説明

表示装置の駆動装置

【課題】表示装置の駆動装置の動作速度の高速化を、無駄な電力消費を抑制しつつ実現する。
【解決手段】出力信号線60の電位を表示データに応じた目標電位へ切り替えるデコーダ回路36と、出力信号線60の電位がデータ電圧として供給される表示装置の間に、出力信号線60の電位がゲート電位に達する迄の間、出力信号線60を電源に接続するPMOSトランジスタ52と、出力信号線60の電位がゲート電位に達する迄の間、出力信号線60を接地線に接続するNMOSトランジスタ54と、を各々複数設け、各々に異なるゲート電位を供給し、出力信号線60の電位が目標電位よりも低い場合はn種類の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位がゲート電位とされたPMOSトランジスタ52を作動させ、出力信号線60の電位が目標電位よりも高い場合はn種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位がゲート電位とされたNMOSトランジスタ54を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置の駆動装置に係り、特に、表示データに応じた電圧を表示装置へ供給して表示装置を駆動する表示装置の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X方向に沿って複数本のデータ線が、Y方向に沿って複数本のゲート線が各々設けられると共に、個々のデータ線と個々のゲート線との交差位置に表示セル(画素)が各々設けられたアクティブマトリクス型の表示装置(例えばTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)−LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等)には、データ線を駆動するソースドライバとゲート線を駆動するゲートドライバを備えた駆動装置が接続される。この種の駆動装置には、水平同期信号の各周期に、同一のゲート線に対応する画素から成る1ライン分の表示データがグラフィックプロセッサ等のデータ源から順に入力される。
【0003】
駆動装置のソースドライバは、水平同期信号の各周期に、データ源から順に入力された1ライン分の表示データをシフトレジスタによって転送してラッチに保持させると共に、前の周期に入力された1ライン分の表示データに応じたデータ電圧をレベルシフタ、デコーダ回路及び増幅回路によって生成し、生成したデータ電圧を個々のデータ線へ供給して1ライン分の各画素に書き込む。また、駆動装置のゲートドライバは、単一のゲート線にゲート信号を供給すると共に、ゲート信号を供給するゲート線を水平同期信号の各周期で切り替える。これにより表示装置が駆動され、表示データが表す画像が表示装置に表示される。
【0004】
上記に関連して特許文献1には、ドレインドライバのデコーダ回路と出力アンプ回路との間に、表示データに対応した階調電圧のレベルをシフトした電圧を生成し、生成した電圧をプリチャージ期間内にドレイン信号線に供給するプリチャージ回路を設けた構成が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、複数のプリチャージ電圧から画像データに応じたプリチャージ電圧を選択して出力する第2のデコーダを設け、第2のデコーダから出力されるプリチャージ電圧をデータ線に供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−166741号公報
【特許文献1】特開2009−139538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、表示装置の動作速度の高速化に伴い、表示装置を駆動する駆動装置に対しても動作速度の高速化が要求されている。上記駆動装置のソースドライバでは、従来、例として図6(A)に示すように、ソースドライバの各構成要素のうちオペアンプ等から成る増幅回路の動作速度が最も低く、増幅回路の出力の遅延がソースドライバの動作速度向上の主な阻害要因となっていた。これに対し、近年の増幅回路周辺の技術改良により、例として図6(B)に「高速化後の増幅回路単体の出力」と表記して示すように、増幅回路の出力の遅延は大幅に小さくなった。しかし、これに伴い、増幅回路の出力の遅延に代わって増幅回路の前段に位置するデコーダ回路の出力の遅延がソースドライバの動作速度向上の主な阻害要因となってきており、増幅回路の出力がデコーダ回路の出力に依存するために、増幅回路の出力の遅延が大幅に小さくなった割にはソースドライバの動作速度が十分には向上していないのが実情であった。
【0008】
これに対して特許文献1に記載の技術は、デコーダ回路の出力側のドレイン信号線(データ線)の電位をプリチャージ回路によって変化させているので、ソースドライバの動作速度の向上に有効と考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、データ線(ドレイン信号線)の電位がプリチャージ電位(PC電位)に達したか否かに拘わらず、プリチャージ期間が終了する迄の間、データ線への電圧の供給が継続されるので、特許文献1の図11からも明らかなように、特にソースドライバから近い近端の画素に対しては、データ線の電位がPC電位に達した後も比較的長い期間、データ線へ電圧が供給されることになり、無駄な電力消費が生ずるという問題がある。また、特許文献1に記載の技術は、特許文献1の図11にも示されているように、データ線の電位を最終電位よりも高いPC電位へ一旦上昇させた後に最終電位迄低下させており、データ線の電位をPC電位へ一旦上昇させることも無駄な消費電力の増大に繋がる。
【0009】
また特許文献2に記載の技術についても、特許文献2の図3や図6からも明らかなように、データ線の電位がプリチャージ電位に達したか否かに拘わらず、プリチャージ期間が終了する迄の間、データ線へのプリチャージ電圧の供給が継続されるので、特許文献1に記載の技術と同様に、無駄な電力消費が生ずるという問題がある。
【0010】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、動作速度の高速化を、無駄な電力消費を抑制しつつ実現できる表示装置の駆動装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る表示装置の駆動装置は、駆動信号線の電位を表示データに応じた目標電位へ切り替える電位切替部と、前記駆動信号線の電位が電圧として供給される表示装置と、の間に設けられ、前記駆動信号線の電位が当該電位よりも高い第1基準電位に達する迄の間、前記駆動信号線を電源に接続する第1のスイッチング手段と、前記電位切替部と前記表示装置との間に設けられ、前記駆動信号線の電位が当該電位よりも低い第2基準電位に達する迄の間、前記駆動信号線を接地線に接続する第2のスイッチング手段と、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも低い場合に、予め定められたn種類(n≧1)の電位のうち前記目標電位以下かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第1基準電位として前記第1のスイッチング手段を作動させ、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも高い場合に、前記n種類の電位のうち前記目標電位以上かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第2基準電位として前記第2のスイッチング手段を作動させる制御手段と、を含んで構成されている。
