説明

表面処理電気器具のためのブラシバー

【課題】表面処理電気器具、例えば、真空掃除機のためのブラシバーを提供する。
【解決手段】本発明は、支持体と、支持体に溶接された少なくとも1つの保持部材と、保持部材によって支持体上の所定位置にクランプ締めされた少なくとも1つの剛毛タフトとを含む表面処理電気器具のためのブラシバーに関する。保持部材を支持体に取り付けるための溶接の使用は、ブラシバーの内側にモータを位置決めするために有利である支持体の壁厚の減少を考慮するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理電気器具、例えば、真空掃除機のためのブラシバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシバーは、一般的に、通常は円筒形である中空支持体及び支持体に固定された複数の剛毛タフトを含む。剛毛自体は、通常、ナイロン(PA)のような比較的耐摩耗性材料から形成されるが、経済的理由で、支持体は、多くの場合に代わりにアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はポリプロピレン(PP)のような廉価な材料から形成される。
剛毛タフトは、従来からステープル固定によって円筒体に機械的に固定されている。ステープルの使用は、通常はブラシバーの使用中に剛毛タフトを保持するのに有効であるが、この方法は、1つには、ステープルがブラシバー内に押し下げられた状態でブラシバーの通常使用中に適度にタフトを固定するために次にステープルとブラシバーの間に十分な摩擦があることを保証するために、比較的大きな壁厚を必要とする。例えば、真空掃除機の場合には、剛毛タフトは、典型的には40Nの公称引張力に抵抗するように固定され、この場合には、約8mmの局所ブラシバー壁厚が典型的に要求される。局所壁厚の増加は、支持体上の1つ又はそれよりも多くの螺旋状リブによってもたらすことができ、これらの螺旋状リブは、ブラシバーの外面における望ましくない不連続性の存在を制限するために、中空支持体の内側上を延びるように配置される。
【0003】
一部の表面処理電気器具では、ブラシバーは、モータによって駆動される。モータは、多くの場合、ブラシバーの外側に位置し、かつ通常は固定減速歯車を通じて駆動ベルトのような何らかの種類の中間トランスミッションによってブラシバーに接続される。
しかし、空間節約手段としてブラシバーの内側にモータを収容することも提案されている。この種の配置では、所定のブラシバーの壁厚は、モータ設計上のかつ特に用いることができるモータの全体サイズに対する制限ファクタになる可能性がある。従って、ブラシバーの壁厚を低減し、かつ従ってブラシバーの所定の外径に対してブラシバーの内部容積を増加させることが好ましいと考えられる。壁厚の減少はまた、同等材料の費用及び重量を低減する利点も有すると想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許番号EP1181144
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
剛毛タフトをブラシバーに固定するための改良された配置、特に、比較的薄い壁のブラシバー上で用いるのに適切な配置の提供を追求することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、支持体と、支持体に溶接又は表面結合された少なくとも1つの保持部材と、支持体上に固定された少なくとも1つの剛毛タフトとを含み、剛毛タフトが、剛毛タフト又は剛毛タフトに取り付けられた1つ又はそれよりも多くの中間アンカー要素のいずれかとの保持部材の機械的連結によって少なくとも部分的に所定位置に固定されたブラシバーを提供する。
「表面結合」により、保持部材が支持体の外側の外面上に結合されることを意味する。適切な結合方法は、例えば、接着剤結合又は固体拡散結合を含むことができる。
【0007】
