説明

被写体特定用プログラム、およびカメラ

【課題】画像内の被写体を特定すること。
【解決手段】被写体特定用プログラムは、連続して入力されるフレームの中から対象画像を選択し、対象画像の色情報または輝度情報に基づいて1つの画像を複数の区分画像に区分する区分手順と、複数の区分画像のそれぞれを色情報または輝度情報を用いて2値化して複数の2値化区分画像を生成する2値化手順と、複数の2値化区分画像のそれぞれに対して、対象画像内における被写体を特定するために用いる評価値を算出する評価値算出手順と、評価値に基づいて、対象画像内における被写体を特定する被写体特定手順と、被写体特定手順で特定した対象画像内における被写体の位置を記憶する記憶手順と、被写体特定手順で特定した被写体を連続して入力されるフレーム間で追尾する追尾手順とをコンピュータに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体特定用プログラム、およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
次のような撮像装置が知られている。この撮像装置は、使用者によって選択されたAF領域に基づいて被写体位置を特定し、特定した被写体を対象として焦点調節処理を行う(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−205885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の撮像装置では、被写体が小さい場合や高速で移動している場合には、被写体を特定することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による被写体特定用プログラムは、連続して入力されるフレームの中から対象画像を選択し、対象画像の色情報または輝度情報に基づいて1つの画像を複数の区分画像に区分する区分手順と、複数の区分画像のそれぞれを色情報または輝度情報を用いて2値化して複数の2値化区分画像を生成する2値化手順と、複数の2値化区分画像のそれぞれに対して、対象画像内における被写体を特定するために用いる評価値を算出する評価値算出手順と、評価値に基づいて、対象画像内における被写体を特定する被写体特定手順と、被写体特定手順で特定した対象画像内における被写体の位置を記憶する記憶手順と、被写体特定手順で特定した被写体を連続して入力されるフレーム間で追尾する追尾手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明によるカメラは、上記の被写体特定用プログラムを実行するための実行手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被写体が小さい場合や高速で移動している場合でも、精度高く被写体を特定して、追尾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】カメラの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】被写体特定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】被写体抽出処理の流れを示すフローチャート図である。
【図4】対象画像の具体例を示す図である。
【図5】2値化したYプレーン画像、2値化したCbプレーン画像、2値化したCrプレーン画像、および2値化したY補数画像の具体例を示す図である。
【図6】ラベリング領域の抽出例を模式的に示した図である。
【図7】ラベリング領域に対して識別子を付加した場合の具体例を示す図である。
【図8】2値化区分画像について算出された第1の評価値の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態におけるカメラの一実施の形態の構成を示すブロック図である。カメラ100は、操作部材101と、レンズ102と、撮像素子103と、制御装置104と、メモリカードスロット105と、モニタ106とを備えている。操作部材101は、使用者によって操作される種々の入力部材、例えば電源ボタン、レリーズボタン、ズームボタン、十字キー、決定ボタン、再生ボタン、削除ボタンなどを含んでいる。
【0009】
レンズ102は、複数の光学レンズから構成されるが、図1では代表して1枚のレンズで表している。撮像素子103は、例えばCCDやCMOSなどのイメージセンサーであり、レンズ102により結像した被写体像を撮像する。そして、撮像によって得られた画像信号を制御装置104へ出力する。
【0010】
制御装置104は、撮像素子103から入力された画像信号に基づいて所定の画像形式、例えばJPEG形式の画像データ(以下、「本画像データ」と呼ぶ)を生成する。また、制御装置104は、生成した画像データに基づいて、表示用画像データ、例えばサムネイル画像データを生成する。制御装置104は、生成した本画像データとサムネイル画像データとを含み、さらにヘッダ情報を付加した画像ファイルを生成してメモリカードスロット105へ出力する。本実施の形態では、本画像データとサムネイル画像データとは、いずれもRGB表色系で表された画像データであるものとする。
