説明

表面温度測定システム、加熱炉、表面温度測定方法、及びコンピュータプログラム

【課題】 加熱されている被測定物体の表面温度を、従来よりも高い精度で測定することができるようにする。
【解決手段】 加熱帯13の上方から、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に、略3.9[μm]の波長を有する光のみを検出する放射温度計100を設置し、複数の熱電対200を、加熱帯13の天井面13aに概ね格子状に点在させ、放射温度計100で求められた発光輝度から、熱電対200で測定された温度を用いて算出した迷光雑音輝度を引いて、スラブ21自体から発光される自発光輝度を求める。このとき、放射温度計100はスラブと正対し、点在する熱電対は温度測定中心点21aから放射温度計100の方向に広がる天頂角θが45[°]の仮想の円錐41があると見なした場合にその円錐41の内部に入るようにするのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面温度測定システム、加熱炉、表面温度測定方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、加熱されている被測定物体の表面温度を測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延を行って薄板鋼板を製造する場合には、熱間圧延を行う前にスラブ等の鋼材を、加熱炉にて加熱するようにしている。加熱炉における鋼材の表面温度を知ることは、適切なヒートパターンで鋼材を加熱するために重要である。適切なヒートパターンで鋼材を加熱することによって、熱間圧延における加工精度の向上や、加熱炉における省エネルギー化や、薄板鋼板の生産効率の向上等が実現できるからである。
【0003】
そこで、加熱炉内にある鋼材の表面温度を測定するために、従来から放射温度計を用いて放射測温を行うことが提案されている。加熱炉は、バーナーから発せられる火炎(以下、必要に応じてバーナー火炎と称する)等によって、1000[℃]〜1400[℃]の高温となっている。このため、放射測温を行って鋼材の温度を測定する場合、鋼材から発せられる光だけが放射温度計で検出されるのではない。すなわち、炉壁から発せられる外乱光や、加熱炉内のバーナー火炎・燃焼ガスから発せられる外乱光も、鋼板の表面で反射して、迷光雑音として放射温度計に入力される。したがって、放射温度計により得られる発光輝度(放射強度)は、鋼材自体から発せられる自発光の輝度(放射強度)と、迷光雑音の輝度(放射強度)とが混在したものとなる。
【0004】
そこで、鋼材の温度を、放射測温を行って精度良く測定するためには、迷光雑音を正しく見積もり、放射温度計により得られる発光輝度から、迷光雑音による影響を正しく除去することが必要となる。
特許文献1には、所定の間隔を有して鋼材表面と正対する位置に固定された第1の放射温度計の他に、加熱炉内に設けられ、炉内全方向に受光方向を走査できる第2の放射温度計を用いる技術が開示されている。かかる技術では、加熱炉内において第2の放射温度計を走査させて加熱炉内に存在する迷光雑音の輝度を測定し、第1の放射温度計で測定した発光輝度から、第2の放射温度計で測定した迷光雑音の輝度を除去して、鋼材表面の温度を測定するようにしている。
【0005】
また、特許文献2では、互いに異なる2つの波長で、鋼材からの自発光の発光輝度を測定すると共に、熱電対や放射温度計により加熱炉の炉壁のある一点の温度を測定する。そして、鋼材からの発光輝度と、加熱炉の炉壁のある一点の温度(一定値)とを用いて、鋼材表面の温度を測定する。
【0006】
【特許文献1】特開平7−174634号公報
【特許文献2】特開平6−258142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、1000[℃]〜1400[℃]の高温の加熱炉内に、放射温度計と、その放射温度計を走査するための駆動機構を備えた測定装置を挿入しなければならない。このため、測定装置を冷却するための冷却機構を、限られたスペースに設けなければならない。よって、特許文献1に記載の技術を実現することは困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、加熱炉の炉壁のみを迷光雑音の対象としている。前述したように、加熱炉内では、炉壁の他に、バーナー火炎・燃焼ガス等も迷光雑音の原因となる。したがって、特許文献2に記載の技術では、鋼材の表面温度を正確に測定することが困難であるという問題点があった。更に、特許文献2に記載の技術では、加熱炉の炉壁のある一点の温度だけを測定している。したがって、迷光雑音の原因となる炉壁の全体の温度を正確に得ることができず、鋼材の表面温度を正確に測定することが困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、加熱されている被測定物体の表面温度を、従来よりも高い精度で測定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面温度測定システムは、ガス焚き加熱炉内で加熱されている被測定物体の表面温度を測定する表面温度測定システムであって、前記被測定物体から発光される波長の光のうち、ガスの放射と吸収とが他の波長帯域よりも小さい特定波長の光の発光輝度を測定する発光輝度測定手段と、前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域に設けられた複数の温度測定手段と、前記複数の温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算手段と、前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算手段により計算された温度分布を用いて計算する迷光雑音計算手段と、前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算手段により計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定手段により測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算手段と、前記自発光輝度計算手段により計算された自発光輝度を用いて、前記被測定物体の表面温度を計算する表面温度計算手段とを有することを特徴とする。
また、本発明の加熱炉は、前記表面温度測定システムを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の表面温度測定方法は、ガス焚き加熱炉内で加熱されている被測定物体の表面温度を測定する表面温度測定方法であって、前記被測定物体から放射される波長の光のうち、ガスの放射と吸収とが他の波長帯域よりも小さい特定波長の光の発光輝度を、発光輝度測定手段により測定する発光輝度測定ステップと、前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域に設けられた複数の温度測定手段により温度を測定する温度測定ステップと、前記温度測定ステップにより測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算ステップと、前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算ステップにより計算された温度分布を用いて計算する迷光雑音計算ステップと、前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定ステップにより測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算ステップと、前記自発光輝度計算ステップにより計算された自発光輝度を用いて、前記被測定物体の表面温度を計算する表面温度計算ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明のコンピュータプログラムは、ガス焚き加熱炉内で加熱されている被測定物体から発光される波長の光のうち、ガスの放射と吸収とが他の波長帯域よりも小さい特定波長の光の発光輝度を測定する発光輝度測定手段と、前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域に設けられた複数の温度測定手段と、における測定値を用いて、前記被測定物体の表面温度を測定することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記複数の温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算ステップと、前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算ステップにより計算された温度分布を用いて計算する迷光雑音計算ステップと、前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定ステップにより測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算ステップと、前記自発光輝度計算ステップにより計算された自発光輝度を用いて、前記被測定物体の表面温度を計算する表面温度計算ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