保持部材を支持体に取り付けるための溶接又は表面結合の使用は、それが、ステープル固定の使用に付随する壁厚に対する従来の限界を取り除く(又は少なくとも有意に低減する)という利点を有する。その結果、比較的薄い壁の支持体を用いることができる。更に、剛毛タフトをクランプ締めするための個別の保持部材の使用は、クランプ締めが、所定位置に剛毛タフトを機械的にクランプ締めするか又はロックするために剛毛タフトの周囲の支持体を局所的に変形及び再形成する必要なく達成することができ、支持体の生成後の作業を低減する傾向があることを意味する。
【0008】
ブラシバーへの保持部材の超音波溶接は、特に適切であることが見出されているが、他の溶接法を用いることもできる。適切な場合には、溶接部の一体性は、支持体及び保持部材に対して溶接適合材料の適切な選択により制御することができる。特に、支持体及び保持部材は、同じ材料、例えば、ABS又はPPから形成することができる。それにも関わらず、タフトは、少なくとも部分的に保持部材によって機械的に所定位置に固定されるので、少なくともある程度の剛毛タフトの保持がもたらされ、これは、支持体及び保持部材に課せられる他の材料制約とは実質的に無関係である。これは、保持部材及び支持体に用いる材料の対応する溶接制約が、直接剛毛タフト自体に課せられないという利点を有する。
【0009】
剛毛タフトは、剛毛タフトが、支持体上の所定位置に部分的にのみ機械的に固定されるように、保持部材と機械的に連結しているのに加えて、保持部材又は支持体に溶接するか又はそうでなければ結合することができる。代替的に、剛毛タフトは、剛毛タフト又はアンカー要素との保持部材の上述の機械的連結によって完全に所定位置に固定することができる(すなわち、付加的に剛毛タフトを溶接するか又はあらゆる他の保持手段を提供することは必要ない)。後者の場合には、剛毛の作動的保持は、完全に機械的であり、従って、剛毛を形成するのに用いる材料とは実質的に無関係であり、これは、保持部材及び支持体に対するいずれの材料溶接制約も剛毛タフト自体に課せられないという利点を有する。従って、保持部材及びブラシバーが、ABS、PP、又はABS−PP配合物のような同じか又は類似の溶接適合材料から形成される場合、剛毛自体は、それにも関わらず、完全に異なる材料、例えば、ナイロンのような比較的耐摩耗性材料から形成することができる。
【0010】
剛毛タフトと保持部材の間の機械的連結の性質は、変えることができる。例えば、剛毛タフトは、保持部材と支持体の間でクランプ締めすることができ、保持部材は、剛毛タフトの上にオーバーモールドすることができ、又は剛毛タフトは、保持部材の相対する部分間で機械的にクランプ締めすることができる。
保持部材は、ブラシバーの使用中に過度の曲げに対して剛毛を横方向に支持するために剛毛タフトの周囲にカラーを形成することができる。カラーは、剛毛タフトの一部分の周囲に延びていればよいが、実際には、曲げに対して多方向支持をもたらすために、カラーが完全に剛毛タフトを取り囲むことが特に有利であると考えられている。
【0011】
剛毛タフトは、保持部材の孔を通って延びることができる。従って、保持部材は、剛毛タフトの周囲に連続表面を形成する。保持部材は、円形又は非円形とすることができる座金の形状にすることができる。同じく、孔自体は、円形にする必要はない。
アンカー要素は、剛毛タフトに溶接するか又はそうでなければ結合することができ、又はそれは、剛毛の基部を互いに接合することにより、例えば、場合によっては高温ガスを用いて剛毛を溶融することによって形成することができる。
剛毛タフトは、剛毛の複数の対を含むことができ、剛毛の各対は、アンカー要素又は保持部材の一部の下でループ状になった単一剛毛フィラメントによって形成される。
【0012】
特定の配置では、アンカー要素は、ロックピンの形態であり、剛毛タフトは、剛毛の複数の対を含み、剛毛の各対は、ロックピンの下でループ状になった単一剛毛フィラメントによって形成される。予備試験は、この配置が、剛毛タフトの特に安全な保持をもたらすことを示している。ロックピン自体は、様々な形状を取ることができる。特に、それは、あらゆる断面形状を有することができ、曲線、直線とすることができ、又は曲線部及び/又は直線部を含むことができる。
【0013】
