説明

表示素子

【課題】簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での書き換え速度の低下がほとんどなく、書き換え可能な回数が極めて多数回である表示素子を提供する。
【解決手段】表示電極とそれに対向する対向電極間に、電気化学的酸化還元反応によって、溶解・析出する銀塩化合物を含む電解質組成物を含有し、かつ、電圧を印加することにより黒色と白色を表示する表示素子であって、該対向電極上に、それぞれ、カウンターアニオンがスルホン酸アニオン含有ポリマーであるオキソアンモニウム化合物を含有する塗布液が塗設されていることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子に関し、さらに詳しくは、新規な電気化学表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、各種のディスプレイが主として用いられているが、電子情報がドキュメントの場合、比較的長時間にわたってディスプレイを注視する必要があり、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、又は長時間読むと消費電力が嵩むこと等の欠点が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない、いわゆる「メモリー性」を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため、白表示に難がある。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、かつ、有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されて(例えば、特許文献1〜5参照)いる。
【0007】
ED方式では対向電極にレドックスポリマー(例えばフェロセンポリマー)を、固定化する技術が重要である。(例えば、特許文献6参照)しかし、従来公知のフェロセンポリマーはその性状から電解質中に含まれる溶剤に溶解しやすく、電極から脱離しやすいため、繰り返し素子を駆動させたときに書き換え速度が大きく低下し、また書き換え可能な回数が非常に少なくなる重大な欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/068231号パンフレット
【特許文献2】WO2004/067673号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献4】特許第3428603号公報
【特許文献5】特開2007−72368号公報
【特許文献6】特開2008−111941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での書き換え速度の低下がほとんどなく、書き換え可能な回数が極めて多数回である表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
1.表示電極とそれに対向する対向電極間に、電気化学的酸化還元反応によって、溶解・析出する銀塩化合物を含む電解質組成物を含有し、かつ、電圧を印加することにより黒色と白色を表示する表示素子であって、該対向電極上に、カウンターアニオンがスルホン酸アニオン含有ポリマーであるオキソアンモニウム化合物を含有する塗布液が塗設されていることを特徴とする表示素子。
【0012】
2.前記スルホン酸アニオン含有ポリマーが、ポリスチレンスルホン酸アニオンであることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0013】
3.前記オキソアンモニウム化合物のオキソアンモニウムカチオンが下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R15〜R18はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。X〜Xはそれぞれ独立に、>CH、>N=O、または>NH−OHを表す。R19は水素原子、ハロゲン原子又は6員環の3つの炭素原子に置換可能な置換基を表す。複数のR19は同じでも異なっていてもよく、nは0〜3の整数を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での書き換え速度の低下がほとんどなく、書き換え可能な回数が極めて多数回である表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0018】
<表示素子の基本構成>
本発明の表示素子においては、表示部には、対向する1対の電極が設けられている。表示電極にはITO電極等の透明電極、対向電極には本発明に係るカウンターアニオンがスルホン酸アニオン含有ポリマーであるオキソアンモニウム化合物(以下オキソアンモニウム化合物と省略する)が塗設された導電性電極が設けられている。表示電極と対向電極との間に、銀塩化合物を含有した電解質層と白色散乱層を有し、対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、白表示と黒表示を可逆的に切り替えることができる。
【0019】
〔表示電極〕
対向電極のうち、表示側に配置する電極としては、透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0020】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0021】
表示側に配置する電極としては、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の、透明導電性酸化物からなる電極であることが好ましい。
【0022】
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0023】
(透明多孔質電極)
透明電極の一つの態様として、上記透明電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0024】
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0025】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0026】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0027】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
