説明

表示装置の製造方法

【課題】表示素子基板50の光出射側Fに、特定方向の透過軸70aをもつ偏光層55と、その透過軸70aに対して交差する遅相軸71aをもつ位相差層57とを備えた表示装置を容易に製造すること。
【解決手段】表示素子基板50の光出射側Fに偏光層55を形成する。偏光層55上に、位相差層57の材料となる液晶組成物の液晶性成分を配向方向に配列させる機能をもつ配向膜を形成する。配向膜上に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布し液晶相を示す温度に保持して、液晶性成分を遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配列させる。液晶性成分をなす重合性液晶化合物を、配向方向を保持しながら重合させて位相差層57を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置としては、表示素子が形成された基板(基板の主面に沿って複数の画素が配列されたもの。以下「表示素子基板」と呼ぶ。)の光出射側に、上記主面に沿った特定方向の透過軸をもつ偏光板と、上記主面に沿って上記透過軸に対して交差する遅相軸をもつ位相差板とをこの順に配置したものがある。従来、このような表示装置を作製する場合、まず偏光板と位相差板とを貼合したものを作製し、それを表示素子基板の光出射側に配置する製造方法が知られている(例えば非特許文献1(板倉ら、「液晶ディスプレイ・タッチパネルを中心とした光学フィルム・シート・技術全集」、株式会社 技術情報協会、2008年09月30日、p.114−116)参照。)
))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】板倉ら、「液晶ディスプレイ・タッチパネルを中心とした光学フィルム・シート・技術全集」、株式会社 技術情報協会、2008年09月30日、p.114−116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記製造方法では、表示装置の生産性が良くないという問題がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、表示素子基板の光出射側に偏光層と位相差層とを備えた表示装置を容易に製造でき、生産性を向上できる表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の表示装置の製造方法は、
主面に沿って配列された複数の画素を有する表示素子基板と、上記表示素子基板の光出射側に配置され、上記主面に沿った特定方向の透過軸をもつ偏光層と、上記偏光層の光出射側に配置され、上記主面に沿って上記透過軸に対して交差する遅相軸をもつ位相差層とを備えた表示装置を製造する表示装置の製造方法であって、
次の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする。
(1)上記表示素子基板の上記光出射側に、上記主面に沿って上記偏光層を形成する工程
(2)上記工程(1)で形成された上記偏光層上に、上記位相差層の材料となる液晶組成物の液晶性成分を上記遅相軸の方向に応じた配向方向に配列させる機能をもつ配向膜を形成する工程
(3)上記工程(2)で形成された上記配向膜上に、上記重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を上記液晶組成物の液晶性成分が液晶相を示す温度に保持して、上記液晶性成分を上記遅相軸の方向に応じた配向方向に配列させる工程
(4)上記工程(3)で形成された上記液晶性成分をなす重合性液晶化合物を、上記配向方向を保持しながら重合させることにより、上記位相差層を形成する工程
【0007】
この発明の表示装置の製造方法によれば、表示素子基板の光出射側に偏光層と位相差層とを備えた表示装置を容易に製造でき、生産性を向上できる。
【0008】
本明細書で、「表示素子基板」とは、基板の主面に沿って複数の画素が配列されたものを意味する。
【0009】
表示素子基板の「主面」とは、基板の広がりをもつ面(端面とは異なる面)を意味する。
【0010】
複数の「画素」とは、それぞれ電気的信号で駆動されることにより、光の透過、反射又は発光のオン/オフを行える素子を意味する。このような複数の画素を有する表示素子としては、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子、プラズマ表示素子、電界放出表示素子及び表面伝導型電子放出素子等の発光層を有する表示素子が挙げられる。
【0011】
表示素子基板の「光出射側」とは、製造された表示装置において上記表示素子基板から光が出射されるべき側を指す。いずれが「光出射側」であるかは、上記工程(1)が実施される前に、上記表示素子基板の構成に応じて定まっている。
【0012】
「偏光層」とは、自然光からある一方向(透過軸の方向)の直線偏光を選択的に透過する機能を有する物体のことをいう。
【0013】
また、「位相差層」とは、光を透過し、複屈折性を有する物体をいう。位相差層は、偏光層と組み合わせることで、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
【0014】
一実施形態の表示装置の製造方法では、上記位相差層の上記光出射側に、外光の反射を防ぐ反射防止層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の表示装置の製造方法によれば、製造された表示装置において上記反射防止層によって、外光に由来する反射光の発生を軽減でき、また、表示素子基板からの本来の表示用の出射光と反射光との干渉も抑制することが可能となる。この結果、表示特性を改善できる。さらに、上記反射防止層によって、上記位相差層を保護することができる。
