表示素子および表示装置
【課題】発光光量を減らさずに、表示画像のにじみを軽減できる表示素子を提供する。
【解決手段】透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示素子である。透明電極側に、発光光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、発光層から放射される光束を絞るように、発光層のドット周期の1倍以下の周期で発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配する。
【解決手段】透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示素子である。透明電極側に、発光光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、発光層から放射される光束を絞るように、発光層のドット周期の1倍以下の周期で発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば有機EL(Electroluminescence)や有機LED(Light Emitting Diode)を用いる表示素子に関する。また、この表示素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELや高分子LED(有機LED)などを用いた有機LED素子は、図10のような積層構造を備えている。すなわち、図10に示す有機LED素子10においては、ガラス基板1の上に、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極2が陽極として形成され、その上に、図10の例では有機LEDからなる発光層3がドライプロセスやウェットプロセスにより形成される。そして、発光層3の上に、アルミニウムなどの金属や合金からなる背面電極4が陰極として形成され、その上に、さらに、保護用のガラス基板5が設けられる。
【0003】
図10では、詳細図示は省略したが、透明電極2および背面電極4は、それぞれストライプ状の電極を所定の方向に平行に配列したものとされるとともに、ストライプ状の透明電極2の配列方向と、ストライプ状の背面電極4の配列方向とは、互いに直交するようにされている。これにより、複数のストライプ状の透明電極2と複数のストライプ状の背面電極4とが交差する位置に対応する発光層3の部分が表示ドット(画素に対応)となり、多数個の表示ドットが構成される。
【0004】
このような構成の有機LED素子10において、陽極である透明電極2と、陰極である背面電極4との間に直流電圧が印加されると、当該電圧印加部分の発光層3の前記表示ドット部分の有機発光体が励起されて発光し、その発光光束が、図10において矢印で示すように、ガラス基板1側から放射され、観視者の目6で観視される。
【0005】
したがって、透明電極2および背面電極4の一方に、スキャン信号を供給すると共に、他方に、目的の表示すべき画像に応じた正電圧のデータを供給することにより、前記発光層3の多数の表示ドット部分のうちの前記表示すべき画像に応じた表示ドット部分の有機発光体を励起することができ、目的の表示すべき画像を表示することができる。
【0006】
ところで、この有機LED素子を用いた表示装置として、コントラストが高く奥行き感のある画像を表示することができるようにしたものが、特許文献1(特開2002−208774号公報参照)に記載されている。
【0007】
すなわち、有機LED素子を用いた表示装置で表示された画像を観察するとき、背面電極4で反射した外光も、同時に目6に入ってくるが、この外光の混入は、表示画像のコントラストや鮮明度に悪影響を及ぼす。
【0008】
そこで、この特許文献1に記載の表示装置は、図11に示すように、有機LED素子10の発光光束の放射側にハーフミラー11を設ける。このハーフミラー11は、有機LED素子10から放射された発光光束DL0は、透過させると共に、一部は、反射して、有機LED素子10側に戻す特性を備えると共に、外光は反射して、有機LED10側への混入を防止するようにする。
【0009】
このハーフミラー11により、有機LED素子10の発光による表示画像のコントラストが高くなる。そして、有機LED素子10からの直接発光光束DL0による画像と、直接発光光束DL0がハーフミラー11で反射し、それがハーフミラー11と背面電極4との間で複数回反射されたことによる画像が重なることで、奥行き感に富む画像が表示される。
【0010】
上記の特許文献および非特許文献は、次の通りである。
【特許文献1】特開2002−208774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように特許文献1の表示装置では、有機LED素子10からの直接発光DL0がハーフミラー11で反射し、ハーフミラー11と背面電極4との間で複数回反射されることにより、直接光と反射光との画像が重なることで、奥行き感に富む画像が表示される。しかしながら、特許文献1で提案された表示装置では、ハーフミラー11で直接発光光束DL0が反射されることに基づいて、表示画像がにじむという問題があった。
【0012】
もしも、発光光束DL0がハーフミラー11に対して、その法線方向(ハーフミラー11に対して直交する方向)にすべて入射するのであれば、ハーフミラー11での反射光が、すべて発光光束DL0に重なるように戻るので、表示画像がにじむという問題は生じない。しかしながら、実際には、発光光束DL0は、図9において斜線を付して示すように、広がりを持っており、ハーフミラーに対して直交せずに、傾きを持って入射する発光光もある。このようなハーフミラー11に対して直交しないで入射する光は、直接発光光束DL0による表示画像とは離れた位置に、表示画像の虚像を形成し、その結果として、表示画像のにじみを生じる。
【0013】
すなわち、図11において、有機LED素子10からの出力光は、ハーフミラー11に到達して、透過光DL0と、反射光Rd1とに分離される。ハーフミラー11で反射された光Rd1は、有機LED素子10の背面電極4でさらに反射され、ハーフミラー11を透過して、虚像を表示する光RL1となって、観視者の目6に入る。
【0014】
また、反射光Rd1の一部は、さらにハーフミラー11で反射されで、反射光Rd2となって背面電極4でさらに反射され、ハーフミラー11を透過して、虚像を表示するものとなる光RL2となって、観視者の目6に入る。これがハーフミラー11と背面電極4との間で繰り返されて、徐々に減衰してゆくが、この結果、図12に示すように、表示画像がにじんで表示されてしまい、表示画像が見づらくなるという問題が生じる。
