説明

表示文書における水平座標決定方法及び情報処理装置

【課題】文書表示ウインドウが変更された場合であっても、異なるサイズのページ表示領域が混在する文書であっても任意の点の水平方向座標を一意に特定する。
【解決手段】情報処理装置のオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションによりウインドウに表示される文書中の任意位置の水平座標を決定するに際して、文書が表示されるページ表示領域の境界であるページ境界の前記ウインドウにおける水平座標を取得し、前記ページ境界の水平座標を始点とする座標系における前記特定位置の水平座標を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示文書における水平座標決定方法及び情報処理装置に係り、特にパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置のオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションによりウインドウに表示される文書中の任意位置の水平座標を決定する表示文書における水平座標決定方法及びこの処理方法を実行する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を使用して次のような処理が行われる。図10は情報処理装置を使用した処理を示す模式図である。図10(a)に示す例は、例えばPC1100で、ワードプロセッサソフト等、一般的な文書作成アプリケーションで作成された文書1150をディスプレイ1110上に表示し、その表示された文書1150上に前記文書のデータを修正することなく、新たにこの文書に重ねて修正内容1160を描画して、この修正内容1160を文書1150における位置と関連付け保存して、文書1150の修正時に描画時の位置に修正内容1160を重ねて表示してこれを参照することにより文書修正を行う場合である。
また、図10(b)に示す例は、ノートPC(タブレットPC)1210とプロジェクタ1220とを用い、スクリーン1230に文書1240を表示し、発言者の音声、文書1240上へのメモ描画1250を文書における位置と関連付け、時系列に保存し、会議不参加者に配布して、再確認等の目的により任意のPC1260上で、ノートPC1210に表示し保存した音声、メモ付きの文書をそのまま表示再生するものである。
更に、図10(c)に示す例は、複数のPC1310、1320、1330をネットワーク1340で接続し、すべてのPC1310、1320、1330の表示状態を同一にすることにより文書を画面共有して、会議を行うものである。
このような態様で情報処理装置を使用する場合、前記文書に加えられた修正内容の文書での位置、即ちページ数や位置が保持されていないと、後から文書と修正内容を表示したときに加えられた修正内容が文書の異なるページや位置に表示されてしまい、修正内容を正しく参照することができない。
【0003】
そこで、文書における修正個所の表示個所を保持するため、文書におけるページや位置を特定して保持しておく必要がある。特許文献1には、スクロールバーにインデックスを付け、インデックスを選択することによりページを識別するものが記載されている。即ち、この例は、表示中のウインドウの垂直スクロールバーに対する垂直スクロールツマミの位置及び水平スクロールバーに対する水平スクロールツマミの位置を認識して、当該認識された位置に、すでに垂直目印又は水平目印が設定されていないと判別された場合には、現在の垂直スクロールツマミ又は水平スクロールツマミの位置に垂直目印又は水平目印を設定して表示するものである。
更に、特許文献2には、スクロール領域長に基づいてタグを付け、タグを選択することによりページを識別するものが記載されている。即ち、この例は、コンピュータの表示領域に閲覧領域と操作領域とを設け、電子情報は閲覧領域に表示可能な情報量をページ単位として、閲覧領域に表示する。電子情報は、複数の記事の集合からなり、各記事はコンピュータの入力装置を用いて閲覧領域に拡大して詳細に閲覧することが可能であり、電子情報には、ページの順序を明示するタグを付加し、閲覧操作の入力装置のひとつとして操作領域に描画し、タグは各電子情報に付随しており、閲覧領域の表示状態に応じて外観が変化するものである。
更に、特許文献3には、アプリケーションが提供する機能によりページを認識するものが記載されている。即ち、この例は、タッチパネル付きディスプレイ装置において、ディスプレイ画面に表示される表示文書上に重ねて表示させる上書きデータと、前記上書きデータを表示させる位置を前記表示文書上の相対的な位置として示す文書座標とを対応付けて格納する上書きデータ格納手段と、前記表示文書の表示倍率、およびディスプレイ画面上の画面座標を検出する文書情報検出手段と、前記表示文書の表示倍率および前記表示文書の画面座標を利用して上書きデータ格納手段に格納されている上書きデータの文書座標を画面座標に変換する座標変換手段とを備えるものである。