【0016】
一実施形態の表示装置の製造方法では、上記表示素子基板の上記複数の画素は液晶表示素子を構成していることを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の表示装置の製造方法によれば、優れた立体画像を表示可能な液晶表示装置が製造される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表示装置の製造方法によれば、表示素子基板の光出射側に偏光層と位相差層とを備えた表示装置を容易に製造でき、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態の製造方法によって作製されるべき液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】上記製造方法によって作製されるべき別の液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図3】上記液晶表示装置において、表示素子基板に配列された複数の画素と偏光層と位相差層との間の配置の対応関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の製造方法によって作製されるべき表示装置の一例としての液晶表示装置(全体を符号51Aで示す。)の概略断面構成を示している。
【0022】
この液晶表示装置51Aは、バックライト52側(背面ともいう)より順番に、偏光板53、液晶表示素子が形成された表示素子基板54、偏光層55、配向膜56及び位相差層57を配置して構成されている。表示素子基板54の前後に偏光板53及び偏光層55があり、偏光層55の、表示素子基板54とは反対側(光出射側)に、配向膜56及び位相差層57が設けられている。
【0023】
バックライト52は、自然光を発する面光源であり、この例では公知の図示しない白色LED(発光ダイオード)及び光散乱板を含んでいる。上記白色LEDに代えて、冷陰極線管が用いられても良い。
【0024】
偏光板53は、板面に沿った特定方向の透過軸(図示せず)を有している。この偏光板53は、バックライト52が発生した自然光のうち上記透過軸に沿った一方向の直線偏光を選択的に表示素子基板54側Fへ透過させる。
【0025】
図3中に示すように、表示素子基板54は、主面50に沿ってマトリクス状に配列された複数の矩形の画素A1,A2,…;B1,B2,…を有している。この例では、複数の画素A1,A2,…;B1,B2,…は、液晶表示素子を構成している。これらの複数の画素A1,A2,…;B1,B2,…は、それぞれ電気的信号で駆動される。これにより、偏光板53を透過して表示素子基板54に入射した直線偏光は、画素A1,A2,…;B1,B2,…毎に、表示素子基板54の光出射側Fへ透過しまたは遮断されるようになっている。
【0026】
偏光層55は、主面50に沿った特定方向の透過軸70a(図3中に模式的に示すように、水平方向に対して斜め45度に向いている。)を有している。この例では、偏光層55の透過軸70aは、上記偏光板53の透過軸(図示せず)に対して直交する向きに設定されている。この偏光層55は、表示素子基板54を透過した光の、透過軸70aの方向に沿った成分を光出射側Fへ透過させる。
【0027】
また、位相差層57は、主面50に沿って、上記透過軸70aに対して或る角度で交差する遅相軸71aを有している。図3中に模式的に示すように、位相差層57の遅相軸71aは鉛直方向に向いている。つまり、光出射側Fから見たとき、偏光層55の透過軸70aの方向(これを0度とする。)に対して、位相差層57の遅相軸71aは45度に交差している。このような配置により、位相差層57は、偏光層55からの直線偏光を、円偏光に変換して、光出射側Fへ出射する。
【0028】
本発明の製造方法は、工程(1)として、表示素子基板54の光出射側に、偏光層55を形成する工程を含む。
【0029】
偏光層55としては、例えばフィルム状の偏光板を接着剤で貼合した層、及び二色性色素を含む液晶組成物を塗布して得られる層が挙げられる。
【0030】
偏光層55が貼合により形成される場合に用いられる偏光板としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光板、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性の染料を吸着・配向させた染料系偏光板、及びリオトロピック液晶状態の二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光板等が挙げられる。中でも、偏光度及び透過率に優れるため、ヨウ素系偏光板が好ましい。ヨウ素系偏光板としては、例えば、特許第3708062号や特許第4432487号に記載の偏光板等が挙げられる。
【0031】
貼合に用いられる接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリレート樹脂及びアクリルアミド樹脂等を接着成分とする接着剤が挙げられ、例えば、特許第4251060号や特開2006−77224号公報に記載の材料が挙げられる。なお、偏光板を貼合する方法としては、接着剤層を偏光板側に設けてから貼合してもよいし、接着剤層を表示素子基板54側に設けてから貼合してもよい。また、偏光板を貼合する方法としては、特開2010−276754号公報又は特開2010−276755号公報に記載の方法で行ってもよい。本明細書において、接着剤とは、粘着剤も包含する。
【0032】
