説明

表面化粧方法

【課題】化粧用の玉砂利の整列を簡単におこなえるようにする。
【解決手段】アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を加えた固結材に珪砂と水を加えて混練りしたモルタルを下地2上に厚さ11mmに塗布してモルタル層3を形成し、10×10mmの網目のネット4を敷き、玉砂利5をネット4の上に撒き、手で均すことによってネット4を利用して玉砂利5が重ならないように相互に近接させて整列した状態とした。鏝で玉砂利5をモルタル内に押し込み、目地に浮き上がったモルタル(アマ)を刷毛で均して玉砂利5の表面を被覆した。約1時間経過後に内部が凝結し、外見的に表面が乾燥した状態になったところで水を含ませたスポンジで表面を拭き取って玉砂利5を露出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の表面に玉砂利等の化粧材を露出させる方法に関し、玉砂利等の化粧材の整列を簡易にできるようにして効率よく表面化粧工事をおこなえるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
無機的なコンクリート表面に装飾を施して美観を向上させる方法として、洗い出し仕上げがある。これは、コンクリートを打設した後に仕上げ面のセメントペーストの硬化を遅らせ、洗い流してコンクリート表面に骨材などの化粧材を露出させるものである。同様な表面化粧方法には、研磨仕上げ、ブラスト仕上げなどがあるが、洗い出し仕上げは、設備を必要としないので低コストであり、簡易に施工できるというメリットがある。
【0003】
洗い出し仕上げは、セメントの凝結硬化を遅らせる凝結遅延剤を用いる方法、未硬化のコンクリートを水洗いする方法、コンクリート硬化後に酸洗いする方法などがある。
また、水を使用しない洗い出し工法も特許文献1及び特許文献2にあるように提案されている。
【特許文献1】特開平10−36154号公報
【特許文献2】特開2003−49402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメントモルタルを一定厚さに塗布し、化粧用の石をモルタル表面に敷き並べてモルタル内に押し込むことがおこなわれているが、玉石等を相互に重なることなく近接した状態に敷き並べるには作業員が石を手でひとつひとつ並べるのが確実な方法であり、手間がかかっていた。
図4に示す、仕切り51によって枡目に区画され、底板52が抜き差し可能な敷き並べ補助具50が提案されているが、底板52を抜く際に玉石5が移動して仕切り51に寄ってしまい、升目状に大きな目地が形成され、見た目がよくなかった。
そこで、本発明は、手間をかけることなく簡単に玉砂利等の化粧用の石を密着状態に簡単に敷き並べることができるようにし、施工効率を向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
セメントモルタルを一定厚に塗り、このモルタル表面にネットを敷いて化粧用の石をネットの上に撒き、化粧用の石がネットによってモルタルに接触しないことを利用して敷き均すことによって相互に近接した状態に整列させ、化粧用の石をモルタル内に押し込んで表面を化粧する方法である。
また、アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結材に水と珪砂を加えて混練したモルタルを化粧面に一定厚さに塗り、モルタル表面にネットを載せ、玉砂利等の化粧用の石をネットの表面に散布し、化粧用の石がネットによってモルタルに接触しないことを利用して敷き均し、相互に近接した状態に敷き並べることによって整列状態とする。整列された化粧用の石をモルタル内に押し込み、目地から浮き上がったモルタルを刷毛等で均して化粧用の石の表面をモルタルで覆い、モルタル内部が凝結して化粧用の石が移動しない程度に固定されたところで、表面のモルタルを拭き取って化粧用の石の表面を露出させるものである。
【0006】
化粧用の石を整列させるためのネットは、石の大きさにもよるが、直径が10〜15mm程度の石を整列させるには、網目が10×10mm程度の耐アルカリ性のものを使用する。ネットの材質は、例えば、ビニロン、ガラス繊維、ポリエチレン等のネットであり、市販のものが使用できる。
セメントモルタルはポルトランドセメント等を使用する。洗い出し作業を短時間で終了させる場合には、アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結材に水と珪砂を加えて混練したモルタルを使用する。
アルミナセメントに添加する凝結遅延剤は、スターチエーテル、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール(ポバール)、更には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸、ホウ酸、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、砂糖、糖類誘導体等を用いることができる。また、ケイフッ化物やオキシカルボン酸塩等を主成分とするものも同様に用いることができる。
凝結遅延剤は、一般にそれ自身や反応物がセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせると考えられるものであり、凝結遅延剤の量は、作業時間等を考慮して添加量を定める。
【0007】
硬化促進剤は、石膏、無水石膏、半水石膏、消石灰、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、塩化カルシウムや硝酸カルシウム等を単独または組合せて用いてもよい。硬化促進剤の添加量は、アルミナセメント100重量部に対して無水石膏の場合20〜70重量部である。硬化促進剤も、凝結遅延剤との組合わせと、作業時間を考慮して添加量を定める。
【0008】
化粧用の石を形成したモルタル層に押し込む際には、鏝で化粧用の石を押しつけるか、または、アルミスリッパを履いて化粧用の石の上に乗って体重をかけて押し込む。
