説明

表面センサの製造方法、表面センサシステムおよび表面センサの使用

本発明は、THz放射を感知するTHz構造体(1)が周期的に配置された周波数選択面を有する表面センサ(100,200)に関する。これらのTHz構造体(1)はとりわけ、それぞれポラリゼーション軸(3)が存在するTHz共振構造体である。遠隔場の特性を改善するために本発明では、THz構造体を非対称的に形成し、単位セルを構成する2つ以上のTHz構造体(1)の群のポラリゼーション軸(3)が実質的に中心対称性に方向決めされるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期的に配置されテラヘルツ放射(THz放射)を感知するTHzパターンを有する周波数選択面を有する表面センサに関し、とりわけ、それぞれに対してポラリゼーション軸が存在するTHz共振パターンを有する周波数選択面を有する表面センサに関する。本発明はさらに、表面センサの製造方法にも関する。さらに本発明は、表面センサを有するシステムと、表面センサの使用とにも関する。
【0002】
たとえばUS2007/001431A1またはUS2006/0152430A1から、マイクロ波領域の周期的なアンテナ構造または他の電磁的に活性する周期的なアンテナ構造が公知である。DE10257225B3から、THz構造体が1つだけ設けられた分子分析用のTHz測定装置が公知である。
【0003】
冒頭に述べた形式の表面センサは通常は、周期的に配置されたTHz構造体が表面に設けられた基板上に形成される。すなわち、THz放射に対して感度を有する構造体が表面に設けられた基板上に形成される。通常はこのような構造体は、所定の共振領域において感度を有しTHz放射を放出および/または検出するTHz共振器として形成される。たとえば、O'Hara et al による記事 "Thin-film sensing with planar terahertz metamaterials: sensitivity and limitations"、OPTICS EXPRESS Vol. 16, No. 3、p.1786 ff(2008年2月4日)によれば、対称的なTHz共振器が設けられた周波数選択面が形成される。
【0004】
THz技術の一般的な背景に関しては、さらに以下の刊行物がある:
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【0005】
たとえばDNAやタンパク質等の生体分子が、THz周波数領域において結合固有の特性を有することが知られている。THz共振器は、このような特性を可能な限り高い感度で読み出すのに使用することができる。共振器が周期的に配置された表面は、特に簡単に読み出すことができる。
【0006】
このような構成は、冒頭で定義したように、周波数選択面(FSS)という概念で知られている。FSSは通常、金属の共振器構造体から形成される。たとえば、Yoshida による "Terahertz sensing method for protein detection using a thin metallic mesh", APPLIED PHYSICS LETTERS 91, 253901 (2007)、Driscoll et al による "Tuned permeability in terahertz split-ring resonators for devices and sensors", APPLIED PHYSICS LETTERS 91, 062511 (2007) から、対称的に形成されたTH共振器を有する共振器構造体の例が公知である。FSSは、用途ごとに応じて調整された周波数依存性の透過特性および反射特性を有し、たとえば、反射器としてアンテナシステムにおいて使用されるか、または、たとえば戦闘機等のレーダカモフラージュ等にも使用される。
【0007】
最も簡単な共振器構造は、λ/2の波長を有するワイヤダイポール型である。このような共振器の電気的等価回路図は、LC振動回路となる。この要素を外部場によって共振状態に励起すると、ワイヤを、共振周波数frで振動する電流が流れる。ワイヤダイポールが周期的に配置された面、または異なって形成されたダイポールが設けられた面は、ほぼ、閉じられた金属面のように共振動作し、この面の反射は最大となる。損失のない場合には、R(fr)=1およびT(fr)=0となる。その際には、THz構造体ないしはTHz共振器から構成される個々の素子の共振周波数は、結合作用によって、アレイ全体の共振周波数から偏差する。FSSの典型的な用途では通常、可能な限りフラットな「ギャップのない」周波数特性を必要とする。FSSをたとえば、材料体積が小さい生体試料の検出に使用することは、比較的新しいことである。このアプローチは、共振構造体の次のような基礎的特性、すなわち、励起エネルギーをある程度の時間にわたって局所的に「蓄積」し、単純な透過と比較して試料材料との相互作用を格段に向上させることができる基礎的特性をベースとする。設けられた材料に対するセンサの応答は、FSSの1つまたは複数の共振周波数がシフトすることで現れる。
【0008】