本発明の別の態様により、支持体及び支持体上に固定された1つ又はそれよりも多くの剛毛タフトを有するブラシバーを製造する方法を提供し、本方法は、保持部材を支持体上に溶接又は表面結合することによって少なくとも1つの剛毛タフトを固定する段階と、保持部材を直接に剛毛タフトと又は結果的に所定位置に剛毛タフトを係止する中間アンカー要素と機械的に連結する段階とを含む。
保持部材は、超音波溶接を用いて支持体に溶接することができる。
【0014】
本発明の更に別の態様により、アンカー要素又は保持部材を剛毛タフト上にオーバーモールドするための装置を提供し、装置は、剛毛の束を保持するための半径方向に延びる剛毛保持部分と、アンカー要素又は保持部材の公称形状に適合するように構成された外側オーバーモールド部分とを組み込む1つ又はそれよりも多くの型穴を有する遠心モールドを含む。
本発明によるオーバーモールド装置は、アンカー要素又は保持部材を剛毛タフト上にオーバーモールドする方法に用いることができ、本方法は、型穴の剛毛保持部分に剛毛の束を置く段階と、その後に熱可塑性樹脂を型穴に射出する段階と、同時に及び/又はその後に、熱可塑性樹脂を遠心作用下で型穴のオーバーモールド部分内に押し込むためにモールドを回転させる段階とを含む。
ここで、添付図面を参照して一例として本発明の実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ブラシバーの斜視図である。
【図2a】アンカー要素を用いてブラシバーに剛毛タフトを固定するための配置を示す概略断面図である。
【図2b】アンカー要素を用いてブラシバーに剛毛タフトを固定するための配置を示す概略断面図である。
【図3】剛毛曲げ疲労に対して剛毛タフトを支持する際のアンカー要素のカラー部分の効果を示す概略断面図である。
【図4】アンカー要素の代替の形態を示す概略断面図である。
【図5】剛毛タフト上にアンカー要素をオーバーモールドするための装置の一部を示す概略平面図である。
【図6a】ロックピンの形態のアンカー要素を用いてブラシバーに剛毛タフトを固定するための更に別の配置を示す分解斜視図である。
【図6b】図6aの分解組立図に示す配置の概略断面図である。
【図7】ブラシバーの支持体に剛毛タフトを固定するための更に別の配置を示す分解斜視図である。
【図8】剛毛タフトが保持部材の相対する部分間に機械的にクランプ締めされているブラシバーの支持体に剛毛タフトを固定するための更に別の配置を示す概略断面図である。
【図9】保持部材で剛毛タフトをクランプ締めするための工程を示す概略断面図である。
【図10】配置の様々な構成要素部分に適切な寸法の例を与える図2に示す配置の概略断面図である。
【図11】配置の様々な構成要素部分に適切な寸法の例を与える図6に示す配置の概略断面図である。
【図12】配置の様々な構成要素部分に適切な寸法の例を与える図8に示す配置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
説明する実施形態では、対応する特徴には、同じ参照番号が与えられる。
図1は、円筒支持体2及び円筒支持体2に固定された複数の剛毛タフト3を含むブラシバー1を示している。表面処理電気器具の使用時には、円筒支持体2は、典型的には、モータによって駆動される回転軸Aの周りで回転するための掃除機ヘッド又は床ツールの内側に装着される。しかし、モータも掃除機ヘッド又は床ツールのいずれの他の特徴も図1には示されていない。
【0017】
剛毛タフト3は、ブラシバーの使用中に最大負荷の下で支持体2からの脱離に抵抗するために十分に固定すべきである。典型的な真空掃除機の場合には、これは、剛毛タフトが、タフト当たり約九千五百万回の衝撃(これは、単に一例として、ブラシバーに対する仮定した600時間の作動寿命の75%及び約3500rpmのブラシバー速度に基づいている)を通して約40Nの引張力に抵抗し、及び/又は曲げ疲労破壊に抵抗することができることに同等であると考えられる。
【0018】
図2a及び2bは、剛毛タフト3を支持体2に固定するための第1の配置を示している。ここで、剛毛タフト3の個々の剛毛は、これらの基部で互いに接合され、支持体2の外面上の凹部5に着座している拡大根元部分4を形成する。剛毛タフト3は、凹部5内の所定位置で拡大根元部分4を機械的にロックするために支持体2に溶接された保持部材6によって支持体2上の所定位置にクランプ締めされ、剛的に剛毛タフト3を支持体2上に固定する。拡大根元部分4は、従って、剛毛タフト3を支持体2上の所定位置に保持するためのアンカー要素として作用する。
