説明

表示装置及びプログラム

【課題】手書き入力の機能を備え、手書き入力を行う場合は、通常よりも早い書き換え制御を行うことで追従性のよい手書き入力を可能とした表示装置を提供する。
【解決手段】表示部と、書き換え信号として、第一波形の書き換え信号と第二波形の書き換え信号とにより表示内容の書き換えを行う表示制御部と、手書き入力用の操作子の接触位置を検出する位置検出部と、記憶部に記憶されている画像データの書き換えを行わせる通常表示指示と、検出した操作子の接触位置の表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示とを選択的に表示制御部に対して行う制御部と、を備え、第二波形の書き換え信号の信号幅は、第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短く、表示制御部は、手書き入力表示指示があったときには第二波形の書き換え信号を表示部に出力し、通常表示指示があったときには第一波形の書き換え信号を表示部に出力する表示装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、詳しくは、手書き入力の機能を備え、手書き入力を行う場合は、通常よりも早い書き換え制御を行うことで追従性のよい手書き入力を可能とした表示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型軽量で携帯性に優れ、ユーザが場所を選ばず電子書籍等を閲覧可能とした表示装置が知られている。このような表示装置は、省電力を図るために、表示部に電源からの電力の供給が断たれた状態でも表示された画像を維持する不揮発性表示部が用いられている。また、不揮発性表示部にタッチパネルを備え、ユーザによる手入力を可能とした表示装置も知られている。
【0003】
上記表示装置として、本願出願人は、不揮発性表示部とタッチパネルを一体として形成することで、透過性に優れた薄型のタッチパネルを備えた表示装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−026593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、不揮発性表示部を用いた表示装置では、液晶やブラウン管などと比較すると、新たな画像を表示するための書き換えに時間がかかってしまう。
【0006】
このため、タッチパネルを用いたユーザによる手入力を行うとき、例えば、文字や図形などの手書き入力を行う場合において、ユーザによる手書き入力に応じた軌跡を不揮発性表示部に表示するとき、手書き入力の速度に追従できずに、タイムラグが発生するという問題あった。
【0007】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、手書き入力時は、表示部の書き換え時間を短縮する制御を行うことにより、ユーザの手書きに対して追従性がよく、タイムラグの少ない表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、表示領域を有する表示部と、画素単位の書き換え信号として、第一波形の書き換え信号と第二波形の書き換え信号とを選択的に前記表示部に出力して、前記表示領域の表示内容の書き換えを行う表示制御部と、手書き入力用の操作子の前記表示領域上の接触位置を検出する位置検出部と、記憶部に記憶されている画像データに基づいて前記表示領域の表示内容の書き換えを行わせる通常表示指示と、前記検出した操作子の接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示とを選択的に前記表示制御部に対して行う制御部と、を備え、前記第二波形の書き換え信号の信号幅は、前記第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短く、前記表示制御部は、前記手書き入力表示指示があったときには前記第二波形の書き換え信号を前記表示部に出力し、前記通常表示指示があったときには前記第一波形の書き換え信号を前記表示部に出力することを特徴とする表示装置とした。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記制御部は、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始から接触の終了までの間、所定期間毎に、その所定期間での前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示を前記表示制御部に対して行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始からの前記接触位置を順次記憶する接触位置記憶部を備え、前記制御部は、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始から接触の終了までの間、所定期間毎に、前記接触位置記憶部に記憶されている前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示を前記表示制御部に対して行うことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、請求項1又は3に記載の表示装置において、前記操作子による前記表示領域上の接触が終了したことを検知する終了検知部を備え、前記制御部は、前記終了検知部で前記表示領域上の接触が終了したことが検知されると、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始から接触の終了までの前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の再書き換えを行わせるリフレッシュ指示を前記表示制御部に対して行い、前記表示制御部は、前記リフレッシュ指示があったときには、前記通常表示指示があったときの前記第一波形の書き換え信号を前記表示部に出力することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、表示領域を有する表示部に画素単位の書き換え信号を出力して、前記表示領域の表示内容の書き換え処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、記憶部に記憶されている画像データを取得して、前記画像データに基づいて前記表示領域の表示内容の書き換えを行う第1信号波形の書き換え信号を前記表示部に出力する第1ステップと、手書き入力用の操作子の前記表示領域上の接触位置を検出する位置検出部から前記接触位置の情報を取得し、前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行う第二信号波形の書き換え信号を前記表示部に出力する第2ステップと、を前記コンピュータに実行するようにしており、前記第二波形の書き換え信号の信号幅を、前記第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短くしたことを特徴とするプログラムとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手書き入力表示に用いられる第二波形の書き換え信号の信号幅を、通常表示に用いられる第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短くして、通常表示の書き換えよりも書き換えにかかる時間を短くする制御を行い、ユーザによる手書き入力に応じた入力データを表示する速度を速くして、手書き入力に対する追従性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の概観を示す説明図である。
