説明

表示装置

【課題】蛍光を利用した表示装置において光源を露出させずに発光時に表示部のみを目視させることができる表示装置を提供すること。
【解決手段】携帯電話等のサブ表示画面を蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する紫外光を発生させるマトリックスLED25と、マトリックスLED25の前面に配置された誘電体反射薄膜層からなる第1の反射薄膜層23と、第1の反射薄膜層23の前面にマトリックスLED25から所定間隔離間して配置される蛍光材料を含有する透明な表示画面プレート22とから構成する。第1の反射薄膜層23は励起光を透過させるため表示画面プレート22内に蛍光が発生するとともに、可視光は第1の反射薄膜層23に反射されるので外部からマトリックスLED25が目視されることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外光や青色光のような比較的高エネルギーの励起光によって蛍光材料を含んだ蛍光層内で蛍光を発光させるようにした表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から発光デバイスを媒体として目的に応じた情報を外部に向かって発信させる各種表示装置が存在する。例えば特許文献1はバックライト付きの液晶表示器や蛍光表示管等の光源を筐体の前面パネル1aに形成された表示窓2を通して表示光を目視させるものである。このような、直接ディスプレイデバイスの光を目視させるようにした表示装置以外に蛍光素材を含んだ蛍光塗料を透明なプラスチック基板に塗布し光源(励起光発光部1)からこれらに励起光を照射し基板上に蛍光を表示させる蛍光を利用した表示装置がある。このような表示装置の一例として特許文献2を挙げる。
【特許文献1】特開2005−55887号公報
【特許文献2】特開2003−27057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の上記各表示装置ではいずれも外部光源を使用することから表示窓2あるいは蛍光塗料が塗布されたプラスチック基板を介して光源が目視されてしまうこととなっていた。もっとも直接ディスプレイデバイスの光を目視する特許文献1のような表示装置であれば光源が目視されることは避けられないわけであり、少なくとも発光状態では一般に発光色の拡散によって光源が見えにくくなるためそれほど違和感はない。
ところが、特許文献2のような蛍光による表示装置においては励起光が紫外線であれば目視されず、なおかつ光源から表示部となるプラスチック基板までの距離があるため、蛍光の拡散によって十分に光源を覆いきれず結局発光時も非発光時もいずれにおいても光源が露出状態となってしまう。そのため、特にこの種の蛍光を利用した表示装置において光源を露出させずに表示部のみを目視できるような工夫が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、蛍光を利用した表示装置において光源を露出させずに発光時に表示部のみを目視させることができる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための第1の手段として、少なくとも、蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する励起光を発生させる励起光発生源と、同励起光発生源の前面に配置された誘電体反射薄膜層と、同誘電体反射薄膜層の前面に少なくとも同励起光発生源から所定間隔離間して配置される蛍光材料を含有する透明な蛍光層とから構成され、前記誘電体反射薄膜層は励起光を透過させるとともに、可視光を反射するようにしたことをその要旨とする。
このような構成では励起光発生源によって発光させられた励起光は誘電体反射薄膜層を透過して蛍光層に至る。励起光は蛍光層内において蛍光材料と衝突し蛍光材料を励起する。励起光は蛍光材料に吸収されるとともにその励起光に基づいて蛍光材料は蛍光を発生させることとなる。発生した蛍光は蛍光層内で所定の表示態様で表示されることとなる。
ここに、誘電体反射薄膜層の光学的特性は励起光の波長域は透過できるものの可視光の波長域は反射されるため透過できないようになっている。そのため、蛍光層側から誘電体反射薄膜層を通して励起光発生源が目視されることはない。
より具体的には誘電体反射薄膜層は可視光域である380nm付近から780nm付近の波長の光線の透過率をなるべく低く(反射率を高く)設定し、蛍光物質を励起させられるエネルギーの大きな光線となる380nm以下の波長の光線の透過率をなるべく高く(反射率を低く)設定する。尚、本発明では濃紫色や青色のような可視光でもあり励起光ともなりうる高エネルギー可視光域波長光は励起光として使用する場合にはこれらを可視光とみなさないものとする。誘電体反射薄膜層は蛍光層側からの励起光発生源の目視を妨げることを目的とするものであるため、必ずしも誘電体反射薄膜層はすべての可視域の波長を完全に反射する必要はない。概ね可視域の波長を遮蔽し、なおかつ一定の反射率をクリアすれば足る。同様に誘電体反射薄膜層は励起光の透過率が高いほど好ましいが、100%の透過率である必要はない。
