説明

表示装置及びプログラム

【課題】縮小画像の縮小倍率が変更された場合であっても、利用者が各ページの概要を迅速に把握しやすい表示を得る技術を提供する。
【解決手段】サムネイル画像の表示指示が入力されると、CPU11は、記憶部14に記憶されている初期値で縮小倍率を特定し、この縮小倍率で縮小したサムネイル画像を記憶性表示体21に表示させる。利用者が電子ペン2を記憶性表示体21の表示面に近づけると、CPU11は、ペン検出部19によって、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2までの距離を測定するとともに、その表示面上における電子ペン2の位置を特定する。そして、CPU11は、測定された距離から縮小倍率を算出し、特定された位置からページを選択して、各ページに対し、冒頭の所定数の文字のみ縮小倍率に応じたレイアウト処理を施し、残りの文字を図形画像に置換する部分レイアウト処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データのページ数を視覚的に表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のページで構成された文書画像を表示させる場合に、各ページのサムネイル画像を並べて表示させる場合がある。サムネイル画像とは、画像データによって表される画像の大きさを縮小した縮小画像のことであり、複数のサムネイル画像を並べて表示させることにより、利用者は文書全体の概略を把握することができる。各ページのサムネイル画像の縮小倍率を小さくすると、より多くのサムネイル画像を同時に表示させることができるので、文書全体の概略を把握するのには好都合である反面、個々のページに記された内容を判別しづらい場合がある。一方、サムネイル画像の縮小倍率を大きくすると、個々のページの内容を判別しやすい反面、同時に表示させることができるサムネイル画像の数は少なくなり、一覧性が悪くなる。従って、利用者は、必要に応じて、サムネイル画像の縮小倍率を選べばよい。
【0003】
ところで、表示装置に表示する画像の内容や大きさを、この表示装置の表示面と操作子などの物体との距離に応じて決定する技術が種々開発されている。例えば、特許文献1には、操作画面が表示されたタッチパネルと操作ペン(指)との距離に連動してその操作画面の拡大縮小を制御する方法が開示されている。また、特許文献2には、利用者と表示面の距離に応じて表示する画像の内容を変更する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、表示面に接触させた指の移動履歴に基づいて、表示する地図画像の拡大・縮小などを行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−85218号公報
【特許文献2】特開2003−140632号公報
【特許文献3】特開2007−310888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1〜3に記載の技術などにより文書のサムネイル画像の縮小倍率を変更する場合には、文書中の各文字について縮小倍率を変更してその変更後の各文字を表示領域中に配置するという、レイアウト処理が必要となる。ところが、このレイアウト処理の処理量に対して表示装置の処理能力が低い場合には、一定の時間を要するから、利用者が各ページの概要を迅速に把握することが難しいという問題がある。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、縮小画像の縮小倍率が変更された場合であっても、利用者が各ページの概要を迅速に把握しやすい表示を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る表示装置は、表示面を有する表示手段と、前記表示手段の表示面から利用者が操る操作子までの距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段によって測定された距離に応じて、文書データに含まれる各ページの画像を縮小して表示するときの縮小倍率を特定する倍率特定手段と、前記倍率特定手段により特定された縮小倍率の大きさが変化した場合には、前記各ページの画像の一部を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、当該各ページの画像の全体を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる縮小画像表示制御手段とを具備することを特徴とする。
これにより、縮小画像の縮小倍率が変更された場合であっても、利用者は各ページの概要を迅速に把握しやすい表示を得ることができる。
【0006】