【特許文献1】特開2000−172401公報
【特許文献2】特開2001−34383公報
【特許文献3】特開2004−94679公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、文書における水平方向の位置を表すには以下の方法が採用されることがある。図11は従来の表示文書における水平座標決定方法を示す模式図である。図11(a)に示す例において、表示領域1510内には、左右のウインドウ境界1530L、1530Rの間に文書表示ウインドウ1520が表示されている。また、この文書表示ウインドウ1520内には、文書を表示するページ幅Aのページ表示領域1540が表示されおり、ページ表示領域1540の両側にはページ境界1550L、1550Rを挟んで何も文字等が表示されないページ余白1560L、1560Rが表示されている。また、文書表示ウインドウ1520の下部には水平スクロール領域1570が、右端部には垂直スクロール領域1580が表示されている。ここで、ページ表示領域1540上の任意の点1501の水平方向の位置を示す値として値CX0及び値LX0を採用することができる。
ここで、値CX0は、オペレーティングシステムが提供するAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)により検出される文書表示ウインドウ1520の表示幅の中央1521からの距離を示す。また、値LX0は、同様にオペレーティングシステムが提供するAPIにより取得される文書表示ウインドウ1520の左側のウインドウ境界1530Lからの距離を示す。
【0005】
また、図11(b)に示すように、文書表示ウインドウ1520を縮小表示した状態では、点1501を示す値として、文書表示ウインドウ1520の中央1521を基準とする値CX1は、上記例での値LX0と等しい。これに対して、文書表示ウインドウ1520ウインドウ境界1530Lを基準とする値LX1は前記図11(a)に示したときより小さくなる(LX1<LX0)。なお、文書表示ウインドウ1520を拡大表示したとき、文書表示ウインドウ1520のウインドウ境界1530Lを基準とする値は大きくなる。
更に、図11(c)に示すように、ページ幅Aのページ表示領域1530の後に、このページ幅Aより大きなページ幅Bのページ表示領域1590が含まれる場合には、点1501の水平座標を示す値は、ページ表示領域1590の中央1591を基準とすると、その値CX2は、前記値CX0より距離は大きくなる(CX2>CX0)。
このように、上述の方法では、文書上の点1501の水平座標を文書表示ウインドウ1520のウインドウ境界1530Lを基準とすると同一ではなくなり、文書表示ウインドウ1520の表示サイズを変更すると同一ではなくなる。また、ページ表示領域1540、ページ表示領域1590の中央1521、1591を基準とすると異なるページサイズが混在する場合同一ではなくなる。
そこで、本発明は文書表示ウインドウが変更された場合であっても、異なるサイズのページ表示領域が混在する文書であっても任意の点の水平方向座標を一意に特定することができる表示文書における水平座標決定方法及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の本発明は、情報処理装置のオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションによりウインドウに表示される文書中の任意位置の水平座標を決定するに際して、文書が表示されるページ表示領域の境界であるページ境界の前記ウインドウにおける水平座標を取得し、前記ページ境界の水平座標を始点とする座標系における前記特定位置の水平座標を取得すること特徴とする表示文書における水平座標決定方法である。
請求項2の本発明は、前記ウインドウにおけるページ境界の水平座標を取得するに際して、前記アプリケーションにより実現される水平スクロール機能を実行してページ領域の左端をウインドウに表示し、前記ページ表示領域の外側部分であるページ余白のウインドウ内で寸法を検出することを特徴とする。
請求項3の本発明は、前記水平スクロール機能の実行に際して、前記文書のページ領域の画像を取得し、前記文書のページ領域に重ねて表示することを特徴とする。
請求項4の本発明は、前記水平スクロール機能の実行に際して、当該文書のページ領域における上端所定数ライン分の水平画像を取得し、前記ページ余白の寸法を検出することを特徴とする。
【0007】
請求項5の本発明は、前記水平スクロール機能の実行に際して、当該文書のページ領域における下端所定数ライン分の水平画像を取得し、前記ページ余白の寸法を検出することを特徴とする。
請求項6の本発明は、前記ページ境界を検出するに際して、当該文書のページ領域における側端所定数ライン分の垂直画像を取得し、この垂直画像の画素データに基づいてページ境界を検出することを特徴とする。
