説明

表示制御装置、撮像装置および表示制御プログラム

【課題】例えば夜間の屋外で天体撮影を行う場合に、ユーザがカメラの明るい表示画面を見てしまうと、目が明るさに慣れてしまい、暗い天体の観察に支障を生じる。
【解決手段】上記課題を解決するために、表示制御装置は、画像データを取得する画像取得部と、画像データに従って生成されるRGB信号を出力する第1出力と、画像データから生成されるG信号の出力値およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させたRGB信号を出力する第2出力とを切り替える表示制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、撮像装置および表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ等の表示装置を観察するユーザが感じる、観察画面と周辺環境の明るさの落差等による不快感を緩和すべく、表示装置の光源の輝度を変化させる技術が知られている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2004−264668号公報
[特許文献2]特開2009−204920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば夜間の屋外で天体撮影を行う場合に、ユーザがカメラの明るい表示画面を見てしまうと、目が明るさに慣れてしまい、暗い天体の観察に支障を生じる。また、暗い観客席から明るい舞台を撮影する場合には、ユーザの背後にいる観客にとって、カメラの表示画面が目障りとなることが多い。このような場合には、表示画面の輝度を下げても、人間の目に感じやすい色使いである以上、不都合は解消されなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様における表示制御装置は、画像データを取得する画像取得部と、画像データに従って生成されるRGB信号を出力する第1出力と、画像データから生成されるG信号の出力値およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させたRGB信号を出力する第2出力とを切り替える表示制御部とを備える。
【0005】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様における撮像装置は、上記の表示制御装置を備える。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様における表示制御プログラムは、画像データを取得する画像取得ステップと、画像データに従って生成されるRGB信号を出力する第1出力と、画像データから生成されるG信号の出力値およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させたRGB信号を出力する第2出力とを切り替える表示制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るカメラのシステム構成図である。
【図2】表示設定メニューを表示するカメラの背面図である。
【図3】表示態様の違いを概念的に説明する説明図である。
【図4】ヒストグラム表示を適用した場合の表示態様を説明する説明図である。
【図5】表示制御に関する動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係るカメラ10のシステム構成図である。カメラ10は、システム制御部11を備え、カメラ10を構成する各要素を直接的または間接的に制御する。システム制御部11は、システムメモリ12と通信する。システムメモリ12は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される。システムメモリ12は、カメラ10の動作時に必要な定数、変数、設定値、プログラム等を、カメラ10の非動作時にも失われないように記録している。特に、ユーザが設定する各種設定値は、カメラ10のメニュー項目として、種類に応じて複数に分類され、ユーザに提示するメニュー画面と共に管理されている。
【0011】
カメラ10は、光学系20を備える。光学系20は、主にズームレンズ、フォーカスレンズ、手振れ補正レンズを含むレンズ群21、および、レンズシャッタ22により構成される。被写体像は光軸に沿って光学系20に入射し、撮像素子31の結像面に結像する。
【0012】
