説明

袋状食品用口開き装置

【課題】油揚げ等の厚くて柔らかい袋状食品に適宜の食材を詰めるための開口部を開くときに、袋状食品の亀裂や破損が生じないようにし、さらに使用する吸気又は排気装置を少なく又は容量を小さくすることができる袋状食品用口開き装置を提供する。
【解決手段】厚くて柔らかい袋状食品1に適宜の食材を詰めるために口開きを行うようにした装置であって、袋状食品を載置したときに、袋状食品の上面を空気の吸引により吸着する吸着具2と、袋状食品の下面を掴持する掴み具3とを有し、吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具と掴み具とを離間させることにより袋状食品の口開きを行う制御手段を有し、袋状食品の上面と当接する吸着具の下面部には網目状構造物が付されている袋状食品用口開き装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油揚げ等の袋状食品に適宜の食材を詰めるために開口部を開くようにした口開き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油揚げ等の袋状食品に寿司飯、その他適宜の食材を詰めるには、例えば油揚げの一端に入れられた切り込み部分を開口部として口開きの作業を行う必要があるが、開口部付近の対向する内面どうしが密着していることが多く、機械や手作業により開口部分付近を上下より掴んで口開きすると、開口部付近に掴持用爪により亀裂が入いる、又は破れるという事態が起こり、一定の割合で油揚げ等の袋状食品のロスが出ていた。
【0003】
また、近年油揚げ等の袋状食品として、厚みが厚くて柔らかいものが好まれる傾向も存在するので、そのような薄い袋状食品の内部に具材を詰め込む作業を行うときに、袋状食品が破れることがさらに問題となっていた。
【0004】
例えば、特許文献1では、油揚げの内部に寿司飯を供給する方法として、油揚げの上方より下降する掴持用爪と油揚げの下方より上昇する掴持用爪とが、同時に油揚げの切口部を掴持し、次いでそれぞれの掴持用爪が逆の動作をすることにより油揚げの切口部を開放する発明が記載されている。
【0005】
また、特許文献2では、袋状食品の上側と下側にそれぞれ空気の吸引に寄り吸着する吸着具を有し、両吸着具で袋状食品の上側と下側を保持させ、次いで袋状食品の上側に当接する吸引具のみを上方に移動させることにより油揚げの切口部を開放する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−61601号公報
【特許文献2】特開2005−304370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、油揚げの上側及び下側を掴持用爪により掴む装置なので、油揚げの面積の割に厚みが厚くて柔らかいと、上方へ持ち上げる金属製の掴持用爪の先端では、掴まれた油揚げに油揚げの上面側の重さが集中し破れやすくなる。また、油揚げの下面側は、掴持用爪により下方へ下げられるので、その移動の際にやはり破れる恐れがある。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明では、油揚げの上側及び下側を吸着部の吸引により開口させる装置なので、上方の吸着部と下方の吸着部にそれぞれ対応する吸気又は排気装置を2台設けるか、上方の吸着部と下方の吸着部から延びる配管を途中で統合し吸気又は排気装置を1台としても能力の高い装置を用いる必要があり、設置スペースを要するものであった。また、吸気又は排気装置を2台設けた場合には、油揚げの上側及び下側を同程度の吸引力となるよう調整する必要もあった。
【0009】
そこで、本発明では、油揚げ等の厚くて柔らかい袋状食品に適宜の食材を詰めるための開口部を開くときに、袋状食品の亀裂や破損が生じないようにし、さらに使用する吸気又は排気装置を少なく又は容量を小さくすることができる袋状食品用口開き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、厚くて柔らかい袋状食品に適宜の食材を詰めるために口開きを行うようにした装置であって、袋状食品を載置したときに、袋状食品の上面を空気の吸引により吸着する吸着具と、袋状食品の下面を掴持する掴み具とを有し、吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具と掴み具とを離間させることにより袋状食品の口開きを行う制御手段を有し、袋状食品の上面と当接する吸着具の下面部には網目状構造物が付されている袋状食品用口開き装置である。
