説明

表面実装型コンデンサ及びその製造方法

【課題】低ESRで且つ大電流に対応できる表面実装型コンデンサを提供する。
【解決手段】板状または箔状の弁作用を有する拡面化した金属を陽極体とし、その表層に誘電体層を形成し、さらに導電性機能高分子膜2、グラファイト層3、銀ペースト層4を順次形成してコンデンサ素子を作製する。特に、前記陽極体の端部に陽極端子8を接続し、銀ペースト層に陰極端子9を接続するに際し、前記陽極端子及び陰極端子を絶縁性の外装ケース(蓋)の実装面に露出するように組み付け、前記外装ケースの前記実装面における陽極端子及び陰極端子を当該外装ケースの内側面に沿うように延長して延長部8’を形成することにより、コンデンサ素子電極との接続面積を広げた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解コンデンサからなる表面実装型コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンデンサとしては、図2A〜図2Dに示す表面実装型コンデンサが知られている(以下、これを従来技術と呼ぶ)。図2Aは表面実装型コンデンサの正断面図であり、図2BはそのA−A’線による側断面図である。また、図2C、図2Dは、それぞれ図2Aに示された表面実装型コンデンサの底面図、平面図である。
【0003】
図2A〜図2Dに示す表面実装型コンデンサは、3端子伝送線路素子タイプとも呼ばれている。この従来技術による表面実装型コンデンサ110は、導電性機能高分子膜2を固体電解質としており、弁作用金属の表面に陽極酸化皮膜層を形成して弁作用金属陽極体1としている。一方、この陽極酸化皮膜層表面の中央部1aを覆うように導電性機能高分子膜2を形成し、さらにその周囲にグラファイト層3、銀ペースト層4を順に形成し陰極部としている。他方、陽極部については弁作用金属がレジスト層5で覆われたレジスト形成部1bの外側の両端部1cまで延在する。両端部1cにそれぞれ陽極導通片6を接合しコンデンサ素子とする。表面実装型コンデンサ110は、通常、複数(ここでは2個)のコンデンサ素子を積層して構成される。
【0004】
コンデンサ素子を積層する場合、積層体はケースに収容され、その底面側には両側に陽極端子8が、それらの間には陰極端子9がそれぞれ備えられる。特に、両側の陽極端子8とこれらの間の陰極端子9は平板状の実装面となるように同一平面に形成され、それぞれ外部端子となる。このような積層体を収容するケースとしてはモールド樹脂ケース12が用いられる。モールド樹脂ケース12は、両側の陽極端子8と陰極端子9との間にできる隙間をモールド樹脂12−11で埋めるとともに機械的に連結するためのモールド樹脂からなる底面部12−1を有し、かつこの底面部12−1に対して直交(直立)する側壁12−2を有する。
【0005】
モールド樹脂ケース12の上側は開口にされ、底面部12−1にはその両側に陽極端子8が設けられ、これらの間に陰極端子9が設けられる。陽極端子8及び陰極端子9は、ケースの内側に露出するケース内側露出部8a及び9aを有する。これらのケース内側露出部8a及び9aに前述のコンデンサ素子の陽極部(陽極導通片6)及び陰極部(銀ペースト層4)を導電ペースト10により接続し、さらにモールド樹脂ケース12の上側周囲を蓋13で覆うことで、表面実装型コンデンサとしている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
なお、コンデンサ素子の積層に際しては、同形態の素子における銀ペースト層4の間を導電ペースト7にて接続する。また、図2Bに示されるように、陰極端子9と銀ペースト層4との間を接続している導電ペースト10を、その両側縁においてモールド樹脂ケース12の内壁に沿って10’で示すように上方に延長し、各コンデンサ素子の側方の銀ペースト層4、及びコンデンサ素子間を接続している導電ペースト7との接続を行う。陽極接合においては導電ペースト、金属接合等にて接合する。
【特許文献1】特開2006−128247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の表面実装型コンデンサはCPU(Central Processing Unit)の電源部のデカップリング回路などで使用されることが多く、その際、陽極端子間に大電流が流れることによりジュール熱が発生する。従来技術では、陽極端子が平面実装面の端子部以外は絶縁性の樹脂などによって外装されているので狭く、コンデンサ素子陽極及び陰極との接続面積が小さく、陽極間の抵抗大の発熱による定格電流の制限や陰極接続面積小によるESR(等価直列抵抗)の増加等の制約を受けていた。
