説明

表示装置、電子機器、発光制御プログラムおよび発光制御方法

【課題】消電流制限をかけつつ、リアルタイムに映像を表示することの可能な表示装置、電子機器、発光制御プログラムおよび発光制御方法を提供する。
【解決手段】電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて光学素子の発光期間を変更することにより表示映像の発光期間が変更される。発光期間の変更は、表示映像に対応する特性値が所定の閾値を超えたときに行われる。これにより、特性値が所定の閾値に到達するまでの期間に対応して、表示画像の発光期間(デューティー比)が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流駆動型の光学素子を備えた表示装置および電子機器に関する。また、本技術は、上記表示装置における光学素子の発光制御プログラムおよび発光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像表示を行う表示装置の分野では、画素の発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL(electro luminescence)素子を用いた表示装置が開発され、商品化が進められている。有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、光源(バックライト)が必要ないので、光源を必要とする液晶表示装置と比べて、薄型化、高輝度化することができる。特に、駆動方式としてアクティブマトリクス方式を用いた場合には、各画素をホールド点灯させることができ、低消費電力化することもできる。そのため、有機EL表示装置は、次世代のフラットパネルディスプレイの主流になると期待されている。なお、有機EL表示装置については、例えば、特許文献1などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−083272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子は、電流駆動型の発光素子であり、有機EL素子に流れる電流量を制御することにより階調を調整することの可能な素子である。それゆえ、有機EL素子では、発光輝度が変化すると、電流つまり消費電力も変動する。また、表示領域に占める白表示領域の割合が変化した場合にも、消費電力が変動する。従って、表示映像が経時的に変化することにより、消費電力も変化する。
【0005】
一定の消費電力内に抑えるためには、ある一定以上の電流が流れないように電流制限をかけ、表示映像の輝度を落とす必要がある。そのようにするために、従来では、例えば、映像信号が入力されたら、その映像信号を解析して、ある一定の消費電力内に抑えるように補正した表示信号を表示パネルに入力することが行われていた。しかし、そのようにした場合には、1フレームの映像信号が全て入力されてから、映像信号の解析を行うことが必要となるので、少なくとも1フレーム分の時間だけ遅延して表示信号を表示パネルに入力することになる。そのため、リアルタイムに映像を表示する必要のある用途には、上述の電流制限方法を用いることができないという問題があった。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流制限をかけつつ、リアルタイムに映像を表示することの可能な表示装置、電子機器、発光制御プログラムおよび発光制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術による表示装置は、電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えると共に、表示映像に応じて光学素子の発光期間を変更することにより表示映像の発光期間を変更する発光制御部を備えている。
【0008】
本技術による電子機器は、上記の表示装置と同一の構成要素を有する表示装置を備えている。
【0009】
本技術による発光制御プログラムは、電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて光学素子の発光期間を変更することにより表示映像の発光期間を変更することを表示装置に実行させるものである。
【0010】
本技術による発光制御方法は、電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて光学素子の発光期間を変更することにより表示映像の発光期間を変更するステップを含むものである。
【0011】
本技術による表示装置、電子機器、発光制御プログラムおよび発光制御方法では、表示映像に応じて、画素内の光学素子の発光期間を変更することにより、表示映像の発光期間が変更される。これにより、1フレーム分の映像が全て表示される前の段階から、表示映像に応じて消費電力の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本技術による表示装置、電子機器、発光制御プログラムおよび発光制御方法によれば、1フレーム分の映像が全て表示される前の段階から、表示映像に応じて消費電力の増大を抑制することができるようにしたので、電流制限をかけつつ、リアルタイムに映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本技術による第1の実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す図である。
【図2】画素回路の構成の一例を表す図である。
【図3】タイミング生成回路の構成の一例を表す図である。
【図4】電源線駆動回路の構成の一例を表す図である。
【図5】発光制御手順の一例を表す図である。
【図6】n−1フレーム目およびnフレーム目の表示映像の一例を表す図である。
【図7】図6の表示映像を表示したときの積算値の経時変化の一例と、画素列の表示の経時変化の一例と、表示領域全体の表示の経時変化の一例とを表す図である。
【図8】表示パネルに印加する各種電圧の経時変化の一例と、駆動トランジスタのゲート電圧およびソース電圧の経時変化の一例とを表す図である。
【図9】表示領域全体が均一な輝度となる映像が表示されるときに本実施の形態の発光制御がなされないときの、発光輝度と消費電力との関係の一例を表す図である。
【図10】表示領域の一部が白表示で、それ以外が黒表示となる映像が表示されるときに本実施の形態の発光制御がなされないときの、白表示の領域の面積(発光面積)と消費電力との関係の一例を表す図である。
【図11】表示領域全体が均一な輝度となる映像が表示されるときに本実施の形態の発光制御がなされたときの、発光輝度と消費電力およびデューティー比との関係の一例を表す図である。
【図12】表示領域の一部が白表示で、それ以外が黒表示となる映像が表示されるときに本実施の形態の発光制御がなされたときの、白表示の領域の面積(発光面積)と消費電力およびデューティー比との関係の一例を表す図である。
【図13】発光制御手順の一変形例を表す図である。
【図14】本技術による第2の実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す図である。
【図15】図14の表示装置における画素回路の構成の一例を表す図である。
【図16】図14の表示装置におけるタイミング生成回路の構成の一例を表す図である。
【図17】図14の表示装置における発光制御手順の一例を表す図である。
【図18】発光制御手順の一変形例を表す図である。