たとえば C. Debus et al "Fequency selective surfaces for high sensitivity terahertz sensing", APPLIED PHYSICS LETTERS 91, 184102 (2007) 等の最近の数値シミュレーションで、2つの隣接する干渉共振の間で発生し反射スペクトルのゼロ位置となって現れる周波数変則性が、誘電体周辺のごく僅かな変化にも特に高感度で応答することが分かっている。このような周波数変則性を生成する簡単な手段は、FSSの単位セル内の対称性を壊すことである。Debus et al による上記の記事に記載されたような非対称スプリットリング共振器(aSRR)も、このような効果を利用する。
【0009】
基本的に、たとえばスプリットリング共振器が電磁波共振器の別の適用領域から公知であり、たとえばUS2007/0114431A1やJP64001304Aから公知である。
【0010】
さらに、非標識方式の生体分子検出を行うアプローチも数多く存在する。経済的観点および技術的観点からは非常に興味深いにもかかわらず、これまではこのような手法のうち、標識方式の確立された手法と比較して、成果を収められた手法はなかった。非標識方式の検出手法にはとりわけ、
・光学表面プラズモン
・抵抗方式
・機械的センサ
・弾性波センサ
・光に応答するナノ粒子センサ
をベースとする検出手法が存在する。
【0011】
上記の手法はいずれも、固有の利点および欠点を有する。しかし重大性に違いがあるにしても、上記の従来の手法は、感度、コストパフォーマンス、コンパクト性、試料のスループット、操作しやすさ、測定精度、許容誤差の点で1つまたは複数の欠点を有することが確認されている。
【0012】
総じてFSSは、上記の欠点を回避するために印象深い選択肢となっている。しかし、上記で説明した非対称スプリットリング共振器を有する従来のFSSは、問い合わせ入射ビームの偏光方向に強く依存することが確認されている。このような偏光依存性は、技術的に応用する際に問題となる。というのも、誤調整がすべてセンサ応答として誤って解釈されるおそれがあるからだ。すなわち、横方向感度が高い。冒頭に挙げられた記事に記載されたような、共振素子が完全に対称的であるFSSは、間隔が十分に小さい場合にはこのような偏光依存性を有さないが、十分に高いセンサ感度を実現するために必要な共振無関係性(Resonanz-Indifferenz)もない。
【0013】
十分に高いセンサ感度と同時に偏光非依存性を実現することが望まれている。
【0014】
ここで本発明の課題は、センサ応答が問い合わせビームの偏光に十分に依存せずかつ比較的高いセンサ感度が得られる表面センサ、表面センサの製造方法、システムおよび使用方法を提供することである。
【0015】
表面センサに関しては、前記課題は本発明では、冒頭に述べた形式の次のような表面センサ、すなわち、本発明によればTHz構造体が非対称的に形成され、単位セルを構成する2つ以上のTHz構造体の群のポラリゼーション軸が実質的に中心対称的に方向決めされた表面センサによって解決される。
【0016】
本発明では、中心対称的に方向決めされたaSRRから単位セルを構成することにより、共振無関係性を有し偏光依存性を示さないセンサ表面を実現できるという認識が得られた。とりわけ表面センサは、多数の単位セルから成るアレイを含み、各単位セルは、ポラリゼーション軸が実質的に中心対称的に方向決めされた複数のTHz構造体を有する。
【0017】
有利には、本発明のこのような構成により、横方向感度を従来のFSS構造体と比較して格段に小さくすることができる。
【0018】
本発明はまた、上述の形式の表面センサを製造するための製造方法にも関する。本発明のこの製造方法では、周期的に配置されたTHz放射を感知するTHz構造体を有する周波数選択面を形成するために、表面上にTHz構造体をインクジェット印刷法によって設け、とりわけ生体フィンガ分子であるフィンガ分子をインクジェット印刷法によって設ける。
【0019】
換言すれば本発明の製造方法のコンセプトは、FSSセンサ面を形成するためにインクジェット印刷システムを使用することである。本発明では、有利には金属製の共振構造体も、有利には生物学的な捕捉分子も、インクジェット印刷システムによって基板表面上に堆積できるという認識が得られた。
【0020】
このようにして、特に有利には、上述の形式の表面センサを有するシステムを実現することができる。
【0021】
本発明のコンセプトによれば、この表面センサは特にバイオセンサに適している。とりわけ本発明のコンセプトは、非標識方式の生体分子検出をTHz放射によって行うための表面センサの使用にも関する。
【0022】
有利にはこの表面センサを、生物学的アプリケーションおよび/または医用および/または診断用および/または有価証券の証明に使用することもできる。
【0023】
従属請求項に本発明の有利な実施形態が記載されており、課題の解決のために、または別の利点を得るために上述のコンセプトを具現化する有利な構成を詳細に示している。
【0024】
本発明の特に有利な実施形態では、THz構造体はプレーナ形であり、とりわけ、誘電体基板上に金属で形成されたTHz構造体である。このような構成では、THz構造体の少なくとも1つの縁辺において基板が除去されているのが特に有利であることが判明している。この少なくとも1つの縁辺は、有利にはスリットの縁辺である。
【0025】
