表示装置
【課題】複数のプロセスから同時に同一図形に対して描画要求が行われた場合にも正しく表示する。
【解決手段】現場設備からの信号に応じて図形表示要求を行なう表示プロセス13と、現場設備に対する操作信号を受けて図形表示要求を行なう操作プロセス14と、表示プロセスと操作プロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセス20とを備え、ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、表示プロセス13と操作プロセス14は、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、描画ソフトウェアプロセス20は、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う。
【解決手段】現場設備からの信号に応じて図形表示要求を行なう表示プロセス13と、現場設備に対する操作信号を受けて図形表示要求を行なう操作プロセス14と、表示プロセスと操作プロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセス20とを備え、ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、表示プロセス13と操作プロセス14は、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、描画ソフトウェアプロセス20は、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一図形に対する描画要求が複数プロセスから発行される表示装置にかかり、特に制御監視システムの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御監視システムは、プラントや列車の運行状況などを監視・制御するシステムである。この制御監視システムで使用される表示装置は、複数の装置から送信される設備の信号や他装置の制御演算結果などのデータを受信し、受信した複数のデータの中から利用者の必要とする設備の稼動状況を演算、図解化データに変換し、ディスプレイに表示する。
【0003】
また、表示装置の利用者は、マウスなどのポインティングデバイスを介して、各設備を表わすディスプレイ上の図形を選択する等の操作を行い、各設備に対して遠隔からの監督的な介入要求を行う。表示装置は、この操作結果をディスプレイに反映表示するが、操作された図形の線種、面種等を変更するなど強調して表示し、操作状況の視認性を向上させる機能を有している。
【0004】
このことから明らかなように、制御監視システムの表示装置がディスプレイに図形表示を行なうためには、前述した各設備の稼動状況を表示する処理(以下、「設備状況表示処理」という)と、操作の状況を表示する処理(以下、「操作状況表示処理」という)を実行する必要があり、かつ各処理を開始するイベントの発生元が異なる。設備状況表示処理は、各装置から送信されたデータを受信したときに処理を開始する。一方、操作状況表示処理は、図形が選択されたときに処理を開始する。
【0005】
表示装置は、設備の稼動状況を限りなく実時間で表示しなければならないため、処理はプロセスに分割して並列処理を行うのが一般的であるが、プロセスに分割して、各プロセスから表示装置に対して描画要求を行うためには、以下の2つの手段が必要である。
【0006】
1つは、描画ソフトウェアに対して複数のプロセスから同時に描画要求を受け付ける手段である。もう1つは、同時に描画要求を受け付けた場合、どちらの描画要求を優先すべきか判断する手段である。
【0007】
表示装置については、多くのものが知られているが、特許文献1では複数の図形ごとに優先順位を設定して、図形がディスプレイ上で重複しないように調整することが知られている。また、特許文献2では同一図形を色や形を変更して表示するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001―351125号公報
【特許文献2】特開2009―153270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では図形ごとに優先順位を設定することで、図形の重複表示を回避しているが、同一図形を対象としたものではない。特許文献2では、同一図形を異なる内容で表示させているが、この場合の表示要求は1つのプロセスから発生している。
【0010】
本発明では、同一図形に対して、異なるプロセスから、異なる内容の表示要求が同一タイミングで出されているときの処理を考えている。この点に関し、一般的な描画ソフトウェアは、複数のプロセスから同時に描画要求を受け付けることを想定していない。例えば、同一図形に対して同時に描画命令があった場合、描画ソフトウェアは、先に処理した描画要求を後で処理した描画要求で上書きしてしまうのが普通である。
【0011】
そのため、設備状況表示処理と操作状況表示処理のプロセスが同時に描画要求を発行する場合は、どちらの描画要求が優先されるか判断して、描画ソフトウェアに対して描画要求を行うプロセス(以下、「描画要求用プロセス」という)で排他制御を実施する必要があった。
【0012】
然るところ、近年、ネットワーク性能の向上、計算機の高速化に伴い、データ通信量や定周期内で処理可能な演算量が増加している。これに伴い、制御監視システムでも、より詳細な設備の稼動状況や大容量の動画データ、直接制御は実施しないが参考となる関連設備、装置との連接を要求されている。
【0013】
要求を満たすため、設備状況表示処理から行われる描画要求の種類、連接する装置が増加することで、各設備に対する監督的な介入の種類、操作状況表示処理からの描画要求の種類も増加する。
【0014】
設備状況表示処理と操作状況表示処理からの描画要求の種類が増加することで、描画要求用プロセスで行う描画要求の組み合わせ、優先順判断、排他制御処理が複雑化し、プログラムコードの肥大化、視認性悪化、再利用性低下につながることが予想される。
【0015】
上記のような問題点を解決するためには、JAVA(登録商標)を用いたプログラミングに代表されるように、サーバサイドに全ての情報を集約して各設備の状態を演算し、表示端末はサーバから画面に表示する情報だけを取得することも解決手法の1つである。
【0016】
しかしながら、制御監視システムは、セキュリティや信頼性の観点から特定の装置が故障した場合でもシステム全体として縮退運転を行う必要がある。サーバサイドにデータを集約し処理を行うシステム構成では、サーバが故障した場合、表示端末が動作せず、各設備の監視、手動制御等が一切できなくなってしまうため、サーバサイドに処理を集中させるのは、現実的ではない。
【0017】
さらに、複数のプロセス環境上で動作する描画ソフトウェアは多数存在するが、複数のプロセスから同時に同一図形に対し、描画要求が行われた場合に、どちらの描画要求が優先されるか判断可能な描画ソフトウェアや既知の技術は存在せず、描画要求用プロセスで描画要求の集約、優先順の判断を行う処理を実装しているのが現状である。
【0018】
以上のことから、本発明は、複数のプロセスから同時に同一図形に対して描画要求が行われた場合にも正しく表示を行いうる表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、上記問題を解決するため、請求項1に記載の表示装置は、入力信号に応じて図形表示要求を行なう複数のプロセスと、複数のプロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う。
【0020】
なお、初期図形のデータは、描画ソフトウェアプロセスに保持されているのがよい。
【0021】
また、描画ソフトウェアプロセスに保持されている初期図形のデータは、事前にプロセスから発行されたデータとするのがよい。
【0022】
また、プロセスは、その入力信号に応じて、過去に発行した属性データを解消するための属性データを発行するのがよい。
【0023】
また、プロセスは、初期図形のデータを発行する機能と、属性データを発行する機能を有し、描画ソフトウェアプロセスは、初期図形領域と、属性変更記憶領域から構成される記憶装置を備えており、初期図形のデータを初期図形領域に収納し、属性データを属性変更記憶領域に収納するのがよい。
【0024】
請求項6に記載の表示装置は、現場設備からの信号と、現場設備に対する操作信号を受けて、ディスプレイ上に図形表示を行う制御監視システムの表示装置であり、現場設備からの信号に応じて図形表示要求を行なう表示プロセスと、現場設備に対する操作信号を受けて図形表示要求を行なう操作プロセスと、表示プロセスと操作プロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、表示プロセスと操作プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表示装置は、機器の運転状態を限りなく実時間で表示するために複数のプロセスから同時に描画要求を受け付けることを前提として、同一図形に対する描画要求を受け付けた場合、描画要求の優先順を管理し、予め外部定義で指定した描画要求の優先順に応じて処理を行うことで、描画ソフトウェア以外のプロセスが優先順の判断を不要とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】列車運行管理システムの表示装置に適用したときのブロック構成図。
【図2】表示プロセス、操作プロセス、描画ソフトウェアプロセスの関係を示すブロック図。
【図3a】表示プロセスの処理を示すフローチャート。