【図2】表示装置の全体構成を示す模式図である。
【図3】表示装置の表示部における表示画素の配置を示す説明図である。
【図4】表示装置の表示部における表示画素の構造を示す断面図である。
【図5】表示装置の表示部における電気的構成を示す説明図である。
【図6】表示装置の表示部における印加電圧の波形を示す説明図である。
【図7】表示装置の手書き入力書換プログラムの流れを示す説明図である。
【図8】表示装置の表示部における通常手書きモードの表示例の説明図である。
【図9】表示装置の表示部における重ね書きモードの表示例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
[1.表示装置の概要]
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態の表示装置1の外観及び主な動作について説明する。図1は表示装置1の外観を示す説明図である。
【0017】
表示装置1は、平面視方形状で薄型の装置であり、図1に示すように、その正面には略A4サイズの大きさの表示部2が設けられている。この表示部2は、複数の画素を備えており、画素毎に印加される駆動信号の波形に応じて画素毎の表示色が制御される表示部であり、例えば、電気泳動表示パネルからなる。この電気泳動表示パネルは、所定の分散媒中に分散された帯電粒子を画素単位で電気泳動させることにより表示を行うことができ、電力の供給が断たれた場合であっても、その表示を維持することができるという特徴的な性質を有する。したがって、本表示装置1は電源がオフの状態であっても表示部2に維持された情報を視認することができる。また、表示部2に表示を維持するための電力供給を必要としないので省電力を図ることもできる。
【0018】
なお、本実施形態においては、表示部2を電気泳動表示パネルからなるものとして説明するが、表示の書き換えに時間のかかるものであればどのような方式の表示パネルを備えた表示装置にも用いることができる。なお、必ずしも表示部2が電力の供給されていない場合でも表示を維持するものである必要はなく、電力の供給が断たれた場合に表示を維持できない表示パネルなどにも適用が可能である。
【0019】
表示部2の表面には、表示部2の表示領域2aと略同サイズのタッチパネル3が設けられている。このタッチパネル3は、表示部2の表示領域2a上のタッチペン4の接触位置を検出する位置検出部であり、タッチペン4は、手書き入力用の操作子である。
【0020】
なお、本実施形態におけるタッチパネル3は、一般に使用されている周知のものであるが、以下簡単にその構造を説明する。タッチパネル3は、例えば、抵抗膜方式が用いられ、二枚の導電性の光を透過する薄膜(以下、透明電導膜という)に短冊状に電極を配線し、それを90度回転させた状態で、二枚の透明電導膜が接触しないように重ね合わせて配設している。そして、タッチパネル3をタッチペン4の接触により押圧すると、押圧された位置の電極が通電して、タッチペン4の接触位置が特定される構造としている。
【0021】
なお、タッチパネル3は、上記抵抗膜方式以外でも、例えば、静電容量方式のものを用いてもよいし、また、専用の電子ペンを操作子とし、かつ、タッチパネル3の代わりに、ドットパターンが印刷された透明シートを、表示部2の表面に貼り付けて、この電子ペンでドットパターンを読み取るようにしてもよい。つまり、ユーザによる表示部2の表示領域2aの接触位置を特定できるものであればよい。
【0022】
表示装置1の表面、表示部2の左側面には操作部7が設けられている。この操作部7は、書き込みON/OFFキー5、表示部2に画像データを表示させるための各種操作キー6などから構成される。
【0023】
上記構成の表示装置1において、本実施形態においては、ユーザが書き込みON/OFFキー5を操作するか、または、タッチパネル3へ専用のタッチペン4で接触させることで、手書き入力表示モードが作動する。以下、表示装置1の主な機能の一つである手書き入力表示モードの動作の概要を説明する。
【0024】
ユーザがタッチペン4を用いて、表示部2の表示領域2a上に配されたタッチパネル3へ接触させると、その接触位置情報をタッチパネル3が検出する。タッチパネル3が検出した接触位置情報は、後述のタッチパネルI/F18を介して、表示装置1の制御部としてのCPU10に通知される。CPU10は、この接触位置情報に応じて表示部2を書き換える。なお、この表示部2の書き換えについては、詳細は後述する。
【0025】
つまり、CPU10は、ユーザによるタッチパネル3へのタッチペン4の接触を検知すると、タッチパネル3が検出した接触位置情報と手書き入力表示指示を表示部2の表示制御を行う表示制御部14に指示する。これにより、タッチパネル3へのタッチペン4の接触位置情報に応じた表示部2の表示領域2aに、ユーザが手書きで入力した文字や図形が表示される。
【0026】
すなわち、図1に示すように、タッチパネル3にタッチペン4が接触したとき、最初に接触した位置を起点として、その後ユーザがタッチペン4を動かして接触位置を移動させた移動軌跡に応じた表示部2の表示領域2aにおいて、その移動軌跡が表示される。
【0027】
[2.表示装置の具体的構成]
次に、上述した表示装置1の具体的構成の一例を、図2を用いて説明する。
【0028】
[2.1 表示装置の全体構成]
まず、図2を参照して、表示装置1の全体構成について説明する。
【0029】
図2に示すように、表示装置1には、表示制御部14、表示部2、操作部7、充電制御部15、電池9、アダプタI/F19、メモリカードI/F16、メモリカード17、タッチパネルI/F18、タッチパネル3、CPU10、EEPROM11、RAM12、ROM13により構成される。
【0030】
ROM13には表示装置1を動作させる各種プログラムが記憶されており、プログラム記憶部としての機能を有する。CPU10は、ROM13から各種プログラムを読み出して実行することにより制御部として機能することで、表示装置1の全体の制御を司る。なお、詳細は後述するが、ユーザによる手書き入力に追従して、表示部2の書き換えを行う手書き入力書換プログラムも、ROM13に記憶されている各種プログラムの一つである。
【0031】
すなわち、詳細は後述するが、CPU10は、ROM13に記憶されている手書き入力書換プログラムを実行することで、表示制御部14に対してユーザによる手書き入力を表示部2に書き換えるための書換指示部、手書き入力の終了を制御する終了検知部として機能する。
【0032】
EEPROM11は、不揮発性のフラッシュメモリであり、表示装置1においてユーザが設定した各種設定データ等を記憶する。このEEPROM11は、表示装置1の電源を遮断しても各種設定データの記憶を保持できるため、ユーザが本表示装置1の電源を再投入して使用するときに、電源を遮断する前と同じ各種設定データに基づいて表示装置1を使用することができる。
【0033】
なお、各種プログラムをROM13に予め記憶させておくのではなく、メモリカードI/F16を介して、メモリカード17などの記憶媒体から各種プログラムを取り出してEEPROM11に記憶して、CPU10はEEPROM11に記憶された各種プログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0034】
