説明

表示装置

【課題】
感熱紙のつなぎ目部分での印字かすれを防止する。
【解決手段】
感熱紙12は、両端を重ねて接着してエンドレスのループ状にされている。サーマルヘッド50Aがサブベース板52A上に固定されている。サブベース板52Aは、コイルバネ56Aによりベース板58Aから離れる方向、即ち、感熱紙12の方向に弾性的に付勢されている。ベース板58Aは、図示しない筐体に固定されている。サーマルヘッド50Aは、コイルバネ56Aにより感熱紙12に押し付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書換え可能感熱記録媒体を使って、文字又は画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
書換え可能感熱紙、いわゆるリライタブルペーパは、発色温度(例えば、180度)に加熱することで発色し、その後、冷却することで、その発色状態を固定化でき、その発色温度より消去温度(例えば、低い120乃至160度)に加熱し冷却することで、発色状態を解消できる紙材である。
【0003】
この種の書換え可能感熱紙を利用することで、掲示板又は案内板としての利用に適した、表示内容を変更可な表示装置を実現できる(例えば、特許文献1参照)。書換え可能感熱紙の端と端を接続してエンドレスのループ状とし、そのループ状の書換え可能感熱紙を2つのフィードローラ間で搬送可能とする。そして、サーマルヘッドにより書換え可能感熱紙を加熱して文字又は画像等の可視像を書換え可能感熱紙上に形成する。消去用加熱ヘッドで消去温度に加熱することで、先に記録された可視像を消去できる。
【特許文献1】特開2003−011404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印字品質を維持するには、サーマルヘッドを書換え可能感熱紙に密接する必要がある。そのため、通常は、サーマルヘッドが書換え可能感熱紙に密接するようにサーマルヘッドと書換え可能感熱紙の位置を調節する。また、感熱紙の裏面に配置するプラテンローラの材料として多少の弾力性のあるゴム材を使用することがある。
【0005】
掲示板等として使用される表示装置では、感熱紙の両端を部分的に重なるように接続して、エンドレスのループ状としているので、そのつなぎ目の重なり部分の厚みが他の部分の厚みの約2倍になる。リライタブルペーパは、ベース層上に、発色層と保護層を重ねるので、通常の紙に比べて厚くなる。つなぎ目の前後でサーマルヘッドがバウンドしてしまい、印字がかすれてしまうという問題点があった。
【0006】
これを避けるには、重なり部分を避けるように、印字タイミングを制御すれば良い。しかし、それでは、紙送り機構の所定位置に感熱紙をセットする必要があり、使用の経過によるずれも考慮すると、使用中の適宜のタイミングで重なり部分の位置を検出し、印字開始位置を調整しなければならない。
【0007】
本発明は、このような不都合を解消し、重なり部分でも良好な印字品質を得られる表示装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示装置は、両端を重ねて接着してエンドレスのループ状にされた書換え可能感熱紙であって、発色温度への加熱により発色し、消色温度への加熱により消色する書換え可能感熱紙と、当該書換え可能感熱紙を循環的に搬送する紙送り機構と、当該感熱紙を加熱するサーマルヘッドと、当該書換え可能感熱紙のつなぎ目の重なり部分に対して当該サーマルヘッドと当該書換え可能感熱紙とを互いに密接状態に保持するように、当該サーマルヘッドと当該書換え可能感熱紙の一方を弾性的に付勢する弾性部材とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、書換え可能感熱紙のつなぎ目の重なり部分に対してもサーマルヘッドを密着させることができる。この結果、書換え可能感熱紙の重なり部分でも印字かすれが少なくなるか又は無くなり、重なり位置を気にせずに印字できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の一実施例の機構部の外観斜視図を示し、図2は、本実施例の概略構成ブロック図を示す。図2では、感熱紙12の周囲に配置される部材を感熱紙12の展開状態で図示してある。
