説明

表面弾性波センサ装置

【課題】温度変化や、溶液の比重・粘性などの外乱要素の影響を抑制し、高い精度により溶液の電気的特性・力学的特性の測定を行う表面弾性波センサ装置を提供する。
【解決手段】本発明の表面弾性波センサ装置は、基準信号を入力し、溶液の比重及び粘性を含む力学的特性で基準信号が変化した第1の測定信号を出力する第1の表面弾性波センサ素子と、溶液の測定対象の特性により影響を受ける形状に構成されており、力学的な特性と測定対象の特性とにより基準信号が変化した第2の測定信号を出力する第2の表面弾性波センサ素子とを有し、第1及び第2の表面弾性波センサ素子の基準信号を伝搬させる方向の長さが、第1及び第2の表面弾性波素子のセンサ面の構造に起因する誤差の差分に対応する長さ分異なって形成され、第1及び第2の測定信号の振幅比及び位相差から、溶液の特性を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面弾性波構成素子を有する表面弾性波センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、表面弾性波素子は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられた櫛歯状電極指からなる入力電極及び出力電極を備えている。表面弾性波素子では、入力電極に電気信号が入力されると、電極指間に電界が発生し、圧電効果により表面弾性波が励振され、圧電基板上を伝搬していく。この表面弾性波のうち、伝搬方向と直交する方向に変位するすべり表面弾性波(SH-SAW:Shear horizontal Surface Acoustic Wave)を利用する表面弾性波素子を用いた各種物質の検出や物性値等の測定を行うための弾性波センサが研究されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
弾性波センサは、図4に示す2つの表面弾性波センサ素子からなる構成であり、圧電基板上に置かれた測定対象である液体状の被測定物と接触するセンサ領域が開口部によって電気的に開放されている場合(表面弾性波センサ素子100)と、短絡されている場合(表面弾性波センサ素子200)とでは、出力電極から出力される出力信号の特性に差異があることを利用している。すなわち、圧電基板上のセンサ領域が開放されている場合の出力信号は、物理的相互作用(電気的相互作用及び力学的相互作用)を受けており、圧電基板上のセンサ領域が短絡されている場合の出力信号は、力学的相互作用のみを受けている。従って、両出力信号から力学的相互作用を相殺し、電気的相互作用を抽出することにより、被測定物の比誘電率や導電率を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3481298号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】羽藤逸文他2名、「SAW発振器一体型SAWセンサシステムの開発」、信学技報、電子情報通信学会、2003年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した電気的に開放されている開放伝搬路を有する表面弾性波センサ素子と、電気的に開放されていない、すなわち短絡されている短絡伝搬路を有する表面弾性波センサ素子とにおける温度特性が異なる。
例えば、図5は、メタノールを測定対象とした場合の、開放伝搬路を有する表面弾性波素子と短絡伝搬路を有する表面弾性波素子とにおける、シミュレーションにより求めた表面弾性波の伝搬速度(縦軸)と、温度(横軸)との対応関係を示している。
図5は、センサ面には空気が触れている状態において、求められた数値である。この図5においては、20℃における表面弾性波の伝搬速度を基準にして変化を測定している。
【0007】
また、図6は、メタノールを測定対象とした場合の、開放伝搬路を有する表面弾性波センサ素子と短絡伝搬路を有する表面弾性波センサ素子とにおける、実験から得られた表面弾性波の伝搬速度(縦軸)と、温度(横軸)との対応関係を示している。
この図6において、□は開放伝搬路を有する表面弾性波センサ素子の伝搬速度の水の温度に対する比誘電率変化による特性変化の理論値を示し、○は開放伝搬路を有する表面弾性波センサ素子の伝搬速度の温度特性の実験値を示し、△は短絡伝搬路を有する表面弾性波素子の伝搬速度の温度特性と水の温度に対する比誘電率変化による特性変化の実験値を示し、×は開放伝搬路を有する表面弾性波センサ素子の伝搬速度の□と○との差分であり温度特性による変化を示している。
図6は、センサ面には水が触れている状態において、求められた数値である。この図6においては、20℃における表面弾性波の伝搬速度を基準にして変化を測定している。
【0008】
図5及び図6からも判るように、開放伝搬路を有する表面弾性波センサ素子に対し、短絡伝搬路を有する表面弾性波センサ素子の方の温度に対する速度変化が小さい。
