説明

表示装置

【課題】合成映像の制作時において、仮想対象物の高さ等の位置情報や仮想対象物の動き等の動作情報を出演者が目視できるように表示する表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る表示装置100は、クロマキー処理を用いた合成映像の制作時において、出演者が目視可能な被写体位置情報を表示するためのものであり、被写体位置情報を示す複数の光源を内部に配置した筒状体1と、筒状体1を支持する支持体2と、光源の点灯及び消灯を制御する制御部3と、を備え、筒状体1及び支持体2の外装側がクロマキーバックと同色で形成されている。そして、光源6が、クロマキーバックと同色に検出される光量で点灯するか、またはクロマキー処理に影響を与えない撮影カメラの非撮影期間内に点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマキー処理を用いた合成映像の制作時において、出演者が目視可能な被写体位置情報を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビや映画等の撮影現場では、現実では撮影不可能なシーンの収録や作業効率の向上のために、クロマキー(Chroma key)処理といわれる合成映像の処理が行われる。クロマキー処理(クロマキー合成)とは、前景となる映像内の青や緑等の単色の映像領域に、他の映像を背景として合成することであり、通常、青や緑等の背景を有する撮影ショットから、前景にある対象物を抽出し、新しい背景を含む別のショットと合成する処理のことをいう。
【0003】
このようなクロマキー処理が行われる合成映像の制作現場においては、テレビや映画等の出演者の合成用キー信号を生成するために、床や壁が青色等の単色に染められた特殊なスタジオで撮影を行なうが、その際に、出演者は合成される被写体(対象)をスタジオ内で直接見ることができない。従って、出演者は、合成される被写体を想像しながら、何もない空間に向って話しかける演技をしなければならなかった。
【0004】
そのため、従来から非特許文献1にあるようないわゆる「場ミリ」と呼ばれる手法が用いられていた。「場ミリ」とは、スタジオの床や壁に、これらと同色のテープ等を貼り付けて、合成される対象の位置等を示す目印として用いる手法であり、出演者は、この「場ミリ」が張られた位置を合成される被写体の位置と想定して、演技を行なっていた。
【0005】
また、特許文献1には、上記「場ミリ」の代わりに照明光を用い、テレビカメラによる被写体像の取り込みから次の被写体像の取り込みの間に照明光を照射することで、当該照射光をテレビカメラに映らないように出演者に指示を行なう照明方法が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、上記「場ミリ」の代わりに出演者に対する具体的な指示を投影した映像を用い、テレビカメラによる撮影期間を除く期間に間欠的に前記投影映像を表示することで、当該投影映像をテレビカメラに映らないように出演者に指示を行なう表示装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、上記「場ミリ」の代わりにクロマキー処理によって合成される実際の合成映像を用い、テレビカメラによる撮影期間を除く期間に前記合成映像を表示することで、当該合成映像をテレビカメラに映らないようにし、出演者に演技を行なわせる時分割表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4047554号公報
【特許文献2】特許第4047622号公報
【特許文献3】特開2007−316127号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ウィキメディア財団、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」、[2009年5月25日検索]、インターネット、<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%AD%E7%95%8C%E7%94%A8%E8%AA%9E>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献1に係る方法では、撮影映像に「場ミリ」が映ってしまう場合があった。また、複数の「場ミリ」が設置されていると、出演者がどれを見ればよいかを瞬時に判断できず、出演者に対する正確な指示が困難であるという問題があった。
【0011】
また、高さ方向の情報を表示するために、例えばスタジオの床や壁と同色のポールに「場ミリ」を貼ると、背景と同化してしまうため出演者にとって視認性が悪い場合があった。さらに、合成対象物が移動する場合に「場ミリ」を移動させることができず、出演者の目線が常に固定されて撮影映像が不自然になるという問題があった。
【0012】
特許文献1の照明方法では、明るいスタジオ内での視認性を上げるためにレーザポインタを用いることとなるが、対面する人物を示すような場合(合成される被写体が人間である場合)には、その場所にレーザポインタを当てる対象物を設置しなければならない。また、誤って出演者の眼に照射されると演技に支障をきたし、さらに安全の観点からも好ましくないという問題があった。
【0013】
特許文献2の表示装置では、明るいスタジオ照明下では十分な視認性を確保することができないという問題があった。
【0014】
特許文献3の時分割表示装置では、映像を投射するための装置自体が大型化し、操作運用面の観点から利用しにくいという問題があった。
