説明

表面増強ラマン散乱を利用した生化学物質の検出方法

【課題】分析対象が含む生化学物質の存在または含量を検出するための表面増強ラマン散乱を利用した生化学物質検出方法を提供する
【解決手段】単結晶体の貴金属ナノワイヤ表面に物理的に分離された多数個の貴金属ナノ粒子が分析対象物と結合させて形成された多数個のホットスポットより、表面増強ラマン散乱スペクトルを得て、高感度、高再現性、高信頼度、高精密度を有して、マルチプレックス検出が可能な生化学物質を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象が含む生化学物質の存在または含量を検出するための表面増強ラマン散乱を利用した生化学物質検出方法に関し、詳細には、単結晶体のナノワイヤ表面に物理的に分離された多数個のナノ粒子が結合して形成された多数個のホットスポットにより、高感度、高再現性、高信頼度、高精密度を有して、マルチプレックス検出が可能な生化学物質検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子と蛋白質に対する研究は、病の診断を予測できる新しい生物学的マーカー(biomarker)類推に機会を提供した。特に、癌のような疾病は、発病初期に正確な診断を通じて、病の完治が可能であり、再発を防ぐことも可能になる。したがって、このような抗原抗体反応による生物学的標識物の早期検出のための診断用センサー開発に対する研究が活発に進行されている。このようなセンサーは、医療診断の他にも、保健、環境、軍事、食品などの多様な分野に適用が可能であって、非常に多様な形態の研究が進行中である。
【0003】
微量抗原の検出のためには、光学的な装置を使用して抗原の有無を調べる方法があるが、時間と費用及び努力がかかるといった短所にもかかわらず、現在まで最も広く使用される方法である。最近は、抗原の有無によって吸収される光の波長が変わることを利用した方法(Chou et al., (2004) Biosens. Bioelectron. 19, 999-1005)と、測定しようとする抗原の有無によって、抗原と相補結合できる表面を有したナノ粒子の変化を通じて吸収される光の波長が変わる方法(Alivisatos et al., (2004) Nat. Biotechnol. 22, 47-52, Namet al., (2003) Science. 301, 1884-1886; 米国特許第6,974,669)などが報告された。
【0004】
SERS(Surface-Enhanced Raman Scattering, 以下SERS)分光法は、金、銀などの金属ナノ構造表面に分子が吸着される時、ラマン散乱の強度が急激に10〜10倍以上増加される現象を利用した分光法である。現在、非常に速い速度で発展しているナノ技術と結合し、たった一つの分子を直接測定可能な高感度の技術に発展可能であり、特にメディカルセンサーとして緊要に使用されると期待を浴びている。
【0005】
このようなSERSセンサーは、分子が吸着した時抵抗が変わる電気的ナノセンサーに比べて大きく技術的優位に立っているが、その理由は、抵抗センサーは、測定値がスカラーであるのに対し、SERSセンサーは、ベクター量のデータである全体のスペクトルを得るため、一回の測定で獲得する情報量が著しく大きいからである。
【0006】
KneippとNieらは、凝集されたナノ粒子を利用し、ナノ粒子に付いている分子を単分子水準でSERS測定が可能であるということを最初に報告した。以後、多様なナノ構造(ナノ粒子、ナノシェル、ナノ線)を利用したSERS増強現象に対する研究が報告された。このような高感度のSERS現象をバイオセンサー開発に利用するために、Mirkin研究チームは、最近DNAと結合されたナノ粒子を利用した高感度DNA分析に成功した。
【0007】
高感度DNA分析と共に現在SERSセンサーを利用して、アルツハイマー病あるいは糖尿病を始めた多様な疾病の初期診断を行おうとする研究が活発に進行されている。
【0008】
即ち、SERS現象は、ラマン分光法が提供した分子の振動状態、あるいは分子構造に対する情報を直接提供するという面で、レーザー蛍光分析法のような既存の測定技術に比べて高選択性及び高情報性を有する測定技術と言えて、超高感度の化学的/生物学的/生化学的分析のための強力な分析方法として認められている。
【0009】
このような長所にもかかわらず、SERS現象は、1)メカニズムが完璧に理解されていないばかりか、2)正確に構造的に定義されているナノ物質合成及び制御の困難性と、3)スペクトルを測定する時使用される光の波長、偏光方向による増強効率の変化などにより、再現性及び信頼性側面で解決すべき問題が多く、これは、ナノ−バイオセンサーの開発及び商用化を始めとしたSERS現象の応用に大きい課題として残っている。
【0010】
このような問題点を解決するために、構造的に正確に定義されているナノ物質(Well-defined nanostructure)の光学的性質に対する理解と、これを利用してSERS現象を正確に制御するための研究の必要性が非常に大きくなっている状況である。
【0011】
Moskovits、Halas、van Duyneの研究チームは、最近正確に定義された多様なナノ構造を利用してSERS増強を制御及び最適化できることを報告して、MoskovitsチームとYangチームは、金属ナノ線の群集体を利用してSERS増強を調節できることを報告して、2006年には、Moernerの研究チームが、電子ビームリソグラフィーを利用して人工的なSERS増強構造であるナノ蝶ネクタイを作るのに成功した。
【0012】
現在ナノ粒子を利用したSERSセンサーが最も一般的に研究されており、Binger、Bauerらにより既に提案されたSERS基盤構造は、平坦な金属表面上の金属性フィルム(以下、MIF)からなるオプティカル構造である。MIFは、ランダム2次元アレイの金属粒子からなり、最大寸法は、それぞれ数nmである。上記の構造では、金属粒子の形状が多様であり、その配列が確率によるランダム構造を有するため、規定された構造を有することができず、SERSセンサーの再現性及び正確性を獲得することが難しく、金属粒子の形状の多様性により、均質な散乱強度が得られない短所がある。
【0013】
上記のMIF構造を一例にSERSセンサーの問題点を記述したが、これは、金属ナノ粒子を利用したSERSセンサーの一般的な問題であって、5nm未満への金属粒子の大きさの本質的な制限として規定されて確立された、よく定義された構造(Well-defined structure)決定のためには、金属粒子の形状及び金属表面のパラメーターの制御不能等が難題として残っている現実である。
【0014】
金属粒子ではない金属ナノワイヤ、特にAgナノワイヤを利用してSERSセンサーを製造しようとする研究も進行されている。
【0015】
Taoら(Nano. Lett. 2003, 3, 1229)は、AgナノワイヤをLangmuir−Blodgett法を利用して、Siウェハー上に多量のAgナノワイヤからなる単層(monolayer)を製作して、これを利用してSERS測定をした。たとえ、Taoらが提案したセンサーの構造及び製作方法がAgナノワイヤを利用して、単層を構成するAgナノワイヤの長軸がある程度整列された方向を有したのにもかかわらず、再現性のあるSERS結果が得られない限界があった。
【0016】
Jeongら(J. Phys. Chem. B 2004, 108, 12724)は、鋳型体(template)を利用してAgナノワイヤのフラットアレイ(flat array, rafts)を合成した。一方向に整列されているAgナノワイヤraftsを利用してSERS現象を観察し、ナノワイヤの長さ方向とレーザーの偏光方向の差によってSERS信号が変わることを示している。Jeongらは、実験的にレーザーの偏光方向及び二つのナノワイヤ間の作用によるSERS現象を測定したが、フラットアレイ構造により、多量のAgナノワイヤがSERSに必要となり、前記Agナノワイヤの製造方法上、高形状、高品質のAgナノワイヤが得られなくて、前記レーザー偏光方向及び二つのナノワイヤ間の作用によるSERS現象が精密に制御され難い短所がある。
【0017】
Arocaら(Anal. Chem. 2005, 77, 378)は、液相で合成したAgナノワイヤをガラス基板に多量載せて、SERS基板として活用して測定したが、ナノワイヤの外に多量の粒子が存在して、一定な配列を有していない。
【0018】
Schneiderら(J. Appl. Phys. 2005, 97, 024308)とLeeら(J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2200)は、鋳型体を利用してAgナノワイヤアレイ(array)を製作して、鋳型体を除去しなかった状態と、エッチングを通じて鋳型体を除去した状態でSERS測定を行って、鋳型体を除去することによって、SERS信号が増えることを示している。
【0019】
Prokeら(Appl. Phys. Lett., 2007, 90, 093105)は、ZnOとGaナノワイヤを合成した後、AgをコーティングしてSERS測定した。この際、SERSが発生する部分の構造は、合成されたZnOとGaナノワイヤの形状によって決定されるが、Gaナノワイヤの場合、合成そのものが非常にもつれている状態で合成されて、ZnOは、比較的もつれていない状態で合成され、もつれている構造のGaナノワイヤを利用した時、さらに大きいSERS信号が得られることを示している。
【0020】
Jeong、Proke、Schneider、Lee及び金属粒子のdimerを通じて報告されたことのあるSERS信号の増強は、BrusとKallにより提案された、孤立された金属粒子ではない、近接して(1−5nm)いる二つ以上のナノ粒子間に形成される非常に強い電磁場(hot spot or interstitial field)によるSERS増強理論を支持する結果であり、電磁気的な理論計算によると、前記ホットスポット(Hot spot)により1012程度のSERS増強が予測される。
【0021】
しかしながら、上記のようなナノワイヤを利用したSERS用光センサーの構造も、金属ナノ粒子を利用した光センサーと同様に、ナノワイヤの形状と品質の制御に困難があって、また製造されたナノワイヤの物理的な構造も正確に規定されず、SERS現象に必須的なホットスポットの発生が正確に制御されないという点で再現性、信頼性が低くて、制御可能な測定が難しい短所があり、これを利用したセンサー開発に問題点があると知られている。特に、ナノ粒子凝集体の場合、凝集される程度によって、ホットスポットが生成される位置とホットスポットの強度が変わる可能性があって、これは、測定されるSERS信号再現性及び制御に大きい問題とされることが知られている。
【0022】
上述したように、van Duyne、Halasらのような先頭研究チームは、固有のナノシステム(nanopattern、nanoshell)を開発して、システムの表面プラズモン(Surface plasmon)特性を利用して、SERS現象の再現性を向上して制御する研究を進行し、これを利用して、現在バイオセンサー開発のための研究を進行中にあるが、実質的に製造が簡便で、高純度/高品質/高形状のナノワイヤを利用して、基板上のナノワイヤの個別位置及び構造が調節されて、ホットスポットの発生が正確に制御されるSERS光センサーの開発は、本出願人が提案した技術(大韓民国登録特許第0892629)を除いては、全くない実情である。
【0023】
本出願人は、表面及び結晶状態が正確に定義されている気相合成されたナノワイヤとナノパーティクルのハイブリッド構造を利用して、生体抽出物及び蛋白質、DNAのようなバイオ分子のSERS信号の増強と測定の再現性、敏感度及び信頼度向上のための研究を進行した結果、本特許を出願するに至った。
【0024】