好ましくは、前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、前記倍率特定手段により特定された縮小倍率の大きさが一定時間に亘り変化しなかった場合には、前記各ページの画像の全体を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させるとよい。
これにより、利用者は操作子と表示面との距離を一定に保つだけで、表示装置にその縮小倍率で各ページの画像の全体を表示させることができる。
【0007】
また、好ましくは、利用者の操作を受け付ける操作手段を具備し、前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、定められた操作が前記操作手段により受け付けられた場合には、前記各ページの画像の全体を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させるとよい。
これにより、表示装置が各ページの画像の一部のみを縮小して表示している際に、利用者は任意のタイミングでその縮小倍率により表示装置に各ページの画像の全体を縮小して表示させることができる。
【0008】
また、好ましくは、前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる場合において、当該一部以外の画像に替えて当該縮小倍率に応じた大きさの図形画像を表示するとよい。
これにより、表示装置は、表示する各ページの画像の一部に対してのみ縮小処理を施すだけで、その画像の概略を表示することができる。また、ページ中の図形画像の量ないし数を参照することで、そのページの文字量をおおよそ把握することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させたまま、前記図形画像を、前記一部以外の画像を前記縮小倍率で縮小した画像に置き換えて表示することにより、前記各ページの画像の全体を前記表示手段に表示させるとよい。
これにより、各ページの画像について、その一部を縮小して表示する際の縮小処理を、その全体を縮小して表示する際に省略することができる。
【0010】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、表示手段の表示面から利用者が操る操作子までの距離に応じて、文書データに含まれる各ページの画像を縮小して表示するときの縮小倍率を特定する倍率特定手段と、前記倍率特定手段により特定された縮小倍率の大きさが変化した場合には、前記各ページの画像の一部を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、当該各ページの画像の全体を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる縮小画像表示制御手段として機能させるためのプログラムである。
これにより、縮小画像の縮小倍率が変更された場合であっても、利用者は各ページの概要を迅速に把握しやすい表示を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[構成]
図1は、本実施形態に係る表示装置1の外観を示す図である。この表示装置1は、例えば電子ペーパーである。図2は、表示装置1のハードウェア構成を示す図である。同図に示すCPU(Central Processing Unit)11は、ROM(Read Only Memory)12又は記憶部14に記憶されているプログラムを実行して、表示装置1の各部を制御する。ROM12は、表示装置1の起動に必要なプログラムやデータを記憶している。RAM(Random Access Memory)13は、CPU11がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。記憶部14は、例えばハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶手段であり、CPU11によって実行されるプログラムや文書データなどを記憶している。この文書データは、記憶性表示体21に表示される文書を表すデータであり、複数ページに区切られている。
【0012】
電源15は、例えば充電可能な電池であり、表示装置1の各部に電力を供給する。電源制御部16は、電源15の管理を行うとともに、電源15による電力供給の制御を行う。入出力部17は、操作ボタン18やペン検出部19とデータのやり取りを行うインタフェースである。操作ボタン18は、図1に示すように表示装置1の前面に設けられており、入出力部17を介して利用者の操作に応じたデータをCPU11に入力する。この操作ボタン18は、利用者の操作を受け付ける操作手段の一例である。ペン検出部19は、記憶性表示体21の背面側に設けられており、電磁誘導方式を利用して、記憶性表示体21上の検出範囲内にある電子ペン2を検出する。そして、ペン検出部19は、記憶性表示体21の表示面上における電子ペン2の位置を特定するとともに、その表示面から電子ペン2までの距離を測定する。ここでは、ペン検出部19の検出範囲が、記憶性表示体21の表示面から10cmの範囲であるものとする。
