説明

表面処理剤

【課題】高い化学的安定性、塗膜自己修復性を有し、基材への定着性が高く、基材への塗布工程において紫外線照射による末端基の配向処理が可能な表面処理剤を提供する。
【解決手段】(X−)(W−)(Z−)Yを含む表面処理剤。Xは式(X)、Wは式(W)、Zは式(Z)、Yは(x+w+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基等、xは1以上の整数、w、zは0以上の整数、(x+w+z)は3以上の整数。
U−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)−・・・(X)、R−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)−・・・(W)、RO(CFCFO)−・・・(Z)。Uは紫外線吸収基、a、bは0〜100の整数、cは1〜200の整数、RはHO−、HOC(O)−等、d、eは0〜100の整数、fは1〜200の整数、Rはペルフルオロアルキル基等、gは3〜200の整数。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤等の表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外部記憶装置としては、記録媒体層を有するハードディスクを高速回転させて記録・再生用素子(ヘッド)が作動する方式(CSS方式)の外部記憶装置が一般的に用いられる。ハードディスクとしては、固定式磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等があり、最も普及しているハードディスクは固定式磁気ディスクである。
【0003】
外部記憶装置を大容量化するには、記録媒体層の面記録密度を増加する必要がある。そのためには、ビットサイズを小さくするためにヘッドとハードディスクとの間隔を狭くする必要がある。それに伴いハードディスクの表面の平滑性を上げる必要がある。しかし、ハードディスクの表面の平滑性を上げると、ハードディスクの表面にヘッドが吸着しやすくなる。
また、高速応答性を得るために、ハードディスクの回転速度を上げる必要もある。しかし、回転速度を上げると、ハードディスクとヘッドとの接触確率、摩耗等が増加する。
【0004】
該問題を解決するために、ハードディスクの表面に表面処理剤の1種である潤滑剤を塗布することが行われている。該潤滑剤としては、下記のものが知られている。
(1)末端に2つの水酸基を有するポリフルオロ化されたポリエーテル化合物(以下、ポリフルオロ化されたポリエーテル化合物をPFPEと記す。)。
【0005】
しかし、(1)のPFPEは、ハードディスクの表面への定着性が低いため、ハードディスクの回転速度をさらに上げると、遠心力で潤滑剤がハードディスクの表面から移動、消失してしまう。該問題を解決するには、潤滑剤の塗布量を多くする方法が考えられる。
しかし、塗布量が多くなると、ハードディスクの表面の摺動抵抗が大きくなり、ハードディスクの表面へのヘッドの吸着力が増大して、ハードディスクがヘッドと接触し、破損する。
【0006】
また、ハードディスクの表面への潤滑剤の塗布工程においては、ハードディスクの表面に潤滑剤を塗布した後、潤滑油の末端基を配向させる処理が行われる。該処理としては、紫外線照射処理または熱処理が知られている。紫外線照射処理は、工程所要時間が短い点で熱処理より有利である。
しかし、(1)のPFPEは、紫外線領域の波長に吸収を有さないため、(1)のPFPEのみを塗布した場合、紫外線照射処理を採用することができない。
【0007】
該問題を解決する潤滑剤としては、下記のものが提案されている。
(2)末端に2つの水酸基を有するPFPEの水酸基の1つに、紫外線領域に吸収波長を有する基を結合させたPFPE(特許文献1)。
しかし、(2)に分類されるPFPEでも、化学的安定性の低さ、塗布後の塗膜自己修復性能が低い問題は解決できていない。
【0008】
【特許文献1】特開2002−293787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い化学的安定性、塗膜自己修復性を有しながら、基材への定着性が高く、かつ基材への塗布工程において、紫外線照射による末端基の配向処理が可能な表面処理剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面処理剤は、下式(A)で表わされる化合物を含むことを特徴とする。
(X−)(W−)(Z−)Y ・・・(A)。
ただし、Xは、下式(X)で表される基であり、Wは、下式(W)で表される基であり、Zは、下式(Z)で表わされる基であり、Yは、(x+w+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、xは、1以上の整数であり、wは、0以上の整数であり、zは、0以上の整数であり、(x+w+z)は、3以上の整数である。
U−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)− ・・・(X)、
−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)− ・・・(W)、
O(CFCFO)− ・・・(Z)。
ただし、Uは、紫外線領域に吸収波長を有する1価の基であり、aは、0〜100の整数であり、bは、0〜100の整数であり、cは、1〜200の整数であり、Rは、HO−、HOC(O)−またはROC(O)−であり、Rは、アルキル基であり、dは、0〜100の整数であり、eは、0〜100の整数であり、fは、1〜200の整数であり、Rは、炭素数が1〜20の直鎖のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、gは、3〜200の整数である。
【0011】
式(A)で表わされる化合物は、−OCFO−構造を有さないことが好ましい。
(x+w+z)は、3または4であることが好ましい。
Yは、下式(Y−1)で表される基〜下式(Y−4)で表される基、下式(Y−1)で表される基〜下式(Y−5)で表される基、下式(Y−1)で表される基のいずれかであることが好ましい。ただし、式(Y−4)は、ペルフルオロシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を示す。
【0012】
【化1】