【0015】
この問題を解決するための手段として、上述の2次反射Rd1、3次反射Rd2を抑えるために、有機LED素子10自体の発光光量を削減する方法が取られているが、それでは、表示装置としては光量不足で見づらいという欠点があった。
【0016】
また、図13に示すように、有機LED素子10とハーフミラー11との間に円偏光フィルタ12を設ける方法も用いられている。すなわち、この図13の例によれば、直接光の円偏光方向と、反射光の円偏光方向が異なることになるので、反射光は円偏光フィルタ12を透過できず、背面電極4での反射を防ぐことができ、虚像の発生、つまり表示画像のにじみを防止することができる。
【0017】
しかしながら、この図13の例のように円偏光フィルタ12を用いる場合には、有機LED素子10からの出射光に対する透過光量が40%程度、減光してしまうため、やはり見づらくなってしまうという問題があった。
【0018】
この発明は、以上の点にかんがみ、できるだけ、発光光量を減らさずに、表示画像のにじみを軽減できる表示素子および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、この発明の表示素子は、
透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示素子において、
前記透明電極側に、前記光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、前記発光層から放射される光束を絞るように、前記発光層のドット周期の1倍以下の周期で前記発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配した
ことを特徴とする。
【0020】
上述の構成のこの発明による表示素子によれば、発光光束の放射方向側に、非光透過壁が発光層のドット周期の1倍以下の周期で発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタが配されるので、発光光束の放射角度が絞られる。
【0021】
その結果、例え、発光光束がハーフミラーなどで反射されて表示素子に戻って、背面電極で2次反射されたとしても、その2次反射により生じる虚像と実像との結像位置が近くなり、表示画像のにじみが軽減される。
【0022】
そして、フィルタは、非光透過壁が、発光層に平行な方向に繰り返し形成されたものであるから、開口を備えるので、偏光フィルタを用いる従来例よりも発光光量の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、発光光量を減らさずに、表示画像のにじみを軽減できる表示素子および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明による表示素子および表示装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この発明による表示素子の例としての有機LED20を示すものである。この図1の例の有機LEDは、図10に示した有機LED10と全く同様に、ガラス基板1の上に、この例では、ITOからなる透明電極2が陽極として形成され、その上に、有機LEDからなる発光層3がドライプロセスやウェットプロセスにより形成される。そして、発光層3の上に、この例においては、アルミニウム金属からなる背面電極4が陰極として形成され、その上に、さらに、保護用のガラス基板5が設けられる。
【0026】
発光層3は、有機層が発光層のみからなる場合、有機層が正孔輸送層と発光層からなる場合、有機層が発光層と電子輸送層からなる場合、有機層が正孔輸送層と発光層と電子輸送層からなる場合などがある。
【0027】
そして、前述したように、透明電極2および背面電極4は、それぞれストライプ状の電極を所定の方向に平行に配列したものとされるとともに、ストライプ状の透明電極2の配列方向と、ストライプ状の背面電極4の配列方向とは、互いに直交するようにされている。これにより、複数のストライプ状の透明電極2と複数のストライプ状の背面電極4とが交差する位置に対応する発光層3の部分が表示ドット(画素に対応)となり、多数個の表示ドットが構成される。
【0028】
そして、この実施形態の有機LED素子20においては、ガラス基板1の、有機LED層からなる発光層3からの発光光束の放射側に、非光透過性材料からなるメッシュフィルタ21を、例えばガラス基板1に対して被着(接着など)して配する。
【0029】
この例のメッシュフィルタ21は、図2に示すように、ガラス基板1上において、発光層3からの発光光束の放射方向を高さ方向とし、互いに直交する第1および第2のストライプ状の非光透過壁22および23が、互いに直交する方向に繰り返し形成されたものである。
【0030】
すなわち、ガラス基板1上において、高さがhの第1のストライプ状の非光透過壁22は、当該非光透過壁22の短辺方向であって発光層3に平行な第1の方向に、所定の繰り返しピッチp1で、繰り返し形成される。また、同様に、高さがhで、第1のストライプ状の非光透過壁22とはストライプの延長方向が直交する第2のストライプ状の非光透過壁23は、当該非光透過壁23の短辺方向であって発光層3に平行に、かつ、前記第1の方向とは直交する第2の方向に、所定の繰り返しピッチp2で、繰り返し形成される。
【0031】
この場合、繰り返しピッチp1およびp2は、発光層3における表示ドットの形成周期の1倍以下とされる。
【0032】
また、非光透過壁22および23の壁の厚さd1およびd2は、メッシュの開口部24の大きさをどの程度にするかに応じて定められる。この開口部24の大きさは、表示画像の明るさに影響するものである。
【0033】
メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23は、発光層3からの発光光束のうち、法線方向(発光層3に直交する方向)に対して、ある傾斜を持つ光を、そのまま出射させないように遮光する機能を備えるものである。すなわち、発光層3から放射される光束を絞るようにする機能を備える。
【0034】
図3は、このメッシュフィルタ21の機能を説明するための図である。この図3は、非光透過壁22について前記の光束を絞る機能を説明するものであるが、非光透過壁23についても全く同様である。
【0035】
図3の例においては、背面電極4は、ストライプ状のアルミニウム電極4S1,4S2,4S3・・・が、表示ドット周期p0で形成されている場合を示している。そして、図3の例において、中央のアルミニウム電極4S2と透明電極2との間に、前述したように直流電圧が印加されると、当該電圧印加部分に対応する発光層3の表示ドット部分3LDの有機発光体が励起されて発光し、発光光束DLがガラス基板1を通じて外部に放射される。