【0012】
請求項1記載の発明では、駆動信号線の電位を表示データに応じた目標電位へ切り替える電位切替部と、駆動信号線の電位が電圧として供給される表示装置と、の間に、駆動信号線の電位が当該電位よりも高い第1基準電位に達する迄の間、駆動信号線を電源に接続する第1のスイッチング手段と、駆動信号線の電位が当該電位よりも低い第2基準電位に達する迄の間、駆動信号線を接地線に接続する第2のスイッチング手段と、が各々設けられている。そして制御手段は、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合に、予め定められたn種類(n≧1)の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位を第1基準電位として第1のスイッチング手段を作動させ、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合に、n種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位を第2基準電位として第2のスイッチング手段を作動させる。
【0013】
このように、請求項1記載の発明では、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合には、駆動信号線の電位が、n種類の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位である第1基準電位に達する迄の間、第1のスイッチング手段によって駆動信号線が電源に接続されることで、駆動信号線の電位が目標電位に達するまでの時間が短縮される。また、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合には、駆動信号線の電位が、n種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位である第2基準電位へ低下する迄の間、第2のスイッチング手段によって駆動信号線が接地線に接続されることで、駆動信号線の電位が目標電位に達するまでの時間が短縮される。これにより、本発明に係る表示装置の駆動装置の動作速度の高速化を実現できる。
【0014】
また、第1のスイッチング手段は、駆動信号線の電位が第1基準電位に達する迄の間、駆動信号線を電源に接続する構成であり、駆動信号線の電位が第1基準電位に達すると駆動信号線と電源との接続が遮断される。また第2のスイッチング手段についても、駆動信号線の電位が第2基準電位に達する迄の間、駆動信号線を接地線に接続する構成であり、駆動信号線の電位が第2基準電位に達すると駆動信号線と接地線との接続が遮断される。従って、駆動信号線の電位が或る電位に達したか否かに拘わらず駆動信号線に一定期間電圧を供給する構成と比較して、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0015】
なお、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、第1のスイッチング手段は複数設けられ、個々の第1のスイッチング手段にはn種類の電位のうち互いに異なる電位が第1基準電位として供給されるように構成してもよい。この構成において、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合に、n種類の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位を第1基準電位として第1のスイッチング手段を作動させることは、より詳しくは、例えば制御手段を、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合に、複数の第1スイッチング手段のうち、目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位が第1基準電位として供給される第1のスイッチング手段を作動させるように構成することで実現できる。
【0016】
また、請求項2記載の発明において、例えば請求項3に記載したように、個々の第1のスイッチング手段と電源との間に第3のスイッチング手段が各々設けられている場合、複数の第1スイッチング手段のうち、目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位が第1基準電位として供給される第1のスイッチング手段を作動させることは、より詳しくは、例えば制御手段を、複数の第3スイッチング手段のうち、作動させる特定の第1のスイッチング手段と電源との間に設けられた第3スイッチング手段をオンさせることで、特定の第1のスイッチング手段を作動させるように構成することで実現できる。
【0017】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、例えば請求項4に記載したように、第2のスイッチング手段は複数設けられ、個々の第2のスイッチング手段にはn種類の電位のうち互いに異なる電位が第2基準電位として供給されるように構成してもよい。この構成において、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合に、n種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位を第2基準電位として第2のスイッチング手段を作動させることは、より詳しくは、例えば制御手段を、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合に、複数の第2スイッチング手段のうち、目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位が第2基準電位として供給される第2のスイッチング手段を作動させるように構成することで実現できる。
【0018】
また、請求項4記載の発明において、例えば請求項5に記載したように、個々の第2のスイッチング手段と接地線との間に第4のスイッチング手段が各々設けられている場合、複数の第2スイッチング手段のうち、目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位が第2基準電位として供給される第2のスイッチング手段を作動させることは、より詳しくは、例えば制御手段を、複数の第4スイッチング手段のうち、作動させる特定の第2のスイッチング手段と接地線との間に設けられた第4スイッチング手段をオンさせることで、特定の第2のスイッチング手段を作動させるように構成することで実現できる。