【図19】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図20】上記実施の形態の発光装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図21】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図22】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図23】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図24】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(表示装置)
発光電流を利用して発光期間の変更がなされる例
2.第2の実施の形態(表示装置)
映像信号を利用して発光期間の変更がなされる例
3.適用例(電子機器)
上記実施の形態の表示装置が電子機器に適用される例
【0015】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本技術による第1の実施の形態に係る表示装置1の概略構成を表したものである。この表示装置1は、表示パネル10と、表示パネル10を駆動する駆動回路20とを備えている。駆動回路20は、映像信号処理回路21、タイミング生成回路22、信号線駆動回路23、書込線駆動回路24、電源線駆動回路25および計測回路26を有している。タイミング生成回路22は、本技術の「発光制御部」の一具体例に相当し、計測回路26は、本技術の「計測部」の一具体例に相当する。
【0016】
(表示パネル10)
表示パネル10は、発光色の互いに異なる3種類の有機EL素子11R,11G,11Bが2次元配置された表示領域10Aを有している。有機EL素子11R,11G,11Bは、本技術の「電流駆動型の光学素子」の一具体例に相当する。表示領域10Aとは、有機EL素子11R,11G,11Bから発せられる光を利用して映像を表示する領域である。有機EL素子11Rは赤色光を発する有機EL素子であり、有機EL素子11Gは緑色光を発する有機EL素子であり、有機EL素子11Bは青色光を発する有機EL素子である。以下では、有機EL素子11R,11G,11Bの総称として有機EL素子11を適宜、用いるものとする。なお、表示パネル10に含まれる有機EL素子の発光色の種類は、上記に限定されるものではない。
【0017】
図2は、表示領域10A内の回路構成の一例を表したものである。表示領域10A内には、複数の画素回路12が個々の有機EL素子11と対となって2次元配置されている。さらに、一対の有機EL素子11および画素回路12が1つのサブピクセル13を構成している。より詳細には、図1、図2に示したように、一対の有機EL素子11Rおよび画素回路12が1つのサブピクセル13Rを構成している。また、一対の有機EL素子11Gおよび画素回路12が1つのサブピクセル13Gを構成し、一対の有機EL素子11Bおよび画素回路12が1つのサブピクセル13Bを構成している。さらに、互いに隣り合う3つのサブピクセル13R,13G,13Bが1つの画素(画素14)を構成している。
【0018】
各画素回路12は、例えば、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2および保持容量Csによって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。駆動トランジスタTr1または書き込みトランジスタTr2は、例えば、pチャネルMOS型のTFTであってもよい。
【0019】
表示領域10Aにおいて、複数の信号線DTLが列方向に延在して配置され、複数の走査線WSL、複数の電源線DSLおよび複数のカソード線CTLがそれぞれ、行方向に延在して配置されている。各信号線DTLと各走査線WSLとの交差点近傍には、サブピクセル13が1つずつ設けられており、サブピクセル13は表示領域10A内に2次元配置されている。列方向に並んで配置された複数のサブピクセル13は共通の信号線DTLに接続されており、行方向に並んで配置された複数のサブピクセル13は共通の走査線WSLに接続されている。さらに、行方向に並んで配置された複数のサブピクセル13が共通のカソード線CTLに接続されている。
【0020】
各信号線DTLは、信号線駆動回路23の出力端(図示せず)と、書き込みトランジスタTr2のドレイン電極およびソース電極のいずれか一方(図示せず)に接続されている。各走査線WSLは、書込線駆動回路24の出力端(図示せず)と、書き込みトランジスタTr2のゲート電極(図示せず)に接続されている。各電源線DSLは、電源線駆動回路25の出力端(図示せず)と、駆動トランジスタTr1のドレイン電極およびソース電極のいずれか一方(図示せず)に接続されている。各カソード線CTLは、計測回路26の入力端(図示せず)に接続されている。
【0021】
書き込みトランジスタTr2のドレイン電極およびソース電極のうち信号線DTLに非接続の方(図示せず)は、駆動トランジスタTr1のゲート電極(図示せず)と、保持容量Csの一端に接続されている。駆動トランジスタTr1のドレイン電極およびソース電極のうち電源線DSLに非接続の方(図示せず)と保持容量Csの他端とが、有機EL素子11のアノード電極(図示せず)に接続されている。有機EL素子11のカソード電極(図示せず)は、カソード線CTLに接続されている。
【0022】
(駆動回路20)
次に、駆動回路20内の各回路について、図1を参照して説明する。タイミング生成回路22は、信号線駆動回路23、書込線駆動回路24および電源線駆動回路25が連動して動作するように制御するものである。タイミング生成回路22は、例えば、外部から入力された同期信号20Bに応じて(同期して)、上述した各回路に対して制御信号22A,22B,22Cを出力するようになっている。なお、制御信号22Aは書込線駆動回路24の制御信号であり、制御信号22Bは信号線駆動回路23の制御信号であり、制御信号22Cは電源線駆動回路25の制御信号である。タイミング生成回路22は、例えば、映像信号処理回路21、信号線駆動回路23、書込線駆動回路24、電源線駆動回路25および計測回路26などと共に、例えば、表示パネル10とは別体の制御回路基板(図示せず)上に形成されている。
【0023】
タイミング生成回路22は、上述の機能の他に、表示画像に応じて有機EL素子11の発光期間を変更することにより表示画像の発光期間を変更する機能も備えている。タイミング生成回路22は、例えば、図3に示したように、発光制御プログラム22−1と、メモリ22−2と、発光制御プログラム22−1を実行するプロセッサ22−3とを有している。発光制御プログラム22−1は、表示画像の発光期間の制御手順が記述されたものである。メモリ22−2は、発光制御プログラム22−1を格納しており、さらに、例えば、必要に応じて、プロセッサ22−3における発光制御プログラム22−1の実行に際して使用される数値などを記憶することができるようになっている。
【0024】
なお、タイミング生成回路22において、発光制御プログラム22−1の全体または一部の機能が、ハードウェア(アプリケーション回路)として実現されていてもよい。なお、発光制御プログラム22−1における発光制御の手順の概略や詳細については、後に詳述するものとする。
【0025】
映像信号処理回路21は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号20Aに対して所定の補正を行うようになっている。所定の補正としては、例えば、ガンマ補正や、オーバードライブ補正などが挙げられる。映像信号処理回路21は、さらに、外部から入力された同期信号20Bに応じて(同期して)、例えば上記の補正をした後の映像信号20Aをアナログに変換して、アナログの表示信号21Aとして信号線駆動回路23に出力するようになっている。
