説明

表示装置

【課題】 表示装置において、光硬化型樹脂からなるシール材の領域に重なる引き出し配線部分のシール材に充分に光照射できると共に、引き出し配線の抵抗値が比較的小さく、シール材の領域において引き出し配線の一部分が断線しても抵抗値の増加が少なく、冗長性に優れたシール材の領域における引き出し配線構造を提供する。
【解決手段】 液晶表示装置100を構成するアレイ基板10と対向基板20とが、光硬化型樹脂からなるシール材40で貼り合わされ、少なくとも1種類の引き出し配線6は、シール材40の領域において、引き出し配線6方向に平行な第1の枝配線部7aの端部と、引き出し配線6方向に対して斜め方向の第2の枝配線部7bの端部とを繋げることにより構成された六角形状の配線経路8を複数並べて配置した蜂の巣構造をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。特に、アレイ基板と対向基板を貼り合わす光硬化型シール材の領域において、表示領域からシール材の外側に引き出される引き出し配線の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のブラウン管に代わって、液晶、エレクトロルミネッセンス、帯電粒子等の表示媒体を利用した薄型で平面形状の表示パネルを有する新しい表示装置が多く使用されるようになった。これらの代表である液晶表示装置は、薄型、軽量だけでなく、低電圧駆動できる特徴を有している。液晶表示装置は、2枚の基板の間に液晶をシール材で封入した液晶表示パネル等から構成される。片方の基板は、複数の画素がマトリクス状に配置され、表示領域を構成する複数種類の配線が形成されたアレイ基板である。もう片方の基板は、カラーフィルタ、ブラックマトリクス(遮光膜)等が設けられた対向基板である。カラー表示の場合は、一般に、RGB(赤、緑、青)の3原色で構成され、各画素は、3原色のいずれかに対応する。近年は、色再現性の向上のため、4原色以上が使用される場合もある。
【0003】
特に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)型の液晶表示装置は、アレイ基板上の各画素に、スイッチング素子であるTFTが設けられ、各画素が独立して液晶を駆動する電圧を保持できるので、クロストークの少ない高画質な表示が可能である。また、各画素は、TFTのON、OFFを制御する走査配線(ゲート配線)と、画像データ入力用の信号配線(ソース配線)と、液晶に電圧を印加する画素電極、保持容量を形成すると共に液晶を駆動する時の基準電位が印加される共通配線等を有する。一般に、各画素は、走査配線と信号配線に囲まれた領域で構成される。
【0004】
従来の液晶表示装置における液晶パネル製造工程では、アレイ基板と対向基板を表示領域の周囲に形成されるシール材で貼り合せた後に、2枚の基板の隙間を真空にして、シール材の開口部(液晶注入口)から液晶を注入する真空注入工程が採用されており、熱硬化型のシール材が使用されていた。
【0005】
近年、大型の液晶パネルに液晶を注入する工程の短時間化、及びコストダウンを目的として、シール材として紫外線等の光によって硬化する光硬化型樹脂を使用して、アレイ基板または対向基板のシール材で囲まれた領域に適量の液晶を滴下し、2枚の基板を重ね合せてからシール材を光硬化させて、アレイ基板と対向基板を貼り合わす滴下注入工程(One Drop Fill)が主流となってきている。
【0006】
この場合、アレイ基板と対向基板を貼り合せるために、シール材の領域を充分に光照射することによって、シール材を充分に光硬化させることが必要である。
【0007】
光照射する方向は、アレイ基板または対向基板のどちら側からでも良い。しかし、通常は対向基板側の表示領域の外周には周辺ブラックマトリクス(周辺遮光膜)が形成されており、対向基板側から光照射しても、周辺ブラックマトリクスで遮光されて、充分にシール材を光硬化させることができなかった。
【0008】
そこで、通常、アレイ基板側から光照射する。しかし、アレイ基板にも、走査配線、信号配線、共通配線等の表示領域を構成する画素を駆動するための複数種類の配線を、表示領域の外側の外部接続端子と接続するための複数種類の引き出し配線が、シール材の領域にも形成されている。通常、複数種類の配線は低抵抗化のために、Al、Cu、Mo、Ta、Ti、Cr等の不透明な金属膜が使用されるので、シール材の領域における各種類の引き出し配線は、遮光膜としても作用した。
【0009】
このため、一般に、走査引き出し配線や信号引き出し配線のような配線幅が数十〜100μm程度以下では、光回折現象で光が引き出し配線の内側にも届くので、光強度、光照射時間を長くすれば、シール材を硬化することができた。しかし、液晶を駆動する時の基準電位が印加される共通配線に接続され、低抵抗が必要な共通引き出し配線のように、配線幅がさらに広くなると、引き出し配線の中央付近に届く光量は大幅に減少するので、シール材が充分に硬化しない領域ができるという課題が生じた。シール材が充分に硬化していないと、液晶をシール材の領域より外へ漏らさないシール機能が劣るだけでなく、未硬化のシール材の成分が液晶に溶け出して、液晶を汚染して表示特性を低下させる等の課題が生じた。
