説明

表示装置およびその製造方法

【課題】寸法が小さいマイクロディスプレイの場合にも、有機EL素子が設けられた第1基板と封止用の第2基板とを良好に貼り合わせることが可能な表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルと、第2基板に金属膜を有し、前記第1パネルの前記複数の有機EL素子の側に対向配置された第2パネルと、前記表示領域を囲むと共に前記第1パネルおよび前記第2パネルの間に設けられた封止枠と、前記封止枠の内部に充填された、光硬化性樹脂よりなる接着層とを備えた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機EL(Electroluminescence)素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置の封止方法としては、例えば、有機EL素子が設けられた第1基板と封止用の第2基板とを樹脂を間にして貼り合わせる方法が用いられている。具体的には、第1基板に樹脂材料を配置し、この樹脂材料の上に第2基板を載せ、第2基板の裏面中央部から左右に向かって押圧力を加えて樹脂材料を押し潰し、気泡を追い出しながら貼り合わせていく(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−296139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、マイクロディスプレイと呼ばれる、対角寸法1インチ以下の極めて小型の表示装置が開発されている。しかしながら、寸法が小さいマイクロディスプレイに特許文献1の方法をそのまま適用すると、押圧された樹脂材料が広がり過ぎてしまうおそれがあり、更に改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、寸法が小さいマイクロディスプレイの場合にも、有機EL素子が設けられた第1基板と封止用の第2基板とを良好に貼り合わせることが可能な表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による表示装置は、以下の(A)〜(D)の構成要素を備えたものである。
(A)第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネル
(B)第2基板に金属膜を有し、第1パネルの複数の有機EL素子の側に対向配置された第2パネル
(C)表示領域を囲むと共に第1パネルおよび第2パネルの間に設けられた封止枠
(D)封止枠の内部に充填された、光硬化性樹脂よりなる接着層
【0007】
本開示の表示装置では、第1パネルおよび第2パネルの間に表示領域を囲む封止枠が設けられ、この封止枠の内部に光硬化性樹脂よりなる接着層が充填されている。よって、従来のように貼り合わせのために押圧力をかける必要がなくなり、押圧された光硬化性樹脂が広がり過ぎてしまうおそれがなくなる。従って、接着層が封止枠からはみ出す等の形状不良が抑えられ、接着層が封止枠の内部に良好に収まっている。また、第2パネルに金属膜が設けられているので、製造工程において光硬化性樹脂に照射された紫外光は、第1パネル上の有機EL素子の電極と第2パネル上の金属膜との間で反射しながら光硬化性樹脂の奥まで進入することが可能となる。よって、接着層を構成する光硬化性樹脂が十分に硬化されており、未硬化の光硬化性樹脂が漏れ出す等の不具合が抑えられる。
【0008】
本開示による表示装置の製造方法は、以下の(A)〜(E)の工程を含むものである。
(A)第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルを形成する工程
(B)第2基板に金属膜を有する第2パネルを形成する工程
(C)第1パネルに表示領域を囲む封止枠を設け、第1パネルおよび第2パネルを、封止枠を間にして貼り合わせる工程
(D)封止枠の内部に光硬化性樹脂を注入する工程
(E)封止枠の側面の側から紫外線を照射し、光硬化性樹脂を硬化させて接着層を形成する工程
【発明の効果】
【0009】
本開示の表示装置によれば、第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルと、第2基板に金属膜を有する第2パネルとの間に、表示領域を囲む封止枠を設け、この封止枠の内部に光硬化性樹脂よりなる接着層を充填するようにしている。よって、接着層の形状不良や硬化不良を抑え、寸法が小さいマイクロディスプレイの場合にも、有機EL素子が設けられた第1基板と封止用の第2基板とを良好に貼り合わせることが可能となる。
【0010】
本開示の表示装置の製造方法によれば、第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルを形成し、第2基板に金属膜を有する第2パネルを形成し、第1基板に表示領域を囲む封止枠を設け、第1パネルおよび第2パネルを、封止枠を間にして貼り合わせ、封止枠の内部に光硬化性樹脂を注入し、封止枠の側面の側から紫外線を照射し、光硬化性樹脂を硬化させて接着層を形成するようにしている。よって、上記本開示の表示装置を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す平面図である。
【図2】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】図3に示した有機層の構成を表す断面図である。
【図5】図1に示した表示装置の回路構成を表す図である。
