説明

表面サイズ剤のためのアニオン性−カチオン性ポリマー配合物

紙および他のセルロース製造物の表面サイジングおよび表面強化のための組成物、ならびに、関連したサイジング方法、および、得られるサイジングされた製造物(この場合、前記組成物は、薄膜形成バインダー(例えば、デンプンなど)と、アニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとの水性混合物である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、紙などのセルロース製造物のための表面サイズ剤(size)組成物に関する。本発明の組成物もまた、紙の表面強度を改善する。具体的には、本発明は、薄膜形成バインダー(例えば、デンプンなど)と、アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの配合物との混合物を含む表面サイズ剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
多くの場合、紙および他のセルロース製造物はサイジングされる(すなわち、印刷するために重要な紙のそのような特性(例えば、表面の多孔性および疎水性など)を改善するために組成物で処理される)。サイジングは、典型的には、水、水系組成物およびインクの、基体による吸収に影響を与える。この作用は次に、インク浸透時間値の上昇、印刷インクの側方拡大の低下、ならびに、様々な印刷技術による像形成およびコントラストの改善をもたらす。従って、疎水性表面サイズ剤は、主に、紙シートの吸収度を低下させ、かつ、液体(インク)の浸透に対する表面抵抗を高めることによって印刷性を改善する。
【0003】
紙をサイジングするための2つの主要な方法が存在する。内部サイジング(これはまたバルクサイジングとしても知られている)および表面サイジング。内部サイジングでは、サイジング剤またはサイジング組成物を抄紙機の湿潤端部で紙パルプの水性懸濁物と混合し、その後、サイジング剤およびパルプの均一な分布を有するシートまたは網を形成することを伴う。内部サイジング剤のほとんどが小分子(AKD、ASA、ロジンなど)である。表面サイジングでは、事前に形成された網の表面にサイジング剤を塗布することを伴う。表面サイジングは、典型的には、疎水性を増大させ、製造物の品質を改善し、また、処理された紙製造物の表面にサイジング剤のほとんど全てが保持されるので内部サイジングよりも費用がかからない。表面サイジング剤のほとんどが高分子化合物である。
【0004】
様々な天然樹脂および合成樹脂が表面サイジング剤として使用されている。表面サイジング剤は、アニオン性、カチオン性または両性が可能であり、同じ電荷タイプの他の薬剤との組合せで使用することができる。特定のサイジング剤の有効性はその分子における親水性-疎水性バランスによって影響される。そのような知られているサイジング剤の例示として、修飾されたデンプン、修飾された石油樹脂、および合成コポリマー(例えば、エチレン性不飽和モノマーとアクリレートとのコポリマー、スチレン-無水マレイン酸(SMA)コポリマーなど)がある。そのような物質から作製されたサイジング組成物では、表面サイジング剤は水に溶解されるか、または水に分散される。
【0005】
表面サイジング剤の先行技術の例として、下記の発行された米国特許を挙げることができる。米国特許第3,941,736号、同第4,109,053号、同第4,112,155号、同第4,115,331号、同第4,835,212号、同第4,855,343号、同第5,139,614号、同第5,258,466号、同第5,290,849号、同第5,525,661号、同第5,591,489号、同第5,795,932号、同第5,824,190号、同第6,051,107号、同第6,087,457号、同第6,114,417号、同第6,171,444号、同第6,284,099号および同第6,310,132号。
【0006】
これらの知られているサイジング剤の多くの性能は、特定の適用のためには必ずしも完全に満足すべきものではない。様々な印刷技術が、高い一体性と、印刷プロセスの研磨作用に対する高い抵抗性とを有する紙表面を要求し続けている。繊維のほぐれ(fiber picking)、毛羽立ち、およびフィラー粉の形成(filler dusting)は全てが、様々な印刷プロセスにおいて、紙に関して作業性の低下する一因になっている。糸くずの蓄積は、より頻繁な掃除が要求されるので、印刷作業の質を低下させ、生産性を低くする。従って、これらの表面欠点を克服または改善する表面サイジング剤が求められている。具体的には、ほとんど全てのサイジング剤は、ヘルクレス(Hercules)サイジング試験(HST)によって多くの場合には測定される表面吸収を低下させるそれらの能力にもかかわらず、アダムス・ウエット・ラブ(Adams Wet Rub)試験については比較的大きい値を示す。紙が特にオフセット印刷用途で使用されるためには、アダムス・ウエット・ラブ試験における満足すべき結果(すなわち、より低い結果)が重要である。
【0007】
従って、当技術分野においては、調製が容易であり、かつ、使用が容易である新規な表面サイジング組成物、特に、みょうばん含有紙の場合には酸性pH範囲で、みょうばん非含有のチョーク含有紙の場合には中性〜弱アルカリ性のpH範囲の両方で使用することができ、かつ、優れたサイジング作用をもたらすサイズ剤組成物が依然として求められている。
【0008】
米国特許出願第20020100567号には、紙を内部サイジングするためのプロセスが記載されており、このプロセスは、紙繊維および任意で填料を有する水性懸濁物に、AKDのアニオン性またはカチオン性のサイジング分散物と、芳香族基を有するカチオン性有機ポリマーを含むサイジング促進剤と、段階伸長ポリマー、多糖、および天然に存在する芳香族ポリマーからなる群より選択される、芳香族基を有するアニオン性ポリマーとを加えることを含む。この場合、サイジング分散物およびサイジング促進剤は別々に水性懸濁物に加えられている。
【0009】
Dasguptaの米国特許第5,338,407号には、紙の乾燥強度を、その柔軟性を低下させることなく高めるためのプロセスが記載されており、このプロセスでは、アニオン性のカルボキシメチルグアルまたはカルボキシメチルヒドロキシエチルグアルと、カチオン性のグアル(これは、天然グアルを苛性アルカリと反応し、続いて第四級アンモニウムクロリドと反応することによって調製することができる)との混合物がさらしパルプの完成紙料(湿潤端部)に加えられる。
【0010】
