説明

被曝線量管理システム及び被曝線量管理プログラム

【課題】医療従事者や医療施設についての将来の予測被曝線量を報知すること。
【解決手段】標準線量記憶部34は、複数の術式の種類の各々に標準被曝線量を関連付けて記憶する。スケジュール記憶部35は、複数の医療従事者の各々の術式のスケジュールを記憶する。操作部43は、複数の医療従事者のうちの管理対象者と管理対象者についての線量管理期間とをユーザからの指示に従って指定する。予測線量決定部441は、指定された管理対象者と線量管理期間とから、標準線量記憶部34とスケジュール記憶部35とを利用して、指定された線量管理期間における管理対象者の予測被曝線量を決定する。表示部45は、決定された予測被曝線量を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被曝線量管理システム及び被曝線量管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置を利用した術式の術者や補助者(スタッフ)等の医療従事者は、検査時においてX線に被曝されている。被曝線量の管理のために、医療従事者は、ポケット線量計やフィルムバッジを装着している。ポケット線量計により、装着部位の漏れX線量をリアルタイムにモニタリングすることができる。また、フィルムバッジにより、装着部位の積算X線量をモニタリングし、一定期間後に積算X線量を報知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―65815号公報
【特許文献2】特開2005―253689号公報
【特許文献3】特開2009―213709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、医療従事者や医療施設についての将来の予測被曝線量を報知することができる被曝線量管理システム及び被曝線量管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る被曝線量管理システムは、複数の術式の種類の各々に標準被曝線量を関連付けて記憶する標準線量記憶部と、複数の医療従事者の各々の術式のスケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、前記複数の医療従事者のうちの管理対象者と前記管理対象者についての線量管理期間とをユーザからの指示に従って指定する指定部と、前記管理対象者と前記線量管理期間とから、前記標準線量記憶部と前記スケジュール記憶部とを利用して、前記線量管理期間における前記管理対象者の予測被曝線量を決定する予測線量決定部と、前記決定された予測被曝線量を表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係る被曝線量管理システムの構成を示す図。
【図2】図1の被曝線量管理システム内の情報の流れを示す図。
【図3】図1の線量決定装置の制御部の制御のもとに行われる被曝線量決定処理の典型的な流れを示す図。
【図4】図3のステップSA2において予測線量決定部により実行される予測被曝線量の決定処理の典型的な流れを示す図。
【図5】図3のステップSA4において表示部により表示される予測被曝線量と実測被曝線量との表示レイアウトの一例を示す図。
【図6】変形例に係る線量決定装置の制御部の制御のもとに行われる被曝線量決定処理の典型的な流れを示す図。
【図7】図6のステップSB2において予測線量決定部により実行される予測被曝線量の決定処理の典型的な流れを示す図。
【図8】図6のステップSB4において表示部により表示される予測被曝線量と実測被曝線量との表示レイアウトの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる被曝線量管理システム及び被曝線量管理プログラムを説明する。
【0008】
本実施形態に係る被曝線量管理システムは、例えば、病院等の医療施設に構築される。被曝線量管理システムは、医用画像診断装置を利用した検査時における医療従事者の被曝線量を管理するコンピュータシステムである。本実施形態に係る医用画像診断装置としては、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置、核医学診断装置等が利用可能である。以下の説明を具体的に行うため、医用画像診断装置は、X線診断装置であるとする。また、医療従事者としては、実際に検査を行う術者や術者をサポートするための補助者(スタッフ)が含まれるものとする。
【0009】
図1は、本実施形態に係る被曝線量管理システム1の構成を示す図である。図2は、被曝線量管理システム1内の情報の流れを示す図である。図1と図2とに示すように、被曝線量管理システム1は、互いにネットワークを介して接続されたX線診断装置10、線量計20、HIS(hospital information system)/RIS(radiology information system)装置30、及び線量決定装置40を有する。
