説明

表示素子及びその製造方法

【課題】有機EL層内の導電性パーティクルに酸化膜を被覆し、漏洩電流発生を抑制する表示素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の表示素子製造方法は、基板110上にアノード電極120を形成し、その上に有機EL層130を形成し、その上に第1の下部金属層141を熱化学気相蒸着又はE-ビーム蒸着により1nm〜100nmの範囲の膜厚で形成し、下部金属層141の一部に酸化膜151を形成し、そして下部金属層141上に第2の下部金属層142を形成する段階を含む。下部金属層140は少なくとも2個の金属層からなり、酸化工程は各金属層形成工程後にそれぞれ実行される。第1、第2の金属層は、アルミニウム、マグネシウム、マンガンカルシウム及びその合金よりなる群から選択された材料からなる。上記酸化膜は、Al、MgOx、MnO又はCaOからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子及びその製造方法に関し、特に、金属電極(カソード電極)での電流の漏洩を防止して、抵抗を低減することができる表示素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は表示素子の一種である有機電界発光素子を構成するピクセル回路部の平面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図であり、図1及び図2では、有機電界発光素子の構成を概略的に図示している。
有機電界発光素子は、基板1上に配列されたアノード電極2(ITO層)、アノード電極2上に形成された有機電界発光層3(以下、「有機EL層」という)、有機EL層3上に形成されたカソード電極4(金属電極として主にアルミニウム(Al)で形成される。)を含む。
有機EL層3は、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層が積層されて構成され、各カソード電極4(有機EL層包含)は、隔壁5によって隣接するカソード電極と所定の間隔を保持する。
【0003】
図2において、2aは絶縁膜、4aはカソード電極4の形成工程時に隔壁5上に形成される金属層を示す。
図1及び図2に示されるような構造からなる多数のピクセル回路部を基板1に上に形成した後、各ピクセル回路部のアノード電極2とカソード電極4に対する配線工程、キャップ接着工程及びスクライブ工程を経て個別表示素子として形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は、図2に示されたある一つのカソード電極4及びその下部の構造(基板1及びアノード電極2)を示した詳細断面図であり、有機EL層3上に位置するカソード電極4(以下、「金属電極」という)は金属、代表的にはアルミニウムからなる。
【0005】
有機EL層形成工程では、ある要因、例えば、チャンバー内に存在する不純物粒子のような導電性パーティクル10が生じ、このパーティクル10は有機EL層3内に存在するようになる。また、後続工程である金属層形成工程によって有機EL層3上に形成された金属電極4内にもこのパーティクル10の一部が位置するようになる。
【0006】
図3に示されるように、アノード電極2、有機EL層3、そして金属電極4にわたって存在する導電性パーティクル10は、漏洩電流(leakage current)の発生原因となる。即ち、一般に逆方向の電圧が印加される場合、いかなる電流も流れてはいけないが、この導電性パーティクル10によって所定の電流がアノード電極2、有機EL層3及び金属電極4を介して流れるようになる。
【0007】
本発明は、金属電極(カソード電極)で発生する上記問題点を解決するためのものであり、金属電極を多層金属層構造で形成して、金属電極の抵抗を低減することができる表示素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の別の目的は、金属層形成工程中に存在しうるパーティクル周辺領域に酸化膜を形成し、金属電極を構成する金属層と導電性パーティクルとを電気的に絶縁して導電性パーティクルによる漏洩電流の発生を抑制することができる表示素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表示素子製造方法は、基板上に第1電極を形成する段階、第1電極上に有機物層を形成する段階、有機物層上に下部金属層を形成する段階、下部金属層の一部に酸化膜を形成する酸化工程実施段階、及び下部金属層上に上部金属層を形成する段階を含む。
ここで、下部金属層形成段階は、少なくとも2個の単位金属層を形成する段階からなり、酸化工程段階は下部金属層を構成する各単位金属層形成後に実行されていてもよい。
【0010】