【0011】
メモリカードスロット105は、記憶媒体としてのメモリカードを挿入するためのスロットであり、制御装置104から出力された画像ファイルをメモリカードに書き込んで記録する。また、メモリカードスロット105は、制御装置104からの指示に基づいて、メモリカード内に記憶されている画像ファイルを読み込む。
【0012】
モニタ106は、カメラ100の背面に搭載された液晶モニタ(背面モニタ)であり、当該モニタ106には、メモリカードに記憶されている画像やカメラ100を設定するための設定メニューなどが表示される。また、制御装置104は、使用者によってカメラ100のモードが撮影モードに設定されると、撮像素子103から時系列で取得した画像の表示用画像データをモニタ106に出力する。これによってモニタ106にはスルー画が表示される。
【0013】
制御装置104は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路により構成され、カメラ100を制御する。なお、制御装置104を構成するメモリには、SDRAMやフラッシュメモリが含まれる。SDRAMは、揮発性のメモリであって、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリとして使用されたり、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、フラッシュメモリは、不揮発性のメモリであって、制御装置104が実行するプログラムのデータや、プログラム実行時に読み込まれる種々のパラメータなどが記録されている。
【0014】
本実施の形態では、制御装置104は、以下に示す処理を行うことによって、画像内における被写体の位置を特定するとともに、該被写体の位置と大きさと形状とを特定し、撮像素子103から時系列で連続して入力される複数のフレーム間で、被写体の追尾を行う。図2は、本実施の形態における被写体特定処理の流れを示すフローチャートである。以下、この図2を用いて、本実施の形態における被写体特定処理について説明する。
【0015】
ステップS10において、制御装置104は、撮像素子103から連続して入力される画像の1フレーム目を対象画像とし、該対象画像に対して図3に示す被写体抽出処理を実行する。ここで、図3を用いて本実施の形態における被写体抽出処理について説明する。ステップS510において、制御装置104は、1フレーム目の画像データを読み込んで、ステップS520へ進む。ステップS520では、制御装置104は、読み込んだ対象画像の画像サイズを例えば縦のサイズが30〜60画素程度になるように縮小する。これにより、後の処理を高速化することができる。
【0016】
その後、ステップS530へ進み、制御装置104は、対象画像をYCbCr形式の画像に変換し、Y成分の画像(Yプレーン画像)、Cr成分の画像(Crプレーン画像)、および、Cb成分の画像(Cbプレーン画像)をそれぞれ生成する。また、制御装置104は、Yプレーン画像の白画素と黒画素を反転させたY補数プレーン画像を生成する。具体的には、RGB表色系で表されている対象画像を次式(1)〜(3)を用いてYCbCr色空間における輝度成分(Y成分)からなる輝度画像と色差成分(Cb成分、Cr成分)とからなる色差画像とに変換する。すなわち、制御装置104は、対象画像について、次式(1)を用いてY成分からなる輝度画像をYプレーン画像として生成し、次式(2)および(3)を用いてCb成分からなる色差画像とCr成分からなる色差画像とをそれぞれCbプレーン画像、およびCrプレーン画像として生成する。
Y = 0.299R+0.587G+0.114B ・・・(1)
Cb=−0.169R−0.332G+0.500B ・・・(2)
Cr= 0.500R−0.419G−0.081B ・・・(3)
【0017】
そして、制御装置104は、生成したYプレーン画像、Cbプレーン画像、およびCrプレーン画像、Y補数プレーン画像のそれぞれについて、画像内の全画素の濃度値を調べ、各濃度値の平均値Mと各濃度の標準偏差σとを算出して、ステップS540へ進む。
【0018】
ステップS540では、制御装置104は、Yプレーン画像、Cbプレーン画像、Crプレーン画像、およびY補数プレーン画像の各画素を各々の平均値M+標準偏差σ、平均値M、平均値M−標準偏差σでそれぞれ2値化し、16枚の2値化区分画像を作成する。例えば、図4に示した対象画像に対しては、図5に示すように、平均値M+標準偏差σを第1の閾値とし、濃度が該第1の閾値よりも大きな画素を白画素、小さい画素を黒画素としてYプレーン画像を2値化した2値化区分画像5aを作成する。また、平均値Mを第2の閾値とし、濃度が該第2の閾値より大きく、上記第1の閾値以下の画素を白画素、それ以外を黒画素としてYプレーン画像を2値化した2値化区分画像5bを作成する。また、平均値M−標準偏差σを第3の閾値とし、濃度が該第3の閾値より大きく、上記第2の閾値以下の画素を白画素、それ以外を黒画素としてYプレーン画像を2値化した2値化区分画像5cを作成する。また、濃度が上記第3の閾値以下の画素を白画素、閾値よりも大きい画素を黒画素としてYプレーン画像を2値化した2値化区分画像5dを作成する。
【0019】