Allenらの米国特許第6,294,645号には、紙の湿潤強度を実質的に増大させることなく、乾燥強度を紙に付与するために有用な組成物が記載されており、この場合、樹脂システムはカチオン性成分およびアニオン性成分を含む。カチオン性成分は、内部リンカー(intralinker)とポリアミドアミンとの反応生成物を含む。アニオン性成分は、アクリルアミドと、アクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1つの要素とのコポリマーからなるアニオン性成分を含む。または、アニオン性成分は、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルグアル、アルギン酸、ペクチン、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)およびその塩からなる群より選択されるアニオン性成分を含む。好ましくは、アニオン性成分の塩はそれらのナトリウム塩である。この組成物は抄紙機の湿潤端部で加えられる。
【発明の開示】
【0011】
発明の簡単な説明
本発明は、紙および他のセルロース製造物を表面サイジングするための組成物、ならびに、関連する表面サイジング方法、および、サイジングされた基体に関する。本発明による組成物はサイズ剤を提供し、表面強度を紙などのセルロース基体に与える。具体的には、本発明の表面サイジング組成物は、薄膜形成バインダー(例えば、デンプンなど)と、アニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとの混合物である。
【0012】
本発明は、セルロース基体への表面塗布によって表面サイズ剤および表面強度を与えることに関し、紙を内部サイジングし、かつ強化するための組成物およびプロセスとは区別されなければならない。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、紙および他のセルロース製造物を表面サイジングおよび表面強化するための組成物、ならびに、関連する表面サイジング方法、および、得られる製造物に関する。本発明の組成物は、薄膜形成バインダー(例えば、デンプンなど)を伴う、アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの混合物である。
【0014】
用語「ポリマー」は、約10以上のモノマーユニットを有する化合物を示すためにその従来の意味で本明細書を通して使用され、ホモポリマーならびにコポリマーを包含することが意図される。用語「モノマー」は、ポリマーでない化合物を示すために本明細書中において使用される。
【0015】
本発明の組成物によりサイジングされた紙は、典型的には、インクおよび水性液体の浸透に対する許容可能な抵抗性、十分な表面平滑性、および、驚くほど改善された表面強度を示し、その結果、毛羽立ちが低下するようになっている。
【0016】
上記で記されたように、本発明の重要な特徴は、アニオン性ポリマーのサイジング剤を薄膜形成バインダー(特に、デンプン)の存在下でカチオン性ポリマーのサイジング剤と組み合わせることによって、満足すべき表面吸収性能を有し、一方では、アダムス・ウエット・ラブ試験によって示されるように驚くべきほど改善された表面強度を示すサイジングされたセルロース製造物をもたらす表面サイジング組成物が得られるという発見にある。何らかの動作理論によって拘束されることを望まないが、出願人らは、表面強度の改善が、紙表面でのアニオン性成分およびカチオン性成分の相互作用により、強化された架橋層がもたらされることから生じていると考えている。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「架橋された」および類似する用語は、本発明のサイジング組成物が、効果的な量のサイジング組成物が塗布されている柔軟な多孔性セルロース基体(例えば、紙など)の表面性状(サイズ剤および強度)を改変するように乾燥し、硬化したとき、本発明のサイジング組成物において、例えば、共有結合性の化学反応、イオン性相互作用またはクラスター形成、基体への改善された接着、相転移または相侵入、および水素結合によって生じる構造的および/または形態学的な変化を包含することが意図される。
【0018】
本発明のアニオン性ポリマー剤として組成物において使用される好適なアニオン性ポリマーには、無水マレイン酸と別の不飽和コモノマー(例えば、スチレンなど)との加水分解されたコポリマー、ならびに、そのようなコポリマーの塩(例えば、アンモニウム塩、カリウム塩またはナトリウム塩)が含まれる。アニオン性の(コ)ポリマーは溶液または分散物であり得る。
【0019】
本発明における使用のために好適なアニオン性ポリマーの群には、それ以外の周知のアルカリ可溶性の酸含有コポリマーもまた含まれる。本発明において有用なそのようなアルカリ可溶性の酸含有コポリマーの例には、スチレン-アクリル酸(SAA)コポリマー、スチレン-メタクリル酸コポリマー、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸コポリマー、スチレン-アクリル酸ブチル-アクリル酸コポリマー、およびアクリルアミド-アクリル酸コポリマーなどがある。スチレンの代わりに、他の疎水性モノマーを酸含有コポリマーに含有することができる。例えば、α-メチルスチレン;アルキル置換されたスチレン(例えば、ビニルトルエンなど);アクリロニトリル;塩化ビニル、アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど;または同様なもの、またはそれらの混合物;ビニルエステル(例えば、酢酸ビニルまたはラウリン酸ビニルなど);フマル酸エステル(例えば、フマル酸ジブチルなど);マレイン酸エステル(例えば、マレイン酸ジブチルなど);イタコン酸エステル(例えば、イタコン酸ジブチルなど);オレフィン(例えば、エチレンなど)など、またはそれらの混合物。
【0020】
加えて、アクリル酸またはメタクリル酸の代わりに、他の共重合可能な不飽和酸もまたアルカリ可溶性の酸含有コポリマーにおいて使用することができる。例には、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸;イタコン酸;マレイン酸モノアルキル(例えば、マレイン酸モノメチルなど);アコニット酸などがある。不飽和スルホン酸(例えば、ビニルスルホン酸またはスチレンスルホン酸など)もまた使用することができる。アルカリ可溶性の酸含有コポリマーの重量平均分子量は一般には3,000〜1,000,000であり、好ましくは約10,000〜150,000のMw(重量平均分子量)である。再度ではあるが、これらのコポリマーはそれらの塩(例えば、それらのアンモニウム塩など)として使用することができる。
