説明

表面増強ラマン散乱(SERS)を使用した微生物鑑定またはその形態変化検出方法

【課題】微生物の種類と菌株の区別、抗生物質または抗菌剤の細菌細胞に対する影響の鑑定、結核病の感染の検出を可能にする、微生物鑑定またはその形態変化検出方法を提供する。
【解決手段】微生物をSERS活性基板上に配置し、固定液で微生物を固定して微生物のSERSスペクトルを取得し、該SERSスペクトルを分析して曲線図を生成する。微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出するために、微生物をSERS活性基板上に配置し、固定液で微生物を固定し、微生物に対し有効量の抗菌剤または感染性病原体を加えて微生物のSERSスペクトルを取得し、SERSスペクトルと対照群(抗菌剤または感染性病原体を加えていない)のSERSスペクトルを比較し、少なくとも1つの新ピークを取得し、抗菌剤または感染性病原体の影響を鑑定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し、微生物の鑑定及び抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化の検出を行う方法及び装置に関するものである。本発明はさらに臨床検査において結核菌を検出する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光法を用いた細菌及び真菌の迅速な鑑定には、多くの人々が興味を寄せており、すでに非常に潜在性のある全有機体フィンガープリント技術として認識されている。Jarvisらによる増強ラマン散乱(SERS)の研究は、凝集した銀コロイド基板をバチルス属(Bacillus)中の関係が近い細菌群の分析に採用している(R. M. Jarvis, A. Brookerb and R. Goodacre, Faraday Discuss.,2006, 132, 281-292.)。結果はSERS分光法には正確に菌株(strain)レベルの鑑定ができるほど高い識別力があることを示している。
【0003】
しかしながら、コロイド基板を使用するこの方法は、再現性と安定性において、ナノ粒子を埋設したまたはナノ粒子に被覆された固体薄膜を使用する方法ほど優れていない。
【0004】
Premasiriらの研究において、新規金ナノ粒子(約80nm)で被覆した二酸化ケイ素基板を使用した場合、一部の細菌の種類(species)及び菌株(strains)のSERSは785nmで励起されることが報告されている(W. R. Premasiri, D. T. Moir,M. S. Klempner, N. Krieger, G. Jones II, and L. D. Ziegler, J. Phys. Chem. B 2005, 109, 312-320)。結果では、SERSの振動信号(vibrational signatures)とSERS活性基板の形態および性質が強い関連性を持つことが示されている。これらの結果は、金粒子で被覆したガラス状基板上でのSERSを用いた細菌性病原体の種類及び株特異性の検出及び鑑定における潜在性を証明している。
【0005】
この領域を熟知した技術者であれば理解できるように、Premasiriらの方法に基づくと、SERS信号を獲得する前に、まず固体基板上の細菌懸濁液を乾燥させる必要がある。さもなければ、細菌の移動が結果に影響を与えてしまう。
【0006】
近年、新しい抗菌剤の数がすでに大幅に減少しており、それに伴って多剤耐性病原体が増加している。薬理材料の作用モードの特性を迅速かつ高い信頼性で特徴付けられる先進科学技術を運用し、新しい抗生物質を発見することは非常に重要な挑戦である。SERSを使用した抗生物質の細菌に対する影響をモニタリングすることは、新しい抗生物質の開発とスクリーニングの有効な方法である。この方法を達成するため、細菌を有水環境で培養し、抗生物質中に暴露する必要がある。
【0007】
結核病(Tuberculosis(TB))は、結核菌(主にヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis))により引き起こされる普遍的な致命的伝染病である。結核病は肺部に損傷を与えることが最も多いが、中枢神経系やリンパ系、循環器系、泌尿生殖器系、骨、関節、皮膚にも影響を与える。現在、結核病の診断にはツベルクリン皮膚検査、血清検査、微生物塗布標本と培養、胸部X線、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などが含まれる。
【0008】
現在使用されている検査方法は、臨床診療において迅速に結核菌(Tubercle Bacillus)を検出する、または迅速に治療成果を確認するというニーズを満たすことができない。上述から分かるように、より迅速かつ高感度の検査方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R. M. Jarvis, A. Brookerb and R. Goodacre, Faraday Discuss.,2006, 132, 281-292.