【0008】
そこで、本発明の技術的課題は大電流に対応でき、且つ低ESRの表面実装型コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、少なくとも1つのコンデンサ素子を有し、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を該コンデンサ素子の陽極体とし、前記陽極体の端部からは陽極外部端子が引き出され、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層上には導電性高分子または金属酸化物半導体の固体電解質層が形成され、この固体電解質層には少なくとも導電ペースト層を介して陰極外部端子が接続された多端子の表面実装型コンデンサにおいて、前記陽極外部端子及び陰極外部端子は絶縁性の外装ケースの実装面に露出するように組み付けられ、前記外装ケースの前記実装面における陽極外部端子及び陰極外部端子を当該外装ケースの内側面に沿うように延長することにより、コンデンサ素子電極との接続面積を広げたことを特徴とする。
【0010】
なお、前記陽極外部端子及び陰極外部端子を、それぞれ前記外装ケースの内側面に沿うように上方に延長することによって前記コンデンサ素子を収容するケース状に構成し、前記陽極外部端子と陰極外部端子との間をモールド樹脂で絶縁するとともに両者を連結することが望ましい。
【0011】
本発明によればまた、少なくとも1つのコンデンサ素子を有し、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を該コンデンサ素子の陽極体とし、前記陽極体の端部からは陽極外部端子が引き出され、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層上には導電性高分子または金属酸化物半導体の固体電解質層が形成され、この固体電解質層には少なくとも導電ペースト層を介して陰極外部端子が接続された多端子の表面実装型コンデンサの製造方法において、前記陽極端子と陰極端子とを平板状の実装面となるように同一平面上に形成する工程と、絶縁性の外装ケースの実装面における前記陽極外部端子及び陰極外部端子を当該外装ケースの内側面に沿うように上方に延長してケース状体を形成する工程を実行することにより、前記陽極外部端子及び陰極外部端子におけるコンデンサ素子電極との接続面積を広げたことを特徴とする表面実装型コンデンサの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンデンサ素子電極と外部陽極端子及び外部陰極端子との接続面積を大きくしたことにより、電極接続抵抗を小さくし、大電流で使用する際の発熱に対して温度上昇を低減でき、且つ低ESRの大電流に対応可能な表面実装型コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1A〜図1Dに本発明の実施形態による表面実装型コンデンサを示す。図1Aは、表面実装型コンデンサの正断面図であり、図1BはそのA−A’線による側断面図である。また、図1Cは表面実装型コンデンサの実装面の底面図、図1Dはその上面の平面図である。なお、前述した従来技術による表面実装型コンデンサと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0015】
本実施形態による表面実装型コンデンサ100は、長方形の平板状の固体電解コンデンサであり、3端子伝送線路素子タイプとも呼ばれる。この表面実装型コンデンサ100には、板状または箔状の弁作用金属を陽極に用い、導電性機能高分子膜2を固体電解質として用いる。
【0016】
まず弁作用金属の表面にエッチング等により無数の空孔を形成して表面積を、例えば200倍程度まで大きくする拡面化を施し、図1Aのように、その拡面化した弁作用金属の中央部1aの表層に陽極酸化皮膜層を形成して、弁作用金属陽極体1とする。ここで、弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ等を用いることができる。
【0017】
次に、この陽極酸化皮膜が表層に形成された弁作用金属陽極体1の中央部1aを覆うように、導電性機能高分子膜2を形成し、さらにその周囲にグラファイト層3、銀ペースト層4を順次形成する。その後、弁作用金属陽極体1の中央部1aからレジスト層5で覆われたレジスト形成部1bを介して外側に連続する陽極の両端部1cにそれぞれ陽極導通片6を接合しコンデンサ素子とする。コンデンサ素子を積層する場合、同形態の素子における銀ペースト層4の間を導電ペースト7にて接続する。陽極接合においては導電ペースト、金属等にて接合する。