【図3b】操作プロセスの処理を示すフローチャート。
【図3c】描画ソフトウェアプロセスの処理を示すフローチャート。
【図4】表示装置に表示する画面例を示す図。
【図5】図形登録要求に対する処理と登録内容を説明する図。
【図6】図形属性設定要求に対する処理と登録内容を説明する図。
【図7】描画管理用データベースへの複数の図形属性設定を説明する図。
【図8】図形が信号機である場合の複数の属性とその意味を説明する図。
【図9】表示プロセスからの図形属性設定と、表示画面例を説明する図。
【図10】操作プロセスからの図形属性設定と、表示画面例を説明する図。
【図11】表示プロセスからの図形属性設定と、表示画面例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の制御監視システムの表示装置を、列車運行管理システムの表示装置に適用する場合の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0028】
本実施形態による列車運行管理システムの表示装置1を図1に示すように、表示装置1は、制御対象である各設備5や、システム内の他計算機6と信号線Lを介して接続され、各種の信号や制御演算結果を受信する。また、表示装置1での処理結果や操作指令などが、信号線Lを介して各設備5や、システム内の他計算機6に伝達される。
【0029】
表示装置1は、これをハード構成的に表現すると、表示装置1全体を制御する制御部4と、マウス等の入力機器31とディスプレイ装置32を備えるユーザインターフェース部3と、システムを運用するためのアプリケーションプログラム、ディスプレイ装置32の表示を決定する描画ソフトウェアプロセス、更には図形の情報などを記憶する記憶手段であるハードディスク等の記憶部2とから構成される。
【0030】
このうち、制御部4は、計算機を主体に構成されており、記憶部2に記憶されているアプリケーションプログラムや描画ソフトウェアプロセスを適宜入力して各種の処理を実行している。図1の制御部4内の表示は、プログラムなどにより達成される処理を、機能的に表現している。制御部4により達成される処理のうち、アプリケーションプログラム10による処理部分は、送受信プロセス11と、演算処理プロセス12と、表示プロセス13と、操作プロセス14からなる。
【0031】
ここで、送受信プロセス11は、信号線Lを介して制御対象である各設備5や、システム内の他計算機6と各種信号の授受を行うためのものである。また、表示装置1で手動制御の要求を行った場合に、設備5、他計算機6に手動制御のデータを送信するためのものである。
【0032】
演算処理プロセス12は、送受信プロセス11が受け取った各設備の信号や制御演算結果をもとに、各設備の状態を総合的に判断し、各設備の状態を決定するためのものである。
【0033】
表示プロセス13は、演算処理プロセス12が演算した各設備の状態をもとに、各設備を図式した図形の表示パターンを決定する。また、描画ソフトウェアインターフェース15とリンクしており、決定した図形をディスプレイ装置32に表示するために、描画命令格納バッファ21を介して描画ソフトウェアプロセス20に描画命令を行うものである。
【0034】
操作プロセス14は、描画ソフトウェアインターフェース16とリンクしており、ディスプレイ装置32に表示している画面と入力機器31から入力された情報をもとに、各設備の図形に対して行われた操作を識別し、操作状況を画面に表示するため、図形の描画命令を、描画命令格納バッファ21を介して描画ソフトウェアプロセス20に対して行う。また、必要に応じて送受信プロセス11に手動制御の要求が行われたことを通知する。
【0035】
また描画ソフトウェアプロセス20は、図2に示すように、インターフェース部22と図形管理部23と描画処理部24と図形管理用データベース25を有しており、描画命令格納バッファ21を介して表示プロセス13や、操作プロセス14と信号の授受を行う。
【0036】
表示プロセス13や操作プロセス14と、描画ソフトウェアプロセス20との間の橋渡しを行う描画命令格納バッファ21は、描画ソフトウェアインターフェース15、および、描画ソフトウェアインターフェース16を介して要求された描画命令を格納するための、共有メモリ上に展開されたキュー構造のバッファである。本実施形態においては、描画命令格納バッファ21は、表示プロセス用バッファ211、操作プロセス用バッファ212から構成されており、各プロセスからの描画命令が夫々のバッファに格納される。また、描画ソフトウェアインターフェース15,16と、描画ソフトウェアプロセス20の間では、描画命令格納バッファ21へのアクセスに対する排他制御を行っており、競合は発生しない。
【0037】
描画ソフトウェアプロセス20内のインターフェース部22は、定周期で動作し、描画命令格納バッファ21に格納された描画命令を読出し、描画命令を実行する。図形管理部23は、画面上に表示する図形の座標、色、形状などの図形情報を、描画管理用データベース25を用いて管理する。描画処理部24は、インターフェース部22を介して画面への表示要求を受け付けた場合に、描画管理用データベース25の情報から画面に表示する。
【0038】
描画管理用データベース25は、各レコードに各図形を一意に特定するためのIDと座標、形状、サイズなどの図形の形状情報と線色、面色などの図形の属性情報を格納することができる。また、描画管理用データベース25の各レコードには、描画に用いる優先順と面色の変更など属性変更を複数保持することができる領域を有する。
【0039】
なお、図1、図2に示した制御部4内の各種の構成、あるいは機能達成のための処理は、基本的には計算機を用いてソフト的に実現されるが、インタフェイス部分やバッフア部分、送受信部分などについては、その一部機能実現のためにハード的に構成することも可能である。
【0040】
以上のような構成や処理を前提として、本実施例においては、表示プロセス13での処理内容は図3aの手順により実施される。また、操作プロセス14での処理内容は図3bの手順により実施される。さらに、描画ソフトウェアプロセス20の描画処理内容は、図3cの手順により実施される。これらの複数のプロセスの処理は、一方のプロセスが要求を出したことを受けて、他方のプロセスが応答するという関係にあるので、以下の説明においては図2あるいは図1の構成において、適宜図3a,図3b、3cを引用して説明を行う。
【0041】
最初に、図3aの表示プロセス13での処理において、図形登録要求をしたときの、各プロセスに跨る一連の処理手順から説明する。まず図3aの表示プロセス13では、ステップS11において、図2の描画ソフトウェアインターフェース15を介して画像ソフトウェアプロセス20側に対して図形登録要求を行う。この図形登録要求の処理では、ディスプレイ装置32の画面に描画する全ての図形の属性、一意に識別できるIDを表示プロセス用バッファ211に送信する。なおここで、図形の属性とは、座標、形状、サイズ、面色、線色などであり、その他、図形を描画するために必要な情報が含まれていてもよい。表示プロセス13内の描画ソフトウェアインターフェース15は、図形登録要求を受け付けると、描画命令格納バッフア21内の表示プロセス用バッファ211に、図形登録要求により送信されてきた図形の属性や識別IDなどのデータを書き込む。
【0042】
次に、描画ソフトウェアプロセス20内のインターフェース部22は、表示プロセス用バッファ211に図形登録要求データが格納されていることを認識すると、図3cのステップS21において図形登録を行う。具体的には、図2において表示プロセス用バッファ211に登録されている図形登録要求データを読み出し、図形管理部23に対し、ID、図形の属性の管理要求を行う。図形管理部23では、要求を受け付け、描画管理用データベース25に図形情報を登録する。
【0043】
一例として、図4に示した画面Aを表示するための動作について説明する。表示プロセス13では、描画ソフトウェアインターフェース15を介し、図形要素である信号機1R、信号機2R、軌道回路1T、軌道回路2T、軌道回路3T、軌道回路4T、軌道回路5T、軌道回路6Tからなる画面Aの図形登録要求を図3aのステップS11で行い、各図形の図形登録要求データを表示プロセス用バッファ211に格納する。インターフェース部22では、表示プロセス用バッファ211から図形登録要求データを読み出し、図形管理部23に図形管理を要求する。図形管理部23は描画管理用データベース25に要求された全ての図形情報を登録する。
【0044】
上記の情報の流れと描画管理用データベース25に登録された内容を図5に示す。太線で示した流れがこの場合の図形登録要求データの流れになる。図5の描画管理用データベース25は、図形登録要求データに従い、各図形のID、座標、形状、サイズ、面色、線色を初期図形領域に記憶する。
【0045】
ちなみに、幾つか紹介すると、識別データIDが信号機1Rの表示画面上の図形(シンボル)は、画面座標上で横軸Xが75、縦軸Yが40の位置に表示され、形状が丸、サイズが15x5、面色が黒、線色が白として表示されることを意味する。同様に、識別データIDが軌道回路1Tの表示画面上のシンボル(図形)は、画面座標上で横軸Xが30、縦軸Yが80の位置に表示され、形状が線、サイズが30x5、面色がなく、線色が黒として表示されることを意味する。ここまでの表示データが初期値として記憶され、これらのデータにより初期図形が形成される。本実施例では、さらに、図形ごとに優先順、属性を保持することができる属性変更記憶領域をN個分確保する。
【0046】
以後、描画ソフトウェアプロセス20内部では、登録時に指定した各図形のIDを主キーとして、任意のデータに対し一意にアクセスして、処理可能であるとする。つまり、例えば登録された図形Aについて、任意にディスプレイ装置32に表示できるものとする。