【0019】
また、請求項1、請求項4及び請求項5の何れかに記載の発明において、例えば請求項6に記載したように、第1のスイッチング手段にはn種類の電位のうちの何れか1つの電位が第1基準電位として選択的に供給される構成であってもよい。この構成において、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合に、n種類の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位を第1基準電位として第1のスイッチング手段を作動させることは、より詳しくは、例えば制御手段を、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合に、n種類の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位を第1スイッチング手段に第1基準電位として供給させるように構成することで実現できる。
【0020】
また、請求項1、請求項4及び請求項5の何れかに記載の発明において、例えば請求項7に記載したように、第2のスイッチング手段にはn種類の電位のうちの何れか1つの電位が第2基準電位として選択的に供給される構成であってもよい。この構成において、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合に、n種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位を第2基準電位として第2のスイッチング手段を作動させることは、より詳しくは、例えば制御手段を、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合に、n種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位を第2スイッチング手段に第2基準電位として供給させるように構成することで実現できる。
【0021】
また、請求項1〜請求項7の何れかに記載の発明において、例えば請求項8に記載したように、第1のスイッチング手段はバックゲートが接地線に接続されたPMOSトランジスタを含み、第2のスイッチング手段はバックゲートが電源に接続されたNMOSトランジスタを含んで構成することができる。
【0022】
また、請求項1〜請求項7の何れかに記載の発明において、例えば請求項9に記載したように、第1のスイッチング手段はバックゲートが駆動信号線に接続されたPMOSトランジスタを含み、第2のスイッチング手段はバックゲートが駆動信号線に接続されたNMOSトランジスタを含んで構成することも可能である。先の請求項8に記載したように、PMOSトランジスタのバックゲートは通常は接地線に接続され、NMOSトランジスタのバックゲートは通常は電源に接続される。このため、上記のように、第1のスイッチング手段のPMOSトランジスタ及び第2のスイッチング手段のNMOSトランジスタのバックゲートを駆動信号線に接続する場合、これらのトランジスタを他のトランジスタと分離する必要があり、回路面積は増大する。
【0023】
但し、PMOSトランジスタのバックゲートを接地線に接続し、NMOSトランジスタのバックゲートを電源に接続した場合、バックゲートと駆動信号線とに電位差が生じ(バックバイアスが掛かり)、駆動信号線の電位が基準電位に達するよりも若干早いタイミングでオフする可能性がある。これに対して上記のようにバックゲートを駆動信号線に接続した場合、バックバイアスが掛からなくなるので、駆動信号線の電位が第1基準電位又は第2基準電位に達するタイミングまで上記の各トランジスタをオンさせることができ、駆動信号線の電位が第1基準電位又は第2基準電位に達するタイミングまで駆動信号線が電源又は接地線に接続されている状態を継続させることができる。
【0024】
また、請求項8又は請求項9記載の発明において、例えば請求項10に記載したように、第1のスイッチング手段のPMOSトランジスタには第1基準電位よりも所定値だけ高い電位がゲートに供給され、第2のスイッチング手段のNMOSトランジスタには第2基準電位よりも所定値だけ高い電位がゲートに供給されるように構成してもよい。この場合も、請求項9記載の発明と同様に、駆動信号線の電位が第1基準電位又は第2基準電位に達するタイミングまで上記の各トランジスタをオンさせることができ、駆動信号線の電位が第1基準電位又は第2基準電位に達するタイミングまで駆動信号線が電源又は接地線に接続されている状態を継続させることができる。
【0025】
また、請求項1〜請求項10の何れかに記載の発明において、電位切替部と表示装置との間に増幅回路が更に設けられている場合、例えば請求項11に記載したように、第1のスイッチング手段及び第2のスイッチング手段は、駆動信号線のうち電位切替部と増幅回路との間の部位を電源又は接地線に接続するように構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明は、駆動信号線の電位を表示データに応じた目標電位へ切り替える電位切替部と、駆動信号線の電位が電圧として供給される表示装置と、の間に、駆動信号線の電位がより高い第1基準電位に達する迄の間、駆動信号線を電源に接続する第1のスイッチング手段と、駆動信号線の電位がより低い第2基準電位に達する迄の間、駆動信号線を接地線に接続する第2のスイッチング手段と、を設け、駆動信号線の電位が目標電位よりも低い場合に、n種類の電位のうち目標電位以下かつ目標電位に最も近い電位を第1基準電位として第1のスイッチング手段を作動させ、駆動信号線の電位が目標電位よりも高い場合に、n種類の電位のうち目標電位以上かつ目標電位に最も近い電位を第2基準電位として第2のスイッチング手段を作動させるようにしたので、動作速度の高速化を、無駄な電力消費を抑制しつつ実現できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態で説明した表示装置の駆動装置の概略構成を表示装置と共に示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る電位変更補助回路の構成を示す回路図である。
【図3】(A)はn個の電位変更補助回路に各々供給される基準電位の一例、(B),(C)は駆動信号線の電位変化の一例を各々示す線図である。
【図4】第2実施形態に係る電位変更補助回路の構成を示す回路図である。
【図5】第3実施形態に係る電位変更補助回路の構成を示す回路図である。
【図6】表示装置の駆動装置(のソースドライバ)における動作速度向上の阻害要因を説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1には、表示デバイスである表示装置10と、当該表示装置10に接続されたゲートドライバ14及びソースドライバ16を備えた駆動装置12が示されている。なお、駆動装置12は本発明に係る表示装置の駆動装置の一例である。
【0030】
