説明

表示装置

【課題】簡易な構成で高コントラスト表示を実現する表示装置を提供することである。
【解決手段】表示装置1は、基本画像情報80から生成されるコントラスト情報に基づいて、印刷画像170として印刷する印刷部(印刷ヘッド141)と、印刷ヘッド141により印刷画像170が印刷される表示対象物としての連続ロール紙50と、連続ロール紙50の移動を行なう移動機構部30と、印刷画像170が印刷された連続ロール紙50に対して、所定の表示領域Aを確保して、表示領域A内に印刷画像170が印刷された連続ロール紙50を保持する保持機構部40と、基本画像情報80から生成される色再現情報に基づいて、投写画像270を投写する投写部(投写レンズ263)と、を一体に有し、投写レンズ263は、表示領域A内に位置する、印刷画像170または連続ロール紙50に対して重ねて投写画像270を投写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro-luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、投写型表示装置等の電子ディスプレイ装置における画質改善は目覚しく、解像度、色域については人間の視覚特性に略匹敵する性能を有する装置が実現されつつある。しかし、輝度ダイナミックレンジについてみると、その再現範囲は暗室環境下においてはコントラスト比で数千:1程度の範囲にとどまり、特に明室環境下においては数百:1程度である。一方、インクジェットプリンタなどで印刷された印刷物は、反射表示のため暗室と明室でのコントラスト比は変化しないが、やはり数百:1程度である。
【0003】
一方、人間の視覚は、一度に知覚し得る輝度ダイナミックレンジの範囲はコントラストで数千〜数万であり、また輝度弁別能力(コントラスト分解能:輝度の濃淡を弁別できる能力)は0.2[nit](輝度:光を発する光源の単位面積あたりの光度を表し、光源に関する量。単位はnit(ニット)=cd/m2)と言われておりこれを階調数に換算すると12bit相当といわれている。
【0004】
このような視覚特性を前提として現在の電子ディスプレイ装置の表示画像を見た場合、輝度ダイナミックレンジの狭さが目立ち、加えてシャドウ部やハイライト部の階調が不足しているため表示画像のリアリティーや迫力に対して物足りなさを感じることになる。
【0005】
これに対して、電子ディスプレイ装置の性能を維持しつつ、描画のリアリティーを追求する技術が種々開示されている。例えば透視画を照明する可視光を変調することにより、ライトボックスを用いる透視画の表示を強める技術が提案されている(特許文献1)。また、物体の像をその物体に投影することにより、その物体の明部と暗部のコントラストを向上させる方法およびその装置が提案されている(特許文献2)。
【0006】
また、ディスプレイ装置としての屋外広告装置として、側面に開口部を形成された箱体と、箱体内に設置されると共に開口部へ投影可能に設置された投影機および投影機に装着される広告内容を撮影したポジティブ写真フィルムとにより構成され、ポジティブ写真フィルムに光源から投光され、ポジティブ写真フィルムの画像がスクリーンに投影されるものが提案されている(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開平3−226712号公報
【特許文献2】特表2001−522544号公報
【特許文献3】特開2004−333551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記、特許文献1、特許文献2においては、カメラにより画像面に表示する画像情報を取得することなどが必要であり、高コントラストの表示を実現するためには、構成が複雑であった。すなわち、高コントラストの表示を実現するための表示装置としては、簡便性の面から課題があった。
【0009】
また、特許文献3において、スクリーンに投影される画像は、ポジティブ写真フィルム自体の濃淡により決まる表示画質(コントラスト)となり、投影される画像のコントラスト向上には至っていなかった。
【0010】
これらの課題を解決するために、本出願人は、印刷用画像情報に基づいて印刷画像として印刷する印刷部と、印刷部により印刷画像が印刷される表示対象物と、表示対象物の移動を行なう移動機構部と、印刷画像が印刷された表示対象物に対して所定の表示領域を確保して表示領域内に印刷画像が印刷された表示対象物を保持する保持機構部と、投写用画像情報に基づいた投写画像を投写する投写部と、を一体に有し、投写部は、表示領域内に位置する、印刷画像または表示対象物に対して重ねて投写画像を投写することを特徴とする表示装置を提案している(特願2006−304927)。