【非特許文献2】W. R. Premasiri, D. T. Moir,M. S. Klempner, N. Krieger, G. Jones II, and L. D. Ziegler, J. Phys. Chem. B 2005, 109, 312-320.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、(1)微生物の種類と菌株を区別する、(2)抗生物質または抗菌剤の細菌細胞に対する影響を鑑定する、及び(3)結核病の感染を検出することを可能にする、表面増強ラマン散乱(SERS)を使用した微生物鑑定またはその形態変化検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し、微生物を鑑定する方法は、(a)微生物をSERS活性基板上に配置する、(b)固定液で微生物を固定する、(c)手順(b)中の微生物のSERSスペクトルを取得する、及び(d)該SERSスペクトルを分析して微生物の曲線図を生成する、という手順を含む。
【0012】
本発明の最良の実施例において、SERS活性基板は、ナノ粒子を埋設した、またはナノ粒子に被覆された固体薄膜とする。該ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、銀/金、白金/金、銅/金のコアシェル及び合金粒子から構成されるグループから選択する。より良い実施例においては、銀/陽極酸化アルミ(AAO)基板を採用する(王玉麟教授より銀充填多孔陽極酸化アルミナノチャンネル(Silver‐filled porous anodic aluminum oxide nanochannels)の提供を受けた)。
【0013】
本発明において言及する固定液は、微生物を移動できなくすると共に、その生命を有水環境中で維持させるものである。最良の実施例において、該固定液はアガロースゲル(agarose gel)とグリセロールから構成されるグループから選択する。一実施例において、固定液に採用する濃度は、0.05%〜5%のアガロースゲルとする。良い実施例において、固定液に採用する濃度は、0.1%〜3%のアガロースゲルとする。より良い実施例において、固定液に採用する濃度は、0.2%〜1.5%のアガロースゲルとする。最良の実施例において、固定液に採用する濃度は、0.3%〜0.8%のアガロースゲルとする。
【0014】
本発明において言及する曲線図(profile)は、パターン認識システム(Pattern Recognition System)の補助により微生物の種類または菌株の鑑定に応用される。
【0015】
本発明において言及する微生物は、細菌、真菌、細胞を含み、またこれらに限らない。
【0016】
グラム菌特定フィンガープリントとすることができるラマンシフト(400 cm‐1〜1600 cm‐1)に基づき、本発明において言及する曲線図(profile)は、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌の区別に応用することができる。最良の実施例において、区別ができる範囲は500 cm‐1〜900 cm‐1及び1100 cm‐1〜1500cm‐1である。また、未知の細菌と既知の細菌を比較するSERSスペクトルも区別の目的を達することができる。
【0017】
また、本発明が提供する表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法は、(a)微生物をSERS活性基板上に配置する、(b)固定液で微生物を固定する、(c)微生物に対し有効量の抗菌剤または感染性病原体を加える、(d)手順(c)中の微生物のSERSスペクトルを取得する、及び(e)手順(d)のSERSスペクトルと対照群(抗菌剤または感染性病原体を加えていない)のSERSスペクトルを比較し、少なくとも1つの新ピークを取得し、抗菌剤または感染性病原体の影響を鑑定する、という手順を含む。
【0018】
最良の実施例において、SERS活性基板はナノ粒子を埋設した、またはナノ粒子に被覆された固体薄膜とする。該ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、銀/金、白金/金、銅/金のコアシェル及び合金粒子から構成されるグループから選択する。より良い実施例においては、銀/陽極酸化アルミ(AAO)基板を採用する(王玉麟教授より銀充填多孔陽極酸化アルミナノチャンネル(Silver‐filled porous anodic aluminum oxide nanochannels)の提供を受けた)。
【0019】
本発明中において言及する固定液は、微生物を移動できなくすると共に、その生命を有水環境中で維持させるものである。最良の実施例において、該固定液はアガロースゲル(agarose gel)とグリセロールから構成されるグループから選択する。一実施例において、固定液に採用する濃度は、0.05%〜5%のアガロースゲルとする。良い実施例において、固定液に採用する濃度は、0.1%〜3%のアガロースゲルとする。より良い実施例において、固定液に採用する濃度は、0.2%〜1.5%のアガロースゲルとする。最良の実施例において、固定液に採用する濃度は、0.3%〜0.8%のアガロースゲルとする。
【0020】
