説明

表示素子及び表示素子用対向電極の製造方法

【課題】TFT回路を用いてマトリックス駆動をさせる場合において、画素毎の表示安定性及び駆動安定性が高いEC方式及びED方式の表示素子を提供する。また、当該表示素子に用いる表示素子用対向電極の製造方法を提供する。
【解決手段】表示電極、対向電極、及びそれらの間に挟持された電解液組成物を具備し、かつ、前記電極又は電解液組成物が酸化還元反応により発色と消色をする化合物を含有する表示素子であって、前記対向電極の最表面に、バンク樹脂により区切られた、酸化物粒子を含有する多孔質構造体を有し、当該多孔質構造体と当該バンク樹脂が相互に接していないことを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子及び表示素子用対向電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は、必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
また、3V以下の定電圧駆動が可能な簡便な方式としてエレクトロクロミック化合物(酸化還元反応により発色及び消色する化合物)を用いるエレクトロクロミック方式(以下「EC方式」ともいう。)、金属又は金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下「ED方式」ともいう。)が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0007】
EC方式及びED方式を用いる場合、表示極側の電極及び対向側の電極に酸化物の多孔質構造を用いることが性能向上に必要であり、例えば特許文献4にEC方式において表示電極に酸化物の多孔質構造を用いてEC色素の固定化量をあげる方法が開示されている。
【0008】
一方、EC方式及びED方式において、対向電極にTFT回路を用いてマトリックス駆動をさせる場合に、画素毎の表示安定性及び駆動安定性が重要な課題であるが、これらについて有効な解決手段が得られておらず、画素毎の表示安定性及び駆動安定性が高いEC方式又はED方式の表示素子は未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】特許第3428603号公報
【特許文献3】特開2003−241227号公報
【特許文献4】特開2003−302659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、TFT回路を用いてマトリックス駆動をさせる場合において、画素毎の表示安定性及び駆動安定性が高いEC方式及びED方式の表示素子を提供することである。また、当該表示素子に用いる表示素子用対向電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記課題を解決すべく、対向電極の構造について種々検討を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
【0012】
1.表示電極、対向電極、及びそれらの間に挟持された電解液組成物を具備し、かつ、前記電極又は電解液組成物が酸化還元反応により発色と消色をする化合物を含有する表示素子であって、前記対向電極の最表面に、バンク樹脂により区切られた、酸化物粒子を含有する多孔質構造体を有し、当該多孔質構造体と当該バンク樹脂が相互に接していないことを特徴とする表示素子。
【0013】
2.前記バンク樹脂の高さが、0.1〜2.5μmの範囲内であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0014】
3.前記多孔質構造体の高さが、0.1〜2.0μmの範囲内であることを特徴とする前記1又は前記2に記載の表示素子。
【0015】
4.前記多孔質構造体と前記バンク樹脂の端面の距離が、0.1〜2.5μmの範囲内であることを特徴とする前記1から前記3のいずれか一項に記載の表示素子。
【0016】
5.前記電解液組成物が、酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有することを特徴とする前記1から前記4のいずれか一項に記載の表示素子。
【0017】
6.前記1から前記5のいずれか一項に記載の表示素子に用いる表示素子用対向電極の製造方法であって、電極基板上にバンク樹脂を形成後、表面張力が450〜600μN/cmの範囲内である酸化物粒子含有塗布液を塗布する工程を有することを特徴とする表示素子用対向電極の製造方法。
【0018】
7.前記6に記載の表示素子用対向電極の製造方法であって、電極基板上にバンク樹脂を形成後、バンク樹脂及び基板の一部を撥液化処理する工程を有することを特徴とする表示素子用対向電極の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、TFT回路を用いてマトリックス駆動をさせる場合において、画素毎の表示安定性及び駆動安定性が高いEC方式及びED方式の表示素子を提供することができる。また、当該表示素子に用いる表示素子用対向電極の製造方法を提供することができる。
【0020】
バンク樹脂の高さと多孔質構造体の高さを制御することにより電極反応部近傍での電解液の滞留がなされず、イオン交換が良好に行われること、バンク樹脂と多孔質構造体が実質的に接していないために多孔質形状が均一化され画素毎の電流不均一性が改善される、また、バンク樹脂、多孔質構造体の接触部分の剥離等の物理的破損をすることがないために画素毎の表示安定性、及び駆動安定性が良好になっていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る対向電極の表面に、バンク樹脂とそれにより区切られた多孔質構造体を形成する方法を示す概念図
【図2】本発明の樹脂面と多孔質構造体の接触状態を表す説明図
【図3】撥液化処理工程の一例を示す概念図
【図4】対向電極の構造を示す概念図
【図5】対向電極の電極部分のバンク樹脂により区切られた多孔質構造体のイメージ図
【図6】本発明を用いた表示素子例
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の表示素子は、表示電極、対向電極、及びそれらの間に挟持された電解液組成物を具備し、かつ、前記電極又は電解液組成物が酸化還元反応により発色と消色をする化合物を含有する表示素子であって、前記対向電極の最表面に、バンク樹脂により区切られた、酸化物粒子を含有する多孔質構造体を有し、当該多孔質構造体と当該バンク樹脂が相互に接していないことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0023】
