説明

被取付部材の装着構造

【課題】取付板側に向けて折り曲げられた縁の先端に表皮が巻かれている被取付部材、およびこの表皮が巻かれていない被取付部材であっても、取付板に対してこれら被取付部材を装着するクリップの共通化を図ることができる被取付部材の装着構造を提供すること。
【解決手段】被取付部材40の縁12aは、取付板側30に向けて折り曲げられている。
クリップ20における一対の係合部24b、24bは、折り曲げられた被取付部材10の縁12aの先端に表皮16が巻かれていてもいなくても、この被取付部材10の先端が取付板30に押し付けられた状態となるように、その各先端が互いに近づく方向にそれぞれ傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材の装着構造に関し、詳しくは、取付板に対して取り外し可能に装着できる被取付部材の装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネルなどの取付板に対して加飾パネルなどの被取付部材を取り外し可能に装着できる被取付部材の装着構造が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、取付板に対してクリップを介して被取付部材を取り外し可能に装着できる被取付部材の装着構造が開示されている。これにより、簡便な構造であっても、取付板に対してしっかりと被取付部材を装着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−287221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、取付板に対して被取付部材を装着したときの意匠性を高める観点から、被取付部材は、その基材の縁が内側(取付板側)に向けて折り曲げられている(以下、この基材の折り曲げられている部位を、単に、『折り曲げ部』と記す)。そのため、例えば、図3に示すように、表面に本革116が貼り付けられて成る折り曲げ部112aの先端と、図4に示すように、そうでない(本革116が貼り付けられていない)折り曲げ部112aの先端とを比較すると、前者の先端は、後者の先端より本革116の厚み分だけ嵩張りが生じることになっていた。この図3において、Tが嵩張り長を示している。したがって、図4に示すように、取付板130に対して前者の被取付部材110を装着するクリップ120を後者のそれに適用すると、後者の折り曲げ部112aの先端と取付板130との間に本革の厚みに相当する隙間Sが形成されてしまうことになっていた。このように隙間Sが形成されてしまうと、装着した後者の被取付部材140の見栄えが悪くなるため、これら2つの被取付部材110、140においてクリップ120を共通化できなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、取付板側に向けて折り曲げられた縁の先端に表皮が巻かれている被取付部材、およびこの表皮が巻かれていない被取付部材であっても、取付板に対してこれら被取付部材を装着するクリップの共通化を図ることができる被取付部材の装着構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、クリップに形成されている挟持部によって挟み込み可能なリブを備えており、このリブに対して前もって挟持部を挟み込ませたクリップを取付板の取付孔に挿入することにより、このクリップに形成されている一対の係合部を取付板の取付孔の縁に弾性的に係合させて取付板に対して取り外し可能に被取付部材を装着できる被取付部材の装着構造であって、被取付部材の縁は、取付板側に向けて折り曲げられており、クリップにおける一対の係合部は、折り曲げられた被取付部材の縁の先端に表皮が巻かれていてもいなくても、この被取付部材の先端が取付板に押し付けられた状態となるように、その各先端が互いに近づく方向にそれぞれ傾斜していることを特徴とする構造である。
この構造によれば、取付板側に向けて折り曲げられた縁の先端に表皮が巻かれている被取付部材を取付板に対して装着するクリップを、取付板側に向けて折り曲げられた縁の先端に表皮が巻かれていない被取付部材を取付板に対して装着するクリップに使用しても、クリップの一対の係合部は、取付板の取付孔の縁に弾性的に係合する。そのため、後者の被取付部材の折り曲げられた縁の先端と取付板との間に表皮の厚みに相当する隙間が形成されることがない。したがって、取付板に対してこれら被取付部材を装着するクリップの共通化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る被取付部材の装着構造を示す断面図であり、被取付部材が基材と本革とから成っている形態を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る被取付部材の装着構造を示す断面図であり、被取付部材が基材から成っている形態を説明する図である。
【図3】図3は、従来技術に係る被取付部材の装着構造を示す断面図であり、被取付部材が基材と本革とから成っている形態を説明する図である。
