説明

表面実装クリップ

【課題】対面状態で対をなして間に差し込まれた板材を弾性反発力で挟持する挟持バネ部を備える表面実装クリップにおいて、挟持バネ部に挿入された板材との電気的な接触を安定させること。
【解決手段】シールドケースCの周壁Wを対をなした挟持バネ部12L、12Rの間に差し込む。周壁Wの下端が底バネ部17を押圧して下向きに弾性変形させる。穴Hが突起15eに係止されると「カチッ」という手応えがあって停止する。穴Hを突起15eにて係止し、底バネ部17の弾性反発力が周壁Wを押し上げる力として作用するので、シールドケースCに対する保持力も、電気的な導通も極めて優れたものになる。振動が加えられた場合に底バネ部17とシールドケースCの周壁Wの下端とが分離するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に半田付けされて、例えばシールドケースの固定に使用される表面実装クリップの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に半田付けされて、例えばシールドケースの固定に使用される表面実装クリップがある。
特開2005−332953号公報(特許文献1)には、薄板状の金属部材を折り曲げて形成され、プリント配線板に半田付けされる少なくとも2箇所の固着部と、前記固着部の間に配される浮底部と、対面状態で対をなして前記浮底部に立設されて間に差し込まれた板材を弾性反発力で挟持する挟持バネ部と、隣り合う前記浮底部と前記固着部との間に介在して前記固着部が前記プリント配線板に半田付けされた際に前記浮底部を前記プリント配線板から浮いた状態にする弾性脚部とを備える表面実装クリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−332953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の表面実装クリップのように、挟持バネにてシールドケースの周壁を挟持するのみであると、シールドケース挿入時に挟持バネ部を変形させ電気的に接触が不安定になるおそれがあった。
【0005】
このような問題を解決するために、シールドケースの挿入性を簡易に行え接触追従性を向上させるものがあるが、課題が解決に至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の表面実装クリップは、
薄板状の金属部材を折り曲げて形成された表面実装クリップであり、平面を有した底面部と、前記底面部の一部から延出され対面状態で対をなして立設され間に差し込まれた板材を弾性反発力で挟持する挟持バネ部とを備える表面実装クリップにおいて、
前記底面部又は前記挟持バネ部の一部を切り起こして形成されており、前記対をなした挟持バネ部の間に差し込まれた板材の下端によって上面を押圧される底バネ部を設けた
ことを特徴とするので、
対をなした挟持バネ部の間に差し込まれた板材(例えばシールドケースの周壁)の下端にて底バネ部の上面を押圧して底バネ部を弾性変形させることで、振動が加えられた場合に底バネ部と板材(例えばシールドケースの周壁)の下端とが分離するのを防止できる。すなわち、底バネ部と板材(例えばシールドケースの周壁)の下端との接触導通を確保できるので電気的に安定する。また、底バネ部との接触であるから板材(例えばシールドケース)とプリント基板との導通経路が短くなって低インピーダンス化するから、EMC対策効果が向上する。
【0007】
なお、表面実装クリップを構成する「薄板状の金属部材」は、例えばリン青銅のようなバネ性金属板を使用するとよい。また、固着部には良好な半田付けを実現するために半田メッキを施してもよい。
【0008】
請求項2記載の表面実装クリップは、
前記底面部は少なくとも2箇所の平面を有しており、
前記底面部の間に配される浮底部と、
隣り合う前記浮底部と前記底面部との間に介在して前記底面部がプリント配線板に半田付けされた際に前記浮底部を前記プリント配線板から浮いた状態にする弾性脚部と
を備えることを特徴とする請求項1記載の表面実装クリップである。
【0009】
この表面実装クリップは、底面部がプリント配線板に半田付けされた際に浮底部をプリント配線板から浮いた状態にするから、シールドケースに歪みがあったり、また表面実装クリップの固定位置に誤差があっても、そうした歪みや誤差に浮底部を首振り状に変形させて対応できる。