【0036】
このとき、メッシュフィルタ21の非光透過壁22が存在しない場合には、その発光光束DLの幅に制限はないが、この実施形態では、メッシュフィルタ21の非光透過壁22が存在するので、その高さhに応じた幅Wに、発光光束DLの幅が制限される。つまり、発光光束DLが非光透過壁22の高さhに応じて絞られることになる。
【0037】
つまり、発光層3からの発光光束のうち、法線方向に対して、メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23の高さhに応じた所定以上の傾斜を持つ光は、そのまま出射させずに、非光透過壁22,23に当たって遮光される。
【0038】
したがって、図1に示すように、有機LED素子20の、発光光束DLの出射側に、ハーフミラー11が設けられている場合であっても、ハーフミラー11で反射され、さらに背面電極4で2次反射される成分は、法線方向に近いもののみとなると共に、背面電極4で2次反射される成分が少なくなるので、表示画像のにじみが軽減されるものである。
【0039】
ちなみに、図13に示した従来のにじみが生じた表示画像と同じ画像を、この実施形態の有機LED素子20を用いると共に、ハーフミラー11を用いて表示画像を形成した場合の表示例を、図4に示す。
【0040】
なお、メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23の高さhは、有機LED素子20とハーフミラーとの距離(メッシュフィルタ21とハーフミラー11との距離)に応じて選定されるもので、有機LED素子20とハーフミラーとの距離が離れれば離れるほど、高さhは高くするとよい。
【0041】
また、メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23の厚さd1,d2は、非光透過壁22および23の形成ピッチp1およびp2を定めた後には、メッシュフィルタ21の開口24の大きさを定めるものとなるので、表示画像の必要な明るさに応じて定めるものである。なお、非光透過壁22,23の厚さd1,d2は、同じであっても、また、異なっても良い。
【0042】
この場合に、非光透過壁22および23の形成ピッチp1およびp2を、表示ドットのピッチp0(水平方向のピッチp0xおよび垂直方向のピッチp0y)と同一とし、かつ、非光透過壁22,23の形成位置を、表示ドットと表示ドットとの間の非表示領域に対応するように同期させるようにすれば、表示画像の明るさを、損なうことなく、表示画像のにじみを、上述のように軽減することができるものである。
【0043】
[表示装置の実施形態]
上述した実施形態の有機LED素子20を用いる表示装置を備える電子機器の一例としての携帯電話端末30を、図5に示す。
【0044】
この図5の実施形態の携帯電話端末30は、その筐体の一側の平面部分31がハーフミラーで構成されており、この筐体平面部分(ハーフミラー筐体部分と称する)31の下方に、図6に示すように、この実施形態の有機LED素子20が配されて、表示部32を構成するものである。すなわち、図5の携帯電話端末30は、有機LED素子20と、ハーフミラー筐体31とを備える表示装置を具備するものである。
【0045】
この携帯電話端末30の実施形態によれば、表示画像のにじみが少なく、かつ、ハーフミラー筐体部分31の効果により、前述したように、奥行き感のある表示画像が得られる。
【0046】
なお、図6においては、ハーフミラー筐体部分31と有機LED素子20のメッシュフィルタ21との間は空間としたが、この部分には、保護用のガラス基板を設けるようにしてももちろん良い。また、携帯電話端末30の筐体の一面全体をハーフミラー筐体部分とするのではなく、少なくとも表示部32とする部分のみをハーフミラー筐体部分とするように構成しても良い。
【0047】
[メッシュフィルタ21の他の構成]
図2に示したように、上述の実施形態では、第1および第2のストライプ状の非光透過壁22,23を、互いに直交する方向に所定の繰り返しピッチp1,p2で形成することにより、メッシュフィルタ21を構成するようにしたが、このようなメッシュフィルタ21を新規に構成するのはコスト高となる。
【0048】
そこで、この例では、既存のものを利用することにより、より安価に構成することを企図するものである。
【0049】
すなわち、この例においては、所定の太さの線材41を、図7(A),(B)に示すように、縦横に編み込んだメッシュフィルタ40を用いるようにする。このように線材41を縦横に編み込んだメッシュフィルタ40は、シルクスクリーン印刷などにも用いられており、入手が容易であって、有機LED素子20を安価に構成することができる。
【0050】
この場合、メッシュフィルタ40の高さhは、図7(A)のA−A断面図である図7(B)に示すように、線材41の太さに応じたものとなる。また、メッシュフィルタ40の開口42も、図7(A)および図7(C)に示すように、線材41の太さに応じたものとなる。
【0051】
すなわち、図7(C)に示したメッシュフィルタ40の線材41は、図7(A)に示したメッシュフィルタ40の線材41よりも細く、このため、開口42は、図7(C)に示したメッシュフィルタ40の方が、図7(A)に示したメッシュフィルタ40よりも大きくなり、より明るい表示ができる。
【0052】
また、図7(A)に示した太い線材41を用いたメッシュフィルタ40の方が、図7(C)に示した細い線材41を用いたメッシュフィルタ40よりも高さhは高くなり、にじみを、より軽減することができる。
【0053】
以上のことから、この実施形態においては、メッシュフィルタ40として、線材41の太さを種々選定することにより、有機LED素子20による表示画像の、にじみ量や、明るさを制御することができる。
【0054】
したがって、メッシュフィルタ40として、線材41の太さの異なるものを複数個用意しておき、それらの線材41の太さの異なるものを、ユーザが、有機LED素子20のメッシュフィルタとして適宜交換することができるように構成することにより、ユーザが、好みの明るさまたはにじみの程度に、表示画像を制御することできる。
【0055】
なお、図7(B)に示したように、上述の例では、線材41の断面形状は円形としたが、線材41の断面形状は、円形に限られず、四角形やその他の多角形であってもよい。
【0056】