【0005】
ここに、誘電体反射薄膜層とは所定の波長域の光を選択的に透過させ、また反射させる膜であって、誘電体反射薄膜層としては一般にはそれ自体が多層膜構造を取ることとなる。多層膜の各構成膜層は金属酸化物もしくは金属フッ化物からなる誘電体であって、例えばTiO2(二酸化チタン)、Ta25(五酸化タンタル)、ZrO2(酸化ジルコン)、Al23(酸化アルミニウム)、Nb25(五酸化ニオブ)、SiO2(酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)、ZnO2(酸化亜鉛)HfO2(酸化ハフニュウム)、CaF2(フッ化カルシュウム)らが上げられる。
本発明の誘電体膜ではこれら9種から選ばれる少なくとも2種の誘電体を光の透過する方向に低屈折率材料と高屈折率材料を交互に積層した交互層から構成されることが好ましい。構成される多層膜の数は特に限定されるものではない。所望の波長に対する反射性能又は透過性能を発現させるために化合物を選択し、組み合わせて誘電体光学膜を構成することが可能である。誘電体反射薄膜層の成膜方法に特に限定的な意味はないが一般的には蒸着法やスパッタリング法で成膜されることが好ましい。
【0006】
また、蛍光層は蛍光材料を溶媒に分散させゾル化した溶液を透明な基材の上に塗布・乾燥させて膜体を構成してもよく、プラスチック材料中に蛍光材料を分散させたものを成形するようにして透明基材そのものを蛍光層として構成してもよい。特にこのように成形によって蛍光層を構成することで厚みのある蛍光層を構築できるため、蛍光層内に立体的な蛍光を発光させることが可能となる。尚、透明には半透明も含まれる。
蛍光材料としては特に限定されることはない。蛍光色によって使用されるRGB蛍光材料は自由に選択が可能である。例えば赤色蛍光材料としては6MgO・As25:Mn、3.5MgO0.5MgF2・GeO2:Mn、YVO:Eu3+、SrY24:Eu3+、SrY24:Mn等、緑色蛍光材料としてはSrAl24:Eu2+、SrGa24:Eu2+3 Al512:Ce3+、ZnS:Cu、ZnS:Cu、Cl、ZnS:Cu、Cl、Al等、青色蛍光材料としてはSr10(PO46 Cl2 :Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、Sr3 MgSi28:Eu2+、Ba3 MgSiO8 :Eu2+、ZnS:Ag、Cl、ZnS:Ag、Al等が想定される。これら以外の蛍光材料を使用することももちろん可能である。
【0007】
また、上記課題を解決するための第2の手段として、少なくとも、蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する励起光を発生させる励起光発生源と、同励起光発生源の前面に配置された波長選択吸収層と、同波長選択吸収層の前面に少なくとも同励起光発生源から所定間隔離間して配置される蛍光材料を含有する透明な蛍光層とから構成され、前記波長選択吸収層は励起光を透過させるとともに、可視光を選択的に吸収するようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、励起光発生源によって発光させられた励起光は波長選択吸収層を透過して蛍光層に至る。励起光は蛍光層内において蛍光材料と衝突し蛍光材料を励起する。励起光は蛍光材料に吸収されるとともにその励起光に基づいて蛍光材料は蛍光を発生させることとなる。発生した蛍光は蛍光層内で所定の表示態様で表示されることとなる。
ここに、波長選択吸収層の特性は励起光の波長域は透過できるものの可視光の波長域は吸収されて透過できないようになっている。そのため、蛍光層側から波長選択吸収層を通して励起光発生源が目視されることはない。
より具体的には波長選択吸収層は可視光域である380nm付近から780nm付近の波長の光線の吸収率をなるべく高く設定し、蛍光物質を励起させられるエネルギーの大きな光線となる380nm以下の波長の光線の吸収率をなるべく低く設定する。尚、本発明では濃紫色や青色のような可視光でもあり励起光ともなりうる高エネルギー可視光域波長光は励起光として使用する場合にはこれらを可視光とみなさないものとする。波長選択吸収層は蛍光層側からの励起光発生源の目視を妨げることを目的とするものであるため、必ずしも波長選択吸収層はすべての可視域の波長を完全に吸収する必要はない。例えば選択的に所望の波長域のみは反射し、その他の波長域を吸収することで所定の発色をさせることが可能である。同様に波長選択吸収層は励起光の透過率が高いほど好ましいが、100%の透過率である必要はない。