ハイブリッド金属−金属ナノ構造は、光学的信号を利用した効率的なバイオ/化学センサー開発において重要な役割をすることができるが、その理由は、それらがナノ構造の隙間で局所表面プラズモン共鳴(LSPR;Localized Surface Plasmon Resonance)カップリングにより集中された電磁場領域である‘ホットスポット’を提供するからである。多様な光学的検出方法の中、表面増強ラマン散乱(SERS)は、単分子検出の高感度を有する魅力的な技術である。さらに、SERSは、他の検出方法に比べ、高選択性を提供するが、これは、ラマンスペクトルが分析物の検出に使用できる特定化学作用基に対する信号を提供するからである。このようなSERSの長所により、この現象の発見以後から多様な化学物質の検出とDNAと蛋白質のような生分子の確認のための分析道具として広く研究されてきた。
【0025】
貴金属ナノパーティクル(ナノ粒子;Nano Particles)とナノ線(ナノワイヤ;Nano Wire)は簡単に合成可能であるため、SERS−活性構造(SERS-Active Structure)として大きい関心を引く二つの重要な基本ナノ構造である。
【0026】
ナノパーティクル(ナノ粒子)二量体、集合体、アセンブリー、そしてナノシェルを含んだナノパーティクルに基づいた数多いナノ構造が提示された。また、SNOF(SNOF;Single-Nanowire-On-a-Film)、ナノワイヤ対、整列されたナノワイヤ束、ナノワイヤの ラングミュア・ブロジェットフィルム(Langmuir-Blodgett film)、そして石板法で製作されたナノワイヤ整列のような高増強性と方向探知性(directional response)を全て有する1次元SERS−活性構造も研究された。
【0027】
二つの異なるナノ構造を結合させたハイブリッドナノ構造は、ナノワイヤとナノパーティクルの長所を同時に有する効果的なSERS−活性構造になり得る。たくさんの研究グループは、ナノワイヤ−ナノパーティクル構造がラマン信号の高増強性、偏光依存性、そして、遠隔励起性を有することを報告した。したがって、単一ハイブリッドナノ構造は、将来のSERS検出/イメージング道具として応用できるはずである。
【0028】
しかし、よく定義されたハイブリッドナノ構造を手安く製作することと、生物学的研究への応用が実際SERS−活性構造の開発において課題として残っており、ナノワイヤ−ナノパーティクルのSERS−活性構造において、生化学物質を検出した結果は全くない実情である。
【0029】
一方、低単価で少ないサンプル量から最大の情報が得られるようなマルチプレックスで且つ敏感でありながらも特定のDNAのみを検出する技術は、遺伝子プロファイリング(Gene profiling)、薬物スクリーニング(Drug screening)、疾病診断のようなバイオメディカル研究分野でその必要性が大きく台頭されている。
【0030】
したがって、簡単且つ信頼度が高くて、多数のDNAsを一回の分析で速く検出する方法が、蛍光、SPR、電気的信号、そして質量変化の測定のような多様な検出方法を利用して開発されてきた。
【0031】
多様なDNA検出方法の中でも、蛍光は、マルチプレックスDNA検出のために一般的に選好する技術である。しかしながら、SERSも無標識マルチプレックスDNA検出のための魅力的な方法と考えられてきたが、これは、単分子水準の感度、SERSスペクトルの分子特異性、単一励起ソース(excitation source)の有効性、そして、湿度、酸素、または他の物質によるquenchingがないからである。
【0032】
このような注目すべき長所により、数多い独創的なSERSセンシングプラットフォーム(sensing platforms)が開発されている。しかしながら、ナノ構造に依存するSERS信号再現性及び一遍に少ない量のサンプル量で多様なターゲットDNAを検出することが、実際マルチプレックスDNA検出のためのSERSセンサーの開発において、依然として超えるべき課題として残っている。
【非特許文献1】Chou et al., (2004) Biosens. Bioelectron. 19, 999-1005
【非特許文献2】Alivisatos et al., (2004) Nat. Biotechnol. 22, 47-52
【非特許文献3】Nam et al., (2003) Science. 301, 1884-1886
【非特許文献4】Nano. Lett. 2003, 3, 1229
【非特許文献5】J. Phys. Chem. B 2004, 108, 12724
【非特許文献6】Anal. Chem. 2005, 77, 378
【非特許文献7】J. Appl. Phys. 2005, 97, 024308
【非特許文献8】J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2200
【非特許文献9】Appl. Phys. Lett., 2007, 90, 093105
【特許文献1】米国特許第6,974,669号明細書
【特許文献2】大韓民国登録特許第0892629号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、ナノワイヤ及びナノワイヤに自己組織化されたナノ粒子を含んで構成された表面増強ラマン散乱(SERS)−活性構造を利用した生化学物質検出方法を提供して、単一の測定を通じて多様な生化学物質の検出が可能なマルチプレックス(multiplex)方法を提供し、よく定義された(well-defined)物理的構造及びよく定義されたホットスポット構造を有し、再現性があって、信頼度の高い結果が得られる生化学物質検出方法を提供して、測定時、よく定義された多数個のホットスポットにより増強された表面増強ラマン散乱スペクトルが得られて、非常に敏感度の高い生化学物質検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明による生化学物質検出方法は、表面増強ラマン散乱(SERS;Surface-Enhanced Raman Scattering)を利用して、分析対象が含む生化学物質の存在または含量を検出するための方法であって、a)第1受容体が形成された単結晶体貴金属ナノワイヤ及び第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子を分析対象物質と接触させて、前記分析対象物質と前記第1受容体の結合、及び前記分析対象物質と前記第2受容体の結合により、前記分析対象物質を中心に前記貴金属ナノワイヤに前記貴金属ナノ粒子を結合させるステップと、b)前記貴金属ナノワイヤを焦点に前記貴金属ナノ粒子が結合された貴金属ナノワイヤに、偏光されたレーザービームを照射し、表面増強ラマン散乱スペクトルを得るステップとを含んで行われる特徴がある。
【0035】
前記検出対象である前記生化学物質は、細胞構成物質、遺伝物質、炭素化合物、生物体の代謝、物質合成、物質輸送または信号伝達過程に影響を及ぼす有機物を含む。
【0036】
詳細には前記生化学物質は、高分子有機物、有機金属化合物、ペプチド、炭水化物、蛋白質、蛋白質複合体、脂質、代謝体、抗原、抗体、酵素、基質、アミノ酸、アプタマー(Aptamer)、糖、核酸、核酸断片、PNA(Peptide Nucleic Acid)、細胞抽出物、またはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
前記貴金属ナノワイヤまたは貴金属ナノ粒子と前記分析対象物質間の結合、詳細には前記貴金属ナノワイヤまたは貴金属ナノ粒子と前記分析対象物質に含有された生化学物質間の結合は、酵素−基質、抗原−抗体、蛋白質−蛋白質、DNA間の相補的結合、またはビオチン(biotin)−アビジン(avidin)結合として特徴付けられる。
【0038】
特徴的には、前記貴金属ナノワイヤの長軸長さは、1μm以上である特徴があり、前記貴金属ナノワイヤの長短軸比(aspect ratio、ナノワイヤ長軸長さ/短軸長さ)は、5〜5000である特徴があって、前記貴金属ナノ粒子の平均粒子大きさは、5nm乃至20nmである特徴がある。
【0039】
前記貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり前記貴金属ナノワイヤ表面に結合された前記貴金属ナノ粒子の数である結合密度は、前記貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり存在するホットスポット(hot spot)の数であるホットスポット密度と同一な特徴がある。
【0040】
詳細には、前記酵素−基質、抗原−抗体、蛋白質−蛋白質、DNA間の相補的結合、またはビオチン(biotin)−アビジン(avidin)結合により、検出対象である生化学物質を中心に貴金属ナノワイヤ表面に単一の貴金属ナノ粒子がそれぞれ物理的に分離されて貴金属ナノワイヤに自己組織化される特徴があり、これによって、貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり結合された貴金属ナノ粒子の数が、貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり存在するホットスポット(hot spot)の数であるスポット密度になる特徴がある。
【0041】
前記分析対象物質は、アビジン(avidin)を含み、前記第1受容体及び前記第2受容体は、それぞれビオチン(biotin)を含み、前記貴金属ナノ粒子は、前記貴金属ナノワイヤ及び前記貴金属ナノ粒子のそれぞれに形成されたビオチン(biotin)がアビジン(avidin)を中心に結合したビオチン−アビジン−ビオチンの結合により、前記貴金属ナノワイヤ表面に自己組織化(self-assembled)された特徴があって、前記アビジンは、検出対象の生化学物質と特異的に結合したアビジンを含む。
【0042】
好ましくは、前記第1受容体及び前記第2受容体がそれぞれビオチン(biotin)を含む場合、前記貴金属ナノワイヤまたは前記貴金属ナノワイヤがN−(6−(ビオチンアミド)ヘキシル)−3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド(N-(6-(Biotinamido)hexyl)−3’-(2’-pyridyldithio)−propionamide、以下、EZ-Link Biotin-HPDP)で改質されて、貴金属ナノワイヤまたは貴金属ナノ粒子にビオチンが形成された特徴がある。
【0043】
前記分析対象物質は、ターゲットDNAを含み、前記第1受容体は、プローブDNAを含み、前記第2受容体は、ラマンダイ(Raman dye)が付着されたレポーターDNAを含んで、前記ターゲットDNAと前記プローブDNAの相補的結合及び前記ターゲットDNAと前記レポーターDNAの相補的結合により、前記貴金属ナノ粒子が前記貴金属ナノワイヤ表面に自己組織化(self-assembled)された特徴がある。
【0044】
特徴的には、前記ターゲットDNAは、病原菌のDNA及び病原菌に感染された生体から抽出分離された病原菌のDNAを含む。
【0045】
詳細には、前記ターゲットDNAは、前記貴金属ナノワイヤ表面に形成されたプローブDNAと相補的に結合すると同時に、前記貴金属ナノ粒子表面に形成されたレポーターDNAと相補的に結合されて、前記レポーターDNAに付着されてラマン信号の敏感度を増加させる前記ラマンダイは、使用するレーザーの波長を考慮して選択する。一例として、633nm He−Neレーザーの場合、ラマンダイは、Cy5を使用する。
【0046】
本発明による生化学物質検出方法は、物理的に分離されており、互いに異なる第1受容体が形成された二つ以上の単結晶体貴金属ナノワイヤ及び互いに異なる第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子を分析対象物質と接触させて、貴金属ナノワイヤ別に異なる生化学物質が検出される特徴がある。
【0047】