撮像素子31は、光学系20を透過して入射する被写体像である光学像を光電変換する素子であり、例えば、CCD、CMOSセンサが用いられる。撮像素子31で光電変換された被写体像は、A/D変換器32でアナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0013】
デジタル信号に変換された被写体像は、画像データとして順次処理される。A/D変換器32によりデジタル信号に変換された画像データは、メモリ制御部33の制御に従い、一旦内部メモリ34に記憶される。内部メモリ34は、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリであり、例えばDRAM、SRAMなどが用いられる。内部メモリ34は、連写撮影、動画撮影において高速に連続して画像データが生成される場合に、画像処理の順番を待つバッファメモリとしての役割を担う。また、画像処理部35が行う画像処理、圧縮処理において、ワークメモリとしての役割も担うと共に、所定の目的に即して加工処理された画像データを一時的に保管する役割も担う。更に、システムメモリ12に記録されている定数、変数、設定値、プログラム等が適宜展開されて、カメラ10の制御に利用される。したがって、内部メモリ34は、これらの役割を担うに相当する十分なメモリ容量を備える。メモリ制御部33は、いかなる作業にどれくらいのメモリ容量を割り当てるかを制御する。
【0014】
画像処理部35は、設定されている撮影モード、ユーザからの指示に則して、画像データを所定の画像フォーマットに従った画像ファイルに変換する。例えば、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理を行う。また、動画像としてMPEGファイルを生成する場合、所定の画素数に縮小されて生成された連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理を行う。
【0015】
画像処理部35によって処理された静止画像ファイル、動画像ファイルは、メモリ制御部33の制御により、内部メモリ34から記録媒体IF38を介して、記録媒体50に記録される。記録媒体50は、フラッシュメモリ等により構成される、カメラ10に対して着脱可能な不揮発性メモリである。ただし、記録媒体50は、着脱式に限らず、カメラ10に内蔵される例えばSSDなどの記録媒体であっても良い。このとき、記録媒体50に記録された静止画像ファイル、動画像ファイルは、有線によるUSB、無線によるLAN等により外部へ出力される。
【0016】
画像処理部35で処理された画像データは、記録用に処理される画像データに並行して、表示用画像データを生成する。通常の表示用画像データは、記録用に処理される画像データをコピーして間引き処理された、画素数の少ない画像データである。つまり、記録用に処理される画像データに従って生成される通常の表示用画像データは、記録用の画像データと同様のカラー情報であるRGB情報を有する。このように生成された表示用画像データは、表示制御部36により、赤色信号であるR信号、緑色信号であるG信号および青色信号であるB信号に変換されて表示部37へ出力される。また、同時に、表示制御部36は表示部37のバックライトの輝度を調整する輝度調整信号を出力する。
【0017】
表示部37は、LCDパネルとバックライトを備える液晶ディスプレイユニットである。表示部37は、表示制御部36が出力するRGB信号および輝度調整信号を受け取り、LCDパネルの各画素でRGB信号の階調を生成しつつ、バックライトの輝度を調整することにより、表示用画像データをユーザに視認されるように表示する。
【0018】
記録の有無に関わらず、画像処理部35が撮像素子31の出力に従って逐次表示用画像データを生成して表示部37へ出力すれば、電子ビューファインダーとしてのライブビュー表示を実現することができる。したがって、表示部37は、静止画および動画撮影後の再生表示、撮影前および動画撮影中のライブビュー表示を実現することができる。
【0019】
表示制御部36は、撮像素子31の出力に従って生成される画像データと同様のRGB情報を有する通常の表示用画像データを出力する通常出力に替えて、撮像素子31の出力に対してG信号およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させた赤色出力を実行することができる。ここで赤色出力は、大別すると簡易出力と画質優先出力の2つのモードを有する。
【0020】