THz構造体において基板を除去するためには、たとえばアンダーエッチングを使用することができる。このことにより、THz構造体が基板によって事前に強く荷電するのが十分に回避されると同時に、この縁辺においてフィールドを過度に上昇させることもできる。このことによってTHz構造体を‐基板による事前の荷電に依存することなく‐その上に設けられる検出対象の薄層に対して特に高感度にすることができる。換言すると、強いフィールド過上昇の部分が設けられた縁辺にあるフィンガ分子が、分子を検出するのに特に高感度であることが判明している。これは、基板に十分に依存しない共振特性による。
【0026】
特に有利な実施形態では、THz構造体は縁辺までパッシベーションされることにより、この縁辺と比較して捕捉分子の結合が抑圧されるかまたは阻止されるようにする。このことはさらに、捕捉分子が縁辺の直近の領域でのみ結合するという利点も有する。というのも、他の領域がパッシベーションされているため、この直近領域でのみフィールド相互作用が発生するからである。このようにしてこの縁辺の露出により、捕捉分子の位置選択的な結合を簡単に実現することができる。
【0027】
こうするために有利なのは、前記パッシベーションをパッシベーション層の形態で形成することである。THz構造体は、有利には金属構造体として形成される。たとえば、金属面に卑金属または電気絶縁性のパッシベーション層を被覆し、これによって捕捉分子の化学結合が抑圧されるかまたは阻止されるようにすることができる。
【0028】
製造方法では、縁辺の露出前にも、縁辺の露出後にも、パッシベーション層を設けることができる。前者の場合には有利には、パッシベーション層はTHz構造体上に形成されるか、またはTHz構造体にのみ形成される。後者の場合、パッシベーション層はTHz構造体上と、該THz構造体の内側とに形成される。
【0029】
以下で図面を参照して、本発明の実施例を説明する。図面では実施例を必ずしも拡大比率通りに示しているとは限らず、むしろ、説明するのに役立つ場合には図面を概略的および/または多少歪めて示している場合がある。図面から直接読み取れる思想の補足に関しては、関連従来技術を参照されたい。ここでは、本発明の全般的な思想から逸脱することなく、実施形態の形状および詳細に関して行える修正および変更は多数存在する。明細書、図面および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、単独でも任意の組み合わせでも、本発明をさらに発展させるために重要である。さらに本発明には、明細書および/または図面および/または特許請求の範囲に開示された特徴のうち少なくとも2つを組み合わせたすべての実施形態が含まれる。本発明の全般的な思想は、以下で図示および説明する有利な実施形態の正確な形状または詳細に限定されることはなく、また、特許請求の範囲に記載された構成と比較して限定された特定の構成に限定されることもない。測定範囲を挙げる場合には、記載された限界内に含まれる値も限界値として開示されたものであるとし、任意に使用して特許請求の範囲に記載できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】特に有利な実施形態による表面センサにおける周波数選択面のアレイの単位セルの非対称的なTHz構造体を示す。
【図2】前記有利な実施形態においてたとえば図1のTHz構造体を2重に鏡面化することによって形成された中心対称性の単位セルを示す。
【図3】第1の別の実施形態の表面センサにおけるTHz構造体の側面図である。
【図4】第2の別の実施形態の表面センサにおけるTHz構造体の側面図である。
【図5】(a)は、読取りビームの偏光方向が異なる場合の図1中のFSSの透過スペクトルを示し、(b)は、図2中のFSSの偏光非依存性の透過スペクトルを示す。
【図6】(a)は、読取りビームの偏光方向が異なる場合の図1中のFSSのフィールド分布を示す。
【図7】図4中の実施形態の変形形態として、第3の別の実施形態の表面センサにおけるTHz構造体の側面を示す図である。
【図8】図4中の実施形態の変形形態として、第4の別の実施形態の表面センサにおけるTHz構造体の側面を示す図である。
【0031】
ここで説明する実施形態は、生体分子プローブの非標識方式検出に対する技術的な解決手段である。
【0032】
こうするために、図1〜図4の実施形態で詳細に説明する本発明のコンセプトでは、THz放射に対して感度を有し周期的に配置されたTHz構造体を有する周波数選択面を備えた表面センサ100,200を使用する。前記THz構造体はここでは、THz共振構造体である。各THz共振構造体ごとに1つのポラリゼーション軸3が存在する。以下では簡潔にするため、同一または同様の特徴、または同一または同様の機能の特徴には同一の参照符号を使用する。表面センサ100,200はここでは基板6に形成されており、この周波数選択面により、標識分子を使用することなく、生体分子の化学結合ないしは化学的付加反応の検出を行うことができる。こうするためには、基板表面に、周期的に配置された単位セル10が設けられる。各単位セル10は中心対称的に方向決めされた複数のTHz構造体から、すなわち、中心対称的に方向決めされたポラリゼーション軸3が存在するプレーナ形の複数のTHz構造体から構成される。このTHz構造体は、ここではTHz共振器1として形成されている。このように構成されたTHz構造体1は非対称的になる。すなわち、THz共振構造体1はここでは、それぞれスリット共振器素子を形成する導電性の部分リング2a,2bによって形成される。
