説明

表面弾性波識別タグの識別子を判定する伝達関数システムおよびこれを動作させる方法

表面弾性波(SAW)識別タグの識別子を判定する伝達関数システムおよびこれを動作させる方法。一実施形態で、本システムは、(1)圧電基板に置かれた変換器に、応答音響パルスを作るために前記基板上で時間および位相位置に従って配置された複数の反射器から反射される初期音響パルスを作らせるラジオ周波数(RF)問合せ信号であって、前記変換器が、前記応答音響パルスからRF応答信号を生成する、RF問合せ信号と、(2)事前定義の時間パラメータ、位相パラメータ、および振幅パラメータに鑑みて前記RF応答信号をデコードすることによって前記識別子を判定することとを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には識別タグの識別子を判定するシステムに関し、具体的には、表面弾性波(surface acoustic wave、SAW)識別タグの識別子を判定する伝達関数システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コスト、データ容量、および信頼性範囲に関する従来技術のRFID(radio frequency identification)タグの固有の既存の制限に対処し、これを克服するために、新しいRFIDタグ技術が開発された。この新技術は、識別タグとして表面弾性波(SAW)デバイスを使用し、本出願の譲受人に譲渡された、参照によって本明細書に組み込まれる米国仮出願第10/024624号、名称「Surface Acoustic Wave Identification Tag Having Enhanced Data Content and Methods of Operation and Manufacture Thereof」、発明人ハートマン(Hartmann,Clinton S)(以下では「ハートマン1」)に記載されている。同時の位相シフト変調および時間シフト変調を用いるSAWタグでのデータのエンコードに使用される原理が、本出願の譲受人に譲渡された、参照によって本明細書に組み込まれる米国仮出願第10/062833号、名称「Modulation by Phase and Time Shift Keying and Method of Using the Same」、発明人ハートマン(Hartmann,Clinton S)(以下では「ハートマン2」)に詳細に記載されている。グループごとに複数の位相変調を同時の位相シフト変調および時間シフト変調と組み合わせることによってデータをエンコードするのに使用される原理が、本出願の譲受人に譲渡された、参照によって本明細書に組み込まれる米国仮出願第10/062894号、名称「Modulation by Combined Multi−pulse per Group with Simultaneous Phase and Time Shift Keying and Method of Using the Same」、発明人ハートマン(Hartmann,Clinton S)(以下では「ハートマン3」)に詳細に記載されている。SAW識別タグおよびSAW識別タグ・リーダに関する追加の関連する情報が、本出願の譲受人に譲渡された、参照によって本明細書に組み込まれる米国仮出願第10/066249号、名称「Reader for a High Information Capacity Saw Identification Tag and Method of Use Thereof」、発明人ハートマン(Hartmann,Clinton S)(以下では「ハートマン4」)に詳細に記載されている。
【0003】
問い合わされたRFIDタグは、問合せ信号に応答してラジオ信号を反射しまたは再送信する。返される信号または応答信号に、デコードされた時にタグおよびそのタグに関連する物体を識別するデータが含まれる。識別タグとして使用されるSAWデバイスに、多数のデータをエンコードすることができる。あるEPC(electronic product code)仕様に従って64ビットまたは96ビットのデータをエンコードされた時に、そのようなタグが有用である必要があるならば、ある距離からタグを正確に識別する信頼性のあるシステムおよび手順が必要である。
【0004】
この問題は、それぞれがそれ自体の独自の識別タグを有する多数の物体を有するユーザの文脈で最もよく理解することができる。多数の物体の中から特定の物体を識別するために、ユーザは、物体のそれぞれのタグによって同時に受信される問合せ信号を送信する。各物体がこの問合せ信号に応答する時に、単一のタグからの信号をそこから分離し、識別しなければならない、多数のデータが生じる。したがって、タグを互いに簡単に識別できる形でSAWタグをエンコードすることが重要である。他のSAWタグでエンコードされたデータから簡単に区別できる独自のデータを用いてSAWタグをエンコードするのに使用できるシステムが必要である。
【特許文献1】米国仮出願第10/024624号
【特許文献2】米国仮出願第10/062833号
【特許文献3】米国仮出願第10/062894号