【0012】
本実施例の表示装置10は、ホテル・旅館の総合案内、大学・専門学校の掲示コーナー、又は、官公庁・病院・一般企業のオフィス・ショールームなどで用いられるインフォメーション・ディスプレイである。また、表示装置10は、PC(Personal Computer)40から印字データを受信する。
【0013】
表示装置10は、両端を部分的に重ねて接着することにより、エンドレスのループ状にした書換え可能感熱紙12を可視画像の表示媒体として使用する。書換え可能感熱紙12の内側に、駆動ローラ14と従動ローラ16を垂直方向に所定距離離して配置し、書換え可能感熱紙12をピンと張った状態に保持する。モータ18が、駆動ローラ14を回転駆動する。これにより、感熱紙12は、図1に紙送り方向として矢印で示す方向に搬送される。
【0014】
図1に図示する紙送り機構を収容する筐体には、表示窓となる開口20が設けられている。開口20を介して、通行人は、感熱紙12の表面の印字内容を読み取ることができる。
【0015】
駆動ローラ14の背面側にサーマルヘッドユニット22Aを配置し、駆動ローラ14の下側にサーマルヘッドユニット22Bを配置する。図1では、サーマルヘッドユニット22Bの形状を理解しやすいように、駆動ローラ14から離して図示してあるが、実際には、サーマルヘッドユニット22Bは、サーマルヘッドユニット22Aと同様に、駆動ローラ14の近くに配置されている。サーマルヘッドユニット22Aは、感熱紙12を幅方向で2分割した場合の片側を担当し、サーマルヘッドユニット22Bは、残る側を担当する。ユニット22A,22Bの構成と配置の詳細は、後述する。
【0016】
サーマルヘッドユニット22Aの上流側に消去用サーマルヘッド26を配置してある。また、サーマルヘッドユニット22Bの下流側には、感熱紙12を水冷式又は空冷式で冷却する冷却器28を配置してある。
【0017】
コントロールボックス30には、全体を制御するコントローラ32と、印字データをビットマップ画像データとして記憶するメモリ32と、PC40と接続するインターフェース34が収容される。コントローラ32は、具体的には、駆動モータ18により感熱紙12の紙送りを制御し、サーマルヘッドユニット22A,22Bに印字用電流を供給し、消去用サーマルヘッド26に消去用電流を供給し、サーマルヘッドユニット22A,22Bによる感熱紙12の加熱に応じて冷却器28を作動させる。
【0018】
インターフェース34は、ファックス受信用のモデム装置、RS232C等の通信ポート、有線LAN(Local Area Network)、USB(Universal serial Bus)、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.1x等の無線LAN、又はブルートゥース(Bluetooth)等の近距離無線方式である。
【0019】
図3及び図4は、図1のA−A線から見た断面図を示す。図3は、ユニット22Aのサーマルヘッド50Aが感熱紙12に密着した状態を示し、図4は、ユニット22Aのサーマルヘッド50Aを感熱紙12から引き離した状態を示す。通常は、図3に示す状態にあり、感熱紙12を交換するときに、一時的に図4に示す状態にされる。
【0020】
サーマルヘッド50Aがサブベース板52A上に固定されている。サブベース板52Aの裏面に複数のピン54Aが植立されている。各ピン54Aは、コイルバネ56A及びベース板58Aの孔60Aを貫通し、その先端にボルト(又はEリング等)62Aを固定されている。各ピン54Aの先端にボルト62Aを固定することで、サブベース板52Aがベース板58Aから外れるのを防止する。ベース板58Aは、図示しない筐体に固定されている。コイルバネ56Aは、サブベース板52Aをベース板58Aから引き離す方向に付勢するように調整されている。従って、放置した状態では、図3に示すように、サーマルヘッド50Aは、コイルバネ56Aにより感熱紙12に押し付けられている。
【0021】
サーマルヘッドユニット22Bの構成も、サーマルヘッドユニット22Aの構成と全く同じであり、サーマルヘッドユニット22Bのサーマルヘッド50Bも、サーマルヘッドユニット22Bのコイルバネ56Bにより感熱紙12に押し付けられている。