【0026】
信号線駆動回路23は、映像信号処理回路21から入力された表示信号21Aを、制御信号22Bの入力に応じて(同期して)各信号線DTLに出力し、これにより、選択対象の各画素14への書き込みを行うものである。なお、書き込みとは、駆動トランジスタTr1のゲートに所定の電圧を印加することを指している。信号線駆動回路23は、例えば、表示信号21Aに対応する信号電圧Vsigと、表示信号21Aとは無関係な一定の電圧Vofsとを出力することが可能となっている。ここで、電圧Vofsは、有機EL素子11の閾値電圧よりも低い電圧値(一定値)である。
【0027】
書込線駆動回路24は、制御信号22Aの入力に応じて(同期して)、複数の走査線WSLの中から1または複数の走査線WSLに選択パルスを順次印加し、これにより、1または複数の画素行を順次選択するものである。書込線駆動回路24は、例えば、書き込みトランジスタTr2をオンさせるときに印加する電圧Vonと、書き込みトランジスタTr2をオフさせるときに印加する電圧Voffとを出力することが可能となっている。
【0028】
電源線駆動回路25は、制御信号22Cの入力に応じて(同期して)、複数の電源線DSLの中から1または複数の電源線DSLに選択パルスを順次印加し、これにより、1または複数の画素行の発光および消光を制御するものである。電源線駆動回路25は、例えば、後述のVth補正や、μ補正、発光の際に印加する電圧VccHと、消光の際に印加する電圧VccLとを出力することが可能となっている。
【0029】
電源線駆動回路25は、例えば、図4(A)に示した回路構成となっており、図4(B)に示した波形の信号dsst、ck、xckが入力されることにより、図4(C)に示した波形の信号out1,out2を出力可能となっている。電源線駆動回路25は、例えば、dsstの立ち下がり時期に応じて、out1,out2の立ち下がり時期を変更することが可能である。従って、電源線駆動回路25は、dsstの立ち下がりを利用して発光期間を制御することも可能である。
【0030】
計測回路26は、例えば、各カソード線CTLを流れる電流またはそれに対応する特性(例えば電圧)をカソード線CTLごとに計測し、計測値に対応する信号(計測信号26A)をカソード線CTLごとにタイミング生成回路22へ出力するものである。
【0031】
(発光制御の手順)
次に、発光制御プログラム22−1における発光制御の手順の概略について説明する。図5は、発光制御プログラム22−1における発光制御の手順の概略を表したものである。なお、以下では、プロセッサ22−3が発光制御を実行している場合について説明するが、アプリケーション回路が以下の発光制御を実行してもかまわない。
【0032】
プロセッサ22−3は、まず、計測回路26で得られた計測値(計測信号26A)またはそれに対応する値を順次積算する(ステップS101)。次に、プロセッサ22−3は、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS102)。なお、上記の「その積算した値またはそれに対応する値」は、本技術の「表示画像に対応する特性値」の一具体例に相当する。その結果、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えていなかった場合には、プロセッサ22−3は、引き続き、計測回路26で得られた計測値またはそれに対応する値を順次積算する(ステップS101)。その逆に、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えていた場合には、プロセッサ22−3は、表示画像の発光期間を変更(短縮)する(ステップS103)。プロセッサ22−3は、1フレーム分の積算が終了するか、または、表示画像の発光期間の短縮を実行した段階で、積算値を初期値(例えばゼロ)にリセットした上で、次フレーム分の積算を実行する。プロセッサ22−3は、このようにして、上述の一連の手順を1フレームごとに行う。
【0033】
次に、発光制御プログラム22−1における発光制御の手順の一例について説明する。図6は、n−1フレーム目およびnフレーム目の表示映像の一例を表したものである。n−1フレーム目の表示映像は、図6に示したように、表示領域10A全体が黒表示となるような映像である。nフレーム目の表示映像は、図6に示したように、表示領域10A全体が白表示となるような映像である。図7(A)は、図6の表示映像を表示したときの積算値の経時変化の一例を表したものである。なお、本実施の形態において、図7(A)の積算値とは、計測回路26で得られた計測値(計測信号26A)またはそれに対応する値の積算値を指している。図7(B)は、図6の表示映像を表示したときの、各画素列の表示の経時変化の一例を表したものである。図7(C)は、図6の表示映像を表示したときの、表示領域10A全体の表示の経時変化の一例を表したものである。なお、図7(C)は、ある瞬間の表示映像を表したものであり、観察者が実際に視認する表示映像とは異なっている。
【0034】
n−1フレーム目の表示映像のうち1ライン目の画素行に対応する映像の表示が終了すると、nフレーム目の消光期間Loffが始まる(図7(B)のT10)。すると、黒挿入が1ライン目からNライン目まで1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に転送される。消光期間Loffの間、後述するVth補正準備や、Vth補正、Vth補正休止、μ補正、書込みが、1ライン目からNライン目まで1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に行われ、その結果、nフレーム目の発光期間Lonが始まる(図7(B)のT11)。発光期間Lonが始まると、nフレーム目の表示映像に対応する発光電流が1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に流れ始めるので、表示領域10Aでは、1ライン目側から徐々に白表示が増えてくる(図7(C))。
【0035】
プロセッサ22−3は、発光期間Lonが開始すると、nフレーム目の表示映像に対応する発光電流が1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に流れるのに同期して、計測回路26で得られた計測値(計測信号26A)またはそれに対応する値を、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順次積算する。積算値は、図7(A)に示したように、時間の経過とともに徐々に上昇し、ある時(図7(B)のT12)を境に、所定の閾値A2を超える。このとき、電流制限が働いていない場合には、積算値は、図7(A)の一点鎖線に示したように、nフレーム目の表示映像のうち1ライン目の画素行に対応する映像の表示が終了する時(図7(B)のT13)まで上昇し続け、閾値A2よりも大きな値A1に到達する。
【0036】
一方、本実施の形態では、プロセッサ22−3は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、図7(A)の実線に示したように、積算値またはそれに対応する値がそれ以上増えないように、電流制限を実施する。具体的には、プロセッサ22−3は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、図7(B)に示したように、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に強制的に消光する強制黒表示期間Lcoを開始して、nフレーム目の表示画像の発光期間を短縮する。つまり、プロセッサ22−3は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、表示信号21Aとは無関係な輝度(具体的には黒輝度)に強制的に変更し、デューティー比を当初の値よりも小さくする。これにより、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2に到達するまでの期間に対応して、nフレーム目の表示画像の発光期間(デューティー比)が短縮される。また、発光期間(デューティー比)の短縮により、例えば、図7(C)に示したように、nフレーム目の表示映像の一部である帯状の領域(白表示の領域)が表示領域10Aを上から下に変移するようになる。その結果、nフレーム目の表示映像の発光輝度は、デューティー比が小さくなった分だけ、観察者にとっては低く感じられる。