【0010】
X線診断装置10は、検査室に設けられる。X線診断装置10は、処理部11を中枢として高電圧発生装置12、X線管装置13、X線検出器14、及び入出力部15を有する。処理部11は、検査プロトコルを管理している。検査プロトコルは、検査の術式の種類を特定するためのデータを含んでいる。X線診断装置10を利用した術式の種類としては、例えば、単なるX線撮影とX線透視におけるインターベンションとに大別される。インターベンションとしては、例えば、カテーテルやステントを利用した血管形成術や血管塞栓術、アブレーションカテーテルを利用した不整脈治療等の様々な術式がある。高電圧発生装置12は、処理部11の制御に従ってX線管装置13に高電圧を印加する。X線管装置13は、高電圧の印加を受けてX線を発生する。X線検出器14は、X線管装置13から発生され被検体Pを透過したX線を検出し、被検体Pに関するX線画像のデータを発生する。X線管装置13からのX線の一部は、被検体Pにより散乱される。医療従事者は、この散乱X線等により被曝される場合がある。入出力部15は、検査プロトコルのデータをネットワークを介してHIS/RIS装置30に送信する。
【0011】
線量計20は、医療従事者の被曝線量を測定する装置である。具体的には、線量計20は、検出部21、入出力部22、及び処理部23を有している。検出部21は、医療従事者の特定の装着部位に装着される。装着部位としては、例えば、胸部や腹部等の人体部位が挙げられる。検出部21としては、ポケット線量計やフィルムバッジ等が利用される。検出部21は、装着部位に到達したX線を検出し、検出されたX線の線量に応じた電気信号を発生する。発生された電気信号は、ケーブルを介して入出力部22に入力される。処理部23は、入出力部22に入力された電気信号の強度に基づいて被曝線量を算出する。被曝線量は、検査単位で積算される。積算線量は、術者やスタッフ等の医療従事者単位、あるいは装着部位単位(人体部位単位)で管理される。積算線量のデータは、医療従事者名、人体部位名、検査日時、及び術式の種類に関連付けて、入出力部22によりネットワークを介してHIS/RIS装置30に送信される。
【0012】
HIS/RIS装置30は、術式や医療従事者に関するデータを管理するコンピュータ端末である。HIS/RIS装置30は、データ処理部31を中枢として、入出力部32、積算線量記憶部33、標準線量記憶部34、及びスケジュール記憶部35を有する。入出力部32は、ネットワークを介してX線診断装置10、線量計20、及び線量決定装置30との間で種々のデータの送受信を行う。積算線量記憶部33は、積算線量のデータを医療従事者名、人体部位名、検査日時、及び術式の種類に関連付けて記憶する。標準線量記憶部34は、複数の術式の種類の各々に標準被曝線量のデータを関連付けて記憶する。具体的には、標準線量記憶部34は、術式の種類のコードと標準被曝線量とを関連付けたテーブル(以下、標準被曝線量テーブルと呼ぶ)を記憶する。標準被曝線量は、その術式の検査が通常通りに行われる場合における、医療従事者の検査中の平均的な積算被曝線量である。例えば、標準被曝線量は、積算線量記憶部33に術式の種類毎に記憶されている過去の積算線量に基づいて算出されてもよい。また、標準被曝線量は、ユーザにより任意の値に設定されても良い。スケジュール記憶部35は、複数の医療従事者の各々についての術式のスケジュール(臨床参画計画)を記憶する。各医療従事者のスケジュールは、検査日時とその日時に参加する予定の検査の術式の種類のコードとが対応付けられている。例えば、医療従事者Aが術式Bの検査にC月D日のE時からF時まで参加する等の情報がスケジュールに含まれている。
【0013】
線量決定装置40は、ネットワークに接続されたコンピュータ端末である。線量決定装置40は、制御部41を中枢として、入出力部42、操作部43、線量決定部44、表示部45、及び記憶部46を有している。
【0014】
入出力部42は、ネットワークを介してHIS/RIS装置30との間で種々のデータの送受信を行う。また、入出力部42は、操作部43を介して入力された入力信号を制御部41に供給する。
【0015】