また、波長選択吸収層と蛍光層の間には上記の波長選択反射薄膜層が配置され、波長選択反射薄膜層は励起光を透過させるとともに、可視光を選択的に反射するものであることが好ましい。 これによって蛍光層側から目視した場合に選択された波長域の光が反射されるとともに残りの可視広域が波長選択吸収層によって吸収されることから、励起光発生源が目視されることを防止しながら所望の選択された色調を蛍光層の背景として目視することが可能となる。
【0008】
ここに、波長選択吸収層とは所定の波長域の光を選択的に透過させ、また吸収する膜であって、可視光域では所定の色の染料を含有・分散させることで、また、紫外光域ではベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等の有機化合物や酸化亜鉛酸化セリウム、酸化チタン酸化珪素等の金属酸化物を含有・分散させることでその吸収特性を発揮させ得る薄膜層を塗布形成することが可能である。一般的には薄膜層とする場合には波長選択反射薄膜層のように多層とする必要は必ずしもない。また、アクリル等の透明基材中に上記染料や金属酸化物を分散させ基材そのものを波長選択吸収層として構成してもよい。
【0009】
蛍光材料を蛍光させ得る励起光としては一般的に紫外光及び青色光が考えられる。紫外光は青色光よりエネルギーが高いため高輝度の蛍光発光が望め、また励起光は目視されないこととなる。
励起光として紫外光を使用する場合には蛍光材料を励起させずに蛍光層から前方に漏れる紫外光を遮断するために蛍光層の外方に紫外線を反射するための第2の反射薄膜層を配置することが好ましい。
このような表示装置の用途としては、例えば、携帯電話のような携帯端末装置やモバイルパソコンや電子手帳のような携帯情報処理装置のメイン表示画面やサブ表示画面に使用することが想定される。また、蛍光体層を大型化して大型ディスプレイ装置を構成することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
上記各請求項の発明では、波長選択誘電体反射薄膜層又は波長選択吸収層によって励起光発生源が蛍光層側から目視できなくなるため、励起光発生源を露出させずに蛍光層に蛍光のみを表示させることを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をカメラ搭載携帯電話機に応用した実施例について図面に従って説明をする。
(実施例1)
図1(a)及び(b)に示すように、カメラ搭載携帯電話機10は第1の筐体11と第2の筐体12をヒンジ部13で連結された外形形状とされている。第1及び第2の筐体11,12はヒンジ部13によって開閉可能とされ、携帯可能状態では図1(a)のように折り畳まれ、電話機として使用可能状態で図1(b)のように開いて内部が露出されることとなる。
第1の筐体11の外面にはサブ表示画面15と画像を撮影するためのレンズ16が配設されている。レンズ16には撮像装置が併設されているが図示及びその説明は省略する。第1の筐体11の内面には液晶型表示装置からなるメイン表示画面17が配設されている。第2の筐体12の内面にはテンキーや各種メニューキーからなる操作部18が配設されている。カメラ搭載携帯電話機10は携帯電話機としての通常の機構、例えばモデム、マイク、レシーバ、送受信部、アンテナ等を備えているがこれらの説明は省略する。
【0012】
図2及び図3に示すように、サブ表示画面15を構成する蛍光層としての表示画面プレート22が第1の筐体11に形成された透孔21に嵌合されている。表示画面プレート22は本実施例1ではポリカーボネート製の透明な方形プラスチック製板体とされている。表示画面プレート22内にはRGB(赤、緑、青)蛍光材料が分散含有されており紫外光を励起光として赤、緑、青の蛍光を発生する。これらの蛍光色が混色されて白色光を生成する。
表示画面プレート22の裏面(第1の筐体11の内部側)側には第1の反射薄膜層23が成膜形成されている。第1の反射薄膜層23の特性の一例を表1に示す。尚、表1において実線は透過率を破線は反射率を示す。第1の反射薄膜層23は近紫外光の波長域である250nm〜350nmの光に対しては平均98%程度の透過率(平均2%程度の反射率)に設定され、可視光域の大部分を占める450nm〜780nmの光に対しては平均95%程度の反射率(平均5%程度の透過率)に設定されている。つまり、第1の反射薄膜層23は可視光に対する反射率が極めて高く、近紫外光に対しては極めて反射率が低く設定されている。
【0013】
