説明

表面保護フィルム

【課題】十分な粘着強度を維持しながら巻重体製品からの巻きだしが容易な表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】表面保護フィルムは、ポリオレフィン系の基材層と、粘着層とを備え、前記粘着層の硬度(マルテンス硬さ)が1N/mm以上2.5N/mm以下であり、ループタックが0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下である。それ故、前記表面保護フィルムは、巻重体製品とした場合にも基材面からの巻き出しが容易となり、かつ、プリズムシートのような表面に突起状物を有する被着体に対する十分な密着強度も得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関し、詳しくは、金属板、ガラス板および合成樹脂板などに仮着される表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板、ガラス板および合成樹脂板などの表面に仮着され、これらの物品の表面が傷付けられたり、ゴミなどが付着するのを防止する表面保護フィルムが知られている。
例えば、特許文献1には、一般式A−B−Aで表されるブロック共重合体(但し、Aはスチレン系重合体ブロック、Bはエチレンとブチレンとの共重合体ブロック)と粘着付与樹脂を含有する組成物からなる粘着剤層をポリオレフィン系樹脂基材とともに、共押出し法などにより形成してなる表面保護フィルムが開示されている。また、特許文献2には、一般式A−B−AもしくはA−Bで表されるブロック共重合体(但し、これらの式中Aはスチレン系重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロックまたはこれらを水素添加して得られる重合体ブロック)と粘着性付与樹脂とPO樹脂とを含有してなる粘着剤層を、POからなる基材フィルムの片面に積層してなる表面保護フィルムが開示されている。さらに、特許文献3には、共役ジエン化合物より誘導された1個の中間重合体ブロックとビニル芳香族化合物から誘導された2個の末端重合体ブロックとからなるトリブロック共重合体を含有する組成物からなる粘着剤層を、支持体の片面に積層してなる表面保護フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−103975号公報
【特許文献2】特許第2713519号公報
【特許文献3】特開2000−80336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された表面保護フィルムでは、ロール状に巻き取った巻重体製品として保管や移送などをする場合、基材の背面に巻重された粘着剤層が基材と強く粘着してしまうおそれがある。この結果、巻重体製品からの表面保護フィルムの巻き出しが妨げられ、被着体表面への貼着作業の効率が低下する。また、無理に巻き出そうとすると、基材が部分的に引き伸ばされて変形し、表面保護フィルムとして利用できなくなるおそれがある。
このような問題を解決するため、基材の背面に対して、離型剤の塗布やコロナ処理等の離型処理を施すことがある。しかし、離型剤を用いる場合、基材とは強固に接着し、かつ粘着剤層とは接着しない特殊な離型剤が必要であるし、離型剤が粘着剤層に移行した場合には、表面保護フィルムの被着体への粘着力が低下するおそれがある。さらに、複雑な離型剤塗布工程やコロナ処理等の離型処理の実施により、表面保護フィルムの製造コストが増大するおそれがある。
【0005】
上記問題を解決するために、粘着強度を制御する手法も従来から試みられている。粘着強度を制御する方法としては、例えば、特許文献2では、粘着付与剤の配合量を調整することで粘着強度を制御している。また、特許文献3ではスチレン系重合体ブロックにおけるジブロック量を調整することで粘着強度を制御している。
しかしながら、特許文献2の方法では、粘着強度と巻重体製品からの巻き出し性を両立させるためには配合量の調整範囲が狭すぎるという問題がある。また、特許文献3の方法では、ジブロック量を増やすことで粘着強度を上げることができるものの、ベトツキが強くなり巻重体製品からの巻きだしが困難となってしまうという問題がある。
また、プリズムシートのように表面に突起状物を有する場合、この凹凸面に対する粘着強度を上げるためには、粘着層の硬度を下げたり(例えば接触面積を増やす)、ループタックを上げたりする(ベトツキを強くする)必要がある。しかし、これら方法ではプリズムシートより凹凸の少ない基材面に対する粘着強度の上昇が大きいため、結果として巻き出し性が悪化してしまう。そのため巻き出し性を改善するために基材層の背面を粗す必要があり、その結果として表面保護フィルムを透明にすることが難しくなり実用上問題となる。
【0006】
本発明は、十分な粘着強度を維持しながら巻重体製品からの巻きだしが容易な表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような表面保護フィルムを提供するものである。
(1)ポリオレフィン系の基材層と、粘着層とを備えた表面保護フィルムであって、前記粘着層の硬度(マルテンス硬さ)が1N/mm以上2.5N/mm以下であり、ループタックが0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
(2)上述の(1)に記載の表面保護フィルムにおいて、前記粘着層がビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーと、ポリオレフィンと、粘着付与剤とを含む