【0015】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであって、合成映像の制作時において、仮想対象物の高さ等の位置情報や仮想対象物の動き等の動作情報を出演者が目視できるように表示する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために請求項1に係る表示装置は、クロマキー処理を用いた合成映像の制作時において、出演者が目視可能な被写体位置情報を表示するための表示装置であって、前記被写体位置情報を示す複数の光源を内部に配置した筒状体と、前記筒状体を支持する支持体と、前記光源の点灯及び消灯を制御する制御部と、を備え、前記筒状体及び前記支持体の外装側が、前記クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色で形成され、前記光源は、前記クロマキーバックと同色に検出される光量で点灯するか、または前記クロマキー処理に影響を与えない撮影カメラの非撮影期間内に点灯する構成とする。
【0017】
このような構成を備えることにより、表示装置は、クロマキーバックと同色の支持体に筒状体が支持され、制御部が光源を点灯させることにより、所望の空間に合成される被写体の位置情報を表示することができる。そして出演者は点灯している光を見ることにより、視線のあった自然な演技を行なうことができる。
また、表示装置がクロマキーバックと同色で形成され、かつ、表示装置の光源が照射する光が撮影カメラで撮影できない間欠光であるため、表示装置はクロマキーバックと同化し、光源が照射する光は撮影カメラで撮影されない。
【0018】
また、請求項2に係る表示装置は、前記筒状体は、前記光源から照射された光を透過する透過領域と、前記光源から照射された光を遮断する遮断領域と、を有する構成とする。
【0019】
このような構成を備えることにより、表示装置は、筒状体を透過領域と遮断領域とから構成することで、筒状体内部の光源から照射される光の光量をクロマキー処理に適した光量に調整することができる。
【0020】
また、請求項3に係る表示装置は、前記支持体が、前記筒状体を床面に立設させるように支持する支持本体と、前記支持本体の底部に取り付けられた車輪部と、前記支持本体の床面側となる端部周縁に所定間隔で設けた消影用ランプと、を有し、前記消影用ランプは、前記クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色の光で点灯する構成とする。
【0021】
このような構成を備えることにより、表示装置は、車輪部により支持体を移動することができる。また、表示装置に車輪部を設けることで生じた支持体と床面との間の高さを原因とする影に対して、消影用ランプがクロマキーバックと同色で点灯することにより、クロマキーバックと同化させることができる。
【0022】
また、請求項4に係る表示装置は、前記筒状体が、可撓性を有する素材で形成され、前記支持体は、前記筒状体を天井側に吊り下げる吊下支持体であり、前記吊下支持体は、前記クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色または透明色で形成された構成とする。
【0023】
このような構成を備えることにより、表示装置は、筒状体を天井側から吊下支持体で吊るして支持すると、例えば目標となる光源位置を制御部により連続的に変化させることで、被写体位置の移動する経路を表示することができる。
【0024】
また、請求項5に係る表示装置は、前記筒状体が、可撓性を有する素材で形成された構成とする。
【0025】
このような構成を備えることにより、表示装置は、可撓性を有する筒状体により、被写体となる筒状体の形状を変化させることができ、また、被写体位置の移動する経路を自由に表示することができる。
【0026】
また、請求項6に係る表示装置は、前記制御部が、前記光源の点灯及び消灯に関する信号であるワイヤレス信号を受信する無線受信部を備え、前記ワイヤレス信号に基づいて、前記光源の点灯及び消灯を制御する構成とする。
【0027】
このような構成を備えることにより、表示装置は、表示装置の光源の点灯及び消灯をワイヤレスで制御することができる。従って、機器間のケーブルを合成後の映像から除去する手間を省略することができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る表示装置によれば、出演者は、表示装置の光源の位置を見ることにより、クロマキー処理によって合成される被写体の位置情報を確認することができる。すなわち、合成映像の制作時において、出演者は正しい位置に視線を向けることが可能となり、合成映像の品質が向上する。また、制御部によって任意のタイミングで光源を点灯させたり、点滅させたりすることで、出演者に対して、位置情報だけではなく、動き始めのタイミングや演技のきっかけ等の指示も提供することができ、合成される被写体の動きに合わせた自然な演技やカメラワークが可能となる。したがって、合成映像の品質が向上する。
また、光源から照射される光の色を赤やオレンジ等のクロマキー処理にあまり適さない色とした場合であっても、光源を間欠点灯させることによって撮影カメラに映らなくなるため、クロマキー処理に悪影響を及ぼすことがない。
【0029】
請求項2に係る表示装置によれば、筒状体を透過する光源の光の光量を調節することで、容易にクロマキー処理を行うことができる。
【0030】
請求項3に係る表示装置によれば、クロマキー処理によって合成される被写体の高さに関する情報を出演者に対して表示することができる。また、消影用ランプによって、合成映像に悪い影響を及ぼすスタジオ照明による影を消去することで、当該影を隠すための布やパネルの装着作業や、別のスタジオ照明照射による影の除去作業、撮影映像に映った影の除去作業が不要となり、作業効率を向上させることが可能となる。
【0031】
請求項4に係る表示装置によれば、クロマキー処理によって合成される被写体の高さ及び位置、そして移動経路に関する情報を表示することができる。すなわち、合成される被写体が空中に存在する場合であっても、出演者は正しい位置に視線を向けることが可能となり、合成映像の品質が向上する。
【0032】
請求項5に係る表示装置によれば、光源を内部に配置した筒状体を被写体の移動経路に沿って変形させることにより、クロマキー処理によって合成される被写体の高さ及び位置、そして移動経路に関する情報をより忠実に表示することができる。従って、出演者は正しい位置に視線を向けることが可能となり、合成映像の品質が向上する。