ここで、本発明では、前記被測定物体自体から発生している光を自発光と称し、その輝度を自発光輝度と称する。前記被測定物体の表面に外部から入射する光を外乱光と称し、その輝度を外乱光輝度と称する。前記被測定物体の表面で反射した光のうち、発光輝度測定手段に入光する光を迷光雑音と称し、その輝度を迷光雑音輝度と称する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱されている被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を用いて、被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を計算する。そして、発光輝度測定手段により測定された発光輝度と、被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度とを用いて、被測定物体自体から発生している自発光の発光輝度を計算し、計算した自発光の発光輝度を用いて、被測定物体の表面温度を計算する。以上のように、加熱されている被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を用いて、被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を計算するので、その迷光雑音輝度の計算精度を向上させることができる。更に、発光輝度測定手段は、加熱に寄与しているガスの放射と吸収とが、他の波長帯域よりも小さい特定波長の光を検出するので、発光輝度測定手段で測定される発光輝度に、加熱に寄与しているガスによる迷光雑音輝度が含まれてしまうことを可及的に防止することができる。以上のことから、加熱されている被測定物体の表面温度を、従来よりも高い精度で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。
図1において、多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉10は、非燃焼帯11と、予熱帯12と、加熱帯13と、均熱帯14とを、被測定物体の一例であるスラブ21が順番に通過するようにして、スラブ21を加熱するためのものである。尚、以下の説明では、多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉10を、加熱炉10と略称する。また、図1では、15個のスラブ21が、加熱炉10内にある場合を例に挙げて示している。
【0016】
本実施形態では、加熱炉10に装入されるスラブ21の長さを6[m]〜12[m]、幅を0.6[m]〜2.2[m]、厚みを0.25[m]とした。また、加熱炉10に装入されるスラブ21の温度を、常温〜700[℃]程度とし、加熱炉10から抽出されるスラブ21の温度を、1100[℃]〜1250[℃]程度の温度とした。更に、加熱炉10内におけるスラブ21の在炉時間を、140[分]〜220[分]とした。以上のような操業条件に従って、非燃焼帯11、予熱帯12、加熱帯13、及び均熱帯14の順でスラブ21を搬送し、加熱炉10から抽出するようにしている。
【0017】
予熱帯12と加熱帯13とには、軸流バーナー15a、15bが夫々複数(例えば8本)ずつ設置されている。均熱帯14には、ルーフバーナー16が複数(例えば20本)設置されている。更に、予熱帯12、加熱帯13、及び均熱帯14には、それぞれサイドバーナー17が複数(例えば、予熱帯12及び加熱帯13には夫々8本、均熱帯14には10本)設置されている。サイドバーナー17は、予熱帯12と加熱帯13の両側部に夫々設けられており、スラブ21の両側方向から火炎バーナーを発する。
尚、本実施形態では、軸流バーナー15、ルーフバーナー16、及びサイドバーナー17からバーナー火炎を発生させるための燃料として、例えばLNGを用い、支燃剤として空気又は酸素富化空気を用いている。尚、各バーナー15〜17に送られる支燃剤は、400[℃]〜600[℃]程度に予熱されている。
【0018】
非燃焼帯11、予熱帯12、加熱帯13、及び均熱帯14には、スラブ21を支持する固定スキッドビームと、スラブ21を搬送方向(図1の矢印の方向)に搬送するためのウォーキングビームとを備えた搬送装置が設けられている。加熱炉10に装入されたスラブ21は、搬送装置によって間欠的に搬送方向に搬送され、非燃焼帯11、予熱帯12、加熱帯13、及び均熱帯14を順次通過して、加熱炉10から抽出される。加熱炉10から抽出されたスラブ21は、熱間圧延ラインに搬送される。
【0019】
本実施形態では、このような構成の加熱炉10における加熱帯13に、表面温度測定システムを設けるようにしている。本実施形態の表面温度測定システムは、放射温度計100と、複数の熱電対200と、情報処理装置300と、表示装置400とを備えて構成される。
【0020】
放射温度計100は、加熱帯13の上方から、加熱帯13の天井の炉壁面の一部に形成された孔13bを通して、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に設置されている。このように、放射温度計100は、その入光面(検出面)が、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面と、予め設定された間隔を有して正対する位置に設置されている。尚、以下の説明では、加熱帯13の天井の炉壁面を、必要に応じて、加熱帯13の天井面、又は単に天井面と称する。
【0021】
本実施形態の放射温度計100は、その入光面に入光される光のうち、略3.9[μm]を中心とする狭帯域の波長を有する光のみを検出し、その光の分光発光輝度(放射強度)Ib(Tm)[W・m-2・sr-1・μm-1]を求める。ここで、放射温度計100が検出する光の波長を、略3.9[μm]の波長としたのは、次の理由による。すなわち、本願発明者らは、加熱炉10(加熱帯13)内のバーナー火炎や燃焼ガスに対する放射と吸収とが他よりも低くなる特定波長が、3.9[μm]であるという従来からの知見に基づき、この特定波長が測温誤差への影響をほとんど生じさせないという知見を実験的に得たからである。
【0022】
したがって、本実施形態では、加熱炉10(加熱帯13)内のバーナー火炎や燃焼ガス等、加熱に寄与しているガスに対する放射と吸収とが著しく小さい特定波長として略3.9[μm](例えば中心波長3.9[μm]で半値幅が0.4[μm]以下、好ましくは中心波長3.9[μm]で半値幅が0.2[μm]以下)の光のみを放射温度計100が検出するようにしている。これにより、放射温度計100で求められる発光輝度に含まれる「バーナー火炎や燃焼ガスに基づく迷光雑音の輝度(放射強度)」を低減することができる。尚、以下の説明では、迷光雑音の輝度を、必要に応じて迷光雑音輝度と称する。
以上のように本実施形態では、例えば、放射温度計100を用いて、発光輝度測定手段が実現される。
【0023】
熱電対200は、加熱帯13の天井面に取り付けられている。図2は、加熱帯13に取り付けられている熱電対200a〜200iの様子の概略を示す図である。また、図3(a)は、図2のAの方向から見た様子の概略を示す図であり、図3(b)は、図2のB−B´方向から見た様子の概略を示す図(断面図)である。
図2及び図3に示すように、本実施形態では、9個の熱電対200a〜200iを、加熱帯13の天井面13aに取り付けている。具体的に本実施形態では、9個の熱電対200a〜200iを、概ね、1[m]間隔の格子状に点在させている。
【0024】
図4は、9個の熱電対200a〜200iが取り付けられる範囲の一例を説明する図である。
図4に示すように、本実施形態では、スラブ21表面上の点であって、放射温度計100の入光面100aの中心100bと正対する位置にある点21aから、放射温度計100の方向に広がる天頂角θが45[°](広がり角が90[°])の仮想の円錐41があると見なした場合に、その仮想の円錐41の内部に入るように、9個の熱電対200a〜200iが、加熱帯13の天井面13aに取り付けられるようにしている。
【0025】
より具体的に説明すると、放射温度計100の入光面100aの中心100bと正対する位置にある点21aを頂点とし、天頂角θを45[°](広がり角が90[°])とする円錐であって、加熱帯13の天井面13aに底面41aを有する仮想の円錐41があると見なした場合に、その仮想の円錐41の底面41aの内部に、9個の熱電対200a〜200iが取り付けられるようにしている。尚、以下の説明では、スラブ21表面上の点であって、放射温度計100の入光面100aの中心100bと正対する位置にある点21aを、必要に応じて、温度測定中心点21aと称する。
【0026】
このようにして、仮想の円錐41の内部に入るように、9個の熱電対200a〜200iが、加熱帯13の天井面13aに取り付けられるようにするのは、本願発明者らによって得られた次の知見を理由とするものである。
本願発明者らは、加熱炉10による加熱によって表面が酸化されたスラブ21の放射率εsは、温度によらず概ね0.85で一定となるという知見を得た。したがって、加熱帯13の天井面13aから発せられる「波長が3.9[μm]の光」の二方向性反射率ρ´´(θ)の天井面13a全体における積分値は、温度によらず概ね0.15(1−0.85)になる。ここで、二方向性反射率ρ´´(θ)とは、例えば、加熱帯13の天井面13aの点(例えば点13c)から、スラブ21の被測定領域に入射した光のうち、放射温度計100の入光面100aの方向(法線方向)に反射する光がどの位あるのかを示すものである。尚、スラブ21の被測定領域とは、温度測定中心点21aを中心とする領域であって、放射温度計100の入光面100aと正対する領域である。
【0027】
そして、本願発明者らは、波長が3.9[μm]の光の入射角(天頂角)θと、その光の二方向性反射率ρ´´(θ)の相対値との関係を、実験的に調べた。その結果を図5に示す。
更に、本願発明者らは、図5に示すグラフ51を表す関数を積分した結果(図5に示したグラフ51の面積)が0.15となるように、グラフ51の縦軸の値を相対値から実際の値に変更する計算をコンピュータに行わせた。その結果、本願発明者らは、波長が3.9[μm]の光の入射角(天頂角)θと、二方向性反射率ρ´´(θ)の実際の値との関係を示す二方向性反射率ρ´´(θ)の関数を得た。
そして、本願発明者らは、コンピュータを用いて、次の(1)式の演算を行った。
【0028】
【数1】

【0029】