【特許文献4】米国仮出願第10/066249号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術分野で必要なものは、それに関連する物体を識別するために簡単にデコードできる、SAW識別タグにエンコードされた一意識別子を判定する信頼性のあるシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の従来技術の欠陥に対処するために、本発明は、表面弾性波(SAW)識別タグの識別子を判定する伝達関数システムおよびこれを動作させる方法を提供する。一実施形態で、本システムは、(1)圧電基板に置かれた変換器に、応答音響パルスを作るために前記基板上で時間および位相位置に従って配置された複数の反射器から反射される初期音響パルスを作らせるラジオ周波数(RF)問合せ信号であって、前記変換器が、前記応答音響パルスからRF応答信号を生成する、RF問合せ信号と、(2)事前定義の時間パラメータ、位相パラメータ、および振幅パラメータに鑑みて前記RF応答信号をデコードすることによって前記識別子を判定することとを提供する。
【0007】
したがって、本発明は、SAW識別タグにエンコードされた一意識別子を判定するシステムを提供する。本システムは、受動的デバイスであるSAWタグのある既知の特性を利用して、問合せ信号によって励起された時に特質上予測可能な応答を作る。問合せ信号に、SAWタグに置かれた反射器によって予測可能に影響されるある所定の特性が含まれるので、この反射された応答信号の分析によって、SAWタグの構成が明らかにされる。すなわち、応答信号に、問合せ信号に変換されるSAWタグ特性が含まれる。したがって、問合せパルスの特性が既知なので、問合せパルスに対する可能なSAWタグ応答も既知であり、したがって、SAWタグによる問合せ信号への情報の変換に基づいて、特定のSAWタグを識別できるようになる。
【0008】
本発明の一実施形態で、RF問合せ信号は、約2.44GHzの搬送波周波数を有する。もちろん、他の任意の搬送波周波数を使用することができ、これは本発明の所期の範囲に含まれる。特定の有用で多用途の実施形態で、本システムは、基板上の反射器位置のグループを提供する。この実施形態の一態様は、基板に置かれた複数のそのようなグループを提供する。もう1つの態様は、最小で10個の反射器位置によって互いに分離される、その中に2つの反射器を置かれた21個の反射器位置からなるグループを提供する。もう1つの態様で、グループは、その中に1つの反射器を配置された16個の反射器スロット位置からなる。
【0009】
本システムの一実施形態で、反射器位置の14個のグループが、基板に置かれる。この実施形態の有用な特徴は、識別タグで80ビットまでの情報をエンコードできることである。本発明のもう1つの実施形態で、19個のグループが基板に置かれ、112ビットまでのデータを識別タグでエンコードすることが可能になる。
【0010】
前述は、本発明の好ましい特徴および代替特徴の概要を示し、その結果、当業者が、次の本発明の詳細な説明をよりよく理解できるようにするものである。本発明の追加の特徴を、後で説明するが、これは、本発明の請求の対象を形成する。当業者は、本発明と同一の目的を実行する他の構造を設計しまたは変更するための基礎として、開示される概念および特定の実施形態をすぐに使用できることを諒解するであろう。当業者は、そのような同等の構成が、本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことも理解するであろう。
【0011】
本発明のより完全な理解のために、次の説明を添付図面と共に参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず図1を参照すると、RFID(radio frequency identification)タグとして使用できるタイプの通常の表面弾性波(SAW)タグ100が示されている。図示の実施形態は、ラジオ周波数(RF)問合せ信号110を送信するリーダ・アンテナ105を備える。RF信号110は、タグ100のアンテナ115によって受信され、圧電基板130に置かれた変換器120を励起し、その結果、変換器120が、初期音響パルス140を作る。初期音響パルス140は、基板130の表面135を移動する時に、そこに配置された反射器150に出会い、初期音響パルス140の一部の反射を引き起こす。この反射されたパルスを、本明細書では応答音響パルス160と呼ぶ。
【0013】
図示の実施形態の特徴は、複数の反射器150が、複数の応答音響パルス160を作るために、時間位置および位相位置に従って、基板130上で配置されることである。変換器120が、これらの応答音響パルス160を受け取る時に、RF応答信号170が生成され、これが、アンテナ115によって送信されて、リーダ・アンテナ105によって検出される。リーダ(図示せず)は、本明細書に記載のシステムを使用して、応答音響パルス160で検出された事前定義の時間パラメータ、位相パラメータ、および振幅パラメータに鑑みて識別子を判定する。
【0014】
したがって、本発明は、その「伝達関数」によって、SAWタグ100にエンコードされた識別子を定義する、すなわち、受信される信号は、問合せ信号に対するSAWタグ100のインパルス応答によって決定される。その伝達関数によるSAWタグ100の定義という手法は、適当な方法である。というのは、SAWタグ100が、入射する信号から導出されるエネルギに反応し、これを反射する受動デバイスであるからである。SAWタグ100にエンコードされた識別子は一意なので、応答信号170も一意になり、SAWタグにエンコードされたデータを、SAWタグ100の伝達関数に基づいて一意に判定することができる。したがって、これは、SAWタグ100特徴の問合せ信号110への変換であり、この特徴は、SAW識別タグ100にエンコードされたコードを定義するRF応答信号170パターンに現れる。
