説明

表示装置

【課題】表示輝度を向上することが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層71及び72と、これら一対の選択反射層71及び72の間に配置され第1電極60と第2電極66との間に所定波長を主波長とする光を発光する有機活性層64を備えた有機EL素子40と、を備え、一対の選択反射層71及び72間の実質的な光路長が所定波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置に係り、特に、複数の自発光性素子によって構成された表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置に搭載可能な自己発光素子として代表的な有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子は、それに適用される有機発光材料が実用域に達し、低消費電力、広視野角、薄型軽量などの特徴を有する表示素子として注目されている。
【0003】
一般的な有機EL素子は、第1電極と第2電極との間に発光層を保持した構造を有している。このような構造の有機EL素子では、発光層で発光した光の一部は、例えば第2電極から観察者側に向けて出射され、発光層から第1電極側に向かって出射された光の一部は第1電極にて第2電極に向けて反射される。
【0004】
しかしながら、こうした構造の有機EL素子の場合、第1電極の反射率が高いほど、コントラスト特性を低下させてしまう。すなわち、発光層を発光させない状態つまり黒表示状態で外光が入射すると、第1電極にて外光を反射してしまうので、黒表示の黒レベルが劣化してしまう。また、発光層を発光させた状態で外光が入射した場合も、外光が表示画面に映り込んでしまいコントラストを低下させてしまう。
【0005】
このような問題を回避するには、第1電極の反射率を下げる方法(極端に言えばゼロに近づける)や、外光の反射成分を円偏光板にて吸収する方法が考えられている。後者の方法は、次のような原理でコントラストを改善しようとするものである。
【0006】
すなわち、有機EL素子の第2電極側から入射した外光は、偏光板及び4分の1波長板を透過することにより例えば右回りの円偏光となる。この右円偏光は、基板界面や第1電極にて反射されると、右円偏光の位相が180度ずれるため、左回りの円偏光となる。この左円偏光は、4分の1波長板を透過すると入射したときとは直交する方位の直線偏光となる。このため、この直線偏光は、偏光板の吸収軸と平行であり、偏光板にて吸収される。
【0007】
したがって、第1電極の反射率に関係なく外光は第1電極にて反射されないのと同様の効果を得る。また、同様の効果は第1電極に限らず、基板界面での誘電反射や配線電極での反射に対しても有効なので、偏光板及び4分の1波長板を設けない場合と比較して、コントラスト特性の改善が可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−127885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発光層にて発光した光も右円偏光及び左円偏光を含んでおり、右円偏光は偏光板を透過するが、左円偏光は偏光板にて吸収される。つまり、発光層を出射した光のうち少なくとも50%は偏光板で吸収される。このため、表示輝度自体が低下するという問題が生ずる。現状実用化されている偏光板を用いた場合、偏光板及び4分の1波長板を設けない場合と比較して、約56%程度の表示輝度が低下する。
【0009】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、表示輝度を向上することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の様態による表示装置は、
所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層と、
これら一対の選択反射層の間に配置され、一対の電極間に前記所定波長を主波長とする光を発光する発光層を備えた表示素子と、を備え、
前記選択反射層間の実質的な光路長が前記所定波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする。
【0011】
この発明の第2の様態による表示装置は、
所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層と、
これら一対の選択反射層の間に配置され、一対の電極間に白色光を発光する発光層を備えた表示素子と、を備え、
前記選択反射層のそれぞれは、赤色光、緑色光、及び、青色光の主波長の第1円偏光を反射する機能を有するとともに、
赤色画素に対応して配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が赤色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
緑色画素に対応して配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が緑色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
青色画素に対応して配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が青色光の主波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする。
【0012】
この発明の第3の様態による表示装置は、
所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層と、