(1)式において、φは、方位角[°]を表す。(1)式から明らかなように、加熱炉10の天井面13aから発せられる光のうち、スラブ21の被測定領域で反射して放射温度計100に入光する光の約70[%]は、図4に示した仮想の円錐41の内部の領域から発せられる光となる。言い換えると、加熱炉10の天井面13aから発せられる光のうち、スラブ21の被測定領域で反射して放射温度計100の入光面100aに入光する光の約30[%]は、図4に示した仮想の円錐41の内部の領域外から発せられる光となる。
【0030】
更に、本願発明者らは、仮想の円錐41の領域外の温度が実際の温度と100[℃]異なったとしても、放射温度計100で求められる発光輝度の誤差は、20[%]程度であることを確認した。
以上のことから、本願発明者らは、加熱炉10の天井面13a全体から発せられる光の全てではなく、仮想の円錐41の内部の領域から発せられる光に基づいて、加熱炉10の天井面13aから発せられる外乱光に基づく迷光雑音輝度を求めたとしても、その迷光雑音輝度の誤差は、以下の(2)式に示すように、1[%]未満となるという知見を得た。
0.3×0.15×0.2×100=0.9[%] ・・・(2)
【0031】
この0.9[%]の誤差を、温度の誤差に換算すると、約5[℃]となる。したがって、仮想の円錐41の内部の領域から発せられる光に基づいて、加熱炉10の天井面13aから発せられる外乱光に基づく迷光雑音輝度を求めたとしても、そのことによるスラブ21の表面温度の誤差は、5[℃]程度となり、実用上十分な精度を確保できる。
【0032】
以上のことから本実施形態では、図4に示した仮想の円錐41の内部の領域に、9個の熱電対200a〜200iを格子状に点在させて、その領域における温度を出来るだけ正確に測定すると共に、その領域外の温度を9個の熱電対200a〜200iの測定結果から大まかに推定するようにしている。このようにすることによって、加熱炉10の天井面13a全体に熱電対200を配置しなくても、スラブ21の表面温度を、実用上十分な精度で求めることができる。
以上のように本実施形態では、例えば、9個の熱電対200a〜200iを用いて複数の温度測定手段が実現される。
【0033】
図1に説明を戻し、情報処理装置300は、放射温度計100で求められた「発光輝度」の信号と、熱電対200で測定された「加熱帯13の天井面13aの温度」の信号とを入力し、入力した信号を用いて、スラブ21の表面温度を計算し、計算した表面温度を表示装置400に表示するためのものである。情報処理装置300のハードウェアは、パーソナルコンピュータ等、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、画像入出力ボード、各種インターフェース、及びインターフェースコントローラ等を備えた情報処理装置を用いて実現することができる。また、表示装置400は、LCD(Liquid Crystal Display)等のコンピュータディスプレイを備えている。また、キーボードやマウス等のユーザインターフェースも、情報処理装置300に接続されている。
【0034】
図6は、情報処理装置300の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、特に断りのない限り、図6に示す各ブロックは、CPUが、ROMやハードディスクに記憶されている制御プログラムを、RAMを用いて実行することにより実現される。そして、図6に示す各ブロック間で、信号のやり取りを行うことにより、以下の処理が実現される。
【0035】
発光輝度取得部301は、放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)の信号を入力してRAMに記憶させるためのものである。
熱電対温度取得部302は、9個の熱電対200a〜200iで測定された温度の信号を入力してRAMに記憶させるためのものである。このとき熱電対温度取得部302は、どの熱電対200a〜200iが測定した温度であるのかを識別できるようにして、その温度をRAMに記憶させる。
【0036】
熱電対位置記憶部303は、加熱帯13の天井面13aに取り付けられている9個の熱電対200a〜200iの位置を記憶するためのものである。本実施形態では、9個の熱電対200a〜200iの位置として、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の中心点を原点としたxy座標を記憶するようにしている。熱電対位置記憶部303は、例えば、ハードディスクやROMを用いて構成することができる。
【0037】
放射率記憶部304は、ユーザによるユーザインターフェース(キーボードやマウス)等の操作に基づいて、加熱炉10による加熱によって表面が酸化されたスラブ21の放射率εsのデータを外部から取得して記憶するためのものである。尚、以下の説明では、必要に応じて、加熱炉10による加熱によって表面が酸化されたスラブ21の放射率εsを、必要に応じて、スラブ21の放射率εs又は単に放射率εsと略称する。
【0038】
前述したように、本願発明者らは、スラブ21の放射率εsは概ね0.85で一定となるという知見を得た。したがって、本実施形態では、放射率記憶部304は、スラブ21の放射率εsとして0.85を外部から取得して記憶している。このように、本実施形態では、スラブ21の放射率εsを、スラブ21の表面温度を測定する前に、オフラインでコンピュータにより求めて放射率記憶部304に記憶させるようにしている。放射率記憶部304は、例えば、CPUが、ROMやハードディスクに記憶されている制御プログラムを、RAMを用いて実行し、放射率εsをハードディスクやROMに記憶することにより実現することができる。以上のように本実施形態では、例えば、放射率記憶部304を用いて、放射率記憶手段が実現される。
【0039】
二方向性反射率導出部305は、ユーザによるユーザインターフェース(キーボードやマウス)等の操作に基づいて、波長が3.9[μm]の光の二方向性反射率ρ´´(θ)の測定データを外部から取得する。そして、二方向性反射率導出部305は、その波長が3.9[μm]の二方向性反射率ρ´´(θ)の測定データに基づいて、波長が3.9[μm]の光の入射角(天頂角)θと、その光の二方向性反射率ρ´´(θ)の相対値との関係を表す関数を求める。すなわち、二方向性反射率導出部305は、例えば図5に示したようなグラフ51を表す関数を求める。そして、二方向性反射率導出部305は、求めた関数を積分した結果(図5に示したグラフ51の面積)が、「1」から「放射率記憶部304により記憶された放射率εs」を減算した値となるように、グラフ51の縦軸の値を相対値から実際の値に変更し、縦軸の値を変更したグラフ51に基づく二方向性反射率ρ´´(θ)の関数を求める。本実施形態では、スラブ21の放射率εsとして0.85が、放射率記憶部304により記憶されているので、求めた関数を積分した結果(図4に示したグラフ51の面積)が、0.15(=1−0.85)となるように、グラフ51の縦軸の値を相対値から実際の値に変更することになる。
【0040】
二方向性反射率記憶部306は、二方向性反射率導出部305で求められた二方向性反射率ρ´´(θ)(の関数)を記憶するためのものである。このように、本実施形態では、オフラインで求められた二方向性反射率ρ´´(θ)を、スラブ21の表面温度を測定する前に、二方向性反射率記憶部306に予め記憶させるようにしている。二方向性反射率記憶部306は、例えば、ハードディスクやROMを用いて構成することができる。以上のように本実施形態では、例えば、二方向性反射率記憶部306を用いて、二方向性反射率記憶手段が実現される。
【0041】
天井面温度分布導出部307は、熱電対200a〜200iで測定された温度に基づいて、加熱帯13の天井面13a全体の温度の分布を求める。
図7は、熱電対200a〜200iで測定された温度の一例を示す図である。図7において、グラフ71〜79は、夫々、熱電対200e、200d、200f、200c、200a、200h、200b、200i、200gで測定された温度に基づくグラフである。
【0042】
図7に示すように、加熱帯13の天井面13aの温度は一様ではない。そこで、天井面温度分布導出部307は、図3(a)に示すように、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の領域の内部に含まれる点の温度については、その点の周囲にある4つの熱電対200により測定された温度を用いて線形補間を行って算出する。例えば、図3に示す点13cの温度については、その点13cの周囲の4つの熱電対200b、200c、200h、200iにより測定された温度を用いて線形補間を行って算出される。
【0043】
一方、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の領域の内部に含まれない点の温度を求める方法には、外周部の値をそのまま延長する方法と外挿する方法とがある。後者の外挿する方法は、熱電対(測定点)から近い範囲の温度を求めるなら良いが、熱電対(測定点)から遠くになるにつれて温度を高く又は低く評価しすぎてしまうことがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、前者の外周部の値をそのまま延長する方法を採用している。この外周部の値をそのまま延長する方法は、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の辺上の点のうち、その点から最も近い点の温度と同じ温度とするものである。例えば、図3に示す点13dの温度については、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の辺上の点のうち、その点13dに最も近い点13eの温度と同じ温度とする。尚、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の辺上の点の温度は、前述したようにして線形補間を行って算出された温度と、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの温度との何れかとなる。