【0047】
表示プロセス13側におけるステップS11での全図形の図形登録要求と、これを受けての描画ソフトウェアプロセス20側でのステップS21における図形登録の一連の処理により、ディスプレイ装置32には図4が初期画面として表示されているが、その後の図1の設備5側での実システム運用により例えば、信号機の色を変更して表示する必要がある。つまり、列車運行管理システムの一部である信号機の表示を現場の状況にあわせて、ディスプレイ装置32上の信号機の表示を赤、緑などに逐次変更して表示する必要がある。
【0048】
この場合、表示プロセス13側において、表示パターンを変化させたい図形に対し、ステップS12において、図形属性設定要求を行う。図形属性設定要求を行う場合、表示プロセス13においては、表示を変更する図形のID、描画の優先順、図形の属性などのデータを描画ソフトウェアインターフェース15に通知する。描画ソフトウェアインターフェース15は表示プロセス用バッファ211に属性変更要求データを格納する。
【0049】
表示プロセス13は、表示パターンを変化させる全ての図形に対して図形属性設定要求を行った後、ステップS13において描画要求を行い、図2の描画ソフトウェアプロセス20に対して、設定したデータをディスプレイ装置32に表示することを要求する。描画ソフトウェアインターフェース15は、描画要求を受け付けた場合、表示プロセス用バッファ211に描画要求データを格納する。
【0050】
表示内容を変更したいという要求は、当然描画ソフトウェアプロセス20に伝達されて処理をされるが、同様の変更要求は、図3bの操作プロセス14側でも発生することである。このため、描画ソフトウェアプロセス20での処理内容の説明に入る前に、操作プロセス14側での表示内容変更の事情について説明する。
【0051】
操作プロセス14では、図1のユーザインタフェイス部3のマウスやキーボードといった入力機器31からの信号を取得しており、操作員は現場の設備5や他の計算機6に対して、適宜操作処理指令を与えている。図3bのステップS31においては、入力機器31からの入力を検知する操作情報取得を行っている。操作情報取得では、入力機器31から入力された情報をもとに、各設備の図形に対して行われた操作を識別し、必要に応じ送受信プロセス11に手動制御の情報を通知する。
【0052】
続いて、ステップS32において、図形属性設定要求を行う。ステップS31の操作情報取得で識別した操作状況を画面に表示するため、図形の描画命令を描画ソフトウェアインターフェース16を介して、操作プロセス用バッファ212に登録する。操作プロセス14においては、変化させる必要がある全ての図形に対して図形属性設定要求を行った後、ステップS33において、描画要求を行い、描画ソフトウェアプロセス20に対して設定したデータをディスプレイ装置32に表示することを要求する。描画ソフトウェアインターフェース16は、ステップS33での描画要求を受け付けた場合、操作プロセス用バッファ212に描画要求データを格納する。
【0053】
以上述べたことから明らかなように、各種のシステム監視用の表示装置においては、複数個所からの表示要求(表示変更要求)を処理する。表示プロセス13のそれは、現実に現場設備5などが運用された結果として表示内容を現場に合わせて時々刻々変化させるものであり、操作プロセス14のそれは操作員の指示に従って現場設備5などの運用を変更することに付随して、操作指示内容どおりに表示内容を時々刻々変化させるものである。これらの要求は独立な複数箇所からそれぞれの事情に応じて発生するものなので、同時に表示要求(表示変更要求)が発生することを避けられない。
【0054】
このため、本実施例の図3cの描画ソフトウェアプロセス20では、インターフェース部22において表示プロセス用バッファ211、操作プロセス用バッファ212に属性変更要求データが格納されていることを認識すると、表示属性設定ステップS22、操作属性設定ステップS23を実施する。
【0055】
表示属性設定ステップS22では、表示プロセス用バッファ211に格納されている全ての属性変更要求データを読み出す。複数の属性変更要求データと描画要求データを取得した後、取得した全ての属性変更要求データを順番に図形管理部23に通知する。図形管理部23は受信したIDを主キーとして、描画管理用データベース25内に登録されている図形情報を検索し、IDが合致する図形の登録があった場合、合致したレコードの属性変更記憶領域に優先順と属性を設定する。
【0056】
操作属性設定ステップS23においても表示属性設定ステップS22と同様に、操作プロセス用バッファ212から全ての属性変更要求データと描画要求データを取得し、描画管理用データベース25に優先順と属性を設定する。
【0057】
以下の説明では一例として、表示プロセス13から、図4の信号機1Rの面色を従来の黒色から緑色に変更して描画する旨の表示属性設定(表示内容の変更)を受け付けた場合の処理について図6を用いて説明する。このために、表示プロセス13では「ID:信号機1R、優先順:4、面色:緑」の情報が格納してある属性変更要求データを、図6の太線で示すとおり、描画ソフトウェアインターフェース15、表示プロセス用バッファ211、インターフェース部22を介して図形管理部23に通知する。図形管理部23は、図6に示すように描画管理用データベース25の信号機1Rのレコードを更新する。つまり、ID:信号機1Rの初期値領域のデータをそのままにして、属性変更記憶領域に「優先順:4、面色:緑」の情報を格納する。
【0058】
以上の処理を、表示プロセス13から繰り返し行う。描画管理用データベース25は複数の属性変更を記憶することができ、上記の例に続いて、「ID:信号機1R、優先順:3、面色:黄」、「ID:信号機1R、優先順:1、面色:赤」と情報を受け取った場合は、図7に示すように描画管理用データベース25の属性変更記憶領域に新規データを登録する。
【0059】
さらに、操作プロセス14から属性変更要求データを通知した場合も同様に、描画管理用データベース25の属性変更記憶領域に登録されるが、その処理は表示プロセス13の場合と同じなので詳細説明を省略する。
【0060】
本実施形態においては、描画命令格納バッファ21は、描画要求を行うプロセス単位に分割しており、夫々表示プロセス13は表示プロセス用バッファ211、操作プロセス14は操作プロセス用バッファ212にデータを格納する仕組みとなっており、表示プロセス13と操作プロセス14間の排他制御は必要ない。
【0061】
また、前述したとおり、インターフェース部22は描画命令格納バッファ21から命令を読み出すが、読み出す場合は、表示プロセス用バッファ211、操作プロセス用バッファ212に格納してある全てのデータを読み出すものである。
【0062】
さらに、図形属性設定要求ステップS12では、属性変更の取消を行うことも可能であり、「ID、優先順、属性」情報を格納した属性取消要求データを通知することで、描画管理用データベース25から該当する属性変更を削除することが可能である。
【0063】
次に、図3cの描画ソフトウェアプロセス20においては、表示属性設定ステップS22、操作属性設定S23が終了した後、描画する属性を決定する。まず、ステップS24において、描画管理用データベース25を1レコード目から順に参照し、属性変更記憶領域における属性変更の有無を確認する。次にステップS26において、優先順の数値が一番小さい(優先順が最も高い)属性を描画する属性として判定する。つまり、図6の信号機1Rの事例では、優先順4、緑色表示とする1つの属性変更(属性1)があるのみであるが、属性1以外にも複数の属性データが存在する場合には、もっとも優先度の高い属性のデータを抽出する。また、図5のように属性変更がない場合は、ステップS25において、図3aの図形登録要求ステップS11で指定した初期値(初期図形)を描画する属性として判定する。ステップS27では、以上の処理を、全ての図形の属性を確定するまで繰り返し行う。
【0064】
なお、上記の説明では属性データがある場合にこのデータを使用して描画するとしているが、実際には初期図形の一部データも利用する。具体的には座標、サイズのデータと組み合わせて表示される。この意味において、属性データによる図形表示は初期図形を改変して表示したものということができる。
【0065】
次に、表示処理部24が描画処理ステップS28を行い、上記処理で確定した描画する属性に基づき、ディスプレイ装置32上に表示する。
【0066】
以上、ステップS24乃至ステップS28の処理を実施することで、各プロセスから行われる属性変更要求を優先順に応じて受け付け、各プロセスからの属性変更要求を反映した図4の画面をディスプレイ装置32上に表示することが可能である。
【0067】
以下に、本実施形態に係る描画ソフトウェアプロセス20を用いた列車運行管理システムの表示装置の処理手法について図面を参照して説明する。
【0068】
列車運行管理システムの表示装置では、信号機の様々な状態を表示する必要がある。図8に本実施形態で表示する信号機の状態を示す。ちなみに、No.1の信号機シンボル表示は、出発不可を意味し、その表示優先順は5であり、以下No.2の緑表示は、出発可能、表示優先順4、No.3の赤表示は、故障中、表示優先順1、No.4の黄表示は、自動制御中、表示優先順3、No.5の青表示は、手動制御中、表示優先順3である。また、No.1から4は、表示プロセス13からの表示変更要求として受け付けられ、No.5は、操作プロセス14からの表示変更要求として受け付けられる。
【0069】