化粧用の石をモルタル内に押し込んだ際に目地に浮き上がったモルタル(アマ)を表面全体に均すための道具としては刷毛を使用する。施工現場の気温が高い場合など、表面が急速に乾燥してヒビ割れが生ずることがあるので、この場合は水をかけて刷毛でこすりひび割れを修復する。アマを平坦に均すことによって化粧用の石の目地の深さを均等化でき、見た目がよくなる。
モルタル表面の拭き取りは、スポンジに水を含ませておこない、拭き取ったモルタルは水で流してスポンジを清浄にして再使用する。
【0009】
アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結材を使用した場合、乾燥または半乾燥状態となったモルタルの表層をスポンジで拭き取ることによって化粧用の石を表面に露出させる一方、内部では硬化促進剤の作用によって普通セメントに比較して短時間で高い強度を発現させており、表層の拭き取り作業の際に化粧用の石が剥がれ落ちることがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧用の石をモルタル層の上に敷いたネットを利用して整列させるものであり、短時間で化粧材をモルタル層の表面に敷き並べることができるので、作業の効率化が図れ、洗い出し仕上げを効率よく施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施例
図1(1)に示すように、玉砂利の化粧面を形成するコンクリート1の表面に高圧洗浄機で高圧水を供給してデッキブラシで清掃すると共に表面を湿潤状態とし、化粧層の水分が下地に急激に吸水されるのを防止して接着の安定性を高める。
コンクリート表面にアルミナセメントを主剤とした固結材にアクリル系エマルジョンを混合したペーストを下地2として鏝で均一に1〜2mmの厚さに塗布した。
【0012】
下地2の上に、図3に示す配合例のアルミナセメント、凝結遅延剤、硬化促進剤からなる固結材、細骨材としての珪砂、更に、表面を色彩豊かにするための無機顔料の混合物100重量部に水25〜50重量部を加えハンドミキサーで混練りしてモルタルを得た。
【0013】
この固結材のモルタルを下地2の上にコテ塗りし、定規を利用して11mm厚のモルタル層3を形成した。
図2に示すように、モルタル層3の上にガラス繊維性の10×10mmの網目のネット4を設置した。ネット4の周縁は、モルタル層3の縁から少なくとも20mm(L)あけて敷く。これは、玉砂利をモルタル層内に押し込んだときにネット4の周縁部がモルタル層3の表面に突出しないようにするためである。
【0014】
図1(2)に示すように、モルタル層3の形成後30分以内に粒度10〜30mmの玉砂利5をネット4の上に撒き、手で均すとネット4によって玉砂利5の重ねあわせがなく、図1(3)に示すように、整列されて近接状態に敷き並べられる。図1(4)に示すように玉砂利5を木鏝やタタキ板またはアルミスリッパを使用してモルタル層3内に押し込み、目地から盛り上がってきたモルタル(アマ)を刷毛で均し、玉砂利表面をモルタル(アマ)で被覆した。
【0015】
約1時間経過後、モルタル層3の内部が凝結し、玉砂利に力を加えても移動しない状態であることを確認し、スポンジに水を含ませて表面を拭き取ると表面のモルタル(アマ)は除去され玉砂利が露出した状態となり、玉砂利が敷き詰められた洗い出し仕上げの状態となる。目地の深さは、スポンジで表面を拭き取る際に調整することができる。
【0016】
アルミナセントを使用した固結材は、混練りから30分程度で凝結が開始し、終結が3〜4時間の短時間で終了し、また、4時間程度で十分な曲げ強度や圧縮強度が得られるものであり、珪砂、フライアッシュ等は、モルタル層に要求される強度に応じて増減して配合する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の工程説明図。
【図2】ネットをモルタル層の上に敷いた状態の斜視図。
【図3】固結材の一例の配合例。
【図4】従来の玉石の敷き並べ補助具の平面図。
【符号の説明】
【0018】
1 化粧面
2 下地
3 モルタル層
4 ネット
5 玉砂利(化粧用の石)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントモルタルを一定厚に塗り、このモルタル表面にネットを敷いて化粧用の石をネットの上に撒き、化粧用の石を敷き均して相互に近接した状態に整列させ、化粧用の石をモルタル内に押し込む表面化粧方法。
【請求項2】
アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結材に水と珪砂を加えて混練りしたモルタルを一定厚に塗り、このモルタル表面にネットを敷いて化粧用の石をネットの上に撒き、化粧用の石を敷き均して相互に近接した状態に整列させ、化粧用の石をモルタル内に押し込み、目地から浮き上がったモルタルを均して化粧用の石を覆い、化粧用の石が移動しない程度にモルタルが硬化したところで表面のモルタルを拭き取って化粧用の石を露出させる表面化粧方法。
【請求項3】
請求項1または2において、ネットの周縁をモルタルの縁から少なくとも20mm内側とする表面化粧方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−293286(P2009−293286A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148298(P2008−148298)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【特許番号】特許第4268676号(P4268676)
【特許公報発行日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(591076039)株式会社ヤブ原 (2)
【出願人】(500285370)株式会社ハネダ化学 (2)
【Fターム(参考)】