偏光層55が二色性色素を含む液晶組成物によって形成される場合、二色性色素を含む液晶組成物としては、液晶性を有する二色性色素を含む液晶組成物、液晶化合物及び二色性色素を含む液晶組成物が挙げられる。表示素子基板54に上記液晶組成物を塗布し、乾燥させることにより、上記偏光層55を形成することができる。液晶化合物及び/又は二色性色素が重合性基を有する化合物である場合、乾燥後の膜に対して光照射や加熱を行い、膜中の上記重合性基を有する化合物を重合させることが、偏光層55の耐久性の点で好ましい。二色性色素を含む液晶組成物を用いて偏光層55を形成する方法としては、例えば、特表2007−510946号公報や特許第3492693号に記載の方法が挙げられる。
【0033】
本発明の製造方法は、工程(2)として、工程(1)で形成された偏光層55上に、配向膜56を形成する工程を含む。
【0034】
上記配向膜56は、後工程で形成される位相差層57の材料となる液晶組成物の液晶性成分を、上記遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配列させる機能(配向規制力)をもつ。
【0035】
配向膜56を形成する方法としては、ラビングによって配向規制力が付与される配向性ポリマーを用いる方法(以下「ラビング法」という場合がある)、偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いる方法(以下「光配向法」という場合がある)、基板表面に酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、及びラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法等が挙げられる。中でも、液晶組成物の配向均一性、処理時間及び処理コストの観点から、ラビング法及び光配向法が好ましく、光配向法がより好ましい。配向膜56としては、その上に後工程で塗布される液晶組成物(後工程で形成される位相差層57の材料となる)に含まれる溶剤に溶解しない程度の耐溶剤性、溶剤の除去や液晶配向等の熱処理に対する耐熱性、下地に対する密着性を有することが好ましい。
【0036】
配向膜56がラビング法によって形成される場合、ラビング法に用いられる配向性ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)又はオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)等の市販品を用いてもよい。
【0037】
配向膜56が光配向法によって形成される場合、光配向法に用いられる光配向性ポリマーとしては、感光性構造を有するポリマーが挙げられる。感光性構造を有するポリマーに偏光を照射すると、照射された部分の感光性構造が異性化又は架橋することで光配向性ポリマーが配向し、光配向性ポリマーからなる膜に配向規制力が付与される。上記感光性構造としては、例えば、アゾベンゼン構造、マレイミド構造、カルコン構造、桂皮酸構造、1,2−ビニレン構造、1,2−アセチレン構造、スピロピラン構造、スピロベンゾピラン構造及びフルギド構造等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。これらのポリマーは、感光性構造を有する単量体を用いて、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等により得ることができる。また、異なる感光性構造を有する複数種の単量体からなる共重合体であってもよい。このような光配向性ポリマーとしては、特許第4450261号、特許第4011652号、特開2010−49230号公報、特許第4404090号、特開2007−156439号公報、特開2007−232934号公報等に記載される光配向性ポリマーが挙げられる。
【0038】
上記配向性ポリマー及び光配向性ポリマーは、溶剤に溶解して、塗布することができる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン又はメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム又はクロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
配向膜56を形成するには、まず、工程(1)で形成された偏光層55上に、上記配向性ポリマー又は光配向性ポリマーの溶液を塗布する。塗布方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAP(キャップ)コーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法及びバーコーターによる塗布等が挙げられる。中でも、表示素子の損傷を抑制できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法及びバーコーターによる塗布が好ましい。
【0040】
配向性ポリマー又は光配向性ポリマーの溶液を塗布後、乾燥して、溶剤などの低沸点成分を塗布された膜から除去する。
【0041】
乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。具体的な乾燥温度としては、10〜250℃であることが好ましく、25〜200℃であることがさらに好ましい。また乾燥時間としては、5秒間〜60分間であることが好ましく、10秒間〜30分間であることがより好ましい。乾燥温度及び乾燥時間が上記範囲内であれば、表示素子基板54や偏光層55に対する損傷を抑制することができる。
【0042】