また、本発明に係る表示素子は基板に形成された第1電極及び第1電極上に形成された有機物層、及び有機物層に形成された下部金属層及び下部金属層上に形成された第2電極を含み、下部金属層の一部には酸化膜が形成されている。
このような構造の表示素子では、金属電極を構成する少なくとも一つの金属層上に形成された酸化膜によって導電性パーティクルによる金属電極(カソード電極)での電流漏洩を防止し、また金属電極の抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、金属層形成工程を少なくとも2回以上繰返し実施し、多数の金属層が積層された構造の金属電極を形成することによって、金属電極の膜厚を厚くすることができ、その結果、金属電極の抵抗を低減することができる効果がある。また、金属層形成工程後、酸化工程を実施することによって、存在しうる導電性パーティクルの周辺、即ち、導電性パーティクルと接触する金属層表面に酸化膜を形成し、これにより、導電性パーティクルと金属層を電気的に絶縁し、電流漏洩を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る表示素子及びその製造方法を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図4は本発明に係る有機電界発光素子の構成を示した断面図、図5(a)及び(b)は本発明に係る図4に示されたカソード電極の形成過程を工程段階別に示した部分詳細断面図である。以下では、カソード電極を「金属電極」という。
図5(a)を参照すると、基板110上にアノード電極120及び有機EL層130を形成する。上記説明のように、有機EL層130形成工程では、ある要因(例えば、工程チャンバー内に存在する不純物粒子)によって導電性パーティクル150が生じることがあり、この導電性パーティクル150は有機EL層130上に存在する。
【0013】
一方、有機電界発光素子の製造過程において、図5(a)に示された導電性パーティクル150の存在の有無を確認することは非常に難しく、また導電性パーティクルが発生しないように製造工程を管理することも非常に難しい。
本発明に係る素子の製造方法及びこれにより製造された素子は、パーティクル150の存在の有無と関係なく、パーティクル150が存在する場合に発生する問題点を解決するために提案されたものであり、従って、実際、全ての製造工程が完了した素子内の導電性パーティクルの存在有無は、本発明の範囲及び本発明の実施を判断する基準として考慮されない。
【0014】
この状態で、真空チャンバー内で実施される金属層形成工程を通じて、図5(a)に示されるように有機EL層130上に第1金属層141(下部金属層)を形成する。
このとき、第1金属層141は熱化学気相蒸着(thermal chemical vapor deposition)工程又はE−ビーム蒸着(E-beam deposition)工程などを通じて形成され、有機EL層130及び有機EL層130に存在する導電性パーティクル150を覆う状態で形成される。
【0015】
以後、第1酸化工程を実行するために基板110をチャンバー内に投入する。このとき、第1酸化工程が進むチャンバーは、85〜98体積%の不活性ガス及び2〜15体積%のOを含む。例えば、不活性ガスはアルゴンまたは窒素またはその混合物であってもよい。
上記条件下で、20分間、酸化工程が行われれば、導電性パーティクル150周辺に形成された第1金属層141を構成する金属材料と反応し、これにより、導電性パーティクル150と対応する第1金属層141表面に酸化膜151が形成される。
【0016】
このような酸化反応をさらに詳しく説明すれば以下の通りである。
有機EL層130上に形成された第1金属層141中で、導電性パーティクル150が存在しない領域に形成された部分は、その組織が緻密、且つ表面が平坦であるため、上述の条件下でも、金属層141を構成する金属材料はOと反応することは難しい。
【0017】
酸化工程時間が長くなり、またチャンバー内に含まれていた反応ガス内でのOの割合が2〜15体積%より大きな場合、第1金属層141を構成する金属材料がOと反応することによって、第1金属層141表面に酸化膜が形成される。しかし、本発明では、上記条件、即ち、2〜15体積%のO割合及び約20分の酸化工程時間で制御し、第1金属層141表面に酸化膜が形成されないようにした。
【0018】
一方、導電性パーティクル150は、その表面が不規則であるため、第1金属層141中の導電性パーティクル150の表面に形成された部分141aはその形状及び組織が不規則な状態となる。特に、平面でないパーティクル150表面上に、またはその隣接部位に形成された第1金属層141の一部分141aにはパーティクル150の不規則な形状によって微細な亀裂(crack)149が発生する。
【0019】