【0013】
VRAM(Video Random Access Memory)20は、記憶性表示体21に表示される1ページ分の画像を表す画像データを記憶する。記憶性表示体21は、電子泳動素子などの複数の表示素子によって構成された表示面を有する表示手段であり、表示体制御部22によって表示素子が駆動されることにより、VRAM20に記憶されている画像データに応じた画像を表示する。この記憶性表示体21は、表示の記憶性を有しており、表示素子が駆動されて画像を表示するまでの駆動期間においては電力が必要であるが、その駆動期間が経過して画像が表示された後は、電力が供給されなくてもその画像を表示し続けることができる。表示体制御部22は、VRAM20に記憶されている画像データに基づいて記憶性表示体21の表示素子を駆動し、その画像データに応じた画像を表示させる駆動回路である。
【0014】
ここで、図3を参照して、ペン検出部19が電子ペン2を検出する仕組みについて説明する。この電子ペン2は、指示手段の一例である。ペン検出部19は、マトリックス状に配置された複数のセンサーコイル19aを有している。図中のセンサーコイル19a−1,19a−2,19a−3は、紙面手前から紙面奥側方向に延びるループ状の形状をしており、図中のX方向に並べられている。なお、図では、図中のX方向に並べられたセンサーコイル19aのみが示されているが、実際には、ペン検出部19のセンサ面上においてこのX方向と直交するY方向にも複数のセンサーコイル19aが並べられている。ペン検出部19は、センサーコイル19aに所定の時間だけ電流を流すことにより、記憶性表示体21の表示面上に磁界mを発生させる。このとき、電子ペン2が記憶性表示体21に近づけられてこの磁界m中に入ると、電子ペン2の内部に設けられたループ状のコイル25に誘導電流が流れ、コンデンサ26に電荷が蓄えられる。これにより、電子ペン2のコイル25に電流が流れてそのペン先に磁界が発生し、電子ペン2の下方に配置されているセンサーコイル19aに誘導電流が流れる。
【0015】
ペン検出部19は、センサーコイル19aに流れた誘導電流を検知することにより、電子ペン2が検出範囲内に入ったことを検出することができる。さらに、ペン検出部19は、誘導電流が流れたセンサーコイル19aの位置に基づいて、電子ペン2の位置を特定することができる。図の例では、電子ペン2の直下に配置されているセンサーコイル19a−2に最大の誘導電流が流れるため、このセンサーコイル19a−2の位置に基づいて、電子ペン2の位置Ptが特定される。また、ペン検出部19は、センサーコイル19aに流れた誘導電流の大きさに基づいて、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2のペン先までの距離Lを算出することができる。この誘導電流の大きさと距離Lとの関係は、実験や計算により定めることができる。
【0016】
次に、図4を参照して、表示装置1が有する特徴的な機能について説明する。図4は、表示装置1の機能構成を示す図である。同図に示すように、ペン検出部19は、その機能構成として、距離測定部101と、位置特定部102とを備えている。距離測定部101は、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2のペン先までの距離を測定する。この距離測定部101は、距離測定手段の一例である。位置特定部102は、記憶性表示体21の表示面上における電子ペン2の位置を特定する。この位置特定部102は、位置特定手段の一例である。
【0017】
CPU11は、その機能構成として、倍率特定部103と、サムネイル画像表示制御部104と、倍率固定指示検出部105とを備えている。これらの機能は、CPU11がプログラムを実行することによって実現される。倍率特定部103は、記憶性表示体21に表示するサムネイル画像の縮小倍率を特定する倍率特定手段の一例である。より具体的には、倍率特定部103は、距離測定部101により記憶性表示体21の表示面から電子ペン2のペン先までの距離が測定されるまでは、記憶部14に記憶された倍率の初期値を読み出して、その初期値をサムネイル画像の縮小倍率として特定する。そして、倍率特定部103は、距離測定部101により距離が測定されたときには、距離測定部101によって測定された距離が遠くなるほど縮小されたページの大きさが小さくなるように倍率を算出し、その算出した倍率をサムネイル画像の縮小倍率として特定する。