次いで、配向膜56に液晶組成物を積層して配向させたとき、上記液晶組成物の液晶性成分が上記遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配向するように、上記乾燥された配向性ポリマー膜又は光配向性ポリマー膜に配向規制力を付与する。配向規制力を付与する方法としては、乾燥後の配向性ポリマー膜にラビング法及び光配向法を適用するのが好ましい。
【0043】
ラビング法により配向規制力を付与するには、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている乾燥後の配向性ポリマー膜に接触させる。
【0044】
ラビング法によって配向膜56を形成するには、乾燥後の配向性ポリマー膜の表面(光出射側)の全域に、上記遅相軸71aの方向に応じたラビング処理方向のラビング処理を施す。このラビング処理によって、上記表面全域の配向規制力の方向を上記遅相軸71aの方向に応じたラビング処理方向に対応させる。これにより、後工程で形成される位相差層57の材料となる液晶組成物の液晶性成分を、上記遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配列させる配向規制力をもつ配向膜56が得られる。
【0045】
光配向法により配向規制力を付与するには、乾燥後の光配向性ポリマー膜上に、偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を行う。偏光照射は、例えば、特開2006−323060号公報に記載される装置を用いて行うことができる。例えば、乾燥後の光配向性ポリマー膜の表面(光出射側)の全域に、上記遅相軸71aの方向に応じた偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を行う。後工程で形成される位相差層57の材料となる液晶組成物の液晶性成分を、上記遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配列させる配向規制力をもつ配向膜56が得られる。
【0046】
配向膜56の膜厚は、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。このような範囲とすれば、後工程で液晶組成物に含まれる液晶性成分を所望の角度に配向させることができる。
【0047】
本発明の製造方法は、工程(3)として、上記工程(2)で形成された配向膜56上に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を上記液晶組成物の液晶性成分が液晶相を示す温度に保持して、上記液晶性成分を上記遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配列させる工程を含む。
【0048】
上記液晶組成物は、重合性液晶化合物のほか、重合開始剤及び溶媒等を含むことが好ましい。そのような場合、この工程(3)においては、上記液晶組成物を塗布して得られた塗布膜から溶剤が除去された膜が形成され、次いで、その溶剤が除去された膜に含まれる液晶性成分が配向される。
【0049】
上記液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010−31223号で開示されている重合性液晶化合物等が挙げられる。これらの重合性液晶化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明の製造方法に用いられる液晶組成物は、上述のように、溶剤を含むことが好ましい。
【0051】
溶剤としては、液晶組成物に含まれる成分を溶解し、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はフェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン又はメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム又はクロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
溶剤の使用量は、液晶組成物に対して、50〜95質量%が好ましい。逆にいえば、液晶組成物における固形分は、5〜50質量%が好ましい。固形分の濃度が5質量%以上であると、得られる位相差層57の膜厚が薄くなりすぎず、偏光変換に必要な複屈折率が与えられる傾向がある。また50質量%以下であると、液晶組成物の粘度が低いことから、位相差層57の膜厚にムラが生じにくくなる傾向がある。ここで、固形分とは、組成物全量に対する、組成物から溶剤を除いた成分の含有量である。
【0053】
液晶組成物の粘度は、塗布しやすいように、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは0.1〜7mPa・sに調整する。
【0054】
本発明の製造方法に用いられる液晶組成物は、上述のように、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0055】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられ、低温で重合性液晶化合物を重合できる傾向があるため、光重合開始剤であることが好ましい。
【0056】
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられる。
【0057】
光重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)又はTAZ−104(三和ケミカル社製)等、市販の光重合開始剤も用いることもできる。
【0058】