簡易出力が設定された場合、表示制御部36は、入力された通常の表示用画像データに対して、表示部37へ出力するG信号およびB信号の出力値を小さくする。例えば、通常の表示用画像を出力する場合のG信号およびB信号の出力値に対して、予め設定された減衰係数である0.3を掛けた値で出力する、または、完全に遮断すべくG信号およびB信号の出力を0とする。なお、以降の具体的な説明においては赤色出力の特性を顕著に示すべく、G信号およびB信号の出力を0とする場合を採用する。
【0021】
こうして出力されたRGB信号は、表示部37において、通常の表示用画像を表示した場合に比べて全体的に赤味が強い表示、または、完全に赤色のみの表示を実現する。簡易出力により赤色出力を実行する場合、表示制御部36は、入力される表示用画像に対して表示部37による赤色表示を高速に実現することができる。一方で、G信号およびB信号の出力を0とした場合に、被写体画像の少なくとも一部の領域に純粋な緑色領域または青色領域が存在するとその領域の像が欠落するので、ユーザが被写体像を視認しづらいと感じる場合もある。
【0022】
画質優先出力が設定された場合、表示制御部36は、入力された通常の表示用画像データを再加工する。具体的には、各R画素の値を、隣接するG画素とB画素の値を用いて変換する。例えば、当該R画素の通常の表示用画像データにおける値をr、隣接するG画素の通常の表示用画像データにおける値をg、隣接するB画素の通常の表示用画像データにおける値をbとすると、変換後の値r'は、下記の換算式により算出する。
r'=0.299×r+0.587×g+0.114×b
【0023】
なお、上記のrgbの各係数は、人間の目の比視感度に基づいて設定されている。表示制御部36は、このように各R画素の値を変換し、更にG画素およびB画素を0として、表示部37へRGB信号を出力する。
【0024】
こうして出力されたRGB信号は、表示部37において、赤色のみの豊かな階調表示を実現する。つまり、画質優先出力により赤色出力を実行する場合、表示制御部36は、入力される表示用画像に対して階調性を高いレベルで維持したまま、表示部37による赤色表示を実現する。特に、被写体画像の一部領域に純粋な緑色領域または青色領域が存在しても、像を欠落させることなく赤色の階調により表現されるので、ユーザの視認性が高い。一方で、R画素の値を変換する処理を要するので、簡易出力に比べて表示部37による表示までに若干の時間を要する。なお、R画素の値を変換する処理は、表示制御部36が行っても良いし、画像処理部35で行っても良い。
【0025】
また、表示制御部36は、表示する画像データに付随する情報、および、システムメモリ12に記録されたメニュー画面等も、表示部37に単独で、あるいは表示画像に重畳して表示させることもできる。画像データに付随する情報、メニュー画面等を表示させる場合であっても、表示制御部36は、上述の処理に従って通常出力と赤色出力を切り替えることができる。具体的な表示態様および表示の切り替えについては後述する。
【0026】
カメラ10は、ユーザからの操作を受け付ける操作部材39を複数備えているが、システム制御部11は、これら操作部材39が操作されたことを検知し、操作に応じた動作を実行する。また、カメラ10は操作部材39の類としてレリーズスイッチ40を備える。レリーズスイッチ40は、押下げ方向に2段階に検知できる押しボタンで構成されており、システム制御部11は、1段階目の押下げであるSW1の検知により撮影準備動作であるAF、AE等を実行し、2段階目の押下げであるSW2の検知により撮像素子31による被写体像の取得動作を実行する。
【0027】
照度センサ41は、表示部37の近傍に配設され、ユーザが表示部37を観察する観察環境としての外界の明るさを検出する。表示制御部36は、システム制御部11を介して照度センサ41の検出結果とユーザ設定を取得し、取得結果に応じて表示制御を変更する。具体的な変更処理については後述する。
【0028】
ズームレンズ、フォーカスレンズ、手振れ補正レンズはレンズ制御部42により制御されて、被写体像の画角を変更し、被写体像の特定領域を撮像素子31の受光面上で合焦させ、手ぶれを打ち消して撮像素子31の受光面上で安定した結像状態を維持する。レンズシャッタ22は、露光制御部43により制御されて、設定された絞り値およびシャッタ速度を実現する。
【0029】
図2は、表示設定メニューを表示するカメラの背面図である。カメラ10の背面には、表示部37の他に、操作部材39としての、カメラ10の背面には、表示部37の他に、操作部材39としての、ズームを指示するシーソースイッチ51、メニュー項目を選択する十字キー52、選択した項目を確定させる確定ボタン53、メニュー選択などに用いられる複数の押しボタン54を備える。