このような状態で、Oは第1金属層141中の導電性パーティクル150に対応する部分141aに形成された亀裂149を通じて導電性パーティクル150まで浸透するようになり、特に、浸透したOはパーティクル150の不規則な表面とこれに対応する第1金属層の部分141aの境界面(微細空間)に沿って移動し、導電性パーティクル150に対応する第1金属層141を構成する金属材料と反応する。
【0020】
このような第1金属層141を構成する金属材料とOとの反応によって、パーティクル150と対応する第1金属層141表面には酸化膜151が形成され、結果的に、パーティクル150と第1金属層141との界面に酸化膜151が存在するようになる。
【0021】
一方、図5(a)の図面符号の141bは、第1金属層141表面上にそれぞれ形成されうる酸化膜である。しかし、上記のように酸化工程条件を調節し、第1金属層141上に酸化膜141bが形成されないようにすることが好ましい。
【0022】
一方、上記で説明した酸化工程条件を満たしていない場合には、以下のような問題が発生しうる。
上述するように、チャンバー内でのOの割合が15体積%以上である条件で、20分以上、酸化工程が進む場合、Oは第1金属層141の金属材料と反応し、その結果、導電性パーティクル150が存在しない領域に形成された第1金属層141表面に酸化膜が形成される。
第1金属層141は、以後、積層状態で形成される別の金属層と共に電極(カソード電極)の機能を果たすようになり、これにより、その表面に酸化膜が形成される場合、電極の機能に大きな影響を及ぼすようになり好ましくない。
【0023】
また、上の条件では、Oが様々な経路を通じて有機EL層130まで浸透することができ、これによって有機EL層130が酸化される場合も発生する。
これと逆に、チャンバー内でのOの割合が2体積%以下で、酸化工程時間が20分未満の場合、平坦な形状の第1金属層141の表面には酸化膜が形成されないか、または導電機能に影響を及ぼさない程度の酸化膜が形成され得るが、導電性パーティクル150と第1金属層141と間の境界面上にも十分な膜厚の酸化膜151が形成されない。従って、酸化膜151は漏洩電流を防止する機能を実行できなくなる。また、上記条件下では、酸化工程を20分以上実施しなければ、十分な膜厚の酸化膜が形成されない。
【0024】
一方、導電性パーティクル150と第1金属層141と間の界面に酸化膜を形成する工程で最適の効果を得るために、第1金属層141は以下の条件を満たすことが好ましい。
まず、第1金属層141の形成に使用される材料は、酸化工程で反応ガスであるOと反応するアルミニウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム及びその合金よりなる群から選択されてもよい。従って、導電性パーティクル150と第1金属層141と間の界面に形成される酸化膜151は、アルミニウムオキサイド(Al)、マグネシウムオキサイド(MgO)、マンガンオキサイド(MnO)又はカルシウムオキサイド(CaO)であってもよい。しかし、Oとの反応度を考慮するとき、上記条件を満たす材料としてはアルミニウムが最も好ましい。
【0025】
また、第1金属層141は、1nm〜100nmの範囲内の膜厚で形成されることが好ましく、60nm〜70nm範囲内の膜厚が最も好ましい。
仮に、第1金属層141の膜厚が1nm以下のとき、酸化工程でOが第1金属層141を完全に通過し、その下部に位置する有機EL層130に浸透するようになり、これにより、Oによって有機EL層130が損傷を受けることがある。
【0026】
また、第1金属層141が100nm以上の膜厚で形成される場合、酸化工程でOが第1金属層141を通過せず、導電性パーティクル150に達することができない。結果的に、第1金属層141の膜厚が100nm以上の条件では、パーティクル150と接触する第1金属層141表面に酸化膜を形成することは難しい。
【0027】
一方、上述の酸化工程条件、即ち、2〜15体積%のOの割合及び20分の工程時間は、本発明を実施するための一例に過ぎなく、これに制限されない。即ち、酸化工程が進むチャンバー内のOの割合が15%以上の場合には、酸化工程時間が20分以下に調節され、反対に、Oの割合が2%以下のときは、酸化工程時間は20分以上に設定しなければならない。
【0028】
このように、本発明で要求する最適の酸化工程条件は、酸化反応が起こる金属層の材質、酸化工程が実施されるチャンバー内でのOの体積比率、工程時間、そして、それにともなう酸化膜形成速度(膜厚)などのような要因を考慮し、様々な範囲内で選択することができる。
【0029】
図5(a)に示されるように、第1金属層141と導電性パーティクル150との間の界面に存在する酸化膜151によって、導電性パーティクル150は第1金属層141と電気的に絶縁状態となり、これによって導電性パーティクル150による電流漏洩現象が生じない。