【0015】
伝達関数方法を使用してSAWタグ100応答を定義することの効率は、より普通の「エア・インターフェース」を使用して信号応答を定義することと対比した時に明らかである。エア・インターフェース方法では、送信デバイスおよび応答デバイスにかかわりなく信号が定義されるが、これは、両方のシステムが能動的である場合には論理的である。しかし、SAWタグ100の場合に、エア・インターフェース方法を使用して信号を定義することは、必要によって、必ず、問合せ信号110に対するSAWタグ100の影響の分析も必要とする。というのは、SAWタグが、受動的であり、信号刺激に応答するだけであるからである。したがって、SAWタグ100を定義するエア・インターフェース手法に頼る通常の信号処理方法は、問合せ信号110ならびに付随する応答信号170の定義に伝達関数を組み込むことを必要とする。
【0016】
エア・インターフェース方法は、識別のために使用される必須要件を過剰に指定するように働くので、SAWタグ100の仕様を記述するには非効率的である。その伝達関数によってSAWタグ100を指定することによって、SAWタグ・リーダの設計でさまざまな手法を使用できるようになる。というのは、問合せ信号110が適当な政府指定の放射要件を満たさなければならないことだけを実際の制約として有する、使用することができる問合せ信号110のタイプに制限がないからである。この制約の中で、SAWタグ100に組み込まれた反射パターンを検出するのに十分な情報を有する応答信号170を作るすべての信号を使用することができる。たとえば(i)個々の狭いパルス(たとえばインパルス)、(ii)複数の個々のトーンの返ってくる振幅および位相を検出するためのスペクトル測定、(iii)掃引周波数(たとえばチャープ)信号、および(iv)コード化された(たとえばダイレクト・シーケンス(direct sequence))スペクトル拡散信号などの問合せ信号のすべてを、問合せ信号として使用することができる。
【0017】
したがって、本発明は、SAWタグ100の既知の特性を利用して、さまざまなタイプの問合せ信号によって励起された時に特質上予測可能な応答を作るSAW識別タグ100にエンコードされた一意の識別子を判定するシステムを提供する。応答特性が、SAWタグ100の表面135に置かれた反射器150によって予測可能に影響されるので、問い合わされたSAWタグ100に一意の構成を明らかにするのは、この反射された応答信号170の分析である。本発明の一実施形態では、RF問合せ信号110が、約2.44GHzの搬送波周波数を使用する。もちろん、SAWタグ100特性が、任意の他の搬送波周波数が使用される時のSAWタグ100伝達関数に関して記述される限り、そのような任意の他の搬送波周波数を使用することができ、これは本発明の所期の範囲に含まれる。
【0018】
本発明の一実施形態で、SAWタグ100の伝達関数は、時間、位相、振幅、およびデータ順序の外部から観察可能な値に鑑みて定義される。外部から観察可能な値としての時間は、RF応答信号170の間の時間に関し、そのような時間が、2つの反射器150の間(または変換器120と反射器150の間)の内部ラウンドトリップ伝搬伝搬時間を考慮に入れたものであることを暗示する。2つの反射器150の間の内部伝搬時間がt秒である場合に、外部から観察可能な時間は、2t秒である。SAWタグ100のアーキテクチャを定式化する際に、時間は、一般に、問合せ信号110パルス持続時間に関して指定される。したがって、0.1Tとして表される値は、時間持続期間が、問合せ信号110パルスの持続時間の1/10と等しいことを意味する。他の形で指定されない限り、一般に、時間がパルスの中心から測定されることを理解されたい。
【0019】
外部から観察可能な位相値を検討する際に、初期音響パルス140として変換器120によって伝搬され、RF応答信号170として反射される問合せ信号110の内部反射位相および位相シフトを、一緒に検討しなければならない。内部伝搬から生じる位相シフトは、問合せ信号110の搬送波周波数に依存し、この搬送波周波数は、上で注記したように、この説明においては2.44GHz(ISM帯域の中)である。しかし、関連技術における通常の技量を有するものが理解するように、問合せ信号110として異なる搬送波周波数が使用される場合に、外部から観察可能な位相値を、それ相応に調節しなければならない。
【0020】
SAWタグ100の構造パラメータに関して外部から観察可能なRF応答信号170を定義するために、初期音響パルス140が1.0の振幅を有し、比較的な数が反射される応答音響パルス160に使用されると仮定することによって、RF応答信号170の振幅が指定される。指定されたパルス振幅は、伝搬減衰、反射係数、および伝送損失の内部態様のすべてを考慮に入れたものでなければならない。
【0021】