一実施例において、前記抗菌剤はアンピシリン(ampicillin)、バシトラシン(bacitracin)、バンコマイシン(vancomycin)、セファロスポリン(cephalosporin)、クロラムフェニコール (chloramphenicol)、エリスロマイシン(erythromycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、カナマイシン(kanamycin)、メトトレキサート(methotrexate)、ネオマイシン(neomycin)、ペニシリン(penicillin)、ポリミキシン(polymyxin)、サルファ剤(sulfonamide)、テトラサイクリン(tetracycline)、ゲンタマイシン(gentamycin)、及びゼオシン(zeocine)(ブレオマイシン系糖タンパク抗生物質)から構成されるグループから選択する。
【0021】
本発明で言及する感染性病原体は、ウイルスまたは伝染性細菌を含み、またこれに限らない。
【0022】
前記方法は、新しい抗生物質の開発及びスクリーニングに応用することができる。
【0023】
対照群のSERSスペクトルと比較してスペクトル上で相対密度の変化が発生した位置を調べ、該方法を抗菌剤または感染性病原体の抗菌機制の予測に応用することができる。
【0024】
本発明はさらに表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物曲線図を生成する装置を提供する。この装置は、(a)微生物をSERS活性基板上に配置する手段、(b)微生物を固定する手段、(c)手順(b)中の微生物SERSスペクトルを取得する手段、及び(d)該SERSスペクトルを分析して微生物曲線図を生成する手段を含む。
【0025】
本発明はさらに表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生する形態変化を検出する装置を提供する。この装置は、(a)微生物をSERS活性基板上に配置する手段、(b)微生物を固定する手段、(c)微生物に対し有効量の抗菌剤または感染性病原体を加える手段、(d)手順(c)中の微生物のSERSスペクトルを取得する手段、及び(e)手順(d)のSERSスペクトルと対照群(抗菌剤または感染性病原体を加えていない)のSERSスペクトルを比較し、少なくとも1つの新ピークを取得し、抗菌剤または感染性病原体の影響を鑑定する手段、を含む。
【0026】
本発明は微生物が新しい銀/陽極酸化アルミ基板上に置かれたとき、良好な信号対ノイズ比(signal-to-noise)と再現可能なラマン分光を取得することができることをはっきりと証明する。SERSフィンガープリントで細菌の種類をはっきり特別する。このほか、SERSフィンガープリントは抗生物質の処理を経た細菌スペクトルも区別することができる。このため、SERSは新しい抗生物質の開発とスクリーニングの強力かつ有力な方法とすることができる。
【0027】
本発明は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を検出する方法を提供する。この方法は、(a)サンプルをSERS活性基板上に置く、(b)固定液でサンプルを固定する、(c)手順(b)中のサンプルのSERSスペクトルを取得する、(d)該SERSスペクトルを分析してサンプルの曲線図を生成する、(e)サンプルのSERSスペクトルとグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌のSERSスペクトルを比較する、という手順を含む。
【0028】
本発明で言及するサンプルは、血液、血漿、血清、痰、尿液、脳脊髄液、胸膜液(pleura fluid)、組織液を含むが、これらに限らない。最良の実施例において、サンプルは血液、血漿、血清、痰、尿液とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】大腸菌JM109及びその突然変異体大腸菌JM109(突然変異体)のSERSスペクトルの比較図である。
【図2】大腸菌JM109(突然変異体)及び腸球菌7-18uEのSERSスペクトルの比較図である。
【図3A】グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌のSERSスペクトルを示す図である。(a)図はグラム陽性細菌(腸球菌13631、黄色ブドウ球菌13649、黄色ブドウ球菌13615、無乳性レンサ球菌13640、腸球菌7-18uE、腸球菌13641 C2)のSERSスペクトルを示す。(b)図はグラム陰性細菌(大腸菌JM109(野生型)、大腸菌JM109(突然変異体)、クレブシエラ肺炎桿菌13641 C1、ミラビリス変形菌13621 C1、エンテロバクター・クロアカ 13457 C2、大腸菌13594 C1、大腸菌13650、及び大腸菌13634)のSERSスペクトルを示す。
【図3B】グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌のSERSスペクトルを示す図である。(a)図はグラム陽性細菌(腸球菌13631、黄色ブドウ球菌13649、黄色ブドウ球菌13615、無乳性レンサ球菌13640、腸球菌7-18uE、腸球菌13641 C2)のSERSスペクトルを示す。(b)図はグラム陰性細菌(大腸菌JM109(野生型)、大腸菌JM109(突然変異体)、クレブシエラ肺炎桿菌13641 C1、ミラビリス変形菌13621 C1、エンテロバクター・クロアカ 13457 C2、大腸菌13594 C1、大腸菌13650、及び大腸菌13634)のSERSスペクトルを示す。