【0013】
式(X)で表される基は、下式(X1)で表される基または下式(X2)で表される基であることが好ましい。
−CH−CFO(CFCFO)− ・・・(X1)、
−CFO(CFCFO)− ・・・(X2)。
ただし、Uは、シクロホスファゼン環、ベンゼン環またはビニル基を含む1価の基であり、Uは、アミド結合、エステル結合またはビニル基を含む1価の基であり、cは、1〜200の整数である。
【0014】
Uは、下式(U31)で表される基〜下式(U33)で表される基のいずれかであることが好ましい。
CH=CH(CHNHC(O)− ・・・(U31)、
HO(CHNHC(O)− ・・・(U32)、
(HO(CH−)NC(O)− ・・・(U33)。
ただし、nは、1〜3の整数である。
【0015】
式(W)で表される基は、下式(W1)で表される基〜下式(W3)で表される基のいずれかであることが好ましい。
HO−CH−CFO(CFCFO)− ・・・(W1)、
HOC(O)−CFO(CFCFO)− ・・・(W2)、
OC(O)−CFO(CFCFO)− ・・・(W3)。
ただし、Rは、アルキル基であり、fは、1〜200の整数である。
【0016】
式(Z)で表される基は、下式(Z1)で表される基であることが好ましい。
CF(CF−O−(CFCFO)− ・・・(Z1)。
ただし、mは、0〜19の整数であり、gは、3〜200の整数である。
本発明の表面処理剤は、溶媒を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の化合物は、下式(A3−1)で表される化合物である。
【0018】
【化2】

【0019】
ただし、c1〜c3は、それぞれ1〜200の整数である。
【0020】
本発明の化合物は、下式(A4−1)で表される化合物である。
【0021】
【化3】

【0022】
ただし、c1〜c3は、それぞれ1〜200の整数である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の表面処理剤は、高い化学的安定性、塗膜自己修復性を有しながら、基材への定着性が高く、かつ基材への塗布工程において、紫外線照射による末端基の配向処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書においては、式(A)で表される化合物を化合物(A)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
また、式(X)で表される基を基(X)と記す。他の式で表される基も同様に記す。
【0025】
本発明の表面処理剤は、化合物(A)を含む。
(X−)(W−)(Z−)Y ・・・(A)。
化合物(A)は、Yにx個のX、w個のWおよびz個のZが結合した化合物である。xは1以上の整数であり、wは0以上の整数であり、zは0以上の整数であり、(x+w+z)は3以上の整数である。すなわち、化合物(A)は、Yで表される3価以上の基に、1個以上のXが結合する。ZおよびWは任意に結合する基である。
【0026】
Xは、基(X)である。
U−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)− ・・・(X)。
【0027】
aは、0〜100の整数であり、0〜10の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0または1が特に好ましい。
bは、0〜100の整数であり、Uが結合末端に酸素原子を有する場合、1〜10の整数が好ましく、1または2が特に好ましく、Uが結合末端にカルボニル基(C=O)を有する場合、0が好ましい。
cは、1〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、5〜50の整数がより好ましい。
【0028】
Uは、紫外線領域に吸収波長を有する1価の基である。
Uとしては、シクロホスファゼン環、ベンゼン環、アミド結合、エステル結合、およびビニル基から選ばれる1種以上の構造を有する基が好ましく、アミド結合を有する基が特に好ましい。
【0029】
Uがシクロホスファゼン環を有する基である場合のUとしては、基(U1)が挙げられる。
【0030】
【化4】

【0031】
ただし、Rは、水素原子、塩素原子、−CHCHCH、−NH、−OPh、−OCH(CFHまたは−OCHCFCFで表される基であり、Phは、置換基を有していてもよいフェニル基であり、pは、1〜8の整数である。Rは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、すべて同一であるのが好ましい。
基(U1)としては、基(U11)が好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
ただし、Rは、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、炭素数が1〜4のハロゲン化アルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基または置換アリールオキシ基である。
【0034】
Uがベンゼン環を有する基である場合のUとしては、基(U21)または基(U22)が挙げられる。
Ph−O− ・・・(U21)。
ただし、Phは、置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0035】
【化6】

