説明

表示素子

【課題】白化時間が早く、繰り返し駆動しても、黒反射率安定に優れた表示素子を提供する。
【解決手段】対向電極間に、銀塩化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、セルロース誘導体とを含有することを特徴とする表示素子。
一般式(I):X−(L−((CH−O)−(L−Y
一般式(II):X−(L−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
一般式(III):X−(L−((CH−O)−(CH−CH(R)−O)−(L−Y

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀の溶解析出を利用した電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は駆動電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、エレクトロクロミック表示素子(以下、EC方式と略す)や金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)などの電気化学方式が知られている。これらの方式は簡易な素子構成で形成でき、3V以下の低電圧で駆動できるという利点がある。EC方式は、エレクトロクロミック材料の選択によりフルカラー表示が可能であり、ED方式は、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0007】
一方、ED方式の表示素子において、対向する電極間に液状の電解液を挟み込んだセルを形成する際に、スペーサーと高分子バインダを少なくとも含有することで、LCD液晶注入法適性を持たせる技術が提案されている。高分子バインダとしては、強靭で、透明性や各種溶媒に対する溶解性が高く、スペーサーや白色散乱物の分散安定性が高いため、電気化学素子分野で多用されているブチラール樹脂を好適に選択している。(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
しかしながら、特許文献4で提案されている表示素子では、LCD液晶注入法適性を有し、繰り返し使用時の表示時ムラは解消するものの、白化するのに時間を要し、繰り返し駆動時の応答速度が低下する、すなわち、黒反射率が下がってくるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】特許第3428603号公報
【特許文献3】特開2003−241227号公報
【特許文献4】特開2008−145830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、白化時間が早く、繰り返し駆動しても、黒反射率安定性に優れた表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.対向電極間に、銀塩化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、セルロース誘導体とを含有することを特徴とする表示素子。
【0013】
一般式(I)
X−(L−((CH−O)−(L−Y
〔式中、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。p、mは各々1以上の整数を表す。〕
一般式(II)
X−(L−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
〔式中、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。nは1以上の整数を表す。〕
一般式(III)
X−(L−((CH−O)−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
〔式中、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。p、m、nは、各々1以上の整数を表す。〕
2.前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートブチレートまたはセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、白化時間が早く、繰り返し駆動しても、黒反射率安定性に優れた表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、銀塩化合物を含有する電解液層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、セルロース誘導体とを含有することを特徴とする表示素子により、白化時間が早く、繰り返し駆動しても、黒反射率安定性優れた表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0017】
以下、本発明の表示素子の各構成要素の詳細について説明する。
【0018】
〔表示素子〕
本発明の表示素子においては表示部の電極1にはITO電極等の透明電極、他方の電極2には導電性電極が設けられている。電極1と電極2との間に、銀塩化合物と本発明に係る一般式(I)〜(III)で表されるメルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物及びセルロース誘導体とを含有する電解質層を有し、対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、白表示と黒表示を可逆的に切り替えることができる。
【0019】
〔銀塩化合物〕
本発明に係る金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
【0020】
(銀塩化合物)
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0021】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体等の公知の銀塩化合物を用いることが好ましい。これらの中でも、ハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのがより好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が特に好ましい。
【0022】
本発明に係る電解質に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
【0023】
〔一般式(I)〜(III)で表されるメルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物〕
次に、本発明に係る一般式(I)〜(III)で表されるメルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物について説明する。
【0024】
本発明に係る一般式(I)〜(III)で表される化合物は、具体的には、例えば、Int.J.Pept.Res.,30(6),740−83(1987)等に記載されているような両末端にメルカプト基を有する化合物、あるいは、Polymer Preprints,32(1),154(1991)等に記載されている片末端にのみメルカプト基を有する化合物が挙げられる。
【0025】
本発明に係る一般式(I)〜(III)で表される化合物は、例えば、特開平7−48449号公報、特開平7−48450号公報、特開平7−316285号公報、特開2006−177914号公報等に記載の方法に準じて合成することできる。
【0026】
はじめに、一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0027】
一般式(I)
X−(L−((CH−O)−(L−Y
前記一般式(I)においてL、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。p、mは各々1以上の整数を表す。
【0028】
、Lで表される連結基としては、二価の飽和炭化水素基、二価の不飽和炭化水素基、二価の芳香族基、二価の複素環またはこれらの基が連結された基もしくはこれらの基がO、S、N(R)(Rは置換基を表す。)、CO、SO等で連結された基等が挙げられる。
【0029】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の飽和炭化水素基を有する基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等が挙げられる。
【0030】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の不飽和炭化水素基を有する基としては、上記の二価の飽和炭化水素基を有する基を構成する少なくとも二つの炭素原子を結びつける結合の一つが、2重結合、3重結合等の不飽和結合で置き換えられることにより形成される基を表す。例えば、プロペニレン基、ビニレン基(エチニレン基ともいう)、4−プロピル−2−ペンテニレン基等が挙げられる。
【0031】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の芳香族基を有する基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジンジイル基、ピロールジイル基、チオフェンジイル基、フランジイル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(I)において、L、Lで表される二価の複素環基を有する基としては、例えば、オキサゾールジイル基、ピリミジンジイル基、ピリダジンジイル基、ピランジイル基、ピロリンジイル基、イミダゾリンジイル基、イミダゾリジンジイル基、ピラゾリジンジイル基、ピラゾリンジイル基、ピペリジンジイル基、ピペラジンジイル基、モルホリンジイル基、キヌクリジンジイル基等が挙げられる。
【0033】
また、上記の二価の基は、更に下記X、Yで示した置換基を有していても良い。
【0034】
X、Yで表される置換基としては、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基などが挙げられるが、本発明においては、X、Yのいずれか一方はメルカプト基であることを特徴とする。
【0035】
一般式(I)におけるpは1以上の整数を表すが、好ましくは2〜4の整数である。
【0036】
以下に、一般式(I)で表される化合物の代表例を示すが、本発明は、これら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0037】
I−1 HS−(CHCHO)−H
I−2 HS−(CHCHO)−CH−COOH
I−3 HS−(CHCHO)−CHCH−COOH
I−4 HS−(CHCHO)−(CH−COOH
I−5 HS−(CHCHO)−CH−NH
I−6 HS−(CHCHO)−CHCH−NH
I−7 HS−(CHCHO)−(CH−NH
I−8 HS−(CHCHO)−CH−CHO
I−9 HS−(CHCHO)−CHCH−CHO
I−10 HS−(CHCHCHCHO)−H
I−11 HS−(CHCHCHCHO)−CH−COOH
I−12 HS−(CHCHCHCHO)−CHCH−COOH
I−13 HS−(CHCHCHCHO)−(CH−COOH
I−14 HS−(CHCHCHCHO)−CH−NH
I−15 HS−(CHCHCHCHO)−CHCH−NH
I−16 HS−(CHCHCHCHO)−(CH−NH
I−17 HS−(CHCHCHCHO)−CH−CHO
I−18 HS−(CHCHCHCHO)−CHCH−CHO
【0038】
【化1】