表示画面プレート22の表面(第1の筐体11の外部側)側には第2の反射薄膜層24が成膜形成されている。第2の反射薄膜層24の特性の一例を表2に示す。尚、表2において実線は透過率を破線は反射率を示す。第2の反射薄膜層24は近紫外光の波長域である250nm〜350nmの光に対しては平均98%程度の反射率(平均2%程度の透過率)に設定され、可視光域の大部分を占める450nm〜780nmの光に対しては平均95%程度の透過率(平均5%程度の反射率)に設定されている。つまり、第2の反射薄膜層24は紫外線に対する反射率が極めて高く、可視光に対しては極めて反射率が低く設定されている。
第1の筐体11内であってブラケット26上には10×10に配列された紫外線発光ダイオード素子からなるマトリックスLED25が配設されている。マトリックスLED25は図示しない制御部による制御に基づいて紫外光を第1の反射薄膜層23方向に照射する。表示画面プレート22、第1の反射薄膜層23及び第2の反射薄膜層24によってサブ表示画面15が構成され、これにマトリックスLED25を加えて蛍光表示機構27が構成されることとなる。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
このような構成のカメラ搭載携帯電話機10ではサブ表示画面15に関して次のような作用がなされることとなる。尚、以下の説明で図4はサブ表示画面15付近の構成及び作用を分かりやすく説明するために作成したため、各層の厚み等は実際の比率とは無関係に図示されている。
図4に示すようにマトリックスLED25が所定の紫外線発光ダイオード素子から励起光としての紫外光を放射すると、紫外光は第1の反射薄膜層23を透過し表示画面プレート22内に進入する。そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させる(軌跡A)。これによってサブ表示画面15としての表示画面プレート22に所定の文字や数字等が蛍光として表示される。蛍光は前後方向に厚みのある表示画面プレート22内において細長い卵型のような蛍光によって生ずるぼんやりとした光の塊である光輝帯として第2の反射薄膜層24を透過し看者に目視されることとなる。一方、第1の反射薄膜層23によって可視光がほとんど遮断されているため看者にとって第1の反射薄膜層23は鏡面として認識されることとなる。
ここに、すべての紫外光が表示画面プレート22内においてRGB蛍光材料と遭遇してこれを励起させるわけではなく、一部はそのまま表示画面プレート22を素通りしてしまうことがある。その場合には紫外光は第2の反射薄膜層24に反射されて(つまり遮蔽されて)表示画面プレート22方向に戻ることとなる(軌跡B)。この反射された紫外線は一部は励起に寄与し一部は表示画面プレート22内で減衰していく。
【0017】
このような構成とすることで実施例1では次のような効果が奏される。
(1)マトリックスLED25は看者から目視されることはなく、表示画面プレート22中に光輝帯が浮かび上がるような表示態様で表示されることとなり、従来にない新たなサブ表示画面を提供することが可能となる。
(2)マトリックスLED25から照射された紫外光が表示画面プレート22内で励起されない場合でも漏れた紫外光は第2の反射薄膜層24によって遮蔽されて看者に達することがないため紫外光による悪影響が看者に及ぶことはない。
【0018】
(実施例2)
実施例2は実施例1におけるマトリックスLED25として紫外線発光ダイオード素子ではなく高輝度青色発光ダイオード素子を使用している。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図5に示すように、実施例2では実施例1とは異なり紫外光を使用していないため、表示画面プレート22外面に第2の反射薄膜層24は形成されていない。RGB蛍光材料は青色発光ダイオードに対応した素材が選択される。
実施例2の第1の反射薄膜層23の特性の一例を表3に示す。尚、表3において実線は透過率を破線は反射率を示す。第1の反射薄膜層23は青色光の波長域である430〜460nmの光に対しては平均95%程度の透過率(平均5%程度の反射率)に設定され、可視光域の大部分を占める500nm〜780nmの光に対しては平均95%程度の反射率(平均5%程度の透過率)に設定されている。つまり、第1の反射薄膜層23は青色を除く可視光に対する反射率が極めて高く、青色光に対しては極めて反射率が低く設定されている。
【0019】
【表3】

【0020】
このような構成のカメラ搭載携帯電話機10ではサブ表示画面15に関して次のような作用がなされることとなる。尚、以下の説明で図6はサブ表示画面15付近の構成及び作用を分かりやすく説明するために作成したため、各層の厚み等は実際の比率とは無関係に図示されている。