これら一対の選択反射層の間に配置され、一対の電極間に赤色光を発光する発光層を備えた赤色表示素子、一対の電極間に緑色光を発光する発光層を備えた緑色表示素子、及び、一対の電極間に青色光を発光する発光層を備えた青色表示素子を有した表示素子部と、を備え、
前記選択反射層のそれぞれは、赤色光、緑色光、及び、青色光の主波長の第1円偏光を反射する機能を有するとともに、
前記赤色表示素子を配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が赤色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
前記緑色表示素子を配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が緑色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
前記青色表示素子を配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が青色光の主波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、表示輝度を向上することが可能な表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0015】
有機EL表示装置1は、図1及び図2に示すように、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100と、アレイ基板100の少なくとも表示エリア102を密封する封止体200とを備えて構成されている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PX(R、G、B)によって構成されている。
【0016】
各画素PX(R、G、B)は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離し、かつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10と、画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを備えている。これら画素スイッチ10及び駆動トランジスタ20は、例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここでは、半導体層にポリシリコンを用いている。
【0017】
各画素PX(R、G、B)は、表示素子としての有機EL素子40(R、G、B)をそれぞれ備えている。すなわち、赤色画素PXRは、赤色波長に対応した光を出射する。緑色画素PXGは、緑色波長に対応した光を出射する。青色画素PXBは、青色波長に対応した光を出射する。これら各画素PX(R、G、B)は、図示しない隔壁によって分離されている。
【0018】
各画素PX(R、G、B)に配置された有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構成であり、画素PX毎に独立島状に形成された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素PXに共通に形成された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された有機活性層64と、によって構成される。
【0019】
また、アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymに走査信号を供給する走査線駆動回路107の少なくとも一部と、信号線Xnに映像信号を供給する信号線駆動回路108少なくとも一部と、を備えている。
【0020】
すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。画素スイッチ10は、ここでは走査線Ymと信号線Xnとの交差部近傍に配置されている。駆動トランジスタ20は、有機EL素子40と直列に接続されている。蓄積容量素子30は、画素スイッチ10と直列に、且つ駆動トランジスタ20と並列に接続されており、蓄積容量素子30の両電極は、駆動トランジスタ20のゲート電極及びソース電極にそれぞれ接続されている。
【0021】
電源供給線Pは、表示エリア102の周囲に配置された図示しない第1電極電源線に接続されている。有機EL素子40の第2電極66側端は、表示エリア102の周囲に配置されコモン電位ここでは接地電位を供給する図示しない第2電極電源線に接続されている。
【0022】
また、画素スイッチ10のゲート電極は走査線Ymに接続され、ソース電極は信号線Xnに接続され、ドレイン電極は蓄積容量素子30の一端及び駆動トランジスタ20のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタ20のソース電極は蓄積容量素子30の他端及び電源供給線Pに接続され、ドレイン電極は有機EL素子40の第1電極60に接続されている。
【0023】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る有機EL表示装置1は、図2に示すように、配線基板120上に配置された表示素子部4を備えている。この表示素子部4は、図1に示したように、赤色画素PXRに配置され赤色波長に対応した光を発光する有機EL素子(赤色表示素子)40R、緑色画素PXGに配置され緑色波長に対応した光を発光する有機EL素子(緑色表示素子)40G、及び、青色画素PXBに配置され青色波長に対応した光を発光する有機EL素子(青色表示素子)40Bを有している。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)、各種絶縁膜などを備えて構成されたものとする。
【0024】