さらに、図5(b)を参照すると、上述した酸化形成工程を実施した後、金属層形成工程を実行し、第1金属層141上に上部金属層である第2金属層142を形成する。
【0030】
このとき、図5(a)に示されるように導電性パーティクル150の大きさが比較的小さく、第1金属層141がパーティクル150の全体表面を完全に覆った場合には、第1金属層141上に第2金属層142を形成した後、酸化工程を実施する必要はない。これをより詳しく説明すれば、以下の通りである。
酸化工程での工程条件(Oの体積%、及び工程時間、第1金属層141を構成する材料のOとの反応度など)を利用して、導電性パーティクル150周辺に形成された酸化膜151の膜厚を算出しうる。
【0031】
別の方法としては、同じ工程条件の酸化工程を経た後、製造された別の素子に対して漏洩電流を測定する方法がある。酸化工程を経ていない素子と比較して酸化工程を経た素子の漏洩電流値が著しく低い場合、酸化工程によって形成された酸化膜151によって、導電性パーティクル150による漏洩電流が著しく減少していることを判断することができる。
【0032】
このような過程による酸化工程では、導電性パーティクル150と第1金属層141との界面に存在する酸化膜151によって、導電性パーティクル150を介して漏洩電流が著しく減少したと判断されれば、第2金属層142形成後、追加酸化工程を行わずに、金属電極形成工程を終了する。
【0033】
このような過程によって形成された金属電極140、即ち、図5(b)に図示されたような第1金属層141及び第2金属層142の多層構造の金属電極140では、酸化工程過程で第1金属層141を構成する金属材料と酸素との反応によって、導電性パーティクル150に対応する金属電極140の第1金属層141上に酸化膜151が形成される。
【0034】
従って、金属電極140内には、たとい導電性パーティクル150が存在するとしても、第1金属層141と導電性パーティクル150と間の界面に存在する酸化膜151によって、導電性パーティクル150は第1金属層141と電気的に完全絶縁状態になり、これにより、導電性パーティクル150による電流漏洩現象が生じない。
【0035】
ここで、本発明では第1金属層141を形成した後、実施される酸化工程を通じて形成された酸化膜151によって導電性パーティクル150による電流漏洩現象が防止できるにもかかわらず、第1金属層141上に第2金属層142を形成する。
【0036】
図5(b)で図示されるような、第1と第2の金属層141、142からなる金属電極140は、比較的大きな膜厚を有しており、これにより、金属電極140の抵抗減少という本発明の目的を得ることができる。
【0037】
ここで、上述するような、酸化工程でOが浸透される第1金属層141の膜厚は、1nm〜100nmに制限されるべきである。しかし、抵抗を最小化し、電極としての機能を保持するために、金属電極140は所定の膜厚を有しなければならない。従って、図5(b)に示されるように制限的な膜厚を有する第1金属層141の膜厚と比較し、第2金属層142の膜厚を厚くするか、少なくとも同じ膜厚を持たせることによって、第1金属層141と第2金属層142からなる金属電極140は低い抵抗を有し、また電極としての機能を果たすことができる。
【0038】
一方、金属電極140を構成する第1、第2金属層141、142は、同じ金属材料(例えば、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、カルシウムまたはその合金)で形成することが好ましいが、互いに異なる金属材料で形成されていてもよい。
【0039】
第1及び第2金属層141、142を、それぞれ、異なる金属材料で形成する場合、各金属材料の仕事関数を考慮し、第1、第2金属層141、142の形成(積層)順序を考慮しなければならない。
即ち、仕事関数とは絶対零度での電子放出のために必要なエネルギーを電子ボルト(eV)単位として表示するものであるので、金属(又は半導体)内にある電子を表面で外部へ放出するためには、電子に熱や光などのあるエネルギーを与える必要がある。
【0040】
このような意味の仕事関数は、金属の種類によって異なり、例えば、ナトリウム 2.28eV、バリウム 2.51eV、金 4.90eV、白金 5.32eV、タングステン 4.52eVである。従って、電子を放出する第1、第2金属層141、142の配置は、これを構成する金属の仕事関数を考慮して決定する。
【0041】
一方、上述のように、第1金属層141を形成した後、実施される酸化工程では図5(a)及び(b)に示されるように、第1金属層141表面上に酸化膜141bが部分的に形成されていてもよい。第1金属層141表面上に形成された酸化膜141bは、一つの金属層(金属電極)を構成する第1金属層141と第2金属層142との間の電流を妨害する絶縁膜として作用しうる。