表示装置10は、アクティブマトリクス型の表示デバイスであれば、公知の各種表示デバイスの何れでもよいが、例えば表示装置10がTFT−LCDである場合、表示装置10は、図示は省略するが、所定の間隔を隔てて対向配置された一対の透明基板の間に液晶が封入され、一方の透明基板の対向面上の全面に電極が形成され、他方の透明基板の対向面上に、図1のX方向に沿って一定間隔で配置され各々図1のY方向に沿って延びる多数本のデータ線と、図2のY方向に沿って一定間隔で配置され各々図1のX方向に沿って延びる多数本のゲート線と、が各々設けられ、個々のデータ線と個々のゲート線の交差位置(画素位置)に薄膜トランジスタ(TFT)及び電極が各々配置された構成とされ、個々のTFTはソースが電極に、ゲートがゲート線に、ドレインがデータ線に各々接続される。以下では表示装置10がTFT−LCDである場合を例に説明する。
ゲートドライバ14とソースドライバ16を備えている。ゲートドライバ14には表示装置10の個々のゲート線が各々接続されており、ソースドライバ16には表示装置10の個々のデータ線が各々接続されている。ゲートドライバ14はタイミングコントローラ(図示省略)に接続されており、タイミングコントローラから入力されるゲートドライバ制御信号に従い、表示装置10の多数本のゲート線のうち何れか1本のゲート線にゲート信号を所定時間供給し、当該ゲート線に接続されている1ライン分の画素のTFTを所定時間オンさせることを、ゲート信号を供給するゲート線を水平同期信号に同期したタイミングで順に切り替えながら繰り返す。
【0031】
一方、ソースドライバ16は、シフトレジスタ20、1ライン分の画素数と同数個のラッチ回路24を備えた第1のラッチ回路群22、1ライン分の画素数と同数個のラッチ回路28を備えた第2のラッチ回路群26、1ライン分の画素数と同数個のレベルシフタ32を備えたレベルシフタ群30、1ライン分の画素数と同数個のデコーダ回路36を備えたデコーダ回路群34、1ライン分の画素数と同数個の電位変更補助回路42を備えた電位変更補助回路群40、及び、1ライン分の画素数と同数個の増幅回路48を備えた増幅回路群46が順に接続されて構成されている。
【0032】
ソースドライバ16には、この種の駆動装置には、水平同期信号の各周期に、表示装置10の同一のゲート線に対応する画素から成る1ライン分の表示データが、グラフィックプロセッサ等のデータ源から1画素単位で順に入力される。シフトレジスタ20は、1画素単位で順に入力される1ライン分の表示データを順に転送した後に、第1のラッチ回路群22へ出力する。これにより、第1のラッチ回路群22の個々のラッチ回路24には、1ライン分の表示データのうち互いに異なる1画素分の表示データが各々保持される。
【0033】
第2のラッチ回路群26は、シフトレジスタ20による表示データの転送及び第1のラッチ回路群22への表示データの保持と並列に、第2のラッチ回路群26に保持された表示データに対するレベルシフタ群30以降の回路による信号処理を行うためのものであり、第1のラッチ回路群22の個々のラッチ回路24に保持された1画素分の表示データは、第2のラッチ回路群26の個々のラッチ回路28に一旦転送・保持された後に、レベルシフタ群30の個々のレベルシフタ32へ出力される。
【0034】
レベルシフタ群30の個々のレベルシフタ32は、第2のラッチ回路群26のラッチ回路28から入力された表示データの電圧レベルを、後段のデコーダ回路36等の動作に適したより高い電圧レベルへ変換し、レベル変換後の表示データをデコーダ回路群34の個々のデコーダ回路36へ出力する。
【0035】
デコーダ回路群34には、互いに電圧レベルの異なる複数種の階調電圧を発生する階調電圧発生部38が設けられており、階調電圧発生部38によって発生された複数種の階調電圧は個々のデコーダ回路36に各々供給される。個々のデコーダ回路36は、階調電圧発生部38より供給された複数種の階調電圧の中から、前段のレベルシフタ32から入力された1画素分の表示データに応じた階調電圧を選択し、出力信号線の電圧レベル(電位)を選択した階調電圧へ変化させることで、選択した階調電圧を後段の回路へ出力する。なお、電位変更補助回路群40の個々の電位変更補助回路42については後述する。
【0036】
増幅回路群46の個々の増幅回路48は、図示を省略するが、入力端にデコーダ回路36の出力信号線が接続されたオペアンプを備えている。このオペアンプは、ボルテージフォロワとして機能するように周辺回路が接続されており、出力端がデータ線に接続されている。これにより、出力信号線の電圧(データ電圧)は、増幅回路48(のオペアンプ)により、電圧レベルが変更されることなく、電流が増幅されてデータ線へ供給される。
【0037】
これにより、増幅回路群46の個々の増幅回路48からデータ線へ供給されたデータ電圧は、表示装置10の各ラインのうちゲートドライバ14によってゲート信号が供給されているゲート線に対応する1ライン分の画素に各々印加され、データ電圧が印加された各画素の位置における液晶の光透過率が印加されたデータ電圧の大きさに応じて変化することで、表示装置10に1ライン分の画像が表示される。そして、ゲートドライバ14によってゲート信号が供給されるゲート線が順に切り替わると共に、ソースドライバ16の表示データが入力されるラインが順に切り替わることで、表示装置10に画像が表示されることになる。
【0038】
次に図2を参照し、電位変更補助回路群40に1ライン分の画素数と同数個設けられている電位変更補助回路42を説明する。図2には単一の画素(データ線)に対応する単一の電位変更補助回路42が示されており、この電位変更補助回路42にはn個(例えばn>1)の電位検出・変更回路50が設けられている。また、電位変更補助回路群40には、基準電位供給部62と選択信号供給部64を備えた切替制御部44も設けられている。
【0039】
個々の電位検出・変更回路50は、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54と、選択用のNMOSトランジスタ56及びPMOSトランジスタ58と、を備えている。検出用のPMOSトランジスタ52はドレインが出力信号線60に接続され、ソースが選択用のNMOSトランジスタ56のソースに接続され、ゲートが基準電位供給部62に接続され、バックゲート(サブストレートゲートともいう)が接地線に接続されて電位Vssに維持されている。また、検出用のNMOSトランジスタ54はドレインが出力信号線60に接続され、ソースが選択用のPMOSトランジスタ58のソースに接続され、ゲートが基準電位供給部62に接続され、バックゲートが電源に接続されて電位VDDに維持されている。
【0040】
選択用のNMOSトランジスタ56は、ドレイン及びバックゲートが電源に接続されて電位VDDに維持されており、ゲートが選択信号供給部64に接続されている。また、選択用のPMOSトランジスタ58は、ドレイン及びバックゲートが接地線に接続されて電位Vssに維持されており、ゲートが選択信号供給部64に接続されている。なお、単一の電位変更補助回路42に設けられている電位検出・変更回路50の数nは、例えば駆動装置12に対して許容される回路規模や、駆動装置12に対する動作速度の高速化の程度等の条件に応じて定めることができる。