RAM12は各種のデータを一時的に記憶するメモリであり、CPU10による制御処理時に用いられる。また、RAM12は、本実施形態におけるタッチパネルをユーザがタッチペンで接触した場合に、タッチパネル3へのタッチペン4の接触位置情報を記憶する接触位置記憶部を有している。
【0035】
操作部7は、上述したように各種操作ボタンを備え、各ボタンが、ユーザにより操作された場合に、所定の検出信号をCPU10に供給する。この各種操作ボタンのうち、ユーザによる書き込みON/OFFキー5の操作を検出すると、CPU10は、手書き入力モードの開始及び終了を制御する。
【0036】
表示制御部14は、表示部2への画像表示を制御する。この表示制御部14には、図5に示すように、後述する画素電極62につながるTFT40を動作させる後述のゲートドライバ20及びソースドライバ30を制御するためのFPGA、パネル駆動に必要な電源生成部(DC−DCコンバータなど)等が備えられている。なお、TFT40は画素電極62への電圧印加を行う。
【0037】
本実施形態における表示制御部14は、詳細は後述するが、CPU10からの指示に基づいて、書き換え信号を、表示部2を構成する各画素8(図3参照)へ出力して、表示部2の書き換えを行う。この書き換え信号として、書き換え前の画素に表示されている色と書き換え後の画素に表示する色とに応じた種類の書き換え信号がある。ここでは、画素に表示する色の階調を白、ライトグレー、ダークグレー、黒の4色としており、16種類の書き換え信号を含む書き換え信号群からなる。例えば、書き換え前の画素に表示されている色が黒の場合、黒→白、黒→ライトグレー、黒→ダークグレー、黒→黒の4種類の書き換え信号がある。さらに、表示制御部14は、複数の書き換え信号群のうち選択した書き換え信号群から書き換え信号を表示部2へ出力することができるようにしている。複数の書き換え信号群として、第一波形の書き換え信号群と第二波形の書き換え信号群があり、書換波形記憶部14aに記憶されている。
【0038】
充電制御部15は、図示しない外部電源からACアダプタ等がアダプタI/F19を介して接続されて電力供給を受けている場合には、外部電源からの電力で表示装置1を駆動すると共に電池9への充電を行う。一方、外部電源から電力供給を受けていない場合には、電池9の電力で駆動される。
【0039】
電池9は、所定の電池容量を持つ充電式のリチウムイオン電池などが用いられ、外部電源からの電力の供給が断たれている場合でも、所定時間表示装置1を使用可能としている。このように、表示装置1は充電式の電池9を備えることにより、電源がない場所でも使用可能である。
【0040】
メモリカード17には、例えば、複数の電子書籍のドキュメントファイルやそのタイトルデータが記憶されており、メモリカードI/F16は、メモリカード17から電子書籍のドキュメントファイルやそのタイトルデータの読み取り、書き込みを制御する。CPU10は、メモリカードI/F16を制御してメモリカード17から電子書籍のタイトルデータやドキュメントファイルなどの情報を読み取り、表示部2に表示させる制御を行う。
【0041】
すなわち、メモリカード17は、表示部2に表示するために電子書籍のタイトルデータやドキュメントファイルなどの情報を画像データとして記憶する記憶部である。また、制御部としてのCPU10は、記憶部であるメモリカード17から表示部2へ表示するための画像データを取得する画像データ取得部として機能する。なお、CPU10によるメモリカード17に記憶された画像データの表示部2への表示は、上述した手書き入力表示モードに対して、通常表示モードという。
【0042】
タッチパネル3は、表示部2の表示領域2aと略同サイズで表示部2の表面に配置される。タッチパネル3は、タッチペン4(図1参照)が接触した位置を接触位置情報としてタッチパネルI/F18を介してCPU10へ通知する。すなわち、タッチパネル3は、手書き入力用の操作子であるタッチペン4が、表示部2の表示領域2a上での接触位置を検出する位置検出部である。なお、このタッチパネル3へのユーザによるタッチペン4の接触を契機として上述した手書き入力表示モードが開始される。
【0043】
[2.2 表示部2の構成]
ここで、表示部2の物理的構成の概略について、図3及び図4を参照して説明する。図3は表示部2である電気泳動表示パネルの正面拡大図であり、図4は表示部2である電気泳動表示パネルのA−A線(図3)における矢視方向断面図である。
【0044】
表示部2は、電力供給が断たれても表示状態を保持することができる不揮発性の表示手段であり、ここでは電気泳動表示パネルで構成される。表示部2は、例えば1024×768個の画素8が配列されており、図3及び図4では説明の便宜上、一部の画素領域のみを図示している。
【0045】
図4に示すように電気泳動表示パネルは、その上面部分に設けられる上部基板50と、その下面部分に設けられる下部基板60とを対向状態に配置して、上部基板50と下部基板60との間に色表示領域70を形成することにより構成されている。
【0046】
上部基板50は、色表示領域70に電界を発生させる上部電極52と、上部電極52の下面側に絶縁材料を塗布等して形成した絶縁膜である上部電極保護膜51と、上部電極52の上面側に設けられて表示装置1の表示面として機能する表示層53とを備える。
【0047】
そして、上部電極保護膜51は、ポリエチレンテレフタレートなどの高い透明性及び高い絶縁性を発揮可能な樹脂フィルムにより形成される。また、上部電極52は、酸化インジウムすず(ITO)により形成された透明電極であり、透明なガラス基板で形成された表示層53に複数平行に形成され、一定の電圧が印加される。
【0048】
このように、上部電極保護膜51、上部電極52及び表示層53は透明体で形成されており、従って、上部基板50は利用者が表示面に垂直な方向(Z方向)から色表示領域70を視認可能な表示基板として機能する。
【0049】
下部基板60は、色表示領域70に電界を発生させる画素電極62と、画素電極62の上面側に絶縁材料を塗布等して形成した絶縁膜である画素電極保護膜61と、画素電極62の下面側に設けられて表示部2を支持する筐体支持基板63とを備える。
【0050】
そして、画素電極保護膜61は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムのように高い絶縁性を発揮可能な材料により形成される。また、画素電極62は、画素8毎に設けられ、後述する画素8内のTFT(Thin Film Transistor)のドレインにそれぞれ接続される。
【0051】
色表示領域70は、上下に対向して設けた上部基板50及び下部基板60と、その間に一定間隔を持って架設したスペーサー71とにより形成されている。すなわち、格子状の空間を多数形成した小区画セルとすることにより構成されており、色表示領域70中には、負に帯電した白色の帯電粒子33a(以下、「白色負帯電粒子33a」とも呼ぶ。)、正に帯電した黒色の帯電粒子33b(以下、「黒色正帯電粒子33b」とも呼ぶ。)及び分散媒34が充填される。
【0052】
スペーサー71は、格子状に複数の貫通孔が形成された板状部材として構成された可撓性部材であり、例えばポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂で構成される。
【0053】
また、帯電粒子33a,33bは、分散媒34中において帯電可能な材料が用いられ、有機化合物や無機化合物からなる顔料や染料、もしくは顔料や染料を合成樹脂で包んだものからなる。また、分散媒34としては、高絶縁性を発揮可能で、かつ粘性の低い、アルコール類,炭化水素,シリコーンオイルなどを利用できる。