【0042】
従って、第1金属層141上に酸化膜141bが形成されないようにするか、少なくとも最小限の面積を持たせることが好ましい。例えば、隣接する酸化膜141bの間隔が1nm以上になるようにすることによって、第1金属層141と第2金属層142との間の電流が妨害されず、従って、金属電極140はその機能を正常に実行することができる。
【0043】
ここで、酸化工程の条件(Oの体積%、及び工程時間)を調節することによって、隣接する酸化膜141bの間隔は、上記条件に合うように調節することができる。
【0044】
一方、本発明に係る表示素子製造方法、即ち、金属電極形成方法では酸化膜形成工程後、素子に逆バイアス電圧を印加する段階を、さらに含むことができる。
酸化膜形成工程後のチャンバー内部には、酸化膜形成工程に用いられた多量のOが存在している。このような条件下で、素子に逆バイアス電圧を印加する場合、導電性パーティクル150と対応する第1金属層141の微細な亀裂149が拡大し、従って、チャンバー内に存在するOは拡大した微細な亀裂149を通じて、第1金属層141と導電性パーティクル150との間の空間にさらに流入する。
【0045】
結果的に、酸素が存在する状態で素子に逆バイアス電圧を印加すれば、導電性パーティクル150と対応する第1金属層141上に既に形成された酸化膜151に加えて十分な膜厚の酸化膜がさらに形成される。
上記では、第1金属層141上に酸化膜を形成した後、逆バイアス電圧を印加する段階を説明しているが、酸化膜が形成される過程中に逆バイアス電圧を印加する場合にも同じ効果を得ることができる。
【0046】
一方、上述のように、有機EL層形成工程で発生する導電性パーティクルの大きさは一定ではなく、従って、別個の工程によって製造されるあらゆる素子で漏洩電流が減少すると期待することは難しい。
【0047】
従って、素子の安全性を向上させるために、即ち、図5(a)及び(b)に示されたパーティクル150のサイズより大きなパーティクルによって生じうる漏洩電流の発生を防止するために、別途の酸化工程を、さらに実施することが好ましい。
【0048】
図6(a)、(b)及び(c)は、本発明に係る金属電極の形成過程を工程段階別に示した部分詳細断面図である。これは、上述の場合、即ち、第1金属層が大きなサイズの導電性パーティクルを完全に覆っていない状態での、金属層形成過程を示した図である。
【0049】
図5(a)に図示された状態とは違って、有機EL層230に存在するパーティクル250のサイズが比較的大きな場合、上記で説明した範囲(即ち、1nm〜100nm)の膜厚を持つ第1金属層241が形成されても、導電性パーティクル250の一部は第1金属層241によって完全に覆われずに、第1金属層241外部に露出される。
【0050】
むろん、第1金属層241と導電性パーティクル250と間の界面には、図5(a)を参照して説明したような第1次酸化工程によって酸化膜251が存在するようになるが、第1金属層241外部に露出された導電性パーティクル250表面には酸化膜が存在しない。
【0051】
従って、図6(b)に示されるように、第1金属層241上に形成された第2金属層242は露出された導電性パーティクル250と接触する。このような条件で、第1次酸化工程を経た後、製造された別の素子と酸化工程を経ていない素子に対する漏洩電流を測定すると、両素子において測定された漏洩電流値は大差ない。
【0052】
第1金属層241上に形成された第2金属層242が露出された導電性パーティクル250と接触することによって、第1次酸化工程が行われたにもかかわらず、導電性パーティクル250を通じた漏洩電流が生じるので、このような測定結果によって、第2次酸化工程を実行する。
【0053】
図6(b)のように、上述した第1次酸化形成工程後、金属層形成工程を実行して第1金属層241上に第2金属層242を形成する。
このとき、導電性パーティクル250のサイズが大きいため、第2金属層242b中で導電性パーティクル250と対応する部分242aにも亀裂249が発生する。
【0054】
第2金属層242形成工程後に、O雰囲気のチャンバー内で第2次酸化工程を実施する。このとき、Oは第2金属層242の一部分242a(即ち、導電性パーティクル250と対応する部分)に存在する亀裂249を通して浸透する。
【0055】
従って、Oは導電性パーティクル250に到達し、導電性パーティクル250に隣接する第2金属層242を構成する金属材料と反応し、第2金属層242表面に酸化膜252を形成する。結果的に、パーティクル250と第2金属層242と間の界面には酸化膜252が存在するようになる。
【0056】