【0037】
[動作]
次に、表示装置1の動作の一例について説明する。図8は、表示装置1を駆動させたときの各種波形の一例を表したものである。図8(A)には、信号線DTLに電圧Vsig、電圧Vofsが周期的に印加されている様子が示されている。また、図8(B),(C)には、書込線WSLに電圧Von、電圧Voffが所定のタイミングで印加され、電源線DSLに電圧VccH、電圧VccLが所定のタイミングで印加さている様子がそれぞれ示されている。なお、図8(B)には、駆動トランジスタTr1がnチャネル型である場合の波形が例示されている。図8(D),(E)には、信号線DTL、書込線WSLおよび電源線DSLへの電圧印加に応じて、駆動トランジスタTr1のゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsが時々刻々変化している様子が示されている。
【0038】
---Vth補正準備期間---
まず、Vth補正(閾値補正)の準備を行う。具体的には、書込線WSLの電圧がVoffとなっており、電源線DSLの電圧がVccHとなっている時(つまり有機EL素子11が発光している時)に、電源線駆動回路25が制御信号22Cに応じて電源線DSLの電圧をVccHからVccLに下げる(T1)。すると、ソース電圧VsがVccLとなり、有機EL素子11が消光する。次に、信号線駆動回路23が制御信号22Bに応じて信号線DTLの電圧をVsigからVofsに切り替えたのち、電源線DSLの電圧がVccLとなっている間に、書込線駆動回路24が制御信号22Aに応じて書込線WSLの電圧をVoffからVonに上げる。すると、ゲート電圧VgがVofsになる。このとき、ゲート電圧Vgとソース電圧Vsとの電位差Vgs(=Vofs−VccL)が駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthよりも大きくなるように、電源線駆動回路25および信号線駆動回路23では、電源線DSLおよび信号線DTLへの印加電圧(VccL、Vofs)が設定されている。
【0039】
---最初のVth補正期間---
次に、Vth補正を行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVofsとなっている間に、電源線駆動回路25が制御信号22Cに応じて電源線DSLの電圧をVccLからVccHに上げる(T2)。すると、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流が流れ、ソース電圧Vsが上昇する。その後、信号線駆動回路23が制御信号22Bに応じて信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える前に、書込線駆動回路24が制御信号22Aに応じて書込線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T3)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、Vth補正が一旦抑制する。
【0040】
---最初のVth補正休止期間---
Vth補正が休止している期間中(すなわち、書込線WSLの電圧がVoffとなっており、かつ電源線DSLの電圧がVccHとなっている間)は、先のVth補正を行った行(画素)とは異なる他の行(画素)において、信号線DTLの電圧のサンプリングが行われる。なお、Vth補正が不十分である場合、すなわち、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間の電位差Vgsが駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthよりも大きい場合には、以下のようになる。すなわち、Vth補正休止期間中にも、先のVth補正を行った行(画素)において、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流が流れ、ソース電圧Vsが上昇し、保持容量Csを介したカップリングによりゲート電圧Vgも上昇する。
【0041】
---2回目のVth補正期間---
Vth補正休止期間が終了した後、Vthの補正を再び行う。具体的には、電源線DSLの電圧がVccHとなっており、かつ信号線DTLの電圧がVofsとなっており、Vth補正が可能となっている時に、書込線駆動回路24が制御信号22Aに応じて書込線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T4)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。このとき、ソース電圧VsがVofs−Vthよりも低い場合(Vth補正がまだ完了していない場合)には、駆動トランジスタTr1がカットオフするまで(電位差VgsがVthになるまで)、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流が流れる。これにより、ゲート電圧VgがVofsとなり、ソース電圧Vsが上昇し、その結果、保持容量CsがVthに充電され、電位差VgsがVthとなる。その後、信号線駆動回路23が信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える前に、書込線駆動回路24が書込線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T5)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなるので、電位差Vgsを信号線DTLの電圧の大きさに拘わらずVthのままで維持することができる。このように、電位差VgsをVthに設定することにより、駆動トランジスタTr1の閾値電圧Vthが画素回路12ごとにばらついた場合であっても、有機EL素子11の発光輝度がばらつくのをなくすることができる。
【0042】
---2回目のVth補正休止期間---
その後、Vth補正の休止期間中(すなわち、書込線WSLの電圧がVoffとなっており、かつ電源線DSLの電圧がVccHとなっている間)に、信号線駆動回路23が制御信号22Bに応じて信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える。
【0043】
---書き込み・μ補正期間---