ことを特徴とする表面保護フィルム。
(3)上述の(2)に記載の表面保護フィルムにおいて、前記スチレン系エラストマーは、スチレン含有量が5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
(4)上述の(2)または(3)に記載の表面保護フィルムにおいて、前記スチレン系エラストマーは、トリブロック共重合体の含有量が80質量%以上であることを特徴とする表面保護フィルム。
(5)上述の(2)から(4)までのいずれか1つに記載の表面保護フィルムにおいて、前記スチレン系エラストマーは、ガラス転移温度が−60℃以上20℃以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
(6)上述の(1)から(5)までのいずれか1つに記載の表面保護フィルムにおいて、前記粘着層の厚みが25μm以下であることを特徴とした表面保護フィルム。
(7)上述の(1)から(6)までのいずれか1つに記載の表面保護フィルムにおいて、前記基材層の外部ヘイズが20%以下であることを特徴とした表面保護フィルム。
(8)上述の(1)から(7)までのいずれか1つに記載の表面保護フィルムにおいて、前記粘着層が共押出法によって積層されることを特徴とした表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面保護フィルムによれば、表面に突起状物を有する被着体への十分な粘着強度を維持しながら、当該表面保護フィルムを形成する基材層の背面が平滑な場合にも、巻重体製品として必要以上に粘着層と基材層の表面が強固に接着してしまうことなく、巻き出しが容易な表面保護フィルムを提供することができる。それ故、巻重体製品として出荷され、プリズムシートのような表面に突起状物を有する被着体の表面保護フィルムとして使用した場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例において、ループタックを測定する試験の概要を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着層とを備えており、粘着層の硬度(マルテンス硬さ)は、1N/mm以上2.5N/mm以下であり、ループタックは0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下である。以下、本発明の実施形態を説明する。
基材層としては、表面保護フィルムの支持体として一般的に用いられるシートまたはフィルムであれば特に限定なく用いることができ、例えば、ポリオレフィン系などの材料により形成されたフィルムが好ましいものとして挙げられる。
【0011】
基材層として利用できるポリオレフィン系材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)などが挙げられる。なお、これらのポリオレフィン系材料は単独で用いてもよく、任意の組み合わせによる混合物・組成物として用いてもよい。特に、ブロックコポリマーのポリプロピレン(以下、「BPP」と略することがある)が基材層の材料として好ましい。BPPを用いることで基材層表面が粗面化され、更に巻き出し性が向上するとともに、引裂強度や衝撃強度が向上する。
【0012】
また、基材層には必要に応じて顔料、老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤を配合してもよい。
さらに、基材層は単層であるものに限られず複数の層で形成されてもよい。単層または複数層からなる基材層の総厚みとしては、例えば、20μm以上100μm以下、好ましくは、30μm以上80μm以下が好適である。
【0013】
本発明の基材層は外部ヘイズが20%以下であるフィルムを使用することができる。一般に、外部ヘイズが小さいことは表面が平滑であることを意味し、基材層さらには表面保護フィルムの透明性にも寄与する。しかし、従来の表面保護フィルムでは、巻重体製品からの巻き出し性を考慮して、基材層表面の粗度を大きくする必要があり、結果として当該基材層さらには表面保護フィルムの透明性が犠牲になっていた。本発明では、後述するように粘着層の硬度とループタックを所定の範囲内とすることで、外部ヘイズが20%以下である透明なフィルムを基材層として使用し、巻重体製品とした場合に対しても優れた巻き出し性を発揮させることができる。
なお、基材層の外部ヘイズは、例えばJIS K 7105に準拠して測定することができる。
【0014】
本発明の粘着層は、硬度が1N/mm以上2.5N/mm以下であり、ループタックが0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下となる材料で構成される。
本発明は、粘着層と凹凸のある被着体との接触面積が、粘着層の硬度に依存すること、また粘着層と被着体との粘着強度が被着体の凹凸の大小に依存することに着目し、粘着層の硬度とループタックを上記範囲に調整することで、プリズムシートのような比較的大きな凹凸のある被着体に対して良好に粘着するとともに、基材層の背面のようなプリズムシートよりも比較的に小さな凹凸を持つ被着体に対して容易に剥離する粘着力をもつ粘着層となることを見出したものである。すなわち、本発明の粘着層とすることで、表面保護フィルムに必要とされる十分な粘着強度と表面保護フィルムを巻重体製品とした場合に必要とされる良好な巻き出し性を両立させることができたのである。