【図4A】グラム陽性細菌(無乳性レンサ球菌13640と黄色ブドウ球菌13615)及びグラム陰性細菌(エンテロバクター・クロアカ 13457 C2とミラビリス変形菌13621 C1)の連続SERSスペクトル検出を示す図である。(a)図はグラム陽性細菌(無乳性レンサ球菌13640と黄色ブドウ球菌13615)のスペクトルを示す。(b)図はグラム陰性細菌(エンテロバクター・クロアカ 13457 C2とミラビリス変形菌13621 C1)のスペクトルを示す。
【図4B】グラム陽性細菌(無乳性レンサ球菌13640と黄色ブドウ球菌13615)及びグラム陰性細菌(エンテロバクター・クロアカ 13457 C2とミラビリス変形菌13621 C1)の連続SERSスペクトル検出を示す図である。(a)図はグラム陽性細菌(無乳性レンサ球菌13640と黄色ブドウ球菌13615)のスペクトルを示す。(b)図はグラム陰性細菌(エンテロバクター・クロアカ 13457 C2とミラビリス変形菌13621 C1)のスペクトルを示す。
【図5】抗生物質敏感株大腸菌JM109のSERSスペクトルを示す図である。処理を経ていないJM109スペクトルと比較し、10 μg/mlアンピシリン処理35分間を経たJM109は、そのスペクトルが700cm−1で新ピークがあり、アンピシリンによる新分子結合の振動を証明している。
【図6】抗生物質敏感株大腸菌JM109(突然変異体)のSERSスペクトルを示す図である。処理を経ていないJM109(突然変異体)スペクトルと比較し、25 μg/mlバシトラシン処理48分間を経たJM109(突然変異体)は、そのスペクトルが700cm−1で新ピークがあり、バシトラシンによる新分子結合の振動を証明している。
【図7】抗生物質敏感株黄色ブドウ球菌13649のSERSスペクトルを示す図である。25 μg/mlバンコマイシン処理54分間を経た後、800 cm-1〜1500cm−1で出現した新ピークは、バンコマイシンによる新分子結合の振動を証明している。
【図8】抗生物質敏感株大腸菌JM109(突然変異体)のSERSスペクトルを示す図である。処理を経ていないJM109(突然変異体)スペクトルと比較し、50 μg/mlテトラサイクリン処理を経たJM109(突然変異体)は、そのスペクトルが440cm−1及び1242cm−1で新ピークがあり、異なる時間点におけるテトラサイクリンによる新分子結合の振動を証明している。
【図9】抗生物質敏感株大腸菌JM109(突然変異体)のSERSスペクトルを示す図である。処理を経ていないJM109(突然変異体)スペクトルと比較し、50 μg/mlテトラサイクリン処理を経たJM109(突然変異体)は、そのスペクトルが418cm−1、565cm−1、833cm−1、905cm−1、1225cm−1で新ピークがあり、異なる時間点におけるテトラサイクリンによるいくつかの新分子結合の振動を証明している。
【図10】抗生物質敏感株大腸菌13650のSERSスペクトルを示す図である。25 μg/mlのゲンタマイシン処理37分間を経た後、418cm−1及び800cm−1〜1500cm−1で出現した新ピークは、ゲンタマイシンによる新分子結合の振動を証明している。
【図11】薬剤耐性株腸球菌7-18uEのSERSスペクトルを示す図である。アンピシリンまたはバシトラシン処理を経た後の7-18uEスペクトル上にはいかなる変化も観察されず、7-18uEの薬剤耐性を証明している。
【図12】グラム陽性細菌、グラム陰性細菌及び結核菌のSERSスペクトルを示す図である。
【図13】対数期開始段階(OD600= 0.4)、静止期接近(OD600= 1.5)または静止期(OD600= 2.0)にある大腸菌のSERSスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は異なる形式で実施することが可能であり、以下の文中で言及する実施例のみに限られない。以下の実施例は本発明の異なる面及び特徴を示す代表的なものである。
【実施例1】
【0031】
実施例1:材料と方法
細菌サンプルと抗生物質の準備
大腸菌(Escherichia coli)JM109、大腸菌JM109(突然変異体)、腸球菌(Enterococcus faecalis)7-18uE、腸球菌(Enterococcus faecium)13631、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)13649、黄色ブドウ球菌13615、無乳性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)13640、腸球菌13641 C2、クレブシエラ肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)13641 C1、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)13621 C1、エンテロバクター・クロアカ (Enterobacter cloacae)13457 C2、大腸菌13594 C1、大腸菌13650、大腸菌13634等の14個の実験室株を分析した。細菌を5mlのLBブロス中でOD600値がほぼ0.5に等しくなるまで培養した(約6時間)。PBSで5回洗浄した後、それを0.1mlのPBS中に再懸濁した。約3〜5μlの細菌懸濁液を銀/陽極酸化アルミ基板上に置いた。0.5%のアガロースゲルを使用して細菌サンプルを固定し、細菌の移動を抑制した。実施例においてはアンピシリン、バシトラシン、バンコマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン等五種類の抗生物質を使用した。前の三種類は細菌の細胞壁の形成に干渉することができ、後の二種類はtRNAとリボソームの連結を中断することで細菌中の蛋白質の合成を抑制するものである。