【0010】
請求項3記載の表面実装クリップは、
前記底バネ部を形成するための切り込みは前記底面部から前記対をなした挟持バネ部の一方に達していて、前記底バネ部は前記一方の前記挟持バネ部及び底面部に連接されていることを特徴とする請求項1又は2記載の表面実装クリップである。
【0011】
請求項3記載の表面実装クリップでは底バネ部が一方の挟持バネ部及び底面部に連接されているので、対をなした挟持バネ部の間に差し込まれた板材(例えばシールドケースの周壁)の下端にて底バネ部の上面を押圧して底バネ部を弾性変形させると、その力は底バネ部が連接されている挟持バネ部を相手方に向けて倒れる方向に変位させるモーメント力として作用する。これにより、差し込まれた板材(例えばシールドケースの周壁)に対する挟持バネ部の挟持力が増加して、保持力が向上する。
【0012】
一方、差し込まれた板材(例えばシールドケースの周壁)を取り外すために、底バネ部が連接されている挟持バネ部に力を加えて相手方との間隔を広げるように変位させると、その力は底バネ部が板材(例えばシールドケースの周壁)の下端を押し上げる方向のモーメント力として作用する。よって、板材(例えばシールドケースの周壁)を取り外す作業が容易になる。
【0013】
請求項4記載の表面実装クリップは、請求項1、2または3記載の表面実装クリップにおいて、前記挟持バネ部のいずれかには、相手方に向かって突出した突起が設けられているので、挟持バネ部の間に差し込まれる板材(例えばシールドケースの周壁)の適宜の位置に凹部又は穴を設けておいてこれを突起に係止させることで、板材(例えばシールドケースの周壁)を一層確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の表面実装クリップの構造説明図であり、平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)、左側面図(d)、右側面図(e)、D−D断面図(f)、上左斜視図(g)、上右斜視図(h)、下左斜視図(i)、下右斜視図(j)である。
【図2】実施例1の表面実装クリップにてシールドケースを保持する手順の説明図であり、表面実装クリップにシールドケースを接近させた状態の平面図(a)、A−A断面図(b)、挟持部間にシールドケースの下端部を差し込んだ状態の平面図(c)、B−B断面図(d)、シールドケースの下端部で底バネ部を押圧した状態の平面図(e)、C−C断面図(f)である。
【図3】実施例2の表面実装クリップの構造説明図であり、平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)、左側面図(d)、右側面図(e)、D−D断面図(f)、上左斜視図(g)、上右斜視図(h)、E−E断面図(i)、下左斜視図(j)、下右斜視図(k)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例1]
図1に示すように、本実施例の表面実装クリップ10は、一対の挟持バネ部12L、12Rを対面状態で配して構成した2つのクリップ13を備えている。 挟持バネ部12L、12R及び浮底部25は一連の基板20の一部である。つまり、挟持バネ部12L、12R及び基板20は一連であり、1枚の金属薄板(本実施例ではバネ用リン青銅)を曲げ加工して形成されている。
【0016】
基板20の両端部には、下面21aが半田付け用の面となる端固着部21がそれぞれ設けられ、中央部にも下面23aが半田付け用の面となる中固着部23が設けられている。なお、中固着部23の上面23bは自動実装機による装着に際してノズルによる吸着面として使用可能な寸法とされている。
【0017】
端固着部21の下面21a及び中固着部23の下面23aは平面であり、それらが共通の平面上に位置するように設計されている。端固着部21と中固着部23との間に配されている浮底部25は弾性脚部31によって端固着部21及び中固着部23と連結されているが、弾性脚部31が端固着部21及び中固着部23から立ち上がっているので浮底部25と下面21a及び下面23aが載る平面との間に隙間が形成される。
【0018】
そして、挟持バネ部12L、12Rの基部は浮底部25に連接されている。