例えば、図5のミュレーション結果から見ると、温度が1℃変化するに従い、開放伝搬路では−41.2ppmの速度変化を生じ、短絡伝搬路では−36.8ppmの速度変化を生じている。このため、温度が1℃変化する毎に5ppmずつセンサの感度差が生じることになり、温度変化による電気的特性(導電率、比誘電率)あるいは力学的特性(密度、粘性)の測定における誤差が発生することになる。
また、測定物質の比重が高い場合にも、開放伝搬路と短絡伝搬路との受ける力学的な影響が異なり、温度変化による電気的特性あるいは力学的特性の測定における誤差が発生することになる。
【0009】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、センサを形成する圧電基板の温度変化や、被測定対象である溶液の比重あるいは粘性などが高いなどの外乱要素の影響を抑制し、高い精度により被測定対象である溶液の電気的特性あるいは力学的特性の測定を行うことができる表面弾性波センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面弾性波センサ装置は、基準信号を入力し、センサ表面に接触している溶液における比重及び粘性を含む力学的な特性により前記基準信号が変化した第1の測定信号を出力する第1の表面弾性波センサ素子と、前記基準信号を入力し、前記溶液に接触するセンサ面が当該溶液における測定対象の特性により影響を受ける形状に構成されており、前記力学的な特性と前記測定対象の特性により前記基準信号が変化した第2の測定信号を出力する第2の表面弾性波センサ素子とを有し、前記第1の表面弾性波センサ素子と前記第2の表面弾性波センサ素子との前記基準信号を伝搬させる方向の長さが、当該第1の表面弾性波センサ素子と第2の表面弾性波素子とにおける前記センサ面の構造に起因する誤差の差分に対応する長さ分異なって形成され、前記第1の測定信号及び前記第2の測定信号における振幅比及び位相差とから、前記測定対象の特性を検出することを特徴とする。
【0011】
本発明の表面弾性波センサ装置は、前記第1の表面弾性波線センサ素子が検出面が導電膜に覆われたセンサ面を有し、前記第2の表面弾性波線センサ素子が検出面が開放されたセンサ面を有し、前記第1の表面弾性波センサ素子と、前記第2の表面弾性波センサ素子との各々の前記基準信号の伝搬方向の長さが、温度特性による前記基準信号の伝搬速度の変化が同一となるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の表面弾性波センサ装置は、前記第1の表面弾性波センサ素子及び前記第2の表面弾性波センサ素子がLiTa3の基板上に生成され、前記溶液が前記導電膜に覆われたセンサ面と、前記開放されたセンサ面との双方に対して与える前記力学的な特性の影響の差が測定誤差に対して少ないことを特徴とする。
【0013】
本発明の表面弾性波センサ装置は、前記第1の表面弾性波線センサ素子が検出面が導電膜に覆われたセンサ面を有し、前記第2の表面弾性波線センサ素子が検出面が開放されたセンサ面を有し、当該基準信号が伝搬する方向に、長尺方向が垂直になるよう矩形状の導電膜が検出部上に並列に配列されたセンサ面を有し、前記第1の表面弾性波センサ素子及び前記第2の表面弾性波素子と前記基準信号が伝搬する方向の長さが異なり、前記基準信号を入力し、前記力学的な特性と前記測定対象の特性により前記基準信号が変化した第2の測定信号を出力する第3の表面弾性波素子をさらに有することを特徴とする。
【0014】
本発明の表面弾性波センサ装置は、前記第1表面弾性波センサ素子から出力される第1の測定信号と、前記第2表面弾性波センサ素子から出力される第2の測定信号とにおけるの振幅比及び位相差から、または、前記第1表面弾性波センサ素子から出力される第1の測定信号と、前記第3表面弾性波センサ素子から出力されるから出力される第3の測定信号とにおける振幅比及び位相差から、前記測定対象の特性を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この本発明によれば、センサを形成する圧電基板の温度変化や、被測定対象である溶液の比重あるいは粘性などが高いなどの外乱要素の影響を、2チャンネルの表面弾性波センサ素子の弾性波の伝搬方向の長さを制御することにより、それぞれのセンサの外乱の変化による伝搬する弾性波の速度変化の変化を同様の制御することにより、被測定対象における特性の変化による速度変化のそれぞれのセンサの差分を高精度に検出することができ、高い精度により被測定対象である溶液の電気的特性あるいは力学的特性の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による表面弾性波センサ装置の構成例を示す概念図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における他の形態の表面弾性波センサ装置の構成例を示す概念図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による表面弾性波センサ装置の構成例を示す概念図である。
【図4】従来の表面弾性波センサ装置における第1表面弾性波センサ素子(短絡伝搬路を有する)及び第2表面弾性波センサ素子(開放伝搬路を有する)を説明する図である。