【0032】
ラマン顕微鏡学及び高度ラマン増強の基板
ジョバン・イボン・ラマン顕微鏡(Jobin Yvon Ramanmicroscope(型番LabRAM HR800)を使用して632.8nmヘリウム−ネオンレーザーで励起される散乱を観察した。スペクトルデータの採集時間は約1〜10秒の範囲とし、100倍の顕微鏡対物レンズでSERSスペクトルを収集した。銀/陽極酸化アルミ基板は、一部に陽極酸化アルミナノチャンネルが埋設された、銀ナノ粒子アレイから成るSERS活性基板とした。該基板は極めて高いラマン信号増強因子を示した((H. H. Wang, C. Y. Liu, S. B. Wu, N. W. Liu, C. Y. Peng, T. H. Chan, C. F. Hsu, J. K. Wang, and Y. L. Wang, Adv. Mater.,2006, 18, 491-495)。
【0033】
信号分析
パターン認識システムを使用してSERSで取得したすべての信号を分析した。パターン認識システム(Pattern Recognition System)は学習機能を備え、先の知識またはパターンの統計資料を基礎として、データ(パターン)の分類の補助とすることができるものであり、分類または描写したい観察資料(例:SERS)を収集するセンサ、観察資料の数字または符号情報を計算する特徴抽出メカニズム、実際に観察資料の分類または描写を行う分類・描写スキーム、及び分類効率の推定と検査の補助をするこのクラスタリング法の誤差推定メカニズムを含む。
【0034】
本発明において採用する特徴抽出方法は、(a)2090個の原始データから得られたSERS平均値に基づき、各サンプルを標準化すると共にベクトル1.0としてまとめる、(b)手順(a)で得られたデータの対数を取る、(c)2090個のデータ中の最強信号部分の総和をベクトル1.0として標準化する、(d)手順(c)のデータから最も区別性のある部分を取り出す、という手順を含む。
【0035】
本発明において採用した分類法はK平均アルゴリズム(K‐means algorithm)及びサポートベクトルマシン(Support Vector Machine)である。
【実施例2】
【0036】
実施例2:SERS曲線図の生成を利用した細菌の異なる菌株の鑑定。
図1に示すように、大腸菌JM109株及び大腸菌JM109(突然変異体)株のSERSスペクトルを取得した。野生型株JM109と突然変異株JM109のスペクトルは明らかに互いに異なり、SERSが異なる菌株の細菌の検出と鑑定時に株特異性を備えていることを証明した。
【実施例3】
【0037】
実施例3:SERS曲線図の生成を利用した細菌の異なる種類の鑑定。
図2に示すように、大腸菌JM109(突然変異体)株及び腸球菌7-18uE株のSERSスペクトルを取得する。大腸菌JM109(突然変異体)と腸球菌7-18UEのスペクトルは明らかに互いに異なり、SERSが異なる種類の細菌の検出と鑑定時に種類特異性を備えていることを証明した。
【実施例4】
【0038】
実施例4:曲線図の生成を利用したグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の鑑定。
図3に示すように、グラム陽性細菌(腸球菌13631、黄色ブドウ球菌13649、黄色ブドウ球菌13615、無乳性レンサ球菌13640、腸球菌7-18uE、腸球菌13641 C2)及グラム陰性細菌(大腸菌JM109(野生型)、大腸菌JM109(突然変異体)、クレブシエラ肺炎桿菌13641 C1、ミラビリス変形菌13621 C1、エンテロバクター・クロアカ 13457 C2、大腸菌13594 C1、大腸菌13650、及び大腸菌13634)のSERSスペクトルを取得した。グラム陽性細菌とグラム陰性細菌のスペクトルは明らかに互いに異なり、SERSが異なる種類の細菌を区別するとき種類特異性を備えていることを証明した。
【実施例5】
【0039】
実施例5:グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌のSERSスペクトルの連続検出。
SERS曲線図の安定性が時間に伴って変化するか否かを検査するため、異なる時間点で連続検出し、グラム陽性細菌(無乳性レンサ球菌13640及び黄色ブドウ球菌13615)とグラム陰性細菌(エンテロバクター・クロアカ 13457 C2及びミラビリス変形菌13621 C1)のSERSスペクトルを取得する。結果を図4に示す。SERS曲線図と相対密度の信号が少なくとも59分間安定していることが証明された。
【実施例6】
【0040】
実施例6:SERSを利用した抗生物質アンピシリン及びバシトラシンの細菌に対する影響のモニタリング。
抗生物質敏感株大腸菌JM109を0.5%アガロースゲルで固定した後、10 μg/mlのアンピシリンで35分間処理し、抗生物質の細菌に対する影響を鑑定した。アンピシリン処理を経たJM109のスペクトルと処理を経ていないJM109のスペクトルは明らかに異なった(図5)。アンピシリン処理を経たJM109のスペクトル上の700cm−1箇所の新ピークは、アンピシリンによる新しい分子結合の振動を証明している。
【0041】