【0011】
そして、吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具を上方に移動させ、かつ、掴み具を下方に移動させないで、吸着具と掴み具とを離間させるものである。
【0012】
そして、吸着具が少なくとも2以上の通気孔を有するものである。
【0013】
そして、袋状食品の下側と当接する掴み具の刃先に切欠を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の袋状食品を載置したときに、袋状食品の上面に空気の吸引により吸着する吸着具と、袋状食品の下面を掴持する掴み具とを有し、吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具と掴み具とを離間させることにより袋状食品の口開きを行う制御手段を有し、袋状食品の上面と当接する吸着具の下面部には網目状構造物が付されていれば、厚みが厚く柔らかい袋状食品の上側が吸着具の下面に配設された網目状構造物全体に均等な力で吸着されるので、袋状食品の上側に亀裂や破損が生じない。また、吸着具が袋状食品の上方にしかないため、吸気又は排気装置を1つ設置するのみでよく、装置全体を小型化することができる。
【0015】
そして、吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具を上方に移動させ、かつ、掴み具を下方に移動させないで、吸着具と掴み具とを離間させれば、袋状食品の下面を掴む掴み具は、袋状食品の下面を掴むだけであり、袋状食品の下側を下方に引き下げる力は働かないので、袋状食品の下面に亀裂や破損が生じない。
【0016】
そして、吸着具が少なくとも2以上の通気孔を有すれば、袋状食品の上面に係る引き上げる力がさらに均等になるので、袋状食品の上面に亀裂や破損が生じない。
【0017】
そして、袋状食品の下面と当接する掴み具の刃先に切欠を有すれば、袋状食品の上面が吸着具により上方に持ち上げられても掴み具の刃先が袋状食品の下面に食い込み易くので、より少ない力で袋状食品の下面を保持することができ亀裂や破損を生じにくくし、また袋状食品が上方に持ち上げられて袋状食品の内部に詰めるべき食材を詰め損ねることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の袋状食品用口開き装置において、袋状食品の開口部を開いた状態の側面図。
【図2】本発明の実施形態の袋状食品用口開き装置の動作を示す状態図。
【図3】本発明の実施形態の袋状食品用口開き装置に用いられる吸着具の斜視図。
【図4】本発明の実施形態の袋状食品用口開き装置に用いられる掴み具の斜視図。
【図5】本発明の実施形態の袋状食品用口開き装置を用いたいなり寿司の製造ラインの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る袋状食品用口開き装置に関する実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の実施形態の袋状食品用口開き装置で袋状食品(1)の開口部(11)を開いた状態にした場合の側面図あり、図2は、この袋状食品用口開き装置の動作を示す状態図であり、図3は、この袋状食品用口開き装置に用いられる吸着具(2)の斜視図であり、図4は、この袋状食品用口開き装置に用いられる掴み具(3)の斜視図であり、図5は、この袋状食品用口開き装置を用いたいなり寿司の製造ラインの斜視図である。
【0021】
本発明の袋状食品用口開き装置は、上板(4)を下板(5)に対して昇降可能に設け、上板(4)の下部に吸引筒(6)を介して吸着具(2)を、下板(5)の下方に掴み具(3)を取り付けたものとしている。
【0022】
厚くて柔らかい袋状食品(1)は、図1に示す袋状食品(1)の左端側に開口部(11)を有する袋状のいなり寿司用の油揚げとしている。この袋状食品(1)は、薄く切った四角形状の豆腐を油で揚げ、この内部に針を差し込み、空気を入れて袋状にし、余分な油分を除いた後、中央で裁断して上面側と下面側に二分割したとしており、この裁断した部分が開口部(11)となる。また、この袋状食品(1)には、適宜味付けをしたものとすることができる。