【0039】
次いで、一般式(II)で表される化合物について説明する。
【0040】
一般式(II)
X−(L−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
上記一般式(II)において、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。X、Yは各々水素原子または置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。nは1以上の整数を表す。
【0041】
上記一般式(II)におけるL、L、X、Yは上記一般式(I)におけるL、L、X、Yと同義である。
【0042】
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表すが、好ましくはアルキル基であり、さらい好ましくはメチル基である。
【0043】
以下に、一般式(II)で表される化合物の代表例を示すが、本発明は、これら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
次いで、一般式(III)で表される化合物について説明する。
【0047】
一般式(III)で表される化合物は、上記説明した一般式(I)と一般式(II)におけるポリアルキレングリコール部分を共に有する構造からなる化合物である。
【0048】
一般式(III)
X−(L−((CH−O)−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
上記一般式(III)において、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。X、Yは各々水素原子または置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。p、m、nは、各々1以上の整数を表す。
【0049】
上記一般式(III)におけるL、L、X、Yは上記一般式(I)におけるL、L、X、Yと同義である。
【0050】
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表すが、好ましくはアルキル基であり、さらい好ましくはメチル基である。
【0051】
一般式(III)におけるpは1以上の整数を表すが、好ましくは2〜4の整数である。
【0052】
以下に、一般式(III)で表される化合物の代表例を示すが、本発明は、これら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0053】
III−1 HS−(CHCHO)−((CH)CHCHO)−CHCH−SH
III−2 HS−((CH)CHCHO)−(CHCHCHCHO)−(CH−SH
III−3 HS−(CHCHO)−S−(CHCHCHCHO)−(CH−SH
また、一般式(III)で表される化合物としては、下記に示すポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体である化合物が好ましい。
【0054】
III−4 HS−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)−CHCH−SH
III−5 CHO−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)−CHCH−SH
また、以下に示す分岐構造からなる化合物を挙げることができる。
【0055】
【化4】