【0036】
Uがアミド結合を有する基である場合のUとしては、基(U31)〜基(U33)が挙げられる。なお、基(U31)は、ビニル基を有する基にも含めうる。
CH=CH(CHNHC(O)− ・・・(U31)、
HO(CHNHC(O)− ・・・(U32)、
(HO(CH−)NC(O)− ・・・(U33)。
ただし、nは、1〜3の整数である。
【0037】
Uがエステル結合を有する基である場合のUとしては、基(U41)が挙げられる。
OC(O)− ・・・(U41)。
ただし、Rは、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のハロゲン化アルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基または置換アリールオキシ基である。
【0038】
Uがビニル基を有する基である場合のUとしては、基(U51)が挙げられる。
CH=CH(CHO− ・・・(U51)。
ただし、qは1〜3の整数である。
【0039】
基(X)としては、基(X1)または基(X2)が好ましい。
−CH−CFO(CFCFO)− ・・・(X1)、
−CFO(CFCFO)− ・・・(X2)。
ただし、Uは、シクロホスファゼン環、ベンゼン環またはビニル基を有する1価の基であり、Uは、アミド結合、エステル結合またはビニル基を有する1価の基である。
基(X)としては、化合物の入手のしやすさの点から、Uがアミド結合を有する基が好ましい。
【0040】
Wは、基(W)である。
−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)− ・・・(W)。
【0041】
は、HO−、HOC(O)−またはROC(O)−である。
は、アルキル基であり、炭素数1〜6の低級アルキル基が好ましい。
【0042】
dは、0〜100の整数であり、0〜10の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0または1が特に好ましい。
eは、0〜100の整数であり、Rが−OHである場合、1または2が好ましく、Rが−C(O)OHまたは−C(O)ORである場合、0が好ましい。
fは、1〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、5〜50の整数がより好ましい。
【0043】
基(W)としては、基(W1)〜基(W3)が好ましい。
HO−CH−CFO(CFCFO)− ・・・(W1)、
HOC(O)−CFO(CFCFO)− ・・・(W2)、
OC(O)−CFO(CFCFO)− ・・・(W3)。
【0044】
Zは、基(Z)である。
O(CFCFO)− ・・・(Z)。
【0045】
は、炭素数が1〜20の直鎖のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。
gは、3〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、3〜70の整数がより好ましく、5〜50の整数が特に好ましい。
【0046】
基(Z)は、末端に−CFを有する基であり、摩擦係数の低下に寄与しうる基である。基(Z)は、分子中における−CFの自由度が高くなる点から、ある程度の鎖長を有することが好ましい。
基(Z)としては、基(Z1)が好ましく、基(Z11)〜基(Z13)がより好ましい。
CF(CF−O−(CFCFO)− ・・・(Z1)、
CF−O−(CFCFO)− ・・・(Z11)、
CF(CF−O−(CFCFO)− ・・・(Z12)、
CF(CF−O−(CFCFO)− ・・・(Z13)。
ただし、mは、0〜19の整数である。
【0047】
xは、1以上の整数であり、1〜(x+w+z)が好ましく、1〜3がより好ましい。
wは、0以上の整数であり、0〜1が好ましい。
zは、0以上の整数であり、0〜1が好ましい。
(x+w+z)は、3または4が好ましい。すなわち、Yは、3価または4価の基が好ましい。
【0048】
Yは、(x+w+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。Yは、−CFを有さないことが好ましい。Yが−CFを有する場合、−CFは4級炭素原子に結合することが好ましい。4級炭素原子とは、フッ素原子が結合していない炭素原子を意味する。
Yが、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である場合、エーテル性酸素原子の数は、1〜3が好ましい。エーテル性酸素原子は炭素−炭素原子間に存在することから、X、Z、Wに結合するYの末端にはエーテル性酸素原子は存在しない。
【0049】
Yが3価の基である場合のYとしては、基(Y−1)〜基(Y−4)が挙げられる。ただし、基(Y−4)は、ペルフルオロシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を示す。
【0050】
【化7】

【0051】
Yが4価の基である場合のYとしては、基(Y−1)〜基(Y−5)が挙げられる。
【0052】
【化8】

【0053】
Yが5価の基である場合のYとしては、基(Y−1)が挙げられる。
【0054】
【化9】

【0055】
Yが3価の基である場合の化合物(A)としては、化合物(A−1)〜化合物(A−4)が好ましく、化合物(A−4)が特に好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
Yが4価の基である場合の化合物(A)としては、化合物(A−1)〜化合物(A−4)が好ましく、化合物(A−4)が特に好ましい。
【0058】
【化11】

【0059】
化合物(A)は、化学的安定性の点から、−OCFO−構造を有さないことが好ましい。−OCFO−構造を有さない化合物とは、通常の分析手法(19F−NMR等。)では該構造の存在が検出できない化合物を意味する。
【0060】
化合物(A)としては、化合物(A3−1)または化合物(A4−1)が好ましい。
【0061】
【化12】