【0023】
吸着具(2)は、図3に示すように略楕円形状を有しており、その下面部に金網(21)が配設され、その金網(21)より内部は空洞となっており、2つの通気孔(22)有している。その2つ通気孔(22)は、吸着具(2)内部で一つの管として結合され、中空である吸引筒(6)、図示しない吸気と排気を調整する弁、さらに別の中空の配管を経て、図示しない排気装置へと繋がっている。そして、図示しない排気装置が空気を排気することにより接続されている配管、そして吸気と排気を調整する三叉路を有する弁の一の経路に空気が送られるが、吸気と排気を調整する弁は電子制御により動作を制御され、弁の二つ目の経路から空気が外部に排出されるように弁が調整されると、三つ目の経路に接続されている吸引筒(6)の内部は減圧となり、吸引筒(6)に接続されている吸着具(2)が袋状食品(1)を吸い上げることができる。一方、その弁の三つ目の経路から空気が排出されるように弁が調整されると、三つ目の経路に接続されている吸引筒(6)の内部に空気が送られ、吸引筒(6)に接続されている吸着具(2)が袋状食品(1)を下方に離す。
【0024】
そして、金網(21)は、通気孔(22)に袋状食品(1)が直に接触すると通気孔(22)の周囲の淵の部分に貼りついた袋状食品(1)の一部に応力が集中し破れやすくなることを防ぎ、吸着具(2)の下面部で均等な力で吸着するために設けられている網目状構造物であり、ステンレスを素材としている。また、網目状構造物とは、特に形状が網目に限定されるものではなく、金属板に数多くの細孔を穿孔したものであるパンチングメタルを含んでいても良い。さらに、特にその素材が金属に限定されるものではなく、網目状構造物として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂などの高分子材料を単独で又は二つ以上組み合わせて使用することもできる。
【0025】
また、網目状構造物のメッシュ、すなわち1インチ(25.4mm)中にある目の数は、3〜200が好ましく、5〜100がさらに好ましい。網目状構造物のメッシュが3未満であると、網目の淵に直に接触する袋状食品(1)の一部に吸引による応力が集中し破れやすくなる。また、網目状構造物のメッシュが200よりも大きいと、袋状食品(1)を吸引する力が弱くなり袋状食品(1)を充分に吸引することが困難となる。
【0026】
掴み具(3)は、切欠(31)を有する2枚の刃先(32)が対向し、閉じるとその刃先(32)が当接するように爪切りの刃のような形状を有している。また、掴み具(3)は、図示しない掴み具作動装置により電子制御により動作を制御され、下板(5)に設けられた下板孔(51)が吸着具(2)と掴み具(3)を結ぶ線上に来たときに上方に移動され、下板孔(51)を通して袋状食品(1)の下面を掴むように制御される。
【0027】
上板(4)は、図1及び図4に示すように吸着具(2)に接続されている吸引筒(6)を固設しており、食品押え板(7)に接続されているボルトをナットにより固設している。上板(4)は、下板(5)に対して昇降可能に設けられており、電子制御により昇降の動作を制御されている。
【0028】
下板(5)は、細長い板状の形状を有し、その下板(5)を楕円形状に穿孔した下板孔(51)を長手方向に等間隔で複数有しており、さらにその複数の下板孔(51)の間に両端が丸い棒状の仕切りを横幅方向に有している。また、下板(5)は、長手方向に移動することができ、複数の下板孔(51)を覆うように載置された複数の袋状食品(1)を連続して搬送することができるように電子制御により動作を制御されている。
【0029】
食品押え板(7)は、平板の上面の一端から他端へ向かう方向に徐々に隆起する車止めブロックのような形状を有している。そして、その隆起した上面にボルトが螺着されている。食品押え板(7)の下面は、吸着具(2)の下面と同じ高さに設けられており、上板(4)の下降により、吸着具(2)の下面とともに下板孔(51)に載置された袋状食品(1)の上面を押さえることができ、袋状食品(1)の一部が盛り上がるように載置されるなど平面状に載置されていないときには、平面状に載置するよう修正することができる。
【0030】
そして、この袋状食品用口開き装置は、以下に示すような工程により、袋状食品(1)の口開き作業を行う。
【0031】