【0010】
そこで、シール材を充分に硬化させるために、シール材の領域における引き出し配線に、ストライプ形状や格子形状の開口部(スリット)を設けた構造が特許文献1、2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−222017号公報
【特許文献2】特開2009−180854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
シール材の領域における引き出し配線の構造として、特許文献1に開示されたストライプ形状は、ストライプ形状を構成する複数の枝配線部の一部分に断線が生じた場合、その枝配線部は通電しなくなるので、断線した時の引き出し配線の抵抗値の増加が大きいという課題があった。
【0013】
また、特許文献1に開示された格子形状は、シール材の領域の光照射が可能な引き出し配線の開口部の面積を、ストライプ形状と同一にした場合、引き出し配線の抵抗値が大きくなるという課題があった。
【0014】
また、特許文献2に開示された開口部(スリット)形状は、引き出し配線の等電位線に直交する電気力線に沿って、開口部を形成している。これにより、引き出し配線の抵抗値の増加を抑制しつつ、開口部を大きくできるとなっている。しかし、この構造は、引き出し配線の開口部の方向または大きさがシール材の領域で均一ではなく、シール材の硬化が不充分な領域が生じる可能性があった。
【0015】
本発明は、上記の様な問題点を解決するためになされたものであり、引き出し配線が配置されたシール材の領域に充分に光照射できると共に、引き出し配線の抵抗値が比較的小さく、シール材の領域において、引き出し配線の一部分が断線しても抵抗値の増加が少ない冗長性に優れた引き出し配線の構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表示装置は、表示領域を有するアレイ基板と、アレイ基板に対向して配置される対向基板とがシール材で貼り合わされ、シール材の内側の表示領域に表示媒体が封入されている表示装置であって、アレイ基板には、表示領域からシール材の外側に引き出される複数種類の引き出し配線が形成され、アレイ基板は透明基板で、シール材は光硬化型樹脂であり、複数種類の引き出し配線の内、少なくとも1種類の第1の引き出し配線は、シール材の領域において、複数種類の枝配線部を有しており、第1の引き出し配線方向に略平行な第1の枝配線部の端部と、第1の引き出し配線方向に対して斜め方向の第2の枝配線部の端部とを繋げることにより構成された六角形状の配線経路を複数並べて配置した蜂の巣構造をしているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シール材に光硬化型樹脂を用いた場合でも、引き出し配線と重なる領域に未硬化のシール材の領域をなくすことができると共に、シール材の領域における引き出し配線の一部分の断線に対する冗長性と、低抵抗化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のシール材の領域Cの第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【図3】液晶表示装置の滴下注入工程の模式図である。
【図4】比較例1の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【図5】比較例2の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【図6】比較例3の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【図7】比較例4の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【図8】実施の形態2の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【図9】実施の形態3の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の表示装置についての実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態を説明するための各図において、同一符号は、同一または相当部分を示しているので、原則として重複する説明は省略する。
【0020】
また、各図における各部材の寸法や比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは多少異なる。
【0021】
実施の形態1.