【0033】
請求項6に係る表示装置によれば、様々なケーブルが交差するとともに、多くの精密機器が用いられる撮影スタジオ内において、表示装置の運用性を向上させるとともに、ケーブルと出演者またはカメラとの接触を防止することができるため、撮影時の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る表示装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA部拡大図であり、本発明に係る表示装置における筒状体と光源の構成について、一部を省略して示す図である。
【図3】図1のB部拡大図であり、本発明に係る表示装置における筒状本体のメッシュ構造について、一部を省略して示す平面図である。
【図4】本発明に係る表示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る表示装置の第1実施形態の使用状態を示す図であり、(a)は、第1実施形態に係る表示装置を実際の撮影スタジオで使用した場合の概略図、(b)は、クロマキー処理後の合成映像の概略図である。
【図6】本発明に係る表示装置の第2実施形態を示す図であり、(a)は、第2実施形態に係る表示装置の構成を示す斜視図、(b)は、第2実施形態に係る表示装置によって表示する被写体のイメージ図である。
【図7】本発明に係る表示システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1,2に示すように、本発明に係る表示装置100は、筒状体1と、光源6が点灯することにより形成される点灯部1aと、筒状体1を支持する支持本体2aを備える支持体2と、点灯部1aの点灯及び消灯を制御する制御部3と、を主な構成として備えており、支持本体2aの底部に取り付けられた車輪部2bと、支持本体2aの床面側端部に設けられた消影用ランプ2cとを付加的な構成として備えている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0036】
表示装置100は、テレビや映画等におけるクロマキー処理を用いた合成映像の制作時に、出演者が目視可能な被写体位置情報を表示するためのものである。ここで、被写体位置情報とは、例えば合成される被写体の高さや位置等の情報のことをいう。表示装置100は、合成される被写体の高さに合わせて後記する光源6を点灯させることにより、被写体位置情報を表示することができる。そして、出演者は、当該被写体位置情報を見ながら演技することで、合成後の映像において自然でリアルな演技を行なうことができる。
【0037】
表示装置100の光源6に対する点灯の指示は、後記する無線制御装置5(図7参照)によりワイヤレスで行なうことが好ましい。このように光源6に対する点灯の指示をワイヤレスで行なうことにより、様々なケーブルが交差するとともに、多くの精密機器が用いられる撮影スタジオ内における表示装置100の運用性が向上する。なお、光源6に対する点灯の指示を有線で行う場合は、表示装置100と、光源6の点灯を指示するための制御装置との間のケーブルをクロマキーバックと同色で形成する。もしくは、クロマキーバックと同色のカバーやテープ等により覆い隠すことで、合成に影響を及ぼさなくなる。
【0038】
筒状体1は、図1に示すように、後記する支持本体2aによって立設されるように支持された円筒状の部材である。筒状体1の内部には、複数の光源6が配置されており、当該光源6は、後記するように、合成される被写体の高さに合わせて点灯するように制御部3によって制御されている。なお、複数の光源6は、表示したい被写体位置に合わせて、筒状体1の内部に一定の間隔あるいは、ランダムに配置することができる。また、筒状体1は、クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色の素材で形成されるか、同色に着色されているため、クロマキー処理によって容易に除去することができる。筒状体1は、点灯部1aを1つまたは複数有しており、また、1aは内部に光源取付部材1bと、芯材1dと、筒状本体1eと、を備えている。
【0039】
点灯部1aは、筒状体1内部の光源取付部材1bと芯材1dとによって仕切られた空間内を、光源6が点灯することで形成されるものである。
光源6は、図2に示すように、合成される被写体の高さに合わせて点灯することで、被写体の高さに関する被写体位置情報を表示するものである。光源6は、例えばLED等の小型照明灯体から構成されており、筒状体1の内部に複数配置されている。
【0040】
光源6は、ここでは、後記する光源取付部材1bの底部に、下方向に向けて2つ配置されるとともに、光源取付部材1bの上部に、上方向に向けて2つ配置されている。また、光源6は、図2に示す上段の光源取付部材1bの底部に配置された光源6と、下段の光源取付部材1bの上部に配置された光源6とが90度ずれるように配置されている。そして、光源6は、この8つを一セットにして、例えば、筒状体1の軸方向に13段分の点灯部1a(光源取付部材1bが14枚、光源6は52個)が配置される場合、最上段の光源取付部材1bには底部のみに、最下段の光源取付部材1bには上部のみに光源6が配置される。
【0041】
光源6は、後記する制御部3から点灯指示が送られると、合成される被写体の高さに合わせて、前記した上段の光源取付部材1bの底部に配置された光源6と、下段の光源取付部材1bの上部に配置された光源6とが同時に点灯する。その際、上段の光源取付部材1bの底部に配置された光源6から下方向に照射された光は、下段の光源取付部材1bの上部に反射して拡散する。また、下段の光源取付部材1bの上部に配置された光源6から上方向に照射された光は、上段の光源取付部材1bの底部に反射して拡散する。そして、この拡散した光は、後記する筒状本体1eから外部に向ってリング状に点灯部1aとして照射される。
【0042】