【図5】LiTaOを基板材料とした場合に、シミュレーションから得られた第1表面弾性波センサ素子と第2表面弾性波センサ素子とにおける温度と速度変化との対応を示す図である。
【図6】LiTaOを基板材料とした場合に、実測により得られた第1表面弾性波センサ素子と第2表面弾性波センサ素子とにおける温度と速度変化との対応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表面弾性波センサ装置は、複数設けられた表面弾性波センサ素子において、弾性波の伝搬方向の長さを、それぞれの表面弾性波センサ素子毎に、外乱の影響による弾性波の伝搬速度の変化を、各表面弾性波センサ素子間にて同一となるように調整されて形成されていることを特徴としている。
例えば、2つの表面弾性波センサ素子において、弾性波が伝搬する領域(伝搬路)である検出部表面が導電体により覆われたセンサ面を有している表面弾性波センサ素子(短絡伝搬路を有するセンサ素子)である第1の表面弾性波センサ素子と、弾性波が伝搬する領域(伝搬路)である検出部表面の導電膜の検出部上面が開口され、検出部が露出されたセンサ面を有している表面弾性波センサ素子(開放伝搬路を有するセンサ素子)である第2の表面弾性波センサ素子とを有する表面弾性波センサ装置に関する。
【0018】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による、溶液の電気的特性(導電率、比誘電率など)、力学的特性(密度、粘性など)を測定する、2つの表面弾性波センサ素子からなる表面弾性波センサ装置について説明する。図1は、この本実施形態による表面弾性波センサ装置の構成例を示す概念図である。特に、第1の実施形態の表面弾性波センサ装置は、測定対象としての溶液がアルコール(炭化水素の水素原子をヒドロキシ基 (-OH) で置き換えた物質、例えば、本実施形態においてはメタノール(methanol:CHOH)など)であり、溶液の比誘電率を求め、この比誘電率からアルコール濃度を検出する。
【0019】
本実施形態の表面弾性波センサ装置は、第1表面弾性波センサ素子1と、第2表面弾性波センサ素子2と、発振器51、分配器52、振幅比・位相差検出器53、特性値算出部54、RF(Radio Frequency)スイッチ55及び56を有している。第1表面弾性波センサ素子1と第2表面弾性波センサ素子2とは、図示しない圧電基板、本実施形態においてはLiTaO上に形成されている。
【0020】
第1表面弾性波センサ素子1は、入力電極11及び出力電極12間に、導電体膜により、例えば金属膜により検出部表面(弾性波の伝搬する基板表面)が覆われた第1伝搬路13を有しており、弾性波が伝搬する方向xの第1伝搬路13(検出部)の長さがL2に設定されている。
また、第1表面弾性波センサ素子1において、この第1伝搬路13の表面が特性を検出する対象の溶液と接するセンサ面となっている。
【0021】
第2表面弾性波センサ素子2は、入力電極21及び出力電極22間にあり、検出部表面が導電膜に覆われた第2伝搬路23を有し、この導電膜に開口部24が設けられ検出部が露出された構成となっており、弾性波が伝搬する方向xの第2伝搬路23(検出部)の長さがL1に設定されている。
また、第2表面弾性波センサ素子2において、この第2伝搬路23の表面(すなわち、検出部表面)が特性を検出する対象の溶液と接するセンサ面となっている。
第1表面弾性波センサ素子1と第2表面弾性波センサ素子2とは、表面弾性波の伝搬方向がxに平行となるように、並列して配置されている。
本実施形態においては、第1表面弾性波センサ素子1と第2表面弾性波センサ素子2とが並列に並んだ構成で説明するが、他の構成として、第1表面弾性波センサ素子1と第2表面弾性波センサ素子2とを、x方向に対して、伝搬方向が平行となるように、直列に配列する構成としても良い。
【0022】
入力電極11及び入力電極21は、発振器51から分配器52を介して入力された基準信号によって、表面弾性波を励振させるために、櫛の間隔が高周波の波長λであり、櫛の幅がλ/8で形成された櫛形電極で構成されている。櫛の幅としては、λ/4、λ/8、λ/12など様々な値が用いられるが、本実施形態においては、λ/8、を用いている。
同様に、出力電極12及び出力電極22は、入力電極11、入力電極21で励振され伝搬してきた表面弾性波を受信するために、櫛の間隔が高周波の波長λであり、櫛の幅がλ/8で形成された櫛形電極で構成されている。
【0023】
発振器51は、高周波の電気信号である基準信号を発生する。
分配器52は、発振器51の出力する基準信号を、RFスイッチ55と振幅比・位相差検出器53とに分配する。
【0024】
振幅比・位相差検出器53は、基準信号と第1表面弾性波センサ素子1から出力される第1の測定信号との振幅比及び位相差を検出し、検出した振幅比及び位相差を第1の検出信号として特性値算出器54に対して出力する。
また、振幅比・位相差検出器53は、基準信号と第2表面弾性波センサ素子2から出力される第2の測定信号との振幅比及び位相差を検出し、検出した振幅比及び位相差を第2の検出信号として特性値算出部54に対して出力する。
【0025】