【0062】
ただし、c1〜c3は、それぞれ1〜200の整数である。
【0063】
化合物(A)の数平均分子量(以下、Mnと記す。)は、500〜10万が好ましく、1000〜2万がより好ましい。
化合物(A)の分子量分布(以下、Mw/Mnと記す。)は、1.0〜1.5が好ましく、1.0〜1.25がより好ましい。
MnおよびMw/Mnが該範囲にあれば、粘度が低く、蒸発成分が少なく、溶媒に溶解した際の均一性に優れる。
Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと記す。)により測定される。Mw/Mnは、GPCにより測定されたMnおよびMw(質量平均分子量)から求める。
【0064】
化合物(A)の製造方法としては、国際公開第2005/068534号パンフレットに記載の方法により、化合物(A1)または化合物(B1)を製造し、該化合物の末端を、公知の手法により変換することにより製造するのが好ましい。
(ROC(O)−CFO(CFCFO)−)(W−)(Z−)Y ・・・(A1)、
(HO−(CH−CFO(CFCFO)−)(W−)(Z−)Y ・・・(B1)。
ただし、Rは、低級アルキル基である。
【0065】
化合物(A1)および化合物(B1)を、国際公開第2005/068534号パンフレットに記載の液相フッ素化反応を経る方法により製造する場合で、かつ液相フッ素化反応の条件が厳しい場合、分子の末端の切断反応が起こりやすい。よって、液相フッ素化反応において、液相に吹き込むガスに含まれるフッ素濃度は、5.0〜50体積%が好ましく、10〜30体積%がより好ましい。
【0066】
たとえば、化合物(A)の製造方法としては、次の方法が例示できる。
(i)Uが基(U31)である化合物(A4)は、化合物(A1)に化合物(U31H)を反応させることにより製造できる。ただし、式中の記号は前記と同じ意味を示す。
CH=CH(CHNH ・・・(U31H)、
(CH=CH(CHNHC(O)−CFO(CFCFO)−)(W−)(Z−)Y ・・・(A4)。
【0067】
(ii)Uが基(U32)である化合物(A3)は、化合物(A1)に化合物(U32H)を反応させることにより製造できる。ただし、式中の記号は前記と同じ意味を示す。
HO(CHNH ・・・(U32H)、
(HO(CHNHC(O)−CFO(CFCFO)−)(W−)(Z−)Y ・・・(A3)。
【0068】
(iii)Uが基(U33)である化合物(A5)は、化合物(A1)に化合物(U33H)を反応させることにより製造できる。ただし、式中の記号は前記と同じ意味を示す。
(HO(CH−)NH ・・・(U33H)、
((HO(CH−)NC(O)−CFO(CFCFO)−)(W−)(Z−)Y ・・・(A5)。
【0069】
(iv)Uが基(U51)である化合物(A6)は、化合物(B1)に化合物(U51H)を反応させることにより製造できる。ただし、式中の記号は前記と同じ意味を示す。
CH=CH(CHBr ・・・(U51H)、
(CH=CH(CHO−(CH−CFO(CFCFO)−)(W−)(Z−)Y ・・・(A6)。
【0070】
(i)〜(iii)の反応は、アミド化反応の手法を適用することにより実施できる。
該反応は室温程度で反応が完遂するため、極めて高収率で目的物を得ることができる。
化合物(A)は、必要に応じて、精製されることが好ましい。精製方法としては、イオン吸着ポリマーによって金属不純物、陰イオン不純物等を除去する方法、超臨界抽出法、カラムクロマトグラフィ法が挙げられ、これらを組み合わせた方法が好ましい。
【0071】
本発明の表面処理剤は、化合物(A)を含む。該化合物(A)は、1種であってもよく、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
2種以上の化合物とは、Yの種類が異なる2種以上の化合物、またはYが同一であってもX、WおよびZの結合数(x、wおよびz)がそれぞれ異なる2種以上の化合物を意味する。なお、Yが同一であり、x、wおよびzが同一であり、a〜gの数が同一または異なる化合物は、同一の化合物とする。
【0072】
表面処理剤に含ませる化合物(A)は、1種の化合物が好ましい。また該1種の化合物は、通常はa〜gの数が異なる化合物からなり、a〜gの数は、モル平均値として表される。
【0073】
本発明の表面処理剤は、他の化合物を含んでいてもよい。
他の化合物としては、化合物(A)以外のPFPE(以下、他のPFPEと記す。)が挙げられる。他のPFPEは、製造工程、塗布後の使用条件を考慮して適宜選択しうる。
他のPFPEとして末端に紫外線吸収基を有さないPFPEとしては、ソルベイ社製のFOMBLIN Z−DiOL、Z−TetraOL、ダイキン社製のDEMNUM SAが挙げられる。また、国際公開第2005/068534号パンフレットに記載されるPFPE等も好ましく用いうる。
他のPFPEとして末端に紫外線吸収基を有するPFPEとしては、ソルベイ社製のFOMBLIN Z−DIAC、Z−DEAL、AM2001、Z−DISOC、ダイキン社製のDEMNUM SH、SP、SY、松村石油社製のMoresco A20Hが挙げられる。
他のPFPEを含ませる場合の化合物(A)量は、化合物(A)と他のPFPEとの総質量に対して、0.01〜99.9質量%が好ましく、0.5〜60質量%が特に好ましく、1〜25質量%がとりわけ好ましい。
【0074】
本発明の表面処理剤は、溶媒を含む液状組成物として用いることが好ましい。
溶媒としては、ペルフルオロアミン類(ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等。)、ペルフルオロアルカン類(バートレルXF(デュポン社製)等。)またはヒドロフルオロエーテル類(AE−3000(旭硝子社製)等。)が好ましく、ヒドロフルオロエーテル類がより好ましい。溶媒は、塗布工程に適した沸点を有する溶媒から選択するのが好ましい。