図8に示したように、信号機の図形には表示する優先順が規定してある。図8のNo.1乃至No.4は、表示プロセス13から属性変更要求される状態である。送受信プロセス11が他システムから伝文を受信する。さらに、演算処理プロセス12が信号機の状態を判断し、表示プロセス13に信号機の状態を通知する。表示プロセス13では、通知された状態から描画属性を決定し、描画ソフトウェアプロセス20に対して図形属性設定要求ステップS12を行う。
【0070】
また、図8のNo.5は操作プロセス14から属性変更要求される状態である。入力機器31を用いて入力された情報から、操作プロセス14は信号機に対して手動制御要求が行われたことを検知する。信号機の手動制御が行われた場合、操作プロセス14は、送受信プロセス11に対して信号機の手動制御があったことを通知し、描画ソフトウェアプロセス20に対しては図形属性設定要求ステップS32を行うことで描画することができる。
【0071】
以下、図4の画面を表示するための図形登録要求ステップS11、図形登録ステップS21を行った後(画面についての初期登録完了後)、表示プロセス13と操作プロセス14から順に描画要求があった場合の例について説明する。つまり、複数個所からランダムに描画要求があった場合に、遅滞なく、かつ上書きされることなく全ての表示が行なわれることについて説明する。
【0072】
最初に、演算処理プロセス12が処理した結果、信号機1Rの状態が自動制御中であった場合、表示プロセス13は、ステップS12において、描画ソフトウェアプロセス20に対して、「ID:信号機1R、優先順:3、面色:黄」とする図形属性設定要求を行う。
【0073】
表示プロセス13では、その他の設備についても、図形属性設定要求を行い、全ての図形の処理が終了した時点で、描画要求(ステップS13)を行う。描画要求(ステップS13)を受け取った描画ソフトウェアプロセス20は、表示プロセス用バッファ211から属性変更要求データを読み出し、描画管理用データベース25を更新する。さらに、ステップS24乃至ステップS28の処理を行い、信号機1Rの面色が黄色であることを確定させ、信号機1Rを黄色に塗り潰して画面Aに表示する。
【0074】
このとき、描画ソフトウェアプロセス20内部では、図9に示すように、描画管理用データベース25を更新しており、画面A上には図9下部のように表示している。
【0075】
次に、上記の状態で操作員が入力機器31を介して、信号機1Rに対し手動制御を行ったとする。この場合、入力機器31のイベントを描画ソフトウェアプロセス20が検知し、インターフェイス部22、操作プロセス用バッファを介して操作プロセス14に通知(図2の信号221,222)する。操作プロセス14はイベントを受信し、信号機1Rが手動制御されたと判断し、ステップS32において、描画ソフトウェアプロセス20に対し、「ID:信号機1R、優先順:2、面色:青」とする図形属性設定要求を行う。さらに操作プロセス14は描画要求(ステップS13)を行う。
【0076】
このときの描画管理用データベース25の登録状況を図10に示す。信号機1Rのレコードには、表示プロセス13から要求があった「ID:信号機1R、優先順:3、面色:黄」と、操作プロセス14から要求があった「ID:信号機1R、優先順:2、面色:青」を記憶している。描画ソフトウェアプロセス20は、描画要求データに従い、ステップS24乃至ステップS28の処理を行い、信号機1Rに登録されている属性変更のうち、優先順が最も高い面色:青を選択し、画面上に描画を行う。
【0077】
さらに、上記の状態で送受信プロセス11は他の伝文を受け取り、演算処理プロセス12が処理した結果、信号機1Rが故障中であると判定したとする。この場合まず、演算処理プロセス12は表示プロセス13に対し、信号機1Rが故障中であることを通知する。続いて、表示プロセス13は、描画ソフトウェアプロセス20に対して、「ID:信号機1R、優先順:1、面色:赤」とする図形属性設定要求(ステップS12)を行い、さらに描画要求(ステップS13)を行う。このとき、描画ソフトウェアプロセス20内部では、図11に示すように、描画管理用データベース25を更新する。つまり、属性1、属性2以外に属性3として、優先順:1、面色:赤のデータを追加登録されている。描画要求データを受け取った描画ソフトウェアプロセス20は、ステップS24乃至ステップS28の処理を行い、信号機1Rの属性変更のうち、優先順が一番高い面色:赤を選択し、画面上に赤色で表示する。
【0078】
なお、信号機1Rの故障が除かれた場合、属性3のデータを削除する処理が表示プロセス13から要求され、図10の状態に復旧できることは先に述べた通りであり、このことを通じて、表示ディスプレイ上の画面を時々刻々タイムリーに表示変更できることが理解できる。
【0079】
上記で説明したとおり、表示プロセス13と操作プロセス14はお互いの処理状態を意識することなく、描画ソフトウェアプロセス20に対して、図形属性設定要求ステップS12、描画要求ステップS13を行うだけで、最も優先順が高い描画属性を画面上に表示することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、限りなく実時間で表示を行う必要がある制御監視システムの表示装置であれば、入出力が各設備の状態、マウス等のユーザインターフェース等に限ることなく、他のシステムの装置でも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:表示装置
2:記憶部
3:ユーザインターフェース部
31:入力機器
32:ディスプレイ装置
4:制御部
5:設備
6:他計算機
10:アプリケーションプログラム
11:送受信プロセス
12:演算処理プロセス
13:表示プロセス
14:操作プロセス
15:表示プロセスにリンクされている描画ミドルインターフェース
16:操作プロセスにリンクされている描画ミドルインターフェース
20:描画ソフトウェアプロセス
21:描画命令格納バッファ
211:表示プロセス用バッファ
212:操作プロセス用バッファ
22:インターフェース部
23:図形管理部
24:表示処理部
25:描画管理用データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一図形に対する描画要求が複数プロセスから発行される表示装置にかかり、特に制御監視システムの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御監視システムは、プラントや列車の運行状況などを監視・制御するシステムである。この制御監視システムで使用される表示装置は、複数の装置から送信される設備の信号や他装置の制御演算結果などのデータを受信し、受信した複数のデータの中から利用者の必要とする設備の稼動状況を演算、図解化データに変換し、ディスプレイに表示する。
【0003】
また、表示装置の利用者は、マウスなどのポインティングデバイスを介して、各設備を表わすディスプレイ上の図形を選択する等の操作を行い、各設備に対して遠隔からの監督的な介入要求を行う。表示装置は、この操作結果をディスプレイに反映表示するが、操作された図形の線種、面種等を変更するなど強調して表示し、操作状況の視認性を向上させる機能を有している。
【0004】
このことから明らかなように、制御監視システムの表示装置がディスプレイに図形表示を行なうためには、前述した各設備の稼動状況を表示する処理(以下、「設備状況表示処理」という)と、操作の状況を表示する処理(以下、「操作状況表示処理」という)を実行する必要があり、かつ各処理を開始するイベントの発生元が異なる。設備状況表示処理は、各装置から送信されたデータを受信したときに処理を開始する。一方、操作状況表示処理は、図形が選択されたときに処理を開始する。
【0005】
表示装置は、設備の稼動状況を限りなく実時間で表示しなければならないため、処理はプロセスに分割して並列処理を行うのが一般的であるが、プロセスに分割して、各プロセスから表示装置に対して描画要求を行うためには、以下の2つの手段が必要である。
【0006】
1つは、描画ソフトウェアに対して複数のプロセスから同時に描画要求を受け付ける手段である。もう1つは、同時に描画要求を受け付けた場合、どちらの描画要求を優先すべきか判断する手段である。
【0007】
表示装置については、多くのものが知られているが、特許文献1では複数の図形ごとに優先順位を設定して、図形がディスプレイ上で重複しないように調整することが知られている。また、特許文献2では同一図形を色や形を変更して表示するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001―351125号公報
【特許文献2】特開2009―153270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では図形ごとに優先順位を設定することで、図形の重複表示を回避しているが、同一図形を対象としたものではない。特許文献2では、同一図形を異なる内容で表示させているが、この場合の表示要求は1つのプロセスから発生している。
【0010】
本発明では、同一図形に対して、異なるプロセスから、異なる内容の表示要求が同一タイミングで出されているときの処理を考えている。この点に関し、一般的な描画ソフトウェアは、複数のプロセスから同時に描画要求を受け付けることを想定していない。例えば、同一図形に対して同時に描画命令があった場合、描画ソフトウェアは、先に処理した描画要求を後で処理した描画要求で上書きしてしまうのが普通である。
【0011】
そのため、設備状況表示処理と操作状況表示処理のプロセスが同時に描画要求を発行する場合は、どちらの描画要求が優先されるか判断して、描画ソフトウェアに対して描画要求を行うプロセス(以下、「描画要求用プロセス」という)で排他制御を実施する必要があった。
【0012】