2回目のVth補正休止期間が終了した後、書き込みとμ補正を行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVsigとなっている間に、書込線駆動回路24が制御信号22Aに応じて書込線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T6)、駆動トランジスタTr1のゲートを信号線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTr1のゲートの電圧が信号線DTLの電圧Vsigとなる。このとき、有機EL素子11のアノードの電圧はこの段階ではまだ有機EL素子11の閾値電圧よりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流は有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔVだけ上昇し、やがて電位差VgsがVsig+Vth−ΔVとなる。このようにして、書き込みと同時にμ補正が行われる。ここで、駆動トランジスタTr1の移動度μが大きい程、ΔVも大きくなるので、電位差Vgsを発光前にΔVだけ小さくすることにより、画素ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0044】
---発光期間---
次に、書込線駆動回路24が制御信号22Aに応じて書込線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T7)。すると、駆動トランジスタTr1のゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTr1のドレイン−ソース間に電流が流れ、ソース電圧Vsが上昇する。その結果、有機EL素子11に閾値電圧以上の電圧が印加され、有機EL素子11が所望の輝度で発光する。
【0045】
---強制黒表示期間---
その後、タイミング生成回路22は、nフレーム目の表示映像に対応する発光電流が1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に流れるのに同期して、計測回路26で得られた計測値(計測信号26A)またはそれに対応する値を、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順次積算する。その後、時間の経過とともに、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、タイミング生成回路22は、制御信号22Cとして、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に消光する信号を、電源線駆動回路25に出力する。すると、電源線駆動回路25は、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に、電源線DSLにVccLを印加する(T8)。その結果、発光が強制的に停止されるので、nフレーム目の表示映像の発光期間(デューティー比)が短くなる。
【0046】
[効果]
次に、本実施の形態の表示装置1の効果について説明する。
【0047】
有機EL素子は、電流駆動型の発光素子であり、有機EL素子に流れる電流量を制御することにより階調を調整することの可能な素子である。それゆえ、有機EL素子では、発光輝度が変化すると、電流つまり消費電力も変動する。例えば、図9に示したように、表示領域全体の輝度が徐々に大きくなると、それに従って、消費電力も大きくなる。また、表示領域に占める白表示領域の割合が変化した場合にも、消費電力が変動する。例えば、図10に示したように、表示領域内の白表示の領域が徐々に大きくなると、それに従って、消費電力も大きくなる。
【0048】
表示領域全体が白表示となったときの消費電力P1が大き過ぎる場合に、消費電力がある一定以上の消費電力P2(<P1)を超えることがないように電流制限をかけることが考えられる。従来では、例えば、映像信号が入力されたら、その映像信号を解析して、ある一定の消費電力内に抑えるように表示信号を補正して表示パネルに入力することが行われていた。しかし、そのようにした場合には、1フレームの映像信号が全て入力されてから、映像信号の解析を行うことが必要となるので、少なくとも1フレーム分の時間だけ遅延して表示信号を表示パネルに入力することになる。そのため、リアルタイムに映像を表示する必要のある用途には、上述の電流制限方法を用いることができないという問題があった。
【0049】
一方、本実施の形態では、表示信号の補正はなされず、発光期間(デューティー比)の変更だけがなされる。具体的には、nフレーム目の表示映像に対応する発光電流が1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に流れるのに同期して、計測回路26で得られた計測値(計測信号26A)またはそれに対応する値が、1ライン目から1ラインずつ順次積算される。その後、時間の経過とともに、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に、発光が強制的に停止され、nフレーム目の表示映像の発光期間(デューティー比)が短くなる。これにより、1フレーム分の映像が全て表示される前の段階から、表示映像に応じて消費電力の増大を抑制することができるので、電流制限をかけつつ、リアルタイムに映像を表示することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、例えば、図11、図12に示したように、消費電力が所定の閾値P2を超える映像を表示するに際して、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値に到達するまでの期間に対応して、その映像の発光期間(デューティー比)が短縮される。これにより、消費電力の増大を抑えることができる。
【0051】
[第1の実施の形態の変形例]
上記実施の形態では、積算値を利用して発光期間(デューティー比)の変更がなされていたが、積算しない別の方法を利用して発光期間(デューティー比)の変更がなされていてもよい。例えば、計測回路26が、各サブピクセル13の有機EL素子11を流れる電流の総和またはそれに対応する値を計測するようになっている場合には、その計測値を利用して発光期間(デューティー比)の変更を行うことが可能である。
【0052】
(発光制御の手順)
図13は、本変形例における発光制御の手順の概略を表したものである。なお、以下では、プロセッサ22−3が発光制御を実行している場合について説明するが、アプリケーション回路が以下の発光制御を実行してもかまわない。
【0053】
プロセッサ22−3は、まず、計測回路26で得られた計測値(計測信号26A)またはそれに対応する値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS201)。その結果、計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えていなかった場合には、プロセッサ22−3は、引き続き、計測回路26から計測値(計測信号26A)を取得したり、取得した計測値に対応する値を取得するとともに、取得した値を用いて上記の判定を実行する。その逆に、計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えていた場合には、プロセッサ22−3は、表示画像の発光期間を変更(短縮)する(ステップS202)。プロセッサ22−3は、このようにして、上述の一連の手順を繰り返し行う。
【0054】
<2.第2の実施の形態>
[構成]
図14は、本技術による第2の実施の形態に係る表示装置2の概略構成を表したものである。この表示装置2は、上記第1の実施の形態の表示装置1において、計測回路26が省略され、映像信号処理回路21からタイミング生成回路22に映像信号21Bが出力されている点で、上記第1の実施の形態の表示装置1の構成と主に相違する。従って、以下では、上記第1の実施の形態との相違点について主に説明し、上記第1の実施の形態との共通点についての説明を適宜省略するものとする。
【0055】