はじめに、表示装置の構成を簡単に説明する。図1は、実施の形態1の表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
【0022】
実施の形態1の表示装置は、最も代表的な液晶表示装置100である。液晶表示装置100の主要部である液晶表示パネルを構成する2枚の基板は、ガラス、プラスチック等の透明基板1上に、表示領域50の画素30を構成する走査配線2、信号配線3、共通配線5や、図示していないスイッチング素子、画素電極等が形成されたアレイ基板10と、アレイ基板10の表示領域50上に対向配置され、周辺ブラックマトリクス25や、図示していないカラーフィルタ等が形成された対向基板20である。
【0023】
アレイ基板10は、透明基板1上で、複数の画素30がマトリクス状に配置された表示領域50と、表示領域50の周辺の額縁領域55に分けられる。額縁領域55には、COG(Chip On Glass)技術により、走査配線用駆動回路60と、信号配線用駆動回路65が実装されている。また、透明基板1の端部には、走査配線用駆動回路60、および信号配線用駆動回路65に基準電圧、クロック、画像データ、制御信号等を供給する外部回路と接続するための複数の外部接続端子(図示せず)に、フレキシブル基板70、75が接続されている。
【0024】
表示領域50の周囲の周辺ブラックマトリクス25領域には、紫外線等の光によって硬化する光硬化型樹脂からなるシール材40が塗布形成されている。
【0025】
なお、図1では、表示領域50から、走査配線用駆動回路60の出力部へ延びる走査引き出し配線2a、信号配線用駆動回路65の出力部へ延びる信号引き出し配線3a、基準電位が印加される共通配線5を共通に接続した共通引き出し配線5aや、走査配線用駆動回路60、および信号配線用駆動回路65の入力部とフレキシブル基板70、75と接続される複数の外部接続端子とを接続する入力配線が多数本あるが、図の簡素化のために一部分のみを図示している。
【0026】
図1では、3種類の引き出し配線を示している。表示領域50から走査配線用駆動回路60の出力部へ延びる走査引き出し配線2aと重なるシール材40の領域G、表示領域50から信号配線用駆動回路65の出力部へ延びる信号引き出し配線3aと重なるシール材40の領域S、表示領域50の共通配線5に接続される共通引き出し配線5aと重なるシール材40の領域Cを示している。
【0027】
小型パネルでは、引き出し配線の総本数が比較的少ないので、走査配線用駆動回路60と信号配線用駆動回路65を一体化した駆動回路が使用されることが多い。また、フレキシブル基板70、75も、まとめて1個にすることが多い。
【0028】
図2は、図1のシール材の領域Cの配線構造を拡大して示す平面図である。シール材40の領域の引き出し配線の種類は、特に問わないが、課題となるのは配線幅が約100μm以上と大きいもので、シール材40を充分に光硬化できない可能性があるものである。これ以降では、第1の引き出し配線6として共通引き出し配線5aを例として、共通引き出し配線5aと重なるシール材40の領域Cについて詳述する。
【0029】
第1の引き出し配線6は、シール材40の領域において、2種類の枝配線部7を有している。第1の引き出し配線6方向に略平行な複数の第1の枝配線部7aの端部と、第1の引き出し配線6方向に対して斜め方向の複数の第2の枝配線部7bの端部とを繋げた六角形状の配線経路8を複数有する蜂の巣構造をしている。また、実施の形態1では、各配線経路8は略正六角形状である。
【0030】
ただし、第1の引き出し配線6の両幅端部は直線形状にしているので、第1の引き出し配線6の両幅端部近傍では、配線経路8の形状が内側の六角形状とは異なっており、一部分が台形状をしている。なお、第1の引き出し配線6の両幅端部の配線経路8も全て六角形状として、直線形状ではなく凹凸のある構造でも構わない。
【0031】
シール材40の領域の第1の枝配線部7aおよび第2の枝配線部7bの線幅は、第1の引き出し配線6の幅よりも大幅に小さいので、光が回折して、第1の枝配線部7aおよび第2の枝配線部7b上のシール材40が、充分に硬化できるようになっている。例えば、実施の形態1では、第1の枝配線部7aおよび第2の枝配線部7bの線幅は同一の16μm、長さは32μmとしている。
【0032】
次に、液晶表示装置100の製造方法における滴下注入工程について簡単に説明する。図3は、液晶表示装置の滴下注入工程の模式図である。シール材40は紫外線等の光照射によって硬化する光硬化型樹脂からなる。ここでは、1枚のアレイ基板10から4枚の液晶表示パネルが形成される場合を示している。
【0033】
図3(A)は、未硬化のシール材40が塗布された領域内に、液晶ノズル80から液晶15をアレイ基板10に滴下する工程を模式的に示す平面図である。