図6に示すようにマトリックスLED25が所定の青色発光ダイオード素子から励起光としての青色光を放射すると、青色光は第1の反射薄膜層23を透過し表示画面プレート22内に進入する。そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させる(軌跡A)。これによってサブ表示画面15としての表示画面プレート22に所定の文字や数字等が蛍光として表示される。蛍光は前後方向に厚みのある表示画面プレート22内において細長い卵型のような蛍光によって生ずるぼんやりとした光の塊である光輝帯として第2の反射薄膜層24を透過し看者に目視されることとなる。一方、第1の反射薄膜層23によって可視光がほとんど遮断されているため看者にとって第1の反射薄膜層23は鏡面として認識されることとなる。
このような構成とすることで、実施例2では実施例1の効果(1)と同様の効果が奏される。また、実施例1のように第2の反射薄膜層24を設ける必要がないため、コスト削減に寄与できる。
【0021】
(実施例3)
実施例3は実施例1における第1の反射薄膜層23の代わりに図8に示すように吸収薄膜層28を用いている。以下の説明において実施例1と同様の構成については説明を省略する。
表示画面プレート22の裏面(第1の筐体11の内部側)側には吸収薄膜層28が成膜形成されている。吸収薄膜層28の特性の一例を表4に示す。尚、表4において実線は透過率を破線は吸収率を示す。第1の反射薄膜層23は近紫外光の波長域である250nm〜350nmの光に対しては平均98%程度の透過率(平均2%程度の反射率)に設定され、可視光域の大部分を占める450nm〜780nmの光に対しては平均95%程度の吸収率(平均5%程度の透過率)に設定されている。つまり、吸収薄膜層28は可視光に対する吸収率が極めて高く、近紫外光に対しては極めて吸収率が低く(透過率が高く)設定されている。
【0022】
【表4】

【0023】
このような構成のカメラ搭載携帯電話機10ではサブ表示画面15に関して次のような作用がなされることとなる。尚、以下の説明で図6はサブ表示画面15付近の構成及び作用を分かりやすく説明するために作成したため、各層の厚み等は実際の比率とは無関係に図示されている。
マトリックスLED25が所定の紫外線発光ダイオード素子から励起光としての紫外光を放射すると、紫外光は吸収薄膜層28を透過し表示画面プレート22内に進入する。そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させる。これによってサブ表示画面15としての表示画面プレート22に所定の文字や数字等が蛍光として表示される。蛍光は前後方向に厚みのある表示画面プレート22内において細長い卵型のような蛍光によって生ずるぼんやりとした光の塊である光輝帯として第2の反射薄膜層24を透過し看者に目視されることとなる。一方、吸収薄膜層28によって可視光がほとんど吸収されているため看者にとって吸収薄膜層28はすべての可視光域が吸収された黒い背景として認識されることとなる。
このような構成とすることで、実施例3では実施例1の効果(1)及び(2)と同様の効果が奏される。
【0024】
(実施例4)
実施例4に基づいて野外や公共のスペースに設置するための大型ディスプレイ装置について説明する。
図7に示すように、ビルのような建造物Sの側面に形成された大型開口部31にはアクリル製の透明プレート32が配設されている。透明プレート32の内側面には第1の反射薄膜層33が成膜形成されている。大型開口部31に面して建造物S内には紫外線発光ダイオード素子からなるマトリックスLED34とその発光パターン像を拡大投影するための光学系が配設されている。
建造物Sの大型開口部31に面した外位置には大型のパネル35が地上部に立設されている。実施例4のパネル35はポリカーボネート製の透明なプラスチック製板体とされている。パネル35内にはRGB(赤、緑、青)蛍光材料が分散含有されており紫外光を励起光として赤、緑、青の蛍光を発生する。これらの蛍光色が混色されて白色光を生成する。パネル35と建造物Sの間には空間が形成されている。尚、空間内に人が通行できないようなフェンスを設けることが好ましい。パネル35の表面には第2の反射薄膜層36が成膜形成されている。実施例4における第1の反射薄膜層33と第2の反射薄膜層36はそれぞれ実施例1の第1の反射薄膜層23と第2の反射薄膜層24と同じ光学特性(表1及び表2)を示すものとする。
【0025】
このような構成の大型ディスプレイ装置では次のような作用がなされることとなる。
マトリックスLED34が所定の紫外線発光ダイオード素子から励起光としての紫外光を放射すると、紫外光は第1の反射薄膜層33を透過しパネル35内に進入する。そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させる。これによって大型ディスプレイ装置として所定の文字や数字等が蛍光として表示される。蛍光は前後方向に厚みのあるパネル35内において細長い卵型のような蛍光によって生ずる光輝帯として第2の反射薄膜層36を透過し看者に目視されることとなる。一方、第1の反射薄膜層33によって可視光がほとんど遮断されているため看者にとって第1の反射薄膜層33は鏡面として認識されることとなる。
