説明

被加工ワーク検出用無線装置

【課題】被加工ワークのクランプ状態をエアー配管や信号配線を用いずに検出可能とすること。
【解決手段】本被加工ワーク検出用無線装置は、機械加工装置に配設されて機械加工時に被加工ワークと一体回転する回転側に、被加工ワークの位置を非接触で検出すると共にその検出に係る信号を電波送信する無線近接センサを配置する一方、機械加工装置の非回転部分で上記無線近接センサに近接した位置に上記信号を電波受信する受信アンテナを配置した構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る被加工ワーク検出用無線装置は、被加工ワークが所定の位置に配置されているかを検出した信号を無線で送受信することができるようにした装置である。
【0002】
本発明の装置は、上記位置を被加工ワークの加工基準位置としこの加工基準位置に従い加工工具を数値制御して被加工ワークを加工する機械加工装置等に適用することができる。
【0003】
また、本発明の装置は、被加工ワークを回転させながら加工する機械加工装置に配設されて該被加工ワークを所要位置でクランプするためのワーククランプ装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0004】
被加工ワークを研削や切削機械加工装置等の機械加工装置で加工する場合、被加工ワークをその機械加工装置の加工基準に適合した位置にクランプする必要がある。そのクランプのためにワーククランプ装置が用いられる。
【0005】
被加工ワークには、自動車用レシプロエンジンを一例にとれば、カム軸のカム、そのジャーナル、ピストンピン、クランクジャーナル、クランクピン等、種々の部分がある。このような被加工ワークに研削加工を、数値データやプログラムに従い加工制御する機械加工装置が提案されている。(特許文献1参照)。
【0006】
このような機械加工装置を用いて被加工ワークを加工する場合、被加工ワークをクランプする上記ワーククランプ装置には、被加工ワークの着座位置にエアー流出口を設け、このエアー流出口にエアー配管の一端側を連通接続すると共にエアー配管の他端側をエアー供給源に連通接続し、このエアー配管を介してエアー供給源から所定圧力のエアーをエアー流出口に流し込んで、エアー流出口からエアーの漏れが生じているか否かを圧力センサで検出することにより、被加工ワークのクランプ状態を判定するようにしたものがある。(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、機械加工装置での機械加工で生じた加工屑が、ワーククランプ装置に付着したり堆積したりして、被加工ワークをワーククランプ装置から取り外した後、加工屑がエアー流出口からエアー配管内に侵入しやすく、エアー流出口を塞ぐ可能性がある。このような可能性は被加工ワークの加工不良率をアップさせてしまう。また、エアー配管を塞いでいる加工屑を清掃する作業が頻繁に要求されてしまい、作業コストが高くつく。さらに、エアー配管を上記ワーククランプ装置内に引き回し設置する必要があるから配管コストが高くつく上、そのエアー配管のメンテナンスのためのコストも高くつく。さらには、ワーククランプ装置を被加工ワークと共に一体回転させる必要があるので、加工前はエアーを供給(オン)して被加工ワークの着座状態を検出し、加工中はエアー供給を停止(オフ)する必要があり、エアー供給のオンオフ制御が複雑となる。さらには、加工中はエアーの供給をオフすると、被加工ワークが正常な着座位置に存在しているはずであるのに実際は正常な着座位置からずれた位置でクランプされた状態で加工されてしまう可能性があり、このことも被加工ワークの加工不良率をアップさせてしまう。
【0008】
そこで、本出願人は、鋭意研究した結果、ワーククランプ装置に従来一般の近接センサを設置することを考えた。近接センサは、被加工ワークに非接触の状態で被加工ワークの着座状態を検出することができるものと考えられる。
【0009】
しかしながら、従来一般の近接センサではその検出出力を出力するために信号配線が必要であり、被加工ワークと共に一体回転するワーククランプ装置に近接センサを取り付けたのでは、上記信号配線が難しい。例えば、信号配線をワーククランプ装置側と近接センサ出力を受信処理して機械加工装置のサーボモータ制御を行う制御側とで分割配線し、分割した信号配線間をスリップリングで摺接させる方式がある。
【0010】