特性値算出部54は、振幅比・位相差検出部53から出力される、第1の検出信号における振幅比及び位相差と、第2の検出信号における振幅比と位相差とにより、溶液の比誘電率及び導電率とを算出する(詳細は後述)。
【0026】
RFスイッチ55は、分配器52の出力端子を、第1表面弾性波センサ素子1の入力電極11と、第2表面弾性波センサ素子2の入力電極21と、のいずれかに接続するスイッチである。
すなわち、RFスイッチ55は、分配器52から供給される基準信号を、第1表面弾性波センサ素子1の入力電極11へ伝達させるか、あるいは第2表面弾性波センサ素子2の入力電極21へ伝達させるかを切り換えるスイッチである。
【0027】
RFスイッチ56は、振幅比・位相差検出器53の入力端子に対し、第1表面弾性波センサ素子1の出力電極12と、第2表面弾性波センサ素子2の出力電極22と、のいずれかを接続するスイッチである。
すなわち、RFスイッチ56は、第1表面弾性波センサ素子1の出力電極12から出力される第1の測定信号、または第2表面弾性波センサ素子2の出力電極22から出力される第2の測定信号のいずれを、振幅比・位相差検出器53に伝達させるかを切り換えるスイッチである。
【0028】
上述したように、本実施形態においては、第1伝搬路13と第2伝搬路23との長さが、それぞれL2、L1と異なって形成されている。
基板が温度特性を有し、例えば、本実施形態で用いているLiTaOからなる基板の場合、温度が上昇すると伝搬する表面弾性波の伝搬速度が低下する際、低下の割合が第1伝搬路13に比較して第2伝搬路23の方が1℃毎の伝搬速度の変化において5ppm小さい。
すなわち、第1表面弾性波センサ素子1及び第2表面弾性波センサ素子2を、短絡伝搬経路を有する第1表面弾性波センサし素子において1℃毎に伝搬速度が−36.8ppm変化し、開放伝搬経路を有する第2表面弾性波センサ素子2において1℃毎の伝搬速度が−41.2ppm変化する。
したがって、1℃温度が変化することにより、溶液の特性が変化しなくとも、伝搬速度の5ppmの差分が測定され、この差分により第1伝搬路13と第2伝搬路23とにおける位相差が異なることとなり、溶液の特性を測定する際の測定誤差となってしまう。
【0029】
例えば、伝搬路長L2及びL1を同一の50λとして形成した場合、得られる位相変化は温度が1℃変化する毎に、以下に示す1℃あたり(毎)の位相変化量を算出する式から
Δφ2(short)=41.2×10−6(速度変化)×360×50(伝搬路長)=0.7416
Δφ1(open)=36.8×10−6(速度変化)×360×50(伝搬路長)=0.6624
となる。
ここで、Δφ2(short)は第1伝搬路13における1℃あたりの位相変化であり、Δφ1(open)は第2伝搬路23における1℃あたりの位相変化である。この結果、第1伝搬路13と第2伝搬路23との表面弾性波の伝搬速度の温度変化の違いにより、第1伝搬路13と第2伝搬路23とのとの間で、1℃の温度変化毎に0.0792度ずつの位相変化が生じることになる。
本実施形態の表面弾性波センサ装置が測定対象とするメタノールでは、0.1%の濃度変化を測定することを目標とした場合、位相差Δφの検出精度としては0.0096度が必要となり、上述した温度変化による位相変化0.0792を許容することはできない。
【0030】
したがって、本実施形態においては、0.7416/0.6624=1.1196から、第1伝搬路13の伝搬路長L2を、第2伝搬路長23の伝搬路長L1を1.196倍の55.98λとすることにより、
Δφ1(open)=36.8×10−6(速度変化)×360×55.98(伝搬路長)=0.7416
となり、第2伝搬路23における1℃あたりの位相変化量を、第1伝搬路13に合わせることができる。
このとき、第1伝搬路13の伝搬路長L2を、第2伝搬路23の伝搬路長L1の1/1.1196倍にしても良いが、メタノールの実際の濃度変化に起因する位相変化量も少なくなるため、上述したように、速度変化の小さい方の伝搬路長を長くする調整を行う方が良い。
【0031】
次に、特性値算出部54における溶液の比誘電率及び導電率の算出の説明を行う。
以下の説明において、第1伝搬路13の位相変化量をΔφ2(degree)、基準信号の信号レベルの減衰量をΔA2とし、第2伝搬路23の位相変化量をΔφ1(degree)、基準信号の信号レベルの減衰量をΔA1とし、温度による変化量には添え字としてtempを付加し、密度粘度積変化に伴う変化量には添え字としてvisを付加し、溶液の物理的変化(溶液及びセンサ面とにおける力学的相互作用と電気的相互作用)による変化量には添え字としてphysを付加し、溶液とセンサ面とにおける電気的相互作用に伴う変化量には添え字としてelecを付加する。
【0032】
以下の(1)式は、減衰変化量Δα/kを求める式である。αは表面弾性波の伝搬減衰であり、Δαは標準液(例えば純水)に対する溶液(例えばメタノール)における表面弾性波の減衰の変化量であり、kは波数であり、Δampは基準信号と表面弾性波センサ素子からの測定信号との振幅比であり、ΔAは基準信号の信号レベルの変化量であり、λは波長であり、Lは伝搬路長を示している。
【0033】
【数1】