本発明の製造方法に用いられる液晶組成物は、必要に応じて、カイラル剤、重合禁止剤、光増感剤及びレベリング剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0059】
カイラル剤としては、『液晶デバイスハンドブック』(第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989)、特開2007−269640号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−176870号公報、特開2003−137887号公報、特表2000−515496号公報、特開2007−169178号公報、特表平9−506088号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
【0060】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類或いはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0061】
光増感剤としては、例えばキサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
【0062】
レベリング剤としては、例えば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング(株)製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業(株)製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)又はフッ素系添加剤(DIC(株)製:F−445、F−470、F−479)等を挙げることができる。
【0063】
上記工程(3)において、液晶組成物を塗布する方法としては、上記配向膜56を塗布する方法と同じ方法が挙げられる。中でも、表示素子の損傷を抑制できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法及びバーコーターによる塗布が好ましい。
【0064】
液晶組成物を塗布後、上述のように液晶組成物に含まれる溶剤を除去することが好ましい。
【0065】
液晶組成物を塗布して得られた塗布膜(好ましくは、上記塗布膜から溶剤が除去された膜)を、上記液晶組成物の液晶性成分が液晶相を示す温度に保持する。上記塗布膜が液晶相を示す温度に保持することで、上記塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させ、複屈折性を付与することができる。配向させる温度としては、0〜250℃が好ましく、10〜150℃がより好ましい。
【0066】
このようにして、配向膜56の配向規制力の方向に応じて、上記液晶性成分を上記遅相軸71aの方向に応じた配向方向に配列させる。
【0067】
本発明の製造方法は、工程(4)として、上記工程(3)で形成された上記液晶性成分をなす重合性液晶化合物を、上記配向方向を保持しながら重合させることにより、上記位相差層57を形成する工程を含む。
【0068】
上記液晶組成物に含まれた重合性液晶化合物が光重合性基を有する重合性液晶化合物である場合は、光重合法で重合させることが好ましい。また、上記液晶組成物に含まれた重合性液晶化合物が熱重合性基を有する重合性液晶化合物である場合は、熱重合法で重合させることが好ましい。ここで、光重合性基とは、光照射により化合物を重合させうる基、あるいは、光照射で重合開始剤から発生した活性ラジカル又は活性酸により化合物を重合させうる基のことをいう。熱重合性基とは、熱の作用により化合物を重合させうる基、あるいは、熱の作用で重合開始剤から発生した活性ラジカル又は活性酸により化合物を重合させうる基のことをいう。重合を、膜に含まれる成分が配向した状態、すなわち膜に含まれる成分が液晶相を示した状態で行うことにより、液晶相(つまり配向方向)を保持した硬化膜として、位相差層57を得ることができる。
【0069】
本発明の製造方法においては、光重合法により重合性液晶化合物を重合させることが好ましい。光重合法によれば高温に加熱せずに重合させることができるので、偏光層(偏光板)55の熱による変形を防ぐことができる。また工業的にも製造が容易となる。また成膜性の観点からも光重合法が好ましい。光重合法で用いられる光源としては、可視光、紫外光又はレーザー光が挙げられる。取り扱いの観点から、紫外光が好ましい。光照射は、膜に含まれる成分が液晶相を示す温度で行ってもよい。
【0070】
上記工程(4)で形成された位相差層57がλ/4板(4分の1波長板)である場合、位相差値(リタデーション値)Re(550nm)が113〜163nm、好ましくは135〜140nm、特に好ましくは約137.5nmになるように、位相差層57の膜厚を調整する。また、上記工程(4)で形成された位相差層57がλ/2(2分の1波長板)板である場合、位相差値Re(550nm)が250〜300nm、好ましくは273〜277nm、特に好ましくは約275nmとなるように位相差層57の膜厚を調整する。
【0071】
位相差層57における位相差値Re(λ)は、液晶組成物の塗布量や、液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量を適宜変更することにより、調整することができる。また、得られる位相差層57の位相差値Re(λ)は、次の式(X)のように決定されることから、所望の位相差値Re(λ)を得るためには、位相差層57の膜厚dを調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) …(X)