特徴的には、物理的に分離されており、互いに異なるプローブDNAが形成された二つ以上の単結晶体貴金属ナノワイヤ及び互いに異なるレポーターDNAが形成された貴金属ナノ粒子を分析対象物質と接触させて、貴金属ナノワイヤ別に異なるターゲットDNAが検出される。
【0048】
特徴的には、物理的に分離されており、互いに異なるプローブDNAが形成されたN(N>1の自然数)個以上の単結晶体貴金属ナノワイヤ及びラマンダイが付着されたレポーターDNAが形成された単一の種類の貴金属ナノ粒子を、1乃至N個のターゲットDNAを含有する分析対象物質と接触させ、貴金属ナノワイヤ別に異なるターゲットDNAが検出される。
【0049】
上述のマルチプレキシング検出において、前記一つ以上の貴金属ナノワイヤは、基板上位置アドレッシングにより分別される特徴がある。
【0050】
前記貴金属ナノワイヤは、Au、Ag、PtまたはPdナノワイヤであり、前記貴金属ナノ粒子は、貴金属ナノワイヤと同一物質であるAu、Ag、PtまたはPdナノ粒子である特徴がある。
【0051】
前記表面増強ラマン散乱は、貴金属ナノワイヤを焦点として有する偏光されたレーザービームが単一の貴金属ナノワイヤの長軸方向中心に照射されて発生される特徴があり、前記貴金属ナノワイヤの長軸と前記偏光されたレーザービームの偏光方向とがなす角度θが30乃至150°または210乃至330°の条件で発生される特徴がある。
【発明の効果】
【0052】
本発明の生化学物質検出方法は、検出そのもののための生化学物質の前処理が必要なく、生化学物質そのものを直接的に検出可能な特徴があり、検出しようとする生化学物質に他の標識を人為的に付けなくても選択的に検出される無標識選択検出の特徴があって、検出しようとする生化学物質がホット−スポット領域に固定されており、極微量の物質も検出可能な高感度検出である特徴があって、単結晶体で且つ非常に大きい縦横比を有する単一の貴金属ナノワイヤに、互いに物理的に分離されたナノ粒子が均一且つ高密度で貴金属ナノワイヤに自己組織化されたナノワイヤ−ナノ粒子構造により、非常に安定的で再現性のあるSERSスペクトルが得られる特徴があり、単一の貴金属ナノワイヤ及び貴金属ナノワイヤに自己組織化されたナノ粒子が単一のセンサーとして作用するため、センサーの非常に高い敏感度、安定性、再現性を有すると同時にセンサーの超小型化が可能な特徴があって、ホットスポットの位置及び密度が制御可能な特徴があり、調節された多数個のホットスポットにより画期的に増進された生化学物質のSERSスペクトルが得られる特徴があり、多数個の貴金属ナノワイヤのそれぞれに、互いに異なる生化学物質と結合するように受容体を形成させて、短時間及び単一な測定を通じて高い正確度及び敏感度で多様な検出対象物質の検出(Multiplex platform)が可能な長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、添付の図面を参照し、本発明の生化学物質検出方法を詳細に説明する。以下紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分伝えられるようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下提示される図面に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。また、本明細書において、同一な参照符号は、同一な構成要素を示す。
【0054】
ここで使用される技術用語及び科学用語に当たって、他に定義がなければ、この発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明及び添付図面において、本発明の要旨を曖昧にするような公知機能及び構成に対する説明は省く。
【0055】
図1は、本発明による生化学物質検出方法を示した一例であって、詳細には、貴金属単結晶ナノワイヤ100表面に第1受容体110が備えられて、貴金属ナノ粒子200表面にも第2受容体210が備えられた特徴があり、前記貴金属単結晶ナノワイヤ100及び貴金属ナノ粒子200と検出対象物質である生化学物質300を含有する分析対象と接して、前記生化学物質300を挟んで前記貴金属ナノ粒子200が前記貴金属単結晶ナノワイヤ100に結合するようになる。
【0056】
詳細には、前記貴金属単結晶ナノワイヤ100の表面に備えられた第1受容体110及び貴金属ナノ粒子200表面に備えられた第2受容体210が、分析対象に含有された検出対象物質の生化学物質300とそれぞれ結合し、前記貴金属ナノワイヤ100表面に貴金属ナノ粒子200が自己組織化(self-assembled)されて、前記貴金属ナノワイヤ100と貴金属ナノ粒子200との間に検出対象物質の生化学物質300が固定される特徴がある。
【0057】
ナノ構造に付いている分子(生化学物質)のラマン信号増強を最大化する方法は、分子(生化学物質)を、本発明のように貴金属ナノワイヤ及び貴金属ナノ粒子のような整列されたナノ構造の間に位置させて、大きく増加したSERS信号を得ることができて、このような整列されたナノ構造は、生化学物質とナノワイヤ及びナノ粒子の結合により生成(Turn on)されるSERS−活性(SERS-active)ナノ構造である特徴がある。
【0058】
前記貴金属単結晶ナノワイヤ100は、長短軸比(aspect ratio、ナノワイヤ長軸長さ/短軸直径)が、5〜5000である特徴があって、長軸の長さは、1μm以上である特徴があり、前記貴金属単結晶ナノワイヤ100は、二つ以上のナノワイヤが互いに物理的に凝集しているナノワイヤ凝集体、二つ以上のナノワイヤが互いに物理的に結合しているナノワイヤの結合体、ナノワイヤが同種または異種の物質に付着された複合体ではない、単一のナノワイヤ(free standing single nanowire)である特徴がある。
【0059】
以後、前記貴金属ナノワイヤ100を焦点にして、前記貴金属ナノ粒子200が結合された貴金属ナノワイヤ100に偏光されたレーザービームを照射して表面増強ラマン散乱スペクトルを得るようになる。この際、レーザービームが照射されて得られる表面増強ラマン散乱スペクトルは、単一の貴金属ナノワイヤ及び多数個の貴金属ナノ粒子により形成された局所電磁場により増強された結果である特徴がある。
【0060】
前記貴金属ナノ粒子200は、平均粒子大きさが5nm乃至20nmである特徴がある。これは、前記貴金属ナノ粒子200が貴金属ナノワイヤ100に結合して局所表面プラズモン共鳴(LSPR)カップリングにより集中された電磁場領域であるホットスポットを形成すると同時に、貴金属ナノワイヤ100に高密度のホットスポットを形成するためである。
【0061】
図1に基づいて述べた本発明の検出方法は、貴金属ナノワイヤ表面に備えられた第1受容体−検出対象物質−貴金属ナノ粒子表面に備えられた第2受容体の結合により、貴金属ナノワイヤに貴金属ナノ粒子が自己組織化されて、貴金属ナノワイヤが高純度、高結晶性の単結晶体であり、均一な厚さ(短軸長さ)と大きい縦横比を有する偏平な表面(粗度が非常に小さい表面)を有する単一のナノワイヤであることにより、貴金属ナノワイヤ表面に均一に貴金属ナノ粒子が結合されて、単一の貴金属ナノ粒子と貴金属ナノワイヤにより単一なホットスポットが形成されて、貴金属ナノ粒子の結合密度が非常に高い特徴がある。
【0062】
一例として、前記第1受容体及び第2受容体がそれぞれビオチンを含み、前記検出対象物質がアビジンを含む場合、貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり結合された貴金属ナノ粒子の数である結合密度は、1500乃至3500(個/μm)であり、上述の本発明の特徴により、前記貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり結合された貴金属ナノ粒子の数である結合密度は、前記貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり存在するホットスポット(hot spot)の数であるホットスポット密度と同一であることから、1500乃至3500(個/μm)のホットスポット密度を有するようになる。
【0063】
前記貴金属ナノワイヤは、Au、Ag、PtまたはPdナノワイヤである特徴があり、前記貴金属ナノ粒子は、Au、Ag、PtまたはPdナノ粒子である特徴があって、好ましくは、前記貴金属ナノワイヤと前記貴金属ナノ粒子は、同一な貴金属物質である。
【0064】
詳細には、SERS不活性基板に前記第1受容体が形成された貴金属ナノワイヤを位置させて、分析対象を含有した液相を利用して前記貴金属ナノワイヤと前記分析対象を接触させた後、第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子分散液を、分析対象と接触した貴金属ナノワイヤに塗布するか、第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子分散液に、分析対象と接触した貴金属ナノワイヤ(基板含み)を含浸させることができる。
【0065】
詳細には、前記第1受容体が形成された貴金属ナノワイヤが位置したSERS不活性基板自体が、前記第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子分散液に含浸された状態で分析対象が前記分散液に添加され、分析対象と貴金属ナノワイヤ及び貴金属ナノ粒子を接触させることができる。
【0066】
詳細には、前記第1受容体が形成された貴金属ナノワイヤが位置したSERS不活性基板そのものを液相に含浸させた後、分析対象及び貴金属ナノ粒子分散液を、前記貴金属ナノワイヤが含浸された液相に添加(分析対象の添加後、貴金属ナノ粒子分散液の添加、または貴金属ナノ粒子分散液の添加後、分析対象の添加、を含む)して、分析対象と貴金属ナノワイヤ及び貴金属ナノ粒子を接触させることができる。
【0067】
この際、前記貴金属ナノワイヤ、貴金属ナノ粒子及び分析対象との接触は、微細流体キャピラリー管(Micro fluidic capillary tube)を含む流体移送のための装置内で行えることはもちろんのことである。
【0068】
前記液相(貴金属ナノワイヤ含浸液、貴金属ナノ粒子分散液、または分析対象を含有する検出溶液の液相)は、前記貴金属ナノワイヤ100及び貴金属ナノ粒子200に備えられた受容体及び生化学物質と化学的に反応せず、前記貴金属ナノ粒子200を容易に分散させて、貴金属ナノ粒子及び生化学物質の流動を可能にする流体である。
【0069】
この際、生化学物質が存在しないことを除いては、実際測定時使用された液相と同一な液及び測定条件を利用して得られたSERSスペクトルをリファレンス(reference)として、検出対象と接触した後得られたSERSスペクトルを分析することができることはもちろんである。
【0070】
さらに、分析対象に含有された検出対象物質により貴金属ナノ粒子が貴金属ナノワイヤに結合した後、多数個の貴金属ナノ粒子が結合された貴金属ナノワイヤを液相と分離するか洗浄した後、偏光されたレーザービームを照射して表面増強ラマン散乱スペクトルを得ることが好ましい。
【0071】
この際、前記貴金属ナノ粒子200が自己組織化される貴金属ナノワイヤ100の表面に非特異的結合による蛋白質などの吸着防止のための蛋白質吸着防止層が備えられて、一例として、吸着防止層は、グリコール系化合物などの親水性分子を使用することができる。
【0072】
分析対象に含有された検出対象物質である前記生化学物質は、貴金属ナノワイヤ100に備えられた第1受容体110に特異的に結合すると同時に、前記貴金属ナノ粒子200に備えられた第2受容体210に特異的に結合する物質、即ち、少なくとも二つ以上の結合能を有する物質である。
【0073】
前記生化学物質と前記受容体(110または210)の結合は、イオン結合、共有結合、水素結合、配位結合または非共有結合を含み、特徴的には酵素−基質、抗原−抗体、蛋白質−蛋白質、DNA間の相補的結合、またはビオチン−アビジン結合である。
【0074】
特徴的には、前記第1受容体及び第2受容体は、それぞれビオチンを含み、前記生化学物質は、アビジンを含む。