【0034】
この(1)式は、減衰変化量Δα/k(単位はNeper)と、変化量ΔA(単位はdB)との単位が異なるため、以下の(2)式を用いた単位の変換が行われている。
【0035】
【数2】

【0036】
波数kがk=(2π/λ)であるため、(1)式が以下の(3)式に変形される。
【0037】
【数3】

【0038】
同様に、位相変化と速度変化の関係式が以下の(4)式で表される。
【0039】
【数4】

【0040】
この(4)式においても、位相がdegreeの単位で出力されるが、計算においてはラジアン(rad)の単位で計算するため、以下の(5)式により、X[degree]がY[rad]に変換される。(4)式においては、波数kとラジアンによる変換での関数とが分子・分母において打ち消されて簡略化されている。
【0041】
【数5】

【0042】
次に、特性値算出部54において行われる導電率及び比誘電率を求める計算を説明する。
特性値算出部54は、振幅比・位相差検出器53から入力される第1表面弾性波センサ素子1に対応する第1の検出信号と、第2表面弾性波センサ素子2に対応する第2の検出信号とにより、以下の計算を行う。
特性値算出部54は、第1の検出信号における振幅比として、損失である減衰量ΔA2[dB]により、(1)式を用いて以下の(6)式を生成する。
【0043】
【数6】

【0044】
また、減衰変化量Δα/kは、溶液の密度粘度積を用いて以下の(7)式で表される。(7)式において、ν2は伝搬方向に沿った粒子速度であり、Pは伝搬方向に沿った単位幅当たりのパワーフローの平均値であり、ωは2πf(fは基準信号の周波数)である。
【0045】
【数7】

【0046】
(6)式及び(7)式を変換して、力学的相互作用として、溶液の密度粘度積ρ’η’を、以下の(8)式により求める。この(8)式において、密度粘度積による減衰変化量はΔαvis/kとする。ここで、’が付いているものが測定する溶液のものであり、付いていないもの、例えば密度粘度積ρηは測定基準となる20℃の水の特性値であり、密度ρ=0.998、粘性η=1.002、導電率σ=0、比誘電率er=80.37である。
【0047】
【数8】

【0048】
次に、温度変化による信号レベルの速度変化を以下の処理により求める。上述のように計算した力学的相互作用から、第1表面弾性波センサ素子1における力学的相互作用による位相変化量を、以下の(9)式により計算する。なお、密度粘度積による速度変化はΔVvis/Vとする。Vは基準信号の速度、ΔVvisは基準信号と第1伝搬路13を伝搬した第1の測定信号との速度差を示している。
【0049】
【数9】

【0050】
密度粘度積のみの変化においては、(7)式と(9)式とが逆数のため、(9)式から得られる速度変化ΔVvis/Vは負(マイナス)の数値となる。このため、(9)式を以下に示す(10)式に代入する。
【0051】
【数10】

【0052】
第1表面弾性波センサ素子1の第1伝搬路13における位相変化量Δφ2は、温度特性にの速度変化に起因する要素と、力学的相互作用とに起因する要素とを合わせた変化量である。このため、以下の(11)式を用いて、計算により求めた力学的相互作用による位相変化量Δφcal2を、測定結果としての位相変化量Δφ2から減算することにより、温度変化に起因した位相変化量Δφtempを求める。
【0053】
【数11】

【0054】
この結果、第1表面弾性波センサ素子1を用いることにより、力学的相互作用の密度粘度積と、温度変化とによる位相変化量とを、測定した位相変化量Δφ2から個別に算出して求めることができる。
【0055】
次に、本実施形態における温度特性による速度変化に対応させ、第1伝搬路13の伝搬路長L2を、第2伝搬路23の伝搬路長L1より長く形成された表面弾性波センサ装置において、特性値算出部54が溶液の比誘電率εr’と伝導度σ’とを求める処理について説明する。
溶液として純水付加時において、1℃の温度変化毎に、第1伝搬路13における速度変化が49ppmであり、第2伝搬路23における温度変化が40ppmである場合、すでに述べたように、第1伝搬路13の伝搬路長L2を、第2伝搬路23の伝搬路長L1の1.225倍の長さに、温度変化の差に対応する伝搬路長差を有するように形成する。
【0056】
このように、温度変化に起因する速度変化を調整した構成とすることにより、Δφtempを直接に、第2伝搬路23における位相差Δφ1から、以下の(12)式のように減算し、物理的相互作用(電気的相互作用及び力学的相互作用の双方の作用)による位相差Δφphysを算出する。直接に差分を演算するのは、第1伝搬路13の伝搬路長L2と第2伝搬路23の伝搬路長L1との長さを調整して、温度の変化による速度変化があるように補正しているためである。
【0057】
【数12】