請求項7の本発明は、ページ余白寸法の検出処理又はページ境界の検出処理の完了後、文書の水平表示位置を処理前の状態に戻すことを特徴とする。
請求項8の発明は、前記表示文書における水平座標決定方法を実行することを特徴とする情報処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、文書表示ウインドウが変更された場合であっても、異なるサイズのページ表示領域が混在する文書であっても任意の点の水平方向座標を一意に特定することができ、任意のアプリケーションが表示する文書の水平方向位置が特定でき、上書き処理等を行うに際して上書き位置のずれなどが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。まず本例で実施される文書表示ウインドウのスクロールバーに基づく情報の取得について説明する。図1はスクロールバーから情報を取得する方法を説明するための図であり、(a)はスクロールバーの表示状態を示す模式図、(b)は文書全体を示す模式図である。
この例では、情報処理装置は、汎用OS(オペレーティングシステム、例えばWindows(登録商標)、MAC OS(登録商標)、Linux(登録商標)等)上で動作する任意のアプリケーションプログラムが動作しており、ディスプレイ110の表示領域160に表示された文書表示ウインドウ120に文書130が表示されている。この例では、文書表示ウインドウ120は、表示領域160の全面に表示されているが、文書表示ウインドウ120は表示領域160の一部に部分的に表示されているものでもよい。また、この例では文書130は、図1(b)に示すように、例えば3ページ(第1ページP1、第2ページP2、第3ページP3)であり、ディスプレイ110には、P2の中央部が表示されている。また、この例では、図1(a)に示すように、文書130は文書表示ウインドウ120より大きく表示されているため、文書表示ウインドウ120の左右からはみ出ている。
【0010】
文書表示ウインドウ120の下端部には、文書130を水平スクロールする水平スクロールバー140が、また、文書表示ウインドウ120の右端部には、文書130を上下にスクロールする垂直スクロールバー150が表示されている。
水平スクロールバー140、垂直スクロールバー150は文書表示ウインドウ120の付属、あるいは独立したウインドウとして作成されており、OSが提供するAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)によりウインドウ識別情報が取得でき、ウインドウ識別情報を介してスクロール情報を取得可能となっている。
水平スクロールバー情報としては、表示幅(HL)、ページ左端から文書表示領域左端までの表示左端位置(HP)、ページ表示幅(HW)が取得される。
垂直スクロールバー情報として先頭ページ上端から最終ページ下端までの全ページ高(VL)、先頭ページ上端から文書表示領域上端までの表示上端位置(VP)、ページ表示高(VW)が取得される。
【0011】
次に、本例の処理で実行される文書における任意の点、例えばマウスカーソルの位置の座標(マウス座標)の決定について説明する。図2はマウス座標決定を説明するための図であり、(a)は文書の表示状態を示す模式図、(b)は文書全体を示す模式図である。この例では、文書130は、3ページ(第1ページP1、第2ページP2、第3ページP3)で構成され、第2ページP2の幅寸法は他のページP1、P3より大きいものとしている。
まず、OSが提供するAPIにより文書表示領域左上端座標(WX,WY)、文書表示領域幅(WW)、文書表示領域高(WH)を取得する。また、前記垂直スクロールバー情報から表示上端位置(VP)を取得する。更に、水平スクロールバー情報から表示左端位置(HP)を取得する。そして、必要に応じて、ページ余白(LM)を検出し、文書位置をページ境界(ページ余白とページ領域との境界)からの距離(DX)、先頭ページ上端からの距離(DY)として管理する。
これにより、画面座標(マウス座標)(X,Y)と文書座標(DX,DY)の関係は以下となる。なお、ページ間領域は前ページ文書座標に基づいて表示する。
DX=X+HP−WX−LM
DY=Y+VP−WY
X=DX−HP+WX+LM
Y=DY−VP+WY
【0012】
次に本例の処理で実行されるページ余白の検出について説明する。