【0056】
本発明に係る一般式(I)〜(III)で表されるメルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物は、市販品として入手することができ、例えば、日油株式会社より市販されているサンブライト SHシリーズを挙げることができる。具体的には、末端の一方にのみメルカプト基を有するSUNBRIGHT ME−020SH(2,000)、同ME−050SH(5,000)、同ME−100SH(10,000)、同ME−200SH(20,000)、同ME−300SH(30,000)、同ME−400SH(40,000)、両末端にメルカプト基を有するSUNBRIGHT DE−034SH(3,400)、同DE−100SH(10,000)、同DE−200SH(20,000)等を挙げることができる。また、分岐構造を有するペンタエリスリトール化合物として、SUNBRIGHT PTE−100SH(10,000)、同PTE−200SH(20,000)等を挙げることができる。なお、各化合物の括弧内の数値は、平均分子量を表す。
【0057】
〔セルロース誘導体〕
本発明の表示素子においては、電解質層が、銀塩化合物と本発明に係る一般式(I)〜(III)で表されるメルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物と共に、セルロース誘導体を含有することを特徴とする。
【0058】
本発明に係る電解質層に適用可能なセルロース誘導体としては、後述する電解質を構成する有機溶剤に対し1.0質量%以上溶解するセルロース誘導体であることが好ましく、例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテート、ニトロセルロース、カルビキシメチルセルロースアンモニウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等を挙げることができるが、その中でも、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが特に好ましい。
【0059】
〔ハロゲンイオン、金属イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質層に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン分子のハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、電解質層に含まれる金属イオンのモル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0060】
式(1)
0≦[X]/[Metal]≦0.01
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.01よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0061】
〔銀塩溶剤〕
本発明においては、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質液中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を生じ、銀と弱い供給結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0062】
(一般式(G−1)または一般式(G−2)で表される化合物)
本発明の表示素子においては、電解質層が、下記一般式(G−1)または(G−2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0063】
本発明に係る下記一般式(G−1)で表されるチオエーテル化合物及び下記一般式(G−2)で表されるメルカプト化合物は、本発明において銀の溶解析出を生じさせるため、電解質中での銀の可溶化を促進する化合物である。
【0064】
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解質中で銀を可溶化することが必要であり、例えば、銀と配位結合を生じ、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物が有用である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0065】
一般式(G−1)
Rg11−S−Rg12
上記一般式(G−1)において、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。
【0066】
【化5】

【0067】
前記一般式(G−2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0068】
前記一般式(G−1)において、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表すが、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。
【0069】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0070】
以下、本発明において適用可能な一般式(G−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0071】
G1−1:CHSCHCHOH
G1−2:HOCHCHSCHCHOH
G1−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
G1−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
G1−7:HCSCHCHCOOH
G1−8:HOOCCHSCHCOOH
G1−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
G1−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
G1−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
G1−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−14:HCSCHCHCHNH
G1−15:HNCHCHSCHCHNH
G1−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
G1−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
G1−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
G1−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
G1−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
G1−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
G1−24:HN(O=)CCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
G1−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NH
G1−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
G1−27:HC(O=)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(=O)CH
G1−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
G1−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
G1−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
G1−31:HN(NH=)CSCHCHSC(=NH)NH・2HBr
G1−32:HN(NH=)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(=NH)NH・2HCl
G1−33:HN(NH=)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(=NH)NH・2HBr
G1−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH2+・2Cl
【0072】
【化6】