【0030】
図において表示部37には表示設定に関するメニュー項目が表示されており、ユーザは、十字キー52等を用いて順次設定項目を選択、確定させる。ユーザは「液晶モニターの表示設定」画面においてスクロールバー101を十字キー52で上下させて、「全画面赤色表示」のウィンドウ102を表示させる。
【0031】
ウィンドウ102には、赤色表示に関する設定項目が羅列されている。具体的にはトグルスイッチ103、104、105が表示されており、ユーザは、赤色表示を禁止したい場合にはトグルスイッチ103を選択し、環境に応じて自動で切り替えて欲しい場合にはトグルスイッチ104を選択し、常に赤色表示をさせたい場合にはトグルスイッチ105を選択する。トグルスイッチ103、104、105は、いずれか一つが選択され得る。
【0032】
ユーザがトグルスイッチ104、105を選択した場合は、オプションウィンドウ106がアクティブとなり、ユーザはオプション項目を選択することができる。オプションウィンドウ106には、赤色表示に付随する関連項目が選択できるように羅列されており、ユーザは、各項目に設けられたチェックボックス107、108、109、110を好みに合わせて任意に選択することができる。
【0033】
上述のように、赤色表示には簡易出力と画質優先出力が存在するが、ユーザは画質優先出力により赤色表示をさせたいときにはチェックボックス107を選択し、簡易出力により赤色表示させたいときにはチェックボックス107を未選択とする。また、赤色表示を行った場合には緑色情報、青色情報を色情報として視認することができなくなるので、ユーザは、RGBヒストグラム表示させて被写体画像に含まれる各色の輝度分布を把握したいときにはチェックボックス107を選択する。
【0034】
また、ユーザは、ハイライト領域の階調が失われる白飛びおよびシャドー領域の階調が失われる黒潰れが生じている被写体領域を、例えば点滅させて警告する警告表示を有効にしたいときにはチェックボックス109を選択する。また、一般的に赤色表示は視認性が落ちるので、ユーザは、赤色表示時にバックライトの輝度を、例えば観察環境の明るさに応じて高くしたいときにはチェックボックス110を選択する。
【0035】
ここで、表示制御部36が、表示用画像データを通常出力により表示部37に表示させる場合と、G信号およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させた赤色出力により表示部37に表示させる場合を切り替える意義について説明する。
【0036】
カメラ10はさまざまな環境下において使用されるが、例えば、夜間の屋外で天体撮影を行う場合であったり、暗い観客席から明るい舞台を撮影する場合などにおいては、撮影直後の撮影画像確認であるレックレビュー表示、撮影中のライブビュー表示、設定変更時のメニュー画面表示など、通常表示を行うと極端にまぶしく感じたり、周囲の人たちに迷惑となったりする。特に、通常表示における表示部からの光がユーザの目に届くと、比較的早い速度でユーザの目はその光の明るさに慣れてしまう明順応が起こり、再び暗い被写体を観察する場合に支障を来たす。これは、人間の目が暗いところで目が慣れる暗順応より、明るいところで目が慣れる明順応のほうがはるかに短時間ですむことに起因している。
【0037】
一方で、レックレビュー表示は撮影画像の出来をいち早く確認する上で重要な機能であり、ライブビュー表示は被写体の構図を決定する上で重要な機能であるので、暗い環境下であっても動作させたいという要求がある。もちろん、暗い環境下においてもカメラ10のメニュー項目を変更したいという要求もある。
【0038】
そこで、人間の視感度特性を利用する。視感度特性は、人間の目は波長により光を感じ取る強さに差があるという性質である。例えば、明るいところで、緑色である555nmの波長の光を目に受けたときに感じる強さは、赤色である700nmの波長の光を目に受けたときに感じる強さの約2500倍に達する。同様に、青色である450nmの波長の光を目に受けたときに感じる強さは約9.5倍に達する。つまり、人間の目は、緑色、青色に比べて赤色に反応しにくいという視感度特性を有する。
【0039】
したがって、暗い環境下においては、G信号およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させた赤色出力により表示を行えば、ユーザの要求をおよそ満たしつつ、ユーザの明順応による支障も生じず、さらに周囲の迷惑にもならない。つまり、赤色出力による表示は、暗い環境下において撮影する場合に暗順応の特性に即した表示として有効である。