【0034】
図3(B)は、アレイ基板10の複数個所に適量の液晶15を滴下する工程を模式的に示す平面図である。ここでは、各シール材40内の4箇所に適量の液晶15が滴下されている。
【0035】
図3(C)は、アレイ基板10に対向して、対向基板20を重ねる工程を模式的に示す平面図である。対向基板20は、アレイ基板10と略同一の大きさで、カラーフィルタ(図示せず)や周辺ブラックマトリクス25が形成されている。アレイ基板10と対向基板20との隙間は、図示していないスペーサ材によって略3〜5μmとなり、シール材40もこの高さになる。これによって滴下された液晶15が、押し拡げられて表示領域50全体に充填される。この状態では、シール材40は未硬化であるので、アレイ基板10と対向基板20は、仮止めされた状態である。
【0036】
図3(D)は、アレイ基板10側から紫外線17を照射して、シール材40を光硬化する工程を模式的に示す図3(C)のA−A線断面図である。対向基板20には周辺ブラックマトリクス25が形成されているので、対向基板20側から紫外線17を照射しても、周辺ブラックマトリクス25によって遮光されるので、シール材40は充分に硬化できない。
【0037】
一方、アレイ基板10にも複数種類の引き出し配線が形成されており、シール材40の領域と重なって配置されている。ここでは、上述のように、共通引き出し配線5aを第1の引き出し配線6としている。六角形状の配線経路8は、第1の枝配線部7aの端部と、第2の枝配線部7bの端部とを繋いで構成されている。そして、第1の引き出し配線6は、六角形状の配線経路8を複数配置した蜂の巣構造であるので、六角形状の配線経路8の開口部からシール材40に光照射することができ、光の回折によって第1の引き出し配線6を構成する第1の枝配線部7aおよび第2の枝配線部7b上のシール材40も充分に硬化することができる。
【0038】
図3(E)は、アレイ基板10と対向基板20が貼り合わされた状態の4枚の液晶表示パネルを切断する工程を模式的に示す平面図である。点線Lは、アレイ基板10と対向基板20の両方を切断する切断線を示している。二点鎖線Mは、対向基板20のみ切断される切断線を示している。点線Lと二点鎖線Mの間の対向基板20は除去されて、アレイ基板10の額縁領域55が露出する。
【0039】
そして、4枚の液晶表示パネルに分離後に、アレイ基板10の額縁領域55に、走査配線用駆動回路60、信号配線用駆動回路65やフレキシブル基板70、75が実装される。さらに、4つの液晶表示パネルの両面に偏光板が貼付され、バックライトや筐体が取り付けられて、4つの液晶表示装置100を得ることができる。
【0040】
次に実施の形態1の効果について詳述する。上記の実施の形態1、および、下記に説明する比較例1〜4の配線構造の配線抵抗値を簡易計算により比較した。第1の引き出し配線6の条件として、材料がAl、膜厚が200nm、配線長2000μm、配線幅200μmの長方形で、開口率が略50%(比較例1を除く)となるように、枝配線部7の幅を調整した。実施の形態1の略正六角形状の蜂の巣構造では、枝配線部7(7a、7b)の幅は16μm、長さは32μmで、抵抗値6.0Ωであった。
【0041】
比較例1.
図4は、比較例1の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。比較例1は、シール材40の領域の第1の引き出し配線6が、べた構造(開口率0%)であるので、抵抗値2.5Ωであった。しかし、比較例1のべた構造では、第1の引き出し配線6上のシール材40を充分に硬化することはできないという課題がある。
【0042】
比較例2.
図5は、比較例2の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。比較例2は、シール材40の領域の第1の引き出し配線6が、開口率が略50%の複数のストライプ構造である。枝配線部7の幅は10μmであり、抵抗値5.1Ωであった。しかし、比較例2のストライプ構造では、枝配線部7の一部分の断線に対する抵抗値の増加が大きく、冗長性に劣るという課題がある。
【0043】
比較例3.
図6は、比較例3の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を示す平面図である。比較例3は、シール材40の領域の第1の引き出し配線6が、開口率が略50%の略正四角形状の格子構造である。枝配線部7の幅は11μmであり、抵抗値6.3Ωであった。格子構造は、第1の引き出し配線6方向に対して略直交する枝配線部7で隣接する枝配線部7と繋がっているので、枝配線部7の一部分の断線に対する抵抗値の増加が抑制され、冗長性に優れている。
【0044】
比較例4.