図3はページ余白の検出を説明するための模式図である。この例では、当初ディスプレイ110の文書表示ウインドウ120には、図3(a)に示すように、文書130が拡大されて表示されている。まず、OSが提供するAPIにより水平スクロールバー情報を取得して、表示左端位置(HP)を取得する。次いで、図3(b)に示すように、文書上下端1ライン210、220を除く文書表示領域230の画像を取得し、文書表示領域上へ重ねて表示する。これによりスクロール操作をした場合、前記文書表示領域230は移動することなく、スクロール操作により上下端1ライン210、220だけが表示更新され、移動することになる。そして、図3(c)に示すように、OSが提供するAPIにより水平スクロールバー140を操作、ページ左端を表示する。そして、文書表示領域上端の上端1ライン210、下端1ライン220の水平画像を取得する。そして、下端1ライン220の先頭1画素(1ピクセルデータ)221をページ余白画素としてページ余白画素以外が検出されるまでをページ余白(LM)とする。
次いで、図3(c)に示すように、各ページのうちページ余白(LM)の値がもっとも大きいページ境界1ライン領域をOSが提供するAPIを介してアプリケーションへ表示更新させ、ページ境界1ライン画像240を取得する。このページ境界1ライン画像240に基づいてページ余白画素241を検出し、これが検出されなくなった点をページ区切り長(TP)とする。この例では、第1ページP1と、第2ページP2とのページ区切り長を検出している。図3(d)に下端ページ余白(LM)の値が大きい場合を示す。また、図3(e)にページ余白値が同一である場合を示す。
【0013】
次いで任意点の座標(マウス座標)の取得について説明する。図4は任意の点の座標の取得を説明するための模式図である。この例では画面(マウス)座標を文書座標に、文書座標を画面座標に算出する方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、OSが提供するAPIにより画面幅(SW)、画面高(SH)、文書表示領域左上端座標(WX,WY)、文書表示領域幅(WW)、文書表示領域高(WH)、表示左端位置(HP)、表示上端位置(VP)を取得する。
また、水平スクロールバーを操作してページ左端を表示、上端ページ余白(LMT)、下端ページ余白(LMB)、ページ区切り長(TP)を検出する。
次ページ境界は、TL=WY+TPとして示される。
マウス座標(X,Y)、(Y<TL)であるマウス座標(X0,Y0)を文書座標(DX0,DY0)へ変換すると以下のようになる。
DX0=X0+HP−WX−LMT
DY0=Y0+VP−WY
マウス座標(X,Y)、(Y≧TL)であるマウス座標(X1,Y1)を文書座標(DX1,DY1)へ変換すると以下のようになる。
DX1=X1+HP−WX−LMB
DY1=Y1+VP−WY
【0014】
図4(b)に示すように、文書表示領域左上端座標(WX,WY)を取得して、表示文書のページ余白(LMT,LMB)、ページ区切り長(TP)を検出、ページ上端位置(VP)、ページ左端位置(HP)を取得、表示ページ領域を以下のように算出する。
表示上端文書座標(DYT)=VP
次ページ境界文書座標(DYP)=VP+TP
表示下端文書座標(DYB)=VP+WY
文書座標(DX0,DY0)(DYT≦DY0<DYP)である文書座標を画面座標(X0,Y0)へ変換すると以下のようになる。
X0=DX0−HP+WX+LMT
Y0=DY0−VP+WY
文書座標(DX1,DY1)(DYP≦DY1<DYB)である文書座標を画面座標(X1,Y1)へ変換すると以下のようになる。
X1=DX1−HP+WX+LMB
Y1=DY1−VP+WY
【0015】
次に、本例で検知した文書の位置情報を適用する例について説明する。この例は、パーソナルコンピュータ400において、ワードプロセッサで作成表示された文書310の文字列320に、上書き処理用アプリケーションソフトでマーク330、340を上書き記入し、このマーク330、340をマーク330、340の文書上での位置と関連付け保存し、異なるパーソナルコンピュータ500で文書310を表示した時にマーク330、340を上書き位置へ表示できるようにするものである。図5は上書き処理を説明するための模式図である。
この上書き処理を実行するため、上書き処理を行うパーソナルコンピュータ400には、ワードプロセッサソフトを備える他、上書き制御部410と、上書きデータ格納部(上書きデータファイル)420とを備えている。前記上書き制御部410は、ディスプレイ440上に上書き制御バー430を表示し、操作者はこの上書き制御バー430を指定することにより上書き処理を行う。この上書き処理はOSを実行しているコンピュータで格納された上書き処理用のプログラムを実行させることにより実現する。また、上書きデータ格納部420は上書きしたマークのデータと、マークの文書上での位置データを格納する。
【0016】
まず、上書き制御部410が、OSにより提供されるプログラム起動手段により起動される。すると、他のアプリケーションプログラム(例えばワードプロセッサ)が表示する文書310上へ透明ウインドウ(背景が透けて見える)を表示する。また、上書き制御バー430を表示、上書き制御を開始する。