【0075】
特徴的には、前記第1受容体及び第2受容体の少なくとも一つの受容体は、ラマンダイ(Raman Dye)付着されたDNAである。より特徴的には生化学物質は、ターゲットDNAを含み、前記第1受容体は、プローブDNAを含んで、貴金属ナノ粒子に形成される前記第2受容体は、ラマンダイが付着されたレポーターDNAを含む。
【0076】
特徴的には、検出対象である前記生化学物質はDNAであり、DNAの濃度(M)10−11乃至10−8でDNA濃度と、ステップb)の前記表面増強ラマン散乱スペクトルの強度とは線形的に比例する。
【0077】
上述のように、本発明による生化学物質検出方法は、検出対象である生化学物質300を中心に貴金属ナノワイヤ100と貴金属ナノ粒子200が結合された特徴を有して、検出対象の生化学物質300により、貴金属ナノ粒子200が貴金属ナノワイヤ100に自己組織化されるようになる。
【0078】
したがって、検出対象の生化学物質300の有/無によって、貴金属ナノ粒子200と貴金属ナノワイヤ100の結合によるホットスポットの生成有/無が決定されて、生化学物質300の濃度によって、前記ホットスポットの表面密度が決定されるようになる。
【0079】
貴金属ナノ粒子200と貴金属ナノワイヤ100の結合領域に検出対象の生化学物質300が固定されて、生化学物質300の濃度によりホットスポットの表面密度が決定されるため、貴金属ナノワイヤ100の中心に偏光されたレーザービームを照射し、表面増強ラマン散乱スペクトルを得て、これに基づいて検出対象の生化学物質の有/無、生化学物質の種類または生化学物質の濃度を分析する。
【0080】
前記貴金属ナノワイヤ100に備えられた第1受容体110は、前記生化学物質300の結合能によって、前記貴金属ナノ粒子200に備えられた受容体210と同種または異種の受容体である。
【0081】
特徴的には、図2に示した一例のように、前記貴金属ナノワイヤ100に備えられた第1受容体120及び前記貴金属ナノ粒子200に備えられた第2受容体220は、それぞれビオチンを含む特徴があり、前記検出対象である生化学物質は、アビジン400と生化学物質300が結合した生化学物質複合体500である特徴がある。
【0082】
前記アビジン400と第1受容体120のビオチンが結合して、同一なアビジン400と第2受容体220のビオチンが結合して、前記生化学物質複合体500を挟んで前記貴金属ナノ粒子200が貴金属ナノワイヤ100に結合してホットスポットを形成する。
【0083】
この際、上述のように生化学物質500の有/無により、貴金属ナノワイヤ上にホットスポットの生成有/無が決定されて、生化学物質の濃度により、貴金属ナノワイヤ表面に形成されたホットスポットの数が決定されるようになる。
【0084】
詳細には、図2は、図1に基づいて述べた本発明による生化学物質の検出を示した他の例であって、第1受容体120及び第2受容体220がそれぞれビオチンを含み、検出対象物質がアビジン400または生化学物質300と結合したアビジンである生化学物質複合体500である場合を示したものである。
【0085】
単結晶体の単一の貴金属ナノワイヤ100及び貴金属ナノ粒子200のそれぞれに形成されたビオチンがアビジンを中心に結合したビオチン−アビジン−ビオチンの結合により、前記貴金属ナノ粒子200が生化学物質複合体500を中心にホットスポットが生成されて、以後、前記貴金属ナノワイヤ100を焦点に偏光されたレーザービームを照射してSERSスペクトルを得て、これに基づいて生化学物質の有/無、生化学物質の種類または生化学物質の濃度を分析する。
【0086】
この際、生化学物質複合体500を中心に前記貴金属ナノ粒子200が貴金属ナノワイヤ100に結合されたナノ構造体(及び貴金属ナノワイヤ)は、物理的支持のための基板上に位置することができて、ナノ構造体(及び貴金属ナノワイヤ)と基板のファンデルワールス力または重力により基板上に固定できる。
【0087】
前記ナノ構造体にレーザービームを照射すると、前記ナノ構造体のホットスポットにより増強された前記生化学物質500のSERS信号を得るようになる。
【0088】
前記貴金属ナノ粒子(または貴金属ナノワイヤ)表面に備えられるビオチンは、貴金属ナノ粒子(または貴金属ナノワイヤ)の表面改質を通じて形成できて、一例として、前記貴金属ナノ粒子(または貴金属ナノワイヤ)がEZ−Link Biotin−HPDPで改質されて形成されることが好ましい。
【0089】
図3は、本発明による生化学物質検出方法において、物理的に分離されており、互いに異なる第1受容体110A、110Bが形成された二つ以上の単結晶体貴金属ナノワイヤ100A、100B及び互いに異なる第2受容体210A、210Bが形成された貴金属ナノ粒子200A、200Bを分析対象物質と接触させて、物理的に分離されてSERS基板上に位置する貴金属ナノワイヤ別に異なる生化学物質310、320が検出されるマルチプレックス検出の一例を示したものである。
【0090】
図3に示したように、前記マルチプレックス検出のために、第1生化学物質310と特異的に結合する第1受容体110Aが形成された貴金属ナノワイヤ及び第1生化学物質310と特異的に結合する第2受容体210Aが形成された貴金属ナノ粒子を利用して第1生化学物質を検出して、第2生化学物質320と特異的に結合する第1受容体110Bが形成された貴金属ナノワイヤ及び第2生化学物質320と特異的に結合する第2受容体210Bが形成された貴金属ナノ粒子を利用して第2生化学物質をそれぞれ検出する。この際、図3には、2種類の生化学物質を一遍に独立的に検出できる例を示したが、N(N>1の自然数)個の相異なる生化学物質を単一のテストで検出するために、SERS不活性基板上のそれぞれの生化学物質と特異的に結合する第1受容体が形成されたN個の貴金属ナノワイヤ及びそれぞれの生化学物質と特異的に結合する第2受容体が形成されたN種類(同一な受容体が形成された貴金属ナノ粒子を1種類とする)の貴金属ナノ粒子を利用して、N個の生化学物質に対してマルチプレックス検出が可能である。
【0091】
より重要には、無標識DNAマルチプレックス検出のために、前記物理的に分離された二つ以上の単結晶体貴金属ナノワイヤの第1受容体110A、110Bは、それぞれ異なるプローブDNAであり、前記貴金属ナノ粒子の第2受容体210A、210Bは、互いに異なるレポーターDNAであって、分析対象物質は、互いに異なるターゲットDNAを含有し、これを通じて貴金属ナノワイヤ別に異なるターゲットDNAが検出される。
【0092】
貴金属ナノワイヤ−貴金属ナノ粒子の結合を利用した無標識生化学物質検出
以下提示される例は、単結晶の単一の貴金属ナノワイヤ−貴金属ナノ粒子の結合を利用した無標識生化学物質検出としては最初の結果である。測定時、SERS活性金属としてAuナノワイヤ及びAuナノ粒子を使用したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0093】
本発明による貴金属ナノワイヤは、本出願人の特許出願2007−0065030、2008−0036360、2009−0035522に公知された方法を使用して製造することが好ましい。
【0094】
詳細には、前記貴金属ナノワイヤは、反応炉の前端部に位置させた貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属(Noble metal halide)を含む前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気で熱処理して前記単結晶基板上に製造された貴金属単結晶ナノワイヤである特徴がある。
【0095】
前記製造方法による貴金属単結晶ナノワイヤは、触媒を使用せず、単に金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として使用して単結晶基板上に貴金属ナノワイヤが形成されて、気相の物質移動経路を通じて貴金属単結晶ナノワイヤが形成されるため、不純物を含まない高純度、高品質のナノワイヤである長所がある。
【0096】
また、前記反応炉前端部及び反応炉後端部の温度をそれぞれ調節して、前記不活性気体の流れ程度と前記熱処理時利用される熱処理管内圧力を調節して、最終的に単結晶基板上部で金属物質の核生成駆動力、成長駆動力、核生成速度及び成長速度を調節する方法であるため、貴金属単結晶ナノワイヤの大きさ及び基板上の密度などが制御可能で、再現可能であり、欠陥がなくて結晶性のよい高品質の貴金属単結晶ナノワイヤを製造することができるようになる。
【0097】
上述の気相移送法を利用して製造されて、本発明のバイオセンサーに備えられる前記貴金属単結晶ナノワイヤは、ツイン、積層欠陥などの面欠陥がない単結晶体である特徴があり、長短軸比(aspect ratio、ナノワイヤ長軸長さ/短軸直径)が、5〜5000である特徴があって、長軸の長さは、1μm以上である特徴があり、前記貴金属単結晶ナノワイヤは、二つ以上のナノワイヤが互いに物理的に凝集しているナノワイヤ凝集体、二つ以上のナノワイヤが互いに物理的に結合しているナノワイヤの結合体、ナノワイヤが同種または異種の物質に付着された複合体ではない、単一のナノワイヤ(free standing single nanowire)である特徴があって、厚さが均一で、原子水準で滑らかな表面を有する高形状のナノワイヤである特徴がある。
【0098】
Auナノワイヤ
反応炉で、気相輸送法を利用し、Au単結晶ナノワイヤを合成した。
【0099】
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されて、独立的に加熱体(heating element)及び温度調節装置を備えている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cm大きさの石英(Quzrtz)材質からなるものを使用した。
【0100】
反応炉の前端部の中央に、前駆物質のAu(Sigma-Aldrich,334057)0.05gを入れた高純度アルミナ材質のボート状容器を位置させて、反応炉の後端部の中央には、表面が(0001)面であるサファイア単結晶基板を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部に投入され、反応炉の後端部に排気されて、反応炉の後端部には真空ポンプが備えられている。前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を15torrに維持して、MFC(Mass Flow Controller)を利用して500sccmのArが流れるようにした。
【0101】
反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は900℃に維持した状態で30分間熱処理し、Au単結晶ナノワイヤを製造した。
【0102】
Au単結晶ナノワイヤの短軸の直径が50〜150nmであり、長軸の長さは、50μm以上であって、表面が原子的に滑らかな単結晶体のAuナノワイヤが製造された。
【0103】
アビジン検出
表面改質を通じて製造されたAu単結晶ナノワイヤの表面にビオチンを形成させた。詳細に、製造されたAu単結晶ナノワイヤを1mLの0.4mM EZ−Link Biotin−HPDP(Pierce、21341)ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に含浸させて、ビオチンが備えられるように表面改質した後、DMF溶媒を利用して洗浄した後、1mLリン酸緩衝食塩水(PBS;Phosphate Buffered Saline solution、以下PBS)水溶液に保管した。同様に、平均粒径が10nmであるAuナノ粒子(Sigma-Aldrich, G1527)を2μlの0.4mM EZ−Link Biotin−HPDP(Pierce、21341)DMF溶液に含浸させて、ビオチンが備えられるように表面改質した。
【0104】