【0041】
また、切替制御部44の基準電位供給部62は、個々の電位検出・変更回路50の検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54に対し、デコーダ回路36から出力されるデータ電圧の最小値から最大値の範囲内で、かつn種類の電圧レベルのうち電位検出・変更回路50毎に互いに異なる電圧レベルの電圧(電位)を基準電位Vrefとしてゲートに各々供給する。
【0042】
例として図3(A)には、電位検出・変更回路50の数n=3の場合に、個々の電位検出・変更回路50の検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給する基準電位Vref1〜Vref3の一例を示す。図3(A)におおいて、電位Vminは表示データの最小値Dminが入力されたときにデコーダ回路36から出力されるデータ電圧、電位Vmaxは表示データの最大値Dmaxが入力されたときにデコーダ回路36から出力されるデータ電圧である。基準電位供給部62は、例えば図3(A)に示すように、デコーダ回路36から出力されるデータ電圧の範囲(Vmin〜Vmax)を、電位検出・変更回路50の数nに応じた数(=n+1=4)の複数の範囲に均等に分割したときの個々の範囲に境界に相当する電位を、個々の電位検出・変更回路50の検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54に基準電位Vrefとして供給するように構成することができる。
【0043】
また、電位検出・変更回路50の選択信号供給部64は、デコーダ回路36に入力されるレベル変換後の表示データが入力され(これに代えてレベル変換前の表示データが入力される構成でもよい)、入力された表示データに基づいて、デコーダ回路36による出力信号線60の電位の変更における目標電位を、デコーダ回路36によって出力信号線60の電位が変更される前に認識する。また選択信号供給部64は、水平同期信号の1つ前の周期で認識した出力信号線60の目標電位を保持しており、認識した目標電位を前周期の目標電位と比較することで、現周期でのデコーダ回路36による出力信号線60の電位の変更方向が電位の上昇か下降かを判断する。
【0044】
そして選択信号供給部64は、出力信号線60の電位の変更方向が電位の上昇と判断した場合には、n個の電位検出・変更回路50に基準電位Vrefとして供給しているn種類の電位の中から、認識した目標電位以下でかつ前記目標電位に最も近い電位を選択し、選択した電位を基準電位Vrefとして検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給している電位検出・変更回路50に対し、選択用のNMOSトランジスタ56をオンさせる選択信号を選択用のNMOSトランジスタ56のゲートに供給する。
【0045】
また選択信号供給部64は、出力信号線60の電位の変更方向が電位の下降と判断した場合には、n個の電位検出・変更回路50に基準電位Vrefとして供給しているn種類の電位の中から認識した目標電位以上でかつ前記目標電位に最も近い電位を選択し、選択した電位を基準電位Vrefとして検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給している電位検出・変更回路50に対し、選択用のPMOSトランジスタ58をオンさせる選択信号を選択用のPMOSトランジスタ58のゲートに供給する。
【0046】
なお、本第1実施形態において、検出用のPMOSトランジスタ52は、本発明に係る第1のスイッチング手段(より詳しくは請求項2,11に記載の第1のスイッチング手段)及び請求項8に記載のPMOSトランジスタの一例、検出用のNMOSトランジスタ54は、本発明に係る第2のスイッチング手段(より詳しくは請求項4,11に記載の第2のスイッチング手段) 及び請求項8に記載のNMOSトランジスタの一例、選択用のNMOSトランジスタ56は請求項3に記載の第3のスイッチング手段の一例、選択用のPMOSトランジスタ58は請求項5に記載の第4のスイッチング手段の一例、切替制御部44は本発明に係る制御手段(より詳しくは請求項2〜5に記載の制御手段)の一例、デコーダ回路36は請求項1に記載の電位切替部の一例、増幅回路48は請求項11に記載の増幅回路の一例である。また、検出用のPMOSトランジスタ52のゲートに供給される電位は第1基準電位の一例、検出用のNMOSトランジスタ54のゲートに供給される電位は第2基準電位の一例である。
【0047】
次に本実施形態の作用を説明する。駆動装置12のソースドライバ16のデコーダ回路36は、前述のように、階調電圧発生部38より供給された複数種の階調電圧の中から、前段のレベルシフタ32から入力された1画素分の表示データに応じた階調電圧を選択し、出力信号線60の電圧レベル(電位)を選択した階調電圧へ変化させるが、デコーダ回路36が出力信号線60の電位を変化させる速度(デコーダ回路36の出力速度)はソースドライバ16の他の回路の出力速度よりも低く、ソースドライバ16の動作速度向上の主な阻害要因となっている。このため、本実施形態に係る駆動装置12のソースドライバ16には、電位変更補助回路群40が設けられている。
【0048】
電位変更補助回路群40に設けられた電位検出・変更回路50の選択信号供給部64は、出力信号線60の電位の変更方向が電位の上昇と判断した場合、n個の電位検出・変更回路50に基準電位Vrefとして供給しているn種類の電位の中から、認識した目標電位以下でかつ前記目標電位に最も近い電位を選択し、選択した電位を基準電位Vrefとして検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給している電位検出・変更回路50に対し、選択用のNMOSトランジスタ56をオンさせる選択信号を選択用のNMOSトランジスタ56のゲートに供給する。
【0049】
選択信号がゲートに供給された選択用のNMOSトランジスタ56がオンすると、この選択用のNMOSトランジスタ56に接続された検出用のPMOSトランジスタ52は、出力信号線60の電位がゲートに供給されている基準電位Vrefに達する迄の間オンするので、出力信号線60の電位が基準電位Vrefに達する迄の間、出力信号線60は検出用のPMOSトランジスタ52及び選択用のNMOSトランジスタ56を介して電源に接続される。
【0050】
例として図3(B)には、選択信号供給部64によって認識された出力信号線60の目標電位VDが、水平同期信号の前周期の目標電位VD-1よりも高く、かつ、基準電位Vref3よりも高い場合の出力信号線60の電位の変化を示す。図3(B)からも明らかなように、出力信号線60の電位が基準電位Vref3に達する迄の期間は出力信号線60が電源に接続されているので、当該期間における出力信号線60の電位変化の傾きを、電位変更補助回路群40に設けられていない場合の電位変化の傾き(図3(B)に示す一点鎖線の傾き)と比較しても明らかなように、上記期間には出力信号線60の電位が高速に変化する。