【0011】
この表示装置は、基本的に、印刷部でカラーの印刷画像を表示対象物(連続ロール紙)に印刷し、投写部でカラーの投写画像を表示対象物に投写する構成となっている。そして、この表示装置の市場への普及に対して、表示装置の機種展開が要求されている。その解決策の1つとして、簡易な構成の表示装置が望まれている。
【0012】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で高コントラスト表示を実現する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明の表示装置は、基本画像情報から生成されるコントラスト情報に基づいて、印刷画像として印刷する印刷部と、印刷部により印刷画像が印刷される表示対象物と、表示対象物の移動を行なう移動機構部と、印刷画像が印刷された表示対象物に対して、所定の表示領域を確保して、表示領域内に印刷画像が印刷された表示対象物を保持する保持機構部と、基本画像情報から生成される色再現情報に基づいて、投写画像を投写する投写部と、を一体に有し、投写部は、表示領域内に位置する、印刷画像または表示対象物に対して重ねて投写画像を投写することを特徴とする。
【0014】
このように、表示装置は、印刷部、表示対象物、移動機構部、保持機構部および投写部を一体に有している。そして、印刷部で、基本画像情報から生成されるコントラスト情報に基づいて印刷画像として印刷し、表示対象物に印刷画像が印刷され、移動機構部で表示対象物を移動し、保持機構部で所定の表示領域を確保して表示領域内に印刷画像が印刷された表示対象物を保持し、投写部で基本画像情報から生成される色再現情報に基づいて投写画像を投写する。そして、投写部は、表示領域内に位置する、印刷画像または表示対象物に対して重ねて投写画像を投写する。
このような一体に構成された表示装置により、印刷部では基本画像情報から生成されるコントラスト情報に基づいた印刷画像を印刷するため、例えば、印刷用材料として多色のインクを使用する必要がなくなり、表示装置の構成を簡易化できる。
【0015】
また、このような表示装置によれば、ユーザが、印刷画像を別体の印刷部で印刷し、その印刷画像を設置し、設置した印刷画像に対して投写画像の位置合わせを行ない投写させることなどは不必要となり、簡便性が向上することや、また、表示領域内に位置している印刷画像または表示対象物に対して重ねて投写画像を投写することにより、高コントラストな表示を実現できることは、特願2006−304927で提案したことと同様である。
【0016】
また、上述した表示装置において、印刷画像は移動機構部により移動し、投写画像は印刷画像の移動に合わせて投写画像の画像内容が変化することが好ましい。
【0017】
このような表示装置によれば、移動機構部により移動する印刷画像に合わせて、投写画像の画像内容が変化するため、高コントラストを有する動きのある合成画像を実現することができる。
【0018】
また、上述した表示装置において、印刷部は、単色の印刷用材料を有して印刷画像を印刷することが好ましい。
【0019】
このような表示装置によれば、印刷部は、単色の印刷用材料を有して印刷画像を印刷するため、例えば、多色のインクを含む印刷用材料を使用する必要がなくなり、表示装置の構成を更に簡易化できる。
【0020】
また、上述した表示装置において、単色の印刷用材料は、黒色の印刷用材料であることが好ましい。
【0021】
このような表示装置によれば、黒色の印刷用材料のみを用いて、印刷画像として印刷するため、単色として黒以外の他の色を用いる場合に比べて、印刷画像のコントラストを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る表示装置の概略斜視図である。図1を参照して、表示装置1の構成および動作を説明する。
【0024】
表示装置1は、プリンタ部10とプロジェクタ部20と移動機構部30と保持機構部40とを有して構成されている。
【0025】
プリンタ部10は、表示装置1の図示左端側に構成されている。プリンタ部10は、本実施形態ではインクジェットプリンタを用いて、基本画像情報から生成されるコントラスト情報に基づいた印刷用画像情報100(図2参照)に従って印刷部としての印刷ヘッド141により描画することで印刷画像を形成する。なお、印刷画像を形成する部材は、連続したロール状に形成された表示対象物としての連続ロール紙50である。この連続ロール紙50の面上に印刷画像を印刷することになる。
【0026】