光源6は、クロマキー処理に用いられるクロマキーバックと同色の色をクロマキーバックと同色に検出される光量で光を照射するように構成するか、クロマキー処理に影響を与えない撮影カメラの非撮影期間内に光を照射するように構成するここで、クロマキーバックとは、合成映像の撮影時における撮影スタジオの背景色(床や壁の色)のことを指し、例えば青色、または緑色等が挙げられる。
【0043】
本発明に係る表示装置100では、光源6からクロマキーバックと同色の光をクロマキーバックと同色に検出される光量で照射させることで、光源6を連続して点灯した状態であっても、光源6から照射された光をクロマキーバックと同化させ、適切にクロマキー処理を行うことができる。また、光源6から、クロマキー処理に影響を与えない撮影カメラの非撮影期間内に光を照射させることで、後記するように撮影カメラに当該光が映らないようにすることができる。従って、光源6は、出演者には目視することができるが、合成後の映像には残らない光を照射することができ、クロマキー処理に悪影響を与えずに、被写体位置情報を表示することができる。なお、撮影カメラの非撮影期間における間欠点灯については後記する。
【0044】
なお、本発明に係る表示装置100を用いたクロマキー処理においては、クロマキーバックを青色とした上で、光源6から照射する光を青色にすることがさらに好ましい。光源6としてクロマキー処理に適した青色を用いることで、光源6の光をクロマキーバックに同化させることができるためである。なお、クロマキーバックと同色とは、例えばクロマキーバックが青色の時、青色の同系色となる藍・青緑であっても、実際に表示してクロマキー処理に使用できる色であればよい。
【0045】
光源取付部材1bは、図2に示すように、複数の光源6を周方向に配置するための円盤板状の部材であり、後記する芯材1dの軸方向に複数挿通して取り付けられている。光源取付部材1bは、光を反射する白色の素材で形成されるか、白色に着色されている。また、側面は、クロマキーバックと同色とする。
【0046】
光源取付部材1bは、軸方向の内側に形成された光源6が点灯すると、その光を内部で反射して拡散させる。そして、その光は筒状本体1eを透過して外周方向にリング状に点灯部1aとして照射される。すなわち、筒状体1は、光源取付部材1bで仕切ることによって、図1に示すように、光源6から照射された光を透過する透過領域、すなわち点灯部1aと、光源6から照射された光を遮断する遮断領域とを、筒軸方向に形成することができる。そして、光源6の光を透過領域から外部に照射することにより、合成される被写体の位置情報を表示することができる。
【0047】
ここで、上段と下段の光源取付部材1bの間隔は、リング状に照射される光の縦方向の厚さが12〜17mmとなるように調節することが好ましい。リング状に照射される光の縦方向の厚さが12mm未満だと、リングが細すぎて視認性が低下する。一方、17mmを超えると、光が照射される空間が広くなり、視認性が低下し、特定が困難となる場合がある。
【0048】
芯材1dは、筒状体1の内部に挿通させて、光源取付部材1bを軸方向に複数取り付けるための部材である。芯材1dは、例えば図2に示すように、角柱状に形成された部材で構成することができるが、その断面形状は問わない。
【0049】
筒状本体1eは、光源6、光源取付部材1b、芯材1dを外側からカバーするとともに、光源6から照射された光を遮断あるいは外部に透過させる部材である。筒状本体1eの素材としては、例えば、ポリ塩化ビニルを用いることができる。
【0050】
次に、図3を参照して、筒状本体1eの詳細について説明する。
筒状本体1eは、ここでは、光源6から照射された光を遮断する遮断部1fと、光源6から照射された光を透過する透過部1gとからなるメッシュ構造の光抑制シートを備えている。
【0051】
遮断部1fは、クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色の素材で形成されるか、あるいは、同色に着色されており、筒状本体1e内部の光源6から照射された光を遮断する。
【0052】
透過部1gは、複数の微細な孔から均一に構成されており、当該孔を通じて、筒状本体1e内部の光源6から照射された光を遮断することなく透過させる。出演者は、透過部1gを透過して外部に照射された光を見ることで、合成される被写体の位置情報を容易に認識することができる。
【0053】
図3を平面視した場合における透過部1gの開口横長さa−a’は、例えば0.6〜1.2mmが好ましく、透過部1gの開口縦長さb−b’は、例えば0.3〜0.9mmが好ましい。また、透過部1gの間のピッチc−c’及び d−d’は、1.5〜2.5mmが好ましい。遮断部1fと透過部1gとの関係を当該範囲内とすることにより、筒状本体1eから外部に照射される光の量を適切に調整するとともに、撮影カメラにより筒状本体1eを撮影しても、合成時に筒状本体1eを適切に除去することができる。
【0054】
遮断部1fと透過部1gの面積比は、10:0.8〜2.0で、かつ透過部1gの面積は0.4〜0.5mmとすることが好ましい。ここで、この面積比と面積は、当該面積比及び面積から構成される筒状本体1eの内部で光源6を点灯させた場合に、点灯の視認性を確保するとともに、光源6が点灯していないときでも、筒状本体1eをクロマキー処理で適切に除去することができる、遮断部1fと透過部1gの面積比及び透過部1gの面積である。
【0055】
すなわち、遮断部1fの面積を10とした場合の透過部1gの面積が2.0を超える、または透過部1gの面積が0.5mmを超える場合、撮影カメラに撮影された透過部1gがクロマキー処理を行っても除去されず、合成映像に悪影響を与える可能性がある。一方、遮断部1fの面積を10とした場合の透過部1gの面積が0.8未満、または透過部1gの面積が0.4mm未満の場合、透過される光量が低くなり、出演者が被写体の位置情報を確認することが困難となる可能性がある。なお、光源6により高輝度な素材を用いることにより、透過部1gの面積比または面積をより下げることも可能である。
【0056】