【図4】図4は、従来技術に係る被取付部材の装着構造を示す断面図であり、被取付部材が基材から成っている形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜2を用いて説明する。まず、図1〜2を参照して、第1の加飾パネル10と、クリップ20と、インストルメントパネル30と、第2の加飾パネル40との構成を個別に説明していく。
【0009】
はじめに、図1を参照して、第1の加飾パネル10から説明していく。この第1の加飾パネル10は、後述するインストルメントパネル30に対して装着可能な化粧パネルである。この第1の加飾パネル10は、その基材12が後述するリブ14と補強板14bと共に樹脂材の射出成形により一体的に成形されている。この基材12の縁は、その内側(取付板側)に向けて折り曲げられている(以下、この基材の折り曲げられている部位を、単に、『折り曲げ部12a』と記す)。
【0010】
この基材12の折り曲げ部12aの近傍の内面には、挟持孔14aを有するリブ14と、このリブ14を補強する補強板14bとが適宜の数だけ形成されている。なお、この基材12には、その外面の全てを覆うように本革16が貼り付けられている。そのため、この折り曲げ部12aの先端も、本革16が巻かれた状態となっている。第1の加飾パネル10は、このように構成されている。なお、この第1の加飾パネル10と本革16が、特許請求の範囲に記載の「被取付部材と表皮」に相当する。
【0011】
次に、クリップ20を説明する。このクリップ20は、その一端側に位置する胴体22と、その他端側に位置する一対の脚体24、24とに大別され構成されている。このクリップ20も、上述した基材12と同様に、樹脂材の射出成形により一体的に成形されている。この胴体22における一対の脚体24、24の根元側には、上述した基材12のリブ14の挟持孔14aに係合可能な一対の係合爪26、26が形成されている。なお、この一対の係合爪26、26が、特許請求の範囲に記載の「挟持部」に相当する。
【0012】
一方、一対の脚体24、24は、その各先端が互いに近づく方向に向けて略く字状に形成されている。なお、この脚体24における略く字の屈曲部24aより先端側を、説明の便宜上、脚片24bと記すこととする。このように形成されていると、各脚片24bは、その各先端が互いに近づく方向にそれぞれ傾斜した状態となる。また、この一対の脚体24、24は、その脚片24b、24が互いに近づく方向に外力を受けると、この近づきが戻る方向へ弾発力が作用するように形成されている。
【0013】
なお、この脚片24b、24bは、その長さが十分に長く形成されている。ここで言う十分に長くとは、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第1の加飾パネル10を装着したとき、折り曲げ部12aの先端に本革16が巻かれていてもいなくても、この先端がインストルメントパネル30に押し付けられた状態となるように、クリップ20の一対の脚体24、24の各脚片24b、24bがインストルメントパネル30の取付孔32の内面の縁に弾性的に係合可能となる長さのことである。クリップ20は、このように構成されている。なお、この一対の脚片24b、24bが、特許請求の範囲に記載の「係合部」に相当する。
【0014】
次に、インストルメントパネル30を説明する。このインストルメントパネル30は、車両の内部に設けられるベースパネルである。このインストルメントパネル30も、上述した基材12と同様に、樹脂材の射出成形により一体的に成形されている。このインストルメントパネル30には、上述した基材12に形成されているリブ14に対応するように取付孔32が適宜の数だけ形成されている。インストルメントパネル30は、このように構成されている。なお、このインストルメントパネル30が、特許請求の範囲に記載の「取付板」に相当する。
【0015】
最後に、図2を参照して、第2の加飾パネル40を説明する。この第2の加飾パネル40は、図1と図2との比較からも明らかなように、上述した第1の加飾パネル10から本革16を除いたものである。この本革16を以外の構成は、第2の加飾パネル40と第1と同じである。そのため、図面において同一部材には同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。第2の加飾パネル40は、このように構成されている。なお、この第2の加飾パネル40も、特許請求の範囲に記載の「被取付部材と表皮」に相当する。
【0016】
続いて、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第1の加飾パネル10を装着する手順と、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第2の加飾パネル40を装着する手順とを説明する。
【0017】
はじめに、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第1の加飾パネル10を装着する手順から説明する。まず、クリップ20の胴体22に第1の加飾パネル10のリブ14を挟み込んでいき、クリップ20の一対の係合爪26、26を第1の加飾パネル10のリブ14の挟持孔14aに係合させる作業を行う。これにより、クリップ20が第1の加飾パネル10に取り付けられた状態となる。