【0054】
次に、図5を参照して、表示部2の電気的構成について説明する。
【0055】
図5に示すように、表示部2には、ゲートドライバ20、ソースドライバ30、ゲート線21、ソース線31、アンプ32、TFT40などが設けられている。CPU10から通知される各画素への印加する駆動信号の波形情報は、表示制御部14を介してソースドライバ30に通知され、ソースドライバ30で通知された波形情報に応じた駆動信号が出力される。
【0056】
ゲートドライバ20からは複数のゲート線21が、ソースドライバ30からはアンプ32を介して複数のソース線31が、それぞれ平行に延びている。また、ゲート線21とソース線31とは互いに交差して配設されており、各交差部ではゲート線21とソース線31にまたがってTFT40がそれぞれ設けられている。
【0057】
すなわち、各TFT40のゲートはゲート線21に接続され、ドレインはソース線31に接続されている。さらに、各TFT40のソースは、共通電極である上部電極52と画素電極62との間に構造上発生する画素容量41と、画素電極62に与える電圧を保持する動作の時定数を大きくするための保持容量42とに接続されている。
【0058】
ゲート線21にオン電圧が印加されていない場合は、そのゲート線21に接続された全てのTFT40はオフ状態となる。一方で、ゲートドライバ20によりゲート線21にオン電圧が印加されると、そのゲート線21に接続されている全てのTFT40がオン状態となる。このように、ゲート線21に印加する電圧を制御することで、TFT40のオン・オフの制御を行っている。
【0059】
そして、オン状態となっているTFT40に接続されているソース線31に、ソースドライバ30によりプラスの電圧が印加されると、このTFT40に接続された画素電極62にプラスの電圧が印加される。一方で、ソース線31に、ソースドライバ30によりマイナスの電圧が印加されると、このTFT40に接続された画素電極62にマイナスの電圧が印加される。上部電極52には、各画素共通の電圧(例えば0V)が印加されるため、画素電極62と上部電極52との間に電界が発生し、白色負帯電粒子33a及び黒色正帯電粒子33bが移動する。このように、アクティブマトリクス方式によると、1つ1つの画素の階調をそれぞれ独立に制御して画像を表示することができる。
【0060】
また、ゲートドライバ20により、その先頭行のゲート線21から最終行のゲート線21まで、順次オン電圧が印加されて、先頭行から最終行まで行単位で順次TFT40がアクティブされる。そして、各行の画素8にプラス又はマイナスの電圧を順次印加することで1フレームの書き換えが行われる。このように、表示部2では、フレーム単位で書き換えが行われる。
【0061】
[2.3 表示部2の階調表示]
次に、図4を参照して、表示部2の各画素8における階調表示の原理について説明する。図4は階調が異なる4つの画素8a〜8d内の状態を簡略化して示した断面図である。なお、本実施形態の表示装置1においては、黒色、ダークグレー、ライトグレー、白色の4つの階調を使い分けて画像を表示するが、この階調は、白色負帯電粒子33a及び黒色正帯電粒子33bの表示部2内での平均分布によって決定される。また、画像を表示するために使い分けることができる階調の数は4つに限られず、適宜変更が可能である。
【0062】
図4に示す画素8aのように階調を黒色とするためには、上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62側をプラスにし、十分に電界を発生させる。これにより、黒色正帯電粒子33bが上部基板50近傍に分布し、白色負帯電粒子33aが画素電極62近傍に分布して、黒色表示の状態となる。また、画素8dのように階調を白色とするためには、上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62側をマイナスにし、十分に電界を発生させる。これにより、黒色正帯電粒子33bが画素電極62近傍に分布し、白色負帯電粒子33aが上部電極52近傍に分布して、白色表示の状態となる。
【0063】
また、印加する電圧の大きさや印加時間を調節して、白色負帯電粒子33a及び黒色正帯電粒子33bを、上部電極52と画素電極62との中間位置の近傍に位置させると、上部電極52側からは白色負帯電粒子33a及び黒色正帯電粒子33bの両方が視認できるため、階調はグレーとなる。この場合、本実施の形態では、図6に示すダークグレーの画素8b及びライトグレーの画素8cのように、帯電粒子33a,33bの分布の度合いを変えることでダークグレーとライトグレーとを使い分けている。
【0064】
すなわち、表示装置1においては、黒色、ダークグレー、ライトグレー、白色の4つの階調を使い分けて表示部2に画像を表示するために、白色負帯電粒子33a及び黒色正帯電粒子33bの表示部2内での平均分布を制御して4つの階調を表示する複数の異なる波形の書き換え信号により構成されている。
【0065】
特に、本実施形態においては、通常表示モードで用いられる第一波形の書き換え信号群の書き換え信号(以下、第一波形ともいう)と、手書き入力表示モードで用いられる第二波形の書き換え信号群の書き換え信号(以下、第二波形ともいう)とを表示制御部14から表示部2を構成する各画素8に出力可能としている。そして、表示部2を構成する各画素8に表示されている黒色、ダークグレー、ライトグレー、白色の4つの階調の応じた複数の書き換え信号が、第一波形及び第二波形ごとにそれぞれ第一波形の信号群及び第二波形の信号群として、表示制御部14の書換波形記憶部14aに記憶されている。
【0066】
以下、図6を参照して、第一波形と第二波形について説明する。図6は、書換波形記憶部14aに第一波形の信号群及び第二波形の信号群として記憶されている複数の書き換え信号のうち、表示部2を構成する各画素8に表示されている黒色、ダークグレー、ライトグレー、白色の4つの階調から、黒に書き換えるときの第一波形及び第二波形の波形パターンと信号幅を示す図である。なお、以下で説明する第一波形及び第二波形の信号幅は、波形パターンを各画素8に印加する時間を意味し、換言すれば時間幅とも言える。
【0067】
図6(a)〜(d)に示すように、第一波形の信号幅t1と第二波形1の信号幅t2a及び第二波形2の信号幅t2bとを比較すると、第二波形1の信号幅t2a及び第二波形2の信号幅t2bは、第一波形の信号幅t1よりも短く設定されている。そして、手書き入力表示モードでは、信号幅の短い第二波形(第二波形1及び第二波形2)が用いられる。このため、表示部2の表示領域2aをフレーム単位で書き換える場合、第一波形を用いた書き換えよりも、比較的高速な書き換えができるので、ユーザの手書き入力に応じて表示部2に表示される手書き入力の軌跡の追従性を高めることができる。
【0068】