このような方式は、機械加工装置が多数台数になると、機械加工装置設置床面上に多数の信号配線が引き回されてしまう、等により好ましくない。
【特許文献1】特開2002−103219(2002年4月9日公開)
【特許文献2】特開平7−40169(1995年2月10日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本出願人はさらに研究を重ね、信号配線を要する近接センサではなく、その信号を無線で送信することができる無線近接センサを開発した。
【0012】
しかしながら、無線近接センサの場合では、信号配線で信号を送信せず、無線で送信するために、同一機械加工装置内部に複数の無線近接センサが存在する場合でも、複数の機械加工装置内部に無線近接センサを配置した場合でも、無線近接センサそれぞれからの信号電波の相互干渉が問題となる。
【0013】
したがって、本発明により解決すべき課題は、被加工ワークのクランプ状態をエアー配管や信号配線を用いずに検出可能とするとともに、上記信号電波の相互干渉が起こらないかまたは起こりにくい無線近接センサならびにその無線近接センサを用いたワーククランプ装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による被加工ワーク検出用無線装置は、機械加工装置に配設されて機械加工時に被加工ワークと一体回転する回転側に、被加工ワークの位置を非接触で検出すると共にその検出に係る信号を電波送信する無線近接センサを配置する一方、機械加工装置の非回転部分で上記無線近接センサに近接した位置に上記信号を電波受信する受信アンテナを配置したことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の好適な一態様は、上記無線近接センサを、被加工ワークに非接触でその位置を検出する非接触検出部と、その検出に係る信号を電波送信する信号形態に処理する処理部と、この処理部の出力を電波送信する送信アンテナとを含み、これらが樹脂製の密封筐体に収納して構成することである。
【0016】
本発明の好適な一態様は、上記送信アンテナを平面アンテナとすることである。
【0017】
本発明の好適な一態様は、上記無線近接センサを、機械加工装置に配設されて被加工ワークを加工基準位置に固定し機械加工時に被加工ワークと一体回転するワーククランプ装置に配置して、被加工ワークの加工基準位置の検出に係る信号を電波送信することである。
【0018】
本発明の好適な一態様は、上記ワーククランプ装置を、被加工ワークが設置されるワーク台座と、このワーク台座の台座面上に被加工ワークをクランプするワーククランプとで構成し、上記無線近接センサを、上記ワーク台座の台座面に設けた凹部に収納することである。
【0019】
非接触検出部は、その検出方式に限定されるものではなく、電磁誘導方式型、静電容量方式、磁気方式、超音波方式、光電方式、その他の検出方式を含むことができる。
【0020】
無線近接センサには、物体の存在位置を連続的に検出することができるセンサだけでなく、物体がある距離内に近づいたときにオンまたはオフするセンサ装置も含むことができる。
【0021】
上記電波の送受信形態や送受信周波数は、特に限定しない。
【0022】
本発明では、非接触検出部や処理部等に電源を供給する形態は特に限定しないが、例えば筐体内に電池搭載室を設け、この電池搭載室に搭載した電池で無線送信部等に電源を供給するようにして電源供給のための電源ケーブルの配線を省略可能としてもよい。
【0023】
本発明の被加工ワーク検出用無線装置では、無線近接センサを機械加工装置における被加工ワークの加工基準位置に組み込んで使用すると、その無線近接センサの非接触検出部により被加工ワークが加工基準位置にセットされているかを当該被加工ワークに接触することなく検出することができる。そして、その非接触検出部の検出出力を無線近接センサの処理部により無線で送信することができる形態に処理した後、無線近接センサの送信アンテナから送信することができる。
【0024】
そのため、被加工ワークの加工基準位置でのセット状態を検出するために、従来のようにワーク台座にエアー流出口を設けると共にワーク台座にエアー流出口に連通するエアー配管一端側を配管しそのエアー配管他端側にエアー供給源を接続し、エアー配管途中に配置した圧力センサでエアーの圧力状態を検出するシステムをとる必要がなくなる。
【0025】
以上から本発明の被加工ワーク検出用無線装置に係る無線近接センサを機械加工装置に組み込んだ場合、上記従来システムによる被加工ワークの加工不良率のアップとか、加工屑の清掃作業とか、エアー配管の引き回し設置とか、等を無くすことができる。