【0040】
次に、表示制御部36が、通常出力と赤色出力を切り替えた場合の具体的な表示態様について説明する。図3は、通常出力による表示、赤色出力のうち簡易出力による表示、および赤色出力のうち画質優先出力による表示の表示態様の違いを概念的に説明する説明図である。図では、暗い環境下において、青いドリンク缶301と、赤い果物302および緑色の野菜303が載った黄色の皿304とが、白いテーブル305に置かれたシーンを想定している。図3(a)は、通常出力による表示態様であり、青いドリンク缶301は青く、赤い果物302は赤く、緑色の野菜303は緑に、階調をもってそれぞれの色をシーンに忠実に再現している。
【0041】
図3(b)は、赤色出力のうち簡易出力による表示態様であり、特に、G信号とB信号の出力を0にした場合を示す。したがって、表示されている画像は、赤色の階調のみで表現された画像である。青いドリンク缶301は、青色以外の波長成分を有する模様と文字を残して黒い陰となって表現される。同様に、緑色の野菜303も黒い陰となり、暗黒の背景と同化する。黄色い皿304、白いテーブル305は、それぞれの色に含まれる赤色の波長成分が抽出された態様で表示される。
【0042】
図3(c)は、赤色出力のうち画質優先出力による表示態様である。上述のように、画質優先出力は隣接するG画素とB画素の値を用いてR画素を変換するので、緑色の領域および青色の領域も黒い影となることなく、赤色の階調として表現することができる。その上、赤色のみの領域であっても周囲の青色および緑色の影響を受けて相対的に値を下げることになるので、通常画像が有する画像全体としての色バランスに類似する画像を表示することができる。この意味において、モノクロ画像を赤色の階調で表示した場合に近い。
【0043】
赤色出力により表示を行った場合、特に簡易出力を選択した場合には、画像内にどれくらいの割合で、かつ、どれくらいの輝度で緑色および青色が存在するのか把握しにくい。また、全体が赤色表示であることから、赤色の割合および輝度も認識しにくい。そこで、ユーザがRGBヒストグラム表示を選択した場合には、R画素、G画素、B画素それぞれに分けてヒストグラムを重畳表示する。図4は、ヒストグラム表示を適用した場合の表示態様を説明する説明図である。
【0044】
図示するようにRGBヒストグラム401のそれぞれは、通常画像における出力値を横軸とし、横軸の各々の値に対応する画素数を縦軸として表現されている。RGBそれぞれの信号が8ビットで表現された画像であれば、横軸は左端から右端へ向かって0から255の数値で表される。例えばG信号のヒストグラムにおいて、右側に偏った山を示す形状であれば、明るい緑の被写体領域が存在することが推測される。また、G信号のヒストグラムとR信号のヒストグラムの、横軸が同じ値を中心として同程度の高さの山が存在すれば、黄色の領域が存在することが推測される。
【0045】
また、図には示していないが、RGBヒストグラム401に追加して、または、RGBヒストグラム401に代えて、輝度ヒストグラムを表示しても良い。輝度ヒストグラムは、隣接するR画素、G画素、B画素から生成される輝度値に基づいて表現されるヒストグラムであり、左端を真黒とし右端を真白とした横軸に対し、横軸の各々の値に対応する画素数を縦軸として表す。輝度ヒストグラムは、左側に偏った山を示す形状であれば画像全体としてアンダー寄りであることを表し、右側に偏った山を示す形状であれば画像全体としてオーバー寄りであることを示す。特に、左端に張り付く形状を示せば黒潰れした領域が多いことを示し、右側に張り付く形状を示せば白飛びした領域が多いことを示す。
【0046】
黒潰れした領域および白飛びした領域は階調性が失われているので、写真としては好ましくない。そこで、ユーザが警告表示を有効にしている場合には、このような領域を例えば点滅表示させて、ユーザに警告を与える。
【0047】
以上のように、表示全体を赤色の階調のみで表現したときの視認性の悪さおよび不都合を、付加的なさまざまな機能により補うことができる。上述のように、ユーザはこれらの機能を任意に選択して利用することができる。
【0048】
次に、表示制御の処理の流れについて説明する。図5は、表示制御に関する動作を説明するフロー図である。フローは、表示部37で表示すべき画像データが表示制御部36へ入力された時点から開始する。ここで、開始時に入力される画像データは、撮像素子31の出力に従って生成される画像データと同様のRGB情報を有する、通常の表示用画像データである。