【0073】
【化7】

【0074】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物G1−2、G1−3が好ましい。
【0075】
次いで、本発明に係る一般式(G−2)で表される化合物について説明する。
【0076】
前記一般式(G−2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0077】
一般式(G−2)において、Mで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0078】
一般式(G−2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0079】
一般式(G−2)において、Rg21で表される具体的な基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0080】
次に、一般式(G−2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0081】
【化8】

【0082】
【化9】

【0083】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物G2−12、G2−18、G2−20が好ましい。
【0084】
〔有機溶媒〕
有機溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられ、本発明で用いられるエレクトロクロミック化合物を初め、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒であればいずれも使用することができる。
【0085】
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチルリン酸トリヘキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。さらに、常温溶融塩も溶媒として使用可能である。前記常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち、液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
【0086】
本発明に用いる電解質溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
【0087】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0088】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0089】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0090】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0091】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0092】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0093】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0094】
本発明の水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0095】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0096】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0097】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0098】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0099】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0100】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0101】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。
【0102】
媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0103】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができる。例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0104】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0105】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0106】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0107】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0108】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0109】
〔電解質〕
本発明の表示素子において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0110】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0111】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0112】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF
更には、
【0113】
【化10】

【0114】
等が挙げられる。
【0115】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0116】
本発明の支持電解質としては、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。また対アニオンとしてはClO、BF、CFSO、(CSO、PFが好ましく、特にBFが好ましい。
【0117】
電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には、電解質塩は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.1モル/L以上存在していることである。
【0118】
固体電解質の場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を、電解質中に含むことができる。
【0119】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、CuS、AgS、CuSe、AgCrSe等のカルコゲニド、CaF、PbF、SrF、LaF、TlSn、CeF等の含フッ素化合物、LiSO、LiSiO、LiPO等のLi塩、ZrO、CaO、Cd、HfO、Y、Nb、WO、Bi、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiAlF、AgSBr、CNHAg、RbCu16Cl13、RbCuCl10、LiN、LiNI、LiNBr等の化合物が挙げられる。
【0120】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0121】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0122】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0123】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0124】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等の各公報に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0125】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0126】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0127】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0128】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を、下記表1に掲載した。
【0129】
【表1】