そして、天井面温度分布導出部307は、以上のようにして求めた「加熱帯13の天井面13aの温度」から、加熱帯13の天井面13aの温度分布を算出し、算出した温度分布をRAM等に記憶させる。
以上のように本実施形態では、例えば、天井面温度分布導出部307を用いて、温度分布計算手段が実現される。
【0045】
表面温度演算部308は、発光輝度取得部301により取得された「発光輝度Ib(Tm)」と、放射率記憶部304に記憶されている「スラブ21の放射率εs」と、二方向性反射率記憶部306に記憶されている「二方向性反射率ρ´´(θ)」と、天井温度分布導出部307により求められた「加熱帯13の天井面13aの温度分布」とに基づいて、スラブ21の被測定領域の表面温度Ts[K]を絶対温度で算出する。
前述したように、加熱帯13の天井面13aの任意の点の温度は、その点の周囲にある4つの熱電対200により測定された温度を用いて求められる。したがって、加熱帯13の天井面13aの任意の点Pの温度Tpは、以下の(3)式で表される。
【0046】
p=f(x,y,T1,T2,T3,T4) ・・・(3)
x,y:4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の中心点を原点としたxy平面(天井面13a)上の座標
T1〜T4:点Pの周囲にある4つの熱電対200の温度(絶対温度)
(3)式は、以下の(4)〜(7)式を用いることにより、以下の(8)式のように変換される。
【0047】
【数2】

【0048】
θ:天頂角
φ:方位角
atan:アークタンジェント
h:スラブ21の表面と、加熱帯13の天井面13aとの間の距離
p=f(θ,φ,T1,T2,T3,T4) ・・・(8)
【0049】
以上のようにして得られる「発光輝度Ib(Tm)」と、「スラブ21の放射率εs」と、「二方向性反射率ρ´´(θ)」と、「加熱帯13の天井面13aの任意の点Pの温度Tp」とを用いると、以下の(9)式が成立する。
【0050】
【数3】

【0051】
Ω:立体角
εsb(Ts):スラブ21自体より発せられる自発光の輝度(放射強度)
尚、以下の説明では、スラブ21自体より発せられる自発光の輝度を、必要に応じてスラブ21自体より発せられる自発光輝度、又は単に自発光輝度と称する。
以上のように、(9)式の左辺は、放射温度計100で求められる発光輝度Ib(Tm)であり、(9)式の右辺の第2項は、放射温度計100で求められる発光輝度Ib(Tm)に含まれる迷光雑音輝度である。よって、(9)式の右辺の第1項εsb(Ts)が、スラブ21自体より発せられる自発光輝度となる。
【0052】
表面温度演算部308は、(9)式の右辺の第1項に含まれる黒体放射輝度Ib(Ts)を求め、求めた黒体放射輝度Ib(Ts)から、スラブ21の被測定領域の表面温度Tsを絶対温度で算出する。
【0053】
具体的に、表面温度演算部308は、(8)式を次の(10)式に代入する。(10
)式は、表面温度Tと黒体放射輝度Ib(T)との関係式である。表面温度演算部308は、(8)式を代入した(10)式と、二方向性反射率記憶部306に記憶されている「二方向性反射率ρ´´(θ)」とを(9)式の右辺の第2項に代入して、コンピュータによる数値積分を行うことにより、(9)式の右辺の第2項を求める。このように、本実施形態では、例えば、表面温度演算部308を用いて、迷光雑音計算手段が実現される。
【0054】
【数4】

【0055】
λ:放射温度計100で検出される光の波長(本実施形態では、3.9[μm])
1、C2:物理定数
T:絶対温度
また、表面温度演算部308は、(9)式の左辺に、発光輝度取得部301により取得された「発光輝度Ib(Tm)」を代入し、更に(9)式の右辺の第1項のεsに、放射率記憶部304に記憶されている「スラブ21の放射率εs」を代入する。
そして、表面温度演算部308は、(9)式の右辺の第1項の自発光輝度εsb(Ts)を求め、求めた自発光輝度εsb(Ts)に含まれる黒体放射輝度Ib(Ts)を、前述した(10)式に代入することにより、スラブ21の被測定領域の表面温度Ts[K]を算出する。このように、本実施形態では、例えば、表面温度演算部308を用いて、自発光輝度計算手段と表面温度計算手段とが実現される。
表面温度表示部309は、表面温度演算部308で求められた「スラブ21の被測定領域の表面温度Ts」を、表示装置400に表示して、ユーザに報知する。
【0056】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、情報処理装置300における処理動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、熱電対温度取得部302は、9個の熱電対200a〜200iで測定された温度の信号を入力するまで待機する。9個の熱電対200a〜200iで測定された温度の信号を入力すると、ステップS2に進む。ステップS2に進むと、熱電対温度取得部302は、入力した「9個の熱電対200a〜200iで測定された温度」をRAMに記憶させる。前述したように、熱電対温度取得部302は、どの熱電対200a〜200iが測定した温度であるのかを識別できるようにして、その温度をRAMに記憶させる。
【0057】
次に、ステップS3において、天井面温度分布導出部307は、ステップS2で記憶された温度に基づいて、加熱帯13の天井面13a全体の温度分布を、前述したようにして求める。
次に、ステップS4において、発光輝度取得部301は、放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)の信号が入力されるまで待機する。放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)の信号が入力されると、ステップS5に進む。ステップS5に進むと、発光輝度取得部301は、入力した「発光輝度Ib(Tm)」をRAMに記憶させる。
【0058】
次に、ステップS6において、表面温度演算部308は、二方向性反射率記憶部306に予め記憶されている二方向性反射率ρ´´(θ)を読み出す。
次に、ステップS7において、表面温度演算部308は、放射率記憶部304に予め記憶されている「スラブ21の放射率εs」を読み出す。
次に、ステップS8において、表面温度演算部308は、ステップS3で求められた「加熱帯13の天井面13aの温度分布」により表される「加熱帯13の天井面13aの任意の点Pの温度Tp」と、ステップS5で記憶された「発光輝度Ib(Tm)」と、ステップS6で読み出された「二方向性反射率ρ´´(θ)」と、ステップS7で読み出された「スラブ21の放射率εs」とを(9)式に代入して、自発光輝度εsb(Ts)を算出する。
【0059】
次に、ステップS9において、表面温度演算部308は、ステップS8で算出した自発光輝度εsb(Ts)に含まれる黒体放射輝度Ib(Ts)を(10)式に代入して、スラブ21の被測定領域の表面温度Tsを算出する。
次に、ステップS10において、表面温度表示部309は、ステップS9で算出された「スラブ21の被測定領域の表面温度Ts」を表示するための画像データを生成し、その画像データに基づく画像を表示装置400に表示して、スラブ21の被測定領域の表面温度Tsをユーザに報知する。
【0060】
ここで、本実施形態では、表面温度が、700[℃]以上、好ましくは900[℃]以上となっているスラブ21からの光を、放射温度計100で検出するようにしている。このようにするのは、本願発明者らによって得られた次の知見を理由とするものである。
【0061】
前述したように、加熱炉10による加熱によって表面が酸化したスラブ21の放射率εsは概ね0.85で一定となるという知見を得た。しかしながら、この放射率εsは、完全に一定の値を有するというものではなく、ある程度バラつくものであり、この放射率εsの真の値を知ることはできない。そして、本願発明者らは、この放射率εsが0.85±0.02程度バラつくという知見を得た。
【0062】
そこで、本願発明者らは、放射率の変動による測温誤差を計算によって調査した。まず、放射率を0.85と仮定し、次に、実際の放射率が0.83あるいは0.87であったときに生じる測温誤差を、プランクの黒体放射理論式に基づき計算した。なお、この計算においては、天井面13aの温度分布は1200℃で均一であるとした。図9は、スラブ21の表面温度の算出値と真値との差(すなわち、測温誤差)を絶対値で表したものと、スラブ21の表面温度の真値との関係の一例を示す図である。
【0063】
図9において、グラフ91は、実際の放射率εsが0.87であったときの、スラブ21の表面温度Tsの算出値と真値との誤差を示すグラフであり、グラフ92は、実際の放射率εsが0.83であったときの、表面温度Tsの算出値と真値との誤差を示すグラフである。これらのグラフ91、92から明らかなように、スラブの表面温度が700[℃]以上であれば、放射率εsがバラつくことにより生じる「スラブ21の表面温度の算出値と真値との誤差」を20[℃]以下にすることができ、実用上十分な精度で、スラブ21の表面温度Tsを算出することができる。更に、スラブの表面温度が900[℃]以上であれば、放射率εsがバラつくことにより生じる「スラブ21の表面温度の算出値と真値との誤差」を10[℃]以下にすることができ、より高い精度で、スラブ21の表面温度Tsを算出することができる。
【0064】
以上のような理由から、本実施形態では、表面温度が、700[℃]以上、好ましくは900[℃]以上となっているスラブ21からの光を、放射温度計100が検出するようにしている。本実施形態の加熱帯13を通過しているスラブ21の表面温度は、700[℃]以上となっている。したがって、図1に示すようにして放射温度計100を設ければ、表面温度が、700[℃]以上(好ましくは900[℃]以上)となっているスラブ21からの光を、放射温度計100が検出することができる。
【0065】
図10は、本実施形態の表面温度測定システムにより算出された「スラブ21の被測定領域の表面温度Ts」と、スラブ21の表面に取り付けられた熱電対で測定された「スラブ21の被測定領域の表面温度」との関係の一例を示す図である。図10では、比較例として、加熱帯13の天井面13aの温度が一様であるとして、(9)式、(10)式の計算を行うことにより得られた「スラブ21の被測定領域の表面温度」も併せて示している。