このような硬度とループタックを達成しうる原料としては、エラストマーが好ましい。また、エラストマーに粘着付与剤やポリオレフィンを混合して用いることがより好ましい。
エラストマーとしては、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーが特に好ましい。本発明の粘着層用原料として最も好ましいのは、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーと、ポリオレフィンと、粘着付与剤とを混合して用いたものである。
粘着層に配合されるビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーは、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるブロック共重合体である。
A−B−A (1)
A−B (2)
【0015】
一般式(1)および一般式(2)中、Aはスチレンブロック、Bは下記一般式(3)で表される無水添のビニル−ポリイソプレンブロックまたはこれに水添したビニル−ポリイソプレンブロックである。なお、スチレン系エラストマーには、未カップリングのスチレンブロック、および、未カップリングの水添または無水添のビニル−ポリイソプレンブロックも含まれる。

【0016】
【化1】

【0017】
ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーは、スチレン含有量が5質量%以上30質量%以下、好ましくは10質量%以上25質量%以下である。ここで、スチレン含有量が5質量%未満では、硬度が低く粘着強度が強すぎるため、被着体からの剥離時に糊残りが生じる可能性があり好ましくない。特に、プリズムシートなどの表面に突起状物を有する被着体においては糊残りが発生しやすい。スチレン含有量が30質量%を超えると、硬度が高すぎるため被着体への粘着強度が弱く剥離する可能性があり好ましくない。特に、プリズムシートなどの表面に突起状物を有する被着体において剥離が発生しやすい。
【0018】
ここで、スチレン含有量とは、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマー全量に対するスチレンブロックの含有量である。
スチレン含有量は、例えば、次の方法によって求められる。
表面保護フィルムの粘着層中に含まれるブロック共重合体組成物を少量のヘキサンに溶解した後、過剰のアセトンを加えてアセトン不溶分と可溶分に分離し、不溶分についてNMR(核磁気共鳴スペクトル)測定を行い、スペクトルの積分強度比により算出する。
【0019】
上記一般式(1)で表されるブロック共重合体はトリブロック共重合体ともいうが、トリブロック共重合体の含有量はスチレン系エラストマー基準で80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上である。トリブロック共重合体の含有量が80質量%未満では、被着体への粘着強度が強すぎることがあり、剥離時に糊残りが生じる可能性がある。また、基材層の背面との粘着強度が強くなるため、巻重体製品からの巻き出し性が低下する可能性がある。
【0020】
ここで、トリブロック共重合体の含有量は、例えば、次の方法によって求められる。
保護フィルムの粘着層中に含まれるブロック共重合体組成物をテトラハイドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製GS5000HおよびG4000Hの液体クロマトグラフ用カラムをそれぞれ2段ずつ、計4段を直列につなぎ、移動相にTHFを用いて、温度40℃、流量1mL/minの条件下で高速液体クロマトグラフィを実施する。得られたチャートからカップリング成分、つまり、トリブロック共重合体に対応するピーク面積を求める。このピーク面積の、全体のピーク面積に対する100分率を、トリブロック共重合体の含有量とする。
【0021】
ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーのガラス転移温度は−60℃以上20℃以下である。ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーのガラス転移温度が−60℃未満では、表面保護フィルムの通常の使用温度領域(例えば、−20℃から40℃まで)での粘着強度が発現しにくく、被着体から剥離する可能性がある。特に、プリズムシートなどの表面に突起状物を有する被着体において剥離が発生するおそれがある。
ガラス転移温度は、例えば、次の方法によって求められる。
保護フィルムの粘着層中に含まれるブロック共重合体組成物を少量のヘキサンに溶解した後、過剰のアセトンを加えてアセトン不溶分と可溶分に分離する。不溶分を示差走査熱量計にて室温から20℃/minの割合で昇温させ、発熱量を測定して吸熱曲線を作成する。吸熱曲線に2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線と吸熱曲線の交点からガラス転移温度を求める。
【0022】
ビニル−ポリイソプレンブロックの含有量は、例えば、次の方法によって求められる。
粘着層の原料ペレットを重クロロホルムに溶解し、NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定を行い、スペクトルの積分強度比により算出する。
なお、当該ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーは水素添加されていてもいなくても構わない。
【0023】
