説明

表装材の割付シート及び施工方法

【課題】壁面の正確な寸法、形状データや窓開口部の正確な形状、位置データ等を用いることなく、また、壁紙を現場毎に製作することなく、タイルの割付け作業を容易かつ迅速に熟練作業経験を要することなく行うことができる割付シートと、この割付シートを用いたタイル施工方法を提供する。
【解決手段】割付シート3には、縦線として黒実線Aよりなる第1の直線群、黒破線Bよりなる第2の直線群、青実線Cよりなる第3の直線群、青破線Dよりなる第4の直線群、ピンク実線Eよりなる第5の直線群、ピンク破線Fよりなる第6の直線群、緑実線Gよりなる第7の直線群、緑破線Hよりなる第8の直線群、橙実線Iよりなる第9の直線群、橙破線Jよりなる第10の直線群が引かれている。また、横線として第1ないし第10の直線群a〜jが引かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方形のタイル、石板、窯業系サイディング板などの表装材を壁や床に割付ける際に使用する割付シートと、この割付シートを用いた表装材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイルを建物の壁面等に張り付けるに際しては、予めタイルの割付けを行う必要がある。通常は、タイル張り職人が、タイルを張る壁、開口部の位置、寸法を測定し、壁の端部、窓周りにバランスよく切り物が入るように考慮してタイルの割付けを行う。この作業は、壁の上下左右など複数の部分についてのタイルの大きさのバランスを見る必要があり、経験と熟練を要する作業である。
【0003】
なお、第6図及び第7図は窓開口部1を有した壁面に300角タイルを割付けた一例を示すものである。第6図では、窓開口部1の周囲のタイル形状が不揃いであり、見栄えが悪いと共に、壁面の上部や右サイドに細幅のタイルが多く生じ、割付けとしては良くない。なお、タイルを細幅に切断する場合、タイルに割れが生じ、材料の無駄が多くなり、作業時間も徒に長くなる。第7図の割付けであれば、窓開口部1の周囲においてタイルが上下対称、かつ左右対称となっており、見栄えが良好である。また、細幅タイルの量も少ない。このように、第6図は割付けの良くない例、第7図は良好な割付け例である。
【0004】
特開2003−97008には、CAD画面上で得た建築体の平面図形の頂点座標データと、タイルデータとを設定し、画面上で割付けを行うことが記載されているが、正確な座標データの取得に手間がかかるだけでなく、そのようにして得た割付けデータに基いて正確にタイルを張り付けるには、依然としてタイル職人の熟練作業に頼らざるを得ない。
【0005】
実公平6−7160には、タイルを貼り付け位置を示す線を記入した型紙を用いてタイル施工を行うことが記載されている。この場合、現場毎に線を記入した型紙を作成する必要があり、施工作業効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−97008
【特許文献2】実公平6−7160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、壁面の正確な寸法、形状データや窓開口部の正確な形状、位置データ等を用いることなく、また、壁紙を現場毎に製作することなく、タイルの割付け作業を容易かつ迅速にまた熟練作業経験を要することなく行うことができる割付シートと、この割付シートを用いたタイル施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の割付シートは、方形の表装材を施工対象面に張り付けるのに先立って施工対象面に張り付けられる割付シートであって、張り付けられる表装材の辺縁の位置を示す直線が縦横に引かれている割付シートにおいて、表装材の一辺の長さのn分の1(nは4以上の整数)の間隔にて縦横に直線が引かれており、割付シートの一端側の直線を第1の直線とし、それよりも他端側の直線を第kの直線(kは2ないし(n−1))とした場合、第1の直線と、それから該一辺の長さの整数倍の距離に位置する直線とからなる第1の直線群は同色かつ同形状であり、第kの直線と、それから一辺の長さの整数倍の距離に位置する直線とからなる第kの直線群は同色かつ同形状であり、各直線群は、色又は形状が異なることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の割付シートは、請求項1において、nは4〜30であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の割付シートは、請求項1又は2において、