第1電極60は、配線基板120の表面に配置される。この第1電極60は、ここではITO(Indium Tin Oxide:インジウム・ティン・オキサイド)やIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)などの光透過性を有する導電部材によって形成され、陽極として機能する。
【0025】
有機活性層64は、少なくとも発光機能を有する有機化合物を含み、第1電極60上において各色共通に形成されるホールバッファ層、エレクトロンバッファ層、及び各色画素に形成される有機発光層を含む多層積層で構成されても良く、機能的に複合された複数層または単層で構成されても良い。例えば、ホールバッファ層は、陽極および有機発光層間に配置され、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体などの薄膜によって形成される。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有する有機化合物によって形成される。この発光層は、例えば高分子系の発光材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などの薄膜により構成される。
【0026】
第2電極66は、有機活性層64上に各有機EL素子40に共通に配置される。この第2電極66は、例えばLi(リチウム)、Cs(セシウム)、Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)、Ag(銀)、Yb(イッテルビウム)などの電子注入機能を有する金属膜によって形成され、陰極として機能している。この第2電極66は、陰極として機能する金属膜の表面をカバーメタルで被覆した2層構造であっても良い。カバーメタルは、例えばアルミニウムによって形成される。
【0027】
このように構成された有機EL素子40では、第1電極60と第2電極66との間に挟持された有機活性層64に電子及びホールを注入し、これらを再結合させることにより励起子を生成し、この励起子の失活時に生じる所定波長の光放出により発光する。すなわち、各画素PX(R、G、B)を構成する有機EL素子40は、有機活性層(発光層)64からそれぞれ異なる主波長のEL発光を放出する。例えば、赤色画素PXRの有機EL素子40Rは、赤色の主波長(620nm付近)を有する光を発光し、緑色画素PXGの有機EL素子40Gは、緑色の主波長(550nm付近)を有する光を発光し、青色画素PXBの有機EL素子40Bは、青色の主波長(440nm付近)を有する光を発光し、これらによってカラー表示及び白黒表示を可能としている。
【0028】
第1実施形態に係る有機EL表示装置においては、有機活性層64からのEL発光は、アレイ基板100の下面側すなわち第1電極60側及び上面側すなわち第2電極66側から出射可能である。
【0029】
また、図2に示すように、有機EL表示装置1は、一対の選択反射層すなわち第1選択反射層71及び第2選択反射層72を備えている。これら一対の選択反射層71及び72は、基本的に同一構成であり、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光(例えば右円偏光)を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光(例えば左円偏光)を透過する。
【0030】
第1選択反射層71は、配線基板120と有機EL素子40との間に配置されている。第2選択反射層72は、第1選択反射層71との間に有機EL素子40を挟持するように配置されている。つまり、各色に発光する有機EL素子40(R、G、B)を有した表示素子部4は、一対の選択反射層71及び72の間に配置されている。なお、第2選択反射層72の表面は、保護フィルム80によって保護される。
【0031】
これらの選択反射層71及び72は、有機活性層64の発光波長に応じて、それぞれ所定の発光に対して選択反射を行うように、RGBごとに別途に形成される。
【0032】
例えば、青色画素PXBの有機活性層64から出射されるEL発光の主波長λ(1)は、440nm付近に存在する。また、緑色画素PXGの有機活性層64から出射されるEL発光の主波長λ(2)は、550nm付近に存在する。さらに、赤色画素PXRの有機活性層64から出射されるEL発光の主波長λ(3)は、620nm付近に存在する。
【0033】
したがって、この第1実施形態では、選択反射層71及び72は、それぞれ3個の選択反射波長域を有するように構成されている。すなわち、選択反射層71及び72のそれぞれは、図3に示すように、第1反射層SR1、第2反射層SR2、及び、第3反射層SR3を備えている。
【0034】
第1反射層SR1は、主波長λ(1)に対応する第1螺旋ピッチP(1)で配列された液晶分子を含んでいる。この第1反射層SR1は、主波長λ(1)を含む所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する。
【0035】
第2反射層SR2は、主波長λ(2)に対応する第2螺旋ピッチP(2)で配列された液晶分子を含んでいる。この第2反射層SR2は、主波長λ(2)を含む所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する。なお、第2螺旋ピッチP(2)は、第1螺旋ピッチP(1)より大きく設定されている。
【0036】
第3反射層SR3は、主波長λ(3)に対応する第3螺旋ピッチP(3)で配列された液晶分子を含んでいる。この第3反射層SR3は、主波長λ(3)を含む所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する。なお、第3螺旋ピッチP(3)は、第2螺旋ピッチP(2)より大きく設定されている。
【0037】