【0021】
1つの具体的なアニオン性ポリマー剤は、可溶化されたスチレン-マレイン酸(これはまた「SMA」として示される)コポリマーである。そのようなスチレン/マレイン酸コポリマーは50重量%〜80重量%のスチレンおよび50重量%〜20重量%のマレイン酸を含むことができ、約3,000〜約300,000の間の分子量を有することができる。このコポリマーは、当業者に知られている任意の様式でそのアンモニウム塩を形成することによって可溶化させることができる。そのようなアニオン性コポリマーがNovaCote(登録商標)1936およびNovaCote(登録商標)2000の商品名でG-P Resins, Inc.から市販されている。好適なアニオン性化合物はまた、スルホン酸部分またはカルボン酸部分を有するポリマーラテックス、例えば、NovaCote(登録商標)1934(これもまたG-P Resins, Inc.から入手可能である)などであり得る。アニオン性ポリマーとして使用される好適な別のG-P製品、すなわち、Ambond 1500(これは、デンプンにグラフト化されたアクリルアミド-アクリル酸コポリマーである)もまた市販されている。本発明のサイジング組成物の調製においてそのような物質を使用することの1つの利点は、1つだけの成分により、要求されるアニオン性薬剤と、薄膜形成バインダー成分(これは下記においてより詳しく記載される)との両方が組成物に提供されることである。最後に、ハイブリッド型のアニオン性成分(例えば、アンモニウムSMA溶液およびスチレン-アクリレートコポリマー(SAE)分散物(これはNovaCote(登録商標)PS2としてG-P Resins, Inc.から入手可能である)など)、または、アニオン性グアルゴム(例えば、カルボキシメチルグアル(これは、天然グアルを苛性剤と反応し、次いでモノクロロアセタートと反応することによって得られる)など)もまた、アニオン性ポリマーとして使用することができる。
【0022】
カチオン性ポリマー剤として有用な好適なカチオン性ポリマーの例には、ポリアミン;ポリエチレンイミン;ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂(例えば、G-P Resins, Inc.から入手可能なAMRES 25HPなど);ジアルキルアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルアミン、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリレートから選択されるモノマーに基づくホモポリマーまたはコポリマーが含まれる。用語「(メタ)アクリルアミド」および類似する用語の使用は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの両方を包含することが意味される簡略表記法である。カチオン性モノマーは酸付加塩および/または第四級アンモニウム塩であり得る。好適な(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリレートの例には、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、好ましくは、それらの第四級アンモニウム塩が含まれる。カチオン性ポリマーの分子量はポリマーのタイプおよびその電荷密度に依存し得る。好適には、分子量は1,000,000未満であり、好ましくは600,000未満である。分子量の下限は通常的には2,000であり、好ましくは約5,000である。
【0023】
1つの好適なカチオン性ポリマーを、カチオン性モノマー(例えば、ジアリル第四級モノマー(一般にはジアリルジメチルアンモニウムクロリド、DADMAC)など)を可能であれば少量のアクリルアミドとともに重合することによって調製することができる;しかし、カチオン性モノマーは、一般には酸付加塩または第四級アンモニウム塩として、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(この場合、アルキル基およびアルキレン基は通常的にはC1〜3である)もまた可能である。例えば、カチオン性モノマーは、通常的には第四級アンモニウム塩として、ジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタクリレートであってもよく、あるいは、再度ではあるが、一般には第四級塩として、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドまたはジメチルアミノプロピルメタクリルアミドであってもよい。四級化基は通常、メチルクロリドまたは他の脂肪族基である。そのようなポリマーにおいて、カチオン性モノマーの量は5%〜45%が可能であり、アクリルアミドの量は95%〜55%が可能である。所望する少量の他のエチレン性不飽和モノマーをモノマー配合物に含めることができるならば、しかし、これは通常の場合には必要ではなく、ポリマーが二成分配合物から都合よく形成される。任意でコモノマー(好ましくは、90重量%以下のアクリルアミド)を有する水溶性エチレン性不飽和カチオン性モノマーのカチオン性ホモポリマーが一般には好適である。エチレン性不飽和カチオン性モノマーは、上記で議論されたそのようなカチオン性モノマーのいずれかが可能であり、しかし、モノマーは好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)である。一般に、1つの好適なカチオン性ポリマーは、少なくとも5%(通常的には少なくとも10%)DADMACのホモポリマーまたはコポリマー(この場合、残りはアクリルアミドである)である。
【0024】
カチオン性ポリマー剤として使用することができるカチオン性ポリマーのもう1つのクラスは、ビスフェノールのコ-ポリヒドロキシアミノエーテル(Dowから入手可能なBLOX(登録商標)製品タイプ)である。再度ではあるが、ポリマーはその酸付加塩および/または第四級アンモニウム塩として提供され得る。ヒドロキシエチルアクリレート-コ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド、および、天然グアルを苛性剤と反応し、次いで第四級アンモニウムクロリドと反応することによって調製されるカチオン性グアルもまた好適である。
【0025】
