説明

表面張力の高い液体および低い液体用に組み合わせた湿潤/非湿潤要素

流体デバイスは、多孔質基板と、前記基板の第1の側面から、前記多孔質基板の第1の部分を横切って延び、流体の移動透過を阻止する非湿潤領域と、前記基板の第2の側面から、前記多孔質基板の第2の部分を横切って延び、流体の移動透過が可能な湿潤領域と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面張力の高い液体および低い液体用に組み合わされた湿潤/非湿潤要素に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体システムは、工業エンジニア、バイオ/製薬、食料提供、電力エネルギー貯蔵を含む多くの適用分野における研究開発の重要なツールである。多くの場合、流体の流れの制御とその応答を促すために、非湿潤特性と湿潤特性の双方を発揮する構造をマイクロ流体システムに組み込むことが望まれている。特に、そのような構造は、2つの別々の独立したデバイスを用いて開発されている。その1つのデバイスは、非湿潤特性を提供し、もう1つのデバイスは、湿潤特性を提供する。そして、2つのデバイスは、最終的なマイクロ流体システムの望まれる機能に基づいて、1つの構造に組み込まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の1つ以上の実施例の詳細が以降の説明、図面および請求項において示される。
【0004】
具体的には、1つの態様では、流体デバイスは、多孔質基板と、流体の移動透過を阻止する、前記基板の第1の側面から第1の部分を横切って延びる非湿潤領域と、流体の移動透過を可能とする、前記多孔質の第2の側面から第2の部分を横切って延びる非湿潤領域と、を備える。
【0005】
ある実施例は、以下の特徴の内1つ以上を含む。
【0006】
ある実施例では、前記基板は繊維を含む。その繊維は、織物であってもよい。
【0007】
ある実施例では、前記基板は、フィラメントを含む。
【0008】
ある例では、前記基板は、布地を含む。
【0009】
ある実施例では、前記基板はフィルターを含む。
【0010】
ある場合、前記多孔質基板は、ミクロの孔を含む。ある場合、前記基板は、ナノの孔を含む。
【0011】
ある例では、非湿潤領域は、非湿潤コーティングである。非湿潤コーティングは、自己集合した単分子層を含んでもよい。あるいは、また、これに加えて、非潤滑コーティングはフッ素重合体を含んでもよい。
【0012】
ある実施例では、前記多孔質基板は、繊維、フィラメント、孔、空洞、割れ目の少なくとも1つを含み、前記非湿潤コーティングは、前記非湿潤領域において、繊維、フィラメント、孔、空洞、あるいは、割れ目を覆う。
【0013】
ある場合、前記多孔質基板は柔軟性を有する。
【0014】
ある例では、前記非湿潤領域は疎水性、あるいは超疎水性を有する。ある場合、前記非湿潤領域は超疎溶媒性を有する。
【0015】
ある実施例では、前記多孔質基板は、第2の多孔質材料に固定された第1の多孔質材料を含む。
【0016】
ある場合、前記湿潤領域は平面状である。
【0017】
別の態様では、流体デバイスは、前記流体デバイスの厚さ方向に沿って延びている複数の非湿潤領域を含み、これらの非湿潤領域のそれぞれは、流体の移動透過を阻止する。前記流体デバイスは、前記流体デバイスの厚さ方向に沿って延びている複数の湿潤領域を含み、これらの湿潤領域のそれぞれは、流体の移動透過を可能にする。
【0018】
ある実施例では、前記非湿潤領域と前記湿潤領域は交互に配置されている。
【0019】
ある場合、前記非湿潤領域および前記湿潤領域のそれぞれが多孔質基板を含む。
【0020】
ある例では、前記非湿潤領域それぞれの厚さは、前記湿潤領域それぞれの厚さと異なる。
【0021】
ある例では、前記非湿潤領域は、疎水性基板、超疎溶媒性基板からなる群から選択される基板を含む。ある場合、前記湿潤領域は、疎水性基板、超疎溶媒性基板からなる群から選択される基板を含む。
【0022】
別の態様では、流体デバイスは、複数の非湿潤領域を含み、前記非湿潤領域のそれぞれは、液体の透過性の程度が異なる。
【0023】
ある実施例では、液体の透過性の程度が、前記デバイスの一方の側の第1の非湿潤領域で最小であり、前記デバイスの他方の第2の側面の第2の非湿潤領域で最大であり、前記第1の非湿潤領域から前記第2の非湿潤領域まで、前記液体の透過性がそれぞれの領域において増大する。
【0024】
別の態様では、流体デバイスを作製する方法は、非湿潤コーティングを多孔質基板に設けること、および、前記多孔質基板から前記非湿潤コーティングを除去すること、を含み、湿潤領域と非湿潤領域を形成する。その際、前記非湿潤領域は、前記多孔質基板の第1の側面から前記基板の第1の部分を横切って延び、前記湿潤領域は、前記多孔質基板の第2の側面から前記基板の第2の部分を横切って延びる。
【0025】
ある場合、前記非湿潤コーティングを設けることは、非湿潤コーティング材料をディップコーティングすることを含む。