【図6】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図7】図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す上面図および側面図である。
【図8】図7に続く工程を表す上面図である。
【図9】図8に示した表示領域における紫外線の照射経路を表す断面図である。
【図10】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図11】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す正面図および背面図である。
【図12】適用例2の外観を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置の平面構成を表したものである。この表示装置1は、デジタル一眼レフカメラのビューファインダやヘッドマウント形ディスプレイなどに用いられる、対角寸法1インチ以下のいわゆるマイクロディスプレイと呼ばれる小型・高精細有機EL表示装置である。表示装置1は、第1パネル10と、第2パネル20とを、封止枠31および接着層32により貼り合わせた構成を有している。
【0014】
第1パネル10は、シリコン(Si)基板等よりなる第1基板11の略中央部に表示領域110を有している。表示領域110には、後述する有機EL素子10R,10G,10B(図1には図示せず、図2および図3参照。)が設けられている。第2パネル20は、ガラス等よりなる第2基板21に、後述するカラーフィルタ22および金属膜23(図1には図示せず、図3参照。)を有している。封止枠31は、第1パネル10と第2パネル20の間に、表示領域110を囲んで設けられ、例えば光硬化性樹脂により構成されている。封止枠31には、一ケ所に開口31Aが設けられている。この開口31Aは、例えば光硬化性樹脂よりなる封口部32により密閉されている。封止枠31および封口部32の内部には、光硬化性樹脂よりなる接着層33が充填されている。これにより、この表示装置1は、寸法の小さいマイクロディスプレイの場合にも、有機EL素子10R,10G,10Bが設けられた第1基板11と封止用の第2基板21とを良好に貼り合わせることが可能となっている。
【0015】
第1パネル10の一辺には、第2パネル20から露出した領域50が設けられている。この露出した領域50は、後述する信号線駆動回路120および走査線駆動回路130(図5参照)の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を設けたものである。
【0016】
図2は、図1に示した表示領域110の一部の平面構成を表したものである。第1基板11上には、複数の有機EL素子10R,10G,10Bが行列状に配置されている。各有機EL素子10R,10G,10Bは一方向に長い矩形形状を有しており、短辺に平行な行方向には、異なる色の有機EL素子10R,10G,10Bが順に配列されている。長辺に平行な列方向には、同一色の有機EL素子10R(または10G,10B)が配列されている。
【0017】
隣り合う三つの有機EL素子10R,10G,10Bは一つの画素10を構成しており、各有機EL素子10R,10G,10Bは一つの副画素を構成している。複数の有機EL素子10R,10G,10Bの行方向におけるピッチ(中心間距離)pは、例えば30μm以下である。具体的には、一つの画素10は例えば一辺が約10μmの正方形であり、複数の有機EL素子10R,10G,10Bのピッチpは例えば約3.3μmである。
【0018】
図3は、図2のIII−III線における断面構成を表したものである。第1パネル10は、例えば、第1基板11の側から、駆動トランジスタTr1,第1絶縁膜12および上述した複数の有機EL素子10R,10G,10Bがこの順に設けられている。有機EL素子10R,10G,10Bは、例えば、第1基板11の側から、第1電極13,第2絶縁膜14,発光層を含む有機層15,および第2電極16をこの順に有している。有機EL素子10R,10G,10Bは、必要に応じて、保護膜17により被覆されている。
【0019】
駆動トランジスタTr1は、例えば、第1基板11の側から、ゲート電極11A,ゲート絶縁膜11B,半導体膜11C,ソース・ドレイン電極11Dをこの順に有している。なお、駆動トランジスタTr1は、逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ型(トップゲート型)でもよく特に限定されない。またはシリコン(Si)を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)でもよい。
【0020】
第1絶縁膜12は、駆動トランジスタTr1等が設けられた第1基板11の表面を平坦化するためのものであり、例えば、厚みが100nmないし1000nmであり、酸化窒化ケイ素(SiON)または酸化ケイ素(SiO2またはSiO)により構成されている。第1絶縁膜12には、有機EL素子10R,10G,10Bと駆動トランジスタTr1との接続のためのコンタクトホール12Aが設けられている。コンタクトホール12Aには導電性金属よりなるプラグ12Bが設けられている。
【0021】