ここで、光源6は、クロマキー処理で除去できるように、クロマキー処理に悪影響を及ぼさない光量で点灯させることが好ましい。ここで、クロマキー処理に悪影響を及ぼさない光量とは、光源6を点灯してもクロマキー処理の際にクロマキーバックと同化し、合成に悪影響を与えることない光量のことをいう。当該光量は、予めクロマキーバックで青色の光源を点灯させて、カメラで認識できない光量(光量の上限)を設定し、かつ、その設定した光量から、出演者が認識できる光量(光量の下限)を設定することでその範囲を確認することができる。
【0057】
この光量の上限と下限は、前記したように、筒状本体1eの遮断部1fと透過部1gの大きさを所定範囲内とすることで、調整することができる。すなわち、前記したように、図3を平面視した場合における透過部1gの開口横長さa−a’を、例えば0.6〜1.2mm、透過部1gの開口縦長さb−b’を例えば0.3〜0.9mmとし、さらに、透過部1gの間のピッチc−c’及び d−d’を1.5〜2.5mmとすることで、調整することができる。なお前記したように、その際の遮断部1fと透過部1gの面積比は、10:0.8(光の下限)〜2.0(光の上限)で、かつ透過部1gの面積は、0.4〜0.5mmとすることが好ましい。
【0058】
このように筒状本体1eの遮断部1fと透過部1gの大きさを所定範囲内に調整して光源6の光量をクロマキーバックと同色に検出される光量とすることにより、光源6をクロマキーバックと同色で常時点灯させても、クロマキー処理を行うことができる。
【0059】
そして、本発明に係る表示装置100は、前記したように筒状本体1eを遮断部1fと透過部1gとのメッシュ構造に形成することにより、光源6を点灯していないときでも、筒状本体1eをクロマキーバックと同化させて適切にクロマキー処理を行うことができ、また、光源6を点灯したときには、高い視認性をもって位置情報を得ることができる。
【0060】
図1に戻って、本発明に係る表示装置100の残りの構成について説明する。
支持体2は、筒状体1を支持する部材であり、ここでは、支持本体2aと、車輪部2bと、消影用ランプ2cとを備えている。
【0061】
支持本体2aは、図1に示すように、筒状体1を床面に立設させるように支持する部材である。支持本体2aは、先端を平面に切り欠いた四角錐状に形成されている。支持本体2aは、表示装置100の移動を容易にするために、プラスチック等の軽量な素材で形成することが好ましい。また、支持本体2aは、クロマキー処理で除去するために、クロマキーバックと同色の素材で形成されるか、あるいは、同色に着色されている。
【0062】
車輪部2bは、支持本体2aの底部に取り付けられた部材であり、本発明に係る表示装置100を移動自在とするものである。車輪部2bは、例えば図1に示すように、底部に4つ取り付けることができる。クロマキー処理が行われるテレビや映画等の撮影現場では、作業効率向上のために、撮影に使用する表示装置100を速やかに移動させる必要がある。従って、車輪部2bを設けることにより、撮影現場における作業効率を向上させることができる。
【0063】
消影用ランプ2cは、筒状体1及び支持体2により発生する影Wをクロマキー処理で取り除きやすくするために、当該影Wに向って、クロマキーバックと同色の光(例えば青色の光)を照射するものである。消影用ランプ2cは、図1に示すように、下方、すなわち影Wに向けて、光を照射できるように、支持本体の2aの床面側となる端部周縁に、下方に向けて所定間隔で設けられている。なお、必要な所定間隔とは、照明の照射によるムラを生じないための照明密度のことである。
【0064】
撮影現場では、図1に示すように、支持体2を原因とする影Wが発生するが、消影用ランプ2cを設けてクロマキーバックと同色の色を照射することにより、クロマキー処理では影Wが除去されて、合成映像には残らない。なお、消影用ランプ2cは、後記するように撮影カメラの撮影期間のみクロマキーバックと同色で点灯させるように間欠点灯させることにより、電力消費を抑えながら影Wをクロマキーバックに同化させることもできる。
【0065】
なお、本発明に係る表示装置100では、図1の筒状体1と支持本体2aとの間の隙間2dに隙間影が発生する場合も考えられるが、この場合は、例えば筒状体1の下方の端部周辺に別途消影用ランプを設けて、当該隙間影にクロマキーバックと同色の色を照射し、クロマキー処理によって除去することもできる。
【0066】
制御部3は、光源6及び消影用ランプ2cの点灯及び消灯を制御するものである。制御部3は、図1に示すように、例えば支持本体2aの内部に設けられるが、筒状体1の内部に設けても構わない。
【0067】
制御部3は、光源6が間欠的に点灯するように制御することもできる。すなわち、電子シャッター機能を用いた撮影カメラの撮影期間に光源6を消灯し、撮影カメラの非撮影期間に光源6が点灯するように、光源6を制御することで、撮影カメラによって光源6の光を撮影できないように構成することができる。
【0068】
本発明に係る表示装置100は、このように構成することによって、光源6から照射される光の色を、赤やオレンジ等のクロマキー処理にあまり適さない色とした場合であっても、クロマキー処理に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、クロマキーバックと同色で点灯する場合でも、クロマキー処理に影響を及ぼすような明るさで光源6を点灯させる場合であっても、撮影カメラの非撮影期間のみ間欠点灯させることで、クロマキー処理に影響を及ぼすことなく、視認性の向上を図ることができる。
【0069】
本発明に係る表示装置100は、このような構成を備えることにより、合成される被写体の高さ方向の位置に合わせて、光を全方向に対してリング状に照射することができる。従って、出演者は表示装置100を360度どの角度から見ても、被写体位置情報を目視することができる。そして、出演者は、当該光源6から照射された光を合成される被写体の高さ(例えば被写体が人間であれば、人間の目や背の高さ)と想定することで、正しい位置に視線を向けることが可能となり、リアルで自然な演技を行なうことができる。
【0070】
次に、図4を参照して、光源6あるいは消影用ランプ2cを間欠点灯させる場合における制御部3の構成について説明する。制御部3は、ここでは情報提示制御部3aと、間欠点灯制御部3bとから構成される。