【0033】
ここでは1つの構造体では、図2の単位セル10から構成されたアレイの共振周波数は、0.1〜10THzのTHz周波数領域内にある。これらの構造体の表面には、表面センサ100,200を形成するために、特別な結合特性を有する生物学的なフィンガ分子が設けられる。このフィンガ分子は、図中に詳細に示していない。この構成による生体分子の検出は、以下のように行われる:
未知の種類の生体分子が、センサ表面上の所定の位置に割り当てられている既知のフィンガ分子に結合する。このような結合過程により、周波数選択面のアレイの単位セル10内のTHz共振構造体1の共振特性が変化する。このような結合過程の検出は、このような共振特性の変化の測定によって行われる。こうするためには、センサ表面にTHz放射を照射する。このようにしてセンサ信号を、透過信号または反射信号による測定によって行うことができる。
【0034】
図3に、誘電体から形成された基板6上にTHz構造体1が金属層5として通常のように設けられた表面センサ100の第1の実施形態を示す。
【0035】
この第1の実施形態の発展形態では、図4に詳細に示している第2の実施形態の表面センサ200を実現することができる。この第2の実施形態では、基板6の一部が除去される。この基板6の一部の除去では特に有利には、金属層5の縁辺から基板6を除去する。この縁辺は、有利にはスリット縁辺8である。このことは有利には、この縁辺の領域で金属層5のアンダーエッチングを行うことによって実現される。
【0036】
このように縁辺8を露出させることにより、THz共振構造体1の共振特性が基板に十分に依存せずに決定されるようにすることができる。さらに、このような縁辺の領域にフィールド過上昇が発生し、これによって、THz共振構造体1のこの重要な領域において該THz共振構造体1が、付加された検出対象の分子等に対して高感度になる。
【0037】
図7に、図4に示した第2の実施形態を変更した第3の実施形態のTHz構造体300を示す。その他の点ではこの実施形態では、同一の特徴または同様の特徴ないしは同一または同様の機能を有する特徴に、同一の参照符号を使用している。
【0038】
第2の実施形態の補足として、この表面センサ300では金属層5に卑金属のパッシベーション層9が被覆されており、このパッシベーション層9によって捕捉分子の化学結合が抑圧または阻止される。ここではパッシベーション層9は、スリット縁辺8を露出させるためのアンダーエッチング前に金属層5に設けられる。つまり、卑金属層として形成されたパッシベーション層9は、図中に詳細に示していないTHz構造体を基板上6に形成するための金属層5と一緒に、該THz構造体の外側の領域7においてエッチング除去され、それと同時にスリット縁辺8が露出される。
【0039】
図8に、第4の実施形態の図4の第2の実施形態を変更した別の実施形態を示す。この実施形態でも簡素化するため、同一の特徴または同様の特徴ないしは同一または同様の機能を有する特徴に、同一の参照符号を使用する。
【0040】
図8に示したように、パッシベーション層11は金属層5上に形成されている。ここではパッシベーション層11は、電気絶縁性のパッシベーション層として形成されており、‐図7の流れと異なり‐スリット縁辺8のアンダーエッチング後に設けられる。このことにより、アンダーエッチングによって基板が除去された容積の領域7にもパッシベーション層11が設けられる。すなわち、図中に詳細に示していないTHz構造体の内側にも設けられる。それゆえここでは、電気絶縁性のパッシベーション層として形成するのが適している。
【0041】
図7に示した第3の実施形態でも、図8に示した第4の実施形態でも、領域9aに示したような捕捉分子が金属層5のアンダーエッチングされたスリット縁部8の直近領域でのみ結合することが保証される。というのも、パッシベーション層9,11を上述のように設けることにより、捕捉分子と金属層5との相互作用が不可能になるか、または縁辺8の領域でのみ可能になるからである。
【0042】
まとめると本発明は、THz放射を感知するTHz構造体1が周期的に配置された周波数選択面を有する表面センサ100,200,300,400に関する。これらのTHz構造体1はとりわけ、それぞれポラリゼーション軸3が存在するTHz共振構造体である。遠隔場の特性を改善するために本発明では、THz構造体1を非対称的に形成し、単位セルを構成する2つ以上のTHz構造体の群のポラリゼーション軸が実質的に中心対称性に方向決めされるように構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に配置されTHz放射に対して感度を有する複数のTHz構造体(1)を有する周波数選択面を備えた表面センサ(100,200,300,400)において、
前記複数のTHz構造体(1)はとりわけTHz共振構造体であり、
前記複数のTHz構造体(1)には、それぞれポラリゼーション軸(3)が存在し、
いずれかのTHz構造体(1)は非対称的に形成されており、
2つ以上のTHz構造体が単位セル(10)を構成し、
前記単位セル(10)を構成する2つ以上のTHz構造体の群は、実質的に中心対称的に方向決めされたポラリゼーション軸(3)を有することを特徴とする、表面センサ。
【請求項2】