【0051】
また、出力信号線60の電位が基準電位Vref3に達すると、検出用のPMOSトランジスタ52がオフすることで出力信号線60と電源との接続が解除され、出力信号線60の電位変化の傾きも電位変更補助回路群40に設けられていない場合と同様に小さくなるが、図3(B)に「時間短縮」と表記して示すように、出力信号線60を電位VD-1から電位VDへ変化させる所要時間全体としては短縮されているので、ソースドライバ16の動作速度の向上を実現することができる。また、検出用のPMOSトランジスタ52は出力信号線60の電位が基準電位Vref3に達するとオフするので、検出用のPMOSトランジスタ52を予め設定した一定時間オンさせる等の場合と比較して、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0052】
また、電位検出・変更回路50の選択信号供給部64は、出力信号線60の電位の変更方向が電位の下降と判断した場合、n個の電位検出・変更回路50に基準電位Vrefとして供給しているn種類の電位の中から、認識した目標電位以上でかつ前記目標電位に最も近い電位を選択し、選択した電位を基準電位Vrefとして検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給している電位検出・変更回路50に対し、選択用のPMOSトランジスタ58をオンさせる選択信号を選択用のPMOSトランジスタ58のゲートに供給する。
【0053】
選択信号がゲートに供給された選択用のPMOSトランジスタ58がオンすると、この選択用のPMOSトランジスタ58に接続された検出用のNMOSトランジスタ54は、出力信号線60の電位がゲートに供給されている基準電位Vrefに達する迄の間オンするので、出力信号線60の電位が基準電位Vrefに達する迄の間、出力信号線60は検出用のNMOSトランジスタ54及び選択用のPMOSトランジスタ58を介して接地線に接続される。
【0054】
例として図3(C)には、選択信号供給部64によって認識された出力信号線60の目標電位VDが、水平同期信号の前周期の目標電位VD-1よりも低く、かつ、基準電位Vref1よりも低い場合の出力信号線60の電位の変化を示す。図3(C)からも明らかなように、出力信号線60の電位が基準電位Vref1に達する迄の期間は出力信号線60が接地線に接続されているので、当該期間における出力信号線60の電位変化の傾きを、電位変更補助回路群40に設けられていない場合の電位変化の傾き(図3(C)に示す一点鎖線の傾き)と比較しても明らかなように、上記期間には出力信号線60の電位が高速に変化する。
【0055】
また、出力信号線60の電位が基準電位Vref1に達すると、検出用のNMOSトランジスタ54がオフすることで出力信号線60と接地線との接続が解除され、出力信号線60の電位変化の傾きも電位変更補助回路群40に設けられていない場合と同様に小さくなるが、図3(C)に「時間短縮」と表記して示すように、出力信号線60を電位VD-1から電位VDへ変化させる所要時間全体としては短縮されているので、ソースドライバ16の動作速度の向上を実現することができる。また、検出用のNMOSトランジスタ54は出力信号線60の電位が基準電位Vref1に達するとオフするので、検出用のNMOSトランジスタ54を予め設定した一定時間オンさせる等の場合と比較して、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図4には本第2実施形態に係る電位変更補助回路群40の電位変更補助回路42及び切替制御部44が示されている。図4に示すように、本第2実施形態では、電位変更補助回路42に単一の電位検出・変更回路68が設けられている。
【0057】
電位検出・変更回路68は、第1実施形態で説明した電位検出・変更回路50と比較して選択用のNMOSトランジスタ56及びPMOSトランジスタ58が省略されており、検出用のPMOSトランジスタ52はソースが電源に、ゲートが電位選択回路70に各々接続されており、検出用のNMOSトランジスタ54はソースが接地線に、ゲートが電位選択回路72に各々接続されている。
【0058】
電位選択回路70,72には、切替制御部44の基準電位供給部62からn種類の電位(基準電位Vref1〜Vrefn)が各々供給される。電位選択回路70,72は、切替制御部44の選択信号供給部64から入力された選択信号に応じてオンオフされるn個のスイッチング素子を備えており、選択信号供給部64から入力された選択信号に応じて、基準電位供給部62から供給されたn種類の電位のうちの何れか1つの電位を検出用のPMOSトランジスタ52のゲート又は検出用のNMOSトランジスタ54のゲートに基準電位Vrefとして供給する。
【0059】
なお、本第2実施形態において、検出用のPMOSトランジスタ52は、本発明に係る第1のスイッチング手段(より詳しくは請求項6に記載の第1のスイッチング手段)及び請求項8に記載のPMOSトランジスタの一例、検出用のNMOSトランジスタ54は、本発明に係る第2のスイッチング手段(より詳しくは請求項7に記載の第2のスイッチング手段) 及び請求項8に記載のNMOSトランジスタの一例、切替制御部44は本発明に係る制御手段(より詳しくは請求項6,7に記載の制御手段)の一例、デコーダ回路36は請求項1に記載の電位切替部の一例、増幅回路48は請求項11に記載の増幅回路の一例である。また、検出用のPMOSトランジスタ52のゲートに供給される電位は第1基準電位、より詳しくは請求項6に記載の「n種類の電位のうちの何れか1つの電位」の一例、検出用のNMOSトランジスタ54のゲートに供給される電位は第2基準電位、より詳しくは請求項7に記載の「n種類の電位のうちの何れか1つの電位」の一例である。
【0060】
次に本第2実施形態の作用を説明する。電位検出・変更回路50の選択信号供給部64は、出力信号線60の電位の変更方向が電位の上昇と判断した場合、基準電位供給部62が電位選択回路70,72に供給しているn種類の電位の中から、認識した目標電位以下でかつ前記目標電位に最も近い電位を選択し、選択した電位を電位選択回路70から出力させるための選択信号を電位選択回路70に供給する。これにより、上記で選択した電位が検出用のPMOSトランジスタ52のゲートに基準電位Vrefとして供給され、出力信号線60の電位がゲートに供給されている基準電位Vrefに達する迄の間、検出用のPMOSトランジスタ52がオンすることで、出力信号線60の電位が基準電位Vrefに達する迄の間、出力信号線60は検出用のPMOSトランジスタ52を介して電源に接続される。
【0061】
従って、第1実施形態と同様に、出力信号線60が電位VD-1からより高い電位VDへ変化する迄の所要時間が短縮され(図3(B)も参照)、ソースドライバ16の動作速度の向上を実現することができる。また検出用のPMOSトランジスタ52は、出力信号線60の電位がゲートに供給された基準電位Vrefに達するとオフするので、検出用のPMOSトランジスタ52を予め設定した一定時間オンさせる等の場合と比較して、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0062】