抗生物質の細菌に対する影響をさらに鑑定するため、別の抗生物質敏感株大腸菌JM109(突然変異体)を0.5%アガロースゲルで固定した後、25 μg/mlのバシトラシンで48分間処理した。バシトラシン処理を経たJM109(突然変異体)のスペクトルと処理を経ていないJM109(突然変異体)のスペクトルは明らかに異なった(図6)。バシトラシン処理を経たJM109(突然変異体)のスペクトル上の700cm−1箇所の新ピークは、バシトラシンによる新しい分子結合の振動を証明している。
【0042】
図3と図4において、いずれも700cm−1箇所で発生した新ピークは、アンピシリン及びバシトラシンの2種類が細胞壁に作用する抗生物質であり、細菌の細胞壁の形成に干渉し、かつ細胞壁の形態変化を促したことを証明している。
【実施例7】
【0043】
実施例7:SERSを利用した抗生物質バンコマイシンの細菌に対する影響のモニタリング
その他細胞壁に影響する抗生物質のその他細菌株に対する影響を鑑定するため、抗生物質敏感株黄色ブドウ球菌13649を0.5%アガロースゲルで固定した後、25μg/mlのバンコマイシンで54分間処理した。800cm−1〜1500cm−1で出現した新ピークは、バンコマイシンのような細胞壁に作用する抗生物質が、細菌の細胞壁の形成に干渉し、かつ細胞壁の形態変化を促すことを証明している(図7)。
【実施例8】
【0044】
実施例8:SERSを利用した抗生物質テトラサイクリンの細菌に対する影響のモニタリング
抗生物質の細菌に対する影響を鑑定するため、抗生物質敏感株大腸菌JM109(突然変異体)を0.5%アガロースゲルで固定した後、50 μg/mlのテトラサイクリンで処理した。異なる時間点でスペクトルの結果を取得した(図8及び図9)。異なる時間点で異なる新ピークが観察され、異なる時間点における異なる新しい分子結合の振動が証明された。この現象はテトラサイクリンが蛋白質合成を抑制した後の動態的新陳代謝を完全に反映している。
【実施例9】
【0045】
実施例9:SERSを利用した抗生物質ゲンタマイシンの細菌に対する影響のモニタリング
その他蛋白質合成に干渉する抗生物質のその他細菌株に対する影響を鑑定するため、抗生物質敏感株大腸菌13650を0.5%アガロースゲルで固定した後、25 μg/mlのゲンタマイシンで37分間処理した。418cm−1及び800cm−1〜1500cm−1で出現した新ピークは、ゲンタマイシンにより促進された細菌の形態変化が蛋白質合成の抑制によるものであることを証明した(図10)。
【実施例10】
【0046】
実施例10:SERSを利用した抗生物質の薬剤耐性(Drug-Resistant)株に対する影響のモニタリング。
抗生物質の細菌に対する影響を証明するため、薬剤耐性株腸球菌7-18uEを0.5%アガロースゲルで固定した後、10 μg/mlのアンピシリンで35分間、または25 μg/mlのバシトラシンで48分間処理した。抗生物質敏感株大腸菌JM109及び大腸菌JM109(突然変異体)のスペクトルと比較すると、抗生物質の処理を経た後の薬剤耐性株腸球菌7-18uEのスペクトル上にはいかなる変化も観察されなかった(図11)。
【実施例11】
【0047】
実施例11:SERSスペクトルを利用した結核菌の検出
実施例1の手順は、結核菌の検査にも応用することができる。図12にグラム陽性細菌、グラム陰性細菌及び結核菌のスペクトルを示す。結核菌のスペクトルはその他と明らかに異なる。
【実施例12】
【0048】
実施例12:SERSスペクトルを利用したグラム陰性細菌の異なる生長状態の検出
対数期と静止期の開始段階および中間階段にある大腸菌(OD600それぞれ0.4、1.5、2.0)を測定し、グラム陰性細菌の異なる生長状態を鑑定した。対数期の開始段階(OD600= 0.4)、静止期近く(OD600= 1.5)または静止期(OD600= 2.0)にある細菌のSERSスペクトルは、SERS曲線図上で特徴的な変化があった(図13)。細菌が対数期から静止期に成長したとき、655cm−1(#1)、1130cm−1(#4)、1219cm−1(#5)、1245cm−1(#6)でのピーク強度が徐々に増加し、725cm−1(#2)及び1095cm−1(#3)でのピーク強度が徐々に減少した。
【0049】
この領域の技術を熟知した者であればすぐに分かるように、本発明は非常に容易に目標を達成することができ、かつ上述のような結果と利点、およびその中に本来存在しているものを得ることができる。本発明の細菌株、細胞株、抗生物質、固定溶液、反応剤、SERS活性基板、設備、プロセス、製造方法は最良の実施例の代表であり、例示的なものであると同時に、本発明の領域を限定するものではない。この技術を熟知した者であれば変更やその他用途を思いつくことができる。これら変更はすべて本発明の要旨に含まれるものとし、かつ特許請求の範囲において定義される。
【0050】
この領域の技術を熟知した者であれば、本発明の範囲と要旨から逸脱せずに、本文中に開示した発明の各種異なる代替や変化をすぐに行うことが可能である。明細書中で言及したあらゆる特許及び出版品は、本発明が関連する領域の一般技術を示すものである。ここにおけるあらゆる特許及び出版品は、個別の出版品が具体的かつ単独で参照により組み込まれることが示される状況と同程度に、参照により組み込まれる。
【0051】
ここで適切に例を挙げて説明した発明は、いずれかの要件またはいくつかの要件を欠いた状況、或いは本文中で特に開示していない制限状況下で実施することが可能である場合がある。使用した名詞及び表現は、明細書の描写のためのものであり、制限のためのものではない。同時に、ここに示したおよび描写した特徴またはその一部のあらゆる同等物を排除する名詞及び表現を使用することを意図していないが、本発明の特許請求の範囲内において、各種異なる変更が可能であることを認識しておく必要がある。このため、最良の実施例及び任意の特徴に基づいて本発明を具体的に開示してきたが、この技術を熟知した者であれば開示された内容に変更や変化を行うことが可能であり、そのような変更や変化は本発明の特許請求の範囲内に含まれることを理解する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法であって、