図10において、本実施形態の表面温度測定システムにより算出された「スラブ21の被測定領域の表面温度Ts」(◆)と、スラブ21の表面に取り付けられた熱電対で測定された「スラブ21の被測定領域の表面温度」を表すグラフ1001との差は、絶対値で10[℃]以下であった。このことから、本実施形態の表面温度測定システムにより算出された「スラブ21の被測定領域の表面温度Ts」は、実用上十分な精度を有していることが分かる。
【0066】
これに対して、「加熱帯13の天井面13aの温度が、炉温制御用に既設の炉温計1点の値で一様であるとして得られたスラブ21の被測定領域の表面温度」(○)と、スラブ21の表面に取り付けられた熱電対で測定された「スラブ21の被測定領域の表面温度」を表すグラフ1001との差は、絶対値で30[℃]〜50[℃]程度あった。このことから、迷光雑音の原因となる加熱帯13の天井面13aの温度を一定としてスラブ21の表面温度を計算する手法では、実用上要求される精度を得ることが困難であるということが分かる。
【0067】
以上のように本実施形態では、加熱帯13の上方から、加熱帯13の天井面の一部に形成された孔13bを通して、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に、略3.9[μm]の波長を有する光のみを検出する放射温度計100を設置する。これにより、放射温度計100で求められる発光輝度に含まれる「バーナー火炎や燃焼ガスに基づく迷光雑音輝度」を低減することができる。
【0068】
また、本実施形態では、温度測定中心点21aから、放射温度計100の方向に広がる天頂角θが45[°]の仮想の円錐41があると見なした場合に、その仮想の円錐41の内部に入るように、9個の熱電対200a〜200iを、加熱帯13の天井面13aに概ね格子状に点在させるようにした。したがって、放射温度計100に入光される迷光雑音の70[%]程度に寄与している領域の温度分布を正確に求めることができる。よって、スラブ21の被測定領域の表面温度Tsを、従来よりも高精度に且つ大きな計算負荷をかけることなく容易に求めることができる。
【0069】
また、本実施形態では、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の領域の内部に含まれる点(例えば点13c)の温度については、その点の周囲にある4つの熱電対200により測定された温度を用いて線形補間を行って算出した。一方、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の領域の内部に含まれない点(例えば点13d)の温度については、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の辺上の点のうち、その点(例えば点13d)から最も近い点(例えば点13e)の温度と同じ温度とした。そして、このようにして得られた温度に基づいて、加熱帯13の天井面13a全体の温度分布を求めるようにした。
【0070】
以上のように、放射温度計100に入光される迷光雑音の70[%]程度に寄与している領域については、線形補間により出来るだけ正確に温度を求めるようにし、それ以外の領域については、大まかなに温度を求めるようにすることによって、加熱炉10の天井面13a全体に熱電対200を配置しなくても、スラブ21の表面温度を、実用上十分な精度で求めることができる。
【0071】
また、本実施形態では、スラブ21の表面温度を測定する前に(オフラインで)、スラブ21の放射率εsと、波長が3.9[μm]の光の二方向性反射率ρ´´(θ)とを得るようにした。そして、波長が3.9[μm]の光の二方向性反射率ρ´´(θ)については、スラブ21の放射率εsが一定値となるという知見を利用して、相対値ではなく、実際の値で得るようにした。したがって、スラブ21の放射率εs、及び二方向性反射率ρ´´(θ)を可及的に正確な値とすることができる。よって、スラブ21の表面温度の算出精度をより向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、表面温度が、700[℃]以上、好ましくは900[℃]以上となっているスラブ21からの光を、放射温度計100を検出するようにした。したがって、放射率εsがバラつくことにより生じる「スラブ21の表面温度の算出値と真値との誤差」を、より低減することができる。よって、スラブ21の表面温度の算出精度をより向上させることができる。
【0073】
尚、本実施形態では、加熱帯13の天井面13aに熱電対200を取り付けるようにしたが、加熱帯13の天井面13aの温度を、直接的又は間接的に測定することができれば、必ずしもこのようにしなくてもよい。例えば、加熱帯13の天井に熱電対を埋め込むようにしてもよい。また、温度を測定するための手段として、必ずしも熱電対を用いる必要はない。
【0074】
また、本実施形態のように、仮想の円錐41の内部に入るように、9個の熱電対200a〜200iを、加熱帯13の天井面13aに概ね格子状に点在させるようにすれば、熱電対200を広範囲に設置する等の大掛かりな作業を行わずに、実用上十分な精度で、スラブ21の被測定領域の表面温度Tsを求めることができ好ましい。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、スラブ21の被測定領域の表面温度Tsの算出精度をより一層向上させる必要がある場合には、(1)の右辺の値を0.7よりも大きくする必要がある。この場合には、天頂角θが45[°]よりも大きな円錐の内部に入るように、加熱帯13の天井面13aに熱電対200を点在させるようにすることができる。また、仮想の円錐41の内部の領域の温度分布を求めることができれば、必ずしも熱電対200を格子状に点在させなくてもよい。また、仮想の円錐41の頂点を、温度測定中心点21aではなく、スラブ21の被測定領域内の任意の点、又はスラブ21の被測定領域そのものとしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、9個の熱電対200a〜200iを、概ね、1[m]間隔の格子状に点在させるようにしたが、熱電対200の設置個数や設置間隔等は、このようなものに限定されない。例えば、温度分布の差が大きい領域については、熱電対200の設置間隔を短くし、温度分布の差が小さい領域については、熱電対200の設置間隔を長くすることができる。
【0076】
また、本実施形態のように、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の領域外の温度を、その正方形の辺上の点の温度で代用すれば、加熱帯13の天井面13a全体に熱電対200を配置しなくても、スラブ21の表面温度を、実用上十分な精度で求めることができ、好ましい。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、加熱帯13の天井面13a全体に熱電対200を点在させてもよい。また、加熱炉10の操業条件によって、仮想の円錐41の内部以外にも、迷光雑音の要因となる領域がある場合には、仮想の円錐41の内部だけでなく、その迷光雑音の要因となる領域にも熱電対を点在させてもよい。
【0077】
また、本実施形態のように、表面温度が、700[℃]以上、好ましくは900[℃]以上となっているスラブ21からの光を、放射温度計100を検出するようにすれば、スラブ21の表面温度の算出精度をより向上させることができるので好ましい。しかしながら、スラブ21の表面温度は、必ずしも、700[℃]以上でなくてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、熱間圧延工程の前の加熱炉10にあるスラブ21の表面温度Tsを求めるようにしたが、本実施形態の表面温度測定システムの適用範囲は、ガス焚き加熱炉であればこれに限定されない。例えば、熱処理を行うための加熱炉にある鋼材の表面温度を求めるようにしてもよい。
また、本実施形態では、放射温度計100を用いて、自発光輝度を求める場合を例に挙げて説明したが、発光輝度を求めることができれば、必ずしも放射温度計を用いなくてもよい。例えば、分光輝度計を用いることができる。
【0079】
また、本実施形態では、9個の熱電対200a〜200iの位置として、4つの熱電対200d、200f、200g、200iの位置を頂点とする正方形の中心点を原点としたxy座標を、熱電対位置記憶部303が記憶するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、9個の熱電対200a〜200iの位置として、温度測定中心点21aを原点とした極座標を記憶してもよい。
また、本実施形態では、放射温度計100で発光輝度を求めるようにしたが、必ずしもこのようにする必要はなく、情報処理装置301が、放射温度計100で求められた温度から、プランクの法則に基づいて、発光輝度を算出するようにしてもよい。このようにした場合には、発光輝度測定手段が情報処理装置301内に設けられることになる。
【0080】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、放射温度計100と、複数の熱電対200との組みを、加熱帯13に1組み設け、1つの被測定領域における表面温度Tsを求める場合について説明した。これに対し、本実施形態では、放射温度計と、9個の熱電対との組みを、加熱帯13に3組み設け、情報処理装置において、3つの被測定領域における表面温度Tsを求めるようにしている。このように前述した第1の実施形態と、本実施形態とは、放射温度計と、9個の熱電対との組み数と、情報処理装置300の機能の一部とが主として異なる。従って、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、例えば図1〜図10に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