本発明の実施態様としては、本発明の効果の観点から、前記バンク樹脂の高さが、0.1〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。また、前記多孔質構造体の高さが、0.1〜1.5μmの範囲内であることが好ましい。さらに、当該多孔質構造体とバンク樹脂端面の距離が、0.1〜2.5μmの範囲内である態様であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、前記電解液組成物が、酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有する態様であることが好ましい。
【0025】
本発明の表示素子に用いる表示素子用対向電極の製造方法としては、電極基板上にバンク樹脂を形成後、表面張力が450〜600μN/cmの範囲内である酸化物粒子含有塗布液を塗布する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。また、当該製造方法において、電極基板上にバンク樹脂を形成後、バンク樹脂及び基板の一部を撥液化処理する工程を有することが好ましい。さらに、前記撥液化処理をする部分のバンク樹脂端面からの距離が、前記関係式を満たす範囲内であることが好ましい。
【0026】
なお、本願において、「バンク(bank)」とは、複数の物質又は機能性部分同士を堤防のように隔てる(或いは区切る)構造物(凸形状物)をいう。また、「バンク樹脂」とは、当該バンクを構成する樹脂をいう。
【0027】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
【0028】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子においては、表示部には、表示電極と対向電極を有し、その電極間に電解液組成物を有する。また電極内又は電解液組成物のいずれかに酸化還元反応により発色及び消色する化合物(酸化還元物質)を有する。表示電極はITO電極等の透明電極、対向電極にはバンク樹脂で区切られた金属酸化物粒子で形成された多孔質電極構造体が設けられている。
【0029】
ここで、「バンク樹脂で区切られた」とは、バンク樹脂により電気的に絶縁されており画素毎に独立した駆動ができる状態をいう。
【0030】
〔バンク樹脂〕
本発明において、バンク樹脂として用いる樹脂には制限がなく、一般に市販されているポジ型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストから任意のものを使用できる。例えば、オプトマーSSシリーズ、NNシリーズ、PCシリーズ(JSR株式会社)などのレジスト樹脂が上げられる。
【0031】
〔対向電極の多孔質構造体〕
本発明の表示素子は、対向電極の最表面に、バンク樹脂により区切られた、酸化物粒子を含有する多孔質構造体を有することを特徴とする。
【0032】
本発明に係る対向電極において、多孔質構造体を形成する酸化物粒子は、例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、Bismuth Silicon Oxide(BSO)等が挙げられる。これらの中で、ITO、酸化チタンなどの酸化物粒子が好ましく、特に好ましい酸化物粒子はITOである。
【0033】
酸化物粒子の平均一次粒子径は、10〜100nmが好ましく、より好ましくは、10〜80nmである。
【0034】
〔多孔質構造体の形成方法〕
本発明に係る対向電極において、酸化物粒子により形成される多孔質構造体の形成方法としては、電極を構成する材料を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで、電極を構成する材料と溶媒を含んだ層を形成した後に、70〜300℃の温度で加熱することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法が挙げられる。
【0035】
また、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、多孔質構造体を形成することができる。
【0036】
また、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等に添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する。)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る。)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。
【0037】
具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号各公報等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0038】
なお、インクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで電極を構成する材料と溶媒を含んだ層を形成した後に、70度から300度の温度で加熱することよって多孔質化する方法が好ましい。
【0039】
〔多孔質構造体の表面の算術平均粗さ〕
本発明において、多孔質構造体の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0〜100nmが好ましく、より好ましくは0〜50nm、更に好ましくは0〜20nmである。
【0040】
ここで、多孔質構造体の表面の「算術平均粗さ(Ra)」とは、JIS B 0601(1994)準拠した定義に基づき算出した値である。Raは、例えば、DEKTAK8型表面粗さ測定装置(アルバック株式会社)を用いて多孔質部分を走査し、測定することができる。
【0041】
〔対向電極の製造プロセス〕
本発明の表示素子に用いる表示素子用電極としての対向電極の製造プロセスには制限はないが、対向電極の表面に、バンク樹脂とそれにより区切られた多孔質構造体を形成する方法の例を示す概念図を図1に示す。
【0042】