図6(c)を参照すると、金属層形成工程を通じて第2金属層242上に上部金属層を構成する第3金属層243を形成する。従って、有機EL層230上には、下部金属層である第1金属層241及び第2金属層242、そして、上部金属層である第3金属層243からなる多層構造の金属電極240が最終的に形成される。
【0057】
次に、O雰囲気のチャンバー内での第1次及び第2次酸化工程と同じ条件下で、第3次酸化工程を実行する。一方、上述した方法を介して、第1次及び第2次酸化工程を通じて漏洩電流が著しく減少されるか、発生しなかったと判断されれば、第3次酸化工程を実行する必要はない。
【0058】
このような過程を通じて形成された金属電極、即ち、図6(c)に示されたような多層構造を持つ金属電極240内に、たといサイズが大きな導電性パーティクル250が存在しても、第1次及び第2次酸化工程過程で、Oが第1及び第2金属層241、242に浸透し、導電性パーティクル250と対応する第1金属層241及び第2金属層242を構成する金属材料と反応する。
【0059】
従って、導電性パーティクル250と第1金属層241との間の界面、及び導電性パーティクル250と第2金属層242との間の界面に存在する酸化膜251、252によって、パーティクル250は第1金属層241及び第2金属層242と電気的に完全に絶縁状態となり、これにより、パーティクル250による電流漏洩現象が生じない。
【0060】
一方、本発明では、上述するように、下部金属層、即ち、第1金属層241及び第2金属層242を形成した後、それぞれ、実施される酸化工程によって形成された酸化膜251、252によって、導電性パーティクル250による電流漏洩現象が生じないにもかかわらず、第2金属層242上に上部金属層である第3金属層243を形成する。
【0061】
従って、図6(c)に示されるように、多数の金属層241、242、243からなる金属電極240は、比較的大きな膜厚を有しており、従って、本発明は金属電極240の抵抗が小さくなる効果がある。
【0062】
ここで、上述するように、酸化工程でOが浸透される下部金属層、即ち、第1金属層241と第2金属層242の膜厚は限定される。しかし、抵抗を最小化し、電極としての機能を保持するために金属電極240は、所定の膜厚を有しなければならず、従って、図6(c)に示されるように限定された膜厚を持つ第1、第2金属層241、242の膜厚(即ち、下部金属層の膜厚)と比較し、第3金属層243の膜厚(即ち、上部金属層の膜厚)を厚くするか、少なくとも同じ膜厚を持たせることによって、金属電極240は低い抵抗を有し、また電極としての機能を果たすことができる。
【0063】
一方、図6(c)の構造を持つ表示素子での第1金属層241及び第2金属層242表面にそれぞれ形成された酸化膜間の間隔の条件及び酸化工程中に、または酸化工程後に実施する逆バイアス電圧印加段階は、図5(a)及び(b)で説明された酸化膜間の間隔の条件及び逆バイアス電圧印加段階と同様である。
【0064】
以上、説明した本発明は例示の目的のために開示されたものであり、本発明に対する通常の知識を有した当業者であれば、本発明の思想と範囲内で様々な修正、変更、付加が可能である。従って、このような修正、変更及び付加は本発明の特許請求の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】有機電界発光素子を構成するピクセル回路部の平面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿って切断した状態の断面図である。
【図3】図2に示されたカソード電極の部分詳細断面図である。
【図4】本発明に係る有機電界発光素子の構成を示した断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明に係るカソード電極(金属電極)の形成過程を工程段階別に示した部分詳細断面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明に係るカソード電極(金属電極)の形成過程を工程段階別に示した部分詳細断面図であり、第1金属層がパーティクルを完全に覆っていない状態での金属層形成過程を示した図である。
【符号の説明】
【0066】
110 基板
120 アノード電極
130 有機EL層
140 金属電極
141 第1金属層
149 微細な亀裂
150 導電性パーティクル
151 酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1電極を形成する段階、
上記第1電極上に有機物層を形成する段階、
上記有機物層上に下部金属層を形成する段階、
上記下部金属層の一部に酸化膜を形成する酸化工程実施段階、及び
上記下部金属層上に上部金属層を形成する段階、
を含む表示素子製造方法。
【請求項2】
酸化膜は、逆バイアス電圧が印加される状態で形成される請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項3】