サムネイル画像表示制御部104は、倍率特定部103により特定された縮小倍率の大きさが変化した場合には、各ページの画像の一部をその縮小倍率で縮小して記憶性表示体21に表示させた後に、当該各ページの画像の全体をその縮小倍率で縮小して記憶性表示体21に表示させる縮小画像表示制御手段の一例である。より具体的には、サムネイル画像表示制御部104は、位置特定部102によって記憶性表示体21の表示面上における電子ペン2の位置が特定され、倍率特定部103によってサムネイル画像の縮小倍率が特定されると、特定された位置に基づいて記憶部14に記憶されている文書データのページのいくつかを選択し、選択した各ページを特定された縮小倍率で縮小したサムネイル画像を表す画像データをVRAM20に書き込む。このサムネイル画像は、縮小画像の一例である。
【0018】
倍率固定指示検出部105は、倍率特定部103が特定する縮小倍率を固定する旨の指示を検出する。ここで、サムネイル画像表示制御部104は、サムネイル画像を生成するにあたり、倍率固定指示検出部105が縮小倍率を固定する旨の指示を検出していない場合には、選択した各ページに含まれる文字の一部を、当該文字が前記縮小倍率で縮小されたときの大きさを示す画像で置換し、倍率固定指示検出部105が縮小倍率を固定する旨の指示を検出した場合には、選択した各ページに含まれる全ての文字を、当該縮小倍率で縮小された画像に置換する。そして、サムネイル画像表示制御部104は、このようにサムネイル画像を表す画像データをVRAM20に書き込んだ後、表示体制御部22に表示開始命令を供給する。
【0019】
表示体制御部22は、サムネイル画像表示制御部104によって表示開始命令が供給されると、VRAM20に記憶されている画像データに基づいて記憶性表示体21の表示素子を駆動させる。記憶性表示体21は、表示体制御部22によって表示素子が駆動されることにより、VRAM20に記憶されている画像データに応じた画像を表示する。
【0020】
[動作]
次に、表示装置1の動作について説明する。
図5は、表示装置1の動作の流れを示すフロー図である。利用者によって操作ボタン18が用いられて、サムネイル画像の表示を指示する操作が行われると、サムネイル画像の表示指示がCPU11に入力される(ステップS11)。サムネイル画像の表示指示が入力されると、CPU11は、記憶部14に記憶されている初期値(例えば1/5)で縮小倍率を特定する。そして、CPU11は、その縮小倍率に対応した数(この場合においては25ページ)のページをその縮小倍率で縮小したサムネイル画像An(n=1〜25)からなるサムネイル画像群AをVRAM20に書き込み、表示体制御部22により記憶性表示体21にVRAM20の記憶内容を表示させる(ステップS12)。
【0021】
図6は、サムネイル画像群Aの表示例を示す図である。図6(a)においては、各サムネイル画像Anの表示内容を省略し、これらの輪郭のみを記載する。図6(a)に示したサムネイル画像群Aは、記憶性表示体21の表示面に縦横に5行5列、すなわち25ページのサムネイル画像An(n=1〜25)が1画面に配列されて構成される。このサムネイル画像群Aのうち、図中左上の1ページであるサムネイル画像A1を拡大して図6(b)に示す。図6(b)に示すように、サムネイル画像A1の表示内容は、複数の文字で構成された文章である。ここで、各サムネイル画像Anの縮小倍率は1/5と低いので、この画像に含まれている文字は潰れている場合も多く、利用者は表示内容の詳細を把握しづらい。ただし、各サムネイル画像Anが一覧表示されているので、利用者は、各ページの表示内容の概略を把握することができ、所望するページのサムネイル画像Anがどこに配置されているかについて判断することができる。
【0022】
ここで、図6(a)に示したサムネイル画像群Aが記憶性表示体21に表示された状態において、利用者が電子ペン2を図6(b)に示す位置P1、すなわちサムネイル画像A1の右下の点において、記憶性表示体21の表示面から3cmの距離まで近づけた場合を想定する。記憶性表示体21にサムネイル画像群Aが表示されると、CPU11は、ペン検出部19によって、電子ペン2がその検出範囲内にあるか否かを判定する(ステップS13)。例えば、電子ペン2が記憶性表示体21の表示面から、検出範囲の10cmの範囲内に近づけられていない場合、電子ペン2はペン検出部19の検出範囲内にないため検出されない。この場合、CPU11は、電子ペン2が検出範囲内にないと判定し(ステップS13:NO)、電子ペン2が検出範囲内に移動されるまで待機する。
【0023】