図6(a)に示すように、表示部2を構成する画素8を白→黒に書き換えるときの第一波形は、最初に上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62をプラスにし、十分に電界を発生させる。これにより、図4の画素8aに示すように黒色正帯電粒子33bが上部基板50近傍に分布し、白色負帯電粒子33aが画素電極62近傍に分布して、黒色表示の状態となる。次に、上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62をマイナスにし、十分に電界を発生させる。これにより、図4の画素8dに示すように黒色正帯電粒子33bが画素電極62近傍に分布し、白色負帯電粒子33aが上部電極52近傍に分布して、白色表示の状態となる。最後に、上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62をプラスにし、十分に電界を発生させる。これにより、図4の画素8aに示すように黒色正帯電粒子33bが上部基板50近傍に再度分布し、白色負帯電粒子33aが画素電極62近傍に再度分布して、黒色表示の状態となる。
【0069】
このように、図6(a)に示す第一波形では、上部電極52近傍への黒色正帯電粒子33bの移動及び画素電極62近傍への白色負帯電粒子33aの移動を繰り返すことにより、黒色正帯電粒子33bと白色負帯電粒子33aとの独立分離が促進されて、電界の発生にともなう帯電粒子33a,33bの移動を促進し、結果的に鮮明な黒色表示の状態を呈することができる。
【0070】
一方、第二波形は、図6(a)に示すように、第二波形1と第二波形2との2種類を形成する場合がある。まず、第二波形1は、上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62をプラスにして電界を発生させる。これにより、図4の画素8aに示すように黒色正帯電粒子33bが上部基板50近傍に分布し、白色負帯電粒子33aが画素電極62近傍に分布して、黒色表示の状態となる。つまり、第二波形1においては、黒色正帯電粒子33bを上部基板50近傍に分布させて黒色表示の状態とする電圧の印加を1回しか行わず、しかも、第一波形の信号幅t1と比較すると、第二波形1の信号幅t2aは相対的に短い。
【0071】
次に、図6(a)に示す第二波形2は、第一波形と同様に、上部電極52の電位を基準電位(0V)として画素電極62をプラス→マイナス→プラスと3回極性を変化させて、最終的に図4の画素8aに示すように、黒色正帯電粒子33bを上部基板50近傍に分布させて黒色表示の状態にする。また、第一波形の信号幅t1と比較すると、第二波形2の信号幅t2bは相対的に短い。
【0072】
従って、手書き入力表示モード時に第二波形1及び第二波形2を用いることで、表示部2への書き換え時間の短縮を図ることができ、ユーザの手書き入力に応じて表示部2に表示される手書き入力の軌跡の追従性を高めることができる。なお、当然のことながら、表示部2の画素8を第二波形1及び第二波形2で書き換えた場合は、第一波形の信号幅t1よりも第二波形1の信号幅t2a及び第二波形1の信号幅t2bは短いため、黒色正帯電粒子33bと白色負帯電粒子33aとの攪拌分離が十分でない分、第一波形で書き換えた場合と比較すると画質は劣る。
【0073】
また、図6(a)に示す第二波形1と第二波形2とを比較すると、第二波形2は、第一波形よりも短い信号幅ではあるが、画素8中の黒色正帯電粒子33bと白色負帯電粒子33aを攪拌分離しているため、第一波形よりは画質は劣るものの、手書き入力表示モードに第二波形2を用いたほうが、第二波形1を用いるよりも画質は優れている。
【0074】
なお、手書き入力表示モード時に、第二波形1及び第二波形2のいずれかを用いるかは、表示装置1における設定機能により、予めユーザが任意に設定して,EEPROM11の所定の領域に記憶されている。このように、本実施形態においては、ユーザが好む手書き入力表示モードに用いられる第二波形1又は第二波形2を選択可能としている。
【0075】
図6(b)〜(d)に示すように、ダークグレー、ライトグレー、黒の3つの階調から黒に書き換える時は、第一波形と第一波形よりも信号幅の短い第二波形(第二波形1及び第二波形2)は、それぞれの階調に応じて信号幅は異なるものの、同様な波形パターンが設定されている。従って、図6(a)と同様の波形による白色の帯電粒子33a及び黒色の帯電粒子33bの電界の変化にともなう黒色表示は既に述べたとおりであるため、説明は省略する。
【0076】
なお、画素8中の白色の帯電粒子33a及び黒色の帯電粒子33bの変化として、図6(b)では、図4に示す画素8cのライトグレーから画素8aの黒あるいは画素8dの白に変化させる波形パターン及び信号幅を示している。また、図6(c)では、図4に示す画素8bのダークグレーから画素8aの黒あるいは画素8dの白に変化する波形パターン及び信号幅を示している。また、図6(d)では、図4に示す画素8dの黒から画素8aの黒あるいは画素8dの白に変化する波形パターン及び信号幅を示している。
【0077】
また、図6(b)〜(d)に示すように、ダークグレー、ライトグレー、黒の3つの階調から黒に書き換える場合においても、上述した、図6(a)と同様に、第二波形1の信号幅t2a及び第二波形2の信号幅t2bは、第一波形の信号幅t1よりも短く設定されている。すなわち、第一波形よりも短時間の画素8への電圧の印加により、画素8中の白色の帯電粒子33a及び黒色の帯電粒子33bを変化させている。これにより、表示部2への書き換え時間の短縮を図り、手書き入力表示モードが行われるときの表示部2に表示される手書き入力の軌跡の追従性を高めている。
【0078】
[2.4 表示装置1の具体的動作]
次に、本実施形態における手書き入力表示モードを実行するための手書き入力の書換プログラムについて図7を参照して説明する。図7は手書き入力書換プログラムの流れを示す説明図である。
【0079】
なお、手書き入力の書換プログラムは、ユーザが操作部7の書き込みON/OFFキー5を操作して、ユーザによる手書き入力表示モードの実行開始が指示された場合、または、タッチパネル3に対するタッチペン4の接触を検出した場合に実行される。
【0080】
表示装置1のCPU10(以下、CPU10という)は、ステップS101において、タッチパネル3に対するユーザの手書き入力を検出したか否かを判断し、手書き入力を検出したと判断(ステップS101:YES)すると、CPU10は、ステップS102へ処理を移す。一方、手書き入力を検出していないと判断(ステップS101:NO)すると、CPU10はステップS110の処理を移す。
【0081】
このステップS101において、CPU10に判断される「手書き入力の検出」は、ユーザがタッチパネル3をタッチペン4で接触したときに、新たに発生する接触位置情報と、RAM12の所定の領域に記憶され、既に表示部2に表示済みの接触位置情報とを比較して、異なる接触位置情報を検出した場合に、ユーザによる新たなタッチパネル3への手書き入力がなされたと判断して、手書き入力表示モードが実行される。
【0082】
なお、タッチパネルI/F18を介してCPU10に送られる、タッチペン4による接触位置情報は、例えば、割り込みなどの機能を用い、図示しない位置情報取得プログラムを起動させて、CPU10が所定時間ごとにタッチパネルI/F18を介してタッチパネル3から取得される構成としている。
【0083】
ステップS102において、CPU10は、手書き入力表示モードが重ね書きモードであるか否かを判断する。そして、重ね書きモードであると判断(ステップS102:YES)すると、CPU10は、ステップS107へ処理を移す。一方、重ね書きモードではないと判断(ステップS102:NO)、ステップS103へ処理を移す。
【0084】
このステップS102において、CPU10に判断される重ね書きモードは、手書き入力表示モードの一つであり、表示装置1の設定機能でユーザによって予め選択設定される。つまり、本実施形態における手書き入力表示モードには、二つのモードが用意されており、一方の手書き入力表示モードは、ユーザの手書き入力の結果、新たに取得された接触位置情報に応じた手書き入力の軌跡のみを、表示部2へ表示する通常手書きモードである。