1つの特に有用なカチオン性ポリマーは、デンプンにグラフト化されたDADMAC-アクリルアミドコポリマー(Ambond 1520)である。そのようなグラフト化デンプンポリマーは、デンプン基部へのアクリルアミドビニルモノマーのグラフト重合によって調製される。当技術分野において周知のように、ビニルモノマーをデンプンにグラフト化するために有用な様々なフリーラジカル重合方法(例えば、放射線、酸化還元型フリーラジカル重合および機械的解裂)がある。1つの特に好ましい方法では、デンプンおよびアクリルアミドの溶液を調製し、適切なフリーラジカル触媒をそれに加え、その後、デンプンのペースト化温度よりも低い温度で重合を行うことを伴う。使用することができる典型的なフリーラジカル触媒は、過酸化水素、溶液可溶性の有機過酸化物およびヒドロペルオキシド、ならびに過硫酸塩である。活性化剤(これは典型的には穏和な還元剤である)もまた、触媒とともに加えることができる。これらの方法の全てが当業者には周知であり、さらなる議論を本明細書中では必要としない。
【0026】
イミド形態でのスチレン-無水マレイン酸コポリマー(3-プロピル-ジメチルアンモニウムクロリド)もまた、カチオン性の表面サイズ剤として好適である。イミド形態でのスチレン-無水マレイン酸コポリマーもまた、アニオン性の水溶性ポリマーまたは水分散性ポリマーと共同して表面強度を提供する。スチレン含有量は重量に基づいて50%〜80%の間の範囲である。イミドSMAは酢酸溶液または塩酸溶液に溶解させることができる。
【0027】
カチオン性の表面サイズ剤はまた、スチレンをアクリル酸ブチルと乳化共重合することによって得られ、かつ、粒子表面にカチオン性電荷を有するカチオン性ラテックスが可能である。スチレン含有量は30%〜75%の範囲が可能であり、カチオン性電荷は0.2meq/グラム〜1.0meq/グラムの間で任意である。
【0028】
そのようなグラフト化デンプンポリマーを調製することにおいて有用なデンプンには、例えば、トウモロコシデンプン、コメデンプン、もちトウモロコシ(waxy maize)デンプン、ワクシー・ソルガム(waxy sorghum)デンプン、タピオカデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプン、パール(pearl)デンプンおよびサツマイモデンプン、ならびにそれらの誘導体が含まれる。誘導体には、酸化デンプン、ヒドロキシアルキル化デンプン、カルボキシアルキル化デンプン、様々な可溶化デンプン、および酵素修飾されたデンプンなどが含まれる。一般に、ビニルモノマーがその表面上で重合することができる任意のデンプンを使用することができる。
【0029】
このタイプのポリマーがG-P Resins, Inc.からAmbond(登録商標)の表示の下で入手可能である。本発明のサイジング組成物の調製においてそのような物質を使用することの1つの利点は、1つだけの成分により、要求されるカチオン性薬剤と、薄膜形成バインダー成分(これは下記においてより詳しく記載される)との両方が組成物に提供されることである。
【0030】
本発明のサイジング組成物を調製するために使用されるアニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーは、一般には、水溶液または水不溶性ポリマーの水性分散物である。水性分散物の場合、アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの分散されたポリマー粒子またはポリマー小滴が、一般には、対応するモノマーを水の存在下で重合することによって得られる。重合は一般には、周知の技術に従って行われる。生じる生成物は典型的には、可溶化剤を多くの場合には含有する水溶液における細かく分割され、分散された水不溶性のアニオン性ポリマー粒子またはカチオン性ポリマー粒子から構成される水性分散物(例えば、ラテックス)である。
【0031】
本発明のサイジング組成物のもう1つの重要な成分は、多糖などの薄膜形成バインダーである。アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの配合物と適合し得る任意の薄膜形成バインダーを使用することができる。例示的な薄膜形成バインダーには、下記が含まれるが、必ずしもそれらに限定されない:多糖およびその誘導体、例えば、デンプン、セルロースポリマー、デキストランなど;ポリペプチド(例えば、コラーゲンおよびゼラチン);および合成ポリマー、特に、合成ビニルポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルホスフェート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル-アクリル酸コポリマー、ビニルアルコール-酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン-スチレンコポリマー、およびポリ(ビニルアミン)など)、合成アクリレートポリマーおよび合成アクリレートコポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸-コ-メタクリラート)、ポリ(ビニル-コ-アクリレート)など)。
【0032】
一般に、費用検討に基づいて、薄膜形成バインダーは、水溶性アルギン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはデンプンなどの多糖である。多糖は好ましくはデンプンである。好適なデンプンは、様々な天然デンプン、転化デンプン、および合成的に修飾されたデンプンのいずれかであり得る。好適なデンプンには、オオムギ、コムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、もちトウモロコシ、コメ、タピオカ、ソルガムおよびコムギが含まれる。デンプンは転化または修飾することができ、例えば、酵素、酸、熱化学的処理により処理することができ、または酸化することができる。デンプンはまた、事前にゼラチン化することができる。デンプンはまた、例えば、エーテル化、エステル化、架橋などによって化学的に処理して、デンプンを、カチオン性、アニオン性または両性にすることができる。上記プロセスの組合せによって処理されているデンプンもまた、上記デンプンの混合物を使用し得るように、使用できる。好ましいデンプンはわずかにアニオン性のデンプンであるか、またはわずかにカチオン性のデンプンである。
【0033】
上述のように、薄膜形成バインダーの特に好ましい供給源はグラフト化デンプンであり、特に、カチオン性ポリマーのグラフトを有するデンプンである。
【0034】