【0018】
次に、取り付けられたクリップ20の胴体22をインストルメントパネル30の取付孔32に挿入していく。すると、クリップ20の一対の脚体24、24は、インストルメントパネル30の取付孔32の内面によって、その脚片24b、24が互いに近づく方向に撓んでいく。
【0019】
やがて、クリップ20の一対の脚体24、24の各屈曲部24a、24aがインストルメントパネル30の取付孔32を通過すると、この一対の脚体24、24の各脚片24b、24bがこの取付孔32の内面の縁に弾性的に係合する。このとき、第1の加飾パネル10の基材12の折り曲げ部12aの先端がインストルメントパネル30の表面に押し付けられている。
【0020】
これにより、各脚片24b、24bと折り曲げ部12aの先端とによって、取付孔32の縁が表裏両側から挟み込まれ、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第1の加飾パネル10が装着されたこととなる。なお、この装着の取り外しは、インストルメントパネル30に対して第1の加飾パネル10を強く引っ張ればよい。
【0021】
次に、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第2の加飾パネル40を装着する手順を説明する。まず、クリップ20の胴体22に第2の加飾パネル40のリブ14を挟み込んでいき、クリップ20の一対の係合爪26、26を第2の加飾パネル40のリブ14の挟持孔14aに係合させる作業を行う。これにより、クリップ20が第2の加飾パネル40に取り付けられた状態となる。
【0022】
次に、取り付けられたクリップ20の胴体22をインストルメントパネル30の取付孔32に挿入していく。すると、クリップ20の一対の脚体24、24は、インストルメントパネル30の取付孔32の内面によって、その脚片24b、24が互いに近づく方向に撓んでいく。
【0023】
やがて、クリップ20の一対の脚体24、24の各屈曲部24a、24aがインストルメントパネル30の取付孔32を通過すると、この一対の脚体24、24の各脚片24b、24bがこの取付孔32の内面の縁に弾性的に係合する。このとき、第2の加飾パネル40の基材12の折り曲げ部12aの先端がインストルメントパネル30の表面に押し付けられている。
【0024】
これにより、各脚片24b、24bと折り曲げ部12aの先端とによって、取付孔32の縁が表裏両側から挟み込まれ、インストルメントパネル30に対してクリップ20を介して第2の加飾パネル40が装着されたこととなる。なお、この装着の取り外しは、インストルメントパネル30に対して第2の加飾パネル40を強く引っ張ればよい。
【0025】
なお、上述した第1の加飾パネル10を装着するクリップ20と、第2の加飾パネル40を装着するクリップ20とは共通のものである。このように共通のクリップ20であっても、従来技術とは異なり、クリップ20の脚片24b、24bは、その長さが十分に長く形成されているため、基材12の折り曲げ部12aの先端に本革16が巻かれていてもいなくても、第1の加飾パネル10および第2の加飾パネル40をインストルメントパネル30に装着できる。
【0026】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、『表皮』の例として、『本革16』を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『ファブリック』などであっても構わない。
【符号の説明】
【0027】
10 第1の加飾パネル(被取付部材)
14 リブ
16 本革(表皮)
20 クリップ
24b 脚片(係合部)
26 係合爪(挟持部)
30 インストルメントパネル(取付板)
32 取付孔
40 第2の加飾パネル(被取付部材)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップに形成されている挟持部によって挟み込み可能なリブを備えており、このリブに対して前もって挟持部を挟み込ませたクリップを取付板の取付孔に挿入することにより、このクリップに形成されている一対の係合部を取付板の取付孔の縁に弾性的に係合させて取付板に対して取り外し可能に被取付部材を装着できる被取付部材の装着構造であって、
被取付部材の縁は、取付板側に向けて折り曲げられており、
クリップにおける一対の係合部は、折り曲げられた被取付部材の縁の先端に表皮が巻かれていてもいなくても、この被取付部材の先端が取付板に押し付けられた状態となるように、その各先端が互いに近づく方向にそれぞれ傾斜していることを特徴とする被取付部材の装着構造。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83294(P2013−83294A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222959(P2011−222959)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】