【0071】
情報提示制御部3aは、撮影カメラの同期信号Eと、光源6を点灯させるための制御信号Fから、情報提示制御信号Iを生成するものであり、ここでは垂直同期分離回路31と、エンコーダ32と、パラレルシリアル変換回路33と、を備えている。
【0072】
垂直同期分離回路31は、撮影カメラの同期信号Eから垂直同期信号Gを分離して生成するものである。ここで、同期信号Eは、NTSCやハイビジョンなど、ビデオ映像のフレーム相互の同期を取るための基準信号であり、撮影フィールドを規定する垂直同期信号と、水平方向の信号折り返しを規定する水平同期信号とから構成される。
【0073】
エンコーダ32は、制御信号Fから複数ある光源6のどれを点灯させるかについての信号である点灯制御信号Hを生成するものである。ここで、制御信号Fは、撮影現場のスタッフが図示しないスイッチ等を任意のタイミングで押下することで生成されるか、あるいは、図示しないタイミング装置により任意のタイミングで自動的に生成される信号である。
【0074】
パラレルシリアル変換回路33は、垂直同期信号Gと点灯制御信号Hを混合して情報提示制御信号Iを生成するものである。なお、間欠点灯させるための制御部3の構成は、ここで説明するものに限定されるものではなく、既に知られている構成であっても問題ない。
【0075】
間欠点灯制御部3bは、情報提示制御信号Iによって、複数ある光源6のいずれかを撮影カメラの非撮影期間のみ間欠点灯させるものであり、ここではシリアルパラレル変換回路34と、垂直同期生成回路35と、デコーダ36と、光源用ドライバ37と、消影用ランプ用ドライバ38と、を備えている。
【0076】
シリアルパラレル変換回路34は、情報提示制御信号Iを同期信号Jと点灯制御信号Kに分離するものである。また、垂直同期生成回路35は、同期信号Jから垂直同期信号Lを生成するものである。また、デコーダ36は、点灯制御信号Kから、どの光源6を点灯させるかについての信号である点灯制御信号Mを生成するものである。
【0077】
光源用ドライバ37は、垂直同期信号Lと点灯制御信号Mを混合して光源制御信号Pを生成するものである。また、消影用ランプ用ドライバ38は、垂直同期信号Lから消影用ランプ制御信号Nを生成するものである。
【0078】
次に、光源6あるいは消影用ランプ2cを間欠点灯させる場合における制御手順について詳細に説明する。
まず、図示しない撮影カメラから垂直同期分離回路31に対して同期信号Eが、エンコーダ32に対して制御信号Fが入力される。垂直同期分離回路31は、同期信号Eから垂直同期信号Gを分離して生成し、パラレルシリアル変換回路33に入力する。また、エンコーダ32は、制御信号Fから点灯制御信号Hを生成し、パラレルシリアル変換回路33に入力する。
【0079】
パラレルシリアル変換回路33は、垂直同期信号Gと点灯制御信号Hを混合し、情報提示制御信号Iを生成する。そして、情報提示制御信号Iを間欠点灯制御部3bのシリアルパラレル変換回路34に入力する。シリアルパラレル変換回路34は、情報提示制御信号Iを同期信号Jと点灯制御信号Kとに分離し、それぞれを垂直同期生成回路35とデコーダ36に入力する。
【0080】
垂直同期生成回路35は、同期信号Jから垂直同期信号Lを生成し、光源用ドライバ37及び消影用ランプ用ドライバ38に入力する。また、デコーダ36は、点灯制御信号Kから、点灯制御信号Mを生成し、光源用ドライバ37に入力する。
【0081】
光源用ドライバ37は、垂直同期信号Lと点灯制御信号Mを混合して光源制御信号Pを生成し、各光源6に入力する。そして、点灯制御信号Mが指示する位置にある光源6は、垂直同期信号Lのタイミングを基に求められる、撮影カメラの非撮影期間のみ点灯するように、間欠点灯制御する。
【0082】
消影用ランプ用ドライバ38は、垂直同期信号Lから消影用ランプ制御信号Nを生成して消影用ランプ2cに入力する。そして、消影用ランプ2cは、消影用ランプ制御信号Nのタイミングを基に求められる、撮影カメラの撮影期間のみ点灯するように、間欠点灯制御して、図1の影をクロマキーバックと同色にする。また、光量調整装置4によって光量調整信号Oが消影用ランプ用ドライバ38に入力されることで、消影用ランプ2cの光量を調整することができる。
【0083】
以下、図5を参照して本発明に係る表示装置100を撮影スタジオで実際に使用した場合の使用例について説明する。
図5(a)に示すように、撮影スタジオの壁と床は、クロマキーバックを構成するブルーバック60で覆われている。また、表示装置100は、ブルーバック60と同色の青色で形成されている。出演者Rは表示装置100を見ながら演技を行い、スタッフがこれを撮影カメラ50で撮影する。なお、本説明では、クロマキー処理によって表示装置100の代わりに犬を合成し、かつ、背景に山の風景を合成した場合を想定して説明する。また、表示装置100に対する点灯指示は、監督やスタッフ等が図示しない無線制御装置により行なうものとする。
【0084】
撮影を開始すると、表示装置100は、制御部3(図1参照)により、犬の目線に合わせて光源6(図2参照)を点灯させてリング状の点灯部1aを表示する。その際、点灯部1aを形成する光源6(図2参照)は、以下の2つのうちいずれかの方法で点灯する。
【0085】
一つは、点灯部1aを形成する光源6(図2参照)は、制御部3(図1参照)の指示に基づいて、撮影カメラ50の非撮影期間のみ点灯するように間欠点灯する方法である。このように撮影カメラ50の非撮影期間のみ間欠点灯した場合は、撮影カメラ50で点灯部1aが撮影されることがない。また、表示装置100はブルーバック60と同色の青色で形成されているため、表示装置100はブルーバック60と同化する。従って、クロマキー処理を行うことにより、表示装置100も容易に除去することができ、撮影カメラで撮影した映像では、クロマキーバックとして撮影される。
【0086】