図11は、本実施形態の表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。尚、図11は、加熱炉10を側方から見た図である。また、図11では、多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉のうち、加熱帯13の一部分(サイドバーナー17a1、17a2で加熱している部分)のみを示している。その他の部分の構成は、図1に示したものと同じである。
【0082】
図11に示すように、本実施形態の表面温度測定システムは、放射温度計101〜103と、複数の熱電対201〜203と、情報処理装置301と、表示装置401とを備えて構成される。
放射温度計101〜103は、夫々、第1の実施形態で説明した放射温度計100と同じ構成を有している。放射温度計101〜103は、その入光面101a〜103aの中心101b〜103bが、ウォーキングビームにおけるスラブ21の1回当たりの搬送距離よりも短い所定の間隔となるように、スラブ21の搬送方向(図11の矢印の方向)に並べられている。そして、放射温度計101〜103は、夫々、加熱帯13の上方から、加熱帯13の天井面13aの一部に形成された孔13b1〜13b3を通して、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に設置されている。
【0083】
また、本実施形態では、スラブ21表面上の点であって、放射温度計101〜103の入光面101a〜103aの中心101b〜103bと正対する位置にある点21a1〜21a3から、放射温度計101〜103の方向に広がる天頂角θが45[°]の円錐があると見なした場合に、その円錐の内部に入るように、(9×3)個の熱電対201〜203が、加熱帯13の天井面13aに取り付けられるようにしている。尚、図11では、熱電対201a〜201c、202a〜202c、203a〜203cのみを示しているが、図2及び図3に示したように、各孔13b1〜13b3を中心として、夫々9個の熱電対201〜203が格子状に点在している。
【0084】
情報処理装置301は、3つの放射温度計101〜103で略同じタイミングで測定された発光輝度と、熱電対201〜203で測定された温度とを取得する。そして、情報処理装置301は、取得した発光輝度と温度とを用いて、前述した第1の実施形態と同様にして(3)式〜(10)式の計算を行い、3つの被測定領域の表面温度Ts[K]を算出する。更に情報処理装置301は、算出した被測定領域の表面温度Tsを用いて、加熱帯13にあるスラブ21の幅方向(搬送方向)の温度分布を算出し、算出した温度分布を表示装置401に表示させる。
【0085】
また、本実施形態では、ウォーキングビームは、スラブ21の表面における略同一の領域が、3つの放射温度計101〜103における入光面101a〜103aの中心101b〜103bと正対するように、加熱炉10内でスラブ21を搬送させるようにする。例えば、図11において、スラブ21表面上の点21a1を、放射温度計101における入光面101aの中心101bと正対させる場合には、その点21a1と略同じ位置が、放射温度計102、103における入光面102a、103aの中心102b、103bと正対するように、ウォーキングビームの動作を制御する。
【0086】
情報処理装置301は、このようなウォーキングビームの動作を示す搬送動作情報を予め取得して記憶しておく。そして、情報処理装置301は、スラブ21の搬送が開始することを示す情報を搬送装置から入力した後、記憶しておいた搬送動作情報に従う所定のタイミングになると、そのタイミングで測定された発光輝度を取得する。これにより、スラブ21の表面における略同一の領域に対して放射温度計101〜103が測定した発光輝度が得られる。また、情報処理装置301は、そのタイミングで熱電対201〜203が測定した温度を取得する。
次に、情報処理装置301は、取得した発光輝度と温度とを用いて、前述した第1の実施形態と同様にして(3)式〜(10)式の計算を行い、スラブ21の略同一の被測定領域における表面温度Ts[K]を3回算出する。そして、情報処理装置301は、算出した被測定領域の表面温度Tsを用いて、加熱帯13にあるスラブ21の温度履歴を算出し、算出した温度履歴を表示装置401に表示させる。
【0087】
以上のように本実施形態では、スラブ21の幅方向(搬送方向)における3つの被測定領域の表面温度Tsを算出して加熱帯13におけるスラブ21の幅方向の温度分布を算出すると共に、スラブ21の略同一の被測定領域における表面温度Ts[K]を3回算出して加熱帯13におけるスラブ21の温度履歴を算出するようにした。したがって、第1の実施形態で説明した効果に加え、加熱帯13におけるスラブ21のより詳細な情報を得ることができ、加熱炉10における操業をより高い精度で行うことができる。
【0088】
また、加熱帯13におけるスラブ21の温度履歴を算出することにより、スラブ21の昇温速度を知ることができ、加熱炉10における操業時間(すなわちスラブ21の抽出時間)を可及的に正確に予測することができる。したがって、加熱炉10における操業終了時刻と、次の工程(熱間圧延工程)における操業開始時刻とを可及的に正確に設定することができる。よって、加熱炉10における工程と熱間圧延工程との間の時間を短く設定することができ、鋼板の生産性を向上させることができる。また、加熱温度履歴が、材質や品質に影響する鋼材については、その加熱温度履歴を含めた精細な品質管理を実現することができる。
尚、放射温度計101〜103の数と、熱電対201〜203との組数は、3つに限定されない。また、前述した第1の実施形態で説明した種々の変形例を採ることができる。
【0089】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。前述した第2の実施形態では、加熱帯13において、放射温度計と、9個の熱電対との組みを、スラブ21の幅方向(搬送方向)に3組み設け、情報処理装置において、3つの被測定領域における表面温度Tsを求める場合について説明した。これに対し本実施形態では、放射温度計と、9個の熱電対との組みを、スラブ21の長手方向に3組み設けるようにする。このように前述した第2の実施形態と、本実施形態とは、放射温度計と、9個の熱電対との組みの設置位置と、情報処理装置301の機能の一部とが主として異なる。従って、本実施形態の説明において、前述した第1及び第2の実施形態と同一の部分については、例えば図1〜図11に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0090】
図12は、本実施形態の表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。尚、図12は、加熱炉10の予熱帯12側から加熱帯13を見た図である。また、図12では、多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉のうち、加熱帯13の一部分のみを示している。その他の部分の構成は、図1に示したものと同じである。
【0091】
図12に示すように、本実施形態の表面温度測定システムは、放射温度計104〜106と、複数の熱電対204〜206と、情報処理装置302と、表示装置402とを備えて構成される。
放射温度計104〜106は、夫々、第1の実施形態で説明した放射温度計100と同じ構成を有している。放射温度計104〜106は、スラブ21の長手方向(搬送方向に対して垂直方向)に並べられている。そして、放射温度計104〜106は、夫々、加熱帯13の上方から、加熱帯13の天井面13aの一部に形成された孔13b4〜13b6を通して、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に設置されている。
【0092】
また、本実施形態では、スラブ21表面上の点であって、放射温度計104〜106の入光面104a〜106aの中心104b〜106bと正対する位置にある点21a4〜21a6から、放射温度計104〜106の方向に広がる天頂角θが45[°]の円錐があると見なした場合に、その円錐の内部に入るように、(9×3)個の熱電対204〜206が、加熱帯13の天井面13aに取り付けられるようにしている。尚、図12では、熱電対204e、204h、205e、205h、206e、206hのみを示しているが、図2及び図3に示したように、各孔13b4〜13b6を中心として、夫々9個の熱電対204〜206が格子状に点在している。
【0093】
情報処理装置302は、3つの放射温度計104〜106で略同じタイミングで測定された発光輝度と、熱電対204〜206で測定された温度とを取得する。そして、情報処理装置302は、取得した発光輝度と温度とを用いて、前述した第1の実施形態と同様にして(3)式〜(10)式の計算を行い、3つの被測定領域の表面温度Ts[K]を算出する。更に情報処理装置301は、算出した被測定領域の表面温度Tsを用いて、加熱帯13にあるスラブ21の長手方向の温度分布を算出し、算出した温度分布を表示装置401に表示させる。
【0094】
以上のように本実施形態では、スラブ21の長手方向における3つの被測定領域の表面温度Tsを算出して加熱帯13におけるスラブ21の長手方向の温度分布を算出するようにした。したがって、スラブ21の先端部の表面温度Tsと、スラブ21の尾端部の表面温度Tsとを、夫々略同時刻で求めることができ、その結果に応じて、先端部側及び尾端部側のサイドバーナー17a、17bとを独立して制御することができる。これにより、スラブ21の長手方向における表面温度の偏差をより小さくすることができる。
【0095】
尚、放射温度計104〜106の数と、熱電対204〜206との組数は、3つに限定されない。また、前述した第1の実施形態で説明した種々の変形例を採ることができる。