ところで、上述の実施形態の説明において、メッシュフィルタ20の非光透過壁22および23の形成ピッチp1およびp2を、表示ドットのピッチp0(水平方向のピッチp0xおよび垂直方向のピッチp0y)と同一とし、かつ、非光透過壁22,23の形成位置を、表示ドットと表示ドットとの間の非表示領域に対応するように同期させるようにすれば、表示画像の明るさを、損なうことなく、表示画像のにじみを、上述のように軽減することができることを述べた。
【0057】
しかしながら、上述のように、非光透過壁22,23の形成位置を、表示ドットと表示ドットとの間の非表示領域に対応するように同期させるように構成することは、比較的困難である。このため、簡単には、表示ドットと非光透過壁22,23の形成位置を、同期させずに、メッシュフィルタ20を、ガラス基板1に対して設けるようにする。
【0058】
しかし、そのようにする場合において、有機LED素子20の表示ドット51の形成方向が、図8(A)に示すように、水平および垂直方向であるときに、メッシュフィルタ40の線材41の編み込み方向(非光透過壁22,23の繰り返し形成方向に相当)が、図8(B)に示すように、表示ドットと同じ方向である場合には、有機LED素子20の表示ドットのサイズと、メッシュフィルタ40の格子サイズ(開口サイズ)との干渉によるビートによって、図8(C)に示すような縞模様、すなわち、いわゆるモアレの発生の問題が生じる。
【0059】
そこで、この実施形態では、メッシュフィルタ40の線材41の編み込みピッチ(非光透過壁22,23の繰り返し形成ピッチp1,p2に対応)を、有機LED素子20の表示ドットの2分の1以下にして空間サンプリングするようにする。
【0060】
さらに、メッシュフィルタ40を、その線材41の編み込み方向(非光透過壁22,23の繰り返し形成方向に相当)が、図9(B)に示すように、図9(A)に示す有機LED素子20の表示ドット51の形成方向に対して、斜めに、図9(B)の例では45度だけ傾けた方向になるように、ガラス基板1上に形成するようにする。
【0061】
このようにすることにより、表示ドット配列の水平方向および垂直方向のビート成分を分散させることができ、ビートを除去して、図9(C)に示すように、モアレが発生しない表示画像を得ることができるようになる。
【0062】
[その他の実施形態および変形例]
なお、上述の図1の実施形態では、背面電極4は、アルミニウム電極としたが、その他の金属や合金であってもよい。
【0063】
また、メッシュフィルタ21は、ハーフミラー30とガラス基板1との間に配されていればよいので、ガラス基板1に被着するようにしなくてもよい。例えば、ガラス基板1上にメッシュフィルタ21を載せ、さらに透明ガラス基板を載せるようにして、2個のガラス基板で、挟持するような構成であってもよい。
【0064】
また、透明ガラス基板1あるいは透明ガラス基板1の上に配する透明ガラス基板内に、メッシュフィルタ21を形成するようにしても良い。
【0065】
また、メッシュフィルタ21の非光透過壁22,23や線材41は、光吸収性を備えるもので構成するようにするとさらに良い。
【0066】
なお、以上の説明は、表示素子が有機LED素子の場合についてのみについて説明したが、この発明は、透明電極と背面電極との間に発光層が設けられ、かつ、背面電極が、放射された発光光束が反射されて戻ってきたときに、その光を2次反射するようなもので構成されている場合のすべの表示素子について適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明による表示素子の実施形態を説明するための構造図である。
【図2】図1の実施形態の表示素子の要部であるメッシュフィルタを特に説明するための図である。
【図3】図1の実施形態の表示素子におけるメッシュフィルタの機能を説明するために用いる図である。
【図4】図1の実施形態の表示素子による表示例を示す図である。
【図5】この発明による表示装置を備える電子機器の例を説明するための図である。
【図6】図5の例を説明するために用いる図である。
【図7】この発明による表示素子の他の実施形態の要部である他の例のメッシュフィルタを説明するための図である。
【図8】この発明による表示素子の他の実施形態を説明するために用いる図である。
【図9】この発明による表示素子の他の実施形態を説明するために用いる図である。
【図10】従来の表示素子の一例としての有機LED素子の構造を説明するための図である。
【図11】従来の表示素子の一例としての有機LED素子による表示画像におけるにじみの発生を説明するための図である。
【図12】従来の表示素子の一例としての有機LED素子によるにじみが発生した表示画像の一例を示す図である。
【図13】従来の表示素子の一例としての有機LED素子による表示画像のにじみの発生を防止する従来例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1、5…ガラス基板、2…透明電極、3…有機LED層、4…背面電極、10…有機LED素子(従来例)、11…ハーフミラー、20…有機LED素子(実施形態)、21,40…メッシュフィルタ、41…線材、42…開口
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば有機EL(Electroluminescence)や有機LED(Light Emitting Diode)を用いる表示素子に関する。また、この表示素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELや高分子LED(有機LED)などを用いた有機LED素子は、図10のような積層構造を備えている。すなわち、図10に示す有機LED素子10においては、ガラス基板1の上に、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極2が陽極として形成され、その上に、図10の例では有機LEDからなる発光層3がドライプロセスやウェットプロセスにより形成される。そして、発光層3の上に、アルミニウムなどの金属や合金からなる背面電極4が陰極として形成され、その上に、さらに、保護用のガラス基板5が設けられる。
【0003】
図10では、詳細図示は省略したが、透明電極2および背面電極4は、それぞれストライプ状の電極を所定の方向に平行に配列したものとされるとともに、ストライプ状の透明電極2の配列方向と、ストライプ状の背面電極4の配列方向とは、互いに直交するようにされている。これにより、複数のストライプ状の透明電極2と複数のストライプ状の背面電極4とが交差する位置に対応する発光層3の部分が表示ドット(画素に対応)となり、多数個の表示ドットが構成される。
【0004】