【0075】
液状組成物は、溶液、懸濁液または乳化液のいずれであってもよく、溶液が好ましい。
液状組成物中の化合物(A)の濃度は、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。
【0076】
液状組成物は、本発明の表面処理剤および溶媒以外の成分(以下、他の成分と記す。)を含んでいてもよい。
他の成分としては、ラジカルスカベンジャー(たとえば、X−1p(Dow Chemicals社製)等。)等が挙げられる。
【0077】
液状組成物を潤滑剤として用いる場合、液状組成物は、金属イオン類、陰イオン類、水分、低分子極性化合物、可塑剤等を含まないことが好ましい。
金属イオン類(Na、K、Ca、Al等。)は、陰イオンと結合してルイス酸触媒を生じ、PFPEの分解反応を促進する場合がある。
陰イオン類(F、Cl、NO、NO、PO、SO、C等。)は、基材の表面を腐食させる場合がある。
液状組成物の含水率は、2000ppm以下が好ましい。
【0078】
本発明の表面処理剤からなる薄膜は、液状組成物を基材の表面に塗布し、乾燥し、ついで紫外線または短波長紫外線を照射することによって形成される。
【0079】
塗布方法としては、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法(浸漬法)、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア・プロジェット法、真空蒸着法等が挙げられ、薄膜の均一性、生産性の点から、浸漬法が好ましい。
【0080】
紫外線の波長は、184nm、253nm、またはこれらの混合波長が好ましい。
照射時間は、1〜120秒が好ましく、3〜60秒がより好ましく、5〜30秒が特に好ましい。
紫外線照射後の基材を、付着物の除去、余剰の表面処理剤の除去を目的に、フッ素系溶媒に洗浄してもよい。
【0081】
紫外線照射を行うことにより、基材の表面において化合物(A)の末端基のXを配向させることができ、基材の表面への化合物(A)の吸着性を高めることができる。
また、化合物(A)の末端基が配向した表面処理剤からなる薄膜は、高い撥水性および高い撥油性を有する。よって、基材表面から水分等が基材内部へ侵入することが防止されるために、基材の腐食や劣化が防止される。また、薄膜が形成した表面は低表面エネルギーとなり、摩擦係数が低くなる利点も有する。
紫外線照射後の薄膜の表面における水接触角(室温)は、70°以上が好ましく、80°以上がより好ましく、85°以上が特に好ましい。
【0082】
本発明の表面処理剤からなる薄膜は、透明であり、屈折率が低く、耐熱性もしくは耐薬品性に優れる。また、該薄膜は、高い潤滑性を保持し、かつ自己修復性をも有する。
該薄膜の厚さは、0.001〜50μmが好ましい。
【0083】
本発明の表面処理剤は、磁気ディスクのダイヤモンド状炭素保護膜(DLC膜)上に潤滑性を付与するための潤滑剤として用いられる。
また、本発明の表面処理剤の他の用途としては、表面改質剤、界面活性剤、電線被覆材、撥インク剤(塗装用撥インク剤、印刷機器(インクジェット等。用撥インク剤等。)、半導体素子用接着剤(LOC(リードオンチップ)テープ用接着剤等。)、半導体用保護コート(防湿コート剤、半田用這い上がり防止剤等。)、光学分野に用いる薄膜(ペリクル膜等。)への添加剤、ディスプレイ用反射防止膜の表面処理剤、レジスト用反射防止膜等が挙げられる。
本発明の表面処理剤を該用途に用いた場合、長期にわたり安定した性能を維持できる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。実施例において、
テトラメチルシランをTMS、
CClFCClFをR−113、
ジクロロペンタフルオロプロパンをR−225、
CClFCClFCFOCFCClFをCFE−419、
ヘキサフルオロイソプロピルアルコールをHFIP、
イソプロピルアルコールをIPAと記す。
【0085】
(NMR分析)
H−NMR(300.4MHz)の基準物質としては、TMSを用いた。
19F−NMR(282.7MHz)の基準物質としては、CFClを用いた。
溶媒としては、特に記載しない限り、R−113を用いた。
【0086】
(GPC分析)
特開2001−208736号公報に記載の方法にしたがって、下記の条件にてGPCによりMnおよびMwを測定し、Mw/Mnを求めた。
移動相:R−225(旭硝子社製、アサヒクリンAK−225SECグレード1)とHFIPとの混合溶媒(R−255/HFIP=99/1体積比)、
分析カラム:PLgel MIXED−Eカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を2本直列に連結したもの、
分子量測定用標準試料:Mw/Mnが1.1未満であり、分子量が2000〜10000のペルフルオロポリエーテルの4種およびMw/Mnが1.1以上であり、分子量が1300のペルフルオロポリエーテルの1種、
移動相流速:1.0mL/分、
カラム温度:37℃、
検出器:蒸発光散乱検出器。
【0087】
〔例1〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例1に記載の方法と同様に、ポリオキシエチレングリセロールエーテル(日本油脂社製、ユニオックスG1200)に、FC(O)CF(CF)OCFCF(CF)O(CFFを反応させ、室温で液体の化合物(C1−1)を得た。NMR分析の結果、化合物(C1−1)の(c1+c2+c3)の平均値は20.5であり、Rは−CF(CF)OCFCF(CF)O(CFFであった。GPC分析の結果、化合物(C1−1)のMnは2600であり、Mw/Mnは1.15であった。
【0088】
【化13】

