の例を示す図である。
【図5】この発明の第1の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図6】この発明の第2の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図7】図2のカラープラズマディスプレイパネルの要部、及び、この実施例の排気工程で用いられる排気装置の要部を示す構成図である。
【図8】この発明の第3の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図9】この発明の第4の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図10】この発明の第5の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図11】この発明の第6の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図12】この発明の第7の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図13】この発明の第8の実施例であるカラープラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを連続して行う場合の前面基板1と背面基板6とを張り合わせる工程を示す図である。
【図14】図13に示す封着及び排気工程を行う場合のパネルにかける温度プロファイル及び同パネル内の圧力変化を示す図である。
【図15】この発明の第9の実施例であるプラズマディスプレイパネルの製造方法における封着工程と排気工程とを説明するための模式図である。
【図16】第1乃至第9の実施例のいずれか一つの製造方法により製造されたプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマ表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 前面基板
6 背面基板
9 隔壁
12 フリットガラス(溶融性封着材)
12a 高軟化点フリットガラス(第1の溶融性封着材)
12b 低軟化点フリットガラス(第2の溶融性封着材)
31 圧力ゲージ(検出手段)
32,33,35,36,38,40 バルブ(表示パネルの製造装置の一部)
34 流量調節バルブ(表示パネルの製造装置の一部)
37 真空ポンプ(表示パネルの製造装置の一部)
39 洗浄ガス貯蔵部(表示パネルの製造装置の一部)
41 放電ガス貯蔵部(表示パネルの製造装置の一部)
51 パネル(表示パネル)
52 カート(台車、表示パネルの製造装置の一部)
82 PDP(プラズマディスプレイパネル、表示パネル)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法であって、
前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記軟化温度よりも低い温度で前記溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気した後、再び前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法であって、
前記溶融性封着材は、第1の軟化温度を有する第1の溶融性封着材と該第1の軟化温度よりも低い第2の軟化温度を有する第2の溶融性封着材との2層構造に構成され、前記第2の溶融性封着材を、前記第1の軟化温度よりも低く、かつ前記第2の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記第2の軟化温度よりも低い温度で前記第2の溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気し、前記第1及び第2の溶融性封着材を前記第1の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を前記隙間を含む状態で接着する前の段階から当該表示パネルの内部を排気する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が前記隙間を含む状態で接着されるタイミングを検出することを特徴とする請求項3記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が前記隙間を含む状態で接着されるタイミングは、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の気体の圧力が所定の基準値よりも低下したときに検出することを特徴とする請求項4記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が隙間を含む状態で接着されるタイミングは、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の気体の圧力の変化率が所定の基準値を上回ったときに検出することを特徴とする請求項4記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
当該表示パネルの内部を排気した後、前記加熱を行う前に前記表示パネルの内部に所定のガスを導入する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記表示パネルの内部に前記所定のガスを導入して所定時間保持する工程を含むことを特徴とする請求項7記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記表示パネルの内部に前記所定のガスを導入して所定時間保持する工程と、
前記表示パネルの内部を排気する工程とを含み、これらの工程を交互に複数回繰り返すことを特徴とする請求項7記載の表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記所定のガスは、
各希ガス、酸素、窒素、又は水素のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7、8又は9記載の表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記表示パネルの内部を排気する工程の少なくとも一部の期間に、当該表示パネルを加熱する炉の内部の圧力を減圧する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の表示パネルの製造方法によって製造されたことを特徴とする表示パネル。
【請求項13】
請求項4、5又は6記載の表示パネルの製造方法に用いられ、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が隙間を含む状態で接着されるタイミングを検出するための検出手段を有することを特徴とする表示パネルの製造装置。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一つに記載の表示パネルの製造方法に用いられ、複数の当該表示パネルを加熱して順次搬送するためのトンネル状の炉を有することを特徴とする表示パネルの製造装置。
【請求項1】
互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法であって、
前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記軟化温度よりも低い温度で前記溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気した後、再び前記溶融性封着材を前記軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板上に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間で画素セルを画成するための隔壁とを有する表示パネルに対し、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を、所定の軟化温度を有する溶融性封着材を介して張り合わせ、加熱封着して内部を排気する工程を有する表示パネルの製造方法であって、
前記溶融性封着材は、第1の軟化温度を有する第1の溶融性封着材と該第1の軟化温度よりも低い第2の軟化温度を有する第2の溶融性封着材との2層構造に構成され、前記第2の溶融性封着材を、前記第1の軟化温度よりも低く、かつ前記第2の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を隙間を含む状態で接着し、この後、前記第2の軟化温度よりも低い温度で前記第2の溶融性封着材を固化させた状態で当該表示パネルの内部を排気し、前記第1及び第2の溶融性封着材を前記第1の軟化温度以上の加熱により軟化させて前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を密着させる工程を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲を前記隙間を含む状態で接着する前の段階から当該表示パネルの内部を排気する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が前記隙間を含む状態で接着されるタイミングを検出することを特徴とする請求項3記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が前記隙間を含む状態で接着されるタイミングは、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の気体の圧力が所定の基準値よりも低下したときに検出することを特徴とする請求項4記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が隙間を含む状態で接着されるタイミングは、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の気体の圧力の変化率が所定の基準値を上回ったときに検出することを特徴とする請求項4記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
当該表示パネルの内部を排気した後、前記加熱を行う前に前記表示パネルの内部に所定のガスを導入する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記表示パネルの内部に前記所定のガスを導入して所定時間保持する工程を含むことを特徴とする請求項7記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記表示パネルの内部に前記所定のガスを導入して所定時間保持する工程と、
前記表示パネルの内部を排気する工程とを含み、これらの工程を交互に複数回繰り返すことを特徴とする請求項7記載の表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記所定のガスは、
各希ガス、酸素、窒素、又は水素のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7、8又は9記載の表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記表示パネルの内部を排気する工程の少なくとも一部の期間に、当該表示パネルを加熱する炉の内部の圧力を減圧する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の表示パネルの製造方法によって製造されたことを特徴とする表示パネル。
【請求項13】
請求項4、5又は6記載の表示パネルの製造方法に用いられ、前記第1の基板と前記第2の基板との周囲が隙間を含む状態で接着されるタイミングを検出するための検出手段を有することを特徴とする表示パネルの製造装置。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一つに記載の表示パネルの製造方法に用いられ、複数の当該表示パネルを加熱して順次搬送するためのトンネル状の炉を有することを特徴とする表示パネルの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−128824(P2007−128824A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322404(P2005−322404)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000232151)パイオニアプラズマディスプレイ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000232151)パイオニアプラズマディスプレイ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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