【0028】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0029】
(グリッド電極:補助電極)
本発明に係る表示電極、対向電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0030】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0031】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0032】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0033】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
【0034】
補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0035】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0036】
(電極の形成方法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着する方法や、全面形成した後に、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法等が挙げられる。
【0037】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0038】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0039】
電極材料を塗布方式で形成する場合には、例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0040】
インクジェット方式の中でも、静電インクジェット方式は高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0041】
[対向電極]
対向電極としては、電気を通じるものであれば、特に制限されず用いることができる。対向電極の構成材料としては、上記透明電極と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。
【0042】
また、表示側透明電極の項で説明したのと同様に、対向電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。特に好ましくはITOである。
【0043】
本発明の対向電極としては、ITO電極上に、ナノ多孔質TiO電極、若しくはナノ多孔質ITO電極を設けた電極が好ましく、特にナノ多孔質ITO電極を設けた電極が好ましい。
【0044】
本発明のオキソアンモニウム化合物を対向電極に塗設させる手法としては、電解重合法、電解析出法、ディップ、スピン、キャスト等のコーティング方法が挙げられ、どの手法を用いても良い。
【0045】
<オキソアンモニウム化合物>
〔スルホン酸アニオン含有ポリマー〕
本発明のスルホン酸アニオン含有ポリマーはスルホン酸基含有ポリマー中のスルホン酸基の一部又はすべてがスルホン酸アニオンに変換されたものを云う。前記スルホン酸基含有ポリマーとしては従来公知のものが好ましく用いられる。具体例としては、重合単位として、スルホン酸基含有モノマー及びそれらの塩より選択される1種以上のモノマーを、約50〜約100質量%、好ましくは約80〜約100質量%含む。前記スルホン酸基含有モノマーの適当な例としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸、および2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸等が挙げられる。本発明のスルホン酸アニオン含有ポリマーの好ましい重量平均分子量は一万以上、五百万以下、かつ好ましい重量平均分子量と数平均分子量との比(以下、分子量分布と略す。)は1.5以上4.5以下であり、より好ましくは重量平均分子量で十万以上、三百万以下、かつ分子量分布で1.5以上3.5以下であり、特に好ましくは重量平均分子量で三十万以上、二百万以下、かつ分子量分布で1.5以上2.5以下である。分子量はポリスチレンを標準物質として算出した。
【0046】
[オキソアンモニウム化合物]
本発明のオキソアンモニウム化合物は、下記式(A1)で表されるオキソアンモニウム基を分子内に少なくとも1つ有する化合物である。
【0047】
式(A1) >N=O
[ポリスチレンスルホン酸アニオン]
本発明のポリスチレンスルホン酸アニオンは従来公知のポリスチレンスルホン酸のスルホン酸基の一部又はすべてがスルホン酸アニオンに変換されたものが好ましく用いられる。ポリスチレンスルホン酸の好ましい重量平均分子量は一万以上、五千万以下、かつ好ましい分子量分布は1.5以上4.5以下であり、より好ましくは重量平均分子量で十万以上、一千万以下、かつ分子量分布で1.5以上2.5以下であり、特に好ましくは重量平均分子量で五十万以上、五百万以下、かつ分子量分布で1.5以上2.0以下である。
【0048】
〈一般式(1)で表されるオキソアンモニウムカチオン〉
一般式(1)において、R15〜R18はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。好ましくは、水素原子またはメチル基である。特に好ましくは水素原子である。X〜Xは、>CH>、N=Oまたは>NH−OHを表すが、特にXは>N=Oまたは>NH−OHであることが好ましい。
【0049】
〈一般式(2)で表されるオキソアンモニウムカチオン〉
一般式(2)においてR19は水素原子、ハロゲン原子又は6員環の3つの炭素原子に置換可能な置換基を表す。複数のR19は同じでも異なっていてもよく、nは0〜6の整数を表すが、R19の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基等が挙げられる。好ましくはR19がすべて水素原子の場合である。
【0050】
以下に本発明のオキソアンモニウム化合物の例示化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化2】