例えば、(1)TFT基板上に酸化物の多孔質構造体を形成後、エッチングによりバンク形成部分を除去しその後、フォトレジスト等により樹脂バンクを形成する方法(図1(a))、(2)TFT基板上に樹脂によるバンクを形成後、酸化物の多孔質構造体を画素毎に形成する方法(図1(b))、及び(3)TFT基板上に樹脂によるバンク形成後、酸化物の多孔質構造体を全面に形成、その後、CMPなどの切削手段を用いてバンク高さより上部に形成された多孔質構造体を除去し画素毎の分割構造を形成する方法(図1(c))、などが挙げられる。
【0043】
これらの中で、バンク樹脂と酸化物の多孔質構造体の高さを実質的に同じにしやすいためにTFT基板上に樹脂によるバンク形成後、酸化物の多孔質構造体を全面に形成、その後、CMPなどの切削手段を用いてバンク高さより上部に形成された多孔質構造体を除去し、画素毎の分割構造を形成する方法が好ましい。
【0044】
〔バンク樹脂及び多孔質構造体の高さ〕
本発明においては、バンク樹脂の高さは、0.1〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましい範囲は、1.5〜2.5μmである。また、多孔質構造体の高さは、0.1〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましい範囲は、0.9〜2.0μmである。
【0045】
両者の高さの関係は、目的に応じて種々変化させることができるが、本発明において、当該多孔質構造体の高さとバンク樹脂の高さが等しい態様であっても良い。ここで、「バンク樹脂及び多孔質構造体の高さ」とは、バンク樹脂及び多孔質構造体それぞれの基材部分に対し一番高い点の基材に対する距離と定義する。また、「高さが等しい」とは、バンク樹脂の高さから多孔質構造体の高さを引いた値が−100〜200nmの範囲であることをいう。
【0046】
なお、バンク樹脂及び多孔質構造体の高さはDektak8(アルバック株式会社)等の触針式表面形状測定器を用いて測定することができる。
【0047】
〔多孔質構造体とバンク樹脂の位置関係〕
本発明においては、多孔質構造体とバンク樹脂が相互に接していないことを特徴とする。
【0048】
本発明においては、本発明の効果の観点から、当該多孔質構造体とバンク樹脂端面の距離が、0.1〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
なお、本願において、「多孔質構造体とバンク樹脂が相互に接していない」とは、電極基板の断面を電子顕微鏡を用いて、×20000倍以上の倍率で、観察した場合に、樹脂面と多孔質構造体が接していない状態をいう。また、接触しているが、接触している部分の高さが60nm未満である場合、「実質的に接していない」と言える状態とし「相互に接していない」状態と同義と定義する。なお、図2(a)に、樹脂面と多孔質構造体が接していない状態を示す。図2(b)に、樹脂面と多孔質構造体が実質的に接していない状態(接触している部分の高さが60nm未満である場合)を示す。
【0050】
断面の形成は、裏面にカッター等で裏面部分に傷をつけて割る方法、ミクロトーム等の装置を用いて薄片切削により作製する方法があげられる。
【0051】
〔撥液化処理〕
本発明においては、前記多孔質構造体とバンク樹脂が接していない構造の対抗電極を作製するために対向電極の基材において多孔質構造体が接しない部分に予め撥液化処理を施すことが好ましい。
【0052】
撥液化処理は、バンクとなるレジスト樹脂を撥液化したものを用いる方法(例えば、日産化学 NPAR−503)、レジスト樹脂によるバンク作製後、撥液化したい部分に表面処理により処理する方法等が挙げられるが、撥液化する部分を任意に設定できることよりレジスト樹脂によるバンク作製後、撥液化したい部分に表面処理により処理する方法が好ましい。
【0053】
表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系修飾剤を始め、シリコーンオイル系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系、カルボン酸系、リン酸系、アミノ酸系修飾剤等が挙げられる。これらは特に限定されるものではないが、シロキサン結合の結合力、安定性が高くシラン形の修飾剤が好ましい。
【0054】
上記シラン系修飾剤としては、ビニルシラザントリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のアルキル基含有のシラン剤及び、3,3,3−トリフロロプロピルトリクロロシラン等のフッ素含有のシラン剤が挙げられる。
【0055】
また、予め基材上を吸着良好なカップリング剤で表面処理を行い、分子内にフッ素含有基或いはアルキル含有基を有する分子をカップリング処理させる2段階での表面処理も用いることができる。この方法において基材に吸着良好なカップリング剤としてアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有のシラン剤が樹脂への接着性が高く好ましい。
【0056】
一方、撥液化処理の領域を設定する手段は、いかなる方法でもかまわないが、バンク樹脂基板作製後、レジスト材料を塗布し、マスク材による保護により撥液処理したい部分のみ露出させるフォトリソグラフィの技術を好ましく用いることができる(図3参照)。
【0057】
〔塗布液の表面張力〕
本発明に係る表示素子用対向電極の製造方法としては、電極基板上にバンク樹脂を形成後、表面張力が450〜600μN/cmの範囲内である酸化物粒子含有塗布液を塗布する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0058】
当該酸化物粒子を含有する塗布液の表面張力は、例えば、協和界面化学 CBVP−Z 等のウイルヘルミ式の表面張力測定装置により測定することができる。
【0059】
当該表面張力は、より好ましくは、500〜600μN/cmであり、水、ホルムアミド、γブチロラクトン等の高表張溶媒を添加することにより調整することができる。高表張溶媒としては、特にホルムアミドを含有させることが、酸化物微粒子の分散性、表面張力を両立させることができ、好ましい。塗布液は、溶媒を1種類添加し調製しても複数種含有させてもよい。
【0060】
〔エレクトロクロミック(EC)化合物〕
本発明に係る「酸化還元反応により発色及び消色する化合物」の一つとして、エレクトロクロミック(EC)化合物が挙げられる。
【0061】
前記EC化合物としては、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色又は消色する作用を示す限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0062】