ここで、上書き制御バー430により以下の機能が実現されている。「手書」ボタン押下により手書き文字描画モードへ移行、透明ウインドウ上へマウスドラッグ座標間を予め設定されている色、太さにて線描画することにより手書き文字(図形)を描画する。「図形」ボタン押下により図形描画モードへ移行、円、楕円、四角形等を透明ウインドウ上へ描画する。「消去」ボタン押下により消去モードへ移行、図形、手書き文字を消去する。
「移動」ボタン押下により文書スクロールモードへ移行、文書をスクロール表示する。
「終了」ボタン押下により上書き制御を終了する。
このような操作により実行された上書き処理により生成された上書きデータは文書位置と関連付けられ上書きデータファイル420へ保存される。
【0017】
他のパーソナルコンピュータ500で、この上書きされた文書をディスプレイ540上に表示するには、他のパーソナルコンピュータ500に前記パーソナルコンピュータ400と同様にワードプロセッサソフトと、前記上書き処理用のアプリケーションソフトを格納しておく。そして、文書データをパーソナルコンピュータ500に読み取ると共に、前記上書きデータをパーソナルコンピュータ500に設定した上書きデータファイル520に格納しておく。そして、パーソナルコンピュータ500においてワードプロセッサソフトを実行して、文書を表示させると共に、前記上書き処理用アプリケーションソフトを実行し、ディスプレイ540上に上書きデータを文書と共に表示する。このとき、上書き処理用アプリケーションソフトは上書きデータとしてデータファイル520から表示文書のマークデータと、文書位置データとを自動検出し、図5(b)に示すように、文書310上の所定位置にマーク330、340を表示する。
【0018】
次に文書位置検知制御の手順について説明する。図6は実施の形態例に係る文書位置検知制御の全体の手順を示すフローチャートである。まず、上書き処理の指示があると、文書位置検知制御プログラムはOSが提供するプログラム起動手段により実行を開始する。これにより、制御テーブル610が全モジュールにより参照可能な領域に置かれる。制御テーブル610には、文書表示左上端座標、文書表示領域幅、文書表示領域高、水平スクロールバー識別、垂直スクロールバー識別、上端ページ余白(LMT)、下端ページ余白(LMB)、ページ区切り長(TP)の各領域が設定される。また、上書きデータファイル620がパーソナルコンピュータのデータ格納領域に設定される。処理は、以下のステップSA1〜ステップSA18に従って実行される。
まず、ステップSA1では、OSが提供するAPIにより文書表示アプリケーションの文書表示領域を検出し、文書表示領域左上端座標(WX,WY)、文書表示領域幅(WW)、文書表示領域高(WH)を取得する。次に、ステップSA2では、OSが提供するAPIにより水平スクロールバーを検索し、水平スクロールバー識別情報を取得する。ステップSA3では、OSが提供するAPIにより垂直スクロールバーを検索し、垂直スクロールバー識別情報を取得する。ステップSA4では、最前面へ全画面透明ウインドウを表示する。ステップSA5では、文書位置検知応用制御バーを表示する。そして、ステップSA6では、制御モードを「描画」に設定する。
【0019】
ステップSA7では、マウスデータを入力、マウス座標に設定されている機能を実行する。ステップSA8では、制御モードが「表示移動」に設定され、マウス座標が文書表示移動制御領域にある場合、文書の表示移動処理(スクロール)を実行する。ステップSA9では、ページ余白、ページ区切り長を検出する。ステップSA10では、上書きデータファイルの上書きデータを取得する。ステップSA11では、上書きデータ文書座標を画面座標へ変換する。ステップSA12では、画面内座標が存在する場合、上書きデータの情報により上書き表示する。ステップSA13では、制御モードが「描画処理」に設定され、マウス座標が描画領域にある場合、上書き描画(手書き文字、図形描画等)処理を実行する。ステップSA14では、上書き描画時のマウス座標を文書座標へ変換する。ステップSA15では、文書座標へ変換した上書きデータを上書きデータファイルへ保存する。ステップSA16では、マウス座標が制御バー領域にある場合、モードを取得設定する。
ステップSA17では、終了時制御バーを消去する。ステップSA18では、透明ウインドウを消去する。
【0020】
以下、上記処理の詳細について説明する。まず前記ステップSA9のページ余白検出制御について詳細に説明する。図7はページ余白検出処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、以下のステップSB1〜ステップSB16に従って実行される。