【0096】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、放射温度計100と、複数の熱電対200との組みを、加熱帯13に1組み設け、1つの被測定領域における表面温度Tsを求める場合について説明した。これに対し、本実施形態では、放射温度計と、9個の熱電対との組みを、加熱帯13と予熱帯12とに夫々1組みずつ設け、情報処理装置において、2つの被測定領域における表面温度Tsを求めるようにする。このように前述した第1〜第3の実施形態と、本実施形態とは、放射温度計と、9個の熱電対との組み数及び設置箇所と、情報処理装置300〜302の機能の一部とが主として異なる。従って、本実施形態の説明において、前述した第1〜第3の実施形態と同一の部分については、例えば図1〜図12に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0097】
図13は、本実施形態の表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。尚、図13は、加熱炉10を側方から見た図である。
【0098】
図13に示すように、本実施形態の表面温度測定システムは、放射温度計100、107と、複数の熱電対200、207と、情報処理装置303と、表示装置403とを備えて構成される。
第1の実施形態で説明したように、放射温度計100は、加熱帯13の上方から、加熱帯13の天井面13aの一部に形成された孔13bを通して、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に設置されている。
放射温度計107は、第1の実施形態で説明した放射温度計100と同じ構成を有している。放射温度計107は、予熱帯12の上方から、予熱帯12の天井面12aの一部に形成された孔12bを通して、予熱帯12内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に設置されている。
【0099】
また、第1の実施形態で説明したように、スラブ21表面上の点であって、放射温度計100の入光面100aの中心100bと正対する位置にある点21a8から、放射温度計100の方向に広がる天頂角θが45[°]の円錐があると見なした場合に、その円錐の内部に入るように、9個の熱電対200a〜200iが、加熱帯13の天井面13aに取り付けられるようにしている。
一方、予熱帯12の天井面12aには、放射温度計107の入光面107aの中心107bと正対する位置にある点21a7から、放射温度計100の方向に広がる天頂角θが45[°]の円錐があると見なした場合に、その円錐の内部に入るように、9個の熱電対207が取り付けられるようにしている。尚、図13では、熱電対207a〜207cのみを示しているが、図2及び図3に示したように、孔12bを中心として、9個の熱電対207が格子状に点在している。
【0100】
本実施形態では、ウォーキングビームは、スラブ21の表面における略同一の領域が、2つの放射温度計100、107における入光面100a、107aの中心100b、107bと正対するように、加熱炉10内でスラブ21を搬送させるようにする。例えば、図13において、スラブ21表面上の点21a7を、放射温度計107における入光面107aの中心107bと正対させる場合には、その点21a7と略同じ位置が、放射温度計100における入光面100aの中心100bと正対するように、ウォーキングビームの動作を制御する。
【0101】
情報処理装置303は、このようなウォーキングビームの動作を示す搬送動作情報を予め取得して記憶しておく。そして、情報処理装置303は、スラブ21の搬送が開始することを示す情報を搬送装置から入力した後、記憶しておいた搬送動作情報に従う所定のタイミングになると、そのタイミングで測定された発光輝度を取得する。これにより、スラブ21の表面における略同一の領域に対して放射温度計100、107が測定した発光輝度が得られる。また、情報処理装置303は、そのタイミングで熱電対201〜203が測定した温度を取得する。
次に、情報処理装置303は、取得した発光輝度と温度とを用いて、前述した第1の実施形態と同様にして(3)式〜(10)式の計算を行い、スラブ21の略同一の被測定領域における表面温度Ts[K]を2回算出する。そして、情報処理装置303は、算出した被測定領域の表面温度Tsを用いて、予熱帯12及び加熱帯13におけるスラブ21の温度履歴を算出し、算出した温度履歴を表示装置403に表示させる。
【0102】
以上のように本実施形態では、スラブ21の略同一の被測定領域における表面温度Ts[K]を、予熱帯12と加熱帯13とで2回算出してスラブ21の温度履歴を算出するようにした。したがって、予熱帯12から加熱帯13に至るまでのスラブ21の昇温速度を知ることができ、加熱炉10における操業時間(すなわちスラブ21の抽出時間)を正確に予測することができる。
【0103】
尚、本実施形態では、放射温度計と、9個の熱電対との組みを、加熱帯13と予熱帯12とに2組み設けるようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、加熱帯13と予熱帯12に加え、均熱帯14にも、放射温度計と、9個の熱電対との組みを設けるようにしてもよい。また、加熱帯13と均熱帯14、又は予熱帯12と均熱帯14に、放射温度計と、9個の熱電対との組みを設けるようにしてもよい。また、前述した第1の実施形態で説明した種々の変形例を採ることができる。更に、予熱帯12と加熱帯13の間や、加熱帯13と均熱帯14の間に、放射温度計と、9個の熱電対との組みを設けるようにしてもよい。
更に、第2〜第4の実施形態のうち、少なくとも何れか2つの実施形態を組み合わせて、表面温度測定システムを構成することもできる。
また、第2の実施形態では、放射温度計101〜103と、熱電対201〜203との組みを、スラブ21の幅方向に複数設け、第3の実施形態では、放射温度計計104〜106と、熱電対204〜206との組みを、スラブ21の長手方向に複数設けた場合を例に挙げて説明したが、放射温度計と、9個の熱電対との組みを、スラブ21の任意の方向に複数設けることもできる。
尚、前述した第1〜第4の実施形態では、サイドバーナー17を、スラブ21よりも下側に設けた場合を例に挙げて説明したが、サイドバーナー17を、スラブ21よりも上側に設けてもよい。
【0104】
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。上記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、加熱帯に取り付けられている熱電対の様子の概略を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、図2のAの方向から見た様子の概略と、図2のB−B´方向から見た様子の概略とを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、9個の熱電対が取り付けられる範囲の一例を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、波長が3.9[μm]の光の入射角(天頂角)と、その光の二方向性反射率の相対値との関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示し、熱電対で測定された温度の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、情報処理装置における処理動作の一例を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態を示し、スラブの表面温度の算出値と真値との差を絶対値で表したものと、スラブの表面温度の真値との関係の一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態を示し、表面温度測定システムにより算出された「スラブの被測定領域の表面温度」と、スラブの表面に取り付けられた熱電対で測定された「スラブの被測定領域の表面温度」との関係の一例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態を示し、表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態を示し、表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態を示し、表面温度測定システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
10 加熱炉
11 非燃焼帯
12 予熱帯
12a 天井面
12b 天井面に形成された孔
13 加熱帯
13a 天井面
13b 天井面に形成された孔
13c 天井面の任意の点
14 均熱帯
15 軸流バーナー
16 ルーフバーナー
17 サイドバーナー
21 スラブ
21a 温度測定中心点
41 仮想の円錐
51 二方向性反射率の相対値と波長が3.9[μm]の光の入射角との関係を表すグラフ
71〜79 熱電対で測定された温度に基づくグラフ
91 実際の放射率が0.87であったときの、スラブの表面温度の算出値と真値との誤差を示すグラフ
92 実際の放射率が0.83であったときの、スラブの表面温度の算出値と真値との誤差を示すグラフ
100〜107 放射温度計
100a〜107a 放射温度計の入光面
100b〜107b 放射温度計の入光面の中心
200〜207 熱電対
300〜303 情報処理装置
301 発光輝度取得部
302 熱電対温度取得部
303 熱電対位置記憶部
304 放射率記憶部
305 二方向性反射率導出部
306 二方向性反射率記憶部
307 天井面温度分布導出部
308 表面温度演算部
309 表面温度表示部
400〜403 表示装置
θ 仮想の円錐の天頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス焚き加熱炉内で加熱されている被測定物体の表面温度を測定する表面温度測定システムであって、