粘着層に配合されるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)などが挙げられる。これらのポリオレフィンのうち、ポリプロピレンが粘着層の材料として好ましい。ポリプロピレンは、無水添または水添のビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーとの相溶性がよく、また耐熱性に優れ、更にブリードによる被着体の汚染が発生しにくい。
また、配合されるポリオレフィンは1種に限らず、2種以上を混合して用いても構わない。
【0024】
粘着層に配合されるポリオレフィンの好ましい割合は、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマー100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。ポリオレフィンの配合量が1質量部未満であると被着体への粘着強度が強くなり、剥離時に糊残りが生じるおそれがある。一方、ポリオレフィンの配合量が10質量部を超えると粘着層の硬度が高くなるため、例えば突起状物を有する被着体への粘着強度が弱くなり剥離してしまうおそれがある。一方、粘着強度を強くするために粘着付与剤の配合量を増すと、巻重体製品からの巻き出し性が低下するおそれもある。
【0025】
粘着層に配合される粘着付与剤としては、スチレン系エラストマーの水添または無水添のビニル−ポリイソプレンブロックに選択的に相溶する樹脂を好ましく採用することができる。このような樹脂としては、例えば、脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、ロジン樹脂などが挙げられる。
また、粘着層には、必要に応じて、液状ポリマーやパラフィンオイルなどの軟化剤、充填剤、顔料、老化防止剤、安定剤、および紫外線吸収剤などの添加剤を配合してもよい。
【0026】
粘着層に配合される粘着付与剤の好ましい割合は、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマー100質量部に対して、1質量部以上8質量部以下である。粘着付与剤の配合量が1質量部未満であると、粘着強度が弱くなり、例えば突起状物を有する被着体への粘着強度が弱くなり剥離してしまうおそれがある。一方、粘着付与剤の配合量が8質量部を超えると、ブリードによる被着体の汚染や、凝集力の低下を招くおそれがある。また、粘着層と外部ヘイズが低い平滑な基材層(巻重体の背面)との粘着強度が強くなるため、巻重体製品からの巻き出し性が低下する可能性がある。
【0027】
本発明の表面保護フィルムにおいては、粘着層の硬度(マルテンス硬さ)が1N/mm以上2.5N/mm以下である。1N/mm未満では粘着層の硬度が低すぎるために基材層の背面との粘着強度が強くなるため、巻重体製品からの当該フィルムの巻き出し性が低下する可能性があり好ましくない。2.5N/mmを超えると粘着層の硬度が高すぎるため、被着体が突起状物を有する場合、被着体の凹凸形状に追従することが困難になるため、十分な粘着強度を得ることができず、被着体から当該フィルムが剥離する可能性があり好ましくない。
粘着層の硬度は、例えば粘着層に配合するビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーとポリオレフィンの硬度により調整可能である。さらに、配合されるポリオレフィンが2種以上であれば、各ポリオレフィンの硬度によっても調整可能である。
【0028】
本発明の表面保護フィルムにおいては、粘着層を被着部とした場合のループタックが0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下である。ループタックが0.02N/25mm未満では、粘着層の粘着力が不足し被着体から当該フィルムが剥離する可能性がある。ループタックが0.1N/25mmを超える場合には粘着層と基材層の背面との粘着強度が強くなりすぎ、巻重体製品からの巻き出し性が低下する可能性があるので好ましくない。粘着層のループタックは、例えば粘着層に配合する粘着付与剤の配合量により調整可能である。
【0029】
粘着層の厚みは、25μm以下であることが好ましい。より好ましくは1μm以上15μm以下である。ここで、粘着層の厚みには必ずしも下限はないが、厚みが1μm未満では、被着体が突起状物を有する場合に、その先端を破損するおそれがある。また、粘着強度が低下し、被着体からの剥離が発生する可能性もある。粘着層の厚みが25μmを超えると、粘着強度が強くなり、被着体からの剥離時に糊残りが生じる可能性がある。また、基材層の背面との粘着強度が強くなるため、巻重体製品からの巻き出し性が低下する可能性もある。
それ故、実用上、粘着層の好ましい厚みは、1μm以上15μm以下である。
【0030】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層および粘着層は、共押出法により積層されることが好ましい。共押出法によれば、基材層と粘着層とを無溶剤で一度に積層させることができ、比較的簡単な製造装置により表面保護フィルムを形成することができる。また、製造工程の簡略化により、表面保護フィルムの製造コストを安価に抑えることができる。さらに、共押出法により形成した表面保護フィルムにおいては、基材層の表面と粘着層との層間強度が強く、被着体からの剥離時に糊残りが発生する可能性が低くなる。共押出法としては、フィードブロック法でもマルチマニホールド法でもよい。