【0130】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0131】
また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
【0132】
〔電極〕
(表示側透明電極)
対向電極のうち、表示側には位置する電極としては、透明電極であることが好ましい。
【0133】
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0134】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0135】
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0136】
(透明多孔質電極)
透明電極の一つの態様として、上記透明電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0137】
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0138】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0139】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0140】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
【0141】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0142】
(グリッド電極:補助電極)
本発明に係る対向電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0143】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0144】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0145】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0146】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィー法でパターニングする方法、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
【0147】
補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0148】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0149】
(電極の形成方法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着する方法や、全面形成した後に、フォトリソグラフィー法でパターニングする方法等が挙げられる。
【0150】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0151】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0152】
電極材料を塗布方式で形成する場合には、例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0153】
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェット方式は高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0154】
〈静電インクジェット方式〉
本発明の表示素子においては、複合電極の透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい態様の1つである。さらにノズル内の溶液がノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
【0155】
また、凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して、凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
【0156】
また、凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
【0157】
この様な静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
【0158】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いる。
【0159】
(シール剤)
シール剤は、外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0160】
(柱状構造物)
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0161】
(スペーサー)
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0162】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0163】
(析出過電圧制御:黒化銀)
本発明の表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行うことが好ましい。この駆動操作を行うことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の電気化学表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。
【0164】
(析出過電圧制御:SECD)
本発明の表示素子の透明状態及び着色状態の制御方法は、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位や金属化合物の析出過電圧を基に決められることが好ましい。
【0165】
例えば、エレクトロクロミック化合物と金属化合物を対向電極間に有する表示素子の場合、酸化側で黒以外の着色状態を示し、還元側で黒色状態を示す。この場合の制御方法の一例としては、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位より貴な電圧を印加することでエレクトロクロミック化合物を酸化し黒以外の着色状態を示し、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位と金属化合物の析出過電圧の間の電圧を印加することでエレクトロクロミック化合物を還元し白色状態に戻し、金属化合物の析出過電圧より卑な電圧を印加することで金属を電極上に析出させ黒色状態を示し、析出した金属の酸化電位とエレクトロクロミック化合物の酸化還元電位の間の電圧を印加することで析出した金属を溶解して消色する方法が挙げられる。
【0166】
〔商品適用〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、ワンタイムパスワード、電子ブック、携帯電話のカバー等各種機器の筐体装飾、キーボード表示、電子棚札、電子POP、電子広告等が挙げられる。特に大画面の表示が求められる電子ブック、電子広告、電子POP等の製造に有効である。
【実施例】
【0167】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0168】
《電解液の調製》
〔電解液1の調製〕
ジメチルスルホキシド25g中に、ヨウ化銀(AgI)を1gとヨウ化ナトリウム(NaI)を2gとポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を10g加えて加熱溶解した液に、酸化チタン(石原産業社製、タイペークCR−90 平均粒径250nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液1を調製した。この電解液1は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0169】
〔電解液2の調製〕
γ−ブチロラクトン25g中に、p−トルエンスルホン酸銀(AgTS、トシル酸銀ともいう)0.75gとベンズイミダゾールチオールを1.5gとポリビニルブチラール(PVB、電気化学工業社製 #3000−1、平均重合度600、ポリビニルアルコール比率18%)と酸化チタン(石原産業社製、CR−95、平均粒径280nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液2を調製した。この電解液2は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0170】
〔電解液3の調製〕
上記電解液2の調製において、HS−(CHCHCHCHCHCH−O)−SHを1.0g添加した以外は同様にして、電解液3を調製した。この電解液3を一夜放置したところ、白色ガム状物質と澄明な液に分離していた。
【0171】
〔電解液4の調製〕
上記電解液2の調製において、QE−340M(東レファインケミカル社製 ポリチーオール(分岐ポリプロピレングリコールの末端水酸基をメルカプト化したもの))を1.0g添加した以外は同様にして、電解液4を調製した。この電解液4を一夜放置したところ、白色ガム状物質と澄明な液に分離していた。
【0172】
〔電解液5の調製〕
ジメチルスルホキシド25g中に、ヨウ化銀(AgI)を1gとヨウ化ナトリウム(NaI)を2gと加えて加熱溶解した液に、CH−(CHCHO)−CHCH−SH(SUNBRIGHT ME−020SH 日油株式会社、平均分子量2,000)を1.0g加え、ヒドロキシプロピルセルロースを1.2g、酸化チタン(石原産業社製、CR−95、平均粒径280nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液5を調製した。この電解液5は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0173】
〔電解液6の調製〕
γ−ブチロラクトン25g中に、トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgTFMS)を1gと、フェロセン0.01gと、メルカプト−1,2,4−トリアゾール(MTZ)を2gと、ヒドロキシプロピルセルロースを10g加えて加熱溶解した液に、QE−340M(東レファインケミカル社製 ポリチーオール、分岐ポリプロピレングリコールの末端水酸基をメルカプト化したもの)を1.0g加え、酸化チタン(石原産業社製、CR−95、平均粒径280nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液6を調製した。この電解液6は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0174】
〔電解液7の調製〕
γ−ブチロラクトン25g中に、トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgTFMS)を1gと、フェロセン0.01gと、メルカプト−1,2,4−トリアゾール(MTZ)を2gと、セルロースアセテートプロピオネート(積水化学社製)を10g加えて加熱溶解した液に、メルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物として例示化合物III−6を1.0gと、酸化チタン(石原産業社製、CR−95、平均粒径280nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液7を調製した。この電解液7は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0175】
〔電解液8の調製〕
ジメチルスルホキシド25g中に、p−トルエンスルホン酸銀(AgTS)1gと、セルロースアセテートプロピオネート(積水化学社製)を10g、CH−(CHCHO)−CHCH−SH(SUNBRIGHT ME−020SH 日油株式会社、平均分子量2,000)を1.0g加え、加熱溶解した液に、酸化チタン(石原産業社製、CR−95、平均粒径280nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液8を調製した。この電解液8は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0176】
〔電解液9の調製〕
トリエチレングリコール25g中に、4フッ化ホウ素酸銀(AgBF)1gと、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールを2g、メルカプト−1,2,4−トリアゾール(MTZ)を0.5g、セルロースアセテートブチレート(積水化学社製)を10g、HS−(CHCHO)−(CHCHCHO)−CHCH−SHを1.0gを加え、加熱溶解した液に、酸化チタン(石原産業社製、CR−95、平均粒径280nm)を12g加えてボールミルで分散して、電解液9を調製した。この電解液9は、一夜放置しても、白色分散液の状態を維持していた。
【0177】
〔電解液10の調製〕
上記電解液9の調製において、HS−(CHCHO)−(CHCHCHO)−CHCH−SHを、下記化合物I(SUNBRIGHT PTE−100SH 日油株式会社、平均分子量10,000)に変更した以外は同様にして、電解液10を調製した。
【0178】
【化11】