ここに、すべての紫外光がパネル35内においてRGB蛍光材料と遭遇してこれを励起させるわけではなく、一部はそのままパネル35を素通りしてしまうことがある。その場合には紫外光は第2の反射薄膜層36に反射されてそれより前方に放射されることはない。
【0026】
このような構成とすることで実施例4では次のような効果が奏される。
(1)マトリックスLED34は看者から目視されることはなく、パネル35中に光輝帯が浮かび上がるような表示態様で表示されることとなり、従来にない新たな大型ディスプレイ装置を提供することが可能となる。
(2)マトリックスLED34から照射された紫外光がパネル35内で励起されない場合でも漏れた紫外光は第2の反射薄膜層36によって遮蔽されてパネル35より外方に達することがないため周囲に紫外光による悪影響が及ぶことはない。
【0027】
(実施例5)
実施例5に基づいて蛍光層に対して反射薄膜層及び波長選択吸収薄膜層の両方を配置した別例について説明する。実施例5は例えば上記実施例1〜4のカメラ搭載携帯電話機や大型ディスプレイ装置に適用することが可能である。
図9に示すように、蛍光層41と蛍光層41に励起光としての紫外光を照射するマトリックスLED42が所定間隔を空けて配置されている。蛍光層41の後面(マトリックスLED42側)には反射薄膜層43が成膜形成されている。更に吸収薄膜層44が反射薄膜層43に塗布形成によって積層されている。蛍光層41は上記実施例では表示画面プレート22又はパネル35に相当する。
反射薄膜層43の特性の一例を表5に示す。反射薄膜層43は緑色の波長域である500nm〜570nmの光に対して選択的に高い反射率(平均90%程度の反射率)に設定されている。また、近紫外光の波長域である250nm〜350nmの光に対しては平均5%程度の反射率(平均95%程度の透過率)に設定されている。つまり、反射薄膜層43は可視光のうち、緑色の光については反射率が極めて高く、その他の波長域、特に励起光である近紫外光に対しては極めて吸収率が低く、ほとんど透過するように設定されている。
吸収薄膜層44の特性の一例を表6に示す。尚、表6において実線は透過率を破線は吸収率をしめす。吸収薄膜層44は近紫外光の波長域である250nm〜350nmの光に対しては平均98%程度の透過率(平均2%程度の反射率)に設定され、可視光域の大部分を占める450nm〜780nmの光に対しては平均98%程度の吸収率(平均2%程度の透過率)に設定されている。つまり、吸収薄膜層44は可視光に対する吸収率が極めて高く、近紫外光に対しては極めて吸収率が低く、ほとんど透過するように設定されている。
【0028】
このような構成とすることで次のような作用がなされることとなる。
マトリックスLED42が所定の紫外線発光ダイオード素子から励起光としての紫外光を放射すると、図9の軌跡Cのように紫外光は反射薄膜層43及び吸収薄膜層44を透過し蛍光層41内に進入する。そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させる。これによって大型ディスプレイ装置として所定の文字や数字等が蛍光として表示される。蛍光は前後方向に厚みのある蛍光層41内において細長い卵型のような蛍光によって生ずる光輝帯として看者に目視されることとなる。
さて、蛍光層41側からは表7に示すような特性で外光(自然光)が照射されることとなる。ここで可視光線は反射薄膜層43において図9の軌跡Dのように緑色の波長域を中心に反射されることとなるため看者には蛍光層41の背景として緑色が目視されることとなる。また、軌跡Eのように吸収薄膜層44によって緑色を除くその他の可視光波長が吸収されるため吸収薄膜層44は看者には暗色と認識されるため吸収薄膜層44が遮蔽層となってマトリックスLED42が目視されることはない。この時、吸収薄膜層44には表8に示すように緑色の波長域を除く波長域が達することとなる。
もし、吸収薄膜層44がなければ蛍光層41の背景として緑色が目視されるだけではなく、励起光源の消灯時で、蛍光層41の外光が明るい場合にはマトリックスLED42が目視されてしまい、また点灯時にも、外光が弱く暗い場合には蛍光発光によって目視されてしまう可能性があるがこのように反射薄膜層43と吸収薄膜層44の二層構造とすることでそのような不具合を解消することができる。
【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

【0032】