まず、ステップSB1では、文書領域上下端水平1ラインを除く文書表示領域画像を取得する。ステップSB2では、文書表示領域上へ取得文書表示領域画像を重ねて表示する。ステップSB3では、水平スクロールバー識別を介して現在の表示左端位置を取得する。ステップSB4では、水平スクロールバー識別を介して水平スクロールバーを操作し、ページ左端を表示する。この時上下端1ラインのみ表示更新される。ステップSB5では、文書表示領域上端1ライン水平画像を取得する。ステップSB6では、文書表示領域上端1ライン水平画像の画素を検索、上端ページ余白を検出する。ステップSB7では、文書表示領域下端1ライン水平画像を取得する。ステップSB8では、文書表示領域下端1ライン水平画像の画素を検索、下端ページ余白を検出する。ステップSB9では、上端ページ余白の方が大きい場合、文書表示領域左端から上端ページ余白(LMT)距離にある垂直1ライン文書領域をOSが提供するAPIにより文書表示アプリケーションへ要求、表示更新させる。ステップSB10では、上端余白値ページ境界ライン画像を取得する。ステップSB11では、下端ページ余白の方が大きい場合、文書表示領域左端から下端ページ余白(LMB)距離にある垂直1ライン文書領域をOSが提供するAPIにより文書表示アプリケーションへ要求、表示更新させる。ステップSB12では、上端余白値ページ境界ライン画像を取得する。ステップSB13では、ページ境界ライン画像の画素を検索、ページ区切り長を検出する。ステップSB14では、ページ区切りが存在しない場合、ページ区切り長を文書表示領域高とする。ステップSB15では、表示位置をステップSB3で取得した位置へ水平スクロールバーを操作して戻す。ステップSB16では、文書表示領域画像を消去する。
【0021】
次に前記ステップSA11の文書座標算出の制御について詳細に説明する。図8は画面座標(マウス座標)から文書座標への変換制御を示すフローチャートである。本処理は、画面座標(X、Y)を入力値とし文書座標(DX、DY)を要求元へ返す。この処理は以下のステップSC1〜ステップSC6に従って実行される。
ステップSC1では、垂直スクロールバー識別を介してAPIによりページ上端位置(VP)を取得する。ステップSC2では、水平スクロールバー識別を介してAPIによりページ左端位置(HP)を取得する。ステップSC3では、次ページ境界(文書表示領域Y座標+ページ区切り長)を算出する。ステップSC4では、画面Y座標が次ページ境界より小さい場合、上端ページ余白(LMT)により文書DX座標を算出する(DX=X+HP−WX−LMT)。
ステップSC5では、画面Y座標が次ページ境界より大きい場合、下端ページ余白(LMB)により文書DX座標を算出する(DX=X+HP−WX−LMB)。
ステップSC6では、文書DY座標を算出する(DY=Y+VP−WY)。
【0022】
次に前記ステップSA14の画面座標算出制御について詳細に説明する。図9は文書座標から画面座標への変換制御を示すフローチャートである。この処理では文書座標(X、Y)を入力値とし、制御テーブル610の値に基づいて画面座標(X、Y)を取得して、文書座標テーブル640に出力する。この処理は以下のステップSD1〜ステップSD11に従って実行される。
ステップSD1では、APIにより画面幅(SW)を取得する。ステップSD2では、垂直スクロールバー識別を介してAPIによりページ上端位置(VP)を取得する。ステップSD3では、水平スクロールバー識別を介してAPIによりページ左端位置(HP)を取得する。ステップSD4では、表示上端文書座標(DYT=VP)を算出する。ステップSD5では、次ページ境界文書座標(DYP=VP+TP)を算出する。ステップSD6では、表示下端文書座標(DYB=VP+WY)を算出する。ステップSD7では、画面座標無効に設定する。ステップSD8では、文書DY座標が(DYT≦DY<DYP)である場合上端ページ余白(LMT)により画面X座標を算出する(X=DX−HP+WX+LMT)。
ステップSD9では、文書DY座標が(DYP≦DY<DYB)である場合下端ページ余白(LMB)により画面X座標を算出する(X=DX−HP+WX+LMB)。
ステップSD10では、算出した画面X座標(0≦X<SW)にある場合画面に存在する文書座標として画面座標を確定する。
ステップSD11では、画面Y座標を算出する(Y=DY−VP+WY)。
【0023】
以上説明したように本発明によれば、文書表示ウインドウが変更された場合であっても、異なるサイズのページ表示領域が混在する文書であっても任意の点の水平方向座標を一意に特定することができ、任意のアプリケーションが表示する文書の水平方向位置が特定でき、上書き処理等を行うに際して上書き位置のずれなどが防止できる。
また、本発明によれば、ページ余白領域が文書表示領域内に表示されていない場合であっても、水平スクロールを行うことによりページ余白の検出が可能となり、また、この水平スクロールに際しては表示されている文書の画像を移動させずにすむので文書を見ている者に不快感を与えることがなくなる。
また、本発明によれば、文書としてサイズが異なるページ表示がされている場合であっても、ページ幅の検出ができる他、ページ左端画素とページ余白画素を比較してページ領域を検出するので、確実にページ区切りの検出が可能となる。