然るところ、近年、ネットワーク性能の向上、計算機の高速化に伴い、データ通信量や定周期内で処理可能な演算量が増加している。これに伴い、制御監視システムでも、より詳細な設備の稼動状況や大容量の動画データ、直接制御は実施しないが参考となる関連設備、装置との連接を要求されている。
【0013】
要求を満たすため、設備状況表示処理から行われる描画要求の種類、連接する装置が増加することで、各設備に対する監督的な介入の種類、操作状況表示処理からの描画要求の種類も増加する。
【0014】
設備状況表示処理と操作状況表示処理からの描画要求の種類が増加することで、描画要求用プロセスで行う描画要求の組み合わせ、優先順判断、排他制御処理が複雑化し、プログラムコードの肥大化、視認性悪化、再利用性低下につながることが予想される。
【0015】
上記のような問題点を解決するためには、JAVA(登録商標)を用いたプログラミングに代表されるように、サーバサイドに全ての情報を集約して各設備の状態を演算し、表示端末はサーバから画面に表示する情報だけを取得することも解決手法の1つである。
【0016】
しかしながら、制御監視システムは、セキュリティや信頼性の観点から特定の装置が故障した場合でもシステム全体として縮退運転を行う必要がある。サーバサイドにデータを集約し処理を行うシステム構成では、サーバが故障した場合、表示端末が動作せず、各設備の監視、手動制御等が一切できなくなってしまうため、サーバサイドに処理を集中させるのは、現実的ではない。
【0017】
さらに、複数のプロセス環境上で動作する描画ソフトウェアは多数存在するが、複数のプロセスから同時に同一図形に対し、描画要求が行われた場合に、どちらの描画要求が優先されるか判断可能な描画ソフトウェアや既知の技術は存在せず、描画要求用プロセスで描画要求の集約、優先順の判断を行う処理を実装しているのが現状である。
【0018】
以上のことから、本発明は、複数のプロセスから同時に同一図形に対して描画要求が行われた場合にも正しく表示を行いうる表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、上記問題を解決するため、請求項1に記載の表示装置は、入力信号に応じて図形表示要求を行なう複数のプロセスと、複数のプロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う。
【0020】
なお、初期図形のデータは、描画ソフトウェアプロセスに保持されているのがよい。
【0021】
また、描画ソフトウェアプロセスに保持されている初期図形のデータは、事前にプロセスから発行されたデータとするのがよい。
【0022】
また、プロセスは、その入力信号に応じて、過去に発行した属性データを解消するための属性データを発行するのがよい。
【0023】
また、プロセスは、初期図形のデータを発行する機能と、属性データを発行する機能を有し、描画ソフトウェアプロセスは、初期図形領域と、属性変更記憶領域から構成される記憶装置を備えており、初期図形のデータを初期図形領域に収納し、属性データを属性変更記憶領域に収納するのがよい。
【0024】
請求項6に記載の表示装置は、現場設備からの信号と、現場設備に対する操作信号を受けて、ディスプレイ上に図形表示を行う制御監視システムの表示装置であり、現場設備からの信号に応じて図形表示要求を行なう表示プロセスと、現場設備に対する操作信号を受けて図形表示要求を行なう操作プロセスと、表示プロセスと操作プロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、表示プロセスと操作プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表示装置は、機器の運転状態を限りなく実時間で表示するために複数のプロセスから同時に描画要求を受け付けることを前提として、同一図形に対する描画要求を受け付けた場合、描画要求の優先順を管理し、予め外部定義で指定した描画要求の優先順に応じて処理を行うことで、描画ソフトウェア以外のプロセスが優先順の判断を不要とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】列車運行管理システムの表示装置に適用したときのブロック構成図。
【図2】表示プロセス、操作プロセス、描画ソフトウェアプロセスの関係を示すブロック図。
【図3a】表示プロセスの処理を示すフローチャート。
【図3b】操作プロセスの処理を示すフローチャート。
【図3c】描画ソフトウェアプロセスの処理を示すフローチャート。
【図4】表示装置に表示する画面例を示す図。
【図5】図形登録要求に対する処理と登録内容を説明する図。
【図6】図形属性設定要求に対する処理と登録内容を説明する図。
【図7】描画管理用データベースへの複数の図形属性設定を説明する図。
【図8】図形が信号機である場合の複数の属性とその意味を説明する図。
【図9】表示プロセスからの図形属性設定と、表示画面例を説明する図。
【図10】操作プロセスからの図形属性設定と、表示画面例を説明する図。
【図11】表示プロセスからの図形属性設定と、表示画面例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の制御監視システムの表示装置を、列車運行管理システムの表示装置に適用する場合の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0028】
本実施形態による列車運行管理システムの表示装置1を図1に示すように、表示装置1は、制御対象である各設備5や、システム内の他計算機6と信号線Lを介して接続され、各種の信号や制御演算結果を受信する。また、表示装置1での処理結果や操作指令などが、信号線Lを介して各設備5や、システム内の他計算機6に伝達される。
【0029】
表示装置1は、これをハード構成的に表現すると、表示装置1全体を制御する制御部4と、マウス等の入力機器31とディスプレイ装置32を備えるユーザインターフェース部3と、システムを運用するためのアプリケーションプログラム、ディスプレイ装置32の表示を決定する描画ソフトウェアプロセス、更には図形の情報などを記憶する記憶手段であるハードディスク等の記憶部2とから構成される。
【0030】
このうち、制御部4は、計算機を主体に構成されており、記憶部2に記憶されているアプリケーションプログラムや描画ソフトウェアプロセスを適宜入力して各種の処理を実行している。図1の制御部4内の表示は、プログラムなどにより達成される処理を、機能的に表現している。制御部4により達成される処理のうち、アプリケーションプログラム10による処理部分は、送受信プロセス11と、演算処理プロセス12と、表示プロセス13と、操作プロセス14からなる。
【0031】
ここで、送受信プロセス11は、信号線Lを介して制御対象である各設備5や、システム内の他計算機6と各種信号の授受を行うためのものである。また、表示装置1で手動制御の要求を行った場合に、設備5、他計算機6に手動制御のデータを送信するためのものである。
【0032】
演算処理プロセス12は、送受信プロセス11が受け取った各設備の信号や制御演算結果をもとに、各設備の状態を総合的に判断し、各設備の状態を決定するためのものである。
【0033】
表示プロセス13は、演算処理プロセス12が演算した各設備の状態をもとに、各設備を図式した図形の表示パターンを決定する。また、描画ソフトウェアインターフェース15とリンクしており、決定した図形をディスプレイ装置32に表示するために、描画命令格納バッファ21を介して描画ソフトウェアプロセス20に描画命令を行うものである。
【0034】
操作プロセス14は、描画ソフトウェアインターフェース16とリンクしており、ディスプレイ装置32に表示している画面と入力機器31から入力された情報をもとに、各設備の図形に対して行われた操作を識別し、操作状況を画面に表示するため、図形の描画命令を、描画命令格納バッファ21を介して描画ソフトウェアプロセス20に対して行う。また、必要に応じて送受信プロセス11に手動制御の要求が行われたことを通知する。
【0035】
また描画ソフトウェアプロセス20は、図2に示すように、インターフェース部22と図形管理部23と描画処理部24と図形管理用データベース25を有しており、描画命令格納バッファ21を介して表示プロセス13や、操作プロセス14と信号の授受を行う。
【0036】
表示プロセス13や操作プロセス14と、描画ソフトウェアプロセス20との間の橋渡しを行う描画命令格納バッファ21は、描画ソフトウェアインターフェース15、および、描画ソフトウェアインターフェース16を介して要求された描画命令を格納するための、共有メモリ上に展開されたキュー構造のバッファである。本実施形態においては、描画命令格納バッファ21は、表示プロセス用バッファ211、操作プロセス用バッファ212から構成されており、各プロセスからの描画命令が夫々のバッファに格納される。また、描画ソフトウェアインターフェース15,16と、描画ソフトウェアプロセス20の間では、描画命令格納バッファ21へのアクセスに対する排他制御を行っており、競合は発生しない。
【0037】
描画ソフトウェアプロセス20内のインターフェース部22は、定周期で動作し、描画命令格納バッファ21に格納された描画命令を読出し、描画命令を実行する。図形管理部23は、画面上に表示する図形の座標、色、形状などの図形情報を、描画管理用データベース25を用いて管理する。描画処理部24は、インターフェース部22を介して画面への表示要求を受け付けた場合に、描画管理用データベース25の情報から画面に表示する。
【0038】