【0026】
ある場合、前記非湿潤コーティングを設けることは、前記多孔質基板上で前記非湿潤コーティングを化学気相成長させることを含む。
【0027】
ある実施例では、前記非湿潤コーティングを設けることは、前記非湿潤コーティングを自己集合させることを含む。
【0028】
ある例では、前記非湿潤コーティングを除去することは、前記多孔質基板をオゾンに曝すことを含む。
【0029】
ある場合、前記非湿潤コーティングを除去することは、前記多孔質基板を紫外線にさらすことを含む。
【0030】
ある実施例では、前記非湿潤コーティングを除去することは、前記多孔質基板をプラズマにさらすことを含む。
【0031】
別の態様では、流体デバイスを作製する方法は、第1の多孔質基板を第2の多孔質基板に固定することを含む。その際、前記第1及び前記第2の多孔質基板において、湿潤領域および非湿潤領域が前記流体デバイスの厚さ方向に沿って延びている。
【0032】
他の特徴は、詳細な説明、図から、および、クレームからすぐに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aは、非湿潤領域および湿潤領域を含む流体デバイスの例を示す。
【図1B】図1Bは、非湿潤領域および湿潤領域を含む流体デバイスの例を示す。
【図2A】図2Aは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスを作製する方法を示す。
【図2B】図2Bは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスを作製する方法を示す。
【図2C】図2Cは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスを作製する方法を示す。
【図3A】図3Aは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスの例を示す。
【図3B】図3Bは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスの例を示す。
【図3C】図3Cは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスの例を示す。
【図3D】図3Dは、非湿潤領域および湿潤領域を含む液体デバイスの例を示す。
【図3E】図3Eは、平面状の湿潤領域を含む多孔質の非湿潤基板の上面図を示す。
【図4A】図4Aは、ガラス繊維フィルタのSEM画像の例を示す。
【図4B】図4Bは、ガラス繊維フィルタのSEM画像の例を示す。
【図4C】図4Cは、ガラス繊維フィルタのSEM画像の例を示す。
【図4D】図4Dは、PVDFのSEM画像の例を示す。
【図4E】図4Eは、PVDFのSEM画像の例を示す。
【図5】図5は、流体デバイスの非湿潤領域上の水滴の一例の画像を示す。
【図6】図6は、第2のポリマフィルタに第1のポリマフィルタを固定する処理の例を示す。
【図7】図7は、互いに交互に固定されているいくつかの湿潤基板26と非湿潤基板28を含む流体デバイスの一例を示す。
【図8】図8は、厚さが異なる湿潤領域と非湿潤領域を含む流体デバイスの一例を示す。
【図9】図9は、超疎溶媒性フィルタと交互に積層されて配置されている超疎水性フィルタを含む流体デバイスの一例を示す。
【図10】図10は、それぞれのフィルタが異なる非湿潤コーティングを有する、積層された多層フィルタを含む流体デバイスの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[詳細な説明]
図1Aおよび図1Bは、非湿潤および湿潤特性を示す個別の基板1の例を示す。基板1は、有機液体および水性液体を含む表面張力が高い、または低い液体を操作するために用いることができる。図1Aおよび図1Bに示されるように、基板1は、2つの領域、すなわち非湿潤第1領域5と隣接する湿潤第2領域7を備える。第1の領域5の非湿潤特性によって、領域6の表面にある液体9は拡散するための親和性が最小であることを示す。例えば、表面に接するとき、液体9は接触角11が90度以上になる球形状の液滴を成す。基板1と液体9が気体環境の中にあるとき、接触角11は、液体−気体および液体−固体間の角度に対応する。これに対して、液体9が湿潤第2領域7にあるとき、図1Bに示されるように、液体9は広がって、第2の領域7によって部分的にあるいは完全に吸収される。しかし、隣接する非湿潤領域5が存在することにより、液体が湿潤領域7から基板1の反対側に向けて基板1を完全に横切ることはない。
【0035】
領域5の非湿潤特性は、疎水性領域、超疎水性領域、超疎溶媒性領域、あるいは疎水性/超疎溶媒性が組み合わされた領域として特徴付けられる。疎水性表面は、水、水溶液、および他の高い表面張力を有する液体に対する親和性が最小である。したがって、これらの液体は疎水性を持った対象をたやすく濡らすことはない。ある場合、領域5は、液体接触角が90度を超えるような超発水性が考え得る。疎水性および超疎水性表面の有利な点は、そのような表面にある液体が容易に操作され移動され得ることである。