操作部43は、入力機器を介したユーザからの各種指示を受け付ける。ユーザからの指示に応じた入力信号は、入出力部42を介して制御部41に供給される。例えば、操作部43は、管理対象者と管理対象者についての線量管理期間とをユーザによる入力機器を介した指示に従って指定する。管理対象者は、スケジュール記憶部35において術式のスケジュール管理がなれされている複数の医療従事者の中から指定される。線量管理期間は、線量決定部44による被曝線量の決定対象期間である。線量管理期間は、線量決定処理時後の未来の期間と線量決定処理時前の過去の期間との両方を含むものとする。未来期間においては、管理対象者の予測被曝線量が決定される。過去期間においては、管理対象者の実測被曝線量が決定される。なお、入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0016】
線量決定部44は、指定された管理対象者の線量管理期間における被曝線量を決定する。具体的には、線量決定部44は、予測線量決定部441と実測線量決定部442とを有している。予測線量決定部441は、管理対象者と線量管理期間(未来期間)とから、標準線量記憶部34とスケジュール記憶部35とを利用して、未来期間における管理対象者の予測被曝線量を決定する。実測線量決定部442は、線量管理期間(過去期間)における管理対象者の実測被曝線量を、積算線量記憶部33を利用して決定する。
【0017】
表示部45は、種々の情報や操作画面等を表示機器に表示する。具体的には、表示部45は、線量決定部44により決定された予測被曝線量や実測被曝線量を表示機器に所定の表示レイアウトで表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0018】
記憶部46は、HIS/RIS装置30から入出力部42を介して入力された種々のデータを記憶する。また、記憶部46は、被曝線量管理プログラムを記憶している。
【0019】
制御部41は、線量決定装置40の中枢として機能する。制御部41は、記憶部46から被曝線量管理プログラムを読み出して、読み出された被曝線量管理プログラムに従って線量決定装置40内の各部を制御する。被曝線量管理プログラムの実行により、管理対象者の線量管理期間における予測被曝線量が決定され、線量決定装置40のユーザに報知される。
【0020】
以下、本実施形態に係る被曝線量管理システム1の動作例について説明する。
【0021】
図3は、制御部41の制御のもとに行われる被曝線量決定/報知処理の典型的な流れを示す図である。
【0022】
ユーザにより操作部43を介して被曝線量決定/報知処理の開始指示がなれることを契機として制御部41は、記憶部46から被曝線量管理プログラムを読み出して、被曝線量管理プログラムを実行することにより被曝線量決定/報知処理を開始する。
【0023】
被曝線量決定/報知処理において、まず、制御部41は、ユーザにより操作部43を介して管理対象者と線量管理期間とが指定されることを待機する(ステップSA1)。管理対象者は、医療従事者名の入力により指定される。線量管理期間は、例えば、月単位や週単位、日単位で指定される。線量管理期間のうちの未来期間と過去期間とは、予め定められたルールに従って、線量管理期間から自動的に割り振られる。例えば、線量管理期間が1ヶ月の場合、1週間分は未来期間に設定され、残りの3週間分は過去期間に設定されるとよい。なお、未来期間と過去期間とを操作部43を介して個別に指定してもよい。
【0024】
ステップSA1が行われると制御部41は、線量決定部44の予測線量決定部441に予測被曝線量の決定処理を行わせる(ステップSA2)。ステップSA2において予測線量決定部441は、線量管理期間において管理対象者が参加する予定の全ての術式をスケジュール記憶部35の中から特定し、特定された全ての術式にそれぞれ関連付けられた全ての標準被曝線量を標準線量記憶部34の中から特定し、特定された全ての標準被曝線量に基づいて予測被曝線量を決定する。以下にステップSA2の処理を具体的に説明する。
【0025】
図4は、予測線量決定部441による予測被曝線量の決定処理の典型的な流れを示す図である。図4に示すように、予測線量決定部441は、管理対象者の術式のスケジュールから、未来期間において管理対象者が参加する予定の全ての術式を特定する(ステップSA21)。具体的には、まず、制御部41による制御に従って入出力部42は、HIS/RIS装置30のスケジュール記憶部35から管理対象者のスケジュールのデータをネットワークを介して受信する。受信されたスケジュールのデータは、制御部41を介して予測線量決定部441に供給される。予測線量決定部441は、供給されたスケジュールから未来期間において管理対象者が参加する予定の全ての術式を特定する。より詳細には、未来期間に含まれる検査日時を検索キーとしてスケジュールを検索し、検索キーに対応付けられた術式の種類をカウントする。これにより未来期間において管理対象者が参加する予定の術式の種類と回数とが特定される。例えば、「現時点から1週間以内において術式Aが3回、術式Bが2回行われる」というような情報が特定される。
【0026】