nは偶数であり、隣接する直線の一方は実線であり、他方は破線であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の割付シートは、請求項3において、実線よりなる直線と、その一方のサイドに隣接する破線とが同色であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明(請求項5)の表装材の施工方法は、請求項1ないし4のいずれか1項の割付シートを施工対象面に貼り、表装材の辺縁を該割付シートの直線群の中から選択されたいずれかの1つの直線群の直線に合致させて表装材の張り付けを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の割付シートを用いて表装材の施工を行うには、この割付シートを壁面などの施工対象面に貼り付ける。この際、窓開口部などがあれば、その部分は切り取る。次いで、割付けが良好となる直線群を選び出し、この直線群に属する直線に表装材の辺縁を合致させて表装材を貼り付け施工する。これにより、割付けが良好な表装材仕上がりとすることができる。
【0014】
本発明では、直線の間隔が表装材の一辺の長さの1/nであるため、表装材の一辺の長さの1/nのピッチにて表装材の位置を変えることができる。nは4〜30が好適である。nの数が多くなると、直線の色の数も多くなり、似た色の直線が生じるおそれがある。そこで、nの数が多くなってきたときには、直線を色だけでなく形状、例えば実線と破線とで区別することが好ましい。この場合、同色の実線、破線とを隣接配置することにより、色による直線の識別が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る割付シートの直線を示す説明図である。
【図2】図1の割付シートを貼り付けた壁面の立面図である。
【図3】図2の一部の拡大図である。
【図4】図3の壁面へのタイルの割付けを示す立面図である。
【図5】図4の一部の拡大図である。
【図6】タイル割付け例を示す立面図である。
【図7】タイル割付け例を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
第1図は300角の内装用タイル(一辺の長さが303mmの正方形のタイル)を目地なしで割付けるための割付シート3を示している。この割付シート3には、300角タイルの一辺の長さを10等分するように、縦線として黒実線Aよりなる第1の直線群、黒破線Bよりなる第2の直線群、青実線Cよりなる第3の直線群、青破線Dよりなる第4の直線群、ピンク実線Eよりなる第5の直線群、ピンク破線Fよりなる第6の直線群、緑実線Gよりなる第7の直線群、緑破線Hよりなる第8の直線群、橙実線Iよりなる第9の直線群、橙破線Jよりなる第10の直線群が引かれている。また、横線として黒実線aよりなる第1の直線群、黒破線bよりなる第2の直線群、青実線cよりなる第3の直線群、青破線dよりなる第4の直線群、ピンク実線eよりなる第5の直線群、ピンク破線fよりなる第6の直線群、緑実線gよりなる第7の直線群、緑破線hよりなる第8の直線群、橙実線iよりなる第9の直線群、橙破線jよりなる第10の直線群が引かれている。
【0018】
一辺の長さを10等分するところから、隣接する直線の間隔は30.3mmとなっている。破線を構成する1本の線分の長さは1〜30mm、特に5〜12mm程度が好適である。破線における線分同士の間隔(切れ目の長さ)は1〜15mm、特に2〜12mm程度が好適である。
【0019】
この割付シート3を用いて300角タイルの割付けを行うには、第2,3図のように、まず該割付シート3を施工対象壁面に貼り付ける。この貼り付けには接着剤又は粘着剤を用いるのが好ましいが、タッカー等を併用してもよい。なお、割付シート3の裏面に粘着剤層及びそれを覆う離型紙を設けておき、離型紙を剥して割付シートを壁面に貼り付けるようにしてもよい。
【0020】
貼り付けに際し、壁面のサイズが1枚の割付シートよりも大きいときには、複数枚の割付シート3を継ぎ足すようにして貼り付ける。この場合、割付シート3の直線の配列ピッチが連続したものとなるようにする。また、壁面に窓開口部1や、その他の障害物が存在するときには、それらの部分をカッターナイフ、鋏などで切り取る。
【0021】
割付シート3を壁面に貼り付けた後、タイルの辺縁を合わせるべき直線を、良好なタイル割付けとなるように選出する。この実施の形態では、窓開口部1の周囲のタイル配列が上下対称、左右対称となることを優先させて割付けを決定する。そうすると、第4図及び第5図のように、縦線としては第1の直線群に属する黒実線Aを選び、横線としては第7の直線群に属する緑実線gを選ぶのが好適であることになる。