前記単位セル(10)を構成する2つ以上のTHz構造体(1)の群は、直近に隣接して配置されたTHz構造体から構成される、請求項1記載の表面センサ。
【請求項3】
前記THz構造体(1)は極性構造体であり、とりわけ双極子構造体、3極子構造体、4極子構造体またはより高次の多極子構造体である、請求項1または2記載の表面センサ。
【請求項4】
いずれかのTHz共振構造体(1)は、非対称スプリットリング共振器として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項5】
前記単位セル(10)は、少なくともいずれかのTHz構造体(1)の鏡面化により形成される、請求項1から4までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項6】
前記単位セル(10)においてTHz構造体の鏡面軸(4a,4b)とポラリゼーション軸(3)との角度は45°である、請求項1から5までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項7】
前記単位セル(10)は4つのTHz構造体(1)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項8】
いずれかのTHz構造体(1)はプレーナ形であり、
とりわけいずれかのTHz構造体(1)は誘電体基板(6)上に金属で形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項9】
前記THz構造体(1)の少なくとも1つの縁辺(8)において基板(6)が除去されており、
前記縁辺(8)はとりわけスリットの縁辺である、請求項1から8までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項10】
前記THz構造体(1)はいずれかの縁辺までパッシベーションされることにより、捕捉分子(9a)の結合が該縁辺(8)と比較して抑圧されるかまたは阻止される、請求項1から9までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項11】
前記THz構造体(1)のパッシベーション部はパッシベーション層(9,11)として形成され、とりわけ前記THz構造体上にのみ設けられるパッシベーション層(9)として形成され、とりわけ、前記THz構造体上および該THz構造体の内側に設けられるパッシベーション層(11)として形成される、請求項10記載の表面センサ。
【請求項12】
前記周波数選択面に捕捉分子が設けられている、請求項1から11までのいずれか1項記載の表面センサ。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の表面センサの製造方法において、
周期的に配置されTHz放射に対して感度を有するTHz構造体を含む周波数選択面を形成するために、表面にTHz構造体をインクジェット印刷法によって設け、とりわけ生体捕捉分子である捕捉分子をインクジェット印刷法によって設けることを特徴とする、表面センサの製造方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の表面センサを有するシステム、とりわけ有価証券。
【請求項15】
非標識方式の生体分子検出をTHz放射によって行うために請求項1から13までのいずれか1項記載の表面センサを使用する方法。
【請求項16】
前記表面センサを生物学的用途に使用する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
医療用および/または診断用に前記表面センサを使用する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
有価証券の証明に前記表面センサを使用する、請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a)】
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【図6b)】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−515688(P2011−515688A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501187(P2011−501187)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053376
【国際公開番号】WO2009/118287
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509131362)ドリッテ パテントポートフォーリオ ベタイリグングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】Dritte Patentportfolio Beteiligungsgesellschaft mbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Berliner Strasse 1, D−12529 Schoenefeld/Waltersdorf, Germany
【Fターム(参考)】