【0058】
次に、(12)式により算出した位相変化Δφpyhsを用いて、電気的相互作用から伝導度及び比誘電率を計算する。
物理的相互作用における電気的相互作用を算出するため、物理的相互作用から力学的相互作用を打ち消す処理を行う。第1表面弾性波センサ素子1の力学的相互作用である密度粘度積による速度変化ΔVvis/Vまたは減衰変化量Δαvis/k(すなわち、−ΔVvis/V)である。
ここで、本実施形態においては、第1伝搬路13と第2伝搬路23との伝搬路長が異なるため、位相変化を用いるものではなく、第2伝搬路23の単位長さあたりの速度変化ΔV1/Vと減衰変化量Δαvis/kとの各々に、それぞれ以下に示す(13)式及び(14)式を用いて変換する。
【0059】
【数13】

【0060】
【数14】

【0061】
第2伝搬路23における速度変化ΔV1/Vと、第1伝搬路13から求めた密度粘度積による速度変化ΔVvis/Vとの差は、以下の(15)式により求める。それぞれ単位長さあたりの速度変化であるため、(15)式のように直接に差分を取ることができる。
【0062】
【数15】

【0063】
同様に、第2伝搬路23における減衰変化量Δα1/kと、第1伝搬路13から求めた密度粘度積による減衰変化量Δαvis/kとの差は、以下の(16)式により求める。それぞれ単位長さあたりの速度変化であるため、(16)式のように直接に差分を取ることができる。
【0064】
【数16】

【0065】
(15)式により求めた電気的相互作用による速度変化ΔVelec/Vと、減衰変化量Δφelec/kとにより、以下に示す(17)式により溶液の比誘電率εr’を算出し、(18)式により溶液の導電率σ’を算出する。(17)式及び(18)式において、ε0は真空の誘電率であり、Ksは電気機械結合係数であり、εは実行誘電率である。
【0066】
【数17】

【0067】
【数18】

【0068】
メタノール濃度は、得られた比誘電率εr’に対応している。したがって、特性値算出部54は、比誘電率εr’と、メタノール濃度との対応関係を示すテーブルあるいは式を内部に記憶しており、求めた比誘電率εr’からメタノール濃度を算出して求める。
また、導電率σ’は、メタノールが消費されることで酸化して生じる蟻酸の濃度に関係している。メタノールの濃度変化は導電率σ’の変化に影響を与えず、蟻酸の濃度変化は比誘電率εr’の変化に影響を与えない。
このため、本願実施形態の表面弾性波センサ装置は、比誘電率εr’を正確に測定することにより、メタノール濃度を精度良く求めることができる。
【0069】
図1に示すように、本実施形態の表面弾性波センサ装置は、周期的(例えば、1秒ごと)にメタノールの濃度変化を求める。図示しない制御部は、周期的に発振器を動作させ、波長λ(測定対象により異なる)の高周波の基準信号を発生させる。
次に、制御部は、RFスイッチ55及び56を制御し、分配器52から出力される基準信号を第1表面弾性波センサ素子1の入力電極11に対して伝達させ、出力電極12から出力される第1の測定信号を振幅器・位相差検出器53に対して出力させる。
また、制御部は、RFスイッチ55及び56を制御し、分配器52から出力される基準信号を第2表面弾性波センサ素子2の入力電極21に対して伝達させ、出力電極22から出力される第2の測定信号を振幅器・位相差検出器53に対して出力させる。
【0070】
そして、振幅比・位相差検出器53は、入力される基準信号、第1の測定信号、第2の測定信号により、基準信号に対する第1の測定信号の減衰変化ΔA2、位相変化Δφ2を求め、第1の検出信号として、また、基準信号に対する第2の測定信号の減衰変化ΔA1、位相変化Δφ1を求め、第2の検出信号として特性値算出部54へ出力する。
特性値算出部54は、上述した(6)式から(18)式を用いて、第1の測定信号の減衰変化ΔA2、位相変化Δφ2と、第2の測定信号の減衰変化ΔA1、位相変化Δφ1とにより、測定対象の溶液であるメタノールの比誘電率εr’及び導電率σ’を算出する。
【0071】
上述した構成により、本実施形態によれば、温度の変化による速度変化の異なりを補正するため、1℃あたりの速度変化が大きい方の表面弾性波センサ素子(第2表面弾性波センサ素子2)と、1℃あたりの速度変化が小さい方の表面弾性波センサ素子(第1表面弾性波センサ素子1)との速度変化が合うように、速度変化が小さい方の表面弾性波センサ素子における表面弾性波の伝搬距離を、速度変化が大きい方の表面弾性波センサ素子に対し、1℃あたりの速度変化が対応する距離分長くしている。
この結果、第1表面弾性波センサ素子1及び第2表面弾性波センサ素子2間における温度特性による速度変化分を実質的に同一とすることができる。
したがって、本実施形態によれば、高い精度により第1の測定信号から温度に依存する速度変化を求めることができ、物理的相互作用による位相変化を算出することができ、最終的に、メタノールの比誘電率を高い精度で求められ、この比誘電率からメタノールの濃度を容易に、精度良く求めることができる。
【0072】
また、図2に図1と異なる形態の表面弾性波センサ装置の構成を示す。図1と異なる点は、RFスイッチ55、56が無くなり、分配器52の2つに分配された出力が、それぞれ第1表面弾性波センサ素子1の入力電極11及び第2表面弾性波センサ素子2の入力電極21に与えられ、第1表面弾性波センサ素子1の出力電極12及び第2弾性波表面波センサ素子2の出力電極22が振幅比・位相差検出器53に接続されている構成である。
この構成により、温度の変化による速度変化を第1伝搬路13と第2伝搬路23との伝搬路長を調整しているため、振幅比・位相差検出器53は、第1の測定信号と第2の測定信号との信号レベルの差分を求めて、減衰変化ΔAとして特性値算出部54に出力する。また、振幅比・位相差検出器53は、第1の測定信号と第2の測定信号との位相差を求め、Δφとして特性値算出部54に出力する。
【0073】
特性値算出部54は、振幅比・位相差検出器53から入力される減衰変化ΔAと位相差Δφとを用い、以下の(19)式及び(20)式により、減衰変化量Δα/kと速度変化量ΔV/Vとの各々を算出する。この(19)式及び(20)式において用いられる伝搬長は第2表面弾性波センサ素子1における第1伝搬路13のL1が用いられる。
【0074】
【数19】