【0026】
また、本発明の被加工ワーク検出用無線装置では、無線近接センサの非接触検出部の検出出力を電波送信することができるので、上記検出出力を出力させる信号配線が必要で無くなる。
【0027】
以上において、本発明の被加工ワーク検出用無線装置では、無線近接センサに近接した位置に上記信号を電波受信する受信アンテナを配置したので、例えば同一の機械加工装置内部に複数の無線近接センサが存在する場合でも、送信電波の相互干渉が起こらせないかまたは起こりにくくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の被加工ワーク検出用無線装置は、無線近接センサにより被加工ワークの検出に係る信号を電波送信する一方、その無線近接センサ内蔵の送信アンテナを機械加工装置の非回転部分に取り付けた受信アンテナに近接配置したので、例えば被加工ワークのクランプ状態等をエアー配管を配管したり、信号配線を用いたりせずに、しかも安価な方式で検出することができ、被加工ワークの検出に係る信号の配線を引き回して制御装置等に出力する必要がなくなる等、多数の機械加工装置が集約配置された工場等では特に好ましい。
【0029】
さらに、本発明の被加工ワーク検出用無線装置では、送信アンテナと受信アンテナとを近接配置したので、例えば同一の機械加工装置内部等での、他の電波との相互干渉が起こらないかまたは起こりにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1に機械加工装置とこの機械加工装置に用いる実施の形態の被加工ワーク検出用無線装置の概略構成を示す。
【0031】
同図を参照して、この機械加工装置では、図示略のベッド上に配置されたテーブル2が移動モータ4によりx方向に摺動可能に配置されている。
【0032】
テーブル2上に回転主軸6,8が対向配置されている。
【0033】
両回転主軸6,8の対向面からワーククランプ装置10,12が突設されている。
【0034】
被加工ワーク14はその被加工面がx方向に直径が一定である長い円筒面状をなす丸棒である。この被加工ワーク14はその両軸端が両ワーククランプ装置10,12にそれぞれクランプされて軸線c1回りに回転主軸6,8と一体回転可能になっている。
【0035】
回転主軸6は主軸モータ15により回転駆動させられる。
【0036】
実施の形態の被加工ワーク14は理解の都合で被加工ワーク14を上記で説明するが、本発明が対象とする被加工ワーク14は上記形状に限定されず、外周面のプロフィールが偏心カム軸のような非円形であったり、長手方向に凹凸、あるいは円錐形状、等を含む。例えば自動車用レシプロエンジンにおけるカム軸のカム、そのジャーナル、ピストンピン、クランクジャーナル、クランクピン等、種々の形状を有するものを被加工ワーク14に適用することができる。
【0037】
加工工具の一例である回転砥石16は砥石モータ21により軸線c2回りに回転駆動される。回転砥石16の外周部分に砥石が装着されており、この砥石により被加工ワーク14の外周面である被加工面に研削等の加工が施される。
【0038】
テーブル20は図示略の上記ベッド上に配置されたモータ18によりy方向に駆動されるようになっている。回転砥石16は、このテーブル20によりy方向に自在に進退して被加工ワーク14を加工することが可能になっている。
【0039】
被加工ワーク14の両軸端それぞれのワーククランプ装置10,12には無線近接センサ22,24が内蔵されている。無線近接センサ22,24を被加工ワーク14の両軸端側に配置する必要は必ずしもなく一方の軸端側にのみ無線近接センサ22または24を配置してもよい。ただし、被加工ワーク14のクランプ位置ずれ検出の場合は近接センサ装置22,24を被加工ワーク14の両軸端側に配置する必要がある。
【0040】
両無線近接センサ22,24は、被加工ワーク14に接触しないで被加工ワーク14の軸端におけるクランプ状態をそれぞれ検出してその検出に係るそれぞれのセンサデータを後述する内蔵送信アンテナにより無線で無線受信機26,28に送信する構成になっている。
【0041】
この被加工ワーク14は、ワーククランプ装置10,12により機械加工装置における加工基準位置に適合した位置で加工中はそのクランプ状態を維持されることが必要である。
【0042】