このような構成の有機LED素子10において、陽極である透明電極2と、陰極である背面電極4との間に直流電圧が印加されると、当該電圧印加部分の発光層3の前記表示ドット部分の有機発光体が励起されて発光し、その発光光束が、図10において矢印で示すように、ガラス基板1側から放射され、観視者の目6で観視される。
【0005】
したがって、透明電極2および背面電極4の一方に、スキャン信号を供給すると共に、他方に、目的の表示すべき画像に応じた正電圧のデータを供給することにより、前記発光層3の多数の表示ドット部分のうちの前記表示すべき画像に応じた表示ドット部分の有機発光体を励起することができ、目的の表示すべき画像を表示することができる。
【0006】
ところで、この有機LED素子を用いた表示装置として、コントラストが高く奥行き感のある画像を表示することができるようにしたものが、特許文献1(特開2002−208774号公報参照)に記載されている。
【0007】
すなわち、有機LED素子を用いた表示装置で表示された画像を観察するとき、背面電極4で反射した外光も、同時に目6に入ってくるが、この外光の混入は、表示画像のコントラストや鮮明度に悪影響を及ぼす。
【0008】
そこで、この特許文献1に記載の表示装置は、図11に示すように、有機LED素子10の発光光束の放射側にハーフミラー11を設ける。このハーフミラー11は、有機LED素子10から放射された発光光束DL0は、透過させると共に、一部は、反射して、有機LED素子10側に戻す特性を備えると共に、外光は反射して、有機LED10側への混入を防止するようにする。
【0009】
このハーフミラー11により、有機LED素子10の発光による表示画像のコントラストが高くなる。そして、有機LED素子10からの直接発光光束DL0による画像と、直接発光光束DL0がハーフミラー11で反射し、それがハーフミラー11と背面電極4との間で複数回反射されたことによる画像が重なることで、奥行き感に富む画像が表示される。
【0010】
上記の特許文献および非特許文献は、次の通りである。
【特許文献1】特開2002−208774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように特許文献1の表示装置では、有機LED素子10からの直接発光DL0がハーフミラー11で反射し、ハーフミラー11と背面電極4との間で複数回反射されることにより、直接光と反射光との画像が重なることで、奥行き感に富む画像が表示される。しかしながら、特許文献1で提案された表示装置では、ハーフミラー11で直接発光光束DL0が反射されることに基づいて、表示画像がにじむという問題があった。
【0012】
もしも、発光光束DL0がハーフミラー11に対して、その法線方向(ハーフミラー11に対して直交する方向)にすべて入射するのであれば、ハーフミラー11での反射光が、すべて発光光束DL0に重なるように戻るので、表示画像がにじむという問題は生じない。しかしながら、実際には、発光光束DL0は、図9において斜線を付して示すように、広がりを持っており、ハーフミラーに対して直交せずに、傾きを持って入射する発光光もある。このようなハーフミラー11に対して直交しないで入射する光は、直接発光光束DL0による表示画像とは離れた位置に、表示画像の虚像を形成し、その結果として、表示画像のにじみを生じる。
【0013】
すなわち、図11において、有機LED素子10からの出力光は、ハーフミラー11に到達して、透過光DL0と、反射光Rd1とに分離される。ハーフミラー11で反射された光Rd1は、有機LED素子10の背面電極4でさらに反射され、ハーフミラー11を透過して、虚像を表示する光RL1となって、観視者の目6に入る。
【0014】
また、反射光Rd1の一部は、さらにハーフミラー11で反射されで、反射光Rd2となって背面電極4でさらに反射され、ハーフミラー11を透過して、虚像を表示するものとなる光RL2となって、観視者の目6に入る。これがハーフミラー11と背面電極4との間で繰り返されて、徐々に減衰してゆくが、この結果、図12に示すように、表示画像がにじんで表示されてしまい、表示画像が見づらくなるという問題が生じる。
【0015】
この問題を解決するための手段として、上述の2次反射Rd1、3次反射Rd2を抑えるために、有機LED素子10自体の発光光量を削減する方法が取られているが、それでは、表示装置としては光量不足で見づらいという欠点があった。
【0016】
また、図13に示すように、有機LED素子10とハーフミラー11との間に円偏光フィルタ12を設ける方法も用いられている。すなわち、この図13の例によれば、直接光の円偏光方向と、反射光の円偏光方向が異なることになるので、反射光は円偏光フィルタ12を透過できず、背面電極4での反射を防ぐことができ、虚像の発生、つまり表示画像のにじみを防止することができる。
【0017】
しかしながら、この図13の例のように円偏光フィルタ12を用いる場合には、有機LED素子10からの出射光に対する透過光量が40%程度、減光してしまうため、やはり見づらくなってしまうという問題があった。
【0018】
この発明は、以上の点にかんがみ、できるだけ、発光光量を減らさずに、表示画像のにじみを軽減できる表示素子および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、この発明の表示素子は、
透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示素子において、
前記透明電極側に、前記光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、前記発光層から放射される光束を絞るように、前記発光層のドット周期の1倍以下の周期で前記発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配した
ことを特徴とする。
【0020】
上述の構成のこの発明による表示素子によれば、発光光束の放射方向側に、非光透過壁が発光層のドット周期の1倍以下の周期で発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタが配されるので、発光光束の放射角度が絞られる。
【0021】
その結果、例え、発光光束がハーフミラーなどで反射されて表示素子に戻って、背面電極で2次反射されたとしても、その2次反射により生じる虚像と実像との結像位置が近くなり、表示画像のにじみが軽減される。
【0022】