【0019】
保持部材6は、座金の形状である。この場合には、保持部材は、環状座金の形状であるが、保持部材は、正方形座金のような非円形座金の形状にすることができる。剛毛タフト3は、保持部材6が実質的に剛毛タフト3の周囲でカラーを構成するように、保持部材6の中心孔を通って突出する。剛毛タフトの周囲のカラーの形成は、剛毛支点を剛毛の先端の近くに実質的にシフトさせることによって剛毛タフト3の横方向曲げに抵抗し、かつ適切な場合にブラシバー1の使用中に剛毛タフト3の曲げ疲労破損の危険を低減するのに都合良く用いることができる。この効果は、図3に示されており、これは、右にカラーのない場合の剛毛の曲げ及び左にカラーがある場合の剛毛の曲げを示す分割図であり、カラーは、保持部材6上の環状リップ6aによって構成される。孔自体は、円形にする必要はなく、それは、例えば、三角形、正方形、又は長円形とすることができる。
【0020】
凹部5は、保持部材6を収容するように座ぐりされ、保持部材は、それぞれの座ぐり5bによって形成された環状段部5a上に着座する。座ぐり5bの深さは、実質的に保持部材6の深さと同じであり、これは、剛毛タフト3の領域において支持体2の外面上に不連続性が殆どないか又は全くないように、保持部材6の上面が実質的に支持体2の外面に続いているという利点を有する。図2a及び2bに示す配置では、座ぐり6aは、拡大根元部分4の深さに適合するように保持部材6の下側に付加的に形成され、座ぐり6aは、拡大根元部分4が、段部5aのレベルより下に着座する十分に浅い深さになるように構成される場合、必要ではないとすることができる。保持部材は、それが最初に関連の座ぐりを含むように好都合に形成することができ、この意味で、用語「座ぐり」は、保持部材及び/又は支持体の「生成後」穿孔によって形成される形態に限定されるように想定されないことが認められるであろう。
拡大根元部分4は、剛毛を一緒に融合することによって、例えば、高温ガス又はホットプレートを用いて形成することができる。剛毛束自体の上に拡大部分を形成するための高温ガスの使用は、欧州特許番号EP1181144(Schiffer)に説明されており、予備試験は、同様の方法が本発明の配置との関連でアンカー要素4を形成するのに用いることができることを確認している。
【0021】
アンカー要素の代替の形態を用いることができる。図4では、「アイスホッケーパック」16の形態のアンカー要素は、sonotrodeを用いて従来の方式で剛毛タフト3に超音波で突き合わせ溶接される。アンカー要素を形成するこの方法は、それが比較的速いという利点があり、パック16は、一般的に1秒未満内に剛毛に音波溶接することができるが、予備試験は、得られた剛毛タフト3が、ブラシバー1の使用中に曲げ疲労破損をより受けやすくなる可能性があることを示し、この場合には、カラー手段を上述のように剛毛に対する曲げ疲労を低下させるのに用いることができる。曲げ疲労に対する抵抗の低下は、溶接の領域において捕捉されている気泡の結果とすることができ、従って、溶接工程中に気泡の形成を最小にすることによって、例えば、溶接区域に入る水蒸気の量を低減することによって曲げ疲労を低下させることができると考えられる。
【0022】
アンカー要素は、代替的に、剛毛タフト3を形成する剛毛フィラメント上にオーバーモールドすることができる。図5は、遠心モールド7を用いてアンカー要素をオーバーモールドする方法を示している。モールド7は、図5に示す底部型板7aと、型板7aとの密封係合するように構成されて複数の型穴8(図5に示す配置の場合は16の型穴8)を形成する図示していない上部型板とを含む2部射出モールドである。各型穴8は、半径方向剛毛保持部分8a及びアンカー部分の公称形状に適合する外側オーバーモールド部分8bを含む。型穴8は、次に、上部型板において射出スプルー(図示せず)と連通するそれぞれのランナー9と各々流体連通状態にある。