SAWタグ100の伝達関数を定義するために外部から観察可能な値を使用する時に、データおよびデータ・フィールドが信号でどのようの提示されるかに関するある前提を設ける必要がある。この説明において、最下位ビット(lsb)が、右側に置かれ、最上位ビット(msb)が、左側に置かれると仮定するが、これは、データの伝送がまずmsbから行われることを暗示する。関連技術における通常の技量を有するものが理解するように、信号でデータおよびデータ・フィールドがどのように提示されるかに関する異なる前提を設けることができ、これは本発明の所期の範囲に含まれる。
【0022】
本発明の特に有用で多用途の実施形態は、システムが基板130上に反射器位置190のグループ180を有することを提供する。したがって、所定の反射器位置190のグループ180内の反射器150の位置によって定義されるSAWタグ100の伝達関数に基づいて外部から観察可能な値を作るように、SAWタグ100を設計することができる。本発明の一実施形態のシステムは、最小限で10個の反射器位置190によって分離されて配置された2つの反射器150を有する21個の反射器位置190のグループ180のエンコーディング・アルゴリズムを提供する。2つの反射器150は、最小限で10個の反射器位置190によって分離されて、応答音響パルス160の間の大きいオーバーラップが排除される。パルスの間の反射器位置190の数を増やすことによって、追加のパルス分離を達成することができる。本明細書で説明するように、この「21個中2個」実施形態は、少数の応答音響パルス160を用いてデコードできるデータの複数ビットのエンコーディングの機能を提供する。他のエンコーディング・アルゴリズムが、より小さい空間により多くのデータをエンコードすることを可能にするが、21個中2個システムは、エンコーディングの単純さ、柔軟性、および応答音響パルス160の振幅の高められた均一性の可能性という長所を提供する。
【0023】
SAWタグ100上の狭い間隔の位置190のグループ180の中から反射器位置190を判定し、選択するのを助けるものとして、隣接する位置190は、反射された応答音響パルス160の異なる位相値を提供する。表1で、21個中2個システムを使用してエンコードされる実施形態に割り当てられた反射器位置190および相対反射位相を定義する。
【0024】
【表1】

【0025】
この実施形態は、名目上、時間の単位として表される問合せパルスの幅の10%と等しい間隔を置かれた反射器位置190を提供する。関連技術における通常の技量を有するものが理解するように、他の位相位置、時間、および反射器位置190を使用することができ、これは本発明の所期の範囲に含まれる。
【0026】
21個の反射器位置190と、反射器150の間の10個の位置190という最小間隔を用いると、2つの応答音響パルス160を用いてデコードできる66個のデータ組合せがある。次の表2に示されているように、この組合せのうちの64個を使用して、6ビットの情報を表すことができる。
【0027】
【表2】

【0028】
もう1つの有用なエンコーディング・アルゴリズムが、16個中1個エンコーディング・フォーマットである。このフォーマットは、16個の位置190のうちの1つに置かれた単一の反射器150を提供し、4ビットのデータをエンコードするのに使用することができる。表3に、各位置190の位相値と、各そのような位置190がこのアルゴリズムの一実施形態について表すコードをリストする。
【0029】
【表3】

【0030】
図2に移ると、基板上の反射器位置の14個のグループ210を使用して80ビットまでのデータをエンコードするSAWタグの実施形態の代表的なレイアウト200が示されている。図示の実施形態では、第1の12個のグループ210が、21個中2個エンコーディングを使用し、最後の2つのグループ210が、16個中1個を使用する。したがって、14個のグループ210が、80ビットのデータ・エンコーディング(12×6+2×4=80)を提供する。関連技術における通常の技量を有するものが理解するように、80ビットのデータは、64ビットのコード(関連するEPC(electronic product code)仕様によって要求されるものとすることができる)を提供するように構成でき、16ビットのデータが、エラー検査、フレームおよび位相の同期化、ならびにSAWタグ・バージョン情報に使用するために残される。
【0031】
図示のレイアウト200では、プリアンブル220が、データ・グループ230に先立ち、フレームおよび位相の同期化などの機能を提供すると同時に、SAWタグ・バージョン情報のためのデータ・スペースを提供する。14個のグループ210が、時間値215(符号tからt14)によって分離される。各時間値215インターバルは、あるグループ210の最後の反射器位置の中心と、次のグループ210の最初の反射器位置の中心の間の時間を表す。反射器が問合せ信号に対する応答音響パルスを作る前の時間遅延値216(符号Delay0)も示されている。この遅延は、SAWタグ応答と、問合せ信号の他の比較的高エネルギの反射の間の分離を提供する。この遅延は、SAWタグの別々のクラスの間の区別の方法も提供する。たとえば、SAWタグの倉庫ユーザは、パレット、ケース、および品目などの3つの主要な応用例を識別することができる。別のクラスの1つまた複数のタグの存在下で、あるクラスのタグを検出する能力を最大にするために、異なる量の初期遅延を確立することができる。SAWタグを区別する他の方法に、プリアンブル220のフォーマットおよびエラー検査が含まれる。プリアンブル・フォーマットの場合に、プリアンブル・パルス分離、位相エンコーディング、またはその組合せを変更することによって、異なるバージョンを定義することができる。エラー検査の場合に、あるバージョンを仮定している間に有効なチェック・サムが得られない場合に、有効なチェック・サムが発生するまで、他の仮定されるバージョンを使用して戻り信号を処理することができる。