【0085】
他方の手書き入力表示モードは、ユーザの手書き入力の結果、タッチペン4がタッチパネル3に接触した接触位置情報を、最初の接触位置から接触位置記憶部に順次記憶しておき、一連の手書き入力が終了するまで、最初の接触位置から接触位置記憶部に順次記憶した接触位置情報を、繰り返し表示部2に表示する重ね書きモードである。
【0086】
また、この重ね書きモードは、接触位置記憶部に順次記憶した接触位置情報を繰り返し表示部2に表示するため、1回の手書き入力表示モードにおいては、図6に示す手書き入力表示の第二波形(第二波形1及び第二波形2)よりも、より信号幅の短い第二波形の書き換え信号を用いることができ、一層、ユーザの手書き入力に応じて表示部2に表示される手書き入力の軌跡の追従性を高くすることができる。
【0087】
ステップS103において、CPU10は、RAM12の所定の領域である接触位置記憶部に、タッチパネル3からタッチパネルI/F18を介して、CPU10に送られるタッチペン4の接触位置情報を記憶する。ステップS104において、CPU10は、RAM12の接触位置記憶部に記憶した接触位置情報を手書き入力情報として表示制御部14に送信するとともに、手書き入力表示指示を表示制御部14に送信する。これにより、表示制御部14は、図6に示す第一波形よりも信号幅の短い第二波形(第二波形1又は第二波形2)の信号を表示部2の画素8に印加して、CPU10から送られた手書き入力情報が表示部2に表示される。この処理が終了すると、CPU10は、ステップS105へ処理を移す。
【0088】
ステップS105において、CPU10は、手書き入力情報として表示制御部14に送信した接触位置情報を、表示済みデータとしてRAM12の所定の領域に記憶する。ステップS106において、CPU10は、RAM12の接触位置記憶部に記憶したタッチペン4の接触位置情報をクリアする。この処理が終了すると、CPU10は、ステップS110へ処理を移す。
【0089】
上記ステップS103〜ステップS105の処理は、上述した手書き入力表示モードのうちの通常手書きモードにおいて実行される処理であり、図8に示すように、ユーザの手書き入力に応じたタッチペン4の新たな軌跡が、表示部2に表示される。
【0090】
ステップS107において、CPU10は、RAM12の所定の領域である接触位置記憶部に、タッチパネル3からタッチパネルI/F18を介して、CPU10に送られるタッチペン4の接触位置情報を記憶する。この場合は、RAM12の接触位置記憶部に既に記憶され、表示部2に表示済みの接触位置情報に併せて今回の新しい接触位置情報が順次記憶される。この処理が終了すると、CPU10は、ステップS108に処理を移す。
【0091】
ステップS108において、CPU10は、RAM12の接触位置記憶部に記憶したタッチペン4の接触位置情報を、手書き入力情報として表示制御部14に送信するとともに、手書き入力表示指示を表示制御部14に送信する。これにより、表示制御部14は、図6に示す第一波形よりも信号幅の短い第二波形(第二波形1又は第二波形2)の信号又はこの第二波形よりも短い信号幅の波形を表示部2の画素8に印加して、CPU10から送られた手書き入力情報が表示部2に表示される。この処理が終了すると、CPU10は、ステップS109へ処理を移す。
【0092】
ステップS109において、CPU10は、手書き入力情報として表示制御部14に送信した接触位置情報を、表示済みデータとしてRAM12の所定の領域に記憶する。この処理が終了すると、CPU10は、ステップS110へ処理を移す。
【0093】
ここで、通常表示モードで第一波形の書き換え信号を用いる場合と、手書き入力表示モードで第二波形を用いる場合とにおける表示制御部14の動作を説明する。
【0094】
通常表示モードは、表示部2の表示領域2aのうち画像データを表示する領域を書き換えるページの書き換えである。表示制御部14は、表示部2を構成する全ての画素8の現在の色情報(以下、現在の色情報とする)を記憶しており、この現在の色情報と書き換えようとする画素8の色情報とに基づいて、書換波形記憶部14aに記憶されている第一波形の書き換え信号群のうちから第一波形の書き換え信号を選択し、選択した第一波形の書き換え信号をそれぞれ対応する画素8に印加して表示部2の書き換えを行う。
【0095】
手書き入力表示モードは、手書き入力情報に対応する座標位置の画素8のみを書き換える部分書き換えである。この手書き入力表示モードでは、表示制御部14は、表示部2を構成する各画素8の手書き入力開始直前の色情報を持っている。表示制御部14は、手書き入力情報及び手書き入力表示指示を受信すると、上記現在の色情報と手書き入力情報に含まれる書き換える対象となる画素8の座標位置の情報に基づいて、書換波形記憶部14aに記憶されている第二波形の書き換え信号群のうちから、第二波形の書き換え信号を選択して、選択した第二波形の書き換え信号をそれぞれ対応する画素8に印加して表示部2の書き換えを行う。
【0096】
また、手書き入力表示モードの一つである重ね書きモードでは、表示制御部14が持っている、既に書き換えられた手書き入力情報の位置の各画素8の手書き入力開始直前の色情報は、当然のことながら黒である。そのため、書換波形記憶部に記憶されている第二波形の書き換え信号群のうちからは、図6(d)に示す画素8を黒→黒に書き換える第二波形1又は第二波形2の書き換え信号のいずれかが選択され、選択した第二波形の書き換え信号がそれぞれ対応する画素8に印加される。このように、重ね書きモードでは、既に書き換えられた手書き入力情報の位置の各画素8には、繰り返し黒→黒に書き換える第二波形の書き換え信号が印加されるため、図9に示すように、既に書き換えられた手書き入力情報の位置の各画素8の濃度を書き換え回数が増えるほど濃くすることができる。
【0097】
本実施形態に係る表示装置1では、先頭行から最終行まで順次行走査を行うフレーム単位の書き換えであるが、書き換え信号の幅を短くすることにより、手書き入力表示モードにおける書き換えを通常表示モードよりも速く行うことができる。しかも、表示部2を構成する全ての画素8のうち、書き換える対象となる座標位置の画素8にしか書き換えのための電圧が印加されないため、省電力を図ることもできる。なお、フレーム単位の書き換えを行わずに、書き換える対象となる座標位置の画素8を選択して書き換えるようにすれば、さらに高速に表示部2の書き換えを行うことができる。
【0098】
上記ステップS107〜ステップS109の処理は、上述した重ね書きモードにおいて実行される処理であり、図9に示すように、ユーザの手書き入力に応じてRAM12の接触位置記憶部に順次記憶されたタッチペン4の接触位置情報が、一連の手書き入力が終了するまで表示部2に繰り返し表示される。
【0099】
すなわち、本実施形態においては、RAM12の接触位置記憶部に記憶した接触位置情報を、表示部2に表示する毎にクリアすることで、常に新たな手書き入力のみを表示部2に表示する通常手書きモードを実現し、一連の手書き入力が終了するまで、RAM12の接触位置記憶部に順次記憶した接触位置情報を保持して、繰り返し表示部2に表示することで重ね書きモードを実現している。
【0100】
ステップS110において、CPU10は、ユーザによる手書き入力の終了を検知したか否かを判断し、手書き入力の終了を検知していないと判断(ステップS110:NO)すると、CPU10は、ステップS101へ処理を移す。一方、手書き入力の終了を検知したと判断(ステップS110:YES)すると、CPU10は、ステップS111へ処理を移す。