なお、管理対象者のスケジュールのデータは、予め記憶部46に記憶されていてもよい。この場合、ステップSA21において、制御部41により記憶部46から管理対象者のスケジュールのデータが予測線量決定部441に供給される。予測線量決定部441は、このスケジュールを上述のように利用して術式を特定する。
【0027】
ステップSA21が行われると予測線量決定部441は、標準被曝線量テーブルから、ステップSA21において特定された術式の種類の標準被曝線量を特定する(ステップSA22)。具体的には、まず、制御部41による制御に従って入出力部42は、HIS/RIS装置30の標準線量記憶部34から標準被曝線量テーブルのデータをネットワークを介して受信する。受信された標準被曝線量テーブルのデータは、制御部41を介して予測線量決定部441に供給される。予測線量決定部441は、ステップSA21において特定された術式の種類を検索キーとして標準被曝線量テーブルを検索し、検索キーに標準被曝線量テーブル上で関連付けられた標準被曝線量を特定する。例えば、「術式Aの標準被曝線量は10mSv、術式Bの標準被曝線量は5mSvである」というような情報が特定される。
【0028】
なお、標準被曝線量テーブルのデータは、予め記憶部46に記憶されていてもよい。この場合、ステップSA22において、制御部41により記憶部46から標準被曝線量テーブルのデータが予測線量決定部441に供給される。予測線量決定部441は、この標準被曝線量テーブルを上述のように利用して標準被曝線量を特定する。
【0029】
ステップSA22が行われると予測線量決定部441は、管理対象者の未来期間における予測被曝線量を決定する(ステップSA23)。より詳細には、予測線量決定部441は、術式の種類毎に、ステップSA22において特定された標準被曝線量を未来期間において予定されている回数分だけ加算する。これにより、術式の種類毎に標準被曝線量の加算値が計算される。計算された加算値が予測被曝線量として利用される。また、医療従事者の検査の参加時間や、医療従事者とX線診断装置10との間の距離に応じたパラメータを加算値に乗じることにより予測被曝線量を計算してもよい。
【0030】
ステップSA23が行われると予測線量決定部441による予測線量決定処理が終了する。
【0031】
また、ステップSA1が行われると制御部41は、ステップSA2と平行して、線量決定部44の実測線量決定部442に実測被曝線量の決定処理を行わせる(ステップSA3)。ステップSA3において実測線量決定部442は、ステップSA1において指定された管理対象者と線量管理期間とから、過去期間において管理対象者が実際に被曝した線量(実測被曝線量)を、積算線量記憶部33を利用して決定する。具体的には、まず、制御部41による制御に従って入出力部42は、HIS/RIS装置30の積算線量記憶部33から管理対象者に関する積算線量の一覧のデータをネットワークを介して受信する。受信された一覧のデータは、制御部41を介して実測線量決定部442に供給される。実測線量決定部442は、供給された一覧から過去期間における実測被曝線量を特定する。より詳細には、過去期間に含まれる検査日時を検索キーとして一覧を検索し、検索キーに対応付けられた積算線量を積算する。積算線量の積算値が実測被曝線量として算出される。
【0032】
ステップSA2及びSA3が行われると制御部41は、表示部45に表示処理を行わせる(ステップSA4)。ステップSA4において表示部45は、ステップSA2で決定された予測被曝線量とステップSA3で決定された実測被曝線量とを所定の表示レイアウトで表示する。
【0033】
図5は、予測被曝線量と実測被曝線量との表示レイアウトの一例を示す図である。なお図5において、線量管理期間は1ヶ月であり、未来期間は1週間、過去期間は3週間であるとする。予測被曝線量YSと実測被曝線量ZSとは、例えば、縦軸が線量値に規定され、横軸が線量管理期間の基準時間(換言すれば、線量決定処理が行われた時点)に規定された棒グラフで表示される。一つの基準時間における予測被曝線量と実測被曝線量との合計が1本の棒線で表されている。図5においては、基準時間が先週に関する棒線と今週に関する棒線とが示されている。すなわち、棒線B1の高さは、先週において線量決定部44により決定された予測被曝線量と実測被曝線量との合計を示しており、棒線B2の高さは、今週において線量決定部44により決定された予測被曝線量と実測被曝線量との合計を示している。
【0034】
図5に示すように、より詳細に被曝線量を検討するために、表示部45は、合計値を一定期間単位に分割して表示すると良い。例えば、図5の場合、過去期間の実測被曝線量ZSが1週間単位に区切られて示されている。具体的には、過去期間全体の実測被曝線量ZSは、基準時間から起算した今週の実測被曝線量ZS1、先週の実測被曝線量ZS2、及び先々週の実測被曝線量ZSに区切られている。なお、棒線B1の予測被曝線量YS及び棒線B2の実測被曝線量ZS1は、同一期間の被曝線量を表している。同様に、棒線B1の実測被曝線量ZS1及び棒線B2の実測被曝線量ZS2、棒線B1の実測被曝線量ZS2及び棒線B2の実測被曝線量ZS3は、同一期間の被曝線量を表している。