図15は、表示装置2の表示領域10A内の回路構成の一例を表したものである。この表示装置2では、計測回路26が省略された結果、カソード線CTLも省略されており、その代わりに、例えば、表示領域10A全体に渡って形成されたシート状のカソード電極(図示せず)が設けられている。カソード電極は、例えば、グラウンド(GND)電位となっている。
【0056】
本実施の形態において、映像信号処理回路21は、外部から入力された同期信号20Bに応じて(同期して)、例えば、映像信号20Aに対して上述の補正をした後の映像信号21Bをタイミング生成回路22に出力するようになっている。
【0057】
図16は、本実施の形態におけるタイミング生成回路22の構成の一例を表したものである。本実施の形態において、タイミング生成回路22は、上述の制御信号22A,22B,22Cの生成の他に、表示画像に応じて有機EL素子11の発光期間を変更することにより表示画像の発光期間を変更する機能も備えている。タイミング生成回路22は、例えば、図16に示したように、発光制御プログラム22−4と、メモリ22−5と、発光制御プログラム22−4を実行するプロセッサ22−6とを有している。発光制御プログラム22−6は、表示画像の発光期間の制御手順を含んでいる。メモリ22−5は、発光制御プログラム22−4を格納しており、さらに、例えば、必要に応じて、プロセッサ22−6における発光制御プログラム22−4の実行に際して使用される数値などを記憶することができるようになっている。なお、タイミング生成回路22において、発光制御プログラム22−4の全体または一部の機能が、ハードウェア(アプリケーション回路)として実現されていてもよい。
【0058】
(発光制御の手順)
次に、発光制御プログラム22−4における発光制御の手順の概略について説明する。図17は、発光制御プログラム22−4における発光制御の手順の概略を表したものである。なお、以下では、プロセッサ22−6が発光制御を実行している場合について説明するが、アプリケーション回路が以下の発光制御を実行してもかまわない。
【0059】
プロセッサ22−6は、まず、映像信号処理回路21から入力された映像信号21Bまたはそれに対応する値を順次積算する(ステップS301)。次に、プロセッサ22−6は、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS302)。なお、上記の「その積算した値またはそれに対応する値」は、本技術の「表示画像に対応する特性値」の一具体例に相当する。その結果、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えていなかった場合には、プロセッサ22−6は、引き続き、映像信号処理回路21から入力された映像信号21Bまたはそれに対応する値を順次積算する(ステップS301)。その逆に、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えていた場合には、プロセッサ22−6は、表示画像の発光期間を変更(短縮)する(ステップS303)。プロセッサ22−6は、1フレーム分の積算が終了するか、または、表示画像の発光期間の短縮を実行した段階で、積算値を初期値(例えばゼロ)にリセットした上で、次フレーム分の積算を実行する。プロセッサ22−6は、このようにして、上述の一連の手順を1フレームごとに行う。
【0060】
次に、図6、図7を利用して、発光制御プログラム22−4における発光制御の手順の一例について説明する。なお、本実施の形態において、図7(A)の積算値とは、映像信号処理回路21から入力された映像信号21Bまたはそれに対応する値の積算値を指している。
【0061】
プロセッサ22−6は、発光期間Lonが開始すると、映像信号処理回路21から入力された映像信号21Bまたはそれに対応する値を、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順次積算する。積算値は、図7(A)に示したように、時間の経過とともに徐々に上昇し、ある時(図7(B)のT12)を境に、所定の閾値A2を超える。このとき、電流制限が働いていない場合には、積算値は、図7(A)の一点鎖線に示したように、nフレーム目の表示映像のうち1ライン目の画素行に対応する映像の表示が終了する時(図7(B)のT13)まで上昇し続け、閾値A2よりも大きな値A1に到達する。
【0062】
プロセッサ22−6は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、図7(A)の実線に示したように、積算値がそれ以上増えないように、電流制限を実施する。具体的には、プロセッサ22−6は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、nフレーム目の表示画像の発光期間を短縮する。より具体的には、プロセッサ22−6は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、図7(B)に示したように、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に強制的に消光する「強制黒表示」を開始して、nフレーム目の表示画像の発光期間を短縮する。つまり、プロセッサ22−6は、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2を超えると、表示信号21Aとは無関係な輝度(具体的には黒輝度)に強制的に変更し、デューティー比を当初の値よりも小さくする。これにより、積算値またはそれに対応する値が所定の閾値A2に到達するまでの期間に対応して、nフレーム目の表示画像の発光期間(デューティー比)が短縮される。また、発光期間(デューティー比)の短縮により、例えば、図7(C)に示したように、nフレーム目の表示映像の一部である帯状の領域(白表示の領域)が表示領域10Aを上から下に変移するようになる。その結果、nフレーム目の表示映像の発光輝度は、デューティー比が小さくなった分だけ、観察者にとっては低く感じられる。
【0063】
[効果]
次に、本実施の形態の表示装置2の効果について説明する。
【0064】
本実施の形態では、上記第1の実施の形態と同様、表示信号の補正はなされず、発光期間(デューティー比)の変更だけがなされる。具体的には、映像信号処理回路21から入力された映像信号21Bまたはそれに対応する値が、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順次積算される。その後、時間の経過とともに、積算値が所定の閾値を超えると、1ライン目から1ラインずつまたは複数ラインずつ順番に、発光が強制的に停止され、nフレーム目の表示映像の発光期間(デューティー比)が短くなる。これにより、1フレーム分の映像が全て表示される前の段階から、表示映像に応じて消費電力の増大を抑制することができるので、電流制限をかけつつ、リアルタイムに映像を表示することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、例えば、図11、図12に示したように、消費電力が所定の閾値P2を超える映像を表示するに際して、積算値が所定の閾値に到達するまでの期間に対応して、その映像の発光期間(デューティー比)が短縮される。これにより、消費電力の増大を抑えることができる。
【0066】
[第2の実施の形態の変形例]
上記第2の実施の形態では、積算値を利用して発光期間(デューティー比)の変更がなされていたが、積算しない別の方法を利用して発光期間(デューティー比)の変更がなされていてもよい。例えば、映像信号処理回路21が、表示領域10Aに実際に表示する映像全体の表示信号21Aに対応する映像信号21Bの総和を映像信号21Bとして出力するようになっている場合には、その映像信号21Bを利用して発光期間(デューティー比)の変更を行うことが可能である。