プロジェクタ部20は、表示装置1の図示下端側に構成されている。プロジェクタ部20は、光源ランプ261(図2参照)から射出される光束を、基本画像情報から生成される色再現情報に基づいた投写用画像情報200(図2参照)に応じて液晶パネル262(図2参照)で変調して光学像を形成し、形成された光学像を、投写部を構成する投写レンズ263で投写する。
【0027】
保持機構部40は、連続ロール紙50に対して、所定の表示領域A(図中斜線で示す)を確保して、表示領域A内に印刷画像が印刷された連続ロール紙50を保持する。本実施形態での表示領域Aは、略A2サイズで横向きの印刷画像を平面として確保できるように設定されており、その表示領域Aの平面内に印刷画像が印刷された連続ロール紙50の部分を保持している。また、保持機構部40は、連続ロール紙50を保持する他、移動機構部30、プリンタ部10およびプロジェクタ部20も併せて保持している。
【0028】
移動機構部30は、プリンタ部10の印刷ヘッド141の印刷速度に同期させて、印刷される連続ロール紙50の送り動作を行なっている。その他、移動機構部30は、プリンタ部10の印刷動作とは無関係に、連続ロール紙50を所定の速度で連続して回転させる動作も行なう。
【0029】
本実施形態の連続ロール紙50の幅(図示上下方向)は、A2サイズで横向きの印刷画像を印刷しても余白が確保される幅を有している。また、印刷ヘッド141もA2サイズを横方向に印刷できる仕様となっている。
【0030】
図1に示すように、連続ロール紙50は、移動機構部30を構成するローラ35A,35Bおよび他のローラ(図示省略)により、テンションを掛けられて、一巡して表示装置1に設置される。連続ロール紙50は、前述したように設置され、各ローラ(35A,35Bなどを含む)を一巡する長さを有して連続したロール状の紙として形成されている。また、移動機構部30は、後述する移動用モータ320および動力伝達機構(図示省略)を有し、連続ロール紙50を移動(回転)させる。ローラ35A,35Bは、表示装置1の左右端側に軸支されて設置されている。そして、移動用モータ320が駆動することにより、動力伝達機構が動作し、ローラ35A,35Bは、本実施形態では各々反時計方向に回転し、連続ロール紙50は、ローラ35A,35Bなどに従動して移動(回転)する。
【0031】
なお、連続ロール紙50は、左端側に構成されるプリンタ部10の右側に設置される印刷ヘッド141により、印刷されながら表示領域Aの平面上を右方向に移動する。そして、A2サイズの横向き印刷画像が表示領域A内に均等に収まる位置に達したところまで移動した後は、保持機構部40の内部に移動する。
【0032】
また、プロジェクタ部20の投写レンズ263から投写される投写画像は、上方向に投写される。詳細には、A2サイズの横向き印刷画像が表示領域A内に均等に収まる位置を基準として、そのA2サイズの横向き印刷画像に一致するように重ねて投写される。なお、A2サイズの横向き印刷画像が表示領域A内に均等に収まる位置を含めた領域を印刷画像領域Bとして以降の説明で適宜使用する。また、A2サイズの横向き印刷画像に一致するように重ねて投写される位置を含めた領域を投写画像領域Cとして以降の説明で適宜使用する。本実施形態では、印刷画像領域Bと投写画像領域Cを一致させている。
【0033】
プリンタ部10でA2サイズの横向き印刷画像を印刷ヘッド141で印刷する場合、印刷ヘッド141の印字速度に同期して、移動機構部30は、連続ロール紙50の送り動作を行なう。そして、印刷終了した場合にも、移動機構部30は、連続ロール紙50の送り動作を継続して行ない、A2サイズの横向き印刷画像が表示領域A内に均等に収まる位置(印刷画像領域B)に移動させた後、連続ロール紙50の送り動作を終了する。
【0034】
プロジェクタ部20には、リモコン(リモートコントローラ)5(図2参照)の信号を受信するリモコン受信部21が設置されている。なお、本実施形態では、リモコン5により、表示装置1の動作を指示することができる。
【0035】
図2は、表示装置の構成を示すブロック図である。図2を参照して、表示装置1の構成および動作を説明する。
【0036】
表示装置1は、図1で説明したように、プリンタ部10とプロジェクタ部20と移動機構部30と保持機構部40とを有して構成されている。
【0037】
図2に示すように、プリンタ部10は、プリンタ制御部110と、プリンタ画像情報I/F(インターフェイス)120と、プリンタ画像変換/画像処理部130と、印刷ヘッド駆動部140と、印刷画像170の印刷を行なう印刷ヘッド141とを有して構成されている。
【0038】
プリンタ画像情報I/F120は、印刷すべき基となる基本画像情報80を入力する。基本画像情報80は、本実施形態ではデジタルスチルカメラで撮影した画像を用いている。もちろん基本画像情報80はこれに限定されるわけではなく、イメージスキャナで取り込んだフィルムや写真を元にした画像情報や、CG(Computer Graphics)を用いて作成された画像情報であっても良い。