また電位検出・変更回路50の選択信号供給部64は、出力信号線60の電位の変更方向が電位の下降と判断した場合、基準電位供給部62が電位選択回路70,72に供給しているn種類の電位の中から、認識した目標電位以上でかつ前記目標電位に最も近い電位を選択し、選択した電位を電位選択回路72から出力させるための選択信号を電位選択回路72に供給する。これにより、上記で選択した電位が検出用のNMOSトランジスタ54のゲートに基準電位Vrefとして供給され、出力信号線60の電位がゲートに供給されている基準電位Vrefに達する迄の間、検出用のNMOSトランジスタ54がオンすることで、出力信号線60の電位が基準電位Vrefに達する迄の間、出力信号線60は検出用のNMOSトランジスタ54を介して電源に接続される。
【0063】
従って、第1実施形態と同様に、出力信号線60が電位VD-1からより低い電位VDへ変化する迄の所要時間も短縮され(図3(C)も参照)、ソースドライバ16の動作速度の向上を実現することができる。また検出用のNMOSトランジスタ54は、出力信号線60の電位がゲートに供給された基準電位Vrefに達するとオフするので、検出用のNMOSトランジスタ54を予め設定した一定時間オンさせる等の場合と比較して、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0064】
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図5には本第3実施形態に係る電位変更補助回路群40の電位変更補助回路42及び切替制御部44が示されている。図5に示すように、本第3実施形態に係る電位検出・変更回路76は、第1実施形態で説明した電位検出・変更回路50と比較して、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のバックゲートが出力信号線60に接続されている点でのみ相違している。
【0065】
なお、本第1実施形態において、検出用のPMOSトランジスタ52は請求項9に記載のPMOSトランジスタの一例、検出用のNMOSトランジスタ54は請求項9に記載のNMOSトランジスタの一例である。
【0066】
第1実施形態で説明した電位検出・変更回路50のように、検出用のPMOSトランジスタ52のバックゲートを接地線に接続すると共に、検出用のNMOSトランジスタ54のバックゲートを電源に接続した場合、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のバックゲートと出力信号線60とに電位差が生じ(バックバイアスが掛かり)るので、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のうちオンしたトランジスタは、出力信号線60の電位が、ゲートに供給された基準電位Vrefに達するよりも若干早いタイミング(出力信号線60の電位と基準電位Vrefとの差がトランジスタの閾値電圧Vtまで小さくなったタイミング)でオフする。
【0067】
これに対し、本第3実施形態に係る電位検出・変更回路76のように、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のバックゲートが出力信号線60に接続した場合、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54にはバックバイアスが掛からなくなるので、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のうちオンしたトランジスタは、出力信号線60の電位が、ゲートに供給された基準電位Vrefに達するタイミングまでオンすることになる。これにより、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54がオンしている期間が長くなるので、出力信号線60が電位VD-1から電位VDへ変化する迄の所要時間が更に短縮され、ソースドライバ16の動作速度を更に向上させることができる。
【0068】
なお、第3実施形態では、第1実施形態で説明した構成において、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のバックゲートを出力信号線60に接続した構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2実施形態で説明した構成において、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のバックゲートを出力信号線60に接続するようにしてもよい。
【0069】
また、上記では検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54をオンさせて出力信号線60の電位を変化させる際の目標電位である基準電位Vrefを検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給する態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基準電位よりも所定値(例えばトランジスタの閾値電圧Vt)だけ高い電位を検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のゲートに供給するようにしてもよい。この場合も、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54のバックゲートを出力信号線60に接続する場合と同様に、検出用のPMOSトランジスタ52及びNMOSトランジスタ54がオンしている期間をより長くすることができる。なお、上記態様は請求項10記載の発明の一例である。
【0070】
また、電位変更補助回路42は図2,4,5に示した構成に限定されるものではなく、出力信号線60を電源に接続する側と出力信号線60を接地線に接続する側とで構成を相違させてもよい。すなわち、例えば出力信号線60を電源に接続する側は、図2,5に示したように、互いに異なる電位がゲートに供給される複数の検出用のPMOSトランジスタ52を設けた構成とする一方、出力信号線60を接地線に接続する側は、図4に示したように、ゲートに供給される電位が電位選択回路によって複数の電位の中から切り替えされる単一の検出用のNMOSトランジスタ54を設けた構成としてもよいし、出力信号線60を電源に接続する側の構成と出力信号線60を接地線に接続する側の構成を上記と入れ替えた構成としてもよい。
【0071】
更に、上記では第1のスイッチング手段を検出用のPMOSトランジスタ52で構成すると共に、第2のスイッチング手段を検出用のNMOSトランジスタ54で構成した態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、MOSトランジスタ以外のスイッチング素子を用いた構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 表示装置