EC化合物としては、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物に加え、有機金属錯体、導電性高分子化合物及び有機色素が知られている。
【0063】
EC特性を示す有機金属錯体としては、例えば、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリン錯体、金属−フタロシアニン錯体、希土類ジフタロシアニン錯体、フェロセン系色素などが挙げられる。
【0064】
EC特性を示す導電性高分子化合物としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリベンジジン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、ポリカルバゾール及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0065】
また、例えば、特開2007−112957号公報に記載されているような、ビスターピリジン誘導体と金属イオンから成る高分子材料もEC特性を示す。
【0066】
EC特性を示す有機色素としては、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物、フェノチアジン等アジン系色素、スチリル系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、ドナー/アクセプター型化合物類(例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン)等が挙げられる。その他、酸化還元指示薬、pH指示薬として知られている化合物を用いることもできる。
【0067】
《色調によるEC化合物の分類》
本発明に係るエレクトロクロミック(EC)化合物を、色調変化の点で分類すると、下記3つのクラスに分けられる。
クラス1:酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物。
クラス2:酸化状態で実質無色であり、還元状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
クラス3:還元状態で実質無色であり、酸化状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
【0068】
本発明の表示素子においては、目的・用途により上記クラス1からクラス3のEC化合物を適宜選択することができる。
【0069】
[クラス1のEC化合物]
クラス1のEC化合物は、酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物であり、その取り得る酸化状態に於いて、二色以上の表示が可能な化合物である。
【0070】
クラス1に分類される化合物としては、例えばVは酸化状態から還元状態へ変化することで橙色から緑色に変化し、同様にRhは黄色から暗緑色に変化する。
【0071】
有機金属錯体の多くは、クラス1に分類され、ルテニウム(II)ビピリジン錯体、例えばトリス(5,5′−ジカルボキシルエチル−2,2′−ビピリジン)ルテニウム錯体は+2〜−4価の間で、順にオレンジ色から、紫、青、緑青色、褐色、赤錆色、赤へと変化する。希土類ジフタロシアニン類の多くも、このようなマルチカラー特性を示す。例えばルテチウムジフタロシアニンの場合、酸化に従い順次、紫色から青、緑、赤橙色へと変化する。
【0072】
また、導電性ポリマーもその多くはクラス1に分類される。例えばポリチオフェンは酸化状態から還元状態へ変化することで青から赤へと変化し、ポリピロールは褐色から黄色へと変化する。またポリアニリン等では、マルチカラー特性を示し酸化状態の紺色から順に青色、緑色、淡黄色へと変化する。
【0073】
クラス1に分類されるEC化合物は、単一の化合物で、多色表示が可能であると言うメリットを有するが、反面実質無色と言える状態を作れないと言う欠点を有する。
【0074】
[クラス2のEC化合物]
クラス2のEC化合物は、酸化状態で無色乃至は極淡色であり、還元状態である特定の着色状態を示す化合物である。
【0075】
クラス2に分類される無機化合物としては、下記化合物が挙げられ、各々還元状態でカッコ内に示した色を示す。WO(青)、MnO(青)、Nb(青)、TiO(青)等。
【0076】
クラス2に分類される有機金属錯体としては、例えばトリス(バソフェナントロリン)鉄(II)錯体が挙げられ、還元状態で赤色を示す。
【0077】
クラス2に分類される有機色素としては、特開昭62−71934号、特開2006−71765号各公報等に記載されている化合物、例えばテレフタル酸ジメチル(赤)、4,4′−ビフェニルカルボン酸ジエチル(黄色)、1,4−ジアセチルベンゼン(シアン)、或いは特開平1−230026号、特表2000−504764号各公報等に記載されているテトラゾリウム塩化合物等が挙げられる。
【0078】
クラス2に分類される色素として、最も代表的な色素は、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物である。ビオロゲン系化合物は表示が鮮明であること、置換基を変えることなどにより色のバリエーションを持たせることが可能であることなどの長所を有しているため、有機色素の中では最も盛んに研究されている。発色は、還元で生じた有機ラジカルに基く。
【0079】
ビオロゲン等ピリジニウム系化合物としては、例えば特表2000−506629号公報を初めとして下記特許文献に記載されている化合物が挙げられる。
【0080】
特開平5−70455号、特開平5−170738号、特開2000−235198号、特開2001−114769号、特開2001−172293号、特開2001−181292号、特開2001−181293号、特表2001−510590号、特開2004−101729号、特開2006−154683号、特表2006−519222号、特開2007−31708号、特開2007−171781号、特開2007−219271号、特開2007−219272号、特開2007−279659号、特開2007−279570号、特開2007−279571号、特開2007−279572号各公報等。
【0081】
以下に、本発明に用いることができるビオロゲン等ピリジニウム化合物を例示するが、これらに限定されるものでは無い。
【0082】
【化1】