そのため、被加工ワーク14の両軸端がワーククランプ装置10,12で加工基準位置に適合した位置でクランプされているか否かのセンサデータが加工開始前において無線近接センサ22,24それぞれから無線受信機26,28に送信されるようになっている。
【0043】
無線近接センサ22,24それぞれのセンサデータは両無線受信機26,28で受信させる必要は必ずしもなく、一方の無線受信機26,28に受信させてもよい。
【0044】
これは無線近接センサ22,24それぞれのセンサデータには送信IDコードが含まれているので、いずれの無線近接センサ22,24からのセンサデータであるかを判定することができるからである。
【0045】
従来では、加工中はエアー供給源からのエアー供給は停止されているため、ワーク台座のエアー流出口のエアー流出によるエアー配管内圧力の変化を圧力センサで検出することはできず、被加工ワーク14に対する加工中では被加工ワーク14はワーククランプ装置10,12で正しい位置にクランプされているものとして被加工ワーク14に加工を施さざるを得なかった。
【0046】
あるいは、エアー流出口を被加工ワーク14が位置ずれする方向に複数配置し、被加工ワーク14のクランプ位置の位置ずれに応じたエアー配管内の圧力変化から被加工ワーク14のクランプ状態を判定することも可能であるが、連続的な位置ずれの検出はできず、また、複数のエアー流出口を設ける必要があるので、ワーク台座の加工コストが高くつく。
【0047】
これに対して実施の形態では、ワーク台座に単に近接センサ22,24を内蔵させるだけでよく、ワーク台座の加工コストはさほど高くつくものとはならない。
【0048】
こうして両無線受信機26,28それぞれが受信したセンサデータは制御装置30に入力される。この制御装置30はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)により構成することができる。制御装置30は、CPU、メモリ等を有し、CPUは、無線受信機26,28からのセンサデータを監視しつつ、メモリに記憶されている制御プログラムに従いモータ等の駆動回路32を駆動して被加工ワーク14に対する加工を制御するようになっている。
【0049】
この制御プログラムはシーケンスプログラムで構成し、被加工ワーク14に対して種々の加工を実施する場合、PLCは無線受信機26,28からのセンサデータ以外に、図外のセンサ、アクチュエータ等からなる各種の入出力機器31に接続されて、予め格納されたシーケンスプログラムを実行しながら機械加工装置内の被加工ワーク14の加工に対するシーケンス制御を行うようにしてもよい。
【0050】
また、上記メモリに例えば被加工ワーク14の加工プロフィールデータを記憶させ、CPUをこの加工プロフィールデータに従い、テーブル2,20の移動を制御させ、被加工ワーク14に対して任意の加工を施すと共に、ワーククランプ装置10,12に内蔵した無線近接センサ22,24からのセンサデータに基づいて被加工ワーク14が加工プロフィールの加工基準位置にクランプされているかを検出しつつ被加工ワーク14に対する加工を施すようにしてもよい。
【0051】
図2を参照してワーククランプ装置10,12内における無線近接センサ22,24の設置を説明する。図2は図1のA−A線断面構成を示す。ただし、図2中に示す無線近接センサ22の内部構造の詳細は略し、回路ブロックを模式的に示している。
【0052】
まず、無線近接センサ22の設置について説明する。ワーククランプ装置10は、ワーククランプ34と、ワーク台座36とを備える。ワーク台座36にはセンサ取り付け部として無線近接センサ22の設置用凹部38が形成されている。無線近接センサ22はこの凹部38内に収納設置される。
【0053】
上記無線近接センサ22は、内部が密封された樹脂製筐体42を有し、この筐体42内部に、被加工ワーク14に非接触で該被加工ワーク14のクランプ状態を検出する非接触検出部44と、上記検出に係るセンサデータを無線で送信するためのデータ形態に処理する信号処理部46と、上記信号処理部46からのセンサデータを無線送信する送信アンテナ48と、を内蔵している。
【0054】
筐体42の樹脂材は、耐熱性を有し強度も高い樹脂が好ましく、この樹脂には例えば、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート系やポリエチレンナフタレート系等含む)、ポリスルホン系、ポリカーボネート系、ナイロン系、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂がある。
【0055】
図3を参照してワーク台座36上での被加工ワーク14のクランプ状態を説明する。図3(a)に被加工ワーク14がその回転中心点O1がワーク台座36上の設置点O2から図示左側にずれてワーククランプ34でクランプされている場合を示し、図3(b)に一致してクランプされている場合を示し、図3(c)に図示右側にずれてクランプされている場合を示す。
【0056】
図4にワーク台座36上での被加工ワーク14のワーク位置での無線近接センサ22の非接触検出部44の検出レベルを示す。図4で横軸に被加工ワーク14のワーク台座36上におけるワーク位置をとり、縦軸に無線近接センサ22の非接触検出部44の検出信号のレベルをとる。
【0057】
無線近接センサ22の非接触検出部44は、被加工ワーク14が図3(a)の位置でクランプされている場合は図4の検出レベルでレベルaのセンサデータを出力し、図3(b)の位置でクランプされている場合は図4の検出レベルで最大のレベルbのセンサデータを出力し、図3(c)の位置でクランプされている場合は図4の検出レベルでレベルcのセンサデータを出力する。
【0058】
以上の検出レベルのデータを含むセンサデータが無線近接センサ22の送信アンテナ48から送信される。このセンサデータは無線受信機26により受信され、制御装置30に入力される。制御装置30はそのセンサデータから被加工ワーク14がワーク台座36に対して図3(a)や図3(c)で示す位置に位置ずれしている場合では、例えば、テーブル20の移動量や、あるいは回転砥石16による加工速度、加工時間等を制御(サーボ制御等)したり、あるいは、テーブル2を図示略の上記ベッド上に配置されたテーブル上の移動モータ18でy方向に移動制御(サーボ制御等)したりする。これによって、被加工ワーク14に対して回転砥石16により正常に加工することができるようになる。
【0059】
図5を参照して実施の形態の被加工ワーク検出用無線装置を構成する無線近接センサ22の送信アンテナ48からの送信と、この送信電波を受信する無線受信機26の受信アンテナ26aとを説明する。図5(a)は図2に対応する断面図、図5(b)は図1の図中左側のワーククランプ装置10を矢印B方向から見た要部の部分断面図である。
【0060】
無線近接センサ22の送信アンテナ48は平面アンテナで構成されている。
【0061】
無線受信機26の受信アンテナ26aは機械加工装置の非回転部位である例えばワーク移動テーブル2上に立設した受信アンテナ固定部2aの下面に固定配置する。26bは受信アンテナ26aの配線である。受信アンテナ固定部2aは図解の都合で図1にはその図示を略している。送信アンテナ48と受信アンテナ26aとの対向離隔距離は極めて短く設定されている。
【0062】
無線近接センサ22の送信アンテナ48からの送信電波TEは、当該送信アンテナ48に距離的に極めて近い受信アンテナ26aに向けて高い指向性をもって放射される。そのため、その無線近接センサ22の送信アンテナ48から送信電波TEが低電力で送信されても受信アンテナ26aでその送信電波TEを受信することができると同時に、その送信電波TEは弱いのでその周囲に配置した他の受信アンテナではその送信電波を受信されず電波の相互干渉を起こさずに済むようになる。
【0063】
その結果、無線近接センサ22の送信に要する電力消費を低減することができ、また、電波の相互干渉を起こさないので、周囲の機械加工装置やその他の機器、機械等に対して悪影響を及ぼさずに済むので好ましい。
【0064】
なお、無線近接センサ22と受信アンテナ26aとの周囲に図示を略するが電波遮蔽構造物を配置して他の無線近接センサからの送信電波との相互干渉をより効果的に遮断ないし抑制するようにしてもよい。
【0065】
図6を参照して無線近接センサ22の構成をさらに詳しく説明する。無線近接センサ22の筐体42は一例として円筒形状であり、その一端側開口には、コップ形状のキャップ50が装着され、このキャップ50の中に、フェライトコア52が配置されている。フェライトコア52には検出コイル54が巻回されている。これらは無線近接センサ22のセンサヘッドを構成することができる。検出コイル54はその近傍に被加工ワーク14が存在すると、検出コイル54と被加工ワーク14との電磁誘導作用により検出コイル54の抵抗成分やインダクタンス成分が変化(検出コイル54のQ値が変化)する。これにより検出コイルは非接触検出部の一部を構成する。キャップ50の開口側には基板56が配置されている。この基板56の裏面側には回路部品58が搭載されている。基板56は、フェライトコア52の背面側と内装支持基板60とで支持されている。