12 駆動装置
16 ソースドライバ
36 デコーダ回路
38 階調電圧発生部
42 電位変更補助回路
44 切替制御部
48 増幅回路
50,68,76 電位検出・変更回路
52 検出用のPMOSトランジスタ
54 検出用のNMOSトランジスタ
56 選択用のNMOSトランジスタ
58 選択用のPMOSトランジスタ
60 出力信号線
62 基準電位供給部
64 選択信号供給部
70,72 電位選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号線の電位を表示データに応じた目標電位へ切り替える電位切替部と、前記駆動信号線の電位が電圧として供給される表示装置と、の間に設けられ、前記駆動信号線の電位が当該電位よりも高い第1基準電位に達する迄の間、前記駆動信号線を電源に接続する第1のスイッチング手段と、
前記電位切替部と前記表示装置との間に設けられ、前記駆動信号線の電位が当該電位よりも低い第2基準電位に達する迄の間、前記駆動信号線を接地線に接続する第2のスイッチング手段と、
前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも低い場合に、予め定められたn種類(n≧1)の電位のうち前記目標電位以下かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第1基準電位として前記第1のスイッチング手段を作動させ、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも高い場合に、前記n種類の電位のうち前記目標電位以上かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第2基準電位として前記第2のスイッチング手段を作動させる制御手段と、
を含む表示装置の駆動装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチング手段は複数設けられ、個々の前記第1のスイッチング手段には前記n種類の電位のうち互いに異なる電位が前記第1基準電位として供給され、
前記制御手段は、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも低い場合に、複数の前記第1スイッチング手段のうち、前記目標電位以下かつ前記目標電位に最も近い電位が前記第1基準電位として供給される前記第1のスイッチング手段を作動させる請求項1記載の表示装置の駆動装置。
【請求項3】
個々の前記第1のスイッチング手段と前記電源との間には第3のスイッチング手段が各々設けられており、
前記制御手段は、複数の前記第3スイッチング手段のうち、作動させる特定の前記第1のスイッチング手段と前記電源との間に設けられた前記第3スイッチング手段をオンさせることで、特定の前記第1のスイッチング手段を作動させる請求項2記載の表示装置の駆動装置。
【請求項4】
前記第2のスイッチング手段は複数設けられ、個々の前記第2のスイッチング手段には前記n種類の電位のうち互いに異なる電位が前記第2基準電位として供給され、
前記制御手段は、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも高い場合に、複数の前記第2スイッチング手段のうち、前記目標電位以上かつ前記目標電位に最も近い電位が前記第2基準電位として供給される前記第2のスイッチング手段を作動させる請求項1〜請求項3の何れか1項記載の表示装置の駆動装置。
【請求項5】
個々の前記第2のスイッチング手段と前記接地線との間には第4のスイッチング手段が各々設けられており、
前記制御手段は、複数の前記第4スイッチング手段のうち、作動させる特定の前記第2のスイッチング手段と前記接地線との間に設けられた前記第4スイッチング手段をオンさせることで、特定の前記第2のスイッチング手段を作動させる請求項4記載の表示装置の駆動装置。
【請求項6】
前記第1のスイッチング手段には前記n種類の電位のうちの何れか1つの電位が前記第1基準電位として選択的に供給され、
前記制御手段は、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも低い場合に、前記n種類の電位のうち前記目標電位以下かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第1スイッチング手段に前記第1基準電位として供給させることで、前記目標電位以下かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第1基準電位として前記第1のスイッチング手段を作動させる請求項1、請求項4及び請求項5の何れか1項記載の表示装置の駆動装置。
【請求項7】
前記第2のスイッチング手段には前記n種類の電位のうちの何れか1つの電位が前記第2基準電位として選択的に供給され、
前記制御手段は、前記駆動信号線の電位が前記目標電位よりも高い場合に、前記n種類の電位のうち前記目標電位以上かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第2スイッチング手段に前記第2基準電位として供給させることで、前記目標電位以上かつ前記目標電位に最も近い電位を前記第2基準電位として前記第2のスイッチング手段を作動させる請求項1、請求項4及び請求項5の何れか1項記載の表示装置の駆動装置。
【請求項8】
前記第1のスイッチング手段はバックゲートが前記接地線に接続されたPMOSトランジスタを含み、
前記第2のスイッチング手段はバックゲートが前記電源に接続されたNMOSトランジスタを含む請求項1〜請求項7の何れか1項記載の表示装置の駆動装置。
【請求項9】
前記第1のスイッチング手段はバックゲートが前記駆動信号線に接続されたPMOSトランジスタを含み、
前記第2のスイッチング手段はバックゲートが前記駆動信号線に接続されたNMOSトランジスタを含む請求項1〜請求項7の何れか1項記載の表示装置の駆動装置。
【請求項10】
前記第1のスイッチング手段のPMOSトランジスタには前記第1基準電位よりも所定値だけ高い電位がゲートに供給され、
前記第2のスイッチング手段のNMOSトランジスタには前記第2基準電位よりも所定値だけ高い電位がゲートに供給される請求項8又は請求項9記載の表示装置の駆動装置。
【請求項11】
前記電位切替部と前記表示装置との間に設けられた増幅回路を更に備え、
前記第1のスイッチング手段及び前記第2のスイッチング手段は、前記駆動信号線のうち前記電位切替部と前記増幅回路との間の部位を前記電源又は前記接地線に接続する請求項1〜請求項10の何れか1項記載の表示装置の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−83523(P2012−83523A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229374(P2010−229374)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】