【0049】
表示制御部36は、表示すべき画像データが入力されると、ステップS101で、現在の表示設定が赤色表示禁止設定であるか否かをシステム制御部11へ問い合わせる。表示制御部36は、赤色表示禁止設定である旨の応答をシステム制御部11から得ると、ステップS102へ進み、通常表示処理によりRGB画像信号を生成する。表示制御部36は、赤色表示禁止設定でない旨の応答をシステム制御部11から得ると、ステップS103へ進み、現在の表示設定が常時赤色表示設定であるか否かをシステム制御部11へ問い合わせる。
【0050】
表示制御部36は、常時赤色表示設定である旨の応答をシステム制御部11から得ると、ステップS106へ進む。そうでないときは、自動切替設定が選択されているものとして、ステップS104へ進む。なお、ステップS101の判断とステップS103の判断は、システム制御部11へ問い合わせをまとめて行って、一度に実行しても良い。
【0051】
ステップS104へ進むと、表示制御部36は、システム制御部11を介して、照度センサ41からカメラ10の周辺の環境照度Eを取得する。そして、ステップS105で、取得した環境照度Eが、予め定められた基準環境照度Eよりも大きいか否かを判断する。基準環境照度Eは、例えば、周辺環境と基準画像が通常表示により表示された表示部37との間で明順応が生じる程度の環境照度として定められる。表示制御部36は、環境照度Eが基準環境照度Eよりも大きいと判断した場合は、暗順応、明順応の問題は生じないものとしてステップS102へ進み、通常表示処理によりRGB画像信号を生成する。表示制御部36は、環境照度Eが基準環境照度E以下と判断した場合は、赤色信号を出力すべくステップS106へ進む。
【0052】
ステップS106では、表示制御部36は、入力された表示すべき画像データが被写体画像データか、メニュー画面データまたは情報提示画面データかを判断する。被写体画像データは、上述のように撮像素子31の出力に従って生成される画像データである。被写体画像データは画像処理部35によって処理された画像データであり、画像処理部35が表示制御部36に当該画像データを引き渡す。したがって、表示制御部36から見た場合、画像処理部35がいわば被写体画像データを取得する取得部としての役割を担う。
【0053】
メニュー画面は、上述のようにメニュー項目と共にシステムメモリ12に記録されており、システム制御部11は、読み出したメニュー画面およびメニュー項目を組み合わせてメニュー画面データを生成する。システム制御部11は、生成したメニュー画面データを表示制御部36へ引き渡す。
【0054】
情報提示画面は、メニュー画面のようにユーザの指示を受け付ける画面ではなく、単にカメラ10の設定パラメータを表示する画面である。情報提示画面もメニュー画面と同様にシステムメモリ12に記録されており、システム制御部11は、現在のパラメータ値を重畳した情報提示画面を生成し、表示制御部36へ引き渡す。したがって、表示制御部36から見た場合、システム制御部11がいわばメニュー画面データまたは情報提示画面データを取得する取得部としての役割を担う。なお、少なくとも一部の画像処理を画像処理部35が行うように構成しても良い。画像処理部35およびシステム制御部11は、内部メモリ34をワークメモリとして利用し、処理した画像データを一旦内部メモリ34に記憶させて表示制御部36へ引き渡すこともできる。
【0055】
表示制御部36は、ステップS106でメニュー画面データまたは情報提示画面データが入力されたと判断すると、ステップS107へ進み、赤色出力のうち簡易出力を行うためのG信号およびB信号のカット処理を実行する。表示制御部36は、ステップS106で被写体画像データが入力されたと判断すると、ステップS108へ進む。
【0056】
ステップS108では、表示制御部36は、現在の表示設定が画質優先設定であるか否かをシステム制御部11へ問い合わせる。表示制御部36は、画質優先設定でない旨の応答をシステム制御部11から得ると、ステップS107へ進み簡易出力の処理を実行する。表示制御部36は、画質優先設定である旨の応答をシステム制御部11から得ると、ステップS109へ進み各R画素の値を変換するR画素変換処理を実行する。
【0057】