【0052】
【化3】

【0053】
【化4】

【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
以下に本発明のオキソアンモニウム化合物の合成例を示す。
【0060】
(合成例1:化合物p1−1の合成)
ポリスチレンスルホン酸(Mw=150万、Mw/Mn=2.0)10g(47mmol)を純水30mlに溶解し、アザアダマンタンオキシラジカル7.9g(52mmol)を15mlのメタノールに溶解した溶液を室温でゆっくりと添加した。そのまま1時間攪拌後、攪拌しながら反応液にアセトニトリル100mlをゆっくりと滴下し、生成したポリマーをろ別し、アセトニトリルで十分に洗浄した。40℃で溶媒を乾燥し目的物p1−1を16g得た。(収率89%、Mw=153万、Mw/Mn=2.0)
(合成例2:化合物p1−14の合成)
ポリアクリルアミドt−ブチルスルホン酸(Mw=130万、Mw/Mn=3.0)10g(43mmol)を純水30mlに溶解し、ビスアザアダマンタンジオキシラジカル7.9g(47mmol)を15mlのメタノールに溶解した溶液を室温でゆっくりと添加した。そのまま1時間攪拌後、攪拌しながら反応液にアセトニトリル100mlをゆっくりと滴下し、生成したポリマーをろ別し、アセトニトリルで十分に洗浄した。40℃で溶媒を乾燥し目的物p1−14を15g得た。(収率84%、Mw=133万、Mw/Mn=2.8)
(合成例3:化合物p2−1の合成)
ポリスチレンスルホン酸(Mw=80万、Mw/Mn=2.0)10g(47mmol)を純水30mlに溶解し、テトラメチルピペリジンオキシラジカル8.1g(52mmol)を15mlのメタノールに溶解した溶液を室温でゆっくりと添加した。そのまま1時間攪拌後、攪拌しながら反応液にアセトニトリル80mlをゆっくりと滴下し、生成したポリマーをろ別し、アセトニトリルで十分に洗浄した。40℃で溶媒を乾燥し目的物p2−14を17g得た。(収率94%、Mw=77.9万、Mw/Mn=1.8)
(合成例4:化合物p2−9の合成)
メタリルオキシベンゼンスルホン酸(Mw=250万、Mw/Mn=2.5)10g(39mmol)を純水25mlに溶解し、テトラメチルピペリジンオキシラジカル6.7g(43mmol)を10mlのメタノールに溶解した溶液を室温でゆっくりと添加した。そのまま1時間攪拌後、攪拌しながら反応液にアセトニトリル90mlをゆっくりと滴下し、生成したポリマーをろ別し、アセトニトリルで十分に洗浄した。40℃で溶媒を乾燥し目的物p2−9を14g得た。(収率84%、Mw=235.9万、Mw/Mn=2.6)
尚、本発明のオキソアンモニウム化合物は、スルホン酸アニオン含有ポリマーのスルホン酸を対塩としているので、ニトロキシドラジカルは不均化を起こしてオキソアンモニウムカチオン型とアミノキシアニオン型の1:1混合物になる。オキソアンモニウムカチオン型の場合は勿論カチオン型であり、アミノキシアニオン型の場合でもスルホン酸の2個のHを受け取ってやはりカチオン型になるので、本発明のオキソアンモニウム化合物はあらゆる酸化還元状態で常に対電解質溶解性の低いスルホン酸アニオン(−)含有ポリマーを対塩として、好適に対向電極上に塗設、固定されるため、繰り返し駆動の安定性に優れると考えられる。
【0061】
<電解質組成物>
〔有機溶媒〕
本発明に係る電解質には、有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては沸点が120〜300℃の範囲にあることが好ましく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等を挙げることができる。
【0062】
〔銀塩化合物〕
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0063】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0064】
本発明に係る電解質に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
【0065】
〔ハロゲンイオン、銀イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0066】
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0067】
〔金属塩溶剤化合物〕
本発明に於いては銀塩の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を形成したり、銀と弱い共有結合を形成するような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴があり好ましく用いられる。
【0068】
〔支持電解質〕
本発明の電解質組成物において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0069】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0070】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0071】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF
更には、
【0072】
【化10】