更に、本発明によれば、ページ余白、ページ区切り検出が終了した後、文書表示を元に戻す手間をなくすことができるので使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】スクロール情報を取得する方法を説明するための模式図である。
【図2】任意の点の座標を説明するための模式図である。
【図3】ページ余白の検出方法を説明するための模式図である。
【図4】マウス座標決定を説明するための模式図である。
【図5】上書き処理を説明するための模式図である。
【図6】文書位置検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ページ余白検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】画面座標(マウス座標)から文書座標への変換制御を示すフローチャートである。
【図9】文書座標から画面座標への変換制御を示すフローチャートである。
【図10】情報処理装置を使用した処理を示す模式図である。
【図11】従来の表示文書における水平座標決定方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0025】
110 ディスプレイ、120 文書表示ウインドウ、130 文書、140 水平スクロールバー、150 垂直スクロールバー、160 表示領域、210 上端1ライン、220 下端1ライン、221 先頭1画素(1ピクセルデータ)、230 文書表示領域、240 ページ境界1ライン画像、241 ページ余白画素、310 文書、320 文字列、320 文書、330、340 マーク、400 パーソナルコンピュータ、410 制御部、420 上書きデータ格納、420 データファイル、430 制御バー、440 ディスプレイ、500 パーソナルコンピュータ、520 データファイル、540 ディスプレイ、610 制御テーブル、620 データファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置のオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションによりウインドウに表示される文書中の任意位置の水平座標を決定するに際して、
文書が表示されるページ表示領域の境界であるページ境界の前記ウインドウにおける水平座標を取得し、
前記ページ境界の水平座標を始点とする座標系における前記特定位置の水平座標を取得すること特徴とする表示文書における水平座標決定方法。
【請求項2】
前記ウインドウにおけるページ境界の水平座標を取得するに際して、前記アプリケーションにより実現される水平スクロール機能を実行してページ領域の左端をウインドウに表示し、前記ページ表示領域の外側部分であるページ余白のウインドウ内で寸法を検出することを特徴とする請求項1記載の表示文書における水平座標決定方法
【請求項3】
前記水平スクロール機能の実行に際して、前記文書のページ領域の画像を取得し、前記文書のページ領域に重ねて表示することを特徴とする請求項2記載の表示文書における水平座標決定方法。
【請求項4】
前記水平スクロール機能の実行に際して、当該文書のページ領域における上端所定数ライン分の水平画像を取得し、前記ページ余白の寸法を検出することを特徴とする請求項2記載の表示文書における水平座標決定方法。
【請求項5】
前記水平スクロール機能の実行に際して、当該文書のページ領域における下端所定数ライン分の水平画像を取得し、前記ページ余白の寸法を検出することを特徴とする請求項2記載の表示文書における水平座標決定方法。
【請求項6】
前記ページ境界を検出するに際して、当該文書のページ領域における側端所定数ライン分の垂直画像を取得し、この垂直画像の画素データに基づいてページ境界を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の表示文書における水平座標決定方法。
【請求項7】
ページ余白寸法の検出処理又はページ境界の検出処理の完了後、文書の水平表示位置を処理前の状態に戻すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の表示文書における水平座標決定方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項記載の表示文書における水平座標決定方法を実行することを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−252175(P2009−252175A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102790(P2008−102790)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】