もう一つは、点灯部1aを形成する光源6(図2参照)が、制御部3(図1参照)により、ブルーバック60と同色の青色の光をクロマキーバックと同色に検出される光量の範囲で照射する方法である。このようにブルーバック60と同色の光を照射した場合は、その光がブルーバック60と同化する。また、表示装置100もブルーバック60と同色の青色で形成されている。従って、クロマキー処理に悪影響を与えることなく適切に合成映像を作成することができる。
【0087】
出演者Rは、前記したように光源6が間欠点灯あるいは常時点灯している点灯部1aに視線を合わせながら、犬に対して、例えば「待て」の演技を行なう。撮影が終了すると、クロマキー処理により表示装置100の代わりに犬を、背景に山の風景を合成する。
【0088】
クロマキー処理が完了すると、図5(b)に示すような映像となる。すなわち、同図に示すように、表示装置100の代わりに、犬Sと、山の風景Tが合成される。従って、出演者Rは、視線を犬Sの目線に合わせることができ、自然でリアルな演技をすることができる。
【0089】
また、光源6の点灯のオン/オフを繰り返して光源6を点滅状態とすることにより、例えば、合成される犬Sの映像が喜ぶタイミングを提示することができる、さらに、別の光源6を犬Sの動きに合わせて点灯させたりすることにより、犬Sが飛び上がって喜んでいる様子を提示することも可能となる。なおその際、出演者Rに対しては上記の点灯によって犬Sの様子が変化する旨を予め伝えておくことで、出演者Rの目線や演技がよりリアルなものとなる。
【0090】
以下、図6を参照して本発明に係る表示装置100の他の実施形態について説明する。
表示装置101は、図6(a)に示すように、筒状体10が可撓性を有する素材で形成され、かつ、支持体として吊下支持体20を用いたものである。このような表示装置101を用いることにより、合成される被写体が空中を飛行する場合や横方向に移動する場合でも、出演者Uが被写体の位置と動きの経路を目視で確認することができる。なお、表示装置101は、図示しない制御部を備えているが、その機能は前記した表示装置100と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
筒状体10は、透明なポリ塩化ビニル製等の可撓性を有するチューブに図示しない針金等を通し、内部に光源10aを埋め込んだものである。なお、図示は省略したが、筒状体10は、前記した筒状体1と同様に、遮断部と透過部とのメッシュ構造に形成されている。従って、筒状体10の遮断部は光源10aの光を遮断し、透過部はクロマキーバックと同色に検出される光量の照射となるように透過する。
【0092】
吊下支持体20は、筒状体10を天井側に吊り下げるためのワイヤ状の部材である。吊下支持体20の長さは、合成される被写体の高さに合わせて調整することができる。また、吊下支持体20は、クロマキーバックと同じ色または透明色で形成されており、クロマキー処理で除去されるように構成されている。吊下支持体20の内部には、前記した光源制御信号Pを伝達する信号ケーブルと、図示しない電源からの電流を伝達する電源ケーブルが埋設されている。但し、筒状体10内に電池等の電源を設けることにより、電源ケーブルを省略することもできる。また、電源ケーブルが撮影カメラで撮影可能な位置にある場合は、クロマキーバックと同色で形成する。
【0093】
この筒状体10を、例えば合成される被写体である蝶が移動する経路に合わせて設置し、かつ、蝶が移動するスピードに合わせて光源10aを順に点灯させる。出演者Uは、順次点灯する光源10aに視線を合わせながら、蝶が飛行する姿を観察する演技を行なう。撮影が終了すると、クロマキー処理によって表示装置101の代わりに蝶Vを合成する。このように、表示装置101を用いることにより、出演者Uは合成される蝶Vに視線を合わせることができ、自然な演技を行なうことができる。
【0094】
次に、図7を参照して、表示システム200について説明する。本発明に係る表示システム200は、表示装置102と、無線制御装置5を備えており、表示装置102の光源6の点灯及び消灯の制御をワイヤレスで行なうことを特徴としている。また、表示システム200は、無線制御装置5内に情報提示制御部30a、表示装置102内に間欠点灯制御部30bが設けられている。なお、既に説明した構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0095】
無線制御装置5は、表示装置102に対して、光源6を点灯させるための指令であるワイヤレス信号を送信するためのものである。無線制御装置5は、図7に示すように、撮影現場のスタッフが手軽に扱えるように、小型の筐体とアンテナを有する構成とすることができる。無線制御装置5内には、情報提示制御部30aが設けられており、当該情報提示制御部30aには、図示しない無線送信部が設けられている。なお、図示しない無線送信部以外の構成は、前記した情報提示制御部3aと同様である。そして、無線制御装置5は、撮影現場のスタッフの操作等によって、後記する表示装置102の間欠点灯制御部30bの図示しない無線受信部に対して、ワイヤレスで情報提示制御信号Iを送信する。
【0096】
表示装置102は、前記したように出演者に対して合成される被写体の位置情報を表示するものである。表示装置102内には、間欠点灯制御部30bが設けられており、当該間欠点灯制御部30bには、図示しない無線受信部が設けられている。なお、図示しない無線受信部以外の構成は、前記した間欠点灯制御部3bと同様である。そして、表示装置102は、無線制御装置5から送信された情報提示制御信号Iを受信して、光源6及び消影用ランプ2cを点灯または消灯する。
【0097】
本発明に係る表示システム200は、上記のようにワイヤレスで構成することにより、様々なケーブルが交差するとともに、多くの精密機器が用いられる撮影スタジオ内において、表示装置102の運用性を向上させるとともに、ケーブルと出演者またはカメラとの接触を防止することができるため、撮影時の安全性を向上させることができる。
【0098】