描画管理用データベース25は、各レコードに各図形を一意に特定するためのIDと座標、形状、サイズなどの図形の形状情報と線色、面色などの図形の属性情報を格納することができる。また、描画管理用データベース25の各レコードには、描画に用いる優先順と面色の変更など属性変更を複数保持することができる領域を有する。
【0039】
なお、図1、図2に示した制御部4内の各種の構成、あるいは機能達成のための処理は、基本的には計算機を用いてソフト的に実現されるが、インタフェイス部分やバッフア部分、送受信部分などについては、その一部機能実現のためにハード的に構成することも可能である。
【0040】
以上のような構成や処理を前提として、本実施例においては、表示プロセス13での処理内容は図3aの手順により実施される。また、操作プロセス14での処理内容は図3bの手順により実施される。さらに、描画ソフトウェアプロセス20の描画処理内容は、図3cの手順により実施される。これらの複数のプロセスの処理は、一方のプロセスが要求を出したことを受けて、他方のプロセスが応答するという関係にあるので、以下の説明においては図2あるいは図1の構成において、適宜図3a,図3b、3cを引用して説明を行う。
【0041】
最初に、図3aの表示プロセス13での処理において、図形登録要求をしたときの、各プロセスに跨る一連の処理手順から説明する。まず図3aの表示プロセス13では、ステップS11において、図2の描画ソフトウェアインターフェース15を介して画像ソフトウェアプロセス20側に対して図形登録要求を行う。この図形登録要求の処理では、ディスプレイ装置32の画面に描画する全ての図形の属性、一意に識別できるIDを表示プロセス用バッファ211に送信する。なおここで、図形の属性とは、座標、形状、サイズ、面色、線色などであり、その他、図形を描画するために必要な情報が含まれていてもよい。表示プロセス13内の描画ソフトウェアインターフェース15は、図形登録要求を受け付けると、描画命令格納バッフア21内の表示プロセス用バッファ211に、図形登録要求により送信されてきた図形の属性や識別IDなどのデータを書き込む。
【0042】
次に、描画ソフトウェアプロセス20内のインターフェース部22は、表示プロセス用バッファ211に図形登録要求データが格納されていることを認識すると、図3cのステップS21において図形登録を行う。具体的には、図2において表示プロセス用バッファ211に登録されている図形登録要求データを読み出し、図形管理部23に対し、ID、図形の属性の管理要求を行う。図形管理部23では、要求を受け付け、描画管理用データベース25に図形情報を登録する。
【0043】
一例として、図4に示した画面Aを表示するための動作について説明する。表示プロセス13では、描画ソフトウェアインターフェース15を介し、図形要素である信号機1R、信号機2R、軌道回路1T、軌道回路2T、軌道回路3T、軌道回路4T、軌道回路5T、軌道回路6Tからなる画面Aの図形登録要求を図3aのステップS11で行い、各図形の図形登録要求データを表示プロセス用バッファ211に格納する。インターフェース部22では、表示プロセス用バッファ211から図形登録要求データを読み出し、図形管理部23に図形管理を要求する。図形管理部23は描画管理用データベース25に要求された全ての図形情報を登録する。
【0044】
上記の情報の流れと描画管理用データベース25に登録された内容を図5に示す。太線で示した流れがこの場合の図形登録要求データの流れになる。図5の描画管理用データベース25は、図形登録要求データに従い、各図形のID、座標、形状、サイズ、面色、線色を初期図形領域に記憶する。
【0045】
ちなみに、幾つか紹介すると、識別データIDが信号機1Rの表示画面上の図形(シンボル)は、画面座標上で横軸Xが75、縦軸Yが40の位置に表示され、形状が丸、サイズが15x5、面色が黒、線色が白として表示されることを意味する。同様に、識別データIDが軌道回路1Tの表示画面上のシンボル(図形)は、画面座標上で横軸Xが30、縦軸Yが80の位置に表示され、形状が線、サイズが30x5、面色がなく、線色が黒として表示されることを意味する。ここまでの表示データが初期値として記憶され、これらのデータにより初期図形が形成される。本実施例では、さらに、図形ごとに優先順、属性を保持することができる属性変更記憶領域をN個分確保する。
【0046】
以後、描画ソフトウェアプロセス20内部では、登録時に指定した各図形のIDを主キーとして、任意のデータに対し一意にアクセスして、処理可能であるとする。つまり、例えば登録された図形Aについて、任意にディスプレイ装置32に表示できるものとする。
【0047】
表示プロセス13側におけるステップS11での全図形の図形登録要求と、これを受けての描画ソフトウェアプロセス20側でのステップS21における図形登録の一連の処理により、ディスプレイ装置32には図4が初期画面として表示されているが、その後の図1の設備5側での実システム運用により例えば、信号機の色を変更して表示する必要がある。つまり、列車運行管理システムの一部である信号機の表示を現場の状況にあわせて、ディスプレイ装置32上の信号機の表示を赤、緑などに逐次変更して表示する必要がある。
【0048】
この場合、表示プロセス13側において、表示パターンを変化させたい図形に対し、ステップS12において、図形属性設定要求を行う。図形属性設定要求を行う場合、表示プロセス13においては、表示を変更する図形のID、描画の優先順、図形の属性などのデータを描画ソフトウェアインターフェース15に通知する。描画ソフトウェアインターフェース15は表示プロセス用バッファ211に属性変更要求データを格納する。
【0049】
表示プロセス13は、表示パターンを変化させる全ての図形に対して図形属性設定要求を行った後、ステップS13において描画要求を行い、図2の描画ソフトウェアプロセス20に対して、設定したデータをディスプレイ装置32に表示することを要求する。描画ソフトウェアインターフェース15は、描画要求を受け付けた場合、表示プロセス用バッファ211に描画要求データを格納する。
【0050】
表示内容を変更したいという要求は、当然描画ソフトウェアプロセス20に伝達されて処理をされるが、同様の変更要求は、図3bの操作プロセス14側でも発生することである。このため、描画ソフトウェアプロセス20での処理内容の説明に入る前に、操作プロセス14側での表示内容変更の事情について説明する。
【0051】
操作プロセス14では、図1のユーザインタフェイス部3のマウスやキーボードといった入力機器31からの信号を取得しており、操作員は現場の設備5や他の計算機6に対して、適宜操作処理指令を与えている。図3bのステップS31においては、入力機器31からの入力を検知する操作情報取得を行っている。操作情報取得では、入力機器31から入力された情報をもとに、各設備の図形に対して行われた操作を識別し、必要に応じ送受信プロセス11に手動制御の情報を通知する。
【0052】
続いて、ステップS32において、図形属性設定要求を行う。ステップS31の操作情報取得で識別した操作状況を画面に表示するため、図形の描画命令を描画ソフトウェアインターフェース16を介して、操作プロセス用バッファ212に登録する。操作プロセス14においては、変化させる必要がある全ての図形に対して図形属性設定要求を行った後、ステップS33において、描画要求を行い、描画ソフトウェアプロセス20に対して設定したデータをディスプレイ装置32に表示することを要求する。描画ソフトウェアインターフェース16は、ステップS33での描画要求を受け付けた場合、操作プロセス用バッファ212に描画要求データを格納する。
【0053】
以上述べたことから明らかなように、各種のシステム監視用の表示装置においては、複数個所からの表示要求(表示変更要求)を処理する。表示プロセス13のそれは、現実に現場設備5などが運用された結果として表示内容を現場に合わせて時々刻々変化させるものであり、操作プロセス14のそれは操作員の指示に従って現場設備5などの運用を変更することに付随して、操作指示内容どおりに表示内容を時々刻々変化させるものである。これらの要求は独立な複数箇所からそれぞれの事情に応じて発生するものなので、同時に表示要求(表示変更要求)が発生することを避けられない。
【0054】
このため、本実施例の図3cの描画ソフトウェアプロセス20では、インターフェース部22において表示プロセス用バッファ211、操作プロセス用バッファ212に属性変更要求データが格納されていることを認識すると、表示属性設定ステップS22、操作属性設定ステップS23を実施する。
【0055】
表示属性設定ステップS22では、表示プロセス用バッファ211に格納されている全ての属性変更要求データを読み出す。複数の属性変更要求データと描画要求データを取得した後、取得した全ての属性変更要求データを順番に図形管理部23に通知する。図形管理部23は受信したIDを主キーとして、描画管理用データベース25内に登録されている図形情報を検索し、IDが合致する図形の登録があった場合、合致したレコードの属性変更記憶領域に優先順と属性を設定する。
【0056】
操作属性設定ステップS23においても表示属性設定ステップS22と同様に、操作プロセス用バッファ212から全ての属性変更要求データと描画要求データを取得し、描画管理用データベース25に優先順と属性を設定する。
【0057】
以下の説明では一例として、表示プロセス13から、図4の信号機1Rの面色を従来の黒色から緑色に変更して描画する旨の表示属性設定(表示内容の変更)を受け付けた場合の処理について図6を用いて説明する。このために、表示プロセス13では「ID:信号機1R、優先順:4、面色:緑」の情報が格納してある属性変更要求データを、図6の太線で示すとおり、描画ソフトウェアインターフェース15、表示プロセス用バッファ211、インターフェース部22を介して図形管理部23に通知する。図形管理部23は、図6に示すように描画管理用データベース25の信号機1Rのレコードを更新する。つまり、ID:信号機1Rの初期値領域のデータをそのままにして、属性変更記憶領域に「優先順:4、面色:緑」の情報を格納する。