また、制御装置104は、Cbプレーン画像についても同様に、上記第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値を用いて2値化して、2値化区分画像5e、5f、5g、5hを作成する。また、制御装置104は、Crプレーン画像についても同様に、上記第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値を用いて2値化して、2値化区分画像5i、5j、5k、5lを作成する。また、制御装置104は、Y補数(Yc)プレーン画像についても同様に、上記第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値を用いて2値化して、2値化区分画像5m、5n、5o、5pを作成する。以上の処理によって、16区分の2値化区分画像5a〜5pが生成される。
【0020】
その後、ステップS550へ進み、制御装置104は、対象画像内に、被写体が位置していると推定される被写体位置推定点を設定する。例えば、制御装置104は、使用者に対して被写体位置の指定を促し、これに応じて使用者によって指定された被写体位置を被写体位置推定点として設定する。あるいは、制御装置104は、使用者に対して焦点調節を行うためのAF位置の指定を促し、これに応じて使用者によって指定されたAF指示位置を被写体位置推定点として設定する。あるいは、制御装置104は、対象画像の中心位置を被写体位置推定点として設定する。これにより、対象画像内における被写体のおおよその位置を推定することができ、対象画像内からの被写体の抽出精度を向上させることができる。その後、ステップS560へ進む。
【0021】
ステップS560では、制御装置104は、対象画像内からの被写体の抽出精度をさらに向上させるために、使用者に対して、対象画像内における被写体のおおよその大きさの入力を促す。例えば、制御装置104は、被写体の大きさの候補を3段階程度で使用者に提示し、使用者に候補の中から対象画像内における被写体の大きさに最も近いものを選択してもらうようにする。その後、ステップS600へ進む。なお、ステップS600〜ステップS700の処理は、ステップS540で2値化して得た16区分の2値化区分画像5a〜5pのそれぞれに対して実行される。すなわち、ステップS600〜ステップS700の処理は、各2値化区分画像を対象とし、16回ループして処理される。なお、以下の説明では、代表して2値化区分画像5aに対してステップS600〜ステップS700の処理を実行する場合について説明するが、他の2値化区分画像5b〜5pについても同様に実行される。
【0022】
ステップS600では、制御装置104は、2値化区分画像5aを対象としてラベリング処理を行う。具体的には、制御装置104は、2値化区分画像内から白画素のまとまりで構成される領域をラベリング領域として抽出し、各ラベリング領域に対してそれぞれを識別するための識別子、例えば番号を付加する。例えば、図6に示すようにラベリング領域6a、ラベリング領域6b、ラベリング領域6cの3つのラベリング領域が抽出された場合には、図7に示すように、それぞれのラベリング領域に対して1〜3の番号を付加する。なお、本実施の形態では、ラベリング処理によって抽出された白画素で構成されるラベリング領域を「島」と呼ぶ。
【0023】
その後、ステップS610へ進み、制御装置104は、2値化区分画像5a内から抽出された各島の面積を算出して、ステップS620へ進む。ステップS620では、制御装置104は、ステップS610で算出した各島の面積(白画素面積)を評価値として用い、該白画素面積とステップS560で使用者によって入力された被写体のおおよその大きさとに基づいて、2値化区分画像5a内の各島の中から、被写体を構成する可能性が低い島を特定して、以降の処理の対象から除外する。具体的には、制御装置104は、2値化区分画像5a内から抽出された島のうち、ステップS610で算出した島の面積とステップS560で使用者によって入力された被写体のおおよその大きさとの差が所定以上の島を以降の処理の対象から除外する。ステップS630以降の処理では、制御装置104は、ここで除外した島以外の島を対象として処理を実行する。
【0024】
その後、ステップS630へ進み、制御装置104は、2値化区分画像5a内の各島に対して、それぞれの島を包絡する矩形を設定する。そして、制御装置104は、包絡矩形内の島がすかすかである場合や、凸凹である場合には、その島は被写体を構成する可能性が低いため、次式(4)により、このような被写体を構成する可能性が低い島を特定するための第2の評価値を算出する。
第2の評価値=島の面積/包絡矩形の面積 ・・・(4)
【0025】
その後、ステップS640へ進み、制御装置104は、島の形状が細長い場合には、その島は被写体を構成する可能性が低いため、ステップS630で設定した包絡矩形のそれぞれについて縦横比を算出し、これを被写体を構成する可能性が低い島を特定するための第3の評価値として、ステップS650へ進む。ステップS650では、制御装置104は、2値化区分画像5aの両端にかかる島は被写体を構成する可能性が低いため、このような島を特定するために、島が2値化区分画像5aの端点にかかっている割合を示す第4の評価値を算出して、ステップS660へ進む。例えば、図5の2値化区分画像5mでは、島が画像の上部の両端にかかっているため、該第4の評価値によって、このような島が特定される。