【0039】
プリンタ画像変換/画像処理部130は、入力された基本画像情報80に基づき、演算処理により明るさを表す情報(コントラスト情報)を生成する。なお、演算処理による明るさを表す情報(コントラスト情報)の生成方法に関しては、特開2006−113535号公報に記載されている画像処理方法を用いている。そして、プリンタ画像変換/画像処理部130は、生成したコントラスト情報に基づいて、印刷用画像情報100を生成する。また、印刷用画像情報100を生成する際、印刷画像170の大きさと基本画像情報80の画素数および印刷ヘッド141の解像度によって決まる画素数に拡大縮小する。そして、プリンタ画像変換/画像処理部130は、印刷ヘッド141の性能に合わせた拡大・縮小、色変換、ガンマ補正、画像補正、面積階調処理、色の変換処理、コントラスト強調処理などを行ない、印刷用画像情報100を生成する。
【0040】
印刷ヘッド駆動部140は、印刷用画像情報100に基づき印刷ヘッド141を駆動する。印刷ヘッド141は、印刷ヘッド駆動部140の駆動に従って、表示対象物としての連続ロール紙50に印刷画像170として印刷する。本実施形態では、A2サイズで横向きの大きさの印刷画像170を印刷する。
【0041】
なお、プリンタ部10は、単色の印刷用材料を有している。具体的には、本実施形態では、単色の印刷用材料として、黒色インクを有している。また、プリンタ部10は、この黒色インクを封入したインクカートリッジ142を有している。そして、インクカートリッジ142は、印刷ヘッド141に黒インクを供給するように設置されている。この構成により、本実施形態では、黒色インクのみを用いて印刷し、印刷画像170を形成している。従って、本実施形態のプリンタ部10は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンタ(Lm)などの複数の色インクおよびインクカートリッジは備えていない。
【0042】
なお、プリンタ制御部110は、上述したプリンタ部10の動作を制御している。また、後述する移動機構部30の動作の制御も行なっている。
【0043】
移動機構部30は、プリンタ部10に構成される移動用モータ駆動部310と移動用モータ320と、図1で説明したローラ35A,35Bと、動力伝達機構(図示省略)および他のローラ(図示省略)を有して構成されている。
【0044】
移動用モータ駆動部310は、プリンタ制御部110の制御により、印刷ヘッド141の印刷速度に同期させて、移動用モータ320を駆動し、印刷される連続ロール紙50の送り動作を行なっている。移動用モータ320以降の動作は図1で説明したと同様となる。また、印刷されたA2サイズ横向きの印刷画像170を、印刷画像領域Bに位置させるための駆動も行なっている。また、プリンタ制御部110の制御により、移動用モータ駆動部310は、プリンタ部10の印刷動作とは無関係に、連続ロール紙50を所定の速度で連続して回転させる駆動も行なう。
【0045】
図2に示すように、プロジェクタ部20は、プロジェクタ制御部210と、プロジェクタ画像情報I/F(インターフェイス)220と、プロジェクタ画像変換/画像処理部230と、投写画像270の投写を行なう光学系260とを有して構成されている。
【0046】
なお、光学系260は、光束を射出する光源ランプ261と、後述する投写用画像情報200に応じて入射する光束を変調して光学像(投写画像270)を形成する光変調素子である透過型の液晶パネル262と、形成された投写画像270を印刷画像領域Bに向けて投写する投写部としての投写レンズ263とを有して構成されている。
【0047】
光学系260は、詳細には、光源ランプ261から射出された光束を、色分離光学系(図示省略)により、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色に分離し、分離した各色光束を、各色光束に対応させて設置した各々の液晶パネル262(合計3枚)により、投写用画像情報200に応じて変調する。そして、変調した後の各色光の変調光束を色合成光学系(図示省略)により合成して光学像(投写画像270)を形成する。そして、形成した投写画像270を投写レンズ263を介して印刷画像領域Bに向けて投写する。
【0048】
プロジェクタ画像情報I/F220は、投写すべき基となる基本画像情報80を入力する。
【0049】