【0035】
図5に示すように、表示部45は、合計値を、予め設定された制限値とともに表示するとよい。制限値は、線量管理期間(図5において1ヶ月)において許容される被曝線量の上限値である。制限値は、線量管理期間に応じて予め定められている。制限値は、積算線量記憶部33に記憶されている積算線量に基づいて算出されてもよい。このように合計値と制限値とが表示されることにより、線量管理期間において管理対象者の被曝線量が制限値を越えているか否かを確認することができる。
【0036】
また、表示部45は、合計値の履歴を表示するとよい。例えば、合計値の履歴として、図5に示すように、先週の棒線B1と今週の棒線B2とが同一グラフ上で表示される。このように合計値の履歴を表示することにより、被曝低減効果を確認することができる。より詳細に被曝低減効果を確認するために、表示部45は、同一日時における予測被曝線量と実測被曝線量とを同一グラフ上に表示するとよい。例えば、図5に示すように、先週が基準時間の棒線B1における「来週の予測被曝線量YS」と今週が基準時間の棒線B2における「今週の実測被曝線量ZS1」とを同一グラフ上に表示することにより、今週における被曝低減効果の理解を促進することができる。
【0037】
ステップSA4が行われると制御部41は、被曝線量決定/報知処理を終了する。
【0038】
なお、ステップSA1においてさらに人体部位が指定されてもよい。人体部位は、胸や腹等の人体部位名の入力により指定される。人体部位が指定された場合、線量管理期間内の未来期間における管理対象者の指定部位(指定された人体部位)に関する予測被曝線量がステップSA2において決定され、過去期間における管理対象者の指定部位に関する実測被曝線量がステップSA3において決定される。そしてステップSA4において指定部位に関する予測被曝線量と実測被曝線量とが表示部45に表示される。
【0039】
上記のように本実施形態に係る被曝線量管理システム1は、これから予想される予測被曝線量を医療従事者等に報知することができる。従って、被曝線量管理システム1は、医療従事者の臨床参画計画の修正や被曝線量の低減対策へのフィードバック等により、被曝線量が制限値を越えてしまうことを未然に防止することができる。また、同一日時に関する予測被曝線量と実測被曝線量とが並べて表示されることにより、医療従事者等は、被曝低減効果を確認することができる。従って、被曝線量管理システム1は、医療従事者の被曝線量に対する意識を高めることにつながる。
【0040】
かくして本実施形態に係る被曝線量管理システム及び被曝線量管理プログラムは、医療従事者についての将来の予測被曝線量を報知することができる。
【0041】
(変形例)
本実施形態に係る被曝線量管理システム1は、各医療従事者について被曝線量を決定/報知するとした。変形例に係る被曝線量管理システム1は、医療施設全体について被曝線量を決定/報知する。以下、変形例に係る被曝線量管理システム1について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0042】
図6は、変形例に係る制御部41の制御のもとに行われる被曝線量決定/報知処理の典型的な流れを示す図である。
【0043】
ユーザにより操作部43を介して被曝線量決定/報知処理の開始指示がなれることを契機として制御部41は、記憶部46から被曝線量管理プログラムを読み出して、被曝線量管理プログラムを実行することにより被曝線量決定/報知処理を開始する。
【0044】
被曝線量決定/報知処理において、まず、制御部41は、ユーザにより操作部43を介して線量管理期間が指定されることを待機する(ステップSB1)。この際、ユーザは、管理対象が医療施設全体であることを操作部43を介して指定してもよい。
【0045】
ステップSB1が行われると制御部41は、線量決定部44の予測線量決定部441に予測被曝線量の決定処理を行わせる(ステップSB2)。ステップSB2において予測線量決定部441は、線量管理期間において全医療従事者が参加する予定の全ての術式をスケジュール記憶部35の中から特定し、特定された全ての術式にそれぞれ関連付けられた全ての標準被曝線量を標準線量記憶部34の中から特定し、特定された全ての標準被曝線量に基づいて医療施設全体の予測被曝線量を決定する。以下にステップSB2の処理を具体的に説明する。
【0046】