また、本発明の表面保護フィルムは金属板、ガラス板および合成樹脂板などの被着体の表面を保護する目的で使用できるが、特にこれら被着体の表面に頂角80°から100°まで、高さ20μmから80μmまでの断面略三角形状をしている突起状物を有するプリズムシートに好適に使用することができる。
【0031】
本発明の表面保護フィルムによれば、粘着層の硬度(マルテンス硬さ)が1N/mm以上2.5N/mm以下であり、ループタックが0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下であるので、表面保護フィルムを巻重体製品とした場合に、基材層に対する離型処理を特に施さなくても、十分な粘着強度を維持しながら巻重体製品からの表面保護フィルムの巻き出しが容易となる。
これにより、被着体表面への表面保護フィルムの貼着作業の効率化を図ることができる。また、基材層が部分的に引き伸ばされて変形したり、粘着層が部分的に剥離されたりして、表面フィルムが無駄になる可能性も低い。さらに、巻重体製品からの巻き出し性を確保するための離型処理を不要とすることで、表面保護フィルムの製造コストを抑えることができる。
また、基材層の背面を大きく粗す必要性が特にないので、表面保護フィルムの高透明化が可能となる。
【0032】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれるものである。
本実施形態では、基材層と粘着層とを備えた表面保護フィルムを例示したが、これに限らず、例えば、紫外線吸収層などの他の機能層を設けた構成としてもよい。この場合、物理的接触のみならず紫外線などの他の要因からも被着体表面を保護することができる。
その他、本発明の実施における具体的な材料および構成などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の材料および構成などとしてもよい。
【実施例】
【0033】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
スチレン含有量が20質量%、トリブロック共重合体の含有量が100質量%、ガラス転移温度が−15℃の、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマー(クラレ社製、商品名ハイブラー7125)100質量部に対して、ポリオレフィンとしてRPP(日本ポリプロ社製、商品名ウィンテックWFW−4)5質量部、粘着付与剤(出光興産製、商品名アイマーブP−140)5質量部を混合してなる粘着層と、PO系基材層として、BPP(ポリプロピレンブロックコポリマー)とを2層共押出し法にて、粘着層厚みが11μm、基材層厚みが39μmとなるようフィードブロック法により共押出を行い、表面保護フィルム(以下単に「フィルム」ともいう)を得た。
なお、基材層として用いたBPPには、サンアロマー社製の商品であるPC−684S(MFR 5.0)、PC−480A(MFR 2.0)、EP−310K(MFR 3.4)を用い、それぞれ基材層の異なる3種のフィルムを得た。以下の実施例および比較例も同様である。
【0035】
〔実施例2〕
粘着層における粘着付与剤の配合量を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0036】
〔実施例3〕
粘着層におけるポリオレフィンの配合量を7質量部とした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0037】
〔実施例4〕
粘着層の厚みを3μmとした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0038】
〔比較例1〕
粘着層における粘着付与剤の配合量を15質量部とした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0039】
〔比較例2〕
粘着層におけるポリオレフィンの配合量を10質量部とし、粘着付与剤の配合量を10質量部とした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0040】
〔比較例3〕
粘着層におけるポリオレフィンの配合量を15質量部とし、粘着付与剤の配合量を15質量部とした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0041】
〔比較例4〕
粘着層におけるポリオレフィンの配合量を20質量部とし、粘着付与剤の配合量を20質量部とした以外は、実施例1と同様にして3種のフィルムを得た。
【0042】
〔評価方法〕
上述した実施例・比較例の各フィルムについて、以下に示す方法で各種の特性を評価した。結果を表1、表2に示した。
(1)粘着層の硬度(マルテンス硬さ)
ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製 DHU−211)を用い試験力を1mN、負荷速度を0.05mN/secとしマルテンス硬さを測定した。
【0043】
(2)ループタック
ループタックの測定は、イマダ社製縦型電動計測スタンドMV-500NII-L550にイマダ社製デジタルフォースゲージZP-5Nを装着した装置を用いて行った。具体的には、以下の通りである。
幅25mm、長さ300mmに切り出したフィルムの粘着層を外側にしてデジタルフォースゲージのクロスヘッドに固定し、ステージ上のアクリル板にフィルムが接触長さ5mmとなるまでクロスヘッドを下降させ3秒間保持した後、デジタルフォースゲージの値をゼロ点補正し、引張り速度0.3m/minにて剥離しその時の抵抗値(N/25mm)を測定した。図1に試験の概要を模式的に示す。