【0089】
H−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):3.4〜3.8,4.5。
19F−NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0090】
〔例2〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例2−1に記載の方法において、R−113をCFE−419に変更し、化合物(D3−1)を化合物(C1−1)に変更した以外は同様に液相フッ素化反応を行い、化合物(C1−1)の水素原子の99.9モル%以上をフッ素原子に置換した。生成物は、化合物(D1−1)を主成分とする組成物(d1−1)であった。化合物(D1−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認した。
【0091】
【化14】

【0092】
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):−54.0,−77.5〜−86.0,−88.2〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0。
【0093】
〔例3〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例3に記載の方法において、化合物(D5−1)を組成物(d1−1)に変更した以外は同様に熱分解反応を行い、化合物(D1−1)のエステル基の99.9モル%以上を熱分解して酸フルオリド基(−COF)に誘導した。生成物は、化合物(E1−1)を主成分とする組成物(e1−1)であった。化合物(E1−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認した。
【0094】
【化15】

【0095】
H−NMR δ(ppm):5.9〜6.4。
19F−NMR δ(ppm):12.7,−54.0,−78.1,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0096】
〔例4〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例4−1に記載の方法において、化合物(D5−1)を組成物(e1−1)に変更し、メタノールをエタノールに変更した以外は同様にして、化合物(E1−1)中の酸フルオリド基の99.9モル%以上をエチルエステル基に誘導した。生成物は、化合物(A1−1)を主成分とする組成物(a1−1)であった。GPC分析の結果、化合物(A1−1)のMnは2800であり、Mw/Mnは1.14であった。また、化合物(A1−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認した。
【0097】
【化16】

【0098】
H−NMR δ(ppm):1.33,4.27。
19F−NMR δ(ppm):−54.0,−78.3,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0099】
〔例5〕
スターラーチップを投入した200mLの丸底フラスコを充分に窒素置換した。組成物(a1−1)の20.0g、R−225の20g、メタノールの20gを入れ、50℃に昇温して激しく撹拌した。1時間後、丸底フラスコの上部に設置した滴下漏斗より0.2N水酸化ナトリウム水溶液の0.1Lを0.5時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、50℃で6時間撹拌を継続して室温まで冷却した。
【0100】
0.05N塩化水素水溶液の0.1Lに粗液をクエンチし、分液漏斗に移液した。有機相を回収して、0.05N塩化水素水溶液の0.1Lで水洗する操作を4回実施した後、分液した有機相をエバポレーターで濃縮して、室温で無色液体である組成物(a2−1)の17.5gを得た。化合物(A1−1)のエチルエステル基の99.9モル%以上がカルボキシル基にケン化された。組成物(a2−1)は化合物(A2−1)が主成分であった。GPC分析の結果、化合物(A2−1)のMnは2500であり、Mw/Mnは1.19であった。また、化合物(A2−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認した。
【0101】
【化17】