酸化膜形成段階後、逆バイアス電圧を印加する段階を、さらに含む請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項4】
上記下部金属層は、熱化学気相蒸着又はE−ビーム蒸着工程によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項5】
上記下部金属層は、1nm〜100nmの範囲の膜厚を持つことを特徴とする請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項6】
上記下部金属層形成段階は、少なくとも2個の単位金属層を形成する段階からなり、上記酸化工程実施段階は上記各単位金属層形成段階後に、それぞれ、実施されることを特徴とする請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項7】
上記下部金属層の最下層単位金属層は、1nm〜100nmの範囲の膜厚であることを特徴とする請求項6に記載の表示素子製造方法。
【請求項8】
上記下部金属層の上記最下層単位金属層は、60nm〜70nmの範囲の膜厚であることを特徴とする請求項6に記載の表示素子製造方法。
【請求項9】
上記酸化工程は、不活性ガス及び酸素が含まれるチャンバー内で実施されることを特徴とする請求項1または6に記載の表示素子製造方法。
【請求項10】
不活性ガスは、アルゴンまたは窒素であり、Oの割合は2〜15体積%であることを特徴とする請求項9に記載の表示素子製造方法。
【請求項11】
上記下部金属層と上記上部金属層は、同じ材料からなることを特徴とする請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項12】
上記下部金属層及び上部金属層は、アルミニウム、マグネシウム、マンガンカルシウム及びその合金よりなる群から選択された材料からなることを特徴とする請求項1に記載の表示素子製造方法。
【請求項13】
基板、
上記基板に形成された第1電極、
上記第1電極上に形成された有機物層、及び
上記有機物層上に形成された下部金属層及び上記下部金属層上に形成された上部金属層からなる第2電極を含み、
上記下部金属層の一部には酸化膜が形成されている表示素子。
【請求項14】
上記下部金属層は、1nm〜100nmの範囲の膜厚であることを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項15】
上記下部金属層は、少なくとも2個の単位金属層からなることを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項16】
上記下部金属層の上記各単位金属層の一部には、酸化膜が形成されている請求項15に記載の表示素子。
【請求項17】
上記各単位金属層は、1nm〜100nmの範囲の膜厚であることを特徴とする請求項15に記載の表示素子。
【請求項18】
上記各単位金属層は、60nm〜70nmの範囲の膜厚であることを特徴とする請求項15に記載の表示素子。
【請求項19】
上記下部金属層は、その膜厚が上部金属層の膜厚より小さいことを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項20】
上記下部金属層と上記上部金属層は、同じ材料からなることを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項21】
上記下部金属層と上記上部金属層は、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム又はその合金よりなる群から選択された材料からなることを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項22】
上記酸化膜は、アルミニウムオキサイド(Al)、マグネシウムオキサイド(MgOx)、マンガンオキサイド(MnO)又はカルシウムオキサイド(CaO)であることを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項23】
上記酸化膜は、隣接する酸化膜と1nm以上の間隔を持って形成されたことを特徴とする請求項13に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−98137(P2008−98137A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36264(P2007−36264)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(596066770)エルジー エレクトロニクス インコーポレーテッド (384)
【Fターム(参考)】