【0101】
上記ステップS110で判断される手書き入力の終了の検知は、手書き入力表示モードを実行中に、ユーザが操作部7の書き込みON/OFFキー5を操作したとき、または、ユーザによる新たな手書き入力が所定時間(例えば、5分)行われなかったときを検知した場合であり、CPU10は、上記いずれかの条件を満たしたことを検知すると、ユーザのタッチペン4による表示領域2a上の接触が終了したと判定して、手書き入力表示モードは終了したと判断する。
【0102】
ステップS111において、CPU10は、表示部2のリフレッシュ処理を実行する。このリフレッシュ処理では、CPU10は、RAM12に所定の領域に記憶している表示済みデータを読み出して、表示制御部14に送信するとともに、図6に示す第一波形の信号で書き換えるリフレッシュ指示を表示制御部14に要求する。つまり、手書き入力表示モードにおいて、図6に示す第一波形よりも信号幅の短い第二波形(第二波形1又は第二波形2)の信号で書き換えられている表示部2の画素8を、通常表示モードで用いられる第一波形の信号を用いて、さらに書き換えることで、表示部2においてより鮮明に手書き入力情報を表示することができる。この処理が終了すると、CPU10は、ステップS112へ処理を移す。
【0103】
ステップS112において、CPU10は、手書き入力情報を、メモリカードI/F16を介して、メモリカード17の所定の領域に記憶する。ステップS113において、CPU10は、RAM12の接触位置記憶部に記憶したタッチペン4の接触位置情報と、RAM12に所定の領域に記憶している表示済みデータをクリアして、手書き入力書換プログラムを終了する。
【0104】
上述してきたように、手書き入力書換プログラムでは、CPU10は、ユーザによるタッチパネル3への手書き入力を検出すると、タッチペン4の接触位置情報に応じた表示部2の表示領域2aにおいて、手書き入力を表示するように表示制御部14に要求する。表示制御部14は、CPU10から送られた手書き入力情報としての接触位置情報と、手書き入力表示指示とに基づいて、表示制御部14の書換波形記憶部14aに記憶されている第一波形よりも信号幅の短い第二波形(第二波形1又は第二波形2)を用いて、手書き入力情報を表示部2へ表示する。
【0105】
この場合、表示部2の書き換えはフレーム単位で実行されるため、画素8単位で信号幅の短い第二波形の信号により書き換えを行うことで、書き換えを短時間で行えるため、ユーザが連続して手書き入力を行っても、ユーザによる手書き入力に応じて表示部2に表示される手書き入力の軌跡の追従性を損なうことがない。
【0106】
以下、手書き入力表示モードである通常手書きモード及び重ね書きモードにおける表示部2の表示例を、図8及び図9を参照して説明する。図8は通常手書きモードの表示例の説明図である。図9は重ね書きモードの表示例の説明図である。
【0107】
最初に、図8に示すように、手書き入力表示モードが通常手書きモードのときは、ユーザがタッチペン4を用いてタッチパネル3と接触させて、タッチペン4を動かした軌跡が表示部2に表示される。
【0108】
図8の(P1)〜(P10)は、ユーザが実際にタッチパネル3上でタッチペン4を動かした軌跡であり、(D1)〜(D10)は、ユーザの手書き入力に応じて実際に表示部2に表示される表示データを示している。
【0109】
つまり、通常手書きモードにおいては、タッチペン4がタッチパネル3に接触して、新たに得られた接触位置情報に応じた手書き入力の軌跡を表示部2へ表示する。そして、手書き入力が終了すると、表示部2のリフレッシュ処理が実行され、(D11)に示すように、表示部2に表示されている表示データを、図6に示す通常表示モードで用いられる第一波形の信号で書き換えることで、表示部2の表示データが鮮明となる。
【0110】
次に、図9に示すように、手書き入力表示モードが重ね書きモードのときは、ユーザがタッチペン4を用いてタッチパネル3と接触させて、タッチペン4を動かした軌跡を、一連の手書き入力が終了するまで繰り返し表示部2に表示される。
【0111】
図9の(P1)〜(P10)は、ユーザが実際にタッチパネル3上でタッチペン4を動かした軌跡であり、(D1)〜(D10)は、ユーザの手書き入力に応じて実際に表示部2に表示される表示データを示している。
【0112】
つまり、重ね書き入力モードは、一連の手書き入力が終了するまで、接触位置記憶部に順次記憶した接触位置情報を繰り返し表示部2に表示するため、最初に接触位置記憶部に記憶された接触位置情報は、繰り返し表示部2に重ね書きされて、その表示濃度が濃くなってゆく。そして、手書き入力が終了すると、表示部2のリフレッシュ処理が実行され、図9の(D11)に示すように、表示部2に表示されている手書き入力情報を、図6に示す通常表示モードで用いられる第一波形の信号で書き換えることで、表示部2の表示データが鮮明となる。
【0113】
以上、上述してきたように、本実施形態によれば、手書き入力表示モードで用いられる第二波形の書き換え信号の信号幅を、通常表示モードで用いられる第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短くして、ユーザによる手書き入力表示モードでは、通常表示モードの書き換えよりも書き換えにかかる時間を短くする制御が行われて、ユーザによる手書き入力に対する追従性を良くすることできる。これにより、ユーザによる二重書き込みや書き間違いを減少することができる。また、書き換えにかかる時間を短くすることで、消費電力も減少することができる。
【0114】
なお、本実施形態においては、手書き入力表示モードを実行する場合に、通常表示モードにおける第一波形よりも信号幅の短い第二波形(第二波形1又は第二波形2)を用いるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、通常表示モードにおいても、高速表示を行う場合に第二波形(第二波形1又は第二波形2)を用いてもよい。
【0115】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0116】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態の表示装置1によれば、以下の効果が期待できる。
【0117】
(1)表示領域2aを有する表示部2と、画素8単位の書き換え信号として、第一波形の書き換え信号と第二波形(第二波形1又は第二波形2)の書き換え信号とを選択的に表示部2に出力して、表示領域2aの表示内容の書き換えを行う表示制御部14と、手書き入力用の操作子としてのタッチペン4の表示領域2a上の接触位置を検出する位置検出部としてのタッチパネル3と、記憶部(メモリカード17)に記憶されている画像データに基づいて表示領域2aの表示内容の書き換えを行わせる通常表示指示と、検出したタッチペン4の接触位置に対応する表示領域2aの画素8の書き換えを行わせる手書き入力表示指示とを選択的に表示制御部14に対して行う制御部(例えば、CPU10,ROM13)と、を備え、第二波形の書き換え信号の信号幅は、第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短く、表示制御部14は、手書き入力表示指示があったときには第二波形の書き換え信号を表示部2に出力し、通常表示指示があったときには第一波形の書き換え信号を表示部2に出力する表示装置1としたので、例えば、ユーザによる手書き入力に対する追従性を良くすることができる。