挟持バネ部12Lは、基部であり浮底部25との連接部である下縦部14a、下縦部14aの上端から挟持バネ部12Rに近づく方向に傾斜した傾斜部14b、傾斜部14bの上端からUターン状に下降傾斜した案内部14c、案内部14cの下端から垂下される挟持部14dによって構成される屈曲形状である。
【0019】
挟持バネ部12Rは、基部であり浮底部25との連接部である下縦部15a、下縦部15aの上端から挟持バネ部12Lに近づく方向に傾斜した傾斜部15b、傾斜部15bの上端から上方に延出された挟持部15c、挟持部15cの上端から傾斜部15bとは逆に傾斜した案内部15dによって構成される屈曲形状で、挟持部15cには挟持部14dに向かって突出する突起15eが設けられている。
【0020】
なお、突起15eの先端は挟持部14dに接しており、この状態では挟持部14dと挟持部15cとが平行になる設計である。
また、浮底部25の一部を切り起こして底バネ部17が形成されている。底バネ部17を形成するための切り込みは浮底部25から挟持バネ部12Rの下縦部15aに達していて、底バネ部17は挟持バネ部12Rに連接されている。
【0021】
底バネ部17の先端部は、挟持部14d及び挟持部15cの対向面を下向きに延長した面が交差する位置に配されており、挟持部14d及び挟持部15cの間に差し込んだ板材の下端が底バネ部17の上面に当たる。また底バネ部17の先端部は、浮底部25よりも上方に位置しているので、挟持部14d及び挟持部15cの間に差し込んだ板材の下端で底バネ部17を押圧して、これを下向きに浮底部25に向けて弾性変形させることができる。
【0022】
この表面実装クリップ10は端固着部21の下面21a及び中固着部23の下面23aをプリント配線板に半田付けして使用される。例えば、図2に例示するように2つの表面実装クリップ10を平行状に配置したり、或いは矩形に沿って配置して(図示は省略)、シールドケースCの周壁Wを挟持バネ部12L、12R間に挟持させることでシールドケースCの固定に使用される。
【0023】
シールドケースCは、案内部14cと案内部15dの間にシールドケースCの周壁Wが来るように位置を合わせて(図2(a)、(b)参照)、周壁Wを挟持部14d及び挟持部15cの間に差し込んで(図2(c)、(d)参照)下降させる。
【0024】
やがて周壁Wの下端が底バネ部17を押圧して、これを下向きに浮底部25に向けて弾性変形させるが、周壁Wに設けられた穴Hが突起15eに係止されるまで下降を続ける(図2(e)、(f)参照)。穴Hが突起15eに係止されると「カチッ」という手応えがあるので、適切な押し込み位置で停止できる。しかも、穴Hを突起15eにて係止し、底バネ部17の弾性反発力が周壁Wを押し上げる力として作用するので、シールドケースCに対する保持力も、電気的な導通も極めて優れたものになる。
【0025】
このように、対をなした挟持バネ部12L、12Rの間に差し込まれたシールドケースCの周壁Wの下端にて底バネ部17の上面を押圧して底バネ部17を弾性変形させることで、振動が加えられた場合に底バネ部17とシールドケースCの周壁Wの下端とが分離するのを防止できる。すなわち、底バネ部17とシールドケースCの周壁Wの下端との接触導通を確保できるので電気的に安定する。
【0026】
特に、穴Hを突起15eにて係止し、底バネ部17の弾性反発力が周壁Wを押し上げる力として作用するので、シールドケースCに対する保持力も、電気的な導通も極めて優れたものになる。なお、突起15eの形状は、半円状の凸ではなく、1/4円状として鋭角部を形成して、その鋭角部にて穴Hを係止する構成にすると、本発明の効果が高い。
【0027】
また、底バネ部17との接触であるからシールドケースCとプリント基板との導通経路が短くなって低インピーダンス化するから、EMC対策効果が向上する。
しかも、底バネ部17を形成するための切り込みは浮底部25から挟持バネ部12Rの下縦部15aに達していて、底バネ部17は挟持バネ部12Rに連接されているので、対をなした挟持バネ部12L、12Rの間に差し込まれたシールドケースCの周壁Wの下端にて底バネ部17の上面を押圧して底バネ部17を弾性変形させると、その力は底バネ部17が連接されている挟持バネ部12Rを相手方の挟持バネ部12Lに向けて倒れる方向に変位させるモーメント力として作用する。これにより、差し込まれたシールドケースCの周壁Wに対する挟持バネ部12L、12Rの挟持力が増加して、保持力が向上する。また、シールドケースCの対面する部位に本発明品を各1つずつ以上使用すると、さらに保持力が高くなる。