【0026】
ステップS660では、制御装置104は、上述した第2の評価値、第3の評価値、第4の評価値を用いて、2値化区分画像5a内の各島の中から、被写体を構成する可能性が低い島を、以降の処理対象から除外する。具体的には、制御装置104は、2値化区分画像5a内の各島のうち、第2の評価値である島の面積/包絡矩形の面積の算出結果が所定の値より小さく、第3の評価値である包絡矩形の縦横比が所定の比以上であり、かつ第4の評価値である島が2値化区分画像5aの端点にかかっている割合が所定の割合以上である島を、以降の処理対象から除外する。ステップS670以降の処理では、制御装置104は、ここで除外した島以外の島を対象として処理を実行する。その後、ステップS670へ進む。
【0027】
ステップS670では、制御装置104は、上記処理で除外した以外の島を対象として、2値化区分画像5a内の上記被写体位置推定点を中心とした慣性モーメント(被写体位置推定点周りの慣性モーメント)を算出する。なお、2値化区分画像5aにおける慣性モーメントの算出方法については、公知のため詳細な説明を省略するが、例えば、次式(5)により算出することができる。その後、ステップS680へ進む。
【数1】

【0028】
ステップS680では、制御装置104は、ステップS610で算出した白画素面積、すなわち島の面積と、ステップS670で算出した被写体位置推定点周りの慣性モーメントとに基づいて、次式(6)により、第1の評価値を算出する。ここで算出される第1の評価値は、島(白画素領域)内での白画素のまとまり状況を表す値である。
第1の評価値=白画素面積/被写体位置推定点周りの慣性モーメント ・・・(6)
【0029】
その後、ステップS690へ進み、制御装置104は、2値化区分画像5a内の島の中から、ステップS680で算出した第1の評価値が最も大きい島(第1位の島)と2番目に大きい島(第2の島)を特定し、これらを対象画像内における被写体を構成する島の候補とする。
【0030】
その後、ステップS700へ進み、制御装置104は、全ての2値化区分画像(マスク)について、ステップS600〜S690の処理が完了したか否かを判断する。ステップS700で否定判断した場合には、ステップS600へ戻る。これに対して、ステップS700で肯定判断した場合には、ステップS710へ進む。これにより、図5に示した16区分の全ての2値化区分画像について、第1位の島と第2位の島とが特定される。
【0031】
ステップS710では、制御装置104は、16区分の2値化区分画像について特定された第1の島と第2の島、すなわち計32個の島を第1の評価値に基づいて順位付けし、順位が上位の複数の島、例えば第1位〜第3位の島を、対象画像内における被写体を構成する島として特定して、ステップS720へ進む。例えば、図8に示す各2値化区分画像5a〜5pについて、各2値化区分画像の下に示したような第1の評価値が算出された場合には、該第1の評価値が上位の3つ、すなわち第1位の2値化区分画像5hと、第2位の2値化区分画像5iと、第3位の2値化区分画像5fとが特定される。
【0032】
ステップS720では、制御装置104は、ステップS710で特定した複数の島が隣接しており、これらを結合して1つの被写体を構成する場合には、これらの島を合成して被写体の形状を特定する。一方、ステップS710で特定した複数の島が隣接していない場合には、ステップS710で特定した島のうちの、最も第1の評価値が大きい島が被写体を構成する島として特定され、該特定結果に基づいて、対象画像内における被写体の位置、大きさ、形状が特定される。すなわち、図8に示した例では、第1位の2値化区分画像5h内に存在する島8aが被写体を構成する島として特定される。
【0033】
その後、ステップS730へ進み、制御装置104は、ステップS720で特定した被写体の形状に基づいて、対象画像内における該被写体の重心位置を特定し、特定した重心位置を示す情報、例えば重心位置の座標値を不図示のメモリに記録する。また、制御装置104は、被写体形状の特定に用いた島を特定するための情報、例えばステップS600のラベリング処理により各島に付加された番号(マスクNo)を不図示のメモリに記録する。その後、図2に示す処理に復帰する。
【0034】
以上の処理により、1フレーム目を対象画像とし、該対象画像名における被写体の位置、大きさ、および形状を特定することができる。その後、図2のステップS20以降の処理より、2フレーム目以降の画像についての処理が実行される。ステップS20では、制御装置104は、撮像素子103から連続して入力される画像の次フレームを対象画像として読み込んで、ステップS30へ進む。ステップS30からステップS50の処理は、図3で上述したステップS520からステップS540の処理と同様のため、説明を省略する。
【0035】