【0118】
(2)制御部(例えば、CPU10,ROM13)は、タッチペン4による表示領域2a上の接触の開始から接触の終了までの間、所定期間毎に、その所定期間での接触位置に対応する表示領域2aの画素8の書き換えを行わせる手書き入力表示指示を表示制御部14に対して行うことしたので、例えば、ユーザによる手書き入力に対する追従性を良くすることができる。
【0119】
(3)タッチペン4による表示領域2a上の接触の開始からの接触位置を順次記憶する接触位置記憶部(例えば、RAM12)を備え、制御部(例えば、CPU10)は、タッチペン4による表示領域2a上の接触の開始から接触の終了までの間、所定期間毎に、接触位置記憶部に記憶されている接触位置に対応する表示領域2aの画素8の書き換えを行わせる手書き入力表示指示を表示制御部14に対して行うこととしたので、例えば、より信号幅の小さい第二波形を用いて、ユーザによる手書き入力に対する追従性を良くすることができる。
【0120】
(4)タッチペン4による表示領域2a上の接触が終了したことを検知する終了検知部(図7、ステップS110)を備え、制御部(例えば、CPU10)は、終了検知部で表示領域2a上の接触が終了したことが検知されると、タッチペン4による表示領域2a上の接触の開始から接触の終了までの接触位置に対応する表示領域2aの画素の再書き換えを行わせるリフレッシュ指示を表示制御部14に対して行い、表示制御部14は、リフレッシュ指示があったときには、通常表示指示があったときの第一波形の書き換え信号を表示部に出力することとしたので、例えば、手書き入力に応じた画質の劣るデータが表示されていた場合でも、最終的に通常表示における第一波形の書き換え信号で表示中のデータを書き換えるため、表示データの画質を安定させることができる。
【0121】
(5)表示領域2aを有する表示部2に画素8単位の書き換え信号を出力して、表示領域2aの表示内容の書き換え処理をコンピュータ(例えば、CPU10)に実行させるプログラムにおいて、記憶部(メモリカード17)に記憶されている画像データを取得して、画像データに基づいて表示領域2aの表示内容の書き換えを行う第一波形の書き換え信号を表示部に出力する第1ステップと、タッチペン4の表示領域2a上の接触位置を検出するタッチパネル3から接触位置の情報を取得し、接触位置に対応する表示領域2aの画素8の書き換えを行う第二信号波形の書き換え信号を表示部2に出力する第2ステップと、をコンピュータに実行するようにしており、第二波形の書き換え信号の信号幅を、第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短くしたプログラムとしたので、例えば、ユーザによる手書き入力に対する追従性を良くすることができるプログラムを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0122】
1 表示装置
2 表示部
3 タッチパネル
4 タッチペン
5 書き込みON/OFFキー
7 操作部
10 CPU
11 EEPROM
12 RAM
13 ROM
14 表示制御部
15 充電制御部
16 メモリカードI/F
17 メモリカード
18 タッチパネルI/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有する表示部と、
画素単位の書き換え信号として、第一波形の書き換え信号と第二波形の書き換え信号とを選択的に前記表示部に出力して、前記表示領域の表示内容の書き換えを行う表示制御部と、
手書き入力用の操作子の前記表示領域上の接触位置を検出する位置検出部と、
記憶部に記憶されている画像データに基づいて前記表示領域の表示内容の書き換えを行わせる通常表示指示と、前記検出した操作子の接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示とを選択的に前記表示制御部に対して行う制御部と、を備え、
前記第二波形の書き換え信号の信号幅は、前記第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短く、
前記表示制御部は、前記手書き入力表示指示があったときには前記第二波形の書き換え信号を前記表示部に出力し、前記通常表示指示があったときには前記第一波形の書き換え信号を前記表示部に出力する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始から接触の終了までの間、所定期間毎に、その所定期間での前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示を前記表示制御部に対して行う
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記操作子による前記表示領域上の接触の開始からの前記接触位置を順次記憶する接触位置記憶部を備え、
前記制御部は、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始から接触の終了までの間、所定期間毎に、前記接触位置記憶部に記憶されている前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行わせる手書き入力表示指示を前記表示制御部に対して行う
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項4】
前記操作子による前記表示領域上の接触が終了したことを検知する終了検知部を備え、
前記制御部は、前記終了検知部で前記表示領域上の接触が終了したことが検知されると、前記操作子による前記表示領域上の接触の開始から接触の終了までの前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の再書き換えを行わせるリフレッシュ指示を前記表示制御部に対して行い、
前記表示制御部は、前記リフレッシュ指示があったときには、前記通常表示指示があったときの前記第一波形の書き換え信号を前記表示部に出力する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
表示領域を有する表示部に画素単位の書き換え信号を出力して、前記表示領域の表示内容の書き換え処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
記憶部に記憶されている画像データを取得して、前記画像データに基づいて前記表示領域の表示内容の書き換えを行う第一波形の書き換え信号を前記表示部に出力する第1ステップと、
手書き入力用の操作子の前記表示領域上の接触位置を検出する位置検出部から前記接触位置の情報を取得し、前記接触位置に対応する前記表示領域の画素の書き換えを行う第二信号波形の書き換え信号を前記表示部に出力する第2ステップと、を前記コンピュータに実行するようにしており、
前記第二波形の書き換え信号の信号幅を、前記第一波形の書き換え信号の信号幅よりも短くしたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−180789(P2011−180789A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43550(P2010−43550)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】