【0058】
以上の処理を、表示プロセス13から繰り返し行う。描画管理用データベース25は複数の属性変更を記憶することができ、上記の例に続いて、「ID:信号機1R、優先順:3、面色:黄」、「ID:信号機1R、優先順:1、面色:赤」と情報を受け取った場合は、図7に示すように描画管理用データベース25の属性変更記憶領域に新規データを登録する。
【0059】
さらに、操作プロセス14から属性変更要求データを通知した場合も同様に、描画管理用データベース25の属性変更記憶領域に登録されるが、その処理は表示プロセス13の場合と同じなので詳細説明を省略する。
【0060】
本実施形態においては、描画命令格納バッファ21は、描画要求を行うプロセス単位に分割しており、夫々表示プロセス13は表示プロセス用バッファ211、操作プロセス14は操作プロセス用バッファ212にデータを格納する仕組みとなっており、表示プロセス13と操作プロセス14間の排他制御は必要ない。
【0061】
また、前述したとおり、インターフェース部22は描画命令格納バッファ21から命令を読み出すが、読み出す場合は、表示プロセス用バッファ211、操作プロセス用バッファ212に格納してある全てのデータを読み出すものである。
【0062】
さらに、図形属性設定要求ステップS12では、属性変更の取消を行うことも可能であり、「ID、優先順、属性」情報を格納した属性取消要求データを通知することで、描画管理用データベース25から該当する属性変更を削除することが可能である。
【0063】
次に、図3cの描画ソフトウェアプロセス20においては、表示属性設定ステップS22、操作属性設定S23が終了した後、描画する属性を決定する。まず、ステップS24において、描画管理用データベース25を1レコード目から順に参照し、属性変更記憶領域における属性変更の有無を確認する。次にステップS26において、優先順の数値が一番小さい(優先順が最も高い)属性を描画する属性として判定する。つまり、図6の信号機1Rの事例では、優先順4、緑色表示とする1つの属性変更(属性1)があるのみであるが、属性1以外にも複数の属性データが存在する場合には、もっとも優先度の高い属性のデータを抽出する。また、図5のように属性変更がない場合は、ステップS25において、図3aの図形登録要求ステップS11で指定した初期値(初期図形)を描画する属性として判定する。ステップS27では、以上の処理を、全ての図形の属性を確定するまで繰り返し行う。
【0064】
なお、上記の説明では属性データがある場合にこのデータを使用して描画するとしているが、実際には初期図形の一部データも利用する。具体的には座標、サイズのデータと組み合わせて表示される。この意味において、属性データによる図形表示は初期図形を改変して表示したものということができる。
【0065】
次に、表示処理部24が描画処理ステップS28を行い、上記処理で確定した描画する属性に基づき、ディスプレイ装置32上に表示する。
【0066】
以上、ステップS24乃至ステップS28の処理を実施することで、各プロセスから行われる属性変更要求を優先順に応じて受け付け、各プロセスからの属性変更要求を反映した図4の画面をディスプレイ装置32上に表示することが可能である。
【0067】
以下に、本実施形態に係る描画ソフトウェアプロセス20を用いた列車運行管理システムの表示装置の処理手法について図面を参照して説明する。
【0068】
列車運行管理システムの表示装置では、信号機の様々な状態を表示する必要がある。図8に本実施形態で表示する信号機の状態を示す。ちなみに、No.1の信号機シンボル表示は、出発不可を意味し、その表示優先順は5であり、以下No.2の緑表示は、出発可能、表示優先順4、No.3の赤表示は、故障中、表示優先順1、No.4の黄表示は、自動制御中、表示優先順3、No.5の青表示は、手動制御中、表示優先順3である。また、No.1から4は、表示プロセス13からの表示変更要求として受け付けられ、No.5は、操作プロセス14からの表示変更要求として受け付けられる。
【0069】
図8に示したように、信号機の図形には表示する優先順が規定してある。図8のNo.1乃至No.4は、表示プロセス13から属性変更要求される状態である。送受信プロセス11が他システムから伝文を受信する。さらに、演算処理プロセス12が信号機の状態を判断し、表示プロセス13に信号機の状態を通知する。表示プロセス13では、通知された状態から描画属性を決定し、描画ソフトウェアプロセス20に対して図形属性設定要求ステップS12を行う。
【0070】
また、図8のNo.5は操作プロセス14から属性変更要求される状態である。入力機器31を用いて入力された情報から、操作プロセス14は信号機に対して手動制御要求が行われたことを検知する。信号機の手動制御が行われた場合、操作プロセス14は、送受信プロセス11に対して信号機の手動制御があったことを通知し、描画ソフトウェアプロセス20に対しては図形属性設定要求ステップS32を行うことで描画することができる。
【0071】
以下、図4の画面を表示するための図形登録要求ステップS11、図形登録ステップS21を行った後(画面についての初期登録完了後)、表示プロセス13と操作プロセス14から順に描画要求があった場合の例について説明する。つまり、複数個所からランダムに描画要求があった場合に、遅滞なく、かつ上書きされることなく全ての表示が行なわれることについて説明する。
【0072】
最初に、演算処理プロセス12が処理した結果、信号機1Rの状態が自動制御中であった場合、表示プロセス13は、ステップS12において、描画ソフトウェアプロセス20に対して、「ID:信号機1R、優先順:3、面色:黄」とする図形属性設定要求を行う。
【0073】
表示プロセス13では、その他の設備についても、図形属性設定要求を行い、全ての図形の処理が終了した時点で、描画要求(ステップS13)を行う。描画要求(ステップS13)を受け取った描画ソフトウェアプロセス20は、表示プロセス用バッファ211から属性変更要求データを読み出し、描画管理用データベース25を更新する。さらに、ステップS24乃至ステップS28の処理を行い、信号機1Rの面色が黄色であることを確定させ、信号機1Rを黄色に塗り潰して画面Aに表示する。
【0074】
このとき、描画ソフトウェアプロセス20内部では、図9に示すように、描画管理用データベース25を更新しており、画面A上には図9下部のように表示している。
【0075】
次に、上記の状態で操作員が入力機器31を介して、信号機1Rに対し手動制御を行ったとする。この場合、入力機器31のイベントを描画ソフトウェアプロセス20が検知し、インターフェイス部22、操作プロセス用バッファを介して操作プロセス14に通知(図2の信号221,222)する。操作プロセス14はイベントを受信し、信号機1Rが手動制御されたと判断し、ステップS32において、描画ソフトウェアプロセス20に対し、「ID:信号機1R、優先順:2、面色:青」とする図形属性設定要求を行う。さらに操作プロセス14は描画要求(ステップS13)を行う。
【0076】
このときの描画管理用データベース25の登録状況を図10に示す。信号機1Rのレコードには、表示プロセス13から要求があった「ID:信号機1R、優先順:3、面色:黄」と、操作プロセス14から要求があった「ID:信号機1R、優先順:2、面色:青」を記憶している。描画ソフトウェアプロセス20は、描画要求データに従い、ステップS24乃至ステップS28の処理を行い、信号機1Rに登録されている属性変更のうち、優先順が最も高い面色:青を選択し、画面上に描画を行う。
【0077】
さらに、上記の状態で送受信プロセス11は他の伝文を受け取り、演算処理プロセス12が処理した結果、信号機1Rが故障中であると判定したとする。この場合まず、演算処理プロセス12は表示プロセス13に対し、信号機1Rが故障中であることを通知する。続いて、表示プロセス13は、描画ソフトウェアプロセス20に対して、「ID:信号機1R、優先順:1、面色:赤」とする図形属性設定要求(ステップS12)を行い、さらに描画要求(ステップS13)を行う。このとき、描画ソフトウェアプロセス20内部では、図11に示すように、描画管理用データベース25を更新する。つまり、属性1、属性2以外に属性3として、優先順:1、面色:赤のデータを追加登録されている。描画要求データを受け取った描画ソフトウェアプロセス20は、ステップS24乃至ステップS28の処理を行い、信号機1Rの属性変更のうち、優先順が一番高い面色:赤を選択し、画面上に赤色で表示する。
【0078】
なお、信号機1Rの故障が除かれた場合、属性3のデータを削除する処理が表示プロセス13から要求され、図10の状態に復旧できることは先に述べた通りであり、このことを通じて、表示ディスプレイ上の画面を時々刻々タイムリーに表示変更できることが理解できる。
【0079】
上記で説明したとおり、表示プロセス13と操作プロセス14はお互いの処理状態を意識することなく、描画ソフトウェアプロセス20に対して、図形属性設定要求ステップS12、描画要求ステップS13を行うだけで、最も優先順が高い描画属性を画面上に表示することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、限りなく実時間で表示を行う必要がある制御監視システムの表示装置であれば、入出力が各設備の状態、マウス等のユーザインターフェース等に限ることなく、他のシステムの装置でも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:表示装置