一方、この例のように、記憶性表示体21の表示面のうち、「位置P1」から3cmの距離に電子ペン2が近づけられた場合には、電子ペン2がペン検出部19によって検出されるため、CPU11は、電子ペン2が検出範囲内にあると判定する(ステップS13:YES)。この場合、CPU11は、ペン検出部19によって、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2までの距離を測定するとともに、その表示面上における電子ペン2の位置を特定する(ステップS14)。この例では、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2までの距離として「3cm」が測定されるとともに、電子ペン2の位置として「位置P1」が特定される。続いて、CPU11は、測定した距離が「0cm」であるか否かを判断し(ステップS15)、「0cm」であると判断した場合には(ステップS15;YES)、特定した電子ペンの位置がサムネイル画像上にあるか否かを判断する(ステップS16)。そして、電子ペンの位置がサムネイル画像上にあると判断した場合には(ステップS16;YES)、CPU11は、電子ペンの位置によりサムネイル画像を1つ特定し、特定したサムネイル画像の元となるページを表示体制御部22により記憶性表示体21の表示面全体に表示させて(ステップS17)、処理を終了する。電子ペンの位置がサムネイル画像上にないと判断した場合には(ステップS16;NO)、CPU11は、処理をステップS13に戻す。
【0024】
一方、測定した距離が「0cm」でないと判断した場合には(ステップS15;NO)、CPU11は測定された距離から縮小倍率を算出する(ステップS18)。この例では、ステップS14で測定された距離は「3cm」であるから、ステップS15の判断は否定的であり、CPU11はステップS18に処理を進める。具体的には、例えば、測定された距離である「3cm」を記憶部14に記憶された定数「2cm」で除算し(この時点では商は「1.5」となる)、小数点以下を切り上げて実数「2」を得る。そして、得た実数「2」の逆数である「1/2」を縮小倍率として算出するといった具合である。これにより、サムネイル画像の縮小倍率は元のページの「1/2」倍になり、配列されるサムネイル画像の数は縦横に2行2列、すなわち4ページに決定される。
【0025】
次に、CPU11は、算出した縮小倍率と、電子ペン2の位置である「位置P1」に基づいて、表示するページを選択する(ステップS19)。ここで、上述したように、1画面に配列されるページは4ページである。CPU11は、「位置P1」の左上のサムネイル画像A1を特定し、この元となるページを含めて4ページの画像を「表示するページ」として選択する。
【0026】
ページが選択されると、CPU11は、部分レイアウト処理を行う(ステップS20)。部分レイアウト処理とは、各ページからそれぞれ対応するサムネイル画像を生成するに際し、元となるページに文字が含まれている場合には、その冒頭の所定数の文字だけ、特定された縮小倍率に応じたレイアウト処理を行い、残りの文字については、文字がこの縮小倍率によって縮小された場合の大きさを示す一律の図形画像に置換するという処理である。ここでいう文字のレイアウト処理とは、文字を表示面のある範囲に当てはめることであり、具体的には、例えばその文字がビットマップフォントによる文字であれば、その文字のビットマップフォントを上記の縮小倍率で縮小してVRAM20に書き込むことなどである。図7は、この部分レイアウト処理を行った後の記憶性表示体21の表示面を示す図である。図に示すように、記憶性表示体21には、上述したサムネイル画像A1の元となるページを縮小倍率「1/2」で縮小してサムネイル画像B1として表示している。そして、記憶性表示体21には、このサムネイル画像B1から4ページのサムネイル画像Bm(m=1〜4)から構成されるサムネイル画像群Bが、2行2列に配列・表示されている。各サムネイル画像Bmの文字は、冒頭の所定数の文字のみ、各文字のレイアウト処理が施され、残りの文字については、当該縮小倍率で縮小された場合の文字の大きさを表す図形画像として「□」が表示されている。ここで、CPU11は、この残りの文字の数を特定し、特定した数と同数の図形画像「□」を、文書の記述方向(この例においては横書き)に沿って配列する。これにより、利用者は、ページ中の図形画像の量ないし数を参照することで、そのページの文字量をおおよそ把握することができる。
【0027】
次に、CPU11は、縮小倍率を固定する旨の倍率固定指示が検出されたか否かを判断する(ステップS21)。CPU11がこの倍率固定指示を検出する方法は種々存在する。例えば、CPU11は、内蔵されたタイマを用いることによって、周期的に算出した上記の縮小倍率をそれぞれ比較し、これらの縮小倍率の大きさが一定時間に亘り変化しなかった場合に、縮小倍率を固定する旨の指示として倍率固定指示を検出してもよい。つまり、利用者が電子ペン2と記憶性表示体21の表示面との距離を一定に保ったまま一定期間が経過すると、CPU11により倍率固定指示が検出されることになる。また、CPU11は、表示装置1の所定の操作ボタン18が利用者によって押されたことを倍率固定指示として検出してもよい。