【表8】

【0033】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施例では励起光発生源としてマトリックスLED25,34を使用したが、励起光を放射できるのであればこれらに限るものではない。例えば紫外線ランプを使用して投影すべき画像、投影パターン、写真等を投影するようにしてもよい。また、LEDではなくレーザーダイオードを光源としてもよい。その場合にはマトリックスアレイではなくガルバノメータ等でビームを走査させて蛍光層に描画することも可能である。
・パネル35の代わりにパネル32に蛍光体を分散して発光させることも可能である。
この場合、紫外光遮断膜36の変わりにパネル35に紫外線のみを吸収し、前述の蛍光を透過するものとしても良い。
・上記実施例4ではマトリックスLED34をそのままパネル35に投影するようにしたが、光学系に拡大レンズ等を配置して投影光を拡大させるようにしてもよい。
・蛍光体層としての表示画面プレート22やパネル35の厚みや大きさ及び形状は適宜変更可能である。蛍光体層を蒸着や塗布等の手段で形成するようにしても構わない。
・第1の反射薄膜層23,33は励起光発生源の表面に例えば、素子表面の樹脂層をコートするごとく直接形成するようにしてもよい。
・上記実施例5では緑色をピークとした波長域を反射させて背景とするようにしたが、他の色を背景とするような設定も自由である。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の実施例1及び2のカメラ搭載携帯電話機の斜視図、(b)は同じく側面図。
【図2】同じく実施例1のカメラ搭載携帯電話機のサブ表示画面付近の部分拡大断面図。
【図3】同じく実施例1のカメラ搭載携帯電話機の蛍光表示機構の分解斜視図。
【図4】同じく実施例1での蛍光表示機構の原理を説明する概略説明図。
【図5】同じく実施例2のカメラ搭載携帯電話機のサブ表示画面付近の部分拡大断面図。
【図6】同じく実施例2での蛍光表示機構の原理を説明する概略説明図。
【図7】同じく実施例4の大型ディスプレイ装置の概略側断面図。
【図8】同じく実施例3のカメラ搭載携帯電話機のサブ表示画面付近の部分拡大断面図。
【図9】同じく実施例5の蛍光表示機構の原理を説明する概略説明図。
【符号の説明】
【0035】
10…カメラ搭載携帯電話機、22…蛍光層としての表示画面プレート、23,33…誘電体反射薄膜層としての第1の反射薄膜層、24,36…誘電体反射薄膜層としての第2の反射薄膜層、25,34,42…励起光発生源としてのマトリックスLED、41…蛍光層、43…誘電体反射薄膜層としての反射薄膜層、44…波長選択吸収層としての吸収薄膜層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する励起光を発生させる励起光発生源と、同励起光発生源の前面に配置された誘電体反射薄膜層と、同誘電体反射薄膜層の前面に少なくとも同励起光発生源から所定間隔離間して配置される蛍光材料を含有する透明な蛍光層とから構成され、
前記誘電体反射薄膜層は励起光を透過させるとともに、可視光を反射することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
少なくとも、蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する励起光を発生させる励起光発生源と、同励起光発生源の前面に配置された波長選択吸収層と、同波長選択吸収層の前面に少なくとも同励起光発生源から所定間隔離間して配置される蛍光材料を含有する透明な蛍光層とから構成され、
前記波長選択吸収層は励起光を透過させるとともに、可視光を選択的に吸収することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記波長選択吸収層と前記蛍光層の間には誘電体反射薄膜層が配置され、同誘電体反射薄膜層は励起光を透過させるとともに、可視光を選択的に反射することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記励起光は紫外光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記蛍光材料の外方には紫外線を反射する第2の誘電体反射薄膜層を配置したことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−89945(P2008−89945A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270335(P2006−270335)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】