ステップS107の処理、またはステップS109の処理が完了すると、表示制御部36はステップS110へ進み、現在の表示設定がバックライト調整を行う設定であるか否かをシステム制御部11へ問い合わせる。表示制御部36は、バックライト調整を行う設定との応答をシステム制御部11から得ると、ステップS111へ進み、出力する赤色画像信号の全体のヒストグラムに応じてバックライトの輝度を調整する。例えば、ヒストグラムにおける最頻値に基づいて、3段階程度の輝度差を与える。生成された画像信号が全体に暗い信号であればバックライトの輝度値を上げ、明るい画像であればバックライトの輝度値を下げる。表示制御部36は、調整された輝度を輝度調整信号として表示部37へ出力する。
【0058】
そして、ステップS112で、表示制御部36は、ステップS102、S107、S109のいずれかで生成された画像信号を表示部37へ出力して、一連の表示制御を終了する。表示部37は、表示制御部36から送られてくる画像信号を受けて、LCDパネルで表示を実行する。
【0059】
なお、メニュー画面および情報提示画面は、赤色表示用の画面を別途システムメモリ12に記録させてあってもよい。この場合、通常表示用の画面を色変換する処理を省略できる。また、メニュー画面および情報提示画面を、画質優先設定で処理するように変更しても良い。
【0060】
また、ヒストグラム表示を被写体画像に重畳する場合など、情報提示画面と被写体画像を組み合わせて表示する場合には、被写体画像データを出力する場合の設定に従って表示制御を行えばよい。情報提示画面を被写体画像に重畳する場合は、重畳する位置を適宜変更することにより、ユーザの視認性を高めることもできる。たとえば、被写体画像に被写体として人物の顔が存在する場合には、顔認識技術により顔領域を特定した上で、当該領域を避けて情報提示画面を重畳すると良い。
【0061】
また、通常表示処理をする場合であっても、照度センサ41から取得されるカメラ10の周辺の環境照度Eにより、表示画像の表示前に表示を実行しても良いかをユーザに判断させるように警告を行っても良い。この場合、これから表示しようとする表示画像のヒストグラムを演算して、当該表示画像が予め定められた輝度値よりも大きな輝度値を有するときのみ警告を行うように構成しても良い。
【0062】
また、上述の実施形態においては、表示する全領域を通常表示とするか赤色表示とするかを切り替えたが、赤色表示を行う場合に、一部の領域を入力されたRGB信号のままとし、その他の領域を赤色に変更する処理を行っても良い。たとえば、全領域に比較して小さな領域に情報提示画面を重畳させるような場合においては、情報提示画面はRGBそのままの色を用いて処理することができる。このような混合表示を行えば、例えば、パラメータ値などの視認性を向上させつつ、ユーザの明順応による支障を生じさせない。
【0063】
また、上記の実施形態において、表示部37は液晶ディスプレイユニットとして説明したが、液晶でなく有機ELなどの自発光型表示ユニットを適用することもできる。この場合、バックライトを調整するのではなく各画素の輝度を調整すれば良い。
【0064】
上記実施形態においては、表示制御装置の例としてカメラ10を用いて説明したが、表示制御装置として撮像部を備えない構成であっても良い。例えば、着脱され得るフラッシュメモリに記録された画像データを取得するメモリインターフェイス部は、画像取得部を構成し得る。また、例えば無線LANユニットにより外部機器から画像データを取得することもできる。同様に、表示制御装置自体が表示ユニットを備えなくても良い。表示ユニットは外部機器であって、表示制御装置は生成した画像信号を表示ユニットへ出力するように構成すれば良い。カメラ以外の適用例としては、PC、デジタルフォトフレーム、カーナビゲーションシステム、携帯型ゲーム機器等が挙げられる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0067】
10 カメラ、11 システム制御部、12 システムメモリ、20 光学系、21 レンズ群、22 レンズシャッタ、31 撮像素子、32 A/D変換器、33 メモリ制御部、34 内部メモリ、35 画像処理部、36 表示制御部、37 表示部、38 記録媒体IF、39 操作部材、40 レリーズスイッチ、41 照度センサ、42 レンズ制御部、43 露光制御部、50 記録媒体、51 シーソースイッチ、52 十字キー、53 確定ボタン、54 押しボタン、101 スクロールバー、102 ウィンドウ、103、104、105 トグルスイッチ、106 オプションウィンドウ、107、108、109、110 チェックボックス、301 ドリンク缶、302 果物、303 野菜、304 皿、305 テーブル、401 RGBヒストグラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する画像取得部と、