【0032】
SAW識別タグの間で区別する有利な方法が、SAW識別タグのデータおよびデータ・フィールドをスクランブルすることである。一連のSAW識別タグが、シーケンシャル・コーディングされる番号を用いて製造される時に、2つの連続する番号を有するSAWタグによって返される応答信号の差は、最小になる。類似するコードを有するSAWタグの間で区別する能力を容易にするために、それにエンコードされたデータをスクランブルして、ヘッダ、オブジェクト、およびmsbなどのデータを変更せずに、SAWタグの各コードの大きく異なるパルス・パターンを作成することができる。異なるパルス・パターンの使用は、SAWタグの組の個々のSAWタグの識別を容易にする。スクランブルされたパルスの分離を増やすことによって、さらに容易にすることを達成することができる。
【0033】
スクランブルの概念を示すために、80ビットの集計ペイロードについて、64ビットのデータと16ビットのエラー訂正をエンコーディングされた一連のSAWタグが作られると仮定する。80ビット・ペイロード・データを、B0、B1、B2、B3、およびECを除くすべてのフィールドにエンコードする前に、他のフィールドを、これらのフィールドとB0およびB1の12ビットとのビット単位の「排他的論理和」によってスクランブルする。複数のバージョンのスクランブル・コードが、B0およびB1の循環シフトによって作られる。B0−iの指定は、B0のiビット位置の左への循環シフトを指定する(B0のlsbが、iビット左の位置に現れる)。同様に、B1−iの指定は、B1のiビット位置の左への循環シフトを示す。表4に、スクランブルされるフィールドと、めいめいのフィールドをスクランブルするのに使用されるB0またはB1の特定のシフト値を示す。スクランブル処理の出力コードは、40ビット・コードワードSのサブフィールドで指定される。サブフィールドS0からS5は、長さが6ビットであるが、サブフィールドS6は、長さが4ビットであり、これは、B10とB0の最下位4ビットの「排他的論理和」によって作られる。
【0034】
【表4】

【0035】
SAWタグ・コードをスクランブルして、あるフィールドが同一になるという事実にかかわらず、一連の密接に関連するタグの各コードの大きく異なるパルス・パターンが作られる。異なるパルス・パターンの使用によって、そのようなタグの組での個々のSAWタグの識別が容易になる。B0フィールドおよびB1フィールドは、SAWタグの組の間で変化するので、図示の例でコードをスクランブルするのに使用するために選択された。複数のフィールドで同一のスクランブル・コードが使用されないようにするために、コードをシフトして、S0からS6の異なるコードを作る。したがって、スクランブルされないフィールドが同一の場合であっても、スクランブルされたコードは、同一でなくなる。
64ビット・データ・コードのSAWタグ応答信号フォーマットを、表5に示す。表5に示された64ビット・コードの包括的フィールドは、B0からB3と、その後にスクランブルされたフィールドS0からS6の順番で送信される。16個のエラー検査ビットの送信が、64ビット・データ・フィールドの後に続く。
【0036】
【表5】

B0およびB1が、正しく受信される(後にエラー検査によって検証される)と仮定すると、スクランブルされたフィールドは、表6に示されているように、スクランブルに使用された処理を逆転することによってスクランブル解除することができる。
【0037】
【表6】

【0038】
図3に移ると、反射器位置の19個のグループ210を使用して112ビットまでのデータをエンコードするSAWタグの実施形態の代表的なレイアウト300が示されている。図示の実施形態は、21個中2個エンコーディングを使用する最初の18個のグループ210を提供するが、最後の1つのグループ210は、16個中1個を使用する。したがって、19個のグループ210が、112ビットのデータ・エンコーディング(18×6+1×4=112)を提供する。21個中2個エンコーディングの18個のグループと16個中1個エンコーディングの1つのグループが、112ビットのデータを提供し、このデータは、96ビットのEPCコードと16ビットのエラー検査としてエンコードすることができる。この実施形態のエンコーディングは、図2に示された実施形態と基本的に同一でである。
本発明を詳細に説明したが、その広義の形の本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、さまざまな変更、置換、および代替物を作れることを、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】RFID(radio frequency identification)タグとして使用できるタイプの通常の表面弾性波(SAW)タグを示す図である。
【図2】基板上の反射器位置の14個のグループを使用して80ビットまでのデータをエンコードするSAWタグの実施形態の代表的なレイアウトを示す図である。