各反射層SR(1,2,3)は、螺旋ピッチの異なるコレステリック液晶層を備えて構成されている。すなわち、各反射層SR(1,2,3)ともに、図示するように液晶分子(一般的にはネマティック液晶分子)LMが水平面方向(各反射層の主平面に平行な方向)に配列し、かつ法線方向(層厚方向;各反射層の主平面に対して垂直な方向)に捩れを持って配列している。上述した各反射層SR(1,2,3)の螺旋ピッチとは、液晶分子LMが1回転する各反射層の層厚方向の長さに相当する。ここでは、螺旋ピッチは、短い順に、P(1)、P(2)、P(3)としてある。
【0038】
このような反射層SR(1,2,3)は、コレステリック液晶層、コレステリック液晶層をポリマー化させたもの、若しくは、コレステリック液晶層をフィルム化させたもののいずれかによって構成されることが望ましい。
【0039】
各反射層SR(1,2,3)の螺旋ピッチは、液晶材料や液晶分子を配向するためのカイラル材の種類を適宜最適な組み合わせで選択することで制御可能であるし、同一カイラル材を用いた場合であってもカイラル材の濃度を調整することでも制御可能である(濃度が高いほど螺旋ピッチが短い)。
【0040】
なお、選択反射層71及び72を構成する各反射層SR(1,2,3)の平均屈折率n(k)(=({ne(k)+no(k)}/2)1/2;但し、異常光線波長λe>常光線波長λo)と螺旋ピッチP(k)を乗じた値n(k)P(k)が主波長λ(k)と略等しくすることが望ましい。このように設定することにより、発光光のスペクトルと選択反射層の反射率波長分散とがほぼ一致するため、選択反射層71及び72における液晶分子LMの螺旋方向と同じ回転方向の円偏光のうち、有機活性層64から出射されるEL発光の主波長付近の円偏光が選択反射層71及び72によって反射される。
【0041】
上述したような構成の第1実施形態においては、第1選択反射層71と第2選択反射層72との間の実質的な光路長は、所定波長のn/2倍(nは整数)に設定されている。ここで、実質的な光路長とは、一対の選択反射層71及び72の間に配置されるそれぞれの層(例えば第1電極60、有機活性層64、第2電極66、その他の絶縁層など)の厚みと所定波長に対する屈折率とを乗じた値の和に相当する。
【0042】
青色画素PXBにおいては、有機EL素子40Bなどを挟持する一対の選択反射層71及び72間の実質的な光路長は、有機EL素子40Bから出射される青色光の主波長λ(1)のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0043】
緑色画素PXGにおいては、有機EL素子40Gなどを挟持する一対の選択反射層71及び72間の実質的な光路長は、有機EL素子40Gから出射される緑色光の主波長λ(2)のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0044】
赤色画素PXRにおいては、有機EL素子40Rなどを挟持する一対の選択反射層71及び72間の実質的な光路長は、有機EL素子40Rから出射される赤色光の主波長λ(3)のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0045】
上述したような設定により、各色画素PX(R、G、B)において、有機EL素子40から出射されたEL発光の一部は、一対の選択反射層71及び72の間で共振し、マイクロキャビティ効果により増幅される。すなわち、有機EL素子40から出射されたEL発光は、右円偏光及び左円偏光を含んでいる。このうち、左円偏光は、一対の選択反射層71及び72を透過するため、表示に寄与する。一方、右円偏光は、一対の選択反射層71及び72によって反射される。このとき、一対の選択反射層71及び72の間の実質的な光路長が有機EL素子40から出射された右円偏光の主波長のn/2倍(nは整数)に設定されているため、右円偏光は一対の選択反射層71及び72の間で共振し、増幅される。そして、マイクロキャビティ効果により増幅された高輝度な右円偏光のうち、一対の選択反射層71及び72による反射条件から外れた光(偏光状態が右円偏光とは異なる状態となった光)が一対の選択反射層71及び72を透過し、表示に寄与する。したがって、上述した第1実施形態に係る有機EL表示装置装置によれば、表示輝度を向上することが可能となる。
【0046】
なお、上述した第1実施形態に係る表示装置においては、EL発光は、アレイ基板100の下面側及び上面側から出射可能であるが、一方の側を主出射面としても良い。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成要素については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態に係る有機EL表示装置1は、図4に示すように、配線基板120上に配置された有機EL素子40を備えている。この有機EL素子40は、赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBにそれぞれ配置され、第1電極60と第2電極66との間に白色光を発光する有機活性層64を備えている。この第2実施形態に係る有機EL表示装置においては、有機活性層64からのEL発光は、アレイ基板100の下面側すなわち第1電極60側から出射されるものとする。
【0048】
また、図4に示すように、有機EL表示装置1は、一対の選択反射層すなわち選択反射カラーフィルタ層73及び第2選択反射層72を備えている。これら一対の選択反射層73及び72は、所定波長の第1円偏光(例えば右円偏光)を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光(例えば左円偏光)を透過する。
【0049】
選択反射カラーフィルタ層73は、配線基板120と有機EL素子40との間に配置され、赤色光、緑色光、及び、青色光の主波長の第1円偏光を反射する機能を有している。すなわち、選択反射カラーフィルタ層73は、青色画素PXBに対応して青色光の主波長λ(1)(例えば440nm付近)の第1円偏光を反射する青色反射部73B、緑色画素PXGに対応して緑色光の主波長λ(2)(例えば550nm付近)の第1円偏光を反射する緑色反射部73G、及び、赤色画素PXRに対応して赤色光の主波長λ(3)(例えば620nm付近)の第1円偏光を反射する赤色反射部73Rを有している。