図7は、比較例4の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。図7では、シール材40領域の第1の引き出し配線6が、開口率が略50%のひし形構造である。ひし形構造の枝配線部7は第1の引き出し配線6方向に対して斜め方向になっている。枝配線部7の幅は12.5μmであり、抵抗値6.5Ωであった。ひし形構造も、第1の引き出し配線6方向に対して斜め方向に隣接する枝配線部7と繋がっているので、枝配線部7の一部分の断線に対する冗長性に優れている。
【0045】
以上の結果より、比較例1は、べた構造(開口率0%)であるので、最も低い抵抗値(2.5Ω)であった。次に、シール材40を充分に光硬化できる第1の引き出し配線6の開口率が略50%の構造では、抵抗値は、比較例2(5.1Ω)<実施の形態1(6.0Ω)<比較例3(6.3Ω)<比較例4(6.5Ω)の順であった。
【0046】
上記結果より、実施の形態1は、比較例2より抵抗値が多少大きくなるが、比較例2よりも枝配線部7の一部分の断線に対する冗長性に優れている。
【0047】
また、比較例2よりも枝配線部7の一部分の断線に対する冗長性に優れた比較例3、比較例4、および実施の形態1の中で、実施の形態1が抵抗値が最も小さくなった。
【0048】
この理由は、実施の形態1は、第1の枝配線部7aは、第1の引き出し配線6方向と略平行であるので、最も抵抗を低くできる配置である。ただし、シール材40の領域において、第1の枝配線部7aは、一直線状に繋がっておらず、ジグザグになっているので、比較例2のストライプ形状よりは抵抗値が大きくなる。しかし、第1の引き出し配線6方向に対して斜め方向の第2の枝配線部7bが、隣接する第1の枝配線部7aと繋がることにより、比較例3の格子構造と同様に、第1の引き出し配線6の枝配線部7(7a、7b)の一部分の断線に対する冗長性は比較例2よりも優れている。
【0049】
ただし、比較例3の格子構造は、第1の引き出し配線6方向に対して略直交する方向の枝配線部7は、第1の引き出し配線6の低抵抗化に対しての寄与は小さいと考えられる。
【0050】
これに対して、実施の形態1の第2の枝配線部7bは、第1の引き出し配線6方向に対して斜めに形成されているので、第1の引き出し配線6方向の成分を有するので、第1の引き出し配線6の枝配線部7(7a、7b)の一部分の断線に対する冗長性以外に、第1の引き出し配線6の低抵抗化にも寄与すると考えられる。
【0051】
結果として、実施の形態1の第1の引き出し配線6の蜂の巣構造は、抵抗値としては、比較例3の格子構造より低抵抗になると考えられる。
【0052】
また、比較例4のひし形構造も、第1の引き出し配線6の一部分の断線に対する冗長性に優れているが、実施の形態1のような第1の引き出し配線6方向に略平行な第1の枝配線部7aを有せず、実施の形態1の第2の枝配線部7bに相当する斜め方向の枝配線部7だけを組み合わせた構造と見なせるので、実施の形態1よりも、抵抗値が少し大きくなっていると考えられる。
【0053】
以上の結果より、実施の形態1は、シール材40に光硬化型樹脂を用いた場合でも、第1の引き出し配線6と重なる領域に未硬化のシール材40の領域がなく、また、シール材40の領域における第1の引き出し配線6の枝配線部7(7a、7b)の一部分の断線に対する冗長性と、低抵抗化の両立を図ることができる。
【0054】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2の表示装置のシール材の領域の第1の引き出し配線構造を拡大して示す平面図である。実施の形態1では、配線経路8の形状は略正六角形状であったが、実施の形態2では、配線経路8は、第1の引き出し配線6方向に伸びた扁平な六角形状としたものである。
【0055】
第1の引き出し配線6方向に平行な複数の第1の枝配線部7aを、斜め方向の第2の枝配線部7bの長さの1.5倍とした場合は、開口率を略50%とするために、枝配線部7(7a、7b)の幅は17μmであり、配線抵抗は、実施の形態1よりも低い抵抗値5.9Ωとなった。
【0056】
第1の引き出し配線6方向に平行な複数の第1の枝配線部7aを、斜め方向の第2の枝配線部7bの長さの2倍とした場合は、開口率を略50%とするために、枝配線部7(7a、7b)の幅は18μmであり、配線抵抗はさらに低い抵抗値5.7Ωとなった。
【0057】
第1の引き出し配線6方向に平行な複数の第1の枝配線部7aを、斜め方向の第2の枝配線部7bの長さの2.5倍とした場合は、開口率を略50%とするために、枝配線部7(7a、7b)の幅は19μmであり、配線抵抗はさらに低い抵抗値5.5Ωとなった。
【0058】
以上のように、第1の引き出し配線6の開口率が同等の場合、配線経路8を第1の引き出し配線6方向に伸びた扁平な六角形状にすることにより、正六角形状よりも配線抵抗をさらに下げることができる。また、配線経路8を、第1の引き出し配線6方向に伸びた扁平な六角形状にするほど、配線抵抗が下がる傾向となった。