【図3】基板上の反射器位置の19個のグループを使用して112ビットまでのデータをエンコードするSAWタグの実施形態の代表的なレイアウトを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面弾性波(SAW)識別タグの識別子を判定するシステムであって、
圧電基板に置かれた変換器に、応答音響パルスを作るために前記基板上で時間および位相位置に従って配置された複数の反射器から反射される初期音響パルスを作らせるラジオ周波数(RF)問合せ信号であって、前記変換器が、前記応答音響パルスからRF応答信号を生成する、RF問合せ信号と、
事前定義の時間パラメータ、位相パラメータ、および振幅パラメータに鑑みて前記RF応答信号をデコードすることによって前記識別子を判定することと
を含むシステム。
【請求項2】
前記RF問合せ信号が、約2.44GHzの搬送波周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記基板上の反射器位置のグループをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
複数の前記グループが、前記基板に置かれる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記グループが、最小限で10個の反射器位置によって分離される2つの前記反射器をその中に配置された21個の前記位置からなる、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記グループが、単一の反射器をその中に配置された16個の前記位置からなる、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
14個の前記グループが、前記基板に置かれる、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
80ビットまでのデータが、前記識別タグ上でエンコードされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
19個の前記グループが、前記基板に置かれる、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
112ビットまでのデータが、前記識別タグ上でエンコードされる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
表面弾性波(SAW)識別タグの識別子を判定するシステムを動作させる方法であって、
応答音響パルスを作るために圧電基板上で時間および位相位置に従って配置された複数の反射器から反射される初期音響パルスを作るように前記基板に置かれた変換器を励起するラジオ周波数(RF)問合せ信号を生成させることであって、前記変換器が、前記応答音響パルスからRF応答信号を生成する、生成させることと、
前記RF応答信号を検出し、事前定義の時間パラメータ、位相パラメータ、および振幅パラメータに鑑みて前記RF応答信号から前記識別子ををデコードすることと
を含む方法。
【請求項12】
前記RF問合せ信号が、約2.44GHzの搬送波周波数を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板上の反射器位置のグループをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
複数の前記グループが、前記基板に置かれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記グループが、最小限で10個の反射器位置によって分離される2つの前記反射器をその中に配置された21個の前記位置からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記グループが、単一の反射器をその中に配置された16個の前記位置からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
14個の前記グループが、前記基板に置かれる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
80ビットまでのデータが、前記識別タグ上でエンコードされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
19個の前記グループが、前記基板に置かれる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
112ビットまでのデータが、前記識別タグ上でエンコードされる、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−507610(P2006−507610A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569973(P2004−569973)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/030692
【国際公開番号】WO2004/086322
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504235654)アールエフ ソウ コンポーネンツ,インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】