モールド7は、軸Bの周りで高速回転するように装着される。
【0023】
剛毛タフトは、各型穴8の内側に半径方向に配置され、剛毛保持部分8aの壁によって所定位置に保持される。熱可塑性樹脂が、次に、上部型板において射出スプルーを通じてランナー9に射出され、モールド7全体は、熱可塑性樹脂が遠心作用下で外向きに押し出されてオーバー型穴8bを満たすように軸Bの周りで回転する。この方法は、半径方向内向きに剛毛タフトに沿った望ましくない樹脂の「クリープ」が、モールド7の遠心作用によって対抗されるという利点を有する。
基本的に同じ工程を用いて、保持部材を剛毛タフト上にオーバーモールドすることができ、オーバーモールド部分は、アンカー要素でなくて保持部材の公称形状に対応する形状にされる。このようにして、オーバーモールドを用いて、保持部材と剛毛タフトの間に機械的連結を設けることができる。
【0024】
図6a及び6bは、アンカー要素を用いて剛毛タフトを固定するための異なる配置を示している。この配置では、アンカー要素は、鋼ロックピン10の形態であり、剛毛タフト3は、剛毛の複数の対(例えば、3a及び3b)を含み、剛毛の各対は、ロックピン10の下の剛毛フィラメント(個々のフィラメントは、図5に示されていない)をループ状にすることによって形成される。
保持部材6は、図2a及び2bの保持部材6と類似の方式で支持体に溶接され、これは、ロックピン10を支持体2に対してクランプ締めし、剛毛フィラメントを所定位置に捕捉し、従って、剛毛タフト3を支持体に機械的にロックする。
【0025】
凹部11は、ロックピン10の下の剛毛フィラメントのループ状部分を収容するために支持体2内に切り込まれる。凹部11は、保持部材6を収容するために凹部5に類似の方式で座ぐりされる(図2a及び2b参照)。保持部材6aの下面には、次に、ロックピン10を収容するために座ぐり6aが設けられる。ロックピン10は、凹部11の座ぐり11bによって形成された段部11aを圧接することができるが、これは、ロックピン10が、剛毛フィラメントを所定位置に捕捉して剛毛タフトを支持体2に機械的にロックするならば必須とは考えられない。
図6a及び6bに示す配置のアンカー要素は、ロックピンを必要とせず、特に、剛毛フィラメントがアンカー要素の下でループ状にすることができるという条件で、他の形態のアンカー要素を用いることができる。
【0026】
図7は、図6a及び6bに示す配置と類似するが、アンカー要素を組み込まない配置を示す。代わりに、保持部材15は、仕切り15cによって分離された2つの(半円形の)孔15a、15bを組み込んでいる。剛毛タフトは、剛毛の複数の対を含み、剛毛の各対は、2つの剛毛がそれぞれ孔15a及び15bを通って延びるように、仕切りの下の剛毛フィラメントをループ状にすることによって形成される。
【0027】
保持部材6は、ABS、PP、又はABS−PP配合物のような金属又はプラスチックを含むあらゆる適切な材料から形成することができる。支持体2も、ABS、PP、又はABS−PP配合物のような金属又はプラスチックから形成することができ、かつ保持部材6と支持体2の間で良好な溶接一体性を保証するために保持部材と同じ材料から形成することができる。剛毛タフトは、保持部材によって所定位置に機械的にロックされ、従って、溶接制約を受けず、その結果、剛毛自体は、全く異なる材料、例えば、ナイロンのような比較的耐摩耗性材料から形成することができる。
【0028】
剛毛タフトが、保持部材と支持体の中間でクランプ締めされることは必須ではなく、アンカー要素を用いることも必須ではない。図8は、アンカー要素自体が存在せず、剛毛タフト3が、支持体2に溶接された保持部材12の相対する部分間の所定位置にクランプ締めされた異なる配置を示している。
保持部材12は、超音波溶接工程を用いて支持体に溶接することができる。更に、保持部材12及び支持体2は、保持部材12と支持体2の間の強力な溶接を容易にするために同じ材料、例えば、ABS、PP、又はABS−PP配合物のような金属又はプラスチックから形成することができる。保持部材12は、支持体2の凹部で密封することができ、図8に示す配置では、保持部材12は、支持体2の外面から僅かに突出して立っているが、これは必須ではない。