【0067】
(発光制御の手順)
図18は、本変形例における発光制御の手順の概略を表したものである。なお、以下では、プロセッサ22−6が発光制御を実行している場合について説明するが、アプリケーション回路が以下の発光制御を実行してもかまわない。
【0068】
プロセッサ22−6は、まず、映像信号処理回路21から入力された映像信号21Bまたはそれに対応する値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS401)。その結果、映像信号21Bまたはそれに対応する値が所定の閾値を超えていなかった場合には、プロセッサ22−6は、引き続き、映像信号処理回路21から映像信号21Bを取得したり、取得した映像信号21Bに対応する値を取得するとともに、取得した値を用いて上記の判定を実行する。その逆に、映像信号21Bまたはそれに対応する値が所定の閾値を超えていた場合には、プロセッサ22−6は、表示画像の発光期間を変更(短縮)する(ステップS402)。プロセッサ22−6は、このようにして、上述の一連の手順を繰り返し行う。
【0069】
<3.適用例>
以下、上記各実施の形態およびそれらの変形例で説明した表示装置1,2の適用例について説明する。上述の表示装置1,2は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、映像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0070】
(モジュール)
上述の表示装置1,2は、例えば、図19に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板31の一辺に、封止用基板32から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、駆動回路20の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0071】
(適用例1)
図20は、上述の表示装置1,2が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上述の表示装置1,2により構成されている。
【0072】
(適用例2)
図21は、上述の表示装置1,2が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上述の表示装置1,2により構成されている。
【0073】
(適用例3)
図22は、上述の表示装置1,2が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および映像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上述の表示装置1,2により構成されている。
【0074】
(適用例4)
図23は、上述の表示装置1,2が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上述の表示装置1,2により構成されている。
【0075】
(適用例5)
図24は、上述の表示装置1,2が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上述の表示装置1,2により構成されている。
【0076】
以上、実施の形態、変形例および適用例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0077】
例えば、上記実施の形態等では、例えば、図8に示したように、表示画像の発光期間の変更(短縮)を実行する手段として、電源線DSLの電圧をVccHからVccLに変更することが記載されていた。しかし、表示画像の発光期間の変更(短縮)を実行する手段として、それ以外の方法を採ることはもちろん可能である。例えば、駆動トランジスタTr1のドレインと電源線DSLとの間に、スイッチング素子(図示せず)を設け、このスイッチング素子をオフすることにより、表示画像の発光期間を変更(短縮)することができる。
【0078】
また、上記実施の形態等では、上述の表示装置1,2がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路12の構成は上記実施の形態等で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを画素回路12に追加してもよい。その場合、画素回路12の変更に応じて、上述した信号線駆動回路23、書込線駆動回路24、電源線駆動回路25のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0079】
また、上記実施の形態等では、映像信号処理回路21、信号線駆動回路23、書込線駆動回路24、電源線駆動回路25の駆動をタイミング生成回路22が制御していたが、他の回路がこれらの駆動を制御するようにしてもよい。また、映像信号処理回路21、信号線駆動回路23、書込線駆動回路24、電源線駆動回路25の制御は、ハードウェア(回路)で行われていてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われていてもよい。
【0080】
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えると共に、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより表示映像の発光期間を変更する発光制御部を備えた
表示装置。
(2)
前記発光制御部は、表示映像に対応する特性値が所定の閾値を超えると、表示映像の発光期間を短縮する
(1)に記載の表示装置。
(3)
前記光学素子を流れる電流またはそれに対応する特性を計測する計測部をさらに備え、
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、表示映像の発光期間を短縮する
(2)に記載の表示装置。
(4)
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
(3)に記載の表示装置。
(5)
前記計測部は、各画素の光学素子を流れる電流の値またはそれに対応する値を1もしくは複数の画素行ごとに計測し、
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値を順次積算し、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
(4)に記載の表示装置。
(6)
前記発光制御部は、表示映像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、表示映像の発光期間を短縮する
(2)に記載の表示装置。
(7)
前記発光制御部は、表示映像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
(6)に記載の表示装置。
(8)
前記発光制御部は、表示映像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値を1もしくは複数の画素行ごとに積算し、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
(7)に記載の表示装置。
(9)
前記計測部は、各画素の光学素子を流れる電流の総和またはそれに対応する値を計測し、
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示画像の発光期間を短縮する
(4)に記載の表示装置。
(10)