【0179】
《電極の作製》
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで10cm×10cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO膜を公知の方法に従って形成して、透明電極(電極1)を得た。
【0180】
(電極2の作製)
厚さ1.5mmで10cm×10cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.8μm、ピッチ145μm、電極幅130μmの銀−パラジウム電極を形成して、電極2を得た。
【0181】
《表示素子の作製》
〔表示素子1の作製〕
周辺部を、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極3の上に、平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、電極3と電極1を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0182】
(表示素子2〜10の作製)
前記表示素子1の作製において、電解液1を電解液2〜10に変更した以外は同様にして、表示素子2〜10を作製した。ただし、電解液3、4については、白色ガム状物質と澄明な液に分離していたため、これらを用いた表示素子3、4は、電解液の注入ができず、表示素子を作製することができなかった。
【0183】
【表2】

【0184】
なお、表2に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0185】
〈有機溶媒〉
DMSO:ジメチルスルホキシド
γ−BL:γ−ブチロラクトン
TEG:トリエチレングリコール
〈銀塩化合物〉
AgTS:p−トルエンスルホン酸銀
AgTFMS:トリフルオロメタンスルホン酸銀
〈ポリビニル誘導体〉
PVP:ポリビニルピロリドン(東京化成社製、平均分子量10万)
PVB:ポリビニルブチラール(電気化学工業社製 #3000−1、平均重合度600)
〈セルロース誘導体〉
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース
CAP:セルロースアセテートプロピオネート(積水化学社製)
CAB:セルロースアセテートブチレート(積水化学社製)
〈一般式(I)〜(III)で表される化合物〉
PEGSH:HS−(CHCHCHCHCHCH−O)−SH
QE:QE−340M、東レファインケミカル社製 ポリチーオール(分岐ポリプロピレングリコールの末端水酸基をメルカプト化したもの)
《表示素子の評価》
〔Tw0/Tb0、Tw500/Tb500、Tb500/Tb0の測定〕
定電圧電源の両端子に作製した各表示素子の両電極を接続し、電圧印加前の反射率R(白表示)を、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dを用いて計測した。
【0186】
次いで、表示側電極に−1.5Vの電圧を、0.1秒間隔で印加しながら、表示素子の表示部の反射率R(黒表示)を、同様にコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定、追跡し、R(白表示反射率)/R(黒表示反射率)=10となる時間Tb0、すなわち表示素子の表示部の反射率が、電圧印加前の反射率R(白表示)の0.1の反射率R(黒表示)となる印加時間Tb0を計測した。
【0187】
次いで、表示側の電極に1.2Vの電圧を0.1秒間隔で印加しながら、黒表示から白表示に変換し、反射率が電圧印加前の反射率R(白表示)となるまでの印加時間Tw0を測定した。
【0188】
上記測定した印加時間Tb0、印加時間Tw0より、Tw0/Tb0を求めた。このTw0/Tb0は、作製直後における白化時間と黒化時間の比であり、初期の黒表示をリセットし、全面白表示にするために必要な白化時間の目安である。
【0189】
次いで、各表示素子に対し、上記測定したTb0、Tw0のそれぞれ1.5倍となる印加時間で、白表示と黒表示の操作を500回繰り返し行った。
【0190】
500回の繰り返し表示を行った後、表示側電極に−1.5Vの電圧を、0.1秒間隔で印加しながら、表示素子の表示部の反射率R(黒表示)を測定、R(白表示反射率)/R(黒表示反射率)=10となる時間Tb500と、表示側の電極に1.2Vの電圧を0.1秒間隔で印加しながら、黒表示から白表示に変換し、反射率が電圧印加前の反射率R(白表示)となるまでの印加時間Tw500を測定した。
【0191】
上記測定した印加時間Tb500、印加時間Tw500より、Tw500/Tb500を求めた。このTw500/Tb500は、繰り返し操作を500回行った後の白化時間と黒化時間の比であり、黒表示をリセットし、全面を白化するために必要な白化時間の目安である。Tw0/Tb0とTw500/Tb500に差がないことが、繰り返しの駆動が安定している一つの指標となる。