(式中、Re(λ)は、波長λ(nm)における位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λ(nm)における複屈折率を表す。)
【0072】
ただし、調整される位相差層57の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。
【0073】
上記工程(1)乃至(4)の結果、表示素子基板54の光出射側に、偏光層55及び位相差層57がこの順に設けられる。
【0074】
図1に示す液晶表示装置51Aは、表示素子基板54の光出射側に、上述の製造方法によって偏光層55、配向膜56及び位相差層57を設ける一方、表示素子基板54の光出射側とは反対の側に、公知の手法によって偏光板53及びバックライト52を設けて作製される。
【0075】
本発明の製造方法は、上記工程(4)で形成された位相差層57の光出射側に、さらに、外光の反射を防ぐ反射防止層を形成する工程を含むことが好ましい。図2は、そのような反射防止層58を備えた液晶表示装置(全体を符号51Bで示す。)の概略断面構成を示している。図2において、図1中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0076】
反射防止層58を構成する材料としては特に限定されず、例えば、金属、金属酸化物、金属フッ化物、微粒子及び高分子材料等からなる群から選ばれる少なくとも一種で構成される層、並びに、公知の反射防止(AR)フィルム、低反射(LR)フィルム、モスアイ型反射防止フィルム及びこれらが有する反射防止層等が挙げられる。
【0077】
金属としては、例えば、銀等が挙げられ、金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられ、金属フッ化物としては、例えば、弗化カルシウム、弗化マグネシウム等が挙げられる。
【0078】
微粒子としては、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、シリカゲル、金属微粒子含有シリカゲル等の無機微粒子;ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコン樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、ポリオレフィン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子、ポリイミド樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン樹脂微粒子等の有機微粒子;特開2010−84018号公報に記載される中空有機−無機ハイブリッド微粒子等が挙げられる。
【0079】
高分子材料としては、シロキサンポリマー、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド及び4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル、含フッ素(メタ)アクリレート、含フッ素イタコン酸エステル、含フッ素マレイン酸エステル、含フッ素珪素化合物等の重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラールやポリビニルホルマール等のポリビニルアセタール樹脂、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。高分子材料により薄膜を形成して反射防止層とする。
【0080】
この反射防止層58は、単層であってもよいし、2層、3層、4層又はそれ以上の層からなる多層であってもよい。反射防止層58の厚みや、それが多層である場合の各層の厚みは、その層数、各層に用いる物質の屈折率等により、適宜選択される。反射防止層58は、上記材料を含む溶液を位相差層57上に塗布する方法、又は、上記材料から形成された層を有するフィルムを位相差層57上に貼合する方法により、形成することができる。反射防止層58を形成する方法としては、例えば特開2003−114302号公報、特開平7−56002号公報、特許第4190337号、特許第4259957号、特許第4032771号、特開2010−122599号公報記載の方法が挙げられる。表示装置51Bが上記反射防止層58を有することで、外光に由来する反射光の発生を軽減でき、また、表示素子基板54からの本来の表示用の出射光と反射光との干渉も抑制することが可能となる。この結果、表示特性を改善できる。さらに、反射防止層58によって、位相差層57を保護することができる。
【0081】
さらに、反射防止層58の光出射側に、必要に応じて、公知の防汚層、帯電防止層、ハードコート層を形成してもよい。
【0082】
図2に示す液晶表示装置51Bは、表示素子基板54の光出射側に、上述の製造方法によって偏光層55、配向膜56、位相差層57及び反射防止層58を設ける一方、表示素子基板54の光出射側とは反対の側に、公知の手法によって偏光板53及びバックライト52を設けて作製される。
【0083】
図1、図2の液晶表示装置51A,51Bは次のように動作する。
【0084】
上記液晶表示装置51A,51Bでは、バックライト52が自然光を発生する。偏光板53は、バックライト52が発生した自然光のうち一方向の直線偏光を選択的に表示素子基板54側へ透過させる。図3によって既に説明したように、偏光板53を透過して表示素子基板54に入射した直線偏光は、画素A1,A2,…;B1,B2,…毎に、液晶層(図示せず)の光出射側Fへ透過しまたは遮断されるようになっている。偏光層55は、表示素子基板54を透過した光の、透過軸70aの方向に沿った成分を光出射側Fへ透過させる。ここで、光出射側Fから見たとき、偏光層55の透過軸70aの方向(これを0度とする。)に対して、位相差層57の遅相軸71aは45度に交差している。このような配置により、位相差層57は、偏光層55からの直線偏光を、円偏光に変換して、光出射側Fへ出射する。