【0083】
【化2】

【0084】
[クラス3のEC化合物]
クラス3のEC化合物は、還元状態で無色乃至は極淡色であり、酸化状態である特定の着色状態を示す化合物である。
【0085】
クラス3に分類される無機化合物としては、例えば酸化イリジウム(暗青色)、プルシアンブルー(青)等が挙げられる(各々酸化状態でカッコ内に示した色を示す)。
【0086】
クラス3に分類される導電性ポリマーとしては、例は少ないが、例えば特開平6−263846号に記載のフェニルエーテル系化合物が上げられる。
【0087】
クラス3に分類される色素としては多数の色素が知られているが、スチリル系色素、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系色素、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等のアゾール系色素等が好ましい。
【0088】
以下に、本発明に用いることができるスチリル系色素、及びアジン系色素、アゾール系色素を例示するが、これらに限定されるものでは無い。
【0089】
【化3】

【0090】
【化4】

【0091】
本発明の好ましい態様においては、前記EC色素と共に電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩を併用し、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行う。この場合、該金属塩が還元されて黒表示を行う為、EC色素としては酸化により発色するクラス3のEC化合物が好ましく、特に発色の多様性、低駆動電圧、メモリー性等の点でアゾール系色素が好ましい。本発明において、最も好ましい色素は下記一般式(L)で表される化合物である。
【0092】
以下、本発明に係る下記一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物について説明する。
【0093】
【化5】

【0094】
前記一般式(L)において、Rlは置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rl、Rlは各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−Rl、酸素原子または硫黄原子を表し、Rlは水素原子、または置換基を表す。
【0095】
Rlが置換基を有するアリール基を表す場合、置換基としては特に制限は無く、例えば以下のような置換基が挙げられる。
【0096】
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルフォニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
【0097】
Rlとしては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、更に好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
【0098】
R1、Rlで表される置換基としては特に制限は無く、前記Rlのアリール基上への置換基として例示した置換基等が挙げられる。好ましくはRl、Rlは置換基を有しても良い、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基である。Rl、Rlは互いに連結して、環構造を形成しても良い。Rl、Rlの組み合わせとしては、双方共に置換基を有しても良いフェニル基、複素環基である場合、若しくは何れか一方が置換基を有しても良いフェニル基、複素環基であり、他方が置換基を有しても良いアルキル基の組み合わせである。
【0099】
Xとして好ましくは、>N−Rlである。Rlとして好ましくは、水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
【0100】
本発明の表示素子においては、本発明に係る一般式(L)で表される化合物が、電極表面と化学吸着または物理吸着する基を有していることが好ましい。本発明に係る化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明に係る物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。本発明に係る吸着性基は、化学吸着性の基である方が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
【0101】
一般式(L)で表されるアゾール色素の中でも、特に下記一般式(L2)で表されるイミダゾール系色素が特に好ましい。
【0102】
【化6】