本発明に係る表示装置及び表示システムは、以下のような変更を加えることも可能である。例えば、図1に示す筒状体1をスリガラスや曇りガラス等で構成し、内部に光源取付部材1bを設けずに光源6を軸方向に複数配置し、光源6から照射される光の光量を、クロマキーバックと同色に検出される光量に調整することもできる。なお、この場合は、各LED同士を十分に離して配置して、光が一体化しないように調整する必要がある。
【0099】
図1,7では、筒状体1は円筒状に形成しているが、これをT字状、十字状、Y字状、L字状に形成することもできる。このように、合成される被写体の形状に合わせて筒状体1の形状を変更することにより、様々な合成映像に本発明に係る表示装置を用いることができる。
【0100】
図1,7では、車輪部2bは4つ取り付けられているが、これを3つ以下、あるいは5つ以上取り付けることも可能である。また、支持本体2a内に電動機を設け、車輪部2bを自走式に構成することもできる。
【0101】
図1,7では、支持本体2aは先端が平面の四角錐状で形成されているが、これを半球状(ドーム状)、または円錐状に形成することもできる。支持本体2aを半球状に形成することにより、支持本体2aにより発生する影の面積を極力小さくすることができる。
【0102】
図2では、光源6は光源取付部材1bごとにそれぞれ4つずつ配置されているが、これを例えば8つずつ配置することも可能である。また、光源6には、LED以外にも面発光型の有機ELを用いることもできる。
【0103】
本発明に係る表示装置100は、間欠点灯をさせなくても例えばクロマキーバックと同じ青色の光を光源6で点灯させることにより、その光をクロマキーバックと同化させることができる。従ってこの場合、制御部3は、図4における垂直同期分離回路31と、垂直同期生成回路35を省略することができる。但し、このとき、消影用ランプ2cは常時点灯となる。
【0104】
本発明に係る表示装置101は、図6に示すように、天井から吊り下げられた構成を有しているが、前記した吊下支持体20をクロマキーバックと同色で形成された床や机の上において使用することもできる。
【0105】
なお、前記した表示システム200は、表示装置102の他の実施形態である表示装置101にも当然適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 筒状体
1a 点灯部
1b 光源取付部材
1d 芯材
1e 筒状本体
1f 遮断部
1g 透過部
2 支持体
2a 支持本体
2b 車輪部
2c 消影用ランプ
2d 隙間
3 制御部
3a 情報提示制御部
3b 間欠点灯制御部
4 光量調整装置
5 無線制御装置
6 光源
10 筒状体
10a 光源
20 吊下支持体
30a 情報提示制御部
30b 間欠点灯制御部
31 垂直同期分離回路
32 エンコーダ
33 パラレルシリアル変換回路
34 シリアルパラレル変換回路
35 垂直同期生成回路
36 デコーダ
37 光源用ドライバ
38 消影用ランプ用ドライバ
50 撮影カメラ
60 ブルーバック
100 表示装置
101 表示装置
102 表示装置
200 表示システム
E 同期信号
F 制御信号
G 垂直同期信号
H 点灯制御信号
I 情報提示制御信号
J 同期信号
K 点灯制御信号
L 垂直同期信号
M 点灯制御信号
N 消影用ランプ制御信号
O 光量調整信号
P 光源制御信号
R 出演者
S 犬
T 山の風景
U 出演者
V 蝶
W 影

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマキー処理を用いた合成映像の制作時において、出演者が目視可能な被写体位置情報を表示するための表示装置であって、
前記被写体位置情報を示す複数の光源を内部に配置した筒状体と、
前記筒状体を支持する支持体と、
前記光源の点灯及び消灯を制御する制御部と、を備え、
前記筒状体及び前記支持体の外装側が、前記クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色で形成され、
前記光源は、前記クロマキーバックと同色に検出される光量で点灯するか、または前記クロマキー処理に影響を与えない撮影カメラの非撮影期間内に点灯することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記筒状体は、前記光源から照射された光を透過する透過領域と、前記光源から照射された光を遮断する遮断領域と、を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項3】
前記支持体は、
前記筒状体を床面に立設させるように支持する支持本体と、
前記支持本体の底部に取り付けられた車輪部と、
前記支持本体の床面側となる端部周縁に所定間隔で設けた消影用ランプと、を有し、
前記消影用ランプは、前記クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色の光で点灯することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記筒状体を天井側に吊り下げる吊下支持体であり、
前記吊下支持体は、前記クロマキー処理で用いられるクロマキーバックと同色または透明色で形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記筒状体は、可撓性を有する素材で形成されたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光源の点灯及び消灯に関する信号であるワイヤレス信号を受信する無線受信部を備え、
前記ワイヤレス信号に基づいて、前記光源の点灯及び消灯を制御することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14972(P2011−14972A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154727(P2009−154727)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(390021751)株式会社ナックイメージテクノロジー (3)
【Fターム(参考)】