サイジング組成物のこれらの様々な成分が、デンプン分散物における何らかの逆の相互作用を防止するために連続して、サイズプレス溶液またはサイズプレス分散物を形成するために加えられる。例えば、わずかにカチオン性のデンプンを本発明に従って使用するサイズプレス組成物を作製するために、アニオン性ポリマー添加剤が最初に、わずかにカチオン性のデンプンの溶液に加えられ、その後、カチオン性ポリマー添加剤が加えられる。デンプンがわずかにアニオン性であるならば、カチオン性ポリマー添加剤が、アニオン性ポリマー添加剤を加える前に加えられる。何らかの逆の相互作用を防止するための、サイジング組成物の様々な構成成分を添加する好適な順序は、日常的な実験のみを使用して当業者によって決定することができる。一般には、様々な成分を、紙をサイジングするために組成物を使用する直前に組み合わせることができる。
【0035】
アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーが、本質的には釣り合った荷電を提供するために十分な量でサイジング組成物に存在する。一般に、本質的には釣り合った荷電は、約0.2:1〜約2.5:1の間のアニオン性ポリマー対カチオン性ポリマーの重量比でアニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーを提供することによって得ることができ、より通常的には、この重量比は0.4:1〜2:1の範囲にある。
【0036】
薄膜形成ポリマーは、一般にはサイジング組成物の約1重量%〜約18重量%の量でサイジング組成物に存在し、好ましくは約2重量%〜約12重量%の量でサイジング組成物に存在する。従って、サイズプレス溶液として使用される典型的なサイジング組成物は、一般には、約6〜9の間のpHを有する水において、約1重量%〜約18重量%のデンプン(多くの場合には約2重量%〜約12重量%のデンプン)を含有する。
【0037】
サイジング組成物は、一般には、水溶液または水性分散物として、水性液体溶剤において提供されるが、少量の水溶性有機溶媒または水混和性有機溶媒もまた存在させることができる。場合により、可溶化化合物をサイジング組成物の調製時に加え、その結果、成分が水性液体溶剤に溶解するようにすることが必要となる場合がある(例えば、無機塩基(例えば、アンモニアなど)および/または有機アミン)。好適な有機アミンには、低級アルキル置換アミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンおよびトリメチルアミンなど)、ならびに、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および、置換エタノールアミン、典型的には低級アルキル置換エタノールアミン(例えば、N-メチルエタノールアミンおよびN,N-ジメチルエタノールアミンなど)ならびに、モルホリンが含まれる。そのような化合物はまた、基礎製剤についてpHを所望の範囲にするために有用であり、そのような化合物は、存在するならば、一般には組成物の約1.0重量%以下であり、ほとんどの場合には組成物の約0.5重量%以下である。
【0038】
水性溶液および水性分散物の固体含有量は、サイズ剤組成物をセルロース基体に塗布するために選択された方法によって影響される。従来のサイズプレスの場合、サイズ剤組成物は典型的には約1重量%〜約20重量%の固体含有量を有する。すなわち、水の量が約80重量%〜約99重量%の間である。他の適用におけるサイズ剤組成物のための好適な固体濃度を、日常的な試験に基づいて選択することができる。
【0039】
従って、サイズプレス組成物を形成するために混合物に加えられるアニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの量は、サイズプレス組成物の総固体に基づいて、好ましくは約0.05重量%〜約50重量%であり、より通常的には0.05重量%〜25重量%である。より好ましくは、ポリマー固体レベルは総固体に基づいて約0.1重量%〜約20重量%である。通常、ポリマー固体レベルは、総固体に基づいて約0.1重量%〜約15重量%であり、ほとんどの場合には約0.5重量%〜約10重量%の間である。
【0040】
紙および他のセルロース製造物(例えば、ボール紙など)を本発明によってサイジングするために使用される具体的な技術は、セルロースに基づく製造物にサイジング組成物を適用するために製紙において一般に用いられる技術に類似している。例えば、水性サイジング組成物を、カレンダーナイフブレードまたはドクターナイフブレードによってサイズプレスを使用して紙の表面に塗布することができる。または、サイズ剤組成物をペーパー網に噴霧することができ、または、紙を水性組成物に浸漬することによって塗布することができる。サイジング組成物はまた、従来の被覆技術を使用する紙変換プロセスの一部として塗布することができる。その後、サイジング溶液で処理された紙は高い温度で乾燥される。ペーパー網を乾燥することは、表面サイズ剤および表面強度を十分に発達させるために十分である。
【0041】
従って、表面サイズ剤処理を、製造後の操作として、または、製紙プロセスそのものの一部として、そのいずれでも紙に施すことができる。表面サイジングは、典型的には、紙シートが形成され、乾燥された後で、しかし、カレンダースタックを通過していないときに、製紙プロセスにおいて施される。形成され、乾燥されたシート(網)はサイズプレス(実際には、様々な形態のニップコーター(nip-coater))によって処理され、これにより、シートは、サイジング組成物と一緒に、(サイズプレスのタイプに依存して)ある程度まで湿らされる。網の湿潤化または被覆のとき、網は、厚さを制御し、かつ、仕上がったシートを滑らかにするために、再び乾燥され、続いて、カレンダーにおける一連のニップを通過し、その後、巻き取りおよびスリッティングまたはシート化が行われる。
【0042】
サイズプレス組成物が、表面に適用されたデンプンおよびポリマー固体のレベルが、乾燥した紙シートの重量に基づく乾燥基準で好ましくは約0.02重量%〜約4.5重量%であるような量で、サイズプレスにおいて塗布される。通常、そのレベルは約0.025重量%〜約4.0重量%であり、ほとんどの場合には約0.05重量%〜約3.5重量%である。
【0043】
本発明のサイジング組成物はまた、セルロースに基づく製造物の製造において従来から使用されている他の添加剤と一緒に、または連続して使用することができる。そのようなさらなる添加剤には、当技術分野において一般に知られているように、無機填料、アンチカール(anti-curl)剤、またはさらなる従来からの成分(例えば、界面活性剤、可塑剤、保湿剤、消泡剤、UV吸収剤、耐光堅牢度強化剤、ポリマー分散剤、媒染剤、蛍光増白剤または均染剤など)が含まれるが、これらに必ずしも限定されない。
【0044】