【0102】
H−NMR δ(ppm):10.4。
19F−NMR δ(ppm):−54.0,−77.4,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0103】
〔例6〕
スターラーチップを投入した100mLの丸底フラスコを充分に窒素置換する。組成物(a1−1)の20.0g、R−225の20gを入れ、激しく撹拌する。1時間後、丸底フラスコの上部に設置した滴下漏斗より化合物(U32H−1)の1.5gとR−225の20gの混合物を0.5時間かけてゆっくりと滴下する。滴下終了後、50℃に昇温して6時間撹拌を継続して室温まで冷却する。
HOCHCHNH ・・・(U32H−1)。
【0104】
粗液をエバポレーターで濃縮し、残渣をn−ヘキサンの0.1Lで2回洗浄して、室温で無色液体である組成物(a3−1)の18.5gを得る。化合物(A1−1)の−C(O)OCHCHの99モル%以上が−C(O)NHCHCHOHに誘導化されている。組成物(a3−1)の主成分は化合物(A3−1)である。化合物(A3−1)のMnは3000であり、Mw/Mnは1.17である。また、化合物(A3−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認する。
【0105】
【化18】

【0106】
〔例7〕
スターラーチップを投入した100mLの丸底フラスコを充分に窒素置換した。組成物(a1−1)の20.0g、R−225の20gを入れ、激しく撹拌した。1時間後、丸底フラスコの上部に設置した滴下漏斗より化合物(U31H−1)の1.5gとR−225の20gの混合物を0.5時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、50℃に昇温して6時間撹拌を継続して室温まで冷却した。
CH=CHCHNH ・・・(U31H−1)。
【0107】
粗液をエバポレーターで濃縮し、残渣をn−ヘキサンの0.1Lで2回洗浄して室温で無色液体である組成物(a4−1)の18.8gを得た。化合物(A1−1)の−C(O)OCHCHの99.9モル%以上が−C(O)NHCHCH=CHに誘導された。組成物(a4−1)は化合物(A4−1)が主成分であった。GPC分析の結果、化合物(A4−1)のMnは2900であり、Mw/Mnは1.14であった。また、化合物(A4−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認した。
【0108】
【化19】

【0109】
H−NMR δ(ppm):7.09,5.92,5.38〜5.20,3.72。
19F−NMR δ(ppm):−54.0,−77.6,−88.2〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0110】
〔例8〕
国際公開第2005/068534号パンフレットの実施例の例5に記載の方法において、化合物(D7−1)を組成物(a1−1)に変更した以外は同様にして、組成物(b1−1)を得た。化合物(A1−1)のエチルエステル基の99.9モル%以上が還元された。組成物(b1−1)は化合物(B1−1)を主成分であった。GPC分析の結果、化合物(B1−1)のMnは2900であり、Mw/Mnは1.13であった。また、化合物(B1−1)が−OCFO−構造を有さないことを確認した。
【0111】
【化20】