倍率固定指示が検出されていないと判断した場合(ステップS21:NO)、CPU11は、電子ペン2が検出範囲内にあるか否かを判定するステップS13に処理を戻す。
【0028】
一方、倍率固定指示が検出されたと判断した場合(ステップS21:YES)、CPU11は、全体レイアウト処理を行う(ステップS22)。全体レイアウト処理とは、各サムネイル画像を生成するに際し、元となるページに文字が含まれている場合には、全部の文字について特定された縮小倍率に応じたレイアウト処理を行うという処理である。図8は、この全体レイアウト処理を行った後の記憶性表示体21における表示例を示す図である。図に示すように、記憶性表示体21には、上述したサムネイル画像Bmの全ての文字はレイアウト処理されている。以下、この全体レイアウト処理が施されたサムネイル画像をサムネイル画像Cm(m=1〜4)といい、これらサムネイル画像Cmから構成される画像をサムネイル画像群Cという。
上記のステップS22を経てCPU11の処理は終了する。そして、新たに、サムネイル画像の表示を指示する操作が行われると、サムネイル画像の表示指示がCPU11に入力され、上述したステップS11以降の処理が繰り返される。
【0029】
以上、説明した実施形態によれば、図6(a)に示したようなサムネイル画像Aが表示された後、電子ペン2が記憶性表示体21の表示面上に近づけられると、表示面から電子ペン2までの距離に応じた縮小倍率でサムネイル画像Bが表示される。サムネイル画像Bは、一部の文字についてレイアウト処理を行わず、それらの文字を、上記縮小倍率で縮小されたときの大きさを示す一律の画像で置換して表示いるため、文字のレイアウト処理にかかる計算時間が短縮され、すばやく表示を行うことができる。したがって、利用者は、縮小倍率をテンキーなどの入力手段により入力するといった煩雑な操作ではなく、表示装置1の表示面に電子ペン2を近づけたり遠ざけたりするという容易な操作によって、任意の縮小倍率で縮小されたサムネイル画像を、その概略がわかる程度の表示態様で表示させることができるので、直感的に文書の概要や所望の部分の詳細を知ることができる。また、この操作に伴って表示装置1に指示される縮小倍率は比較的高速に変動するが、サムネイル画像の内容の全てをこの縮小倍率に沿って縮小してレイアウトしようとすると、レイアウト処理の処理量に対して表示装置の処理能力が低い場合には、利用者の操作にレイアウト処理が追いつけず、その結果として利用者の操作に表示が追いつかない場合がある。しかし、上述のとおり、この表示装置1では、一部の文字についてレイアウト処理を行わないため、利用者の操作に追随した迅速な表示を行うことができ、利用者の直感的な操作感を損なうことがない。
そして、利用者が縮小倍率を固定する旨の操作を行うと、CPU11が倍率固定指示を検出し、記憶性表示体21の表示面には、全ての文字についてレイアウト処理を施したサムネイル画像Cmが表示される。サムネイル画像Cmは、全ての文字について、レイアウト処理が施されているので、利用者は所望の縮小倍率で全ての内容が縮小されたサムネイル画像Cmを表示させ、各ページの内容を詳細に知ることができる。
【0030】
[変形例]
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を適宜組み合わせてもよい。
(変形例1)
前述した実施形態において、ペン検出部19は、誘導電磁方式を用いて、記憶性表示体21の表示面上における電子ペン2の位置を特定するとともに、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2までの距離を測定していたが、これに限らない。例えば、ペン検出部19が、タッチパネル及び超音波センサであってもよい。この場合、タッチパネルは、記憶性表示体21の表示面上に配置される。また、この変形例では、必ずしも電子ペン2が用いられる必要はない。例えば、利用者の指が記憶性表示体21の表示面上に近づけられてもよい。この場合、利用者の指が指示手段としての役割を果たす。ペン検出部19は、タッチパネルを用いて記憶性表示体21の表示面上における指示手段の位置を特定するとともに、その表示面上における指示手段の接触位置を検出する。また、ペン検出部19は、超音波センサを用いて、記憶性表示体21の表示面に対して垂直に超音波を照射したときの反射を計測することにより、記憶性表示体21の表示面から指示手段までの距離を測定する。
【0031】
(変形例2)