【0029】
保持部材12は、座金のような形状にされるのではなく、ブラインド中心内腔12a(中心貫通孔を含む図5の座金形状保持部材6を参照)で形成される(又は設けられる)。剛毛タフト3は、保持部材12のこの中心内腔12a内に挿入され、中心内腔12aの壁を変形することによって所定位置に挟んでクランプ締めされる。中心内腔12aの壁を変形するのに適切な配置は、図9に示されている。ここで、剛毛タフト3は、剛毛クランプ締め13に保持され、プレス機14を用いて内腔12aの公称上部のネッキングによって締め付けられ、保持部材12のそれぞれの端部を平坦にする。保持部材12は、保持部材12の平坦化端部が、保持部材12の占有区域を超えて延びないことを保証するために、最初に面取り側面を有して形成される。保持部材12が支持体2上に組み込まれる場合には、面取りの角度は、保持部材12の平坦化端部が凹部の口部を満たすように設定され、これは、保持部材12と凹部の壁との間のデブリの捕捉を防止するのに役立つことができる。
【0030】
プレス機14は、高温又は低温プレス機とすることができる。保持部材12の変形を助ける高温プレス機の使用は、保持部材12がプラスチックから形成される場合に特に適切とすることができる。他方、保持部材の冷間加工は、保持部材が金属から形成される場合に適切とすることができる。
剛毛タフトの挟みクランプ締めは、ブラシバー1の使用中に剛毛タフトを保持部材12に機械的にロックするのに十分であるとすることができ、剛毛及び保持部材12に対する異種材料の使用を可能にすると考えられる。剛毛が、ブラシバーの使用中に個々に解かれる傾向があることが見出されている場合、アンカー要素は、任意的に剛毛タフトの根元に(保持部材12のネック部分より下に)設けられ、剛毛タフト3を強固にすることができる。アンカー要素は、上述の方法のいずれを用いても形成することができ、例えば、剛毛の根元は、高温ガス法を用いて互いに融合することができる。
【0031】
挟みクランプ締めが、剛毛タフトを支持体2にロックするのに十分でない場合、剛毛タフトは、付加的に保持部材12に溶接することができる。例えば、図8に戻って参照すると、保持部材12は、プレス機14としてsonotrodeを用いて付加的に剛毛タフト3に突き合わせ溶接することができる。剛毛タフト3が保持部材12に溶接される場合は、保持部材12による剛毛タフト3の挟みクランプ締めは、それにも関わらず付加的に剛毛タフト3を保持部材12に固定する。剛毛タフト3の保持は、従って、少なくとも部分的に機械的であり、剛毛タフト3と保持部材12の間の必要な溶接の強度を低下させ、次に、剛毛タフト3及び保持部材12に対する材料制約を緩和する。その結果、保持部材12及び剛毛は、ブラシバー1の使用中に剛毛タフト3の保持に過度に影響を与えることなく異なる材料から形成することができると考えられる。例えば、剛毛は、ナイロンから形成することができるのに対して、保持部材は、PA−ABSから形成することができる。
【0032】
本発明は、ブラシバーの局所壁厚の有意な減少を考慮するものである。ホチキスで留めたブラシバーに対して8mmの典型的な局所壁厚を仮定すると、予備試験は、本発明の配置を用いることにより、支持体の内面から保持部材の外面まで測定された局所壁厚の40%減少よりも大きい減少で同等の性能を維持することができることを示している。特に、満足のいく結果は、以下の寸法を用いて得られている(図10、11及び12参照)。
支持体2の壁厚(a):2.0mm
保持部材12の厚み(b):2.0mm
保持部材12の直径(c):8.5mm
座ぐり12aの深さ(d):1.5mm
保持部材6の直径(f):8.5mm
ロックピン10の長さ(g):〜6.0mm
ロックピンの直径(Φpin):0.5mm
カラー部分6aの深さ(h):0.5mm
保持部材6の深さ(i):1.5mm
カラー部分6aの直径(l):4.5mm
凹部5の幅(m):6.0mm
上記寸法は、一例として提供され、限定することを意図していない。
【符号の説明】
【0033】
1 ブラシバー
2 円筒支持体
3 複数の剛毛タフト
A 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