前記画像データに従って生成されるRGB信号を出力する第1出力と、前記画像データから生成されるG信号の出力値およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させたRGB信号を出力する第2出力とを切り替える表示制御部と
を備える表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記第2出力として前記G信号および前記B信号の出力値を0とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記第2出力として前記R信号の出力値を、前記画像データに従って生成される前記G信号の出力値および前記B信号の出力値を用いて変換する請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記画像データは、撮像素子を介して取得された被写体画像データと、前記表示制御装置の設定に関わるメニュー画像データとを含み、
前記表示制御部は、前記画像データが前記被写体画像データか前記メニュー画像データかにより、前記第2出力の信号生成を異ならせる請求項1から3のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記第2出力として前記被写体画像データを出力するときは、前記第1出力として出力する場合のRGB信号の各出力値または輝度値をヒストグラムにして重畳する請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記第2出力として前記被写体画像データを出力するときは、白飛び領域または黒潰れ領域を視認可能に加工する請求項4または5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
外界の明るさを検出する照度検出部を備え、
前記表示制御部は、前記照度検出部の検出結果に基づいて制御を変更する請求項1から6のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記照度検出部が予め定められた閾値以上の照度を検出した場合には前記第1出力を出力する請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記照度検出部が予め定められた閾値未満の照度を検出した場合には前記第2出力を出力する請求項7または8に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記照度検出部が予め定められた閾値未満の照度を検出した場合に、予め定められた輝度値より大きな輝度値を有する前記画像データを前記第1出力により出力する場合は、事前に警告を行う請求項7または8に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、第2出力として、前記画像データの一部の領域から生成される前記G信号の出力値および前記B信号の出力値を前記R信号の出力値よりも相対的に低減させて出力する請求項1から10のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、更に表示ユニットのバックライトの輝度を調整する調整信号を出力し、前記画像データを前記第1出力で出力するか前記第2出力で出力するかにより、前記調整信号を変更する請求項1から11のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の表示制御装置を備える撮像装置。
【請求項14】
画像データを取得する画像取得ステップと、
前記画像データに従って生成されるRGB信号を出力する第1出力と、前記画像データから生成されるG信号の出力値およびB信号の出力値をR信号の出力値よりも相対的に低減させたRGB信号を出力する第2出力とを切り替える表示制御ステップと
をコンピュータに実行させる表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142823(P2012−142823A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257(P2011−257)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】