【0036】
一方、ケロシン、オイル、ヘキサン、および種々のアルコールを含むが、これらだけに限定されない、表面張力の低い液体はすぐに広がり、疎水性および超疎水性表面を濡らそうとする。そのため、液体の操作は難しい。その代わり、これらの液体は超疎溶媒性のように特徴付けられた表面で非湿潤特性を示す。超疎溶媒性表面は、表面張力の低い液体に対する親和性が最小であるため、液体は容易に広がらず、相対的に操作し易い。
【0037】
図2A〜2Cは、図1A〜1Bに示した構造を作製する方法を示している。好ましくは、基板1は、液体を通過させる1つの多孔質の、吸水性のある材料で形成される。例えば、基板1は、自然のあるいは人工的なフィラメント、つまり繊維のネットワークからなる、ガラス繊維フィルタ、テキスタイルでポリマー製フィルタのような、織られたあるいは織られていない均一な材料の要素を含み得る。ある場合、基板は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような、秩序だったあるいは無秩序なミクロな孔を有する材料により形成され得る。多孔質のミクロ構造は、化学的エッチングおよびプラズマエッチングを含む通常の処理技術によって作製することができる。あるいは、商業的供給業者から購入することができる。ある場合、基板材料は、耐久性の向上のために柔軟性を有する。
【0038】
図2Bに示されるように、基板1は非湿潤コーティング13で覆われる。好ましくは、必要ではないが、コーティング13は、繊維、フィラメント、割れ目、および孔の表面を含む基板1全体を覆う。非湿潤コーティングの例は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素重合体、サイトップ(登録商標)材料、および自己集合した単分子層(SAM)を含む。用いる非湿潤コーティングに応じて、基板1の疎水性のレベルは異なるであろう。例えば、フッ素化された機能グループを有するSAMでコートされた基板は、水溶液に対して、メチル機能グループを有するSAMでコートされた基板に比べてより非湿潤状態、すなわち、疎水性となるであろう。例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、化学気相成長、スプレー、あるいは自己集合技術を用いて、非湿潤コーティング13は基板に施される。他の非湿潤コーティングおよびコーティングする方法も同様に用いることができる。
【0039】
ある実施例では、基板材料の物理的構造により、非湿潤特性も向上する。例えば、基板1の繊維あるいは孔は、ミクロ、あるいはナノスケールの表面粗さを提供することができ、非湿潤コーティングと組み合わせると、超非湿潤特性を示す。超疎水性を示す材料は、極めて濡れにくい。たいていの場合、超非湿潤材料の表面にある液体の接触角は120度を越える。
【0040】
非湿潤コーティング13が施された後、コーティング13は基板1から部分的に除去され(図2C参照)、この結果、第1の非湿潤領域5と第2の湿潤領域7とを形成する。非湿潤コーティング13の除去は基板1の側面14をオゾン、紫外線及びプラズマに晒すことにより達成され得る。他のコーティング除去も同様に適用されてもよい。非湿潤コーティングが除去された基板1の領域内には、コーティング13が付着していた繊維、フィラメント、割れ目、または孔の表面から取り除かれている。ある場合、除去処理は、また、基板材料の表面を酸化し、これにより、湿潤特性を示す。すなわち、液体が表面を濡らそうとする。非湿潤コーティングを除去する処理条件に応じて、基板1の湿潤特性が延びる深さを変化させることができる。例えば、図3Aに示されるように、基板1の側面14を低いパワーで、酸素プラズマに数秒間晒すことにより、基板1に浅い湿潤領域7が生成される。基板1の残りの非湿潤領域5は影響を受けない。あるいは、側面14は、パワーの高いプラズマに数分間晒されると、その結果、湿潤領域7は、図3Bに示されるように、基板1の厚さの半分を超えるように延びる。したがって、湿潤領域と非湿潤領域が調整され得る、2層化した湿潤、非湿潤材料を作製することができ、
あるコーティング除去方法の非均一性の結果として、図3Cに示されるように、湿潤領域と非湿潤領域との間の境界15の深さは、基板1の長さおよび幅に沿って不均一なあるいは回りくどい状態になり得る。
【0041】