【0112】
H−NMR δ(ppm):3.94。
19F−NMR δ(ppm):−54.0,−80.1,−88.2〜−90.5,−135.0〜−139.0。
【0113】
〔例9〕
例4〜8で得た組成物は、C−C結合の開裂で生じた低極性成分を含む。よって、例4〜8で得た組成物を、下記のカラムクロマトグラフィ法により精製した。
粒状シリカゲル(エスアイテック社製、MS−Gel D75−120A)をR−225で希釈したものを、直径150mm、長さ500mmのカラムに充填し、高さ100mmのシリカゲル充填相を形成した。
例4〜8で得た組成物をシリカゲル充填相に投入した後、抽出溶媒としてR−225のみを流通して組成物中の低極性成分を溶出させる。ついで、抽出溶媒(R−225とHFIPまたはIPAとの混合溶媒)を用い、抽出溶媒中のHFIPまたはIPAの濃度を末端基の極性に応じて10〜100%へと徐々に高めながら目的物を溶出させた。
【0114】
〔例10〕
〔例10−1〕
精製後の組成物(a1−1)〜組成物(a4−1)のそれぞれと、精製後の組成物(b1−1)とを、主成分の化合物の量比換算で1/1質量比で混合し、溶媒(Dupont社製、Vertrel−XF)で0.01質量%に希釈して、4種の液状組成物を調製する。
【0115】
〔例10−2〕
精製後の組成物(a1−1)〜組成物(a4−1)と、精製後の組成物(b1−1)とを、主成分の化合物の量比換算で1/100質量比で混合すること以外は例10−1と同様にして4種の液状組成物を調製した。
【0116】
〔例11〕
カーボンをターゲットとして用い、Ar雰囲気中で高周波マグネトロンスパッタにより、磁気ディスク用ガラスブランクス(旭硝子社製、2.5”ブランクス)にDLCを蒸着させてDLC膜を製膜し、模擬ディスクを作製した。Arのガス圧は、0.003Torrであり、スパッタ中の投入電力密度は、ターゲット面積あたり3W/cmである。DLC膜の厚さは、30nmとした。DLC膜の表面の水接触角は40度であった。
【0117】
〔例11−1〕
例10−1で得た液状組成物に模擬ディスクを30秒間浸漬し、6mm/秒の一定速度で引き上げる。紫外線照射装置(UVP社製、UVクロスリンカー CX−2000)を用い、液状組成物が塗布された模擬ディスクに紫外線を照射し、薄膜を形成する。紫外線の波長は、184nm、253nmの混合波長であり、照射時間は15秒とする。
【0118】
紫外線照射処理で得たディスクを溶媒(Vertrel−XF)に30秒浸漬して洗浄する。洗浄の前後において薄膜の厚さをエリプソメーターにて測定する。定着性は、洗浄前の厚さに対する洗浄後の厚さを百分率で表す。定着性は70%以上である。
紫外線照射処理で得たディスクの薄膜の表面における水接触角およびヘキサデカン接触角は80゜以上である。
紫外線照射処理で得たディスクの薄膜の表面の摩擦係数は、薄膜形成前に比べ小さくなる。
【0119】
〔例11−2〕
例10−2で得た4種の液状組成物、および組成物(b1−1)(比較例)をVertrel−XFで0.01質量%に希釈した液状組成物(b1−1)について例11−1と同様にディスクを作製し、紫外線処理前、紫外線照射後の定着率およびヘキサデカン接触角を測定した。結果を表1に示す。
さらに、液状組成物(b1−1)が処理された別のディスクを、恒温炉にて100℃で1時間熱処理した後に、同様の評価を行った結果、定着率は75%であり、ヘキサデカン接触角は72度であった。
【0120】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の表面処理剤は、記録媒体(ハードディスク、8ミリビデオテープレコーダー用メタル蒸着テープ、デジタルビデオカセット用メタル蒸着テープ等。)等の表面に潤滑性を付与する潤滑剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(A)で表わされる化合物を含む、表面処理剤。
(X−)(W−)(Z−)Y ・・・(A)。
ただし、Xは、下式(X)で表される基であり、
Wは、下式(W)で表される基であり、
Zは、下式(Z)で表わされる基であり、
Yは、(x+w+z)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、
xは、1以上の整数であり、
wは、0以上の整数であり、
zは、0以上の整数であり、
(x+w+z)は、3以上の整数である。
U−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)− ・・・(X)、
−(CHCHO)−(CH−CFO(CFCFO)− ・・・(W)、
O(CFCFO)− ・・・(Z)。
ただし、Uは、紫外線領域に吸収波長を有する1価の基であり、aは、0〜100の整数であり、bは、0〜100の整数であり、cは、1〜200の整数であり、
は、HO−、HOC(O)−またはROC(O)−であり、Rは、アルキル基であり、dは、0〜100の整数であり、eは、0〜100の整数であり、fは、1〜200の整数であり、
は、炭素数が1〜20の直鎖のペルフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、gは、3〜200の整数である。
【請求項2】
式(A)で表わされる化合物が、−OCFO−構造を有さない、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
(x+w+z)が、3または4である、請求項1または2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
Yが、下式(Y−1)で表される基〜下式(Y−4)で表される基、下式(Y−1)で表される基〜下式(Y−5)で表される基、下式(Y−1)で表される基のいずれかである、請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理剤。ただし、式(Y−4)は、ペルフルオロシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を示す。
【化1】

【請求項5】
式(X)で表される基が、下式(X1)で表される基または下式(X2)で表される基である、請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤。
−CH−CFO(CFCFO)− ・・・(X1)、
−CFO(CFCFO)− ・・・(X2)。
ただし、Uは、シクロホスファゼン環、ベンゼン環またはビニル基を有する1価の基であり、Uは、アミド結合、エステル結合またはビニル基を有する1価の基であり、cは、1〜200の整数である。
【請求項6】
Uが、下式(U31)で表される基〜下式(U33)で表される基のいずれかである、請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理剤。
CH=CH(CHNHC(O)− ・・・(U31)、
HO(CHNHC(O)− ・・・(U32)、
(HO(CH−)NC(O)− ・・・(U33)。
ただし、nは、1〜3の整数である。
【請求項7】
式(W)で表される基が、下式(W1)で表される基〜下式(W3)で表される基のいずれかである、請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理剤。
HO−CH−CFO(CFCFO)− ・・・(W1)、
HOC(O)−CFO(CFCFO)− ・・・(W2)、
OC(O)−CFO(CFCFO)− ・・・(W3)。
ただし、Rは、アルキル基であり、fは、1〜200の整数である。
【請求項8】
式(Z)で表される基が、下式(Z1)で表される基である、請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理剤。
CF(CF−O−(CFCFO)− ・・・(Z1)。
ただし、mは、0〜19の整数であり、gは、3〜200の整数である。
【請求項9】
溶媒を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項10】
下式(A3−1)で表される化合物。
【化2】

ただし、c1〜c3は、それぞれ1〜200の整数である。
【請求項11】
下式(A4−1)で表される化合物。
【化3】

ただし、c1〜c3は、それぞれ1〜200の整数である。

【公開番号】特開2009−149835(P2009−149835A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59693(P2008−59693)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】