その後、ステップS60へ進み、制御装置104は、対象画像内から前フレームにおける被写体位置を含んだ所定範囲の画像を抽出する。本実施の形態では、以降の処理の実行対象をステップS60で抽出した範囲の画像に限定することによって処理を高速化する。しかしながら、ステップS60の処理を行わずに、対象画像の全体に対して処理を行うようにしてもよい。その後、ステップS70へ進む。ステップS70からステップS130の処理は、図3で上述したステップS600からステップS660の処理と同様のため、説明を省略する。
【0036】
ステップS140では、制御装置104は、前フレームでメモリに記録した被写体位置、例えば被写体形状の特定に用いた島の重心点を中心とした慣性モーメント(被写体重心点周りの慣性モーメント)を式(5)により算出して、ステップS150へ進む。ステップS150の処理は、図3で上述したステップS670の処理と同様のため、説明を省略する。
【0037】
その後、ステップS160へ進み、制御装置104は、ステップS150で算出した第1の評価値が最大となる島を合成エリアとしてメモリに記憶する。その後、ステップS170へ進み、制御装置104は、全ての2値化区分画像(マスク)について、ステップS60〜S160の処理が完了したか否かを判断する。ステップS170で否定判断した場合には、ステップS60へ戻る。これに対して、ステップS170で肯定判断した場合には、ステップS180へ進む。
【0038】
ステップS180では、制御装置104は、ステップS160でメモリに記録した合成エリアをモニタ106に表示して、ステップS190へ進む。ステップS190では、ステップS160で合成エリアとして記録した島の重心位置に関する情報、例えば重心の座標値をメモリに保存する。その後、ステップS200へ進み、制御装置104は、現フレームが撮像素子103から時系列で入力されるフレームの最後のフレームであるか否かを判断する。ステップS200で否定判断した場合には、ステップS20へ戻って処理を繰り返す。これに対して、ステップS200で肯定判断した場合には、処理を終了する。
【0039】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)制御装置104は、撮像素子103から連続して入力されるフレームの1フレーム目を対象画像とし、対象画像の色情報(Cb、Cr)または輝度情報(Y)に基づいて16区分の2値化区分画像を作成し、これらの2値化区分画像のそれぞれに対して、対象画像内における被写体を特定するために用いる評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、対象画像内における被写体を特定するようにした。これによって、対象画像内における被写体の位置と大きさと形状とを精度高く特定することができる。
【0040】
(2)制御装置104は、2フレーム目以降のフレームにおいて、前フレームの被写体位置と、第1〜第4の評価値とに基づいて、フレーム内における被写体を特定するようにした。このように、前フレームの被写体位置を加味して現フレームの被写体位置を特定するため、処理速度を向上させることができる。
【0041】
(3)評価値は、2値化区分画像内における白画素で構成される白画素領域、すなわち島の面積と、白画素領域内での白画素のまとまり状況を表す値に基づいて算出される第1の評価値と、2値化区分画像内における白画素のまとまりを包絡する包絡矩形の面積に基づいて算出される第2の評価値、包絡矩形の縦横比に基づいて算出される第3の評価値、および白画素領域が前記2値化区分画像の端点にかかっている割合を示す第4の評価値を含むようにした。これによって、通常被写体としてはあり得ない形状や大きさの島をあらかじめ処理対象から除外した上で、島内の白画素がまとまり具合を加味して、精度高く被写体の位置と大きさと形状とを特定することができる。
【0042】
―変形例―
なお、上述した実施の形態のカメラは、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、制御装置104は、使用者によるフレーム内における被写体位置の指定を受け付けて、対象画像内に被写体位置推定点を設定する例について説明した。しかしながら、制御装置104は、使用者によるフレーム内における被写体位置の指定を受け付けて被写体位置推定点を設定し、設定した被写体位置推定点に基づいて、16区分の2値化区分画像の中から、該被写体位置推定点が白画素領域内に含まれる2値化区分画像を特定し、特定した2値化区分画像の中から被写体を特定するために用いる2値化区分画像を選択するようにしてもよい。これによって、被写体位置推定点に基づいて被写体を特定するために用いる2値区分画像を絞り込むことができるため、処理速度を向上させることができる。
【0043】
(2)上述した実施の形態では、制御装置104は、対象画像内における被写体の位置と大きさと形状とを特定する例について説明した。しかしながら、制御装置104は、対象画像内における被写体の位置と大きさと形状の少なくとも一つを特定するようにしてもよい。
【0044】
(3)上述した実施の形態では、制御装置104は、島の面積と、評価値2〜4の4つの評価値を用いて、被写体である可能性が低い島を処理対象から除外する例について説明した。しかしながら、制御装置104は、該4つの評価値の少なくとも1つを用いて、被写体である可能性が低い島を処理対象から除外するようにしてもよい。