【0050】
この選択反射カラーフィルタ層73は、図3示すように、第1反射層SR1、第2反射層SR2、及び、第3反射層SR3を備えている。
【0051】
すなわち、青色反射部73Bは、主に第1反射層SR1によって構成され、主波長λ(1)に対応する第1螺旋ピッチP(1)で配列された液晶分子を含んでいる。この第1反射層SR1は、主波長λ(1)を含む所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する。
【0052】
緑色反射部73Gは、主に第2反射層SR2によって構成され、主波長λ(2)に対応する第2螺旋ピッチP(2)で配列された液晶分子を含んでいる。この第2反射層SR2は、主波長λ(2)を含む所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する。なお、第2螺旋ピッチP(2)は、第1螺旋ピッチP(1)より大きく設定されている。
【0053】
赤色反射部73Rは、主に第3反射層SR3によって構成され、主波長λ(3)に対応する第3螺旋ピッチP(3)で配列された液晶分子を含んでいる。この第3反射層SR3は、主波長λ(3)を含む所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する。なお、第3螺旋ピッチP(3)は、第2螺旋ピッチP(2)より大きく設定されている。
【0054】
第2選択反射層72は、第1実施形態と同様に構成されている。なお、第2選択反射層72の表面は、保護フィルム80によって保護される。
【0055】
また、第2実施形態に係る有機EL表示装置1は、有機活性層64で発光した光の主出射面側に位置する選択反射層の表面に光吸収層90を備えている。すなわち、光吸収層90は、選択反射カラーフィルタ層73と配線基板120との間に配置され、赤色光、緑色光、及び、青色光の主波長の光を吸収する機能を有している。すなわち、光吸収層90は、青色画素PXBに対応して緑色光及び赤色光を吸収するとともに青色光を透過する青色透過部90B、緑色画素PXGに対応して青色光及び赤色光を吸収するとともに緑色光を透過する緑色透過部90G、及び、赤色画素PXRに対応して青色光及び緑色光を吸収するとともに赤色光を透過する赤色透過部90Rを有している。
【0056】
上述したような構成の第2実施形態においても第1実施形態と同様に、一対の選択反射層73及び72の間の実質的な光路長は、所定波長のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0057】
青色画素PXBにおいては、有機EL素子40などを挟持する選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間の実質的な光路長は、青色光の主波長λ(1)のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0058】
緑色画素PXGにおいては、有機EL素子40などを挟持する選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間の実質的な光路長は、緑色光の主波長λ(2)のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0059】
赤色画素PXRにおいては、有機EL素子40などを挟持する選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間の実質的な光路長は、赤色光の主波長λ(3)のn/2倍(nは整数)に設定されている。
【0060】
上述したような設定により、各色画素PX(R、G、B)において、有機EL素子40から出射された白色のEL発光の一部は、選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間で共振し、マイクロキャビティ効果により増幅される。すなわち、有機EL素子40から出射されたEL発光は、右円偏光及び左円偏光を含んでいる。このうち、左円偏光は、一対の選択反射層73及び72を透過するため、表示に寄与する。一方、右円偏光は、一対の選択反射層73及び72によって反射される。
【0061】
このとき、青色画素PXBにおいては、選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間の実質的な光路長が青色光の主波長のn/2倍(nは整数)に設定されているため、青色の右円偏光は選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間で共振し増幅される。そして、マイクロキャビティ効果により増幅された高輝度な青色の右円偏光のうち、選択反射カラーフィルタ層73及び第2選択反射層72による反射条件から外れた光が選択反射カラーフィルタ層73の青色反射部73Bを透過した後に、光吸収層90の青色透過部90Bを透過し、表示に寄与する。また、青色画素PXBにおいては、赤色光及び緑色光は選択反射カラーフィルタ層73の青色反射部73Bを透過するが、光吸収層90の青色透過部90Bに吸収され、表示に寄与しない。
【0062】
緑色画素PXGにおいては、選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間の実質的な光路長が緑色光の主波長のn/2倍(nは整数)に設定されているため、緑色の右円偏光は選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間で共振し増幅される。そして、マイクロキャビティ効果により増幅された高輝度な緑色の右円偏光のうち、選択反射カラーフィルタ層73及び第2選択反射層72による反射条件から外れた光が選択反射カラーフィルタ層73の緑色反射部73Gを透過した後に、光吸収層90の緑色透過部90Gを透過し、表示に寄与する。また、緑色画素PXGにおいては、赤色光及び青色光は選択反射カラーフィルタ層73の緑色反射部73Gを透過するが、光吸収層90の緑色透過部90Gに吸収され、表示に寄与しない。