前記被測定物体から発光される波長の光のうち、ガスの放射と吸収とが他の波長帯域よりも小さい特定波長の光の発光輝度を測定する発光輝度測定手段と、
前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域に設けられた複数の温度測定手段と、
前記複数の温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算手段と、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算手段により計算された温度分布を用いて計算する迷光雑音計算手段と、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算手段により計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定手段により測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算手段と、
前記自発光輝度計算手段により計算された自発光輝度を用いて、前記被測定物体の表面温度を計算する表面温度計算手段とを有することを特徴とする表面温度測定システム。
【請求項2】
前記発光輝度測定手段は、その光の検出面が、前記被測定物体の被測定領域と正対する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の表面温度測定システム。
【請求項3】
前記被測定物体の被測定領域内の点から、前記発光輝度測定手段の方向に広がる天頂角が45[°]の円錐があると見なした場合に、その円錐の内部の領域に、前記複数の温度測定手段が点在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面温度測定システム。
【請求項4】
前記迷光雑音計算手段は、前記特定波長の光における前記被測定物体の二方向性反射率を、予め記憶する二方向性反射率記憶手段を有し、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算手段により計算された温度分布と、前記二方向性反射率記憶手段により記憶された二方向性反射率とを用いて計算することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面温度測定システム。
【請求項5】
前記自発光輝度計算手段は、前記特定波長の光における前記被測定物体の放射率として一定値を、予め記憶する放射率記憶手段を有し、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算手段により計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定手段により測定された発光輝度と、前記放射率記憶手段により記憶された放射率とを用いて計算することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面温度測定システム。
【請求項6】
前記発光輝度測定手段は、その光の検出面が、前記加熱炉の上方から、加熱炉の天井に開けられた孔を通して、前記加熱炉内にある被測定物体を望む位置に設けられ、
前記複数の温度測定手段は、前記加熱炉の天井の炉壁に設けられ、
前記被測定物体は、鋼材であり、
前記特定波長は、略3.9[μm]であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の表面温度測定システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の表面温度測定システムを複数セット有することを特徴とする表面温度測定システム。
【請求項8】
請求項7に記載の表面温度測定システムであって、請求項1〜6の何れか1項に記載の表面温度測定システムにおける発光輝度測定手段と複数の温度測定手段とを、前記加熱炉の長手方向及び幅方向の何れか又は両方に並べ、所定のタイミングに、被測定物体の表面温度の測定を実行する機能を有することを特徴とする表面温度測定システム。
【請求項9】
ガス焚き加熱炉内で加熱されている被測定物体の表面温度を測定する表面温度測定方法であって、
前記被測定物体から発光される波長の光のうち、ガスの放射と吸収とが他の波長帯域よりも小さい特定波長の光の発光輝度を、発光輝度測定手段により測定する発光輝度測定ステップと、
前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域に設けられた複数の温度測定手段により温度を測定する温度測定ステップと、
前記温度測定ステップにより測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算ステップと、
前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算ステップにより計算された温度分布を用いて計算する迷光雑音計算ステップと、
前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定ステップにより測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算ステップと、
前記自発光輝度計算ステップにより計算された自発光輝度を用いて、前記被測定物体の表面温度を計算する表面温度計算ステップとを有することを特徴とする表面温度測定方法。
【請求項10】
前記発光輝度測定手段は、その光の検出面が、前記被測定物体の被測定領域と正対する位置に設けられることを特徴とする請求項9に記載の表面温度測定方法。
【請求項11】
前記被測定物体の被測定領域内の点から、前記発光輝度測定手段の方向に広がる天頂角が45[°]の円錐があると見なした場合に、その円錐の内部の領域に、前記複数の温度測定手段を点在させることを特徴とする請求項9又は10に記載の表面温度測定方法。
【請求項12】
前記発光輝度測定ステップは、700[℃]以上に加熱されている被測定物体から入射する光を検出することを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載の表面温度測定方法。
【請求項13】
前記特定波長の光の二方向性反射率を、予め記憶する二方向性反射率記憶ステップを有し、
前記迷光雑音計算ステップは、前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算ステップにより計算された温度分布と、前記二方向性反射率記憶ステップにより記憶された二方向性反射率とを用いて計算することを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載の表面温度測定方法。
【請求項14】
前記特定波長の光における前記被測定物体の放射率として一定値を、予め記憶する放射率記憶ステップを有し、
前記自発光輝度計算ステップは、前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定ステップにより測定された発光輝度と、前記放射率記憶ステップにより記憶された放射率とを用いて計算することを特徴とする請求項9〜13の何れか1項に記載の表面温度測定方法。
【請求項15】
前記発光輝度測定手段は、その光の検出面が、前記加熱炉の上方から、加熱炉の天井に開けられた孔を通して、前記加熱炉内にある被測定物体を望む位置に設けられ、
前記複数の温度測定手段は、前記加熱炉の天井の炉壁に設けられ、
前記被測定物体は、鋼材であり、
前記特定波長は、略3.9[μm]であることを特徴とする請求項9〜14の何れか1項に記載の表面温度測定方法。
【請求項16】
請求項1〜6の何れか1項に記載の表面温度測定システムにおける発光輝度測定手段と複数の温度測定手段とを、前記加熱炉の被測定物体の搬送方向に複数セット並べて設置し、被測定物体の略同一箇所を所定のタイミングで測温することにより、被測定物体の温度履歴を測定することを特徴とする表面温度測定方法。
【請求項17】
請求項1〜6の何れか1項に記載された表面温度測定システムにおける発光輝度測定手段と複数の温度測定手段とを、任意の方向に複数セットを並べて設置し、被測定物体の異なる領域を同時に測温することにより、被測定物体の任意の方向における温度分布を測定することを特徴とする表面温度測定方法。
【請求項18】
ガス焚き加熱炉内で加熱されている被測定物体から発光される波長の光のうち、ガスの放射と吸収とが他の波長帯域よりも小さい特定波長の光の発光輝度を測定する発光輝度測定手段と、
前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域に設けられた複数の温度測定手段と、における測定値を用いて、前記被測定物体の表面温度を測定することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記複数の温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算ステップと、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算ステップにより計算された温度分布を用いて計算する迷光雑音計算ステップと、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定ステップにより測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算ステップと、
前記自発光輝度計算ステップにより計算された自発光輝度を用いて、前記被測定物体の表面温度を計算する表面温度計算ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項1〜8の何れか1項に記載の表面温度測定システムを有することを特徴とする加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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