【0192】
また、同様にTb500/Tb0を求めた。これは、作製直後の表示素子の黒表示時間(Tb0)に対する繰り返し操作を500回行った後の表示素子の黒表示時間(Tb500)の変化比率を表す。これも繰り返しの駆動が安定している一つの指標となる。
【0193】
以上により得られた各特性値を、表3に示す。
【0194】
次いで、電解液の調製時の特性及び上記測定した各特性値に従って、下記の項目の判定を行った。
【0195】
〔電解液の保存安定性〕
各表示素子の作製に用いた各電解液をガラス瓶に充填し、密栓をした状態で25℃の環境下で12時間静置した後、電解液の状態を目視観察し、下記の基準に従って、電解液の保存安定性を評価した。
【0196】
○:12時間静置した後でも、酸化チタン粒子が良好な分散状態にあり、均一な分散液である
△:12時間静置した後、ガラス瓶の底部にやや凝集物の発生が認められるが、再分散することにより、均一な分散状態に戻る
×:12時間静置した後、白色ガム状物質と澄明な液に2相分離を起こしている
〔繰り返し操作後の応答速度安定性の評価〕
上記測定したTw0/Tb0(A)とTw500/Tb500(B)より、作製直後と500回の白黒の繰り返し表示を行った後の応答速度比の差((B)−(A))を求め、これを応答速度安定性の尺度とし、下記の基準に従って、応答速度安定性を評価した。差が小さいほど、応答安定性に優れていることを表す。
【0197】
◎:Tw0/Tb0とTw500/Tb500との差が、0である
○:Tw0/Tb0とTw500/Tb500との差が、0.1以上、0.2以下である
△:Tw0/Tb0とTw500/Tb500との差が、0.3以上、0.4以下である
×:Tw0/Tb0とTw500/Tb500との差が、0.5以上である
〔繰り返し操作後の黒表示速度安定性の評価〕
上記測定したTb500/Tb0を、作製直後と500回の白黒の繰り返し表示を行った後の黒画像の表示速度の安定性の尺度とし、下記の基準に従って、黒表示速度安定性を評価した。
【0198】
◎:Tb500/Tb0が、1.0で、黒表示速度が安定している
○:Tb500/Tb0が、1.1で、黒表示速度がほぼ安定している
△:Tb500/Tb0が、1.2以上、1.4以下、黒表示速度変動がやや認められる
×:Tb500/Tb0が、1.5以上であり、繰り返し駆動後の黒表示速度変動が大きい
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0199】
【表3】

【0200】
表3に記載の結果より明らかなように、本発明に係るメルカプト基を有するポリオキシアルキレン化合物及びセルロース誘導体を含有する電解液を用いた本発明の表示素子は、比較例に対し、電解液の安定性に優れ、表示速度が速く、繰り返し駆動しても、応答速度安定性に優れ、応答速度の低下が極めて抑制された表示素子であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、銀塩化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該電解質層が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、セルロース誘導体とを含有することを特徴とする表示素子。
一般式(I)
X−(L−((CH−O)−(L−Y
〔式中、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。p、mは各々1以上の整数を表す。〕
一般式(II)
X−(L−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
〔式中、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。nは1以上の整数を表す。〕
一般式(III)
X−(L−((CH−O)−(CH−CH(R)−O)−(L−Y
〔式中、L、Lは各々二価の連結基を表し、q、rはそれぞれ0または1を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基を表す。X、Yは各々置換基を表し、X、Yのいずれか一方はメルカプト基である。p、m、nは、各々1以上の整数を表す。〕
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートブチレートまたはセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。

【公開番号】特開2010−237243(P2010−237243A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81769(P2009−81769)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】