ある実施例では、プラズマに本デバイスを晒す前に、基板1の側面14にマスクを施すことができる。その後のプラズマの使用中、マスクで覆われた側面14の領域は、非湿潤コーティング13を維持するであろう。対照的に、マスクを通してプラズマに晒される側面14の領域では、コーティング13が除去されるであろう。その結果、非湿潤/湿潤の様々なパターンがマスクのデザインに応じて基板1に形成され得る。例えば、図3Dは、非湿潤コーティング13を有する多孔質基板1を示している。その際、基板1の底側の側面14はシャドウマスクを通してプラズマに晒されたものである。図中で明白なように、シャドウマスクによって覆われた領域17は、非湿潤コーティングを維持している。対照的に、シャドウマスクを通してプラズマに晒された領域19では、コーティング13が除去されていた。したがって、プラズマに晒された領域19は、液体に対する親和性が高くなっており、好ましいことに、湿潤特性を示す。シャドウマスクの他に、感光性レジストのような他のマスクが用いられてもよい。
【0042】
上述したように、非湿潤コーティングが除去される深さは、基板がプラズマに晒される合計の時間に応じて調整することができる。ある場合、プラズマに晒すことが短い時間なされ、非湿潤コーティング13の薄い層のみが除去される。例えば、図3Eは、非湿潤コーティング13を有する基板1の上面を示している。そこでは、基板は0.5秒の単位で、極めて短期間にシャドウマスクを通してプラズマに晒される。マスクは中心に単一の孔を有するようにデザインされている。プラズマに短い時間晒す結果、非湿潤コーティング13の非常に薄い量のみが、マスクの孔の下にある基板1の領域21から除去される。その結果、基板1上にある液体は湿潤領域21上で広がるが、非湿潤コーティング13が残る境界で制限される。コーティング13がプラズマに短い時間晒す期間中に非常に薄い層の除去が行われる場合、液体は基板1に吸収されないであろう。したがって、湿潤領域は、基板の平面に制限される。非湿潤コーティング13の薄い層の除去のために必要な、プラズマに晒す時間とパワーは、用いるコーティングの種類に依存して変化する。
【0043】
図4A〜4Cはそれぞれ、ガラス繊維基板材料APFA、APFC,APFDに対応した走査電子顕微鏡(SEM)画像の例を示す。図4A〜4Cに示される基板は、マサチューセッツ州のビレリカのミリポールコーポレーションによって作製されたものである。図4D〜4Eは、異なる倍率で撮影されたPVDF基板材料のSEM画像の例を示す。
【0044】
疎水性および疎溶媒性の2層構造は、APFCガラス繊維フィルタをコア基板材料としてうまく準備された。基板は塩化シランを含む自己集合した単分子層で覆われた。基板の一方の側面は200Wで30秒間、酸素プラズマに晒された。その結果、コーティングは除去されて、基板の表面は液体をよく吸収した。基板の反対側の側面は、対照的に、超疎水特性を維持する。疎水性表面25上の水滴23を含んだ2層構造の例が図5に示されている。
【0045】
ある実施例では、基板は、単一の基板材料を用いて、2つの別々の多孔質材料を対向させて固定することにより形成される。図6に示される例では、第1のポリマーフィルタ20は、共形の非湿潤コーティングで覆われている。コーティングは、図2Bを参照して説明した処理と同様に、フィルタ20に施され得る。図6中の矢印が示すように、第1のポリマーフィルタ20は、非湿潤コーティングを含まない第2のポリマーフィルタ22に固定される。種々の接合方法が用いられて、基板同士を固定する。例えば、ある実施例では、第1の基板は、第2の基板とファンデルワールス力により接合され得る。もし、基板間に広い接触面積がある場合、合計したファンデルワールス力は高くなり、大きな接着力を提供するであろう。他の例では、液体が基板間に塗布され、その結果、液体が乾燥すると、毛細管力により基板同士が近づくように引き合って接触面積を増加し、そのとき、ファンデルワールス接合が生じるであろう。あるいは、また、更に加えて、第1のフィルタ20および第2のフィルタ22からの繊維とが絡み合い、VELCRO(登録商標)テープと同様に材料を保持し、密着する。
【0046】
第1のポリマーフィルタ20に対して、第2のポリマーフィルタ22は、非湿潤コーティング13で覆われていない。むしろ、フィルタ22は親水性の湿潤特性を維持するために、汚れとコーティング層がないように維持されている。したがって、第1のフィルタ20と第2のフィルタ22が互いに固定されると、第1のフィルタ20の非湿潤特性の結果として、第1のフィルタ20にある液滴13は、第2のフィルタ22を透過することを阻止される。ある実施例では、第1のフィルタ20、第2のフィルタ22、またはこれら双方は、ミクロな孔あるいはナノの孔を有する基板に取って代わる。その際、孔の平均直径は、数ナノメートルから数1000マイクロメートルの範囲にある。
【0047】
ある実施例では、複数の湿潤領域および非湿潤領域がデバイスの厚さに沿って配置され得る。例えば、図7に示されるように、流体デバイス24は、互いに交互に固定された、いくつかの湿潤基板26と非湿潤基板28とからなる。したがって、非湿潤基板28の間で、デバイス24の湿潤領域に液体を閉じ込めることができる。あるいは、また、これに加えて、複数の非湿潤基板28はデバイス24においてより厚い非湿潤領域を作るように、連続して固定され得る。同じように、複数の湿潤基板26は、より厚い湿潤領域を作るように、連続して固定され得る。このように湿潤領域を拡張することにより、例えば、デバイス24内により多量の液体を蓄え閉じ込めることができる。ある場合、デバイス24は、図8に示されるように予め定められた厚さを持つ湿潤領域34のみならず非湿潤領域32の双方を含むように各基板30が修正され、互いに固定された複数の基板30を備えることができる。その結果、湿潤領域あるいは非湿潤領域の厚さは、この基板の厚さに限定されない。