少なくとも1つの剛毛タフトと、
を含み、
前記剛毛タフトは、前記支持体に溶接又は表面結合された保持部材によって該支持体上に固定され、
前記剛毛タフトは、i)前記保持部材と前記支持体の間の所定位置に機械的にクランプ締めされるか、又はii)該保持部材と該支持体の間に機械的にクランプ締めされた1つ又はそれよりも多くの中間アンカー要素によって所定位置に係止されるかのいずれかである、
ことを特徴とするブラシバー。
【請求項2】
前記アンカー要素は、前記剛毛タフトに溶接されることを特徴とする請求項1に記載のブラシバー。
【請求項3】
前記剛毛タフトを形成する剛毛の基部が、互いに接合されて前記アンカー要素を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブラシバー。
【請求項4】
前記剛毛タフトは、剛毛の複数の対を含み、剛毛の各対は、前記中間アンカー要素又は保持部材の一部の下でループ状になった単一剛毛フィラメントによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のブラシバー。
【請求項5】
前記中間アンカー要素は、ロックピンであることを特徴とする請求項4に記載のブラシバー。
【請求項6】
前記剛毛タフトは、前記保持部材の1つ又はそれよりも多くの孔を通って延びることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のブラシバー。
【請求項7】
前記保持部材は、座金の形状であることを特徴とする請求項6に記載のブラシバー。
【請求項8】
前記保持部材は、ブラシバーの通常使用中の過度の曲げに対して前記剛毛を横方向に支持するための支持カラーを前記剛毛タフトの周囲に形成することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のブラシバー。
【請求項9】
前記保持部材及びブラシバーは、実質的に同じ材料から又は材料の溶接適合対から形成されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のブラシバー。
【請求項10】
支持体と該支持体上に固定された1つ又はそれよりも多くの剛毛タフトとを有するブラシバーを製造する方法であって、
i)保持部材と支持体の間の所定位置に剛毛タフトをクランプ締めするか、又はii)保持部材と該支持体の間にクランプ締めされた中間アンカー要素を用いて所定位置に該剛毛タフトを係止するかのいずれかにより、少なくとも1つの剛毛タフトを固定する段階と、
前記保持部材を前記支持体に溶接又は表面結合する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
アンカー要素又は保持部材を剛毛タフト上にオーバーモールドするための装置であって、
剛毛の束を保持するための半径方向に延びる剛毛保持部分と、アンカー要素又は保持部材の公称形状に適合するように構成された外側オーバーモールド部分とを組み込む1つ又はそれよりも多くの型穴を有する遠心モールド、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11の装置を用いてアンカー要素又は保持部材を剛毛タフト上にオーバーモールドする方法であって、
剛毛の束を型穴の剛毛保持部分に置く段階と、
その後に熱可塑性樹脂を前記型穴内に射出する段階と、
同時に及び/又はその後のいずれかに、遠心作用下で前記熱可塑性樹脂を前記型穴のオーバーモールド部分内に押し込むためにモールドを回転させる段階と、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−125859(P2011−125859A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281351(P2010−281351)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(508032310)ダイソン テクノロジー リミテッド (286)
【Fターム(参考)】