プロジェクタ画像変換/画像処理部230は、本実施形態では、プロジェクタ画像情報I/F220から入力された基本画像情報80に基づき、前述したコントラスト情報を除いた残りの情報となる色再現情報を生成する。詳細には、特開2006−113535号公報に記載されている画像処理方法を用いている。そして、プロジェクタ画像変換/画像処理部230は、生成した色再現情報に基づいて、投写用画像情報200を生成する。また、投写用画像情報200を生成する際、液晶パネル262の特性に合わせて、例えば、拡大・縮小、色変換、ガンマ補正、画像補正、色の変調処理などを行ない、投写用画像情報200を生成する。なお、プロジェクタ画像変換/画像処理部230の後段には、液晶パネル駆動部231が構成されており、投写用画像情報200に基づき液晶パネル262を駆動する。
【0050】
なお、プロジェクタ制御部210は、上述したプロジェクタ部20の動作を制御している。
【0051】
以上の構成および動作により、表示装置1は、保持機構部40の表示領域A内に印刷画像170の印刷画像領域Bが位置し、その印刷画像領域Bに投写画像270の投写画像領域Cを略一致させている。なお、図2では、印刷画像領域Bと投写画像領域Cとを理解し易くするため、ずらした位置として図示している。
【0052】
また、表示装置1は、リモコン制御部6を有している。リモコン制御部6は、リモコン5からの操作信号を受信し、プロジェクタ制御部210およびプリンタ制御部110に操作指示の信号を出力する。
【0053】
図3は、印刷画像と投写画像とその合成画像とを説明する図である。
図3を参照して印刷画像170と投写画像270とその合成画像500とを説明する。
【0054】
図3に示すように、印刷画像170は、上述したように、プリンタ部10において、基本画像情報80から生成されるコントラスト情報に基づいて、印刷用画像情報100を生成し、その生成した印刷用画像情報100に基づいて、連続ロール紙50に印刷される画像である。そして、本実施形態では、黒色インクにより印刷される画像となる。
【0055】
また、投写画像270は、上述したように、プロジェクタ部20において、基本画像情報80から生成される色再現情報に基づいて、投写用画像情報200を生成し、その生成した投写用画像情報200に基づいて、投写される画像である。なお、投写画像270は、図中ではモノクロームで図示されているが、実際は、カラー表示されている。
【0056】
そして、連続ロール紙50に印刷された印刷画像170の外形に一致させて、投写画像270を投写させることにより、高コントラストな合成画像500(カラー)として形成される。合成画像500は、印刷画像領域B(印刷画像170)に投写画像領域C(投写画像270)が一致して重なることにより形成される。
【0057】
上述した、第1実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の表示装置1によれば、印刷部としての印刷ヘッド141、表示対象物としての連続ロール紙50、移動機構部30、保持機構部40、投写部としての投写レンズ263を一体に有している。そして、プリンタ部10のプリンタ画像変換/画像処理部130は、基本画像情報80からコントラスト情報を生成し、また、生成したコントラスト情報に基づいて印刷用画像情報100を生成する。印刷ヘッド141は、その印刷用画像情報100に基づいて、単色の印刷用材料として黒色インクで連続ロール紙50に印刷画像170として印刷する。そして、移動機構部30で連続ロール紙50を移動し、保持機構部40で所定の表示領域Aを確保して表示領域A内に印刷画像170が印刷された連続ロール紙50を保持する。一方、プロジェクタ部20のプロジェクタ画像変換/画像処理部230は、基本画像情報80からコントラスト情報を除いた残りの情報となる色再現情報を生成する。そして、生成した色再現情報に基づいて、投写用画像情報200を生成する。光学系260は、投写用画像情報200に基づいて、投写レンズ263を介して、表示領域A内に位置する印刷画像170に対して、重ねて投写画像270を投写する。
このように構成された表示装置1により、多色のインク及びそれらを封入するインクカートリッジ(例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンタ(Lm)などの色インクおよびインクカートリッジ)を使用する必要がなくなり、1色(単色、本実施形態では黒色のみ)のインク及びインクを封入するインクカートリッジ142を使用するのみで良いため、表示装置1の構成を簡易化できる。
【0058】