前記発光制御部は、各画素の映像信号の値の総和またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示画像の発光期間を短縮する
(7)に記載の表示装置。
(11)
表示装置を備え、
前記表示装置は、電流駆動型の光学素子を画素ごとに有すると共に、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより前記表示映像の発光期間を変更する発光制御部を有する
電子機器。
(12)
電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより前記表示映像の発光期間を変更することを前記表示装置に実行させる
発光制御プログラム。
(13)
表示画像に対応する特性値が所定の閾値を超えると、表示画像の発光期間を短縮する
(12)に記載の発光制御プログラム。
(14)
前記表示装置は、前記光学素子を流れる電流またはそれに対応する特性を計測する計測部をさらに備え、
当該発光制御プログラムは、前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、表示画像の発光期間を短縮する
(13)に記載の発光制御プログラム。
(15)
前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示画像の発光期間を短縮する
(14)に記載の発光制御プログラム。
(16)
前記計測部は、各画素の光学素子を流れる電流の値またはそれに対応する値を1もしくは複数の画素行ごとに計測し、
当該発光制御プログラムは、前記計測部での計測値またはそれに対応する値を順次積算し、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示画像の発光期間を短縮する
(15)に記載の発光制御プログラム。
(17)
表示画像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、表示画像の発光期間を短縮する
(13)に記載の発光制御プログラム。
(18)
表示画像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示画像の発光期間を短縮する
(17)に記載の発光制御プログラム。
(19)
表示画像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値を1もしくは複数の画素行ごとに積算し、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示画像の発光期間を短縮する
(18)に記載の発光制御プログラム。
(20)
電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより前記表示映像の発光期間を変更する
発光制御方法。
【符号の説明】
【0081】
1,2…表示装置、10…表示パネル、10A…表示領域、11,11R,11G,11B…有機EL素子、12…画素回路、13,13R,13G,13B…サブピクセル、14…画素、20…駆動回路、20A,21A,21B…映像信号、20B…同期信号、21…映像信号処理回路、22…タイミング生成回路、22A,22B,23C…制御信号、22−1,22−4…発光制御プログラム、22−2,22−5…メモリ、22−3,22−6…プロセッサ、23…信号線駆動回路、24…書込線駆動回路、25…電源線駆動回路、26…計測回路、31…基板、32…封止用基板、210…領域、220…FPC、300…映像表示画面部、310…フロントパネル、320…フィルターガラス、410…発光部、420,530,640…表示部、430…メニュースイッチ、440…シャッターボタン、510…本体、520…キーボード、610…本体部、620…レンズ、630…スタート/ストップスイッチ、710…上側筐体、720…下側筐体、730…連結部、740…ディスプレイ、750…サブディスプレイ、760…ピクチャーライト、770…カメラ、Cs…保持容量、CTL…カソード線、DTL…信号線、GND…グラウンド、DSL…電源線、Lon…発光期間、Loff…消光期間、Lco…強制黒表示期間、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書き込みトランジスタ、Vg…ゲート電圧、Vs…ソース電圧、Vgs…ゲート−ソース間電圧、WSL…書込線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えると共に、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより表示映像の発光期間を変更する発光制御部を備えた
表示装置。
【請求項2】
前記発光制御部は、表示映像に対応する特性値が所定の閾値を超えると、表示映像の発光期間を短縮する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光学素子を流れる電流またはそれに対応する特性を計測する計測部をさらに備え、
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、表示映像の発光期間を短縮する
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記計測部は、各画素の光学素子を流れる電流の値またはそれに対応する値を1もしくは複数の画素行ごとに計測し、
前記発光制御部は、前記計測部での計測値またはそれに対応する値を順次積算し、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光制御部は、表示映像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、表示映像の発光期間を短縮する
請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記発光制御部は、表示映像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光制御部は、表示映像に対応する表示信号の値またはそれに対応する値を1もしくは複数の画素行ごとに積算し、その積算した値またはそれに対応する値が所定の閾値を超えると、前記光学素子の発光を1または複数の画素行ごとに順次、終了させることにより、表示映像の発光期間を短縮する
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
表示装置を備え、
前記表示装置は、電流駆動型の光学素子を画素ごとに有すると共に、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより前記表示映像の発光期間を変更する発光制御部を有する
電子機器。
【請求項10】
電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより前記表示映像の発光期間を変更することを前記表示装置に実行させる
発光制御プログラム。
【請求項11】
電流駆動型の光学素子を画素ごとに備えた表示装置において、表示映像に応じて前記光学素子の発光期間を変更することにより前記表示映像の発光期間を変更する
発光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−29613(P2013−29613A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164683(P2011−164683)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】