【0048】
疎水特性および超疎液特性を備えるように、また、非湿潤構造を作製することができる。例えば、図9は、超疎溶媒性を有するフィルタ40と交互に積層され配置された超疎水性を有するフィルタ38を備えるデバイス36を示す。表面張力の小さい液体、例えば1−ブタノール(表面張力は26.2mN/m)、また、1−オクタノール(表面張力は27.6mN/m)であれば、積層された超疎水性の最上層のフィルタ38を直接通過するであろう。このように、最上層のフィルタ38は、たとえ超疎水性であるとしても表面張力の小さい液体にとって湿潤領域として見られる。最上ステージの下層に位置する超疎溶媒性フィルタ40に到達したとき、表面張力の小さい液体は、拡散するのを停止して、超疎溶媒性フィルタによって収容される。一方、表面張力の高い液体、例えば、水(表面張力は72.0mN/m)は、最上層の超疎水性フィルタ38を通過しない。同様に、超疎溶媒性フィルタ40は、ある液体にとって、湿潤領域として見られ得る。
【0049】
積層された各ステージにおいて非湿潤特性のレベルを変えることにより(つまり、疎水性のレベルを増減することにより)、液体を表面張力に基いて分離する構造を作製することができる。例えば、図10は、積層された複数のフィルタ(42,44,46,48)を示している。そこでは、各フィルタは異なる非湿潤コーティングを備える。フィルタは、フィルタコーティングによって示される疎水性のレベルの増加に応じて配置される。このため、表面張力の低い液体であれば、(疎水性のレベルが低い)最上層のフィルタ42を通過するであろう。しかし、(疎水性のレベルが高い)最下層のフィルタ48を通過しないであろう。超疎溶媒性を有するフィルタもまた、フィルタの積層の液体を選択的に増やすために、用いられ得る。
【0050】
多くの実施例について説明してきた。しかしながら、本発明の思想の範囲から逸脱しない範囲で多くの変形が行われてもよいこととは、理解されるであろう。他の実施例も、クレームの範囲内にある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体デバイスであって、
多孔質基板と、
前記基板の第1の側面から、前記多孔質基板の第1の部分を通って延び、流体の移動透過を阻止する非湿潤領域と、
前記基板の第2の側面から、前記多孔質基板の第2の部分を通って延び、流体の移動透過が可能な湿潤領域と、を有する流体デバイス。
【請求項2】
前記多孔質基板は、繊維を含む、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記繊維は織られている、請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記多孔質基板は、フィラメントを有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項5】
前記多孔質基板は、布地を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項6】
前記多孔質基板はフィルタを有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項7】
前記多孔質基板は、ミクロな孔を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項8】
前記多孔質基板は、ナノの孔を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項9】
前記非湿潤領域は、非湿潤コーティングを有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項10】
前記非湿潤コーティングは、自己集合した単分子層を有する、請求項9に記載の流体デバイス。
【請求項11】
前記非湿潤コーティングは、フッ素重合体を有する、請求項9に記載の流体デバイス。
【請求項12】
前記基板は、繊維、フィラメント、孔、空洞、または、割れ目の少なくとも1つを有し、前記非湿潤コーティングは、前記非湿潤領域において、前記繊維、フィラメント、孔、空洞、または、割れ目の表面を覆う、請求項9に記載の流体デバイス。
【請求項13】
前記多孔質基板は、柔軟性を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項14】
前記非湿潤領域は、疎水性を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項15】