(a)微生物をSERS活性基板上に配置する、
(b)固定液で微生物を固定する、
(c)手順(b)中の微生物のSERSスペクトルを取得する、
(d)該SERSスペクトルを分析して微生物の曲線図を生成する、
という手順を含む、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記SERS活性基板がナノ粒子を埋設した、またはナノ粒子に被覆された固体薄膜であることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記ナノ粒子が、金、銀、銅、白金、銀/金、白金/金、銅/金のコアシェル及び合金粒子から構成されるグループから選択されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記固定液が、微生物を移動できなくすると共に、その生命を有水環境中で維持させることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記固定液が、アガロースゲル(agarose gel)及びグリセロールから構成されるグループから選択されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記曲線図が、微生物の種類または菌株の鑑定に応用されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記曲線図が、パターン認識システム(Pattern Recognition System)から生成されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記微生物が、細菌、真菌、または細胞であることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記SERSスペクトルが、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌の区別に用いられることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、前記区別がラマンシフトに基づいて行われ、識別力のある範囲が500cm−1〜900cm−1及び1100cm−1〜1500cm−1であることを特徴とする、 表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項11】
請求項9に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法において、さらに未知の細菌と既知の細菌のSERSスペクトルを比較する方法を含むことを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して曲線図を生成し微生物を鑑定する方法。
【請求項12】
表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法であって、
(a)微生物をSERS活性基板上に配置する、
(b)固定液で微生物を固定する、
(c)微生物に対し有効量の抗菌剤または感染性病原体を加える、
(d)手順(c)中の微生物のSERSスペクトルを取得する、
(e)手順(d)のSERSスペクトルと対照群(抗菌剤または感染性病原体を加えていない)のSERSスペクトルを比較し、少なくとも1つの新ピークを取得し、抗菌剤または感染性病原体の影響を鑑定する、という手順を含む、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記SERS活性基板が、ナノ粒子を埋設した、またはナノ粒子に被覆された固体薄膜であることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項14】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記固定液が、微生物を移動できなくすると共に、その生命を有水環境中で維持させることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項15】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記固定液が、アガロースゲル(agarose gel)及びグリセロールから構成されるグループから選択されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項16】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記微生物が細菌、真菌、または細胞であることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項17】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記抗菌剤が、アンピシリン(ampicillin)、バシトラシン(bacitracin)、バンコマイシン(vancomycin)、セファロスポリン(cephalosporin)、クロラムフェニコール (chloramphenicol)、エリスロマイシン(erythromycin)、 ハイグロマイシン(hygromycin)、カナマイシン(kanamycin)、メトトレキサート(methotrexate)、ネオマイシン(neomycin)、ペニシリン(penicillin)、ポリミキシン(polymyxin)、サルファ剤(sulfonamide)、テトラサイクリン(tetracycline)、ゲンタマイシン(gentamycin)、及ゼオシン(zeocine)(ブレオマイシン系糖タンパク抗生物質)から構成されるグループから選択されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項18】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記感染性病原体がウイルスまたは伝染性細菌であることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項19】
請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法において、前記方法が、新しい抗生物質の開発とスクリーニングに応用されることを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項20】
対照群のSERSスペクトルと比較してスペクトル上で相対密度の変化が発生した位置を調べ、抗菌剤または感染性病原体の抗菌機制の予測に応用することを特徴とする、請求項12に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物の抗菌剤または感染性病原体により発生した形態変化を検出する方法。
【請求項21】
表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物曲線図を生成する装置であって、
(a)微生物をSERS活性基板上に配置する手段、
(b)微生物を固定する手段、
(c)手順(b)中の微生物のSERSスペクトルを取得する手段、
(d)前記SERSスペクトルを分析して微生物曲線図を生成する手段、
を含む、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して微生物曲線図を生成する装置。
【請求項22】
表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して抗菌剤または感染性病原体により発生した微生物の形態変化を検出する装置であって、
(a)微生物をSERS活性基板上に配置する手段、
(b)微生物を固定する手段、
(c)微生物に対し有効量の抗菌剤または感染性病原体を加える手段、
(d)手順(c)中の微生物のSERSスペクトル取得する手段、
(e)手順(d)のSERSスペクトルと対照群(抗菌剤または感染性病原体を加えていない)のSERSスペクトルを比較し、少なくとも1つの新ピークを取得して抗菌剤または感染性病原体の影響を鑑定する手段を含む、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して抗菌剤または感染性病原体により発生した微生物の形態変化を検出する装置。
【請求項23】
請求項22に記載の表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して抗菌剤または感染性病原体により発生した微生物の形態変化を検出する装置において、前記手段(e)が、パターン認識システム(Pattern Recognition System)を含むことを特徴とする、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して抗菌剤または感染性病原体により発生した微生物の形態変化を検出する装置。
【請求項24】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を検出する方法であって、
(a)サンプルをSERS活性基板上に置く、
(b)固定液でサンプルを固定する、
(c)手順(b)中のサンプルのSERSスペクトルを取得する、
(d)前記SERSスペクトルを分析してサンプルの曲線図を生成する、
(e)サンプルのSERSスペクトルとグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌のSERSスペクトルを比較する、
という手順を含む、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を検出する方法。
【請求項25】
請求項24に記載の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を検出する方法において、前記サンプルが、血液、血漿、血清、痰、尿液、腦脊髄液、胸膜液(pleura fluid)、組織液のいずれかであることを特徴とする、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−223671(P2010−223671A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69638(P2009−69638)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(507388074)国立陽明大学 (6)
【Fターム(参考)】