図7は、予測線量決定部441による予測被曝線量の決定処理の典型的な流れを示す図である。図7に示すように、予測線量決定部441は、医療施設に勤める全医療従事者の術式のスケジュールから、未来期間において全医療従事者が参加する予定の全ての術式を特定する(ステップSB21)。具体的には、予測線量決定部441は、スケジュールから未来期間において全医療従事者が参加する予定の全ての術式を特定する。より詳細には、未来期間に含まれる検査日時を検索キーとして全医療従事者のスケジュールを検索し、検索キーに対応付けられた術式の種類をカウントする。これにより未来期間において全医療従事者が参加する予定の術式の種類と回数とが特定される。
【0047】
ステップSB21が行われると予測線量決定部441は、標準被曝線量テーブルから、ステップSB21において特定された術式の種類の標準被曝線量を特定する(ステップSB22)。
【0048】
ステップSB22が行われると予測線量決定部441は、未来期間における医療施設全体の予測被曝線量を決定する(ステップSB23)。
【0049】
ステップSB23が行われると予測線量決定部441による予測線量決定処理が終了する。
【0050】
また、ステップSB1が行われると制御部41は、ステップSB2と平行して、線量決定部44の実測線量決定部442に実測被曝線量の決定処理を行わせる(ステップSB3)。ステップSB3において実測線量決定部442は、ステップSB1において指定された線量管理期間から、過去期間において全医療従事者が実際に被曝した線量(実測被曝線量)を、積算線量記憶部33を利用して決定する。具体的には、医療施設に勤める全医療従事者に関する積算線量の一覧から、過去期間における実測被曝線量の平均値を特定する。より詳細には、過去期間に含まれる検査日時を検索キーとして全医療従事者に関する一覧を検索し、検索キーに対応付けられた積算線量を積算する。次に、検査にかかわった医療従事者の延べ人数で積算線量を割ることにより積算線量の平均値を算出する。この値が医療施設全体の実測被曝線量の平均値として算出される。
【0051】
ステップSB2及びSB3が行われると制御部41は、表示部45に表示処理を行わせる(ステップSB4)。ステップSB4において表示部45は、ステップSB2で決定された予測被曝線量とステップSB3で決定された実測被曝線量とを所定の表示レイアウトで表示する。
【0052】
図8は、予測被曝線量と実測被曝線量との表示レイアウトの一例を示す図である。なお図8において、線量管理期間は1ヶ月であり、未来期間は1週間、過去期間は3週間であるとする。予測被曝線量YSと実測被曝線量(より詳細には、実測被曝線量の平均値)ZSとは、別々の棒線により表示される。過去期間の実測被曝線量ZSは、今週分の実測被曝線量ZS1、先週分の実測被曝線量ZS2、先々週分の実測被曝線量ZS3というように一週間毎に表示される。予測被曝線量YSは、上述のように、過去の実際の積算被曝線量に基づいて算出されている。従ってユーザは、実測被曝線量ZSと予測被曝線量YSとを比較することにより、被曝低減効果を確認することができる。また実測被曝線量ZSの履歴を確認することでユーザは、被曝低減効果の進捗を確認することができる。また、図8に示すように、表示部45は、予め設定された制限値とともに予測被曝線量YSや実測被曝線量ZSを表示するとよい。これによりユーザは、予測被曝線量YSや実測被曝線量ZSが制限値を越えてしまうか否かを確認することができる。
【0053】
ステップSB4が行われると制御部41は、被曝線量決定/報知処理を終了する。
【0054】
なお、ステップSB1においてさらに人体部位が指定されてもよい。人体部位が指定された場合、指定された線量管理期間内の未来期間における医療施設全体の指定部位(指定された人体部位)に関する予測被曝線量がステップSB2において決定され、過去期間における医療施設全体の指定部位に関する実測被曝線量がステップSB3において決定される。そしてステップSB4において指定部位に関する予測被曝線量と実測被曝線量とが表示部45に表示される。
【0055】
かくして本実施形態の変形例に係る被曝線量管理システム及び被曝線量管理プログラムは、医療施設全体についての将来の予測被曝線量を報知することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1…被爆線量管理システム、10…X線診断装置、11…処理部、12…高電圧発生装置、13…X線管装置、14…X線検出器、15…入出力部、20…線量計、21…検出部、22…入出力部、23…処理部、30…HIS/RIS装置、31…データ処理部、32…入出力部、33…積算線量記憶部、34…標準線量記憶部、35…スケジュール記憶部、40…線量決定装置、41…制御部、42…入出力部、43…操作部、44…線量決定部、45…表示部、46…記憶部、441…予測線量決定部、442…実測線量決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の術式の種類の各々に標準被曝線量を関連付けて記憶する標準線量記憶部と、