2:記憶部
3:ユーザインターフェース部
31:入力機器
32:ディスプレイ装置
4:制御部
5:設備
6:他計算機
10:アプリケーションプログラム
11:送受信プロセス
12:演算処理プロセス
13:表示プロセス
14:操作プロセス
15:表示プロセスにリンクされている描画ミドルインターフェース
16:操作プロセスにリンクされている描画ミドルインターフェース
20:描画ソフトウェアプロセス
21:描画命令格納バッファ
211:表示プロセス用バッファ
212:操作プロセス用バッファ
22:インターフェース部
23:図形管理部
24:表示処理部
25:描画管理用データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に応じて図形表示要求を行なう複数のプロセスと、該複数のプロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、
前記ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、該初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、
前記プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
初期図形のデータは、前記描画ソフトウェアプロセスに保持されていることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の表示装置において、
前記描画ソフトウェアプロセスに保持されている初期図形のデータは、事前に前記プロセスから発行されたデータであることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記プロセスは、その入力信号に応じて、過去に発行した属性データを解消するための属性データを発行することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示装置において、
前記プロセスは、前記初期図形のデータを発行する機能と、前記属性データを発行する機能を有し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形領域と、属性変更記憶領域から構成される記憶装置を備えており、初期図形のデータを初期図形領域に収納し、前記属性データを属性変更記憶領域に収納していることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
現場設備からの信号と、現場設備に対する操作信号を受けて、ディスプレイ上に図形表示を行う制御監視システムの表示装置において、
現場設備からの信号に応じて図形表示要求を行なう表示プロセスと、現場設備に対する操作信号を受けて図形表示要求を行なう操作プロセスと、前記表示プロセスと操作プロセスからの図形表示要求を受けて前記ディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、
前記ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、該初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、
前記表示プロセスと操作プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う
ことを特徴とする制御監視システムの表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の表示装置において、
初期図形のデータは、前記描画ソフトウェアプロセスに保持されていることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の表示装置において、
前記描画ソフトウェアプロセスに保持されている初期図形のデータは、事前に前記プロセスから発行されたデータであることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項6記載の表示装置において、
前記表示プロセスと操作プロセスは、その入力信号に応じて、過去に発行した属性データを解消するための属性データを発行することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項6記載の表示装置において、
前記表示プロセスと操作プロセスは、前記初期図形のデータを発行する機能と、前記属性データを発行する機能を有し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形領域と、属性変更記憶領域から構成される記憶装置を備えており、初期図形のデータを初期図形領域に収納し、前記属性データを属性変更記憶領域に収納していることを特徴とする表示装置。
【請求項1】
入力信号に応じて図形表示要求を行なう複数のプロセスと、該複数のプロセスからの図形表示要求を受けてディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、
前記ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、該初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、
前記プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
初期図形のデータは、前記描画ソフトウェアプロセスに保持されていることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の表示装置において、
前記描画ソフトウェアプロセスに保持されている初期図形のデータは、事前に前記プロセスから発行されたデータであることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記プロセスは、その入力信号に応じて、過去に発行した属性データを解消するための属性データを発行することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示装置において、
前記プロセスは、前記初期図形のデータを発行する機能と、前記属性データを発行する機能を有し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形領域と、属性変更記憶領域から構成される記憶装置を備えており、初期図形のデータを初期図形領域に収納し、前記属性データを属性変更記憶領域に収納していることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
現場設備からの信号と、現場設備に対する操作信号を受けて、ディスプレイ上に図形表示を行う制御監視システムの表示装置において、
現場設備からの信号に応じて図形表示要求を行なう表示プロセスと、現場設備に対する操作信号を受けて図形表示要求を行なう操作プロセスと、前記表示プロセスと操作プロセスからの図形表示要求を受けて前記ディスプレイ上に図形表示を行う描画ソフトウェアプロセスとを備え、
前記ディスプレイ上に表示される各図形を初期図形のデータと、該初期図形を改変して表示する為の属性データとで構成し、かつ属性データは表示の優先順位情報を含むものとされ、
前記表示プロセスと操作プロセスは、その入力信号に応じて逐次属性データを発行し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形のデータと、属性データが存在するときには、属性データに含まれる優先順位に従って抽出した1つの属性データを用いて図形表示を行う
ことを特徴とする制御監視システムの表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の表示装置において、
初期図形のデータは、前記描画ソフトウェアプロセスに保持されていることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の表示装置において、
前記描画ソフトウェアプロセスに保持されている初期図形のデータは、事前に前記プロセスから発行されたデータであることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項6記載の表示装置において、
前記表示プロセスと操作プロセスは、その入力信号に応じて、過去に発行した属性データを解消するための属性データを発行することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項6記載の表示装置において、
前記表示プロセスと操作プロセスは、前記初期図形のデータを発行する機能と、前記属性データを発行する機能を有し、
前記描画ソフトウェアプロセスは、初期図形領域と、属性変更記憶領域から構成される記憶装置を備えており、初期図形のデータを初期図形領域に収納し、前記属性データを属性変更記憶領域に収納していることを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−253271(P2011−253271A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125525(P2010−125525)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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