【0075】
【数20】

【0076】
そして、特性値算出部54は、算出した減衰変化量Δα/kと速度変化量ΔV/Vとにより、(21)式及び(22)式により、比誘電率εr’と導電率σ’とを算出する。
【0077】
【数21】

【0078】
【数22】

【0079】
また、本実施形態においては、第2表面弾性波センサ素子2にセンサ面が開放され、溶液の電気的相互作用による変化を測定し、溶液の濃度を求めたが、他の構成として第1表面弾性波センサ素子1と、第2表面弾性波センサ素子2との双方とも、導電膜により検出部が覆われたセンサ面を有する形状とした構成を用いてもよい。
このとき、第1表面弾性波センサ素子1の導電膜表面には何も配設せず、一方、第2表面弾性波センサ素子2の導電膜の表面には抗体などを配設し、2チャンネルの表面弾性波センサ素子からなるバイオセンサを構成しても良い。
そして、純水を付加とした場合、第1表面弾性波センサ素子1と第2表面弾性波センサ素子2との、温度あるいは溶液の粘度による速度変化や信号レベルの変化などが実質的に同一となるように、第1表面弾性波センサ素子1の第1伝搬路13と、第2表面弾性波センサ素子2の第2伝搬路23との伝搬路長を調整するようにしても良い。
【0080】
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態による、溶液の電気的特性(導電率、比誘電率など)、力学的特性(密度、粘性など)を測定する、3つの表面弾性波センサ素子からなる表面弾性波センサ装置について説明する。図3は、この本実施形態による表面弾性波センサ装置の構成例を示す概念図である。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1表面弾性波センサ素子1及び第2表面弾性波センサ素子2に加えて、第3表面弾性波センサ素子3を加えて、3つの表面弾性波センサ素子の3チャンネルの表面弾性波センサ素子の構成である。
【0081】
第3表面弾性波センサ素子3は、入力電極31と出力電極32とに挟まれて、第3伝搬路33が構成されている。また、第3表面弾性波センサ素子3も、表面弾性波の伝搬方向がx方向に平行となるように、第1表面弾性波センサ素子1及び第2表面弾性波センサ素子2と並列に配置されている。
第3表面弾性波センサ素子3は、検出部の上面を覆う導電膜に長尺状のスリット34が、伝搬方向がx方向に対して垂直となるように、複数x方向に配列して第3伝搬路33上の導電膜に形成されている。スリット34の形成されている部分は、検出部が露出されている。
本実施形態においては、第1表面弾性波センサ素子1、第2表面弾性波センサ素子2及び第2表面弾性波センサ素子3が並列に並んだ構成で説明するが、他の構成として、第1表面弾性波センサ素子1、第2表面弾性波センサ素子2及び第2表面弾性波センサ素子3を、x方向に対して、伝搬方向が平行となるように、直列に配列する構成としても良い。
【0082】
第3表面弾性波センサ素子3は、第2表面弾性波センサ素子2と同様に、物理的相互作用(電気的相互作用及び力学的相互作用)による変化を検出する。
したがって、図示しない制御部は、発振器51に高周波の基準信号を発生させ、分配器52に出力させる。
分配器52は、入力される基準信号を、第1表面弾性波センサ素子1の入力電極11と、RFスイッチ55とに分配して出力する。
【0083】
RFスイッチ55は、分配器52から入力される基準信号を、制御部の制御により、第2表面弾性波センサ素子2の入力電極21、あるいは第3表面弾性波センサ素子3の入力電極31のいずれかに伝達するかの切り替えを行う。
RFスイッチ56は、制御部の制御により、第2表面弾性波センサ素子2の出力電極22、あるいは第3表面弾性波センサ素子3の出力電極32のいずれを、振幅比・位相差検出器53の入力端子に接続するかの切り替えを行う。
第3表面弾性波センサ素子3は、入力された基準信号が物理的相互作用により影響を受けた第3の測定信号を出力する。
【0084】
振幅比・位相差検出器53は、第1の測定信号と第2の測定信号との位相差、信号レベルの変化量を第1の検出信号、また第1の測定信号と第3の測定信号の位相差、信号レベルの変化量を第2の検出信号として特性値算出部54へ出力する。
特性値算出部54は、第1の検出信号と、第2の検出信号とからそれぞれ、(19)式から(22)式を用いて、溶液の比誘電率εr’及び導電率σ’を求める。
【0085】