【0073】
等が挙げられる。
【0074】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0075】
本発明の支持電解質としては、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には、電解質塩は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.1モル/L以上存在していることが望ましい。
【0076】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0077】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0078】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0079】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0080】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0081】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0082】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0083】
本発明の水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0084】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0085】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0086】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0087】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0088】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0089】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0090】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0091】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0092】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0093】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0094】
本発明の表示素子において、増粘剤として好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0095】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0096】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0097】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0098】
<表示素子のその他の構成要素>
本発明の表示素子には、基板、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子、及び電気絶縁層等を用いることができる。
【0099】
〔基板〕
本発明で用いることのできる表示電極用基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0100】
また、対向電極用基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
【0101】
[シール剤]
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0102】
[柱状構造物]
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0103】
[スペーサー]
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0104】
<表示素子駆動方法>
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0105】
<商品適用>
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0107】
実施例1
《表示素子の作製》
〔電解液の作製〕
(電解液1の調製)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、p−トルエンスルホン酸銀0.1gと化合物(G1−3)0.2gとトシル酸スピロー(1,1′)−ビピロリジニウム0.025g溶解させて、電解液1を得た。
【0108】
〔電極の作製〕
(電極1の作製)ITO電極
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成して、透明電極(電極1)を得た。
【0109】
(電極2の作製)ITO−多孔質ITO
電極1上に、ITOインク X−490CN27(住友金属鉱山、平均粒子径:20nm)に酸化亜鉛粒子(20nm:和光純薬製)をITO粒子に対し15質量%になるように混合、撹拌し混合液をスピンコート法により塗布した。180℃焼成を行い乾燥後希硝酸(比重1.38の硝酸を10倍に希釈したもの)中に浸漬したのち、洗浄、乾燥し厚み0.4μmの電極2を得た。
【0110】
(電極3の作製)多孔質ITO+フェロセンポリマー電解析出
電極2を用いて、対極に白金線、参照極に銀/銀イオン電極を用いた。電解液には、0.2M/lの過塩素酸n−テトラブチルアンモニウム−ジクロロメタンを用いて、フェロセンポリマー(Fcポリマー)を飽和溶解させた。この溶液中で、+1.0Vで3分間電解析出を行った。その後、基板を乾燥し、メタノールで洗浄し電極3を得た。
【0111】
(電極4の作製)多孔質ITO+本発明のポリマー・スピンコート
電極1上にITOインク X−490CN27(住友金属鉱山、平均粒子径:20nm)に酸化亜鉛粒子(20nm:和光純薬製)をITO粒子に対し15質量%、及び本発明のp1−1をITO粒子に対し7質量%になるように混合、撹拌し混合液をスピンコート法により塗布した。180℃焼成を行い乾燥後、希硝酸(比重1.38の硝酸を10倍に希釈したもの)中に浸漬したのち、洗浄、乾燥し、厚み0.45μmの電極4を得た。
(電極5〜20の作製)
電極4における本発明のp1−1を表1に示す通りに変更した以外は同様にして電極5〜20を作製した。
【0112】
〔表示素子の作製〕
(表示素子1−1の作製)ITO多孔質+TiO+電解質1
周辺部を、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極2の上に、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、石原産業社製二酸化チタンCR−90を20質量%添加し、超音波分散機で分散させた混和液を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、その後15℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、45℃の雰囲気中で1時間乾燥させた。得られた二酸化チタン層上に平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、電極2と電極1を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1−1を作製した。
【0113】
(表示素子1−2〜1−18の作製)
表示素子1−1の電極3を表1に記載の通り変更した以外は、表示素子1−1と同様にして表示素子1−2〜1−18を作製した。
【0114】
《表示素子の評価》
《評価1:表示素子1−1〜1−18の評価》
〔繰返し駆動させたときの反射率の安定性の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、+1.5Vの電圧を1.5秒間印加した後に−1.5Vの電圧を1秒間印加してグレーを表示させたときの波長550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた反射率の平均値をRave1とした。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた反射率の平均値をRave1とした。さらに1万回繰返し駆動させた後に同様な方法でRave2を求めた。RBK1=|Rave1−Rave2|とし、RBK1を繰返し駆動させたときの反射率の安定性の指標とした。ここでは、RBK1の値が小さいほど、繰返し駆動させたときの反射率の安定性に優れることになる。
【0115】
以上により得られた各表示素子の評価結果を、表1に示す。
【0116】
〔書換速度の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、電流値の上限を1平方cm辺り10mAに制御して、表示側の電極に−1.5Vの定電圧を1秒間印加してグレー表示させたときの波長550nm反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、得られた値をRBK2とした。ここでは、RBK2の値が小さいほど、黒表示の書換速度が速いことになる。
【0117】
以上により得られた各表示素子の構成及び評価結果を、表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
表1に記載の結果から明らかなように、本発明の表示素子は、比較よりも、繰り返し駆動した際の反射率変化、書き換え速度変化が少ない事が分かる。
【0120】
本発明により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での書き換え速度の低下がほとんどなく、書き換え可能な回数が極めて多数回である表示素子を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示電極とそれに対向する対向電極間に、電気化学的酸化還元反応によって、溶解・析出する銀塩化合物を含む電解質組成物を含有し、かつ、電圧を印加することにより黒色と白色を表示する表示素子であって、該対向電極上に、カウンターアニオンがスルホン酸アニオン含有ポリマーであるオキソアンモニウム化合物を含有する塗布液が塗設されていることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記スルホン酸アニオン含有ポリマーが、ポリスチレンスルホン酸アニオンであることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記オキソアンモニウム化合物のオキソアンモニウムカチオンが下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【化1】

(式中、R15〜R18はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。X〜Xはそれぞれ独立に、>CH、>N=O、または>NH−OHを表す。R19は水素原子、ハロゲン原子又は6員環の3つの炭素原子に置換可能な置換基を表す。複数のR19は同じでも異なっていてもよく、nは0〜3の整数を表す。)

【公開番号】特開2010−266592(P2010−266592A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116528(P2009−116528)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】