【0028】
一方、差し込まれたシールドケースCの周壁Wを取り外すために、底バネ部17が連接されている挟持バネ部12Rの案内部15dに力を加えて相手方との間隔を広げるように変位させると、その力は底バネ部17がシールドケースCの周壁Wの下端を押し上げる方向のモーメント力として作用する。よって、シールドケースCを取り外す作業が容易になる。
【0029】
さらに、底バネ部17が浮底部25の一部を切り起こして形成されていて、直接はプリント基板に半田付けされないので、底バネ部17の弾性変形にて半田クラックが生じるのを防止できる。
[実施例2]
実施例1では底バネ部17の延出方向を基板20の幅方向としているが、図3に示すように、基板20の長手方向に沿って底バネ部17を延出することもできる。このようにしても底バネ部17の弾性反発力による効果は実施例1と同様となる。ただし、底バネ部17は挟持バネ部12R(又は12L)に連接されてはいないので、挟持バネ部12R(又は12L)に連接したときの効果は発現しない。
[その他]
詳細の説明は省略するが、実施例1、2の表面実装クリップ10は特許文献1に開示の表面実装クリップと共通の構成を備えていることから、その共通の構成に由来する範囲で特許文献1に開示の表面実装クリップと同様の効果を発揮する。
【0030】
また、実施例1、2では固着部を3箇所、浮底部を2箇所(挟持バネ部を2組)としているが、この3対2の組み合わせに限定されるものではなく、2対1、4対3、5対4等にできることはいうまでもない。
【0031】
また、実施例1、2では基板20を波状に折り曲げて、端固着部21、中固着部23、浮底部25、弾性脚部31を形成しているが、基板20を平面状にしてもよい。その場合、浮底部25を設けたことによる効果は奏さないが、その他の点では実施例1又は2と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0032】
10・・・表面実装クリップ、
12L、12R・・・挟持バネ部、
13・・・クリップ、
15e・・・突起、
17・・・底バネ部、
20・・・基板、
21・・・端固着部、
21a・・・下面、
23・・・中固着部、
23a・・・下面、
25・・・浮底部、
31・・・弾性脚部、
C・・・シールドケース、
H・・・穴、
W・・・周壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の金属部材を折り曲げて形成された表面実装クリップであり、
平面を有した底面部と、前記底面部の一部から延出され対面状態で対をなして立設され間に差し込まれた板材を弾性反発力で挟持する挟持バネ部とを備える表面実装クリップにおいて、
前記底面部又は前記挟持バネ部の一部を切り起こして形成されており、前記対をなした挟持バネ部の間に差し込まれた板材の下端によって上面を押圧される底バネ部を設けた
ことを特徴とする表面実装クリップ。
【請求項2】
請求項1記載の表面実装クリップにおいて、
前記底面部は少なくとも2箇所の平面を有しており、
前記底面部の間に配される浮底部と、
隣り合う前記浮底部と前記底面部との間に介在して前記底面部がプリント配線板に半田付けされた際に前記浮底部を前記プリント配線板から浮いた状態にする弾性脚部と
を備えることを特徴とする表面実装クリップ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の表面実装クリップにおいて、
前記底バネ部を形成するための切り込みは前記底面部から前記対をなした挟持バネ部の一方に達していて、前記底バネ部は前記一方の前記挟持バネ部及び底面部に連接されていることを特徴とする表面実装クリップ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の表面実装クリップにおいて、
前記挟持バネ部のいずれかには、相手方に向かって突出した突起が設けられている
ことを特徴とする表面実装クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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