第1電極13は、複数の有機EL素子10R,10G,10Bの各々ごとに設けられている。第1電極13は、例えば、厚みが100nm以下であり、高反射率材料であるアルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金よりなる反射性の電極であり、発光層で発生した光を第2電極15側から取り出すようになっている(トップエミッション)。第1電極13の厚みは、耐熱性を考慮すると50nmないし100nm程度であることが好ましい。第1電極13の構成材料としては、アルミニウム(Al)またはその合金のほか、金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),クロム(Cr),銅(Cu),タングステン(W),モリブデン(Mo),チタン(Ti),タンタル(Ta)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金よりなる反射電極が挙げられる。
【0022】
また、第1電極13は、上述した反射電極の下地として、厚みが20nm程度であり、チタン(Ti),タングステン(W),銅(Cu),タンタル(Ta),モリブデン(Mo)などよりなる密着層(図示せず)を有していてもよい。この密着層は、第1電極13の厚みを薄くした場合にも反射率を高く維持するための反射補助層としての機能も有している。このような密着層を設けた場合には、第1電極13の厚みは15nm以上であれば足りる。
【0023】
更に、第1電極13は、密着層または反射補助層としてのチタン層と、アルミニウムまたはその合金などの上述した反射電極と、チタン層またはタンタル層との3層の積層構造を有していてもよい。あるいは、第1電極13は、上述した反射電極と、ITO(酸化インジウムスズ;Indium Tin Oxide),IZO(登録商標)(酸化インジウム亜鉛),またはSnO2などの透明電極との複合膜により構成されていてもよい。
【0024】
第2絶縁膜14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものである。第2絶縁膜14は、第1電極13の発光領域に対応して開口部14Aを有している。第2絶縁膜14は、例えば、厚みが100nm以下であり、SiO,SiN,SiONにより構成されている。
【0025】
有機層15は、第1電極13および第2絶縁膜14の上に、複数の有機EL素子10R,10G,10Bに共通に設けられている。有機層15は、例えば図4に示したように、第1電極13の側から順に、正孔注入層15A,正孔輸送層15B,発光層15Cおよび電子輸送層15Dを積層した構成を有している。
【0026】
正孔注入層15Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔注入層15Aは、例えば、厚みが2nmないし10nmであり、化1に示したヘキサトリルアザトリフェニレンにより構成されている。
【0027】
【化1】

【0028】
正孔輸送層15Bは、発光層15Cへの正孔注入効率を高めるためのものである。正孔輸送層15Bは、例えば、厚みが30nmであり、化2に示した材料により構成されている。
【0029】
【化2】

【0030】
発光層15Cは、例えば、第1電極13の側から順に、厚み10nmの赤色発光層、厚み10nmの発光分離層、厚み10nmの青色発光層、および厚み10nmの緑色発光層(いずれも図示せず)を順に積層した白色発光用のものである。赤色発光層は、電界をかけることにより、第1電極13から正孔注入層15Aおよび正孔輸送層15Bを介して注入された正孔の一部と、第2電極16から電子輸送層15Dを介して注入された電子の一部とが再結合して、赤色の光を発生するものである。発光分離層は、赤色発光層への電子供給量を減らすためのものである。青色発光層は、電界をかけることにより、第1電極13から正孔注入層15A,正孔輸送層15Bおよび発光分離層を介して注入された正孔の一部と、第2電極16から電子輸送層15Dを介して注入された電子の一部とが再結合して、青色の光を発生するものである。緑色発光層は、電界をかけることにより、第1電極13から正孔注入層15A,正孔輸送層15Bおよび発光分離層を介して注入された正孔の一部と、第2電極16から電子輸送層15Dを介して注入された電子の一部とが再結合して、緑色の光を発生するものである。赤色発光層,緑色発光層および青色発光層は、第2絶縁膜14の開口部14Aに対応した領域で発光するようになっている。
【0031】
赤色発光層は、例えば、赤色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。赤色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。具体的には、赤色発光層は、例えば、厚みが5nm程度であり、4,4−ビス(2,2−ジフェニルビニン)ビフェニル(DPVBi)に2,6−ビス[(4’−メトキシジフェニルアミノ)スチリル]−1,5−ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。
【0032】
発光分離層は、例えば、化3に示した材料により構成されている。
【0033】
【化3】

【0034】
緑色発光層は、例えば、緑色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。緑色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。具体的には、緑色発光層は、例えば、厚みが10nm程度であり、DPVBiにクマリン6を5重量%混合したものにより構成されている。
【0035】