そして、フィルタは、非光透過壁が、発光層に平行な方向に繰り返し形成されたものであるから、開口を備えるので、偏光フィルタを用いる従来例よりも発光光量の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、発光光量を減らさずに、表示画像のにじみを軽減できる表示素子および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明による表示素子および表示装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この発明による表示素子の例としての有機LED20を示すものである。この図1の例の有機LEDは、図10に示した有機LED10と全く同様に、ガラス基板1の上に、この例では、ITOからなる透明電極2が陽極として形成され、その上に、有機LEDからなる発光層3がドライプロセスやウェットプロセスにより形成される。そして、発光層3の上に、この例においては、アルミニウム金属からなる背面電極4が陰極として形成され、その上に、さらに、保護用のガラス基板5が設けられる。
【0026】
発光層3は、有機層が発光層のみからなる場合、有機層が正孔輸送層と発光層からなる場合、有機層が発光層と電子輸送層からなる場合、有機層が正孔輸送層と発光層と電子輸送層からなる場合などがある。
【0027】
そして、前述したように、透明電極2および背面電極4は、それぞれストライプ状の電極を所定の方向に平行に配列したものとされるとともに、ストライプ状の透明電極2の配列方向と、ストライプ状の背面電極4の配列方向とは、互いに直交するようにされている。これにより、複数のストライプ状の透明電極2と複数のストライプ状の背面電極4とが交差する位置に対応する発光層3の部分が表示ドット(画素に対応)となり、多数個の表示ドットが構成される。
【0028】
そして、この実施形態の有機LED素子20においては、ガラス基板1の、有機LED層からなる発光層3からの発光光束の放射側に、非光透過性材料からなるメッシュフィルタ21を、例えばガラス基板1に対して被着(接着など)して配する。
【0029】
この例のメッシュフィルタ21は、図2に示すように、ガラス基板1上において、発光層3からの発光光束の放射方向を高さ方向とし、互いに直交する第1および第2のストライプ状の非光透過壁22および23が、互いに直交する方向に繰り返し形成されたものである。
【0030】
すなわち、ガラス基板1上において、高さがhの第1のストライプ状の非光透過壁22は、当該非光透過壁22の短辺方向であって発光層3に平行な第1の方向に、所定の繰り返しピッチp1で、繰り返し形成される。また、同様に、高さがhで、第1のストライプ状の非光透過壁22とはストライプの延長方向が直交する第2のストライプ状の非光透過壁23は、当該非光透過壁23の短辺方向であって発光層3に平行に、かつ、前記第1の方向とは直交する第2の方向に、所定の繰り返しピッチp2で、繰り返し形成される。
【0031】
この場合、繰り返しピッチp1およびp2は、発光層3における表示ドットの形成周期の1倍以下とされる。
【0032】
また、非光透過壁22および23の壁の厚さd1およびd2は、メッシュの開口部24の大きさをどの程度にするかに応じて定められる。この開口部24の大きさは、表示画像の明るさに影響するものである。
【0033】
メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23は、発光層3からの発光光束のうち、法線方向(発光層3に直交する方向)に対して、ある傾斜を持つ光を、そのまま出射させないように遮光する機能を備えるものである。すなわち、発光層3から放射される光束を絞るようにする機能を備える。
【0034】
図3は、このメッシュフィルタ21の機能を説明するための図である。この図3は、非光透過壁22について前記の光束を絞る機能を説明するものであるが、非光透過壁23についても全く同様である。
【0035】
図3の例においては、背面電極4は、ストライプ状のアルミニウム電極4S1,4S2,4S3・・・が、表示ドット周期p0で形成されている場合を示している。そして、図3の例において、中央のアルミニウム電極4S2と透明電極2との間に、前述したように直流電圧が印加されると、当該電圧印加部分に対応する発光層3の表示ドット部分3LDの有機発光体が励起されて発光し、発光光束DLがガラス基板1を通じて外部に放射される。
【0036】
このとき、メッシュフィルタ21の非光透過壁22が存在しない場合には、その発光光束DLの幅に制限はないが、この実施形態では、メッシュフィルタ21の非光透過壁22が存在するので、その高さhに応じた幅Wに、発光光束DLの幅が制限される。つまり、発光光束DLが非光透過壁22の高さhに応じて絞られることになる。
【0037】
つまり、発光層3からの発光光束のうち、法線方向に対して、メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23の高さhに応じた所定以上の傾斜を持つ光は、そのまま出射させずに、非光透過壁22,23に当たって遮光される。
【0038】
したがって、図1に示すように、有機LED素子20の、発光光束DLの出射側に、ハーフミラー11が設けられている場合であっても、ハーフミラー11で反射され、さらに背面電極4で2次反射される成分は、法線方向に近いもののみとなると共に、背面電極4で2次反射される成分が少なくなるので、表示画像のにじみが軽減されるものである。
【0039】
ちなみに、図13に示した従来のにじみが生じた表示画像と同じ画像を、この実施形態の有機LED素子20を用いると共に、ハーフミラー11を用いて表示画像を形成した場合の表示例を、図4に示す。
【0040】
なお、メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23の高さhは、有機LED素子20とハーフミラーとの距離(メッシュフィルタ21とハーフミラー11との距離)に応じて選定されるもので、有機LED素子20とハーフミラーとの距離が離れれば離れるほど、高さhは高くするとよい。
【0041】
また、メッシュフィルタ21を構成する非光透過壁22,23の厚さd1,d2は、非光透過壁22および23の形成ピッチp1およびp2を定めた後には、メッシュフィルタ21の開口24の大きさを定めるものとなるので、表示画像の必要な明るさに応じて定めるものである。なお、非光透過壁22,23の厚さd1,d2は、同じであっても、また、異なっても良い。
【0042】
この場合に、非光透過壁22および23の形成ピッチp1およびp2を、表示ドットのピッチp0(水平方向のピッチp0xおよび垂直方向のピッチp0y)と同一とし、かつ、非光透過壁22,23の形成位置を、表示ドットと表示ドットとの間の非表示領域に対応するように同期させるようにすれば、表示画像の明るさを、損なうことなく、表示画像のにじみを、上述のように軽減することができるものである。