【0103】
一般式(L2)において、Rl21、Rl22は脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アシル基、スルホンアミド基、スルファモイル基を表し、R123は芳香族基若しくは芳香族複素環基を表し、Rl24は水素原子、脂肪族基、芳香族基、芳香族複素環基を表し、Rl25は水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基を表す。これらRl21からRl25で表される基は、更に任意の置換基で置換されていても良い。但しRl21からRl25で表される基の少なくとも1つは、その部分構造として−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す。)を有する。
【0104】
一般式Rl21、Rl22で表される基としては、アルキル基(特に分岐アルキル基)、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基が好ましい。Rl23としては置換若しくは無置換のフェニル基、5員もしくは6員環複素環基(例えばチエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基等)が好ましい。Rl24としては置換若しくは無置換の、フェニル基、5員もしくは6員環複素環基、アルキル基が好ましい。Rl25としては特に水素原子若しくはアリール基が好ましい。
【0105】
また一般式(L2)を電極上に固定する際、これらRl21からRl25で示される基の少なくともひとつに、部分構造として、−P=O(OH)、−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましく、特にRl23若しくはRl24で示される基の部分構造として−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましい。
【0106】
以下に、一般式(L2)で表されるEC色素の具体的化合物例、及び一般式(L2)には該当しないが、一般式(L)に含まれるEC色素の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0107】
一般式(L2)で表される化合物
【0108】
【化7】

【0109】
【化8】

【0110】
【化9】

【0111】
【化10】

【0112】
【化11】

【0113】
一般式(L)で表される化合物
【0114】
【化12】

【0115】
【化13】

【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
【化16】

【0119】
【化17】

【0120】
〔エレクトロデポジション(ED)化合物〕
本発明に係る「酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物」とは、上記の「酸化還元反応により発色及び消色する化合物」の一つであり析出時に発色、溶解時に消色するエレクトロデポジション(ED)化合物を指す。
【0121】
本願において、「エレクトロデポジション(ED)化合物」とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、当該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、好ましいのは銀、ビスマスである。銀塩化合物が特に好ましい。
【0122】
本発明に係る銀塩化合物とは、銀又は、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0123】
本発明に係る電解液組成物に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解液組成物の安定性が向上する。
【0124】
〔電解液組成物〕
本願において、「電解液組成物」とは、電解質に、電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物(溶媒を含む。)等を含有させた混合物をいう。なお、「電解質」とは、一般に、水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質をいう。
【0125】
〔一般式(SR)又は一般式(SM)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、電解液組成物が、下記一般式(SR)又は一般式(SM)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0126】
一般式(SR):R−S−R
【0127】
【化18】

【0128】
前記一般式(SR)において、R、Rは、各々置換又は無置換の炭化水素基を表し、これらには芳香族の直鎖基又は分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良い。ただし、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。
【0129】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0130】
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解液組成物中で銀を可溶化することが必要である。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀又は銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基も銀溶剤として、有用に作用し、共存化合物への影響が少なく、溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0131】
以下、本発明に係る一般式(SR)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0132】
SR−1:CHSCHCHOH
SR−2:HOCHCHSCHCHOH
SR−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
SR−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
SR−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
SR−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
SR−7:HCSCHCHCOOH
SR−8:HOOCCHSCHCOOH
SR−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
SR−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
SR−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
SR−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
SR−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
SR−14:HCSCHCHCHNH
SR−15:HNCHCHSCHCHNH
SR−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
SR−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
SR−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
SR−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
SR−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
SR−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
SR−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
SR−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
SR−24:HN(=O)CCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
SR−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(O=)NH
SR−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
SR−27:HC(O=)NHCHCHSCHCHSCHCHNHC(O=)CH
SR−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
SR−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
SR−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
SR−31:HN(NH)CSCHCHSC(NH)NH・2HBr
SR−32:H(NH)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(NH)NH・2HCl
SR−33:HN(NH)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(NH)NH・2HBr
SR−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH+・2Cl
【0133】
【化19】

【0134】
【化20】

【0135】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物SR−2が好ましい。
【0136】
次いで、本発明に係る一般式(SM)で表される化合物について説明する。
【0137】
前記一般式(SM)において、Mは、水素原子、金属原子又は4級アンモニウムを表す。Zは、イミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基又は複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRは同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0138】
一般式(SM)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0139】
一般式(SM)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0140】
一般式(SM)のRで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0141】
次に、一般式(SM)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0142】
【化21】

【0143】
【化22】

【0144】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物SM−12、及びSM−18が好ましい。
【0145】
〔一般式(LO)、(CO)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、電解液(電解質組成物)が、前記一般式(LO)又は(CO)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0146】
【化23】

【0147】
前記一般式(LO)において、Lは酸素原子又はCHを表し、R〜Rは各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0148】
【化24】

【0149】
前記一般式(CO)において、R、Rは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0150】
はじめに、一般式(LO)で表される化合物の詳細について説明する。
【0151】
前記一般式(LO)において、Lは酸素原子又はCHを表し、R〜Rは各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0152】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0153】
以下、一般式(LO)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0154】
【化25】