以後、ビオチンが備えられたAuナノワイヤにアビジン(Sigma-Aldrich, A9275)PBS溶液5mLを添加して、PBS溶液で洗浄した後、1mLビオチンが備えられたAuナノ粒子水溶液1mLを添加した。
【0105】
上記の過程を常温で180分間維持した後、非特異的に結合されたAuナノ粒子を除去するために、PBS溶液を利用して洗浄した後、Auナノワイヤを分離して物理的光学的特性を調べた。
【0106】
図4(a)は、AuナノワイヤにAuナノ粒子及びアビジンを添加した後得られたAuナノワイヤの走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscopy)写真であって、Auナノワイヤに備えられたビオチン及びAuナノ粒子に備えられたビオチンがアビジンと結合した、ビオチン−アビジン−ビオチン結合により、アビジンを挟んで単一のAuナノワイヤにAuナノ粒子が自己組織化されたことを確認することができる。
【0107】
Auナノワイヤに自己組織化されたAuナノ粒子は、明確に識別することができて、Auナノ粒子が凝集体を形成せず、それぞれが物理的に分離されて、単一のAuナノ粒子がAuナノワイヤに自己組織化されることが分かり、また、Auナノ粒子がAuナノワイヤ表面に全体的に均一に高密度で自己組織化されていることが分かる。
【0108】
このような生化学物質により、単一の貴金属ナノワイヤに貴金属ナノ粒子が自己組織化されて、貴金属ナノ粒子と貴金属ナノワイヤ結合領域(Hot spot)に生化学物質が存在することによって、生化学物質のラマン信号は大きく増加するようになり、この現象を利用して生化学物質を容易に検出することが可能である。
【0109】
このような検出対象の生化学物質によるナノワイヤ−ナノ粒子構造は、単一構造が、生化学物質を検出できる一つのセンサーとして作用できるため、多数のナノワイヤの表面を多様な物質で改質して一つの基板に移して置くことにより、多様な生化学物質を同時に検出できるようなマルチプレックス検出方法への応用が非常に容易である。
【0110】
一方、図4(b)から観察できるように、Auナノワイヤ及びAuナノ粒子分散液にアビジンを添加せず、純粋なPBS溶液のみをもってAuナノ粒子とナノワイヤの自己組織化を行った時は、Auナノ粒子がAuナノワイヤに自己組織化されないことを確認することができた。
【0111】
アビジンが添加された場合に得られたAuナノワイヤ及びアビジンが添加されなかった場合に得られたAuナノワイヤ(比較例)をSi単結晶基板上部に位置させた後、SERSスペクトルを測定した。SERSスペクトルを測定するために、貴金属ナノワイヤを焦点に633nm波長を有するレーザービームを照射して、共焦点ラマン分光検出器で検出し、レーザービームの強度を0.5mWとして60秒間測定された結果である。
【0112】
図5(a)は、ビオチン−アビジン結合によりAuナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤのSERSスペクトル(以下、ナノ構造体SERSスペクトル)である。アビジンが存在してハイブリッドナノ構造が形成された後は、強いSERS信号が観察されることが分かり(図5aの青色スペクトル)、アビジン無しに、アビジンが添加されずビオチンが備えられたAuナノ粒子と接触したAuナノワイヤの場合、Si信号の他には、特色のないスペクトルが得られることが分かる(図5aの紫朱色スペクトル)。
【0113】
これは、図4の光学的結果と一致するもので、貴金属ナノワイヤと貴金属ナノ粒子が結合することによりホットスポットが生成されたことを立証する結果であって、このようなホットスポットにより非常に高い強度のSERSスペクトルが得られることが分かる。しかしながら、ホットスポットが生成されていない単一の貴金属ナノワイヤのみの場合、表面プラズモンの励起が非常に小さくて、Siスペクトルが得られるだけである。
【0114】
Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造形成によるSERS強度増加率(EF)は、下記の数式1で計算できる。
(数式1)
EF=(Isers×Nbulk)/(Ibulk×Nsers)
【0115】
sers とIbulk は、ナノ構造体SERSスペクトルと固体状態のEZ−Link Biotin−HPDPのバルクスペクトルにおいて同じピークの大きさ(特定バンドにおいてそれぞれの強度)であり、Nbulkは、バルクスペクトルに寄与した分子数であって、Nsersは、ナノ構造体SERSスペクトルに寄与した分子数である。
【0116】
図5(a)の青色で示したナノ構造体SERSスペクトルから分かるように、1005cm−1バンドの大きさがスペクトルで最も大きいため、これをIsersとIbulkとして選択した。Nbulkは、固体状態のEZ−Link Biotin−HPDP(0.5g/cm)ラマンスペクトルとラマンシステムの焦点容量(0.5femtoL)に基づいて決定される。
【0117】
ホットスポット領域におけるNsersを求める時、 EZ−Link Biotin−HPDPがAuナノワイヤとAuナノ粒子に0.4nmの分子当たり面積を有して、単層として吸着されると仮定し、3nmの間の分子のみを選択した。レーザービームが照射されるAuナノ粒子の数(即ち、SERS信号増強に寄与するホットスポットの数)が約250個であることが、図4(a)の走査電子顕微鏡写真から分かるため、Ntrapは、約2.2×10になる。
【0118】
図5(a)のナノ構造体SERSスペクトルにおいて、分子が633nm周辺に吸収バンドを示さないため、共鳴ラマン効果が除かれたことに注目すべきである。共鳴効果を有する探針分子を使用して、レーザーの波長を最適化すると、さらに増加されたSERS効果が得られることを予想することができる。
【0119】
図5(b)及び図5(c)に示したように、ビオチン−アビジン結合によりAuナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤのナノ構造体に照射されるレーザービームの偏光特性及びレーザービームが照射される位置によってナノ構造体SERSスペクトルの強度が変わることが分かる。図5(b)は、Auナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤの長軸中心(図5(a)に示されたナノワイヤの(b)位置)にレーザービームが照射される場合であり、図5(c)は、Auナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤの長軸チップ(tip)(図5(a)に示されたナノワイヤの(c)位置)にレーザービーム照射される場合であって、ナノワイヤの長軸方向とレーザービームの偏光方向とがなす角度θによる1120cm−1ラマンバンド積分値に対する極線を示したものである。
【0120】
Auナノワイヤ長軸中心領域にレーザービームが照射された場合、レーザービームの偏光がナノワイヤの長軸と垂直である場合、SERS強度は最高となり、偏光が水平である場合、最小に落ちる。このような偏光依存性は、光反応による減少を補正したcosθ関数でフィッティング(fitting)される。
【0121】
一方、AuナノワイヤチップにおけるSERS信号偏光異方性は、中心領域でより著しく小さくなる。チップにおける極線は、指数減少関数でフィッティングされる。
【0122】
このような結果は、Auナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤのチップと中心における表面プラズモン励起の差によって説明できる。単一のナノ粒子がナノワイヤの中間(ナノワイヤ長軸方向の中心)に付いていると、強い偏光異方性が表れる。本発明による貴金属ナノワイヤには、多数個の物理的に分離された貴金属ナノ粒子が自己組織化されているため、観察された偏光依存性は、多数のホットスポットで生成された電磁場の集合により説明される。
【0123】
一方、ナノワイヤのチップでは、部分的構造が円柱を覆っている半球に近い。小さいナノ粒子が均一に覆っている大きい球から偏光異方性が消えることが明らかである。したがって、信頼性と再現性があって、高敏感度で生化学物質を検出するために、ナノワイヤ長軸方向の中心にレーザービームが照射されることが好ましいことが分かる。
【0124】
図6(a)は、ビオチンが形成されたAuナノ粒子とビオチンが形成されたAuナノワイヤが分散されたPBS溶液に添加されたアビジンの濃度によるナノ構造体SERSスペクトル変化を示したものである。Auナノ粒子及びAuナノワイヤが分散されたPBS溶液内アビジンの濃度が10−13M乃至10−5M濃度になるようにアビジンを添加した後、Au−ナノワイヤを分離回収してSERSスペクトルを得た。
【0125】
図6(a)に示したように、10−8M以上のアビジン濃度では、非常に明らかなSERSスペクトルが観察された。10−9Mでは、SERS強度が低下したが、これは、Auナノワイヤに付着されたナノ粒子の数が減少したからである。10−10M以下では、ラマン信号を観察することが難しかった。ビオチン−アビジン結合は、熱力学的親和常数が非常に大きい非可逆的反応であるため、図6(a)に示された各スペクトルは、互いに異なるサンプルから独立的に測定した結果である。これは、ビオチン−アビジン結合により、Auナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤであるナノ構造体からのSERS信号がAuナノワイヤ表面に沿って均一に形成されたホットスポットにより、再現性のあるように具現及び観察されることを意味する。
【0126】
SERS活性の構造からのSERS信号の再現性と安定性は、よいセンサーのために非常に重要な性質である。Auナノワイヤは、非常に均一な表面を有しており、Auナノ粒子も固まることなくナノワイヤ全体に均一に分布されているため、本発明のナノ構造体は、信頼性のあるSERS信号の再現性を示す。
【0127】
SERS増強が、アビジンのみの特定な認知に依存したものであるかどうかを確認するために、ビオチンが形成されたAuナノ粒子とビオチンが形成されたAuナノワイヤが分散されたPBS溶液に、アビジンではない、非特異的結合蛋白質の牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin, 以下BSA)を添加した。
【0128】
図6(b)は、走査電子顕微鏡写真に基づいてBSAとアビジンのそれぞれの濃度によってAuナノワイヤに付着されたAuナノ粒子の数を示したものであって、この際、観察したAuナノワイヤの面積は、1×10nmである。
【0129】
図6(b)のBSAで示したグラフから分かるように、ビオチンが結合されたAuナノワイヤ及びビオチンが結合されたAuナノ粒子分散PBS溶液にBSA濃度を上げながら反応しても、自己組織化されたAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造を観察することができなかった。これは、貴金属ナノ粒子−貴金属ナノワイヤのナノ構造体の形成が、ビオチン−アビジン結合に非常に選択的であることを意味する。
【0130】
図6(b)のアビジンで示したグラフから分かるように、貴金属ナノ粒子の自己組織化構造によるホットスポットの密度が、アビジン濃度により制御されることが分かる。
【0131】
ターゲットDNA検出
アビジン検出と類似したAuナノワイヤ及びAuナノ粒子、アビジン検出と類似したSERS測定条件を利用してDNAを検出した一例を詳述する。
【0132】
表1は、DNA検出に使用されたプローブDNA(Efm003-20、Sau001-20、Smal03-20、Vvul02-20)、ターゲットDNA(T1〜T6)、及びレポーターDNA(R1〜R3)の配列を整理したものである。
【0133】
表1に示したように、感度増進のために、レポーターDNAの5’−terminiにCy5またはTAMRAラマンダイを付着した。
【0134】
表1 使用されたDNA配列(Genotech、Daejeon、Korea)
【表1】