青色発光層は、例えば、青色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種とを含んでいる。青色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。具体的には、青色発光層は、例えば、厚みが30nm程度であり、DPVBiに4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。
【0036】
電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子注入効率を高めるためのものである。電子輸送層14Dは、例えば、厚みが20nm程度であり、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。
【0037】
第2電極16は、有機層15の上に、複数の有機EL素子10R,10G,10Bに共通に設けられている。第2電極16は、例えば、第1電極13の側から順に、厚みが約0.3nmでありフッ化リチウム(LiF)よりなる第1層と、厚みが3nmでありカルシウム(Ca)よりなる第2層と、厚みが5nmでありMg−Ag合金よりなる第3層とを積層した構成を有している。第2電極16は、表示領域110の外側の領域で、図示しない補助配線に接続されている。その理由は、有機層15が複数の有機EL素子10R,10G,10Bに共通に設けられているので、各有機EL素子10R,10G,10Bごとに第2電極16と補助配線との接続をとることができないからである。
【0038】
保護膜17は、例えば、厚みが0.5μmないし10μmであり、窒化ケイ素(SiN)により構成されている。
【0039】
第2パネル20は、例えば、上述したように、第2基板21に、カラーフィルタ22および金属膜23を有している。
【0040】
第2基板21は、有機EL素子10R,10G,10Bの第2電極16の側に位置しており、接着層32と共に有機EL素子10R,10G,10Bを封止するものである。第2基板21は、例えば、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。
【0041】
カラーフィルタ22は、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した白色光を,赤,緑または青の色光として取り出すためのものであり、赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bを有している。赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bは、有機EL素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0042】
金属膜23は、有機EL素子10R,10G,10Bの境界線に対向する位置に設けられたブラックマトリクス(遮光膜)であり、有機EL素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善する機能を有する。金属膜23は、例えば、チタン(Ti),クロム(Cr),チタンとクロムとの混合物により構成されていることが好ましい。マイクロディスプレイでは、上述したように複数の有機EL素子10R,10G,10Bの行方向におけるピッチpが例えば30μm以下と狭いので、黒色樹脂よりなるブラックマトリクスを高精度にパターニングすることが難しいからである。また、チタンやクロムは光吸収率が高く、ガラスよりなる第2基板21との密着性に優れているという利点も有している。
【0043】
図5は、このような表示装置1の回路構成を表したものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。
【0044】
図6は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、第1電極13の下層に設けられたアクティブ型の駆動回路である。画素駆動回路140は、例えば、上述した駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、キャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10R(または10G,10B)とを有している。キャパシタCsの一方の電極は駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2の間に接続され、他方の電極は駆動トランジスタTr1および有機EL素子10R(または10G,10B)との間に接続されている。
【0045】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0046】
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0047】
図7ないし図9は、この表示装置1の製造方法の主要部を工程順に表したものである。まず、図5および図6に示したように、上述した材料よりなる第1基板11の表示領域110の周囲には、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130を形成する。これと同時に、表示領域110には、図3に示した駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成する。
【0048】