【0022】
例えば、感熱紙12の横幅は、A1規格の用紙幅593mmより若干大きめになっている。開口窓20の高さを、A1規格の用紙高さ841mm程度とすることで、表示域がほぼA1サイズとなる。本実施例では、感熱紙12の横幅を2つのサーマルヘッドユニット22A,22Bで分割して担当するので、サーマルヘッド50A,50Bとしては、A3規格の横幅に対応できるものであればよい。
【0023】
本実施例の感熱紙12は、摂氏180度程度に加熱すると黒く発色し、その後の冷却で、発色状態が固定化される。また、より低温の120度乃至160度程度に加熱すると、発色状態が消えて消色状態となり、その後の冷却で、消色状態が固定化される。これらの発色温度及び消色温度は、使用する感熱紙により異なる。
【0024】
本実施例の基本動作を説明する。PC40からインターフェース36を介してコントローラ24に表示すべき内容を示す表示データを転送する。コントローラ32は、表示データをビットマップ画像データに展開してメモリ34に格納する。操作上は、PC40は、本実施例の表示装置10をプリンタと見做して表示データを表示装置10に送信する。
【0025】
コントローラ32は、消去用サーマルヘッド26を感熱紙12の表示内容を消去し得る消去温度に加熱できるような消去電流を消去用サーマルヘッド26に印加する。そして、適宜にモータ18により駆動ローラ14を回転させて、感熱紙12を搬送する。感熱紙12の搬送に応じて、コントローラ24は、メモリ34から印字すべき内容のビットマップ画像データを読み出し、サーマルヘッドユニット22A,22Bのサーマルヘッド50A,50Bに印加する。勿論、サーマルヘッドユニット22A,22Bが感熱紙12の送り方向でずれているので、コントローラ24は、このずれ量に応じた位置の画像データをメモリ34から読み出して、各サーマルヘッド50A,50Bに印加する。
【0026】
サーマルヘッド50A,50Bは、感熱紙12の横幅方向で部分的に重なっている。コントローラ24は、各ヘッド50A,50Bが担当する印字部分が重ならないように、印字データをサーマルヘッド50A,50Bに印加する。この調整又は設定は、供用前に行えばよい。
【0027】
サーマルヘッドユニット22A,22Bのコイルバネ56A,56Bによるバウンド防止の作用を説明する。図5、図6及び図7は、感熱紙12のつなぎ目部分を拡大して図示した側面図を示す。図5は、サーマルヘッド50Aがつなぎ目に到達する直前の状態を示し、図6は、サーマルヘッド50Aがつなぎ目に乗った状態を示し、図7は、サーマルヘッド50Aがつなぎ目を通り過ぎた直後の状態を示す。
【0028】
つなぎ目部分では、基本的に、感熱紙12の厚みは、他の部分のほぼ2倍になる。本実施例では、コイルバネ56Aによりサーマルヘッド50Aを常時、感熱紙12に押し付けているので、つなぎ目の直前(図5)から、つなぎ目上(図6)、そして、つなぎ目の後(図7)に至るまで、サーマルヘッド50Aは、感熱紙12に密接した状態に維持される。従って、つなぎ目による段差に関わらず、印字かすれ無しで、又は、目立った印字かすれを生じることなしに、感熱紙12に印字することができる。換言すると、感熱紙12のつなぎ目位置を気にすることなしに、印字を行える。
【0029】
このような作用のため、本実施例のコイルバネ56A,56Bは、感熱紙12の厚みを超える復元長又は可動長を有する。
【実施例2】
【0030】
上記実施例では、感熱紙12を挟むローラとサーマルヘッドの内の、サーマルヘッドを弾性的に感熱紙12に押し付けたが、この逆に、ローラを感熱紙12に押し付けても良い。図8は、サーマルヘッドを固定とし、プラテンローラをサーマルヘッドに向けて、弾性的に付勢する実施例の側面図を示す。実施例1と同じ構成要素には同じ符号を付してある。実施例1と異なる要素を説明する。
【0031】
サーマルヘッド70は、ベース板72に固定されている。ベース板72は、図示しない筐体に固定されるか、感熱紙12の交換の際に、サーマルヘッド70を感熱紙12の走行域から退避する可動機構を介して、図示しない筐体に固定されている。
【0032】