【0018】
本実施形態においては、積層したコンデンサ素子を収容する手段として、従来技術におけるモールド樹脂ケース12に代えて陽極端子及び陰極端子自体で構成するようにしている。つまり、従来技術では底面部に設けられていた陽極端子8及び陰極端子9をそれらの端縁部において直交(直立)するように上方に向けて延長し、それぞれの延長部8’及び9’と共に上側を開口したケース状に構成している。但し、両側の陽極部8と陰極部9との間は絶縁する必要があるので、これらの間には従来技術と同様、モールド樹脂11が設けられている。モールド樹脂11は、陽極端子8と陰極端子9の隙間を埋めるとともに機械的に連結する。勿論、陽極端子8及び陰極端子9は、実装面となる同一平面上にある。陽極端子8とその延長部8’及び陰極端子9とその延長部9’とで構成されたケース状体には樹脂材料による蓋(外装ケース)13が被せられる。
【0019】
陽極端子8及び陰極端子9はケースの内側に向けて露出するケース内側露出部8a及び9aを有する。積層されたコンデンサ素子の最も下側の銀ペースト層4(陰極部)、陽極導通片6(陽極部)には、それぞれ導電ペースト層10を介して陰極端子9、陽極端子8が接続されている。
【0020】
本実施形態においてはさらに、陽極端子8、陰極端子9に接続されている導電ペースト層10を、それぞれ陽極端子8の延長部8’、陰極端子9の延長部9’の内壁に沿って上方に延長している。つまり、陽極端子8側について言えば、図1Aに示すように、両側の延長部8’の内壁に形成した導電ペースト10’を、積層したコンデンサ素子の最も上側の両端部1cと接続可能な高さまで延長している。一方、陰極端子9側について言えば、図1Bに示すように、両側の延長部9’の内壁に形成した導電ペースト10’を、積層したコンデンサ素子の最も上側の銀ペースト層4と接続可能な高さまで延長している。
【0021】
以上のような構造にすることで、本実施形態においては、陽極端子8及び陰極端子9が、実装面となる同一平面上から側面に関して一定高さを確保するように延長形成されていると言える。
【0022】
その結果、積層された複数のコンデンサ素子のすべての両端部1cが陽極導通片6を介して接続されるだけでなく、延長された導電ペースト10’を介して延長部8’で接続される一方、すべての銀ペースト層4が延長された導電ペースト10’を介して延長部9’で接続される。この後、延長部8’、9’の上端部と蓋13の内壁上端部を接着剤で接続し、本実施形態の表面実装型コンデンサ100を得る。
【0023】
なお、本実施形態で用いる導電性機能高分子膜2には、ピロール、チオフェン等を用いることができるが、導電性機能高分子膜に代えて二酸化マンガンなどの金属酸化物半導体を用いることもできる。また、陽極端子8、陰極端子9には、銅、銅系合金等の板材を用いることができるが、電子部品端子材料からなる板材であるならば、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
本実施例の表面実装型コンデンサの構造は実施形態で説明したのと同様である。図1A〜図1Dに示すように、本実施例の外装ケースは、陽極端子8とその延長部8’及び陰極端子9とその延長部9’とで構成されたケース状体と蓋13を接着する、いわば分割型ケースであり、実装面側である陽極端子8と陰極端子9を上方に延長し、銀ペースト層4(コンデンサ素子の陰極部)及び弁作用金属陽極体の両端部1c(コンデンサ素子の陽極部)の全体を延長した導電ペースト10’を介して接続するようにした。このときの陰極端子の面積は従来の平面電極部分のみに対して1.3倍拡大され、陽極端子の面積は3.4倍に拡大された。
【0025】
図2A〜図2Dに示した従来技術による構造と比較して、陽極間抵抗及びESRが低減できた。一例としてコンデンサ素子4個の積層品で比較すると、同一測定条件で、本実施例の構造のものは、従来技術による構造のものに対して、陽極間抵抗及びESRで比較して約40%低減できた。
【0026】