(2)また、効果(1)で記述したように、多色のインク及びそれを封入するインクカートリッジを使用する必要がなくなり、1色のインク及びインクを封入するインクカートリッジ142を使用するのみで良く、表示装置1の構成を簡易化できるため表示装置1を小型化できると共に、消耗品が削減できるため環境に配慮した表示装置1が可能となる。また、表示装置1の使用者にとっては、使用に対するランニングコストが大幅に低減される。
【0059】
(3)また、一体に構成された表示装置1により、ユーザが、印刷画像を別体の印刷部で印刷し、その印刷画像を設置し、設置した印刷画像に対して投写画像の位置合わせを行ない投写させることなどは不必要となり、簡便性が向上する。また、表示領域A内に位置している印刷画像170に対して重ねて投写画像270を投写することにより、合成された画像(合成画像500)は、印刷画像170のコントラスト比と投写画像270のコントラスト比との掛け算として計算されるコントラスト比となり、高コントラストな表示を実現できる。従って、簡便性を向上し、高コントラスト表示を実現する表示装置1を提供することができる。
【0060】
(4)また、表示装置1により、印刷画像170に対して、プロジェクタ部20のプロジェクタ画像変換/画像処理部230で様々な色彩表現となる加工を行ない、投写画像270として投写することができるため、豊富なシーンの展開が高コントラストな表示で可能となる。
(第2実施形態)
【0061】
図4は、本発明の第2実施形態に係る表示装置の印刷画像および投写画像を示す図である。そして、図4(a)は、連続ロール紙の面全体に印刷画像を印刷して、投写画像を投写した図であり、(b)は、連続ロール紙が移動して、投写画像も連動して変化させて投写した図である。図4を参照して、本実施形態での表示装置1の動作を説明する。なお、表示装置の構成は第1実施形態の表示装置1と同様である。また、図4(a)、(b)に示す投写画像280は、理解し易くするために、印刷画像180をずらした位置として図示しているが、実際には一致させている。
【0062】
図4(a)に示すように、本実施形態では、表示装置1のプリンタ部10により、印刷画像180が連続ロール紙50の面全体に連続した画像として印刷されている。その印刷画像180の印刷画像領域Bに対応した投写画像領域Cの部分に、印刷画像領域Bに対応した投写画像280を投写レンズ263から投写させている。
【0063】
なお、印刷画像180は、第1実施形態と同様に、基本画像情報80からコントラスト情報を生成し、また、生成したコントラスト情報に基づいて印刷用画像情報100を生成し、生成した印刷用画像情報100に基づいて印刷された画像である。また、投写画像280は、第1実施形態と同様に、基本画像情報80からコントラスト情報を除いた残りの情報となる色再現情報を生成し、また、生成した色再現情報に基づいて投写用画像情報200を生成し、生成した投写用画像情報200に基づいて投写された画像である。
【0064】
図4(b)に示す図は、図4(a)に示す印刷画像180と投写画像280とが静止している状態から、連続ロール紙50(印刷画像180)が移動を開始して、その移動に対応して、投写画像280の画像の内容を変化させた状態を示している。
【0065】
詳細には、本実施形態では、印刷画像180は、移動機構部30の移動用モータ320により、ローラ35A,35Bが回転し、それに従動して所定の速度で連続ロール紙50も移動することにより、印刷画像180も移動する。また、投写画像280は、印刷画像180の移動速度と同期されており、印刷画像180の移動速度に同期して、印刷画像180の移動による風景の変化に対して、同様に変化する風景の画像を投写画像280として投写する。
【0066】
この動作は、印刷画像180の移動速度情報と、移動のスタート基準位置情報とに基づいて、表示装置1のプリンタ制御部110およびプロジェクタ制御部210の制御により実現している。詳細には、プリンタ制御部110による移動用モータ駆動部310の制御と、プロジェクタ制御部210によるプロジェクタ画像変換/画像処理部230の制御とにより、印刷画像180が移動したその時点での投写すべき投写画像280を抽出(切り出し)して順次投写することで画像内容を変化させて実現している。
【0067】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態での効果を同様に奏することができる他、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の表示装置1によれば、連続した印刷画像180が移動機構部30により移動させることに合わせて、その移動速度情報やスタート基準位置情報などにより、投写画像280を同期させて、移動する印刷画像180に重ねて投写させることができる。それにより、投写画像280(投写画像領域C)の重なる印刷画像180の領域において、高コントラストで動きのある合成画像として表示することができる。従って、表示装置1の利便性が更に向上する。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0069】