【0063】
赤色画素PXRにおいては、選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間の実質的な光路長が赤色光の主波長のn/2倍(nは整数)に設定されているため、赤色の右円偏光は選択反射カラーフィルタ層73と第2選択反射層72との間で共振し増幅される。そして、マイクロキャビティ効果により増幅された高輝度な赤色の右円偏光のうち、選択反射カラーフィルタ層73及び第2選択反射層72による反射条件から外れた光が選択反射カラーフィルタ層73の赤色反射部73Rを透過した後に、光吸収層90の赤色透過部90Rを透過し、表示に寄与する。また、赤色画素PXRにおいては、青色光及び緑色光は選択反射カラーフィルタ層73の赤色反射部73Rを透過するが、光吸収層90の赤色透過部90Rに吸収され、表示に寄与しない。
【0064】
したがって、上述した第2実施形態に係る有機EL表示装置装置によれば、表示輝度を向上することが可能となる。
【0065】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る有機EL表示装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示した有機EL表示装置に適用可能な選択反射層の構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係る有機EL表示装置の構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1…有機EL表示装置、10…画素スイッチ、20…駆動トランジスタ、30…蓄積容量素子、40…有機EL素子、60…第1電極、64…有機活性層、66…第2電極、71…選択反射層、72…選択反射層、73…選択反射カラーフィルタ層、80…保護フィルム、90…光吸収層、120…配線基板、PX…画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層と、
これら一対の選択反射層の間に配置され、一対の電極間に前記所定波長を主波長とする光を発光する発光層を備えた表示素子と、を備え、
前記選択反射層間の実質的な光路長が前記所定波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層と、
これら一対の選択反射層の間に配置され、一対の電極間に白色光を発光する発光層を備えた表示素子と、を備え、
前記選択反射層のそれぞれは、赤色光、緑色光、及び、青色光の主波長の第1円偏光を反射する機能を有するとともに、
赤色画素に対応して配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が赤色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
緑色画素に対応して配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が緑色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
青色画素に対応して配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が青色光の主波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、所定波長の第1円偏光を反射するとともに第1円偏光とは逆極性の第2円偏光を透過する一対の選択反射層と、
これら一対の選択反射層の間に配置され、一対の電極間に赤色光を発光する発光層を備えた赤色表示素子、一対の電極間に緑色光を発光する発光層を備えた緑色表示素子、及び、一対の電極間に青色光を発光する発光層を備えた青色表示素子を有した表示素子部と、を備え、
前記選択反射層のそれぞれは、赤色光、緑色光、及び、青色光の主波長の第1円偏光を反射する機能を有するとともに、
前記赤色表示素子を配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が赤色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
前記緑色表示素子を配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が緑色光の主波長のn/2倍(nは整数)であり、
前記青色表示素子を配置した前記選択反射層間の実質的な光路長が青色光の主波長のn/2倍(nは整数)であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記選択反射層は、コレステリック液晶層、コレステリック液晶層をポリマー化させたもの、若しくは、コレステリック液晶層をフィルム化させたもののいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光層で発光した光の主出射面側に位置する前記選択反射層の表面に光吸収層を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記選択反射層の平均屈折率と螺旋ピッチとを乗じた値が所定波長とほぼ等しいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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