次いで、例えばプラズマCVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により、例えばSiON膜,SiO2膜またはSiO膜を、例えば100nmないし1000nmの厚みで形成する。続いて、このSiON膜,SiO2膜またはSiO膜を、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチングにより所定の形状に成形することにより、図3に示したように、コンタクトホール12Aを有する第1絶縁膜12を形成する。そののち、同じく図3に示したように、第1絶縁膜12のコンタクトホール12Aに導電性金属よりなるプラグ12Bを埋め込む。
【0049】
続いて、第1絶縁膜12の上に、例えばスパッタリング法により、例えばチタン膜およびアルミニウム合金膜(図示せず)を形成する。そののち、このチタン膜およびアルミニウム合金膜を、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチングにより所定の形状に成形し、同じく図3に示したように、複数の有機EL素子10R,10G,10Bの各々ごとに第1電極13を形成する。
【0050】
第1電極13を形成したのち、第1電極13上および第1絶縁膜12上に、例えばPECVD法により、SiON膜を例えば10nmないし200nmの厚みで成膜する。このSiON膜を、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチングにより所定の形状に成形し、同じく図3に示したように、開口部14Aを有する第2絶縁膜14を形成する。
【0051】
第2絶縁膜14を形成したのち、図4に示したように、第1電極13および第2絶縁膜14の上に、例えば蒸着法により、有機層15の正孔注入層15A,正孔輸送層15B,発光層15C,電子輸送層15Dを形成し、引き続き、例えば真空蒸着法により、第2電極16を形成する。これにより、図2ないし図4に示したような有機EL素子10R,10G,10Bが形成される。
【0052】
続いて、同じく図3に示したように、例えばCVD法またはスパッタ法により、有機EL素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。以上により、第1基板11の表示領域110に有機EL素子10R,10G,10Bを有する第1パネル10が形成される。
【0053】
また、同じく図3に示したように、例えば、上述した材料よりなる第2基板21に、上述した材料よりなる金属膜23を形成する。続いて、第2基板21に赤色フィルタ22Rの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタ22Rを形成する。続いて、赤色フィルタ22Rと同様にして、青色フィルタ22Bおよび緑色フィルタ22Gを順次形成する。これにより、第2基板22にカラーフィルタ22および金属膜23を有する第2パネル20が形成される。
【0054】
そののち、図7(A)に示したように、第1パネル10に、例えば光硬化性樹脂を、表示領域110を囲む矩形枠状に配置する。光硬化性樹脂には、開口31Aを一ケ所設ける。続いて、光硬化性樹脂の上に第2パネル20を載せ、第2パネル20を第1パネル10に対して位置合わせし、紫外線照射により光硬化性樹脂を硬化させて封止枠31を形成する。照射量は例えば2000mJ/cm2とすることが可能である。これにより、第1パネル10および第2パネル20を、封止枠31を間にして貼り合わせる。
【0055】
第1パネル10および第2パネル20を封止枠31を間にして貼り合わせたのち、第1パネル10および第2パネル20を所定の寸法に切断し、同じく図7(A)に示したように、接着層33が設けられていない中空の表示装置1Aを形成する。
【0056】
続いて、この中空の表示装置1Aを冶具(図示せず)に装着し、図7(B)に示したように、封止枠31の開口31Aを、接着層33を形成するための光硬化性樹脂33Aの槽61に浸す。光硬化性樹脂33Aの粘度を下げるために温度を35℃から45℃程度に保たせた状態で、毛細管現象により封止枠31の内部に光硬化性樹脂33Aを注入・充填する。
【0057】
このとき、光硬化性樹脂33Aは封止枠31の内部に充填されるので、従来のように貼り合わせのために押圧力をかける必要がなくなり、押圧された光硬化性樹脂33Aが広がり過ぎてしまうおそれがなくなる。従って、光硬化性樹脂33Aが封止枠31からはみ出す等の形状不良が抑えられ、光硬化性樹脂33Aが封止枠31の内部に良好に収まる。
【0058】
また、熱硬化性樹脂を使用した場合には、注入しやすいように加熱して粘度を下げる必要があったが、時間経過と共に再び粘度が上昇してしまっていた。この加熱後の粘度上昇は不可逆的に進行してしまうので、樹脂注入不足が生じたり、注入後の残渣が硬化して廃棄せざるをえなくなったりしていた。
【0059】
本実施の形態では熱硬化性樹脂ではなく光硬化性樹脂33Aを用いることにより、注入のために加熱して粘度を下げても、注入後の残渣が硬化してしまうこともなく、次ロットに使用可能となる。よって、材料利用効率の向上が可能となる。また、注入不足による歩留まり不良率を下げることが可能となる。
【0060】
封止枠31の内部に光硬化性樹脂33Aを注入したのち、図8に示したように、封止枠31の開口31Aを、光硬化性樹脂よりなる封口部32で密閉し、洗浄する。
【0061】
続いて、同じく図8に示したように、封止枠31の四辺の側面に紫外線ランプ62を配置し、封止枠31の側面の側から紫外線UVを照射し、光硬化性樹脂33Aを硬化させて接着層33を形成する。照射量は例えば2000mJ/cm2とすることが可能である。