以上、本発明を1つの実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であればなしえるであろう各種変更、修正を含むことは勿論である。例えば、外部陰極及び陽極端子とコンデンサ素子電極の接合を金属接合にすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る表面実装型コンデンサは、電子部品や電気部品のプリント配線基板等の基板に表面実装されるタイプの固体電解コンデンサに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】図1Aは本発明の実施形態による表面実装型コンデンサの正断面図である。
【図1B】図1Bは図1Aの線A−A’による側断面図である。
【図1C】図1Cは図1Aに示された表面実装型コンデンサの実装面を示す底面図である。
【図1D】図1Dは図1Aに示された表面実装型コンデンサの上面を示す平面図である。
【図2A】図2Aは従来の表面実装型コンデンサの正断面図である。
【図2B】図2Bは図2Aの線A−A’による側断面図である。
【図2C】図2Cは図2Aに示された表面実装型コンデンサの実装面を示す底面図である。
【図2D】図2Dは図2Aに示された表面実装型コンデンサの上面を示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 弁作用金属陽極体
1a 中央部
1b レジスト形成部
1c 両端部
2 導電性機能高分子膜
3 グラファイト層
4 銀ペースト層
5 レジスト層
6 陽極導通片
7 導電ペースト
8a,9a ケース内側露出部
8 陽極端子
8’ 陽極端子の延長部
9 陰極端子
9’ 陰極端子の延長部
10,10’ 導電ペースト
12 モールド樹脂ケース
13 蓋
100,110 表面実装型コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコンデンサ素子を有し、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を該コンデンサ素子の陽極体とし、前記陽極体の端部からは陽極外部端子が引き出され、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層上には導電性高分子または金属酸化物半導体の固体電解質層が形成され、この固体電解質層には少なくとも導電ペースト層を介して陰極外部端子が接続された多端子の表面実装型コンデンサにおいて、
前記陽極外部端子及び陰極外部端子は絶縁性の外装ケースの実装面に露出するように組み付けられ、前記外装ケースの前記実装面における陽極外部端子及び陰極外部端子を当該外装ケースの内側面に沿うように延長することにより、コンデンサ素子電極との接続面積を広げたことを特徴とする表面実装型コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極外部端子及び陰極外部端子を、それぞれ前記外装ケースの内側面に沿うように上方に延長することによって前記コンデンサ素子を収容するケース状に構成し、前記陽極外部端子と陰極外部端子との間をモールド樹脂で絶縁するとともに両者を連結するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項3】
少なくとも1つのコンデンサ素子を有し、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を該コンデンサ素子の陽極体とし、前記陽極体の端部からは陽極外部端子が引き出され、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層上には導電性高分子または金属酸化物半導体の固体電解質層が形成され、この固体電解質層には少なくとも導電ペースト層を介して陰極外部端子が接続された多端子の表面実装型コンデンサの製造方法において、
前記陽極端子と陰極端子とを平板状の実装面となるように同一平面上に形成する工程と、
絶縁性の外装ケースの実装面における前記陽極外部端子及び陰極外部端子を当該外装ケースの内側面に沿うように上方に延長してケース状体を形成する工程を実行することにより、前記陽極外部端子及び陰極外部端子におけるコンデンサ素子電極との接続面積を広げたことを特徴とする表面実装型コンデンサの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2009−54681(P2009−54681A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218107(P2007−218107)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)