(変形例1)前記実施形態では、色再現情報は、基本画像情報80からコントラスト情報を除いた残りの情報となる情報としているが、これに限らず、コントラスト情報も含む情報を色再現情報として投写しても良い。例えば、黒がより黒(漆黒)として表示でき、更に高コントラストな合成画像となる。
【0070】
(変形例2)前記実施形態では、略A2サイズの横向きを平面で確保する表示領域Aを有する保持機構部40が構成されている。しかし、これに限らず、任意の表示領域を設定して保持機構部を構成しても良い。また、表示領域Aは、印刷画像領域Bまたは投写画像領域Cと略一致していても良い。
【0071】
(変形例3)前記実施形態では、プリンタ部10は表示装置1の図示左端側に構成され、プロジェクタ部20は表示装置1の図示下端側に構成されている。しかし、これに限らず、プリンタ部10およびプロジェクタ部20は表示装置1の概略4角形の4端側のどこに設置されても良い。
【0072】
(変形例4)前記実施形態では、印刷画像領域Bに投写画像領域Cを一致させて重ねて投写しているが、必ずしも一致させて投写させなくても良い。また、印刷画像領域Bがない(印刷されていない)場合であっても、表示対象物としての連続ロール紙50の面上に投写画像を重ねて、投写画像を投写しても良い。
【0073】
(変形例5)第1実施形態では、A2サイズで横向きの印刷画像170を表示領域A内の所定の位置(表示領域A内に均等に収まる位置)を基準の位置として、同サイズの投写画像270を重ねている。しかし、これに限らず、印刷画像のサイズや、表示領域A内での基準とする位置や、投写画像の印刷画像に対するサイズや、投写画像の印刷画像に対する位置などは、表示装置1に入力される画像情報のサイズや、印刷ヘッド141および液晶パネル262の特性などを含めて、適宜設定することが可能である。
【0074】
(変形例6)第2実施形態では、連続ロール紙50の面上に印刷ヘッド141によって前もって印刷された印刷画像180に対して、その印刷画像180の移動速度に同期させながら、投写画像280も移動させている。しかし、これに限らず、印刷ヘッド141で印刷画像180を印刷しながら、その印刷速度に同期させて投写画像280を順次投写することでも良い。
【0075】
(変形例7)第2実施形態では、連続ロール紙50は図4(b)において、左側から右側に移動しているが、右側から左側に移動しても良い。プリンタ制御部110の指示により、移動用モータ駆動部310が移動用モータ320を逆回転させることにより、ローラ35A,35Bを逆方向(時計方向)に回転させることにより実現できる。
【0076】
(変形例8)前記実施形態では、印刷画像170,180が印刷される表示対象物として連続ロール紙50を用いている。しかしこれに限らず、巻取り式のロール紙などを用いても良い。巻取り式のロール紙を用いた場合には、例えばローラ35Aに巻取り式ロール紙を設置して、巻取り式ロール紙の紙先端をローラ35Bに引掛ける。そして、ローラ35Bが回転することにより、ローラ35Aに設置した巻取り式ロール紙を、ローラ35Bに巻き取っていく機構とすることにより、本発明を適用することができる。
【0077】
(変形例9)前記実施形態では、単色の印刷用材料として黒インクを有して、印刷画像170,180として印刷している。しかし、これに限らず、表示装置1の構成を簡易化できる構造的な範囲内において、複数のインクを用いても良い。
【0078】
(変形例10)前記実施形態では、印刷用材料としてインクを用いているが、トナーを用いることでも良い。その場合は、プリンタ部10(特に、印刷ヘッド駆動部140や印刷ヘッド141など)もトナーによる印刷を可能とする構成に適宜変更することにより、対応することができる。
【0079】
(変形例11)前記実施形態では、投写画像270,280を形成する光学系260の部材として、光変調素子である透過型の液晶パネル262を用いているが、反射型の液晶パネルなど、反射型の光変調素子を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いても良い。更には、光学系260として、レーザ光源と、レーザ光を走査する走査ミラーを用いて投写画像表示を行なっても良い。
【0080】
(変形例12)前記実施形態では、投写画像270,280を形成する光学系260として、液晶パネル262を3枚用いる、いわゆる3板方式を採用しているが、液晶パネルを1枚用いる単板方式を採用しても良い。