【0045】
(4)上述した実施の形態では、制御装置104は、図3のステップS560において、使用者に対して、対象画像内における被写体のおおよその大きさの入力を促し、ステップS620において、各島の面積と使用者によって入力された被写体のおおよその大きさとに基づいて、2値化区分画像内の各島の中から、被写体を構成する可能性が低い島を特定して以降の処理の対象から除外することにより、対象画像内からの被写体の抽出精度をさらに向上させる例について説明した。しかしながら、制御装置104は、使用者に対象画像内における被写体のおおよその大きさの入力させることなく、次の方法により、フレーム内における被写体の大きさを推定して、対象画像内からの被写体の抽出精度を向上させるようにしてもよい。すなわち、制御装置104は、撮像素子103から連続して入力されるフレーム間で差分をとって差分画像を生成し、生成した差分画像の大きさと形状とに基づいて、フレーム内における被写体の大きさと形状とを推定するようにしてもよい。
【0046】
(5)上述した実施の形態では、本発明をカメラに適用する場合について説明した。しかしながら、本発明は、画像を読み込んで処理することができる他の装置、例えばパソコンや携帯端末などに適用することも可能である。
【0047】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 カメラ、101 操作部材、102 レンズ、103 撮像素子、104 制御装置、105 メモリカードスロット、106 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して入力されるフレームの中から対象画像を選択し、前記対象画像の色情報または輝度情報に基づいて1つの画像を複数の区分画像に区分する区分手順と、
前記複数の区分画像のそれぞれを前記色情報または前記輝度情報を用いて2値化して複数の2値化区分画像を生成する2値化手順と、
前記複数の2値化区分画像のそれぞれに対して、前記対象画像内における被写体を特定するために用いる評価値を算出する評価値算出手順と、
前記評価値に基づいて、前記対象画像内における被写体を特定する被写体特定手順と、
前記被写体特定手順で特定した前記対象画像内における被写体の位置を記憶する記憶手順と、
前記被写体特定手順で特定した被写体を前記連続して入力されるフレーム間で追尾する追尾手順とをコンピュータに実行させるための被写体特定用プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の被写体特定用プログラムにおいて、
前記被写体特定手順は、前記対象画像より後に連続して入力されるフレームにおいて、前記記憶手順で記憶した前記対象画像内における被写体の位置、前記評価値算出手順で算出した前記評価値とに基づいて、前記フレーム内における被写体を特定することを特徴とする被写体特定用プログラム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の被写体特定用プログラムにおいて、
前記評価値は、2値化区分画像内における白画素で構成される白画素領域の面積、前記白画素領域内での白画素のまとまり状況を表す値に基づいて算出される第1の評価値、前記2値化区分画像内における白画素のまとまりを包絡する包絡矩形の面積に基づいて算出される第2の評価値、前記包絡矩形の縦横比に基づいて算出される第3の評価値、および前記白画素領域が前記2値化区分画像の端点にかかっている割合を示す第4の評価値の少なくとも1つを含むことを特徴とする被写体特定用プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載の被写体特定用プログラムにおいて、
使用者による前記フレーム内における被写体位置の指定を受け付ける受付手順をさらに有し、
前記被写体特定手順は、前記複数の2値化区分画像の中から、前記受付手順で受け付けた指定被写体位置が前記白画素領域内に含まれる2値化区分画像を特定し、該特定した2値化区分画像の中から前記フレーム内における被写体を特定するために用いる2値化区分画像を選択することを特徴とする被写体特定用プログラム。
【請求項5】
連続して入力されるフレーム間で差分をとって差分画像を生成する差分画像生成手順と、
前記差分画像生成手順で生成した前記差分画像の大きさと形状とに基づいて、フレーム内における被写体の大きさと形状とを推定する推定手順と、
前記推定手順による推定結果に基づいて、フレーム内における被写体を特定する被写体特定手順とをコンピュータに実行させるための被写体特定用プログラム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の被写体特定用プログラムを実行するための実行手段を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−39210(P2012−39210A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175173(P2010−175173)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】