サイジング組成物が塗布される紙は広範囲に及ぶことができ、紙を作製するために使用されたパルプの種類に依存しない。紙は、4〜9の広いpH範囲の下でシート化することによって製造される紙基層(paper base)であり得る。従って、本発明は、任意の厚さおよび任意の種類のサイジングされた紙の調製のために好適であり、従って、機械パルプ、化学パルプ、ソーダパルプ、亜硫酸塩パルプ、硫酸塩パルプ、半化学パルプ、木材パルプ、天然植物パルプ、ぼろパルプまたは古紙パルプ、およびそれらの混合物から得られる紙またはボール紙に適用することができる。
【0045】
紙はまた、填料、色素、紙強化剤、ドレネージ速度改善剤および内部サイジング剤などの添加剤を含有することができる。以前に内部サイジングされた紙の表面サイジングが特に意図される。具体的には、本発明を、内部サイジングされているシート(すなわち、パルプ懸濁物が紙シートに変換される前に、ある種のサイジング剤がパルプ懸濁物に加えられているシート)と一緒に使用することによって、より高いレベルの表面サイジングを得ることができる。内部サイジングは、表面サイズ剤がシート内に染み込むことを防止するか、または、表面サイズ剤がシート内に染み込むことを遅らせる傾向があり、従って、表面サイズ剤を、表面サイズ剤が最大の有効性を有する表面に保持することを可能にし、また、同等の表面性状での表面サイズ剤のより低い塗布割合を可能にし得る。
【0046】
内部サイジング剤は、精密抄紙機の湿潤端部で一般に使用されている内部サイジング剤のいずれかを含むことができる。これらには、ロジンサイズ剤、ケテンダイマーおよびケテンマルチマー、ならびにアルケニルコハク酸無水物などが含まれる。内部サイズ剤は、一般に、乾燥紙シートの重量に基づいて約0.05重量%〜約0.25重量%のレベルで使用される。
【0047】
紙が本発明(薄膜形成バインダーと、アニオン性ポリマー添加剤と、カチオン性ポリマー添加剤との混合物)に従ってサイジングされるとき、紙は、アニオン性ポリマーまたはカチオン性ポリマーのいずれかを含有するデンプン系サイジング剤が使用されるときのサイジング度と同等であるサイジング度を有する。サイジングは、典型的には、改善された表面疎水性(すなわち、より高いHST試験結果)の観測結果によって明らかになる。
【0048】
紙が本発明に従って加工されるとき、紙は、アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの配合物を含有しないデンプン系サイジング剤が使用されるときよりも程度の大きい表面強度を有する。改善された表面強度は、典型的には、改善された表面一体性(すなわち、より低いアダムス・ウエット・ラブ試験結果)の観測結果によって明らかになる。
【0049】
多くの場合、1つまたは複数の改善された性質を、所与の製造物において同時に得ることができ、しかし、1つの領域において改善された性質を有し、かつ、別の領域では同等の性質または低下さえした性質を有するサイジングされた製造物が得られるだけである場合であっても、その結果は、多くの場合、満足できるものである。当業者は、特定の状況に依存して、費用に対して様々な改善による利益を釣り合わせることの必要性または望ましいことを認識している。
【0050】
本発明はその具体的な態様に関連して記載されているが、下記の説明および下記の実施例は、本発明の範囲を限定するためではなく、本発明の範囲を例示するために意図されることが理解される。他の様々な局面、利点および改変が、本発明に関係する当業者には明らかであり、これらの局面および改変は本発明の範囲に含まれる。従って、下記の実施例は、本発明を何らかの点で限定するのではなく、むしろ、本発明を例示するものとして考慮しなければならない。
【0051】
本明細書中を通して、また、実施例において、「部」とは重量部を意味する。
【0052】
本明細書中を通して、また、実施例において、分子量は、好適な分子量標準物(例えば、プルラン多糖の標準物)を使用する従来の高圧サイズ排除クロマトグラフィー技術によって測定されるような重量平均である。
【0053】
ヘルクレス・サイジング試験(HST)では、サイジングされた紙を溶液が浸透するときの、80%の反射率で読み取られる1%のギ酸色素溶液の浸透速度が測定される。当業者は、秒として報告されるHST試験結果は、サイジングされた製造物の性能を判定するための広く確立された試験プロトコルであることを認識している。この試験は、サイジングされた基体の疎水性の相対的な評価を提供する。
【0054】
アダムス・ウエット・ラブ試験は、水懸濁物の濁度によって示されるように、試料からの設定された時間での被覆喪失量の尺度を提供する。アダムス・ウエット・ラブ試験では、一定体積の加湿浴(1%のギ酸溶液)を通過する湿らせたゴムロールが、指定の時間にわたって、また、既知の圧力で、(受けロールに取り付けられた)試料に対して摩擦を受ける。浴溶液が集められ、試料から除かれた被覆の量が、剥離した被覆を含有する所与体積の水の濁度を測定することによって求められる。より低い値により、より高いレベルの表面一体性または表面強度が示される。
【0055】
実施例1
ベースとなるサイズプレス溶液は5.4%のわずかにアニオン性のデンプン(Penford 280)を含む。1つの場合において、アニオン性ポリマー添加剤(NovaCote 1934)をベース溶液に加えた。別の場合には、ベースとなるデンプン溶液に、最初に、撹拌下で、カチオン性ポリマー添加剤(Amres 25HP)を加え、2分後にアニオン性ポリマー添加剤(NovaCote 1934)を加えた。3つの組成物のそれぞれによるサイジングのために使用された原紙は、16秒の多孔性(Gurley)および2秒の内部サイズ(HSTにより推定)を有する通信規格紙(15%の灰分)であった。サイジング組成物のそれぞれについての総含浸量(pick up)は70lb/トンであった。この総含浸量に基づいて、サイジング組成物のそれぞれについて計算された含浸量が表1に示される。乾燥温度は103℃であった。3つの試料のそれぞれについてのHST試験およびアダムス・ウエット・ラブ試験の結果が下記の表1にまとめられる。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例2
サイズプレス組成物を、NovaCote PS2アニオン性ポリマーがNovaCote 1934の代わりに使用され、Ambond 1520がAmresの代わりに使用されたことを除いて、実施例1の手順を繰り返すことによって得た。再度ではあるが、サイジング組成物のそれぞれについての総含浸量は70lb/トンであった。この総含浸量に基づいて、サイジング組成物のそれぞれについて計算された含浸量が表2に示される。HST試験およびアダムス・ウエット・ラブ試験の結果が下記の表2にまとめられる。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例3