複数の医療従事者の各々の術式のスケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記複数の医療従事者のうちの管理対象者と前記管理対象者についての線量管理期間とをユーザからの指示に従って指定する指定部と、
前記管理対象者と前記線量管理期間とから、前記標準線量記憶部と前記スケジュール記憶部とを利用して、前記線量管理期間における前記管理対象者の予測被曝線量を決定する予測線量決定部と、
前記決定された予測被曝線量を表示する表示部と、
を具備する被曝線量管理システム。
【請求項2】
前記予測線量決定部は、前記線量管理期間において前記管理対象者が参加する予定の全ての術式を前記スケジュール記憶部の中から特定し、前記特定された全ての術式にそれぞれ関連付けられた全ての標準被曝線量を前記標準線量記憶部の中から特定し、前記特定された全ての標準被曝線量に基づいて前記予測被曝線量を決定する、請求項1記載の被曝線量管理システム。
【請求項3】
前記複数の医療従事者の各々の積算被曝線量を日付に関連付けて記憶する積算線量記憶部と、
前記線量管理期間のうちの過去期間における前記管理対象者の実測被曝線量を前記積算線量記憶部を利用して決定する実測線量決定部と、をさらに備え、
前記表示部は、前記決定された実測被曝線量を表示する、
請求項1記載の被曝線量管理システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記予測被曝線量と前記実測被曝線量とを表示する、請求項3記載の被曝線量管理システム。
【請求項5】
前記表示部は、前記予測被曝線量と前記実測被曝線量とを、予め定められた前記線量管理期間における制限値とともに表示する、請求項4記載の被曝線量管理システム。
【請求項6】
前記表示部は、前記予測被曝線量と前記実測被曝線量との履歴を表示する、請求項4記載の被曝線量管理システム。
【請求項7】
前記表示部は、前記実測被曝線量を一定期間単位に区切って表示する、請求項3記載の被曝線量管理システム。
【請求項8】
前記表示部は、前記過去期間の前記実測被曝線量と、過去に前記予測線量決定部により決定され、前記過去期間と同一日時の予測被曝線量とを表示する、請求項3記載の被曝線量管理システム。
【請求項9】
複数の術式の種類の各々に標準被曝線量を関連付けて記憶する標準線量記憶部と、
医療施設における術式のスケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記医療施設についての線量管理期間をユーザからの指示に従って指定する指定部と、
前記線量管理期間から、前記標準線量記憶部と前記スケジュール記憶部とを利用して、前記医療施設内の全医療従事者の前記線量管理期間における予測被曝線量を決定する予測線量決定部と、
前記決定された予測被曝線量を表示する表示部と、
を具備する被曝線量管理システム。
【請求項10】
前記予測線量決定部は、前記線量管理期間において前記全医療従事者が参加する予定の全ての術式を前記スケジュール記憶部の中から特定し、前記特定された全ての術式にそれぞれ関連付けられた全ての標準被曝線量を前記標準線量記憶部の中から特定し、前記特定された全ての標準被曝線量に基づいて前記予測被曝線量を決定する、請求項9記載の被曝線量管理システム。
【請求項11】
コンピュータに、
管理対象者と前記管理対象者の線量管理期間とをユーザからの指示に従って指定する機能と、
前記管理対象者と前記線量管理期間とから、複数の術式の種類の各々に標準被曝線量を関連付けて記憶する標準線量記憶部と複数の医療従事者の各々の術式のスケジュールを記憶するスケジュール記憶部とを利用して、前記管理対象者の前記線量管理期間における予測被曝線量を決定する機能と、
前記決定された予測被曝線量を表示する機能と、
を実現させる被曝線量管理プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
医療施設についての線量管理期間をユーザからの指示に従って指定する機能と、
前記線量管理期間から、複数の術式の種類の各々に標準被曝線量を関連付けて記憶する標準被曝線量記憶部と前記医療施設における術式のスケジュールを記憶するスケジュール記憶部とを利用して、前記医療施設内の全医療従事者の前記線量管理期間における予測被曝線量を決定する機能と、
前記決定された予測被曝線量を表示する機能と、
を実現させる被曝線量管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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