【0062】
このとき、第2パネル20に金属膜23が設けられているので、図9に示したように、光硬化性樹脂33Aに照射された紫外光UVは、第1パネル10上の有機EL素子10R,10G,10Bの第1電極13と第2パネル20上の金属膜23との間で反射しながら光硬化性樹脂33Aの奥まで進入する。よって、接着層33を構成する光硬化性樹脂33Aが十分に硬化され、未硬化の光硬化性樹脂33Aが漏れ出す等の不具合が抑えられる。以上により、図1ないし図6に示した表示装置1が完成する。
【0063】
この表示装置1では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機EL素子10R,10G,10Bに駆動電流Idsが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第2電極16,保護膜17,接着層33,カラーフィルタ22および第2基板21を透過して(トップエミッション)取り出される。
【0064】
このように本実施の形態の表示装置1では、第1基板11の表示領域110に複数の有機EL素子10R,10G,10Bを有する第1パネル10と、第2基板21にカラーフィルタ22および金属膜23を有する第2パネル20との間に、表示領域110を囲む封止枠31を設け、この封止枠31の内部に光硬化性樹脂よりなる接着層33を充填するようにしている。よって、接着層33の形状不良や硬化不良を抑え、寸法が小さいマイクロディスプレイの場合にも、有機EL素子10R,10G,10Bが設けられた第1基板11とカラーフィルタ22等が設けられた第2基板21とを良好に貼り合わせることが可能となる。
【0065】
本実施の形態の表示装置1の製造方法では、第1基板11の表示領域110に複数の有機EL素子10R,10G,10Bを有する第1パネル10を形成し、第2基板21にカラーフィルタ22および金属膜23を有する第2パネル20を形成し、第1パネル10に表示領域110を囲む封止枠31を設け、第1パネル10および第2パネル20を、封止枠31を間にして貼り合わせ、封止枠31の内部に光硬化性樹脂33Aを注入し、封止枠31の側面の側から紫外線UVを照射し、光硬化性樹脂33Aを硬化させて接着層33を形成するようにしている。よって、接着層33の形状不良や硬化不良を抑え、有機EL素子10R,10G,10Bが設けられた第1基板11とカラーフィルタ22等が設けられた第2基板21とを良好に貼り合わせることが可能となる。
【0066】
また、熱硬化性樹脂ではなく光硬化性樹脂33Aを用いることにより、注入のために加熱して粘度を下げても、注入後の残渣が硬化してしまうこともなく、次ロットに使用可能となる。よって、材料の利用効率を高めることが可能となる。
【0067】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置1の適用例について説明する。表示装置1は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0068】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置1は、例えば、図10に示したようなモジュールとして、後述する適用例1,2などの電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、第1パネル10の第2パネル20から露出した領域50の外部接続端子(図示せず)に、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)70を設けたものである。
【0069】
(適用例1)
図11は、表示装置1が適用される撮像装置(レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルカメラ)の外観を表したものである。この撮像装置は、例えば、カメラ本体部(カメラボディ)211の正面右側に交換式の撮影レンズユニット(交換レンズ)212を有し、正面左側に撮影者が把持するためのグリップ部213を有している。カメラ本体部211の背面略中央にはモニタ214が設けられている。モニタ214の上部には、ビューファインダ(接眼窓)215が設けられている。撮影者は、ビューファインダ215を除くことによって、撮影レンズユニット212から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことが可能である。このビューファインダ215は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0070】
(適用例2)
図12は、表示装置1が適用されるヘッドマウントディスプレイの外観を表したものである。このヘッドマウントディスプレイは、例えば、眼鏡形の表示部221の両側に、使用者の頭部に装着するための耳掛け部222を有しており、その表示部221は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0071】
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、金属膜23は、第2基板21の表面、すなわちカラーフィルタ22の第2基板21側に設けられている場合について説明したが、金属膜23は、カラーフィルタ22の第1基板11側の表面に設けられていてもよい。