【0085】
この例では、液晶表示装置51A,51Bは、時分割方式立体表示装置として、右目用画像と左目用画像とを交互に表示するものとする。そして、観察者が、円偏光板をレンズに設けた眼鏡(図示せず)を用いるものとする。眼鏡に用いられる円偏光板は、偏光層55の透過軸70aと同じ方向の透過軸を有する偏光板と、位相差層57の遅相軸71aと直交する方向の遅相軸を有する位相差板とを組み合わせた円偏光板である。これにより、観察者は、立体画像を観察することができる。
【0086】
このように、上記液晶表示装置51A,51Bによれば、立体画像を表示可能な表示装置を提供することができる。
【0087】
上記表示素子基板として既に説明したように液晶表示素子が形成されたものを用いる場合は、その表示素子基板は、2枚の基板の間に表示媒体である低分子液晶組成物を充填して形成される。上記2枚の基板のうち一方の基板には、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、対向電極、フォトスペーサ、配向膜等が設けられ、もう一方の基板には、液晶駆動電極、配線パターン、薄膜トランジスタ、配向膜等が設けられる。
【0088】
液晶表示装置としては、透過型、反射型、半透過型が挙げられる。液晶セルの動作モードに特に制限はなく、ねじれネマチック(Twisted Nematic)、垂直配(Vertical Alignment)、OCB(Optically Compensated)、IPS(In−Plane Swiching)等のいずれでもよい。
【0089】
本発明の製造方法により製造される表示装置としては、既述の液晶表示装置の他に、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイ、電界放出表示装置(フィールドエミッションディスプレイ)、表面伝導型電子放出素子を有する表示装置(SED)、電子ペーパー等が挙げられる。本発明の製造方法をこれらの他の表示装置に適用する場合、工程(1)で用いる表示素子基板として、これらの他の表示装置を構成する表示素子が形成されたもの(複数の画素が配列されたもの)を用いる。
【0090】
例えば、上記表示素子基板として有機EL表示素子が形成されたものを用いる場合は、まず透明電極を備えたガラス基板に、陽極、発光層等の有機膜及び陰極を蒸着によって積層し、有機EL素子及び配線パターンを形成する。次に、例えば、SUSやAl等によって形成された金属製キャップ(保護板)を透明電極ガラスに積層された各有機EL素子に被せ、接着剤によって透明電極ガラスに接着する。最後に、透明電極ガラスを有機EL素子毎に分割する。有機EL表示素子が形成された表示素子基板を製造する方法としては、例えば特許第3626728号に記載の方法が挙げられる。有機EL表示素子が形成された表示素子基板の光出射側に、上記工程(1)〜(4)により偏光層(偏光板)、配向膜及び位相差層を形成する。有機EL表示素子が形成された表示素子基板に、上記工程(1)において形成される偏光層(偏光板)は、外光反射を抑制することができるため、円偏光板であってもよい。
【0091】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0092】
(実施例1)
〔光配向性ポリマーの製造〕
式(A)で示される光配向性ポリマーを、Macromol. Chem. Phys. 197,1919-1935 (1996)に記載される方法で製造し、数平均分子量23000の重合体を得た。

【0093】
〔液晶組成物の調整〕
表1に記載される成分を混合して、液晶組成物(符号Eで表す。)を調整した。
【表1】

重合性液晶化合物:LC242(BASF社製、下記式で表される化合物)

重合性開始剤:イルガキュア369(BASFジャパン社製)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミージャパン製)
溶剤:PGMEA(プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、東京化成工業(株)製)
【0094】
〔位相差層の作製〕
ガラス基板上に、偏光板(ヨウ素系偏光板;TRW842AP7;住友化学(株)製)を粘着剤を用いて貼合して偏光層55を形成した。上記偏光層55上に式(A)で示される光配向性ポリマーの1質量%シクロペンタノン溶液を塗布し、乾燥して、厚さ200nmの膜を形成した。次いで、得られた膜上に、ガラス基板面に対して垂直方向から、偏光UV照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて20mW/cmの強度で5分間、偏光層55の透過軸70aに対して45度の方向の直線偏光を照射することにより配向膜56を形成した。上記配向膜56上に、液晶組成物Eをバーコーターを用いて塗布し、100℃に加熱し、液晶相に配向させた膜を得た。その後、室温まで冷却した状態で紫外線をユニキュア(VB−15201BY−A、ウシオ電機(株)製)を用いて波長365nmにおいて40mW/cmの強度で1分間照射することにより、位相差層57を作製した。次いで、反射防止フィルム(大日本印刷(株)製)を位相差層57の上に貼合することで、ガラス基板、偏光層55、配向膜56、位相差層57及び反射防止層58が積層された積層体を得た。
【0095】
(実施例2)
〔位相差層の作製〕
実施例1と同様にして、ガラス基板上に偏光層55を形成した。
【0096】