前記非湿潤領域は、超疎溶媒性を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項16】
前記多孔質基板は、第2の多孔質材料に固定された第1の多孔質材料を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項17】
前記湿潤領域は平面状である、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項18】
流体デバイスであって、
前記流体デバイスの厚さ方向に沿って延びる複数の領域であって、各領域が流体の透過を阻止する複数の非湿潤領域と、
前記流体デバイスの厚さ方向に沿って延びる複数の領域であって、各領域が流体の透過を可能とする複数の湿潤領域と、を有する流体デバイス。
【請求項19】
前記複数の非湿潤領域と前記複数の湿潤領域とは、交互に配置されている、請求項18に記載の流体デバイス。
【請求項20】
前記非湿潤領域と前記湿潤領域のそれぞれは、多孔質基板を有する、請求項18に記載の流体デバイス。
【請求項21】
前記非湿潤領域のそれぞれの厚さは前記湿潤領域のそれぞれの厚さと異なる、請求項18に記載の流体デバイス。
【請求項22】
前記非湿潤領域は、疎水性基板および超疎溶媒性基板からなる群から選択される基板を含む、請求項18に記載の流体デバイス。
【請求項23】
前記湿潤領域は、疎水性基板および超疎溶媒性基板からなる群から選択される基板を含む、請求項18に記載の流体デバイス。
【請求項24】
流体デバイスであって、
複数の非湿潤領域を有し、非湿潤領域の各々は、流体の透過性について異なる程度を有する、流体デバイス。
【請求項25】
前記流体の透過性の程度は、前記デバイスの一方の側面にある第1の非湿潤領域において最小であり、前記デバイスの他方の第2の側面にある第2の非湿潤領域において最大であり、前記流体の透過性は前記第1の非湿潤領域から前記第2の非湿潤領域まで増加する、請求項24に記載の流体デバイス。
【請求項26】
流体デバイスを作製する方法であって、
多孔質基板に非湿潤コーティングを施し、
前記非湿潤コーティングを前記多孔質基板から除去して、湿潤領域と非湿潤領域を形成し、
前記非湿潤領域は、前記多孔質基板の第1の側面から延びて前記基板の第1の部分を横切り、前記湿潤領域は、前記多孔質基板の第2の側面から延びて前記基板の第2の部分を横切る、方法。
【請求項27】
前記非湿潤コーティングを施すことは、非湿潤コーティング材料中で前記基板をディップコーティングすることを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記非湿潤コーティングを施すことは、前記多孔質基板上で前記非湿潤コーティングの化学気相成長を行うことを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記非湿潤コーティングを施すことは、前記多孔質基板上で前記非湿潤コーティングを自己集合させることを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記非湿潤コーティングを除去することは、前記多孔質基板をオゾンに晒すことを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記非湿潤コーティングを除去することは、前記多孔質基板を紫外線に晒すことを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記非湿潤コーティングを除去することは、前記多孔質基板をプラズマに晒すことを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
流体デバイスを作製する方法であって、
第1の多孔質基板を第2の多孔質基板に固定することを有し、
前記第1の多孔質基板と前記第2の多孔質基板のそれぞれは、前記流体デバイスの厚さ方向に沿って延びた湿潤領域と非湿潤領域を有する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−511704(P2011−511704A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544462(P2010−544462)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/031984
【国際公開番号】WO2009/094628
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510037880)エムフェーズ テクノロジーズ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MPHASE TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】