サーマルヘッド70に感熱紙12を介して対面する位置に、プラテンローラ74が配置されている。プラテンローラ74の回転軸76は、その両端で、コイルバネ78により感熱紙12に向けて弾性的に付勢されている。各コイルバネ78の他端は、筐体に固定されるベース板80に固定されている。
【0033】
コイルバネ78の作用により、プラテンローラ74が、常時、サーマルヘッド70に向けて弾性的に付勢されているので、感熱紙12は、そのつなぎ目以外の部分でも、つなぎ目の部分でも、サーマルヘッド60に常に押し当てられることになる。この結果、感熱紙12のつなぎ目の前、途中及び後のどの段階でも、サーマルヘッド70が感熱紙12に密着する。コイルバネ78は、実施例1のコイルバネ56A,56Bと同様に、感熱紙12の厚みを超える復元長又は可動長を有する。
【0034】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1の主要機構部の斜視図である。
【図2】実施例1の機能ブロック図である。
【図3】図1のA−A線から見た断面図であって、サーマルヘッド50Aが感熱紙12に密着した状態を示す図である。
【図4】図1のA−A線から見た断面図であって、サーマルヘッド50Aをコイルバネ56Aに抗して感熱紙12から引き離した状態を示す図である。
【図5】サーマルヘッド50Aが感熱紙12のつなぎ目の直前に位置する状態の側面図である。
【図6】サーマルヘッド50Aが感熱紙12のつなぎ目に乗った状態の側面図である。
【図7】サーマルヘッド50Aが感熱紙12のつなぎ目を通過した後の側面図である。
【図8】本発明の実施例2の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
10:表示装置
12:書換え可能感熱紙
14:駆動ローラ
16:従動ローラ
18:モータ
20:筐体の開口(表示窓)
22A,22B:サーマルヘッドユニット
26:消去用サーマルヘッド
28:冷却器
30:コントロールボックス
32:コントローラ
32:メモリ
34:インターフェース
40:コンピュータ(PC)
50A,50B:サーマルヘッド
52A,52B:サブベース板
54A,54B:ピン
56A,56B:コイルバネ
58A,58B:ベース板
60A:孔
62A:ボルト
70:サーマルヘッド
72:ベース板
74:プラテンローラ
76:回転軸
78:コイルバネ
80:ベース板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端を重ねて接着してエンドレスのループ状にされた書換え可能感熱紙であって、発色温度への加熱により発色し、消色温度への加熱により消色する書換え可能感熱紙(12)と、
当該書換え可能感熱紙(12)を循環的に搬送する紙送り機構(14,16,18)と、
当該感熱紙(12)を加熱するサーマルヘッド(50A,70)と、
当該書換え可能感熱紙(12)のつなぎ目の重なり部分に対して当該サーマルヘッド(50A,70)と当該書換え可能感熱紙(12)とを互いに密接状態に保持するように、当該サーマルヘッドと当該書換え可能感熱紙(12)の一方を弾性的に付勢する弾性部材(56A,78)
とを具備することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
当該弾性部材は、当該サーマルヘッド(50A)を当該書換え可能感熱紙(12)に弾性的に押し付ける手段(56A)であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
当該弾性部材が、当該書換え可能感熱紙の厚みを超える復元長を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−93872(P2008−93872A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275885(P2006−275885)
【出願日】平成18年10月9日(2006.10.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000248336)株式会社幸立工業 (3)
【Fターム(参考)】