ベースとなるサイズプレス組成物を調製した。これは3.5%のわずかにアニオン性のデンプン(Penford 280)を含有した。1つの場合において、サイズプレス組成物を、アニオン性ポリマー添加剤(NovaCote 1934)をさらに加えることによって調製した。別の場合には、このベースデンプン溶液に、最初に、撹拌下で、カチオン性ポリマー添加剤(Amres 25HP)を加え、2分後にアニオン性ポリマー添加剤(NovaCote 1934)を加えた。3つのサイジング組成物のそれぞれとともに使用された原紙は、40秒の多孔性(Gurley)および1秒未満の内部サイズ(水滴法により推定)を有する新聞用紙規格紙であった。サイジング組成物のそれぞれについての総固体含浸量は55lb/トンであった。この総含浸量に基づいて、サイジング組成物のそれぞれについて計算された含浸量が表3に示される。乾燥温度は103℃であった。サイジング組成物のそれぞれについてのサイジング試験(水滴法)およびアダムス・ウエット・ラブ試験の結果が下記の表3にまとめられる。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例4
サイズプレス組成物を、NovaCote PS2がNovaCote 1934の代わりに使用されたことを除いて、実施例3の手順を繰り返すことによって得た。試験結果が下記の表4にまとめられる。
【0062】
【表4】

【0063】
本発明が、具体的な態様に関連して記載されている。しかしながら、本出願は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者によって行われ得るそれらの変更および置換に及ぶことが意図される。別途具体的に示されていない限り、全ての百分率は重量比である。本明細書を通して、また、特許請求の範囲において、用語「約」は、+5%または-5%を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜形成バインダーと、アニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとの水性サイジング混合物を含む、セルロース製造物に対する表面サイズ剤(size)および表面強度を改善するための組成物。
【請求項2】
薄膜形成バインダーがデンプンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
カチオン性ポリマーおよびデンプンが、該デンプン上にグラフト化されたカチオン性ポリマーを使用して提供される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
アニオン性ポリマーおよびデンプンが、該デンプン上にグラフト化されたアニオン性ポリマーを使用して提供される、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
アニオン性ポリマーがアルカリ可溶性の酸含有コポリマーである、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
アニオン性ポリマーが、スチレン-無水マレイン酸の加水分解コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-メタクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-フマル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリル酸ブチル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマーに分散されたスチレン-アクリル酸エステルのコポリマー、またはその塩の1つ、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
カチオン性ポリマーが、ポリアミン;ポリエチレンイミン;スチレン-無水マレイン酸コポリマーイミドの第四級アンモニウム塩;ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアルキルアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマーまたはコポリマー;ビニルアミンのホモポリマーまたはコポリマー;(メタ)アクリルアミドのホモポリマーまたはコポリマー;(メタ)アクリレートのホモポリマーまたはコポリマー、ならびに、その対応する酸付加塩および第四級アンモニウム塩からなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド-アクリルアミドのコポリマーによりグラフト化されたデンプンと、アルカリ可溶性の酸含有コポリマーとの混合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
スルホン酸部分またはカルボン酸部分およびポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を有するアニオン性ポリマーラテックスを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項10】
スチレン-マレイン酸のコポリマーに分散されたスチレン-アクリル酸エステルのコポリマー、またはその塩の1つと、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂とを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項11】
アルカリ可溶性の酸含有コポリマーが、スチレン-無水マレイン酸の加水分解コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-メタクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリル酸ブチル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