【0155】
次いで、前記一般式(CO)で表される化合物の詳細について説明する。
【0156】
前記一般式(CO)において、R、Rは各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0157】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0158】
以下、一般式(CO)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0159】
【化26】

【0160】
上記例示した一般式(LO)及び一般式(CO)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(LO−1)、(CO−2)、(CO−3)が好ましい。
【0161】
本発明に係る一般式(LO)、(CO)で表される化合物は電解液組成物の溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0162】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electrolytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0163】
本発明において、電解液組成物の溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解液組成物の溶媒は、イオン伝導性等の観点から、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒であることが好ましい。
【0164】
〔増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解液組成物に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0165】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0166】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0167】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0168】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0169】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0170】
〔表示電極〕
本発明の表示素子においては、表示電極が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚さは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0171】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0172】
シール剤は、外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0173】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0174】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製又は無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚さに相当する。
【0175】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号公報の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0176】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0177】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0178】
〔対向電極用TFT基板の作製〕
公知のアモルファスシリコンによるアクティブマトリックス型のTFT基板上に以下のプロセスにより対向電極用TFT基板を作製した。TFT基板の構造を図4〜図6に示す。
【0179】
なお、TFT基板の画素部分は電極保護の為にレジスト樹脂はオプトマー PC−403(JSR株式会社)をバンク樹脂としてバンク樹脂の高さは1.5μm、2.5μmとしたもの、及びレジスト樹脂を撥液性の高いNPAR−503(日産化学)をバンク樹脂として高さは2.5μmのものをそれぞれ作製した。作製した基板を以下に示す。
【0180】
【表1】

【0181】
〔対向電極1の作製〕
スピンコーター塗布装置MIKASA SPINNER 1H−D2を用いて回転数 800rpm 90secの条件でTFT基板1の画素上に4回塗布し、厚さ2.0μmの多孔質構造体を画素中に作製した。これを対向電極1とした。
【0182】
インクは、ITO膜形成用インクX806SCN27S(住友金属工業社製 一次粒子 25nm)、表面張力380μN/cmを用いた。
【0183】
〔対向電極2の作製〕
使用するTFT基板をTFT基板3とした以外は対向電極1の作製と同様にして対向電極2を作製した。
【0184】
〔対向電極3の作製〕
ITO膜形成用インクを 高表張ITOインクとした以外は対向電極2の作製と同様にして対向電極3を作製した。
【0185】
なお、高表張ITOインクは以下の手順で作製した。
【0186】
〔高表張インクの作製〕
ホルムアミド(関東化学社製)液にITO粉SUFP(住友金属鉱山社製 一次粒子 25nm)を20%、結着剤として微粒子シリカスノーテックスN(日産化学社製)5%、塩酸を0.01%となるように順次投入し超音波分散機UH−150(SMT社製)を用いて分散操作を行い調整した。
【0187】
〔対向電極4の作製〕
スピンコータ塗布装置による塗布回数を2回とし多孔質膜の厚さを1.0μmとした以外は対向電極3の作製と同様にして対向電極4を作製した。
【0188】
〔対向電極5の作製〕
使用するTFT基板をTFT基板4とした以外は対向電極4の作製と同様にして対向電極5を作製した。
【0189】
〔対向電極6の作製〕
TFT基板2を以下に示す撥液化処理を行い、使用する電極基板とした以外は対向電極4と同様にして対向電極6を作製した。
【0190】
〔撥液化処理〕
TFT基板2の画素画面全面にスピンコート塗布装置によりポジ型フォトレジストOFPR 800 (東京応化社製)を塗布した。続いてマスク材でバンク部分及びバンクから2μmのバンク近傍部分をマスクしi線 30mJ/cmの露光、TMAH2.4%液で30秒の現像処理を行った。その後、前処理としてアミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製)の2%ヘキサン溶液中(温度40度)に5分浸漬し乾燥した後に、撥液処理として3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン(和光純薬社製)の2%ヘキサン溶液中で5分浸漬処理を行い続けて乾燥した。
【0191】
作製した対向電極を表2に示す。
【0192】
【表2】

【0193】
〔電解液組成物の調製〕
〈電解液組成物1の調製〉
5mMの過塩素酸リチウム、酸化チタン(平均一次粒径:0.25μm)を30質量%、Sp−220(スペーサー粒子、粒径40μ積水化学社製)を0.05質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)を4質量%含むγ−ブチロラクトン溶液に、0.2Mの下記例示化合物を溶解させて電解液組成物1(EC用)を調製した。
【0194】
【化27】