前述した実施形態では、CPU11によってサムネイル画像が生成されていたが、これに限らない。例えば、予めサムネイル画像を表す画像データが記憶部14に記憶されていてもよい。この場合、CPU11は、前述したステップS20、S22において、サムネイルを表す画像データを記憶部14から読み出せばよい。
【0032】
(変形例3)
前述した実施形態では、利用者が電子ペン2と記憶性表示体21の表示面との距離を一定に保ったまま一定期間が経過すると、CPU11により倍率固定指示が検出されるようになっていた。すなわち、倍率特定手段であるCPU11により特定された縮小倍率の大きさが一定時間に亘り変化しなかった場合に、倍率固定指示が検出されていたが、他の条件が満たされた場合に、倍率固定指示が検出されてもよい。例えば、電子ペン2に設けた操作ボタンが押下された場合に、倍率固定指示が検出されてもよい。この場合、表示装置1および電子ペン2にそれぞれ赤外線などでデータをやり取りする通信部を設けるとともに、電子ペン2には縮小倍率を固定する旨の指示をするための操作ボタンを設けて、電子ペン2でこの操作ボタンが押下されたら、これに応じた信号が上記通信部により表示装置1に伝達されるようにすればよい。なお、この場合は、電子ペン2に設けた操作ボタンおよび表示装置1および電子ペン2にそれぞれ設けた通信部は、利用者の操作を受け付ける操作手段として機能する。
【0033】
また、前述した実施形態では、倍率特定部103として機能するCPU11が、サムネイル画像の縮小倍率を特定するに際して、所定のアルゴリズムに従って測定された距離から縮小倍率を算出していたが、他の方法によりサムネイル画像の縮小倍率を特定してもよい。例えば、記憶部14に、記憶性表示体21の表示面から電子ペン2までの距離と縮小倍率の対応関係を表したテーブルを記憶しておいてもよい。この場合、CPU11は、ペン検出部19によって測定された距離に対応する縮小倍率を、このテーブルを参照することにより特定すればよい。
【0034】
(変形例4)
前述した実施形態において、文書中の各文字について縮小倍率を変更してその変更後の各文字を表示領域中に配置するレイアウト処理についてのみ言及したが、レイアウト処理は文字だけに限られない。例えば、写真や図形などの他の画像に対する縮小処理もこのレイアウト処理に含まれる。すなわち、レイアウト処理は、表示装置1で表示する画像について縮小倍率を変更してその変更後の画像を表示領域中に配置する処理であればよい。
【0035】
(変形例5)
前述した実施形態において、CPU11がサムネイル画像群Bを表示させるにあたり、冒頭の所定数の文字を除く残りの文字については、その文字数に応じた数の図形画像に置き換えて表示していたが、この図形画像を置き換える数は、残りの文字の文字数と同じでなくてもよい。残りの文字の数や各文字の幅、高さなどの合計値から、残りの文字が占めるはずの領域を特定し、この領域に上述した図形画像を配置するようにしてもよい。また、このような置き換えの処理は、文字単位で行わなくてもよく、図形画像も「□」に限られない。例えば、文書が横書きであれば横線、縦書きであれば縦線を用いて表示してもよい。この場合、CPU11は、残りの文字の行数と文書の横書き/縦書きの別を認識し、残りの文字が表示されるべき領域にその行数に応じた横線ないし縦線を配置するようにすればよい。すなわち、残りの文字が表示されるべき領域を特定し、その領域を所定の図形画像で埋めるようにすればよい。
【0036】
(変形例6)
前述した実施形態において、ステップS21により、縮小倍率を固定する旨の倍率固定指示が検出されたと判断した場合には、CPU11は、全体レイアウト処理として、全部の文字について特定された縮小倍率に応じたレイアウト処理をしていたが、この際に全部の文字についてレイアウト処理をしなくてもよい。例えば、この全体レイアウト処理の前に行われた部分レイアウト処理で縮小処理された文字については、あらためてレイアウト処理を行わなくてもよい。具体的には、CPU11は、部分レイアウト処理の際に、各ページの画像の一部を、特定された縮小倍率で縮小して記憶性表示体21に表示させ、この一部以外の画像に替えてこの縮小倍率に応じた大きさの図形画像を表示する。そして、CPU11は、全体レイアウト処理の際には、部分レイアウト処理の際に上記の縮小を行って表示した一部は表示させたまま、図形画像を、その一部以外の画像をこの縮小倍率で縮小した画像に置き換えて表示すればよい。このようにすれば、CPU11は、一度縮小してレイアウト処理を行った一部について、改めて、レイアウト処理を行う必要がないので、処理時間を短縮することができる。
【0037】
(変形例7)
前述した実施形態において、ペン検出部19によって行われる処理は、CPU11がプログラムに従って実行してもよい。また、表示装置1のCPU11によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。なお、実施形態に記載したCPU11以外のモジュールが、そのCPU11に代わって、CPU11が行っていた処理の一部を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態に係る表示装置の外観を示す図である。