薄膜形成バインダーと、アニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとの水性サイジング混合物を含み、該薄膜形成バインダーがデンプンであり、該アニオン性ポリマーが、スチレン-無水マレイン酸の加水分解コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-メタクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-フマル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリル酸ブチル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマーに分散されたスチレン-アクリル酸エステルのコポリマー、またはその塩の1つ、およびそれらの混合物からなる群より選択され、該カチオン性ポリマーが、ポリアミン;ポリエチレンイミン;スチレン-無水マレイン酸コポリマーイミドの第四級アンモニウム塩;ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアルキルアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマーまたはコポリマー;ビニルアミンのホモポリマーまたはコポリマー;(メタ)アクリルアミドのホモポリマーまたはコポリマー;(メタ)アクリレートのホモポリマーまたはコポリマー、ならびに、その対応する酸付加塩および第四級アンモニウム塩からなる群より選択され、かつ、該アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーが約0.2:1〜約2.5:1の間のアニオン性ポリマー対カチオン性ポリマーの重量比で提供される、セルロース製造物に対する表面サイズ剤および表面強度を改善するための組成物。
【請求項13】
薄膜形成バインダーと、アニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとの混合物を含む水性サイジング組成物をセルロース網の表面に塗布する段階を含む、セルロース網をサイジングする方法。
【請求項14】
薄膜形成バインダーがデンプンである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
カチオン性ポリマーおよびデンプンが、該デンプン上にグラフト化されたカチオン性ポリマーを使用して提供される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アニオン性ポリマーおよびデンプンが、該デンプン上にグラフト化されたアニオン性ポリマーを使用して提供される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
アニオン性ポリマーが、スチレン-無水マレイン酸の加水分解コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-メタクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-フマル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリル酸ブチル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマーに分散されたスチレン-アクリル酸エステルのコポリマー、またはその塩の1つ、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
アニオン性ポリマーがアルカリ可溶性の酸含有コポリマーである、請求項14記載の方法。
【請求項19】
カチオン性ポリマーが、ポリアミン;ポリエチレンイミン;スチレン-無水マレイン酸コポリマーイミドの第四級アンモニウム塩;ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアルキルアミン-エピクロロヒドリン樹脂;ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマーまたはコポリマー;ビニルアミンのホモポリマーまたはコポリマー;(メタ)アクリルアミドのホモポリマーまたはコポリマー;(メタ)アクリレートのホモポリマーまたはコポリマー、ならびに、その対応する酸付加塩および第四級アンモニウム塩からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
水性サイジング組成物が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド-アクリルアミドのコポリマーによりグラフト化されたデンプンと、アルカリ可溶性の酸含有コポリマーとの混合物を含む、請求項13記載のサイジングする方法。
【請求項21】
水性サイジング組成物が、スルホン酸部分またはカルボン酸部分およびポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を有するアニオン性ポリマーラテックスを含む、請求項13記載の方法。
【請求項22】
水性サイジング組成物が、スチレン-マレイン酸のコポリマーに分散されたスチレン-アクリル酸エステルのコポリマー、またはその塩の1つと、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂とを含む、請求項13記載の方法。
【請求項23】
アルカリ可溶性の酸含有コポリマーが、スチレン-無水マレイン酸の加水分解コポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-マレイン酸のコポリマー、またはその塩の1つ;スチレン-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-メタクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、スチレン-アクリル酸ブチル-アクリル酸コポリマー、またはその塩の1つ、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
請求項13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23記載の方法によって作製されるサイジングされたセルロース網。

【公表番号】特表2007−500800(P2007−500800A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522003(P2006−522003)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024195
【国際公開番号】WO2005/012639
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506031812)ジョージア−パシフィック レジンス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】