【0195】
〈電解液組成物2の調製〉
5mMの過塩素酸リチウム、酸化チタン(平均一次粒径:0.25μm)を30質量%、Sp−220(スペーサー粒子、粒径40μ積水化学社製)を0.05質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)を4質量%含むγ−ブチロラクトン溶液に、0.8Mのトシル酸銀及び支持電解質塩として1.33mol/lのメルカプトトリアゾールを溶解させて電解液組成物2(ED用)を調製した。
【0196】
〔表示電極の作製〕
厚さ1.5mmで3cm×3cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成し、表示電極を得た。
【0197】
〔表示素子の作製〕
ODF真空貼り合わせ装置(常陽工学社製)を用い対向電極1の画素部周囲に封止用エポキシ樹脂を塗布後、真空中で対向電極1の画素部分に電解液(電解質組成物)1を5ml滴下し、表示電極を貼りあわせて表示素子1を作製した。
【0198】
同様に対向電極、電解液組成物の組合せを選択し表示素子2から表示素子7を作製した。
【0199】
表示素子1から表示素子7の構成材料を表3に示す。
【0200】
【表3】

【0201】
〔表示素子の評価〕
〔バンク樹脂及び多孔質構造体の高さ〕
対向電極のバンク樹脂及び多孔質構造体の高さは、DEKTAK8型表面粗さ測定装置(アルバック株式会社)を用いて測定した。
【0202】
〔バンク樹脂端面と多孔質構造体の距離〕
対向電極のバンク樹脂端面と多孔質構造体の距離は、裏面に切り傷を入れて対向電極を破断し、破断面を電子顕微鏡により観察し測定した。
【0203】
〔表示素子の駆動安定性〕
表示素子の駆動安定性を繰返し駆動させたときの反射率の安定性を下記の方法で評価した公知のアクティブマトリックス駆動回路に両電極を接続し、画素毎に−1.5Vの電圧を1.5秒間印加してグレー表示させたときの波長550nmと+1.5Vの電圧を1.5秒間印加して着色表示させたときの可視光領域の極大吸収波長での反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られたグレーの反射率と着色状態の反射率の平均値を別々に算出し、それぞれRave5、Rave6とした。さらに1万回繰返し駆動させた後に同様な方法でRave7、Rave8を求めた。
【0204】
BK3=|Rave5−Rave7|、
COLOR3=|Rave6−Rave8
とし、RBK3とRCOLOR3を繰返し駆動させたときの反射率の安定性の指標とした。
【0205】
なお、ここでは、RBK3とRCOLOR3の値が小さいほど、繰返し駆動させたときの反射率の安定性に優れることになる。
【0206】
〔表示素子の画素毎の表示安定性の評価〕
表示素子の画素毎の表示安定性の評価として前記、繰返し駆動させたときの反射率の安定性の評価と同様の駆動条件で1万回の駆動後に発色時の画素間の濃度のばらつきを目視により、下記3段階で評価した。
【0207】
評価基準:
3:画素間のばらつきなく、良好に発色している。
2:画素間のばらつきがあるが、全く発色していない画素は存在しない。
1:画素間にばらつき多く、全く発色していない画素が存在する。一部ITO多孔質の剥れが観察される。
【0208】
各表示素子の評価結果を表4に示す。
【0209】
【表4】

【0210】
上表より、本発明の表示素子は、TFT回路を用いてマトリックス駆動をさせる場合に画素毎の表示安定性、及び駆動安定性が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0211】
1 TFTを含む基板
2 多孔質構造体
3 バンク樹脂
4 スパッタITO
5 TFT回路部
6 ガラス基板
7 表示部分
8 周辺部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示電極、対向電極、及びそれらの間に挟持された電解液組成物を具備し、かつ、前記電極又は電解液組成物が酸化還元反応により発色と消色をする化合物を含有する表示素子であって、前記対向電極の最表面に、バンク樹脂により区切られた、酸化物粒子を含有する多孔質構造体を有し、当該多孔質構造体と当該バンク樹脂が相互に接していないことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記バンク樹脂の高さが、0.1〜2.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記多孔質構造体の高さが、0.1〜2.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記多孔質構造体と前記バンク樹脂の端面の距離が、0.1〜2.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記電解液組成物が、酸化還元反応により溶解及び析出する金属塩化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表示素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の表示素子に用いる表示素子用対向電極の製造方法であって、電極基板上にバンク樹脂を形成後、表面張力が450〜600μN/cmの範囲内である酸化物粒子含有塗布液を塗布する工程を有することを特徴とする表示素子用対向電極の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の表示素子用対向電極の製造方法であって、電極基板上にバンク樹脂を形成後、バンク樹脂及び基板の一部を撥液化処理する工程を有することを特徴とする表示素子用対向電極の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−197808(P2010−197808A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43777(P2009−43777)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】