【0135】
実験に使用したDNA(プローブ、ターゲット、レポーターDNA)は、1M DTT(dithiothreitol)及びNAP−5 column(GE healthcare Co.)を利用して精製した後使用した。Auナノワイヤは、5μMプローブDNAを含有した1M KHPOバッファ(pH 6.75)に常温で24時間インキュベーションさせた後、0.2%(w/v)のSDS溶液で洗浄して、Nが流れる雰囲気で乾燥した。
【0136】
プローブDNAが形成されたAuナノワイヤは、ナノマニピュレータ (nanomanipulator)を利用して、M−PEGシラン(methoxy-polyethylene glycol Silane)が形成されたSi単結晶基板に移された。
【0137】
Auナノ粒子は、ラマンダイが形成されたレポーターDNAで改質して、詳細には、5μMレポーターDNA及び0.01%(w/v)SDSを含有した0.01M PB(phosphate buffer)溶液とAuナノ粒子を混合して、常温で12時間インキュベーションして、以後、PB溶液のNaClの濃度が漸次的に0.7Mになるように、2M NaCl溶液を添加した(salt aging方法)。salt aging以後、遠心分離を利用してAuナノ粒子を回収し、0.01%(w/v)SDSで2回洗浄した後、PBS溶液に分散させた。
【0138】
ターゲットDNAは、ハイブリダイゼーションバッファに添加されて、前記ハイブリダイゼーションバッファとして、6×SSPE(0.9M NaCl, 10mM NaH2PO4H2O, 1mM EDTA, pH 7.4)、20%(v/v)ホルムアミド溶液(formamide solution, Sigma-Aldrich)、及び0.1%(w/v)SDSの混合溶液を使用した。
【0139】
プローブDNAが形成されたAuナノワイヤは、ターゲットDNAを含有するハイブリダイゼーションバッファに含浸されて、30℃、6時間ハイブリダイゼーションされた後、2×SSPEで洗浄された。
【0140】
プローブDNAが形成されたAuナノワイヤとターゲットDNAのハイブリダイゼーション後、ハイブリダイゼーションされたAuナノワイヤは、0.1%(w/v)SDSを含有してレポーターDNAが形成されたAuナノ粒子が分散されたPBS溶液に含浸され、6時間ハイブリダイゼーションされた。
【0141】
ハイブリダイゼーションされたAuナノワイヤとAuナノ粒子のハイブリダイゼーション後、0.1%(w/v)SDSを含有するPBS溶液及び脱イオン水でそれぞれ洗浄し、Nが流れる雰囲気で乾燥して、ターゲットDNAを挟んでAuナノ粒子がAuナノワイヤに自己組織化されたDNA検出サンプルを製造した。
【0142】
図7(a)は、ターゲットDNA、レポーターDNA、プローブDNAを利用したDNA検出サンプルの一例を示した概念図であり、図7(a)に示したように、ホットスポット及びSERS信号は、DNA相補的結合の分子認識が起こらなければ得られない。
【0143】
図7(b)及び図7(c)の結果は、Efm003−20プローブDNA、T1ターゲットDNA、T2非特異的ターゲットDNA、R1レポーターDNAを利用したDNA検出サンプルの測定結果である。
【0144】
図7(b)の青色ラマンスペクトルは、相補的結合するターゲットDNAを利用してハイブリダイゼーションさせた場合のDNA検出サンプル測定結果を示したもので、図7(b)の紫朱色ラマンスペクトルは、ターゲットDNAの代わりに、非相補的DNAで類似にハイブリダイゼーションした場合に測定された結果を示したものである。図7(b)から分かるように、ターゲットDNAが存在する場合にのみ、Cy5の強いSERS信号が得られて、非相補的DNAを使用した時は、弱いSiバンドのみが観察されることを示している。
【0145】
たとえ単一のナノワイヤそのものがSERS−活性化物質になってもよいが、表面に付着されたナノ粒子がある時、著しく強いSERS信号を得ることができる。単一ナノワイヤに比べ、ターゲットを挟んで形成されたAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造の実験的SERS増強ファクター(SERS enhancement factor)は、2.6×10であった。
【0146】
図7(c)は、このようなDNA相補的結合によるAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造形成の直接的な観察のためのSEM写真であって、相補的ターゲットDNAとのハイブリダイゼーションによっては、アビジンと類似に典型的なAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造を示して(図7(c)の上)、非特異的DNAに対しては、ナノ粒子が形成されず、ナノワイヤのみが存在することが分かる(図7(c)の下)。
【0147】
図7(c)は、図7(b)のSERSスペクトルと相応するSEM写真であって、ナノ粒子−ナノワイヤ間のギャップ形成、及びこのようなギャップに検出対象の生化学物質が固定された構造が、SERS増強に非常に重要であることを確実に証明している。また、アビジンと同様に、ナノ粒子が固まることなくナノワイヤに均一に分布されていることに注目すべきである。このような均一なナノ粒子−ナノワイヤ構造は、極めてよく定義されたナノ構造であるため、再現性のあるSERS信号を提供することができる。
【0148】
マルチプレックスDNA検出のために、互いに異なるプローブDNAs(Efm003-20とSau001-20)で改質された二つのAuナノワイヤを利用した。Efm003−20とSau001−20で改質された二つのAuナノワイヤは、同じSi基板に位置した。
【0149】
図8(a)に示したように、プローブDNAで改質されたAuナノワイヤを含んだこの基板は、ターゲットDNAs(T1とT2)の混合物とレポーターDNAs(R1とR2)で改質したAuナノ粒子の混合物溶液と順次的に反応させた。
【0150】
その結果で得られた二つのAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造は、それぞれのSERSスペクトルが測定されるが、これは、一つのターゲットDNA(T1)はEfm003−20とCy5レポーター分子(R1)に相補的であり、他の一つのターゲットDNA(T2)は、Sau001−20とTAMRAレポーター分子(R2)に対して相補的にデザインしたからである。
【0151】
図8(b)は、それぞれのAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造から測定したSERSスペクトルを示したもので、上のAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造から、Cy5のラマンバンドが見られて、これは、専らT1とR1のみがこのシステムに存在することを証明する。同様に、下のAuナノ粒子−Auナノワイヤ構造からは、TAMRAのSERS信号が得られて、T2とR2のみが存在していることを示す。
【0152】
このような結果は、他のターゲットDNAs間のクロスハイブリダイゼーション(cross hybridization)が発生しないことを示すもので、一つのナノワイヤを一つのターゲットDNA検出システムとして使用し、マルチプレックスDNA検出が可能であることを証明する結果である。
【0153】
図9は、マルチプレックスDNA検出の他の例であって、四つのAuナノワイヤを利用した一例である。図9(a)に示したように、異なるプローブDNAs(Efm003-20、Sau001-20、Smal03-20、及びVvul02-20)を付着した四つのAuナノワイヤを、一つのSi基板の特定な位置にM字形状で位置させて、M字形状に基づいた位置住所(address)により各ナノワイヤを区分した。
【0154】
ナノワイヤを個別的に正確な位置に置くことは、ナノワイヤ基盤マルチプレックス検出において重要である。本発明による単一Auナノワイヤは、ナノマニピュレータで移動させることができて、また光学顕微鏡で簡便に観察することができるため、容易に位置が制御されて、これによって、ナノワイヤ別区分のために、いかなるパターニング過程も必要なくなる。
【0155】
基板上の4種類のナノワイヤは、多数のターゲットDNAs(T3、T4、T5、そしてT6)の混合物と結合させた後、5’−terminiにはCy5を、3’−terminiにはAuナノ粒子を有しているレポーターDNA(R3)とインキュベーションさせた。
【0156】
この実験において、検査の精密性を高めるために、レポーターDNAの長さを15−merに縮めた。短いオリゴヌクレオチドが他のDNAとのクロス反応を排除することができて、差別化(discriminatory power)を高めることができることがよく知られている。
【0157】
図9(b)乃至9(d)は、四つのAuナノワイヤから構成された4プラットフォームサンプルのSERSを利用したマルチプレックスDNA検出を示している。四つの異なるプローブDNAを付けたAuナノワイヤは、Si基板上、図9(b)の光学顕微鏡写真に示されたように、アルファベット文字Mを形成している。Auナノワイヤの固定された位置からナノワイヤを区分することができて、一遍の分析で多数のターゲットDNAを検出することができる。
【0158】
二つのターゲットDNA(T3とT5)混合物で実験した後、四つのナノワイヤから得たSERSスペクトルを図9(b)に示している。専らEfm003−20とSmal03−20が付着されたナノワイヤのみが、Cy5のSERSスペクトルを示している。
【0159】
この方法の詳しい評価が図9(c)及び図9(d)に示されている。これらは、多様なターゲットDNAの混合物で実験を終了した後、基板上の各Auナノワイヤから得た1580cm−1ラマンバンドの大きさを示している。図9(c)において、四つのターゲットDNAの中、一つのみを使用したため、ターゲットDNAと相補的なプローブDNAを有している一種類のAuナノワイヤからのみSERS信号が観察された。図9(d)では、マルチプレックスDNA検出のためのセンシング能力が明確に検証された。T3とT6の混合物が基板に適用された時、SERS信号は、Efm003−20とVvul02−20が付着されたAuナノワイヤからのみ得られた。T4とT5の混合物を使用した時は、Sau001−20とSmal03−20が付着されたナノワイヤのみが強いCy5のSERSスペクトルを示して、T3、T4、そしてT5の混合物と反応させた後は、Vvul02−20で改質されたナノワイヤを除いた全てのナノワイヤが強いSERS信号を提供した。最後に、四つのターゲットDNAs混合物を使用して、チップ上の全てのAuナノワイヤが類似したSERSスペクトルを示すことを観察した。この結果は、Auナノワイヤ−ナノ粒子システムがsequence−specific DNA結合を検出することができることを明らかに示している。
【0160】
上述のプラットフォームのマルチプレキシング能力が、他のラマンダイによる結果ではないことに注目する必要がある。この実験において、他のナノ粒子基盤検出方法と比べ、マルチプレックスDNA検出のために一つのレポーターDNAのみを使用した。
【0161】
たとえ狭いラマンバンドにより、互いに異なるダイ(dye)のSERSスペクトルは区分できるとしても、定量的なマルチプレックス検出のためには、同じラマンダイを使用することがさらに有利である。マルチプレックスDNA検出のために、多数のダイ(dyes)を使用する場合、ダイ別にSERS増強は異なってくる。
【0162】
また、単一ナノワイヤの容易な移動及び観察が可能であるため、バーコードパターンのような物理的に表示されたラベルのない単結晶Auナノワイヤを使用することができた。光学的に互いに区分されないAuナノワイヤは、基板における特定な位置によって区分できる。しかも、非常にきれいな表面を有している単結晶Auナノワイヤを、マルチプレックス検出可能なSERSプラットフォームのビルディングブロック(building block)として使用することにより、SERSを利用した検出時、最も重要な性質の一つである再現性のあるSERSスペクトルを得ることができると期待した。
【0163】
図10は、多様なターゲットDNA濃度(モル濃度)におけるAuナノワイヤ−Auナノ粒子構造の感度及び濃度との関係を測定した結果であって、図10(a)は、ターゲットDNAの濃度を変えることによるCy5の1580cm−1ラマンバンド大きさの変化を示している。SERS信号は、ターゲットDNAの濃度に比例して減少して、10pMの低い濃度でも観察される。
【0164】
SERS大きさとDNA濃度のさらに詳しい結果を図10(b)に示した。図10(b)の青色線が示すように、Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造のSERS大きさは、ターゲットDNAの濃度と関連がある。この方法の検出限界(limit of detection)を一般的なアッセイ(assay)容量の30μlで300amol(1.8×108molecules)と同一な、10pMと推定した。また、SERS信号は、10nMで飽和(saturation)されて、3オーダーのダイナミックレンジ(dynamic range)を有することが分かる。
【0165】
また、10−11乃至10−8の3オーダーのダイナミックレンジ範囲でSERS大きさと濃度が直線関係(correlation coefficient: 0.987)を有することが分かり、この結果は、Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用してターゲットDNAの定量的検出が可能であることを提案している。非特異的DNAを利用して行った比較実験では、区分できるSERS信号を観察することができなかった(図10(b)の紫朱色線)。
【0166】
病原菌DNAの検出
病原菌を検出することは医学的に重要である。なぜなら、これらが相当な疾病率と高い死亡率を有した様々な伝染病を誘発するからである。Enterococcus faecium(E. faecium)とStaphylococcus aureus(S. aureus)は、高い発生率と死亡率を有した血流疾患の最も有力な病原菌である。Stenotrophomonas maltophilia(S. maltophilia)は、免疫体系が正常に作用しない患者、臓器移植者、嚢胞性線維症(CF)を有した人々に重要な病原菌である。Vibrio vulnificus(V. vulnificus)は、数日内に速く進行されて、50%以上の高い死亡率を示す敗血症と胃腸炎の原因となる。
【0167】
表2は、DNA検出に使用された菌の種類を整理したものである。
【0168】
表2
【表2】