【0081】
(変形例13)前記実施形態において、図2に示す表示装置1のハードウェア構成は、この例に限定されるわけではなく、印刷用画像情報100や投写用画像情報200などを作成するブロック部分(プリンタ画像変換/画像処理部130やプロジェクタ画像変換/画像処理部230など)は、PC(パーソナルコンピュータ)を用いて処理しても良い。なお、その他のブロック部分においても、適宜PCを利用して処理しても問題ない。
【0082】
(変形例14)前記実施形態における表示装置1は、連続ロール紙50の外面側の面上に投写画像270,280を投写するいわゆるフロントタイプのプロジェクタを用いている。しかし、これに限らず、連続ロール紙50の裏面側の面上に投写画像を投写するいわゆるリアタイプのプロジェクタを用いても良い。そのためには、ローラ35A,35Bと連続ロール紙50とにより囲まれた空間領域から、連続ロール紙50の裏面側(本実施形態では連続ロール紙50の内側の面)の面上に投写画像270,280を投写することや、連続ロール紙50の材質を反射タイプから透過タイプの材質に変更することや、投写画像270,280の向きの調整(左右反転や上下反転など)を行なうことなどで可能となる。
【0083】
本発明を実施するための最良の形態を、上記記載で開示しているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して図示し、かつ、説明しているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対し、詳細な構成部材の形状・材質・数量などにおいて、当業者が様々な変形(変更ならびに改良)を加えることができるものである。従って、詳細な構成部材の形状・材質・数量などにおいて、当業者が様々な変形を加えることにより実施する場合も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示装置の概略斜視図。
【図2】表示装置の構成を示すブロック図。
【図3】印刷画像と投写画像とその合成画像とを説明する図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る表示装置の印刷画像および投写画像を示す図であり、(a)は連続ロール紙の面全体に印刷画像を印刷して、投写画像を投写した図、(b)は連続ロール紙が移動して、投写画像も連動して変化させて投写した図。
【符号の説明】
【0085】
1…表示装置、5…リモコン、10…プリンタ部、20…プロジェクタ部、30…移動機構部、40…保持機構部、50…連続ロール紙、80…基本画像情報、100…印刷用画像情報、130…プリンタ画像変換/画像処理部、141…印刷部としての印刷ヘッド、142…インクカートリッジ、200…投写用画像情報、170,180…印刷画像、230…プロジェクタ画像変換/画像処理部、260…光学系、262…液晶パネル、263…投写レンズ、270,280…投写画像、500…合成画像、A…表示領域、B…印刷画像領域、C…投写画像領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本画像情報から生成されるコントラスト情報に基づいて、印刷画像として印刷する印刷部と、
前記印刷部により前記印刷画像が印刷される表示対象物と、
前記表示対象物の移動を行なう移動機構部と、
前記印刷画像が印刷された前記表示対象物に対して、所定の表示領域を確保して、当該表示領域内に前記印刷画像が印刷された前記表示対象物を保持する保持機構部と、
前記基本画像情報から生成される色再現情報に基づいて、投写画像を投写する投写部と、を一体に有し、
前記投写部は、前記表示領域内に位置する、前記印刷画像または前記表示対象物に対して重ねて前記投写画像を投写することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記印刷画像は前記移動機構部により移動し、前記投写画像は前記印刷画像の移動に合わせて前記投写画像の画像内容が変化することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示装置であって、
前記印刷部は、単色の印刷用材料を有して前記印刷画像を印刷することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置であって、
前記単色の印刷用材料は、黒色の印刷用材料であることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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