【0044】
(3)粘着強度
線圧0.38MPa、2m/minの条件下で、フィルムを被着体(頂角約90°高さ約30μmの断面三角形状をしたアクリル樹脂製のプリズムシート)に圧着し、23℃にて24時間保存した。その後、引張試験機を用い、引張速度0.3m/min、180℃ピールにて剥離し、その時の抵抗値(N/25mm)を測定した。また、0.05N/25mm以上の場合を○、0.05N/25mm未満の場合を×として表1に併記した。
【0045】
(4)巻き出し強度
基材層の異なる3種のフィルムについて線圧0.38MPa、2m/minの条件下で、フィルムの粘着面と基材層の背面とを圧着し、23℃にて5分間保存した。その後、引張試験機を用い、引張速度0.3m/min、90°ピールにて剥離し、その時の抵抗値(N/25mm)を測定した。また、0.2N/25mm未満の場合を○、0.2N/25mm以上の場合を×として表1に併記した。
【0046】
(5)ヘイズ
フィルムの全ヘイズは、ヘイズメーター(スガ試験機社製 HZ−1)を用いJIS K 7105に準拠して測定した。基材層の外部ヘイズは、以下の方法を用いて求めた。
予めガラス板2枚の間にシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 商品名 SH200)のみを挟んでヘイズを測定しておき(Hz1)、次にシリコーンオイルで粘着層面を塗らしたフィルムを挟んでヘイズを測定し(Hz2)、次にシリコーンオイルで両面を塗らしたフィルムを挟んでヘイズを測定し(Hz3)、以下の式より基材層の外部ヘイズ(Hz4)を求めた。
Hz4=(Hz2−Hz1)−(Hz3−Hz1)
外部ヘイズが20%以下の場合を○、20%を超える場合を×とした。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
〔評価結果〕
表1に示す結果から、各実施例のフィルムについては、粘着層の硬度およびループタックが所定の範囲であるので、プリズムシートのような大きな凹凸面に対する十分な粘着強度と、良好な巻き出し性との両立が可能であることが分る。
また、実施例1と比較例1の比較からプリズムシートのような大きな凹凸面に対する粘着強度は粘着層のマルテンス硬度が支配的であり、粘着付与剤の配合量を増やしループタックを上げてもプリズムシートに対する粘着強度は変化せず、プリズムシートに比べ平滑な基材層の背面との粘着強度つまり巻き出し強度のみが上がることがわかる。
比較例2、3から粘着層のマルテンス硬度が1N/25mm以上2.5N/25mm以下の範囲内にあっても、ループタックが0.1N/25mmを超えると良好な巻き出し性を得ることができないことがわかる。このような場合、巻き出し性を改善するためには基材層の背面を大きく粗す必要があり、透明性の良好な保護フィルムを得ることができず実用上問題となる。
比較例4から、マルテンス硬度が2.5N/25mmを超えると十分な粘着強度を得ることができないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系の基材層と、粘着層とを備えた表面保護フィルムであって、
前記粘着層の硬度(マルテンス硬さ)が1N/mm以上2.5N/mm以下であり、ループタックが0.02N/25mm以上0.1N/25mm以下である
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記粘着層が、ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマーと、ポリオレフィンと、粘着付与剤とを含む
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項3】
請求項2に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記スチレン系エラストマーは、スチレン含有量が5質量%以上30質量%以下である
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記スチレン系エラストマーは、トリブロック共重合体の含有量が80質量%以上である
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記スチレン系エラストマーは、ガラス転移温度が−60℃以上20℃以下である
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記粘着層の厚みが25μm以下である
ことを特徴とした表面保護フィルム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記基材層の外部ヘイズが20%以下である
ことを特徴とした表面保護フィルム。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の表面保護フィルムにおいて、
前記粘着層が共押出法によって積層される
ことを特徴とした表面保護フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77244(P2012−77244A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225827(P2010−225827)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】