【0043】
[表示装置の実施形態]
上述した実施形態の有機LED素子20を用いる表示装置を備える電子機器の一例としての携帯電話端末30を、図5に示す。
【0044】
この図5の実施形態の携帯電話端末30は、その筐体の一側の平面部分31がハーフミラーで構成されており、この筐体平面部分(ハーフミラー筐体部分と称する)31の下方に、図6に示すように、この実施形態の有機LED素子20が配されて、表示部32を構成するものである。すなわち、図5の携帯電話端末30は、有機LED素子20と、ハーフミラー筐体31とを備える表示装置を具備するものである。
【0045】
この携帯電話端末30の実施形態によれば、表示画像のにじみが少なく、かつ、ハーフミラー筐体部分31の効果により、前述したように、奥行き感のある表示画像が得られる。
【0046】
なお、図6においては、ハーフミラー筐体部分31と有機LED素子20のメッシュフィルタ21との間は空間としたが、この部分には、保護用のガラス基板を設けるようにしてももちろん良い。また、携帯電話端末30の筐体の一面全体をハーフミラー筐体部分とするのではなく、少なくとも表示部32とする部分のみをハーフミラー筐体部分とするように構成しても良い。
【0047】
[メッシュフィルタ21の他の構成]
図2に示したように、上述の実施形態では、第1および第2のストライプ状の非光透過壁22,23を、互いに直交する方向に所定の繰り返しピッチp1,p2で形成することにより、メッシュフィルタ21を構成するようにしたが、このようなメッシュフィルタ21を新規に構成するのはコスト高となる。
【0048】
そこで、この例では、既存のものを利用することにより、より安価に構成することを企図するものである。
【0049】
すなわち、この例においては、所定の太さの線材41を、図7(A),(B)に示すように、縦横に編み込んだメッシュフィルタ40を用いるようにする。このように線材41を縦横に編み込んだメッシュフィルタ40は、シルクスクリーン印刷などにも用いられており、入手が容易であって、有機LED素子20を安価に構成することができる。
【0050】
この場合、メッシュフィルタ40の高さhは、図7(A)のA−A断面図である図7(B)に示すように、線材41の太さに応じたものとなる。また、メッシュフィルタ40の開口42も、図7(A)および図7(C)に示すように、線材41の太さに応じたものとなる。
【0051】
すなわち、図7(C)に示したメッシュフィルタ40の線材41は、図7(A)に示したメッシュフィルタ40の線材41よりも細く、このため、開口42は、図7(C)に示したメッシュフィルタ40の方が、図7(A)に示したメッシュフィルタ40よりも大きくなり、より明るい表示ができる。
【0052】
また、図7(A)に示した太い線材41を用いたメッシュフィルタ40の方が、図7(C)に示した細い線材41を用いたメッシュフィルタ40よりも高さhは高くなり、にじみを、より軽減することができる。
【0053】
以上のことから、この実施形態においては、メッシュフィルタ40として、線材41の太さを種々選定することにより、有機LED素子20による表示画像の、にじみ量や、明るさを制御することができる。
【0054】
したがって、メッシュフィルタ40として、線材41の太さの異なるものを複数個用意しておき、それらの線材41の太さの異なるものを、ユーザが、有機LED素子20のメッシュフィルタとして適宜交換することができるように構成することにより、ユーザが、好みの明るさまたはにじみの程度に、表示画像を制御することできる。
【0055】
なお、図7(B)に示したように、上述の例では、線材41の断面形状は円形としたが、線材41の断面形状は、円形に限られず、四角形やその他の多角形であってもよい。
【0056】
ところで、上述の実施形態の説明において、メッシュフィルタ20の非光透過壁22および23の形成ピッチp1およびp2を、表示ドットのピッチp0(水平方向のピッチp0xおよび垂直方向のピッチp0y)と同一とし、かつ、非光透過壁22,23の形成位置を、表示ドットと表示ドットとの間の非表示領域に対応するように同期させるようにすれば、表示画像の明るさを、損なうことなく、表示画像のにじみを、上述のように軽減することができることを述べた。
【0057】
しかしながら、上述のように、非光透過壁22,23の形成位置を、表示ドットと表示ドットとの間の非表示領域に対応するように同期させるように構成することは、比較的困難である。このため、簡単には、表示ドットと非光透過壁22,23の形成位置を、同期させずに、メッシュフィルタ20を、ガラス基板1に対して設けるようにする。
【0058】
しかし、そのようにする場合において、有機LED素子20の表示ドット51の形成方向が、図8(A)に示すように、水平および垂直方向であるときに、メッシュフィルタ40の線材41の編み込み方向(非光透過壁22,23の繰り返し形成方向に相当)が、図8(B)に示すように、表示ドットと同じ方向である場合には、有機LED素子20の表示ドットのサイズと、メッシュフィルタ40の格子サイズ(開口サイズ)との干渉によるビートによって、図8(C)に示すような縞模様、すなわち、いわゆるモアレの発生の問題が生じる。
【0059】
そこで、この実施形態では、メッシュフィルタ40の線材41の編み込みピッチ(非光透過壁22,23の繰り返し形成ピッチp1,p2に対応)を、有機LED素子20の表示ドットの2分の1以下にして空間サンプリングするようにする。
【0060】
さらに、メッシュフィルタ40を、その線材41の編み込み方向(非光透過壁22,23の繰り返し形成方向に相当)が、図9(B)に示すように、図9(A)に示す有機LED素子20の表示ドット51の形成方向に対して、斜めに、図9(B)の例では45度だけ傾けた方向になるように、ガラス基板1上に形成するようにする。
【0061】
このようにすることにより、表示ドット配列の水平方向および垂直方向のビート成分を分散させることができ、ビートを除去して、図9(C)に示すように、モアレが発生しない表示画像を得ることができるようになる。
【0062】
[その他の実施形態および変形例]
なお、上述の図1の実施形態では、背面電極4は、アルミニウム電極としたが、その他の金属や合金であってもよい。
【0063】
また、メッシュフィルタ21は、ハーフミラー30とガラス基板1との間に配されていればよいので、ガラス基板1に被着するようにしなくてもよい。例えば、ガラス基板1上にメッシュフィルタ21を載せ、さらに透明ガラス基板を載せるようにして、2個のガラス基板で、挟持するような構成であってもよい。
【0064】