上記偏光層55上にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業(株)製)の2質量%水溶液を塗布し、乾燥後、厚さ89nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜56を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ−008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA−20−RW、吉川化工(株)製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で、偏光層55の透過軸70aに対して45度の方向に行った。上記配向膜56上に、液晶組成物Eをバーコーターを用いて塗布し、100℃に加熱し、液晶相に配向させた膜を得た。その後、室温まで冷却した状態で紫外線をユニキュア(VB−15201BY−A、ウシオ電機(株)製)を用いて波長365nmにおいて40mW/cmの強度で1分間照射することにより、位相差層57を作製した。次いで、反射防止フィルム(大日本印刷(株)製)を位相差層57の上に貼合することで、ガラス基板、偏光層55、配向膜56、位相差層57及び反射防止層58が積層された積層体を得た。
【0097】
<光学特性の測定>
上記で得られた積層体について、位相差層57の位相差値(nm)と配向角の測定とを、測定機(KOBRA−WPR、王子計測機器社製)で測定した。位相差層57中の液晶性成分の配向角と波長549nmにおける位相差値(リタデーション値)Re(nm)の測定結果を表2に示す。表2中の配向角は、偏光層55の透過軸70aの方向を0度としているため、配向角が略45度を示す。位相差値Re(nm)がλ/4(即ち135nm)に近いほど、偏光層55と位相差層57とを通過する自然光が、より円偏光に近い光に変換される。
【表2】

【0098】
<厚みの測定>
作製した積層体の厚みを、光電式デジタル測システム(デジマイクロMH−15M、株式会社ニコン製)を用いて測定した。ガラス基板を除いた積層体の厚みの測定結果を表3に示す。
【表3】

【0099】
(実施例3)
〔液晶表示装置の作製〕
液晶表示素子が形成された表示素子基板54(図2参照)の光出射側に、粘着剤を用いて偏光板を貼合して偏光層55を形成する。続いて、得られた偏光層55上に、実施例1と同様の方法で配向膜56を形成する。上記配向膜56上に、液晶組成物Eをスリットコーターを用いて位相差値が135nmとなるような膜厚に塗布し、100℃に加熱することで、液晶相に配向させた膜を得る。その後、室温まで冷却した状態で実施例1と同様の条件で紫外線を照射し、位相差層57を形成する。次いで、反射防止フィルム(大日本印刷(株)製)を位相差層57の上に貼合することで、液晶表示素子基板54、偏光層55、配向膜56、位相差層57及び反射防止層58が積層された液晶表示装置51Bを得る。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の表示装置の製造方法は、様々なタイプの表示装置、特に立体的に画像を表示可能な表示装置を製造するのに適用され得る。
【符号の説明】
【0101】
51A,51B 液晶表示装置
52 バックライト
53 偏光板
54 表示素子基板
55 偏光層
56 配向膜
57 位相差層
58 反射防止層
70a 透過軸
71a 遅相軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に沿って配列された複数の画素を有する表示素子基板と、上記表示素子基板の光出射側に配置され、上記主面に沿った特定方向の透過軸をもつ偏光層と、上記偏光層の光出射側に配置され、上記主面に沿って上記透過軸に対して交差する遅相軸をもつ位相差層とを備えた表示装置を製造する表示装置の製造方法であって、
次の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
(1)上記表示素子基板の上記光出射側に、上記主面に沿って上記偏光層を形成する工程
(2)上記工程(1)で形成された上記偏光層上に、上記位相差層の材料となる液晶組成物の液晶性成分を上記遅相軸の方向に応じた配向方向に配列させる機能をもつ配向膜を形成する工程
(3)上記工程(2)で形成された上記配向膜上に、上記重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を上記液晶組成物の液晶性成分が液晶相を示す温度に保持して、上記液晶性成分を上記遅相軸の方向に応じた配向方向に配列させる工程
(4)上記工程(3)で形成された上記液晶性成分をなす重合性液晶化合物を、上記配向方向を保持しながら重合させることにより、上記位相差層を形成する工程
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置の製造方法において、さらに、
上記位相差層の上記光出射側に、外光の反射を防ぐ反射防止層を形成する工程を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表示装置の製造方法において、
上記表示素子基板の上記複数の画素は液晶表示素子を構成していることを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−118117(P2012−118117A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265260(P2010−265260)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】