【0066】
基板56の平坦表面に送信アンテナ48が図7で示すようにループアンテナ形状で形成されている。この送信アンテナ48の配置位置は特に限定されるものではなく、凹部38に配置された場合、受信アンテナ26aに向けて送信電波TEを効率的に放射することに都合が良い位置に配置することが好ましい。そのため、基板56とは別途のアンテナ設置専用基板を設け、この専用基板の、ループアンテナを形成した基板表面の向きを調整するようにしてもよい。
【0067】
筐体42の他端側内周面は電池搭載室64とされ、この電池搭載室64に一次電池や二次電池等の各種の電池66が搭載可能になっている。ワーククランプ装置10から電源が供給される場合はこの電池搭載室64は設ける必要がない。
【0068】
筐体42の他端側は開口しており、この開口はねじ込み式キャップ68により閉塞されるようになっている。キャップ68の内面には電池66の接点を与えるスプリング70が設けられている。電池66は、交換可能であると共に、このキャップ68の締め付け装着により、そのプラスとマイナス側両接点が非接触検出部44や信号処理部46を構成する回路部品58に対する電源供給ラインに接続され、電池電源を回路部品58に供給することができるようになっている。
【0069】
筐体42はキャップ68によりその開口を閉塞された状態でその内部が気密封止される構造になっている。この場合、キャップ68に図示略のOリングを装着してもよい。また筐体42の内部には好ましくは耐クーラント(冷却水)のため樹脂が充填されてもよい。
【0070】
図8を参照して、無線近接センサ22の回路構成を説明する。無線近接センサ22は、回路として、上記した非接触検出部44と、信号処理部46と、送信アンテナ48と、を備える。上記非接触検出部44と信号処理部46には電池66電源が供給される。
【0071】
非接触検出部44は、上記した検出コイル54と、発振部72と、検波部74と、出力部76とを有する。発振部72は検出コイル54のQの変化により発振振幅や発振周波数が変化する。高周波型にあっては、発振部72の発振振幅を検波部74で検出し、この検波部74の検出出力に応じて被加工ワーク14の存在や近接を検出することができる。この検出の結果であるセンサデータを出力部76から信号処理部46に出力する。
【0072】
信号処理部46は、センサデータの演算やその他の制御をするCPU78と、他の無線近接センサを識別するIDコードやその他のデータを記憶しているRAM80と、制御プログラムを記憶しているROM82とからなるマイクロコンピュータ84と、マイクロコンピュータ84からのセンサデータ(送信周波数(キャリア)、IDコード(識別コード)、非接触検出部44の検出出力)を入力し、IDコードと検出出力を上記キャリアで変調して送信信号を生成して出力する送信出力部86と、を備える。
【0073】
信号処理部46からのセンサデータは、ループアンテナ形状の送信アンテナ48から空中へ電波の形で放射される。この場合、筐体42は樹脂製であるので、この電波は筐体42外へ放射することができる。
【0074】
なお、信号処理部46のCPU78は、電池66の寿命を長くするため、非接触検出部44からセンサデータを入力した場合、無線通信を0.5秒間だけワンショット送信し、上記以外は待機状態(ストップモード)にして電池66の消費を抑制するようになっている。
【0075】
なお、被加工ワーク14が例えば図9で示すように一端側がクランプされるような円盤状あるいは短円筒状でもよい。例えば、鋳造成形されたアルミニウム合金製のホイール等でもよい。このような被加工ワーク14ではその両端をワーククランプ装置10,12でクランプせず図示するように一端側をワーククランプ装置10のワーククランプ34とワーク台座36とでクランプし、図中軸線c4回りに被加工ワーク14を回転させつつy方向に移動制御する一方で、図中軸線c3回りに回転しx方向に移動自在な回転砥石16で上記被加工ワーク14を加工する形態とすることができる。この場合、無線近接センサ22は、ワーク台座36のセンサ取り付け部である凹部38に内蔵するとよい。
【0076】