【0072】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、第1基板11は、シリコン(Si)基板のほか、ガラス基板やプラスチック基板、または表面が絶縁性に保たれた他の材料基板でもよい。また、第1絶縁膜12は、アクリル,ポリイミド等の有機材料により構成されていてもよい。
【0073】
更に、例えば、上記実施の形態において表示装置1の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。
【0074】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルと、
第2基板に金属膜を有し、前記第1パネルの前記複数の有機EL素子の側に対向配置された第2パネルと、
前記表示領域を囲むと共に前記第1パネルおよび前記第2パネルの間に設けられた封止枠と、
前記封止枠の内部に充填された、光硬化性樹脂よりなる接着層と
を備えた表示装置。
(2)
前記金属膜は、前記複数の有機EL素子の境界線に対向する位置に設けられたブラックマトリクスである
前記(1)記載の表示装置。
(3)
前記複数の有機EL素子のピッチは30μm以下である
前記(1)または(2)記載の表示装置。
(4)
前記複数の有機EL素子は白色光を発生し、
前記第2パネルは前記白色光を有色光として取り出すカラーフィルタを有する
前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の表示装置。
(5)
第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルを形成する工程と、
第2基板に金属膜を有する第2パネルを形成する工程と、
前記第1パネルに前記表示領域を囲む封止枠を設け、前記第1パネルおよび前記第2パネルを、前記封止枠を間にして貼り合わせる工程と、
前記封止枠の内部に光硬化性樹脂を注入する工程と、
前記封止枠の側面の側から紫外線を照射し、前記光硬化性樹脂を硬化させて接着層を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。
(6)
前記複数の有機EL素子は、前記第1基板の側から、第1電極,発光層を含む有機層および第2電極をこの順に有し、
前記封止枠の側面の側から紫外線を照射する工程において、前記光硬化性樹脂に照射された紫外光は、前記第1パネル上の前記複数の有機EL素子の前記第1電極と前記第2パネル上の前記金属膜との間で反射しながら前記光硬化性樹脂の奥まで進入する
前記(5)記載の表示装置の製造方法。
【符号の説明】
【0075】
10…第1パネル、10R,10G,10B…有機EL素子、11…第1基板、12…第1絶縁膜、13…第1電極、14…第2絶縁膜、15…有機層、16…第2電極、17…保護膜、20…第2パネル、21…第2基板、22…カラーフィルタ、23…金属膜、31…封止枠、32…封口部、33…接着層、110…表示領域、120…信号線駆動回路、130…走査線駆動回路、140…画素駆動回路、Tr1,Tr2…トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルと、
第2基板に金属膜を有し、前記第1パネルの前記複数の有機EL素子の側に対向配置された第2パネルと、
前記表示領域を囲むと共に前記第1パネルおよび前記第2パネルの間に設けられた封止枠と、
前記封止枠の内部に充填された、光硬化性樹脂よりなる接着層と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記金属膜は、前記複数の有機EL素子の境界線に対向する位置に設けられたブラックマトリクスである
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の有機EL素子のピッチは30μm以下である
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記複数の有機EL素子は白色光を発生し、
前記第2パネルは前記白色光を有色光として取り出すカラーフィルタを有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
第1基板の表示領域に複数の有機EL素子を有する第1パネルを形成する工程と、
第2基板に金属膜を有する第2パネルを形成する工程と、
前記第1パネルに前記表示領域を囲む封止枠を設け、前記第1パネルおよび前記第2パネルを、前記封止枠を間にして貼り合わせる工程と、
前記封止枠の内部に光硬化性樹脂を注入する工程と、
前記封止枠の側面の側から紫外線を照射し、前記光硬化性樹脂を硬化させて接着層を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数の有機EL素子は、前記第1基板の側から、第1電極,発光層を含む有機層および第2電極をこの順に有し、
前記封止枠の側面の側から紫外線を照射する工程において、前記光硬化性樹脂に照射された紫外光は、前記第1パネル上の前記複数の有機EL素子の前記第1電極と前記第2パネル上の前記金属膜との間で反射しながら前記光硬化性樹脂の奥まで進入する
請求項5記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−37808(P2013−37808A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170929(P2011−170929)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】