【0169】
リファレンス菌のDNAは、表2の菌からDNA mini kit(QIAGEN, Hilden, Germany)を利用して、キット供給社のプロトコール(protocol)によって分離された。
【0170】
クリニカルサンプルとして、クリニック菌のDNAは、菌に感染された患者の脳脊髄液、便、うみ、そして痰を含んだ様々な臨床標本から、QIAamp DNA Blood Mini Kit(QIAGEN)を利用して、キット供給社のプロトコール(protocol)によって分離された。
【0171】
分離されたDNAからPCR(Polymerase chain reaction)増幅を利用して種特異的DNAのみを選択的に増幅して、ターゲットDNAsとして使用した。詳細にPCR増幅は、1×Taq buffer, 0.2mM dNTPs, 2units of Taqpolymerase(Takara Shuzo Co., Shiga, Japan)、 5ng genomic DNA, 5pmol forward primer、及び25pmol reverse primerを含有した反応液を利用して行われた。
【0172】
PCR増幅時、種特異的なプライマーは、Efm003-20(for E. faecium)、Sau001-20(S. aureus)、Smal03-20(S. maltophilia)またはVvul02-20(V. vulnificus)を使用して、ユニバーサルプライマーは、23BR(5’-TTCGCCTTTCCCTCACGGTACT-3’)を使用した。
【0173】
増幅されたPCR反応物は、PCR purification kit(iNtRON Co., Ltd, Gyeongido, Korea)を利用して、キット供給社のプロトコール(protocol)によって精製分離された。
【0174】
図11は、Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用したマルチプレックス病原菌バクテリアDNA(リファレンス菌のDNA)のSERS検出結果である。
【0175】
SERS信号は、バクテリアDNAと相補的なプローブDNAを有しているAuナノワイヤでのみ増幅された。このターゲットDNAは、モデルシステムに使用した合成された35−merオリゴヌクレオチドより著しく長いが(S. maltophiliaは119bp, V.vulnificusは131bp, S. aureus は194bp、そしてE. faeciumは347bp)、モデルシステムとほぼ等しいSERS結果を得ることができた。Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用したラベル−フリーDNA検出は、ターゲットDNAの長さに関係ないが、その理由は、乾燥した状況でDNAが崩れて、ナノワイヤとナノ粒子間の距離がSERS増幅のために充分小さく縮まるからである。
【0176】
図12は、クリニック菌のDNAをPCR増幅してターゲットDNAとして使用し、これをAuナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用したSERS検出結果である。図12のクリニック菌DNA検出結果と図11のリファレンス菌DNAの検出結果が類似していることが分かり、これは、感染された患者の病原菌をSERS信号から検出可能であることを提案している。
【0177】
Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用して、7個の臨床検体から四つの病原菌を成功的に検出して(E. faecium; 2, S. aureus : 2, S. maltophilia : 2, そしてV. vulnificus : 1)、SERSを利用した検出結果は、伝統的な培養基盤アッセイ(culture-based assays)結果とよく一致した。
【0178】
以上のように、本発明では、具体的な検出対象物質のように、特定な事項と限定された実施例及び図面を参照して説明したが、これらは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたもので、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の属する分野で通常の知識を有する者なら、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0179】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に局限して定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等なあるいは等価的な変形のあるあらゆるものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明による生化学物質検出方法を示した一例である。
【図2】本発明による生化学物質検出方法を示した他の例である。
【図3】本発明による生化学物質マルチプレックス検出方法を示した一例である。
【図4】ビオチン−アビジン−ビオチンの結合によりAuナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤの走査電子顕微鏡写真(図12(a))、及びアビジンが添加されていない場合のAuナノワイヤの走査電子顕微鏡写真(図12(b))である。
【図5】ビオチン−アビジン−ビオチンの結合によりAuナノ粒子が自己組織化されたAuナノワイヤのSERSスペクトル(図5(a)青色)、アビジンが添加されていない場合のAuナノワイヤのSERSスペクトル(図5(a)紫朱色)、図5(a)に示されたナノワイヤの(b)領域で測定されたナノワイヤの長軸方向とレーザービームの偏光方向とがなす角度θによる1120cm−1ラマンバンド積分値(図5(b))、及び図5(a)に示されたナノワイヤの(c)領域で測定されたナノワイヤの長軸方向とレーザービームの偏光方向とがなす角度θによる1120cm−1ラマンバンド積分値(図5(c))である。
【図6】ビオチンが形成されたAuナノ粒子とビオチンが形成されたAuナノワイヤが分散されたPBS溶液に添加されたアビジンの濃度によるSERSスペクトル(図6(a))、アビジンの濃度によるAuナノワイヤ1×10nm面積においてAuナノワイヤに付着されたAuナノ粒子の数(図6(b)の青色)、及び非特異的結合蛋白質の濃度によるAuナノワイヤ1×10nm面積においてAuナノワイヤに付着されたAuナノ粒子の数(図6の紫朱色)である。
【図7】DNAを検出対象とした検出方法を示した一模式図(図7(a))、特異的DNAとの接触(青色)と非特異的DNAとの接触(紫朱色)によるSERSスペクトル結果(図7(b))、及び特異的DNA及び非特異的DNAとの接触時の走査電子顕微鏡写真(図7(c))である。
【図8】互いに異なるプローブDNAがそれぞれ形成された二つのナノワイヤを含んだマルチプレックスプラットフォームを利用した検出方法を示した一模式図(図8(a))、及びマルチプレックス検出によるSERSスペクトル結果(図8(b)である。
【図9】互いに異なるプローブDNAがそれぞれ形成された四つのナノワイヤを含んだマルチプレックスプラットフォームを利用した検出方法を示した一模式図(図9(a))、マルチプレックス検出によるSERSスペクトル結果(図9(b))、接触するターゲットDNAの種類別検出結果を示したSERSスペクトル結果(図9(c))、及び順次的マルチプレックス検出結果を示したSERSスペクトル結果(図9(d))である。
【図10】検出対象であるDNAモル濃度によるSERSスペクトルの変化(図10(a))、及び検出対象であるDNAのモル濃度とSERSスペクトルの強度との関係を整理して示したもの(図10(b))である。
【図11】Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用したマルチプレックス病原菌バクテリアDNA(リファレンス菌のDNA)のSERS検出結果である。
【図12】Auナノワイヤ−Auナノ粒子構造を利用したクリニック菌DNAのSERS検出結果である。
【符号の説明】
【0181】
100 貴金属ナノワイヤ
200 貴金属ナノ粒子
110 第1受容体
210 第2受容体
300 生化学物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面増強ラマン散乱(SERS;Surface-Enhanced Raman Scattering)を利用して、分析対象が含む生化学物質の存在または含量を検出するための方法であって、
a)第1受容体が形成された単結晶体貴金属ナノワイヤ及び第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子を分析対象物質と接触させて、前記分析対象物質と前記第1受容体の結合、及び前記分析対象物質と前記第2受容体の結合により、前記分析対象物質を中心に前記貴金属ナノワイヤに前記貴金属ナノ粒子を結合させるステップと、
b)前記貴金属ナノワイヤを焦点に前記貴金属ナノ粒子が結合された貴金属ナノワイヤに、偏光されたレーザービームを照射し、表面増強ラマン散乱スペクトルを得るステップと、
を含んで行われる生化学物質検出方法。