以上説明したように本実施の形態では、無線近接センサ22を、ワーククランプ装置10に組み込んで使用すると、その無線近接センサ22の筐体42内部の非接触検出部44により被加工ワーク14のクランプ状態を被加工ワーク14に接触することなく検出することができる。そして、その検出に係るセンサデータを無線近接センサ22の信号処理部46により無線で送信することができる形態に処理した後、無線近接センサ22の送信アンテナ48から送信することができる。そのため、被加工ワーク14のクランプ状態を従来のようにワーク台座にエアー流出口を設けると共にワーク台座にエアー流出口に連通するエアー配管一端側を配管しそのエアー配管他端側にエアー供給源を接続し、エアー配管途中に配置した圧力センサでエアーの圧力状態を検出するシステムをとる必要がなくなる。
【0077】
以上から実施の形態の無線近接センサをワーククランプ装置に組み込んだ場合、上記従来システムによる被加工ワークの加工不良率のアップとか、加工屑の清掃作業とか、エアー配管の引き回し設置とか、等を無くすことができる。
【0078】
また、本発明の無線近接センサは、無線でセンサデータを送信することができるので、センサデータを出力させる信号配線が必要で無くなる。
【0079】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る機械加工装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は図1のA−A線断面図である。
【図3】図3はワーク台座に対する被加工ワークのクランプのワーク位置ずれを示す図である。
【図4】図4はワーク台座上での被加工ワークのワーク位置での無線近接センサからの検出レベルを示す図である。
【図5】図5(a)は図2に対応し送信アンテナと、受信アンテナとの間での電波の送受信を示す断面図、図5(b)は図1の図中左側のワーククランプ装置10を矢印B方向から見た要部の部分断面図である。
【図6】図6は図1で示す無線近接センサの構成を示す断面図である。
【図7】図7は図1の無線近接センサが備えるループアンテナの構成を示す図である。
【図8】図8は無線近接センサの電気的な概略構成を示す図である。
【図9】図9は機械加工装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
2 テーブル
4 移動モータ
6,8 主軸
10,12 ワーククランプ装置
15 主軸モータ
16 回転砥石
21 砥石モータ
20 テーブル
22,24 無線近接センサ
26,28 無線受信機
30 制御装置
32 駆動回路
42 筐体
44 非接触検出部
46 信号処理部
48 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工装置に配設されて機械加工時に被加工ワークと一体回転する回転側に、被加工ワークの位置を非接触で検出すると共にその検出に係る信号を電波送信する無線近接センサを配置する一方、
機械加工装置の非回転部分で上記無線近接センサに近接した位置に上記信号を電波受信する受信アンテナを配置した、ことを特徴とする被加工ワーク検出用無線装置。
【請求項2】
上記無線近接センサは、被加工ワークに非接触でその位置を検出する非接触検出部と、その検出に係る信号を電波送信する信号形態に処理する処理部と、この処理部の出力を電波送信する送信アンテナとを含み、これらが樹脂製の密封筐体に収納されて構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の被加工ワーク検出用無線装置。
【請求項3】
上記送信アンテナは平面アンテナである、ことを特徴とする請求項2に記載の被加工ワーク検出用無線装置。
【請求項4】
上記無線近接センサは、機械加工装置に配設されて被加工ワークを加工基準位置に固定し機械加工時に被加工ワークと一体回転するワーククランプ装置に配置されて、被加工ワークの加工基準位置の検出に係る信号を電波送信するものである、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の被加工ワーク検出用無線装置。
【請求項5】
上記ワーククランプ装置は、被加工ワークが設置されるワーク台座と、このワーク台座の台座面上に被加工ワークをクランプするワーククランプとを含み、
上記無線近接センサは、上記ワーク台座の台座面に設けた凹部に収納されている、ことを特徴とする請求項4に記載の被加工ワーク検出用無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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