【0059】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3の表示装置のシール材の領域の配線構造を拡大して示す平面図である。実施の形態3では、実施の形態1の略正六角形状の配線経路8に、さらに六角形状の対角線に相当する第3の枝配線部7cを有している。ここでは、この第3の枝配線部7cは、引き出し配線6方向に略平行に配置されているので、第1の枝配線部7aと同等の効果を有する。第1の枝配線部7aの端部と第3の枝配線部7cの端部を繋ぐことにより、開口率が同等の場合、第1の枝配線部7a、第2の枝配線部7b、または第3の枝配線部7cの線幅は多少小さくなるが、引き出し配線6は複数の第1の枝配線部7aと、複数の第3の枝配線部7cを繋いだ引き出し配線6と平行方向の一直線状の枝配線部7を有する比較例2のストライプ構造に近くなるので、さらなる低抵抗化を図ることができる。ここでは、第1の引き出し配線6の開口率は略50%で、枝配線部7(7a、7b、7c)の幅は11μmであり、配線抵抗は、実施の形態1よりも低い抵抗値5.6Ωとなった。
【0060】
また、六角形状の対角線に相当する第3の枝配線部7cは、引き出し配線6方向に対して斜め方向の対角線方向に配置することもできる。または、第3の枝配線部7cに加えて第4の枝配線部として配置することもできる。
【0061】
以上の実施の形態では、駆動回路がCOG実装の場合を示したが、引き出し配線の一部がシール材の領域上に形成されるものであれば、TAB(Tape Automated Bonding)実装や、画素のTFT形成と同時に駆動回路をポリシリコン等のTFTでアレイ基板上に形成した表示装置にも適用できる。
【0062】
また、以上の実施の形態では、表示装置として、表示媒体に液晶を使用した液晶表示装置の場合を示したが、表示媒体は液晶に限定されない。2枚の基板を光硬化型のシール材で貼り合わせ、シール材の領域に引き出し配線が配置される表示装置であれば、例えば、エレクトロルミネッセンスを使用した自発光型の表示装置や、帯電粒子または油滴等を使用した一般に電子ペーパーと呼ばれる反射型の表示装置等にも適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 透明基板
2 走査配線
2a 走査引き出し配線
3 信号配線
3a 信号引き出し配線
5 共通配線
5a 共通引き出し配線
6 第1の引き出し配線
7 枝配線部
7a 第1の枝配線部
7b 第2の枝配線部
7c 第3の枝配線部
8 配線経路
10 アレイ基板
15 液晶
17 紫外線
20 対向基板
25 周辺ブラックマトリクス
30 画素
40 シール材
50 表示領域
100 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有するアレイ基板と、該アレイ基板に対向して配置される対向基板とがシール材で貼り合わされ、該シール材の内側の前記表示領域に表示媒体が封入されている表示装置であって、
前記アレイ基板は、前記表示領域から前記シール材の外側に引き出される複数種類の引き出し配線を有しており、
前記アレイ基板は透明基板で、前記シール材は光硬化型樹脂であり、
複数種類の前記引き出し配線の内、少なくとも1種類の第1の引き出し配線は、
前記シール材の領域において、複数種類の枝配線部を有しており、
前記第1の引き出し配線方向に略平行な第1の枝配線部の端部と、
前記第1の引き出し配線方向に対して斜め方向の第2の枝配線部の端部とを繋げることにより構成された六角形状の配線経路を複数並べて配置した蜂の巣構造をしていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記六角形状は、前記第1の枝配線部の長さが、前記第2の枝配線部の長さよりも大きい前記第1の引き出し配線方向に扁平な形状であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記六角形状は、前記第1の枝配線部の長さが、前記第2の枝配線部の長さよりも2倍以上大きい前記第1の引き出し配線方向に扁平な形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記配線経路は、前記シール材の領域において、前記六角形状の対角線に相当する第3の枝配線部をさらに有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示媒体は、液晶であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の引き出し配線は、前記表示媒体を駆動する時の基準電位が印加される共通引き出し配線であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208243(P2012−208243A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72847(P2011−72847)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】