【請求項2】
貴金属ナノワイヤまたは貴金属ナノ粒子と分析対象物質間の結合が、酵素−基質、抗原−抗体、蛋白質−蛋白質、DNA間の相補的結合、またはビオチン−アビジン結合であることを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。

【請求項3】
貴金属ナノワイヤの長軸長さが、1μm以上であり、貴金属ナノワイヤの長短軸比(aspect ratio、ナノワイヤ長軸長さ/短軸長さ)が、5〜150であることを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。

【請求項4】
貴金属ナノ粒子の平均粒子大きさが、5nm乃至20nmであることを特徴とする、請求項3に記載の生化学物質検出方法。

【請求項5】
貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり貴金属ナノワイヤ表面に結合された貴金属ナノ粒子の数である結合密度が、前記貴金属ナノワイヤの単位表面積当たり存在するホットスポット(hot spot)の数であるホットスポット密度と同一であることを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。

【請求項6】
分析対象物質がアビジンを含み、第1受容体及び第2受容体がそれぞれビオチンを含み、貴金属ナノ粒子が、貴金属ナノワイヤ及び貴金属ナノ粒子のそれぞれに形成されたビオチンがアビジンを中心に結合したビオチン−アビジン−ビオチンの結合により、貴金属ナノワイヤ表面に自己組織化(self-assembled)されたことを特徴とする、請求項2に記載の生化学物質検出方法。

【請求項7】
アビジンが、検出対象である生化学物質と特異的に結合したアビジンであることを特徴とする、請求項6に記載の生化学物質検出方法。

【請求項8】
分析対象物質がターゲットDNAを含み、第1受容体がプローブDNAを含み、第2受容体がラマンダイ(Raman dye)が付着されたレポーターDNAを含み、
前記ターゲットDNAと前記プローブDNAの相補的結合及び前記ターゲットDNAと前記レポーターDNAの相補的結合により、前記貴金属ナノ粒子が前記貴金属ナノワイヤ表面に自己組織化されたことを特徴とする、請求項2に記載の生化学物質検出方法。

【請求項9】
物理的に分離されており、互いに異なる第1受容体が形成された二つ以上の単結晶体貴金属ナノワイヤ及び互いに異なる第2受容体が形成された貴金属ナノ粒子を分析対象物質と接触させて、貴金属ナノワイヤ別に異なる生化学物質が検出されることを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。

【請求項10】
物理的に分離されており、互いに異なるプローブDNAが形成されたN(N>1の自然数)個以上の単結晶体貴金属ナノワイヤ及びラマンダイが付着されたレポーターDNAが形成された単一の種類の貴金属ナノ粒子を、1乃至N個のターゲットDNAを含有する分析対象物質と接触させ、貴金属ナノワイヤ別に異なるターゲットDNAが検出されることを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。

【請求項11】
一つ以上の貴金属ナノワイヤが、基板上位置アドレッシングにより分別されることを特徴とする、請求項9または10に記載の生化学物質検出方法。

【請求項12】
検出対象である生化学物質がDNAであり、検出対象であるDNAの濃度(M)10−11乃至10−8でDNA濃度と、ステップb)の表面増強ラマン散乱スペクトルの強度が線形的に比例することを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。

【請求項13】
貴金属ナノワイヤが、Au、Ag、PtまたはPdナノワイヤであり、貴金属ナノ粒子が、前記貴金属ナノワイヤと同一物質であるAu、Ag、PtまたはPdナノ粒子であることを特徴とする、請求項3に記載の生化学物質検出方法。

【請求項14】
表面増強ラマン散乱が、貴金属ナノワイヤを焦点として有する偏光されたレーザービームが単一の貴金属ナノワイヤの長軸方向中心に照射されて発生されることを特徴とする、請求項1に記載の生化学物質検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−81001(P2011−81001A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229292(P2010−229292)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】