【0022】
第4,5図では、縦の黒実線Aと横の青実線gを太線として表示しているが、実際の施工に際してこのように太線を記入することは、通常は行わず、施工作業者が縦線については黒実線を基準とし、横線については青実線を基準として300角タイルを張っていけばよい。このタイル張りには接着剤を用いるのが好ましい。窓開口部1や、壁面の上縁及び下縁に沿って配置されるタイルについては切断加工しておく。
【0023】
このようにして、前記第7図のような良好な割付けを迅速かつ容易に行うことができる。また、割付シートは300角タイル用に予め印刷されたものを用いれば足り、現場寸法に応じて一品製作的に型紙を製作することも不要である。
【0024】
上記説明ではタイルは300(一辺が303mm)角であり、割付シートの直線はタイル一辺の長さの10等分間隔(30.3mm)にて引かれているが、タイル一辺の長さが50〜600mmの場合、4〜30等分間隔にて直線が引かれていればよい。
【0025】
具体的には、タイルが200角(一辺が202mm)の場合は、10〜15等分間隔にて直線が引かれていることが好ましく、100角(一辺が101mm)の場合は5〜10等分間隔にて直線が引かれていることが好ましい。
【0026】
本発明では、割付シートに天地方向を示す表示を設けておくことが望ましい。なお、タイル同士の間に目地間隔をあける場合には、タイルの一辺の長さと目地幅とを合算した長さを表装材の一辺の長さとし、このn分の1の間隔にて直線を引けばよい。
【0027】
タイルは正方形ではなく、長方形であってもよい。この場合、割付シートの縦線の直線群の間隔と横線の直線群の間隔とを異なったものとしてもよい。また、縦方向と横方向とでn等分する際のnの数を異ならせてもよい。
【0028】
本発明では、割付シートの表面に微小な凹凸を形成し、接着剤の付着性を高めるようにしてもよい。
【0029】
また、割付シートの表面に水溶性の接着剤を塗着しておき、タイル張り付けに際し、水を割付シートの表面に吹きかけてタイルを接着するようにしてもよい。
【0030】
本発明では、タイル以外の表装材として、石板、窯業系サイディング材などを用いることができる。本発明の割付シートは床面の表装材施工に用いることもできる。
【0031】
割付シートの素材を耐水性、耐候性のものとすることにより、外装用表装材の施工にも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 窓開口部
2 タイル
3 割付シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の表装材を施工対象面に張り付けるのに先立って施工対象面に張り付けられる割付シートであって、張り付けられる表装材の辺縁の位置を示す直線が縦横に引かれている割付シートにおいて、
表装材の一辺の長さのn分の1(nは4以上の整数)の間隔にて縦横に直線が引かれており、
割付シートの一端側の直線を第1の直線とし、それよりも他端側の直線を第kの直線(kは2ないし(n−1))とした場合、第1の直線と、それから該一辺の長さの整数倍の距離に位置する直線とからなる第1の直線群は同色かつ同形状であり、
第kの直線と、それから一辺の長さの整数倍の距離に位置する直線とからなる第kの直線群は同色かつ同形状であり、各直線群は、色又は形状が異なることを特徴とする割付シート。
【請求項2】
請求項1において、nは4〜30であることを特徴とする割付シート。
【請求項3】
請求項1又は2において、nは偶数であり、隣接する直線の一方は実線であり、他方は破線であることを特徴とする割付シート。
【請求項4】
請求項3において、実線よりなる直線と、その一方のサイドに隣接する破線とが同色であることを特徴とする割付シート。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項の割付シートを施工対象面に貼り、表装材の辺縁を該割付シートの直線群の中から選択されたいずれかの1つの直線群の直線に合致させて表装材の張り付けを行うことを特徴とする表装材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−132236(P2012−132236A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286175(P2010−286175)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】