また、透明ガラス基板1あるいは透明ガラス基板1の上に配する透明ガラス基板内に、メッシュフィルタ21を形成するようにしても良い。
【0065】
また、メッシュフィルタ21の非光透過壁22,23や線材41は、光吸収性を備えるもので構成するようにするとさらに良い。
【0066】
なお、以上の説明は、表示素子が有機LED素子の場合についてのみについて説明したが、この発明は、透明電極と背面電極との間に発光層が設けられ、かつ、背面電極が、放射された発光光束が反射されて戻ってきたときに、その光を2次反射するようなもので構成されている場合のすべの表示素子について適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明による表示素子の実施形態を説明するための構造図である。
【図2】図1の実施形態の表示素子の要部であるメッシュフィルタを特に説明するための図である。
【図3】図1の実施形態の表示素子におけるメッシュフィルタの機能を説明するために用いる図である。
【図4】図1の実施形態の表示素子による表示例を示す図である。
【図5】この発明による表示装置を備える電子機器の例を説明するための図である。
【図6】図5の例を説明するために用いる図である。
【図7】この発明による表示素子の他の実施形態の要部である他の例のメッシュフィルタを説明するための図である。
【図8】この発明による表示素子の他の実施形態を説明するために用いる図である。
【図9】この発明による表示素子の他の実施形態を説明するために用いる図である。
【図10】従来の表示素子の一例としての有機LED素子の構造を説明するための図である。
【図11】従来の表示素子の一例としての有機LED素子による表示画像におけるにじみの発生を説明するための図である。
【図12】従来の表示素子の一例としての有機LED素子によるにじみが発生した表示画像の一例を示す図である。
【図13】従来の表示素子の一例としての有機LED素子による表示画像のにじみの発生を防止する従来例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1、5…ガラス基板、2…透明電極、3…有機LED層、4…背面電極、10…有機LED素子(従来例)、11…ハーフミラー、20…有機LED素子(実施形態)、21,40…メッシュフィルタ、41…線材、42…開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示素子において、
前記透明電極側に、前記光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、前記発光層から放射される光束を絞るように、前記発光層のドット周期の1倍以下の周期で前記発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配した
ことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
請求項1に記載の表示素子において、
前記フィルタは、所定の太さの線材を前記非光透過壁として前記発光層に平行な方向に編み込んだ形態のメッシュフィルタからなる
ことを特徴とする表示素子。
【請求項3】
請求項1に記載の表示素子において、
前記フィルタの前記非光透過壁の形成周期は、前記発光層のドット周期の1/2以下とする
ことを特徴とする表示素子。
【請求項4】
請求項1に記載の表示素子において、
前記非光透過壁の繰り返し形成方向は、前記発光層のドットの形成方向に対して交差する方向とする
ことを特徴とする表示素子。
【請求項5】
表示素子を備え、少なくとも前記表示素子の表示面に対向する筐体部分がハーフミラーにより構成される表示装置であって、
前記表示素子は、
透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示装置において、
前記透明電極側に、前記光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、前記発光層から放射される光束を絞るように、前記発光層のドット周期の1倍以下の周期で前記発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配した
ことを特徴とする表示装置。
【請求項1】
透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示素子において、
前記透明電極側に、前記光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、前記発光層から放射される光束を絞るように、前記発光層のドット周期の1倍以下の周期で前記発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配した
ことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
請求項1に記載の表示素子において、
前記フィルタは、所定の太さの線材を前記非光透過壁として前記発光層に平行な方向に編み込んだ形態のメッシュフィルタからなる
ことを特徴とする表示素子。
【請求項3】
請求項1に記載の表示素子において、
前記フィルタの前記非光透過壁の形成周期は、前記発光層のドット周期の1/2以下とする
ことを特徴とする表示素子。
【請求項4】
請求項1に記載の表示素子において、
前記非光透過壁の繰り返し形成方向は、前記発光層のドットの形成方向に対して交差する方向とする
ことを特徴とする表示素子。
【請求項5】
表示素子を備え、少なくとも前記表示素子の表示面に対向する筐体部分がハーフミラーにより構成される表示装置であって、
前記表示素子は、
透明電極と背面電極との間に発光層を備え、前記発光層から放射された光束が反射により戻ってきたときに、前記背面電極で、2次反射する構造の表示装置において、
前記透明電極側に、前記光束の放射方向を高さ方向とした非光透過壁が、前記発光層から放射される光束を絞るように、前記発光層のドット周期の1倍以下の周期で前記発光層に平行な方向に繰り返し形成されてなるフィルタを配した
ことを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−129225(P2008−129225A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312532(P2006−312532)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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