上述した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、第1表面弾性波センサ素子1、第2表面弾性波センサ素子2及び第3表面弾性波センサ素子3の各々は、外乱(例えば、温度依存性、粘度依存性などの実際の測定のノイズとなる特性変化)による影響を合わせるように補正するため、表面弾性波の伝搬長を異なる長さに形成されている。
これにより、本第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に、メタノールセンサとして用いた場合、高い精度により第1の測定信号から温度に依存する速度変化を求めることができ、物理的相互作用による位相変化を算出することができ、最終的に、メタノールの比誘電率を高い精度で求められ、この比誘電率からメタノールの濃度を容易に、精度良く求めることができる。
【0086】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…第1表面弾性波センサ素子
2…第2表面弾性波センサ素子
3…第3表面弾性波センサ素子
11,21,31…入力電極
12,22,32…出力電極
13…第1伝搬路
23…第2伝搬路
24…開口部
33…第3伝搬路
34…スリット
51…発振器
52…分配器
53…振幅比・位相差検出器
54…特性値算出部
55,56…RFスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を入力し、センサ表面に接触している溶液における比重及び粘性を含む力学的な特性により前記基準信号が変化した第1の測定信号を出力する第1の表面弾性波センサ素子と、
前記基準信号を入力し、前記溶液に接触するセンサ面が当該溶液における測定対象の特性により影響を受ける形状に構成されており、前記力学的な特性と前記測定対象の特性により前記基準信号が変化した第2の測定信号を出力する第2の表面弾性波センサ素子と
を有し、
前記第1の表面弾性波センサ素子と前記第2の表面弾性波センサ素子との前記基準信号を伝搬させる方向の長さが、当該第1の表面弾性波センサ素子と第2の表面弾性波素子とにおける前記センサ面の構造に起因する誤差の差分に対応する長さ分異なって形成され、前記第1の測定信号及び前記第2の測定信号における振幅比及び位相差とから、前記測定対象の特性を検出することを特徴とする表面弾性波センサ装置。
【請求項2】
前記第1の表面弾性波線センサ素子が検出面が導電膜に覆われたセンサ面を有し、前記第2の表面弾性波線センサ素子が検出面が開放されたセンサ面を有し、
前記第1の表面弾性波センサ素子と、前記第2の表面弾性波センサ素子との各々の前記基準信号の伝搬方向の長さが、温度特性による前記基準信号の伝搬速度の変化が同一となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面弾性波センサ装置。
【請求項3】
前記第1の表面弾性波センサ素子及び前記第2の表面弾性波センサ素子がLiTa3の基板上に生成され、前記溶液が前記導電膜に覆われたセンサ面と、前記開放されたセンサ面との双方に対して与える前記力学的な特性の影響の差が測定誤差に対して少ないことを特徴とする請求項2に記載の表面弾性波センサ装置。
【請求項4】
前記第1の表面弾性波線センサ素子が検出面が導電膜に覆われたセンサ面を有し、前記第2の表面弾性波線センサ素子が検出面が開放されたセンサ面を有し、
当該基準信号が伝搬する方向に、長尺方向が垂直になるよう矩形状の導電膜が検出部上に並列に配列されたセンサ面を有し、前記第1の表面弾性波センサ素子及び前記第2の表面弾性波素子と前記基準信号が伝搬する方向の長さが異なり、前記基準信号を入力し、前記力学的な特性と前記測定対象の特性により前記基準信号が変化した第2の測定信号を出力する第3の表面弾性波素子
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の表面弾性波センサ装置。
【請求項5】
前記第1表面弾性波センサ素子から出力される第1の測定信号と、前記第2表面弾性波センサ素子から出力される第2の測定信号とにおけるの振幅比及び位相差から、
または、前記第1表面弾性波センサ素子から出力される第1の測定信号と、前記第3表面弾性波センサ素子から出力されるから出力される第3の測定信号とにおける振幅比及び位相差から、
前記測定対象の特性を検出することを特徴とする請求項4に記載の表面弾性波センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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