まず、図2(a)に示すように下板孔(51)の中に掴み具(3)を、刃先(32)が袋状食品(1)に当接する位置まで上昇させる。
【0032】
次に、図2(b)に示すように上板(4)を、吸着具(2)と食品押え板(7)が袋状食品(1)の上面に当接するまで下降させてから、吸着具(2)が空気を吸い込むように弁を調整し、それとほぼ同時に掴み具(3)の対向する刃先(32)を閉じて袋状食品(1)の下面を掴む。
【0033】
吸着具(2)の下面には、金網(21)が配設され、袋状食品(1)の上面が金網(21)全体に均等な力で吸着されるので、袋状食品(1)の上面の開口部(11)付近に亀裂や破損が生じない。
【0034】
また、吸着具(2)が、上方に一つしかないため、排気装置を一つ用意するだけで良く、容量も大きくする必要がないため排気装置を含めても全体を小型化することができる。
【0035】
次に、図2(c)に示すように上板(4)を上昇させる。袋状食品(1)は、その上面が吸着具(2)に吸着されており、その下面が掴み具(3)に掴まれているため、上板(4)の上昇とともにその上面が吸着具(2)に保持されたまま持ち上がり、開口部(11)が大きく開いた状態となる。そして、この状態で、開口部(11)側に設けられた食品挿入装置(8)により、袋状食品(1)内に寿司飯との食材が詰め込まれる。そして、袋状食品(1)内への食材の詰め込みが終わった後、食品挿入装置(8)を初期位置に戻してから、弁を切り替え吸着具(2)から空気が排出されるようにし、袋状食品(1)の上面を吸着具(2)から下方に離すとともに掴み具(3)の対向する刃先(32)を離れさせるように制御して袋状食品(1)の下面を離す。
【0036】
また、吸着具(2)が袋状食品(1)の上面を保持し持ち上げるとき、掴み具(3)は、袋状食品(1)の下面をその位置で掴むだけで、下方に移動しないために、袋状食品(1)の下面に必要以上の力を加えないので、袋状食品(1)の下面の亀裂や破損を生じさせない。
【0037】
この袋状食品用口開き装置は、図5に示すようにいなり寿司の製造ラインにおいて使用することができる。この製造ラインでは、下板(5)により袋状食品(1)が順次搬送され、複数の袋状食品(1)に連続して寿司飯を詰めることができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・袋状食品
11・・開口部
2・・・吸着具
21・・金網
3・・・掴み具
31・・切欠
32・・刃先
4・・・上板
5・・・下板
51・・下板孔
6・・・吸引筒
7・・・食品押え板
8・・・食品挿入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状食品に適宜の食材を詰めるために口開きを行うようにした装置であって、
袋状食品を載置したときに、袋状食品の上面を空気の吸引により吸着する吸着具と、袋状食品の下面を掴持する掴み具とを有し、
吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具と掴み具とを離間させることにより袋状食品の口開きを行う制御手段を有し、
袋状食品の上面と当接する吸着具の下面部には網目状構造物が付されていることを特徴とする袋状食品用口開き装置。
【請求項2】
吸着具と掴み具とで袋状食品の上面と下面を保持させた状態で、吸着具を上方に移動させ、かつ、掴み具を下方に移動させないで、吸着具と掴み具とを離間させることを特徴とする請求項1に記載の袋状食品用口開き装置。
【請求項3】
吸着具が少なくとも2以上の通気孔を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の袋状食品用口開き装置。
【請求項4】
袋状食品の下側と当接する掴み具の刃先に切欠を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の袋状食品用口開き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5773(P2013−5773A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141677(P2011−141677)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(397077771)株式会社京都庵 (1)
【Fターム(参考)】