【図2】上記表示装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】上記表示装置のペン検出部が電子ペンを検出する仕組みを説明する図である。
【図4】上記表示装置の機能構成を示す図である。
【図5】上記表示装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図6】上記表示装置にて生成されるサムネイル画像の一例を示す図である。
【図7】上記表示装置で部分レイアウト処理を行った後の様子を示す図である。
【図8】上記表示装置で全体レイアウト処理を行った後の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1…表示装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…記憶部、15…電源、16…電源制御部、17…入出力部、18…操作ボタン、19…ペン検出部、20…VRAM、21…記憶性表示体、22…表示体制御部、101…距離測定部、102…位置特定部、103…倍率特定部、104…サムネイル画像表示制御部、105…倍率固定指示検出部、2…電子ペン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を有する表示手段と、
前記表示手段の表示面から利用者が操る操作子までの距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段によって測定された距離に応じて、文書データに含まれる各ページの画像を縮小して表示するときの縮小倍率を特定する倍率特定手段と、
前記倍率特定手段により特定された縮小倍率の大きさが変化した場合には、前記各ページの画像の一部を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、当該各ページの画像の全体を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる縮小画像表示制御手段と
を具備することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、前記倍率特定手段により特定された縮小倍率の大きさが一定時間に亘り変化しなかった場合には、前記各ページの画像の全体を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
利用者の操作を受け付ける操作手段を具備し、
前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、定められた操作が前記操作手段により受け付けられた場合には、前記各ページの画像の全体を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる場合において、当該一部以外の画像に替えて当該縮小倍率に応じた大きさの図形画像を表示する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記縮小画像表示制御手段は、前記各ページの画像の一部を前記縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させたまま、前記図形画像を、前記一部以外の画像を前記縮小倍率で縮小した画像に置き換えて表示することにより、前記各ページの画像の全体を前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
コンピュータを、
表示手段の表示面から利用者が操る操作子までの距離に応じて、文書データに含まれる各ページの画像を縮小して表示するときの縮小倍率を特定する倍率特定手段と、
前記倍率特定手段により特定された縮小倍率の大きさが変化した場合には、前記各ページの画像の一部を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させた後に、当該各ページの画像の全体を当該縮小倍率で縮小して前記表示手段に表示させる縮小画像表示制御手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−44583(P2010−44583A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208046(P2008−208046)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】