説明

被服の装飾構造

【課題】更に新たな美的外観を齎す被服の構造を提供する。
【解決手段】オーガンジーのような光透過性を有する装飾用生地4が被服20の表地3の表面の所要範囲に重ねて配置されている。これら装飾用生地4と表地3とは、縫い付けるなどして結合され、両者の間に所望数の閉鎖空間8が形成される。ここには、円形で平らなボタン9、その他所望の装飾部材が所望数封入される。装飾用生地4は光透過性がある。これを透過して各装飾部材9の姿が外側から視認される。これにより、新たな美的外観が生み出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被服の装飾構造に関し、詳しくは、被服について新たな美的外観を齎す被服の装飾構造に関する。
【背景技術】
【0002】
被服の装飾構造としては、従来、下記各特許文献に記載されたようなものがある。例えば、特許文献1では、和服の表面に形成された図柄の一部を成すかんざしの鎖などが、少なくともその一部が表面から離れて揺れ動けるように、和服表面に取着、吊下されている。
特許文献2では、衣服地の表面に装飾模様が施されて第一模様部とされ、この第一模様部が存する衣服地の上方に、透けて見える柔軟地が、衣服地と重合状に、且つ衣服地に密着せず浮いた状態となるように設けられ、この柔軟地に前記第一模様部の装飾模様と少なくとも一部が重なるように装飾模様が施されて第二模様部とされている。
【0003】
また、特許文献3では、高分子重合体より成る扁平率2以上の透明フィラメントで織物が構成され、これが、模様を有する衣服の少なくとも一部の模様部分に重ねて取付けられ、衣服の模様が透けて見えるようにされている。
また、特許文献4では、図柄で装飾された衣服及び服飾品において、液状の物質を封入した透明な袋が、この図柄の構成部分として固定されている。
【特許文献1】特開2000−290807号公報
【特許文献2】特開2001−159013号公報
【特許文献3】実願昭61−71581のマイクロフィルム(実開昭62−182922号)
【特許文献4】実開平6−22312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献の発明又は考案は、夫々、衣服に関し新たな美的外観を提供した。しかし、衣服には常に新しい美的外観が求められる。
本発明の目的は、上記事情に鑑みて、衣服に関し、更に新たである美的外観を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的達成のため、請求項1の発明では、光透過性を有する装飾用生地が被服の表地表面の所要範囲に重ねて配置され、該装飾用生地と前記表地とが結合手段で結合され、両者の間に所望数の閉鎖空間が形成されており、該閉鎖空間には、所望の装飾部材が所望数封入され、該各装飾部材の姿が前記装飾用生地を透過して外側から視認される。
また、請求項1を引用する請求項2の発明では、前記表地が紬であり、前記装飾用生地がオーガンジーとされている。
また、請求項1又は請求項2を引用する請求項3の発明では、前記閉鎖空間が菱形とされている。
また、請求項1乃至請求項3の何れかを引用する請求項4の発明では、前記装飾部材が円形の平坦なボタンとされている。
【発明の効果】
【0006】
装飾用部材は、装飾用生地を通して視認される。あからさまでなく、生地を通して見えるこの装飾部材の姿は、独特の雰囲気を醸し出す。これにより、従来に無い新たな美的外観が実現される。
装飾用部材は、着用者の動きに従い、上下左右に遊動する。これも、観者の目を引付け、新たな興趣を惹起する。
オーガンジーは、透ける素材として、特に良い雰囲気を有する。請求項2のようにこれを装飾部材として使用すれば、良好な美的外観が実現される。
所定の範囲を所望数の領域に区切る場合、その区切り方は、縦横、菱形、六角形その他、種々考えられる。この中で、菱形にしたときが最も安定感があると解される。縫製もし易い。請求項3のように閉鎖領域を菱形にすると、このような効果が期待できる。
円形の平坦なボタン、例えば、ブラウスやYシャツに使用されているボタンは、我々に馴染みのものである。請求項4に記載のように、これが装飾部材として使われていると、意外性があり、観者の目を引付ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の詳細を図示実施の形態例に基いて説明する。図1に実施の形態例の女性用上着20の正面を示す。図2に左右の前身頃1又は2の中央付近を拡大して示す。図3に、その断面を示す(図2X−X’矢視。ボタン9は破断していない。)。この上着20が請求項に言う被服の一例に当る。
上着20の表地3は紬である。図では用紙の地色で示される。紬は歳月を経ると独特の風合いを呈する。それ故、例えば羽織を解いて使用すると趣が生ずる。表地3の上には、所望の範囲に、オーガンジー4が重ねられている。図1では、縦横の細線で表現されている。図2には非表示である。このオーガンジー4が請求項に言う装飾用生地の一例に当る。オーガンジー4を表地3のどの範囲に重ねるかは任意である。デザインから見て好ましい範囲にする。ここでは、左右の前身頃の1,2のほぼ全部と、七分袖6の肩から肘辺り迄の部分に重ねられている(左右の前身頃1,2の掛け合わせ部分はオーガンジー4無し)。
【0008】
紬の表地3と、その上に重ねられたオーガンジー4とは、適宜大きさの菱形に区分され、その境目に合せて両者は縫い合わせられている(7)。縫い合わせ7は、図1では2点鎖線で示され、図2では千鳥の足跡風に示されている。この縫い合わせ7で、表地3とオーガンジー4とを、表と裏の壁とした、菱形の閉鎖空間8が形成される(図3)。この縫い合わせ7が請求項に言う結合の一例に当る。
閉鎖空間8には、円形で平らなボタン9が2個とか3個とか封入されている。ボタン9は縫い合わせの際、順次封入される。例えば閉鎖空間8の菱形の3辺が縫い付けられたあと、まだ縫い付けられていない1辺の開口から、閉鎖空間8となるべきその袋状部分に、夫々のボタン9が投入される。そのあと、その1辺が縫い付けられ、夫々の閉鎖空間8が形成される。
【0009】
閉鎖空間8に封入されたボタン9は、この中で自由に遊動する。図1では、上着20が水平に置かれて、このボタン9が各閉鎖空間8中に適宜分散した状態が示されている。封入されているボタン9は、ブラウスやYシャツに使用されているものである。このような身近なボタンを使うと、意外性があり観者の興味を引く。
なお、11は本来用途のボタンであり、左右の前身頃1,2を係止する。
【0010】
以下、変形例について述べる。装飾用生地はオーガンジーが最適であるが、例えばナイロンのメッシュ地であっても良い。レース、粗いガーゼ状、合成樹脂シートであっても構わない。シート状のものも請求項に言う生地に含まれるものとする。即ち、封入された装飾部材の姿が、その上から視認できるものであるなら種々の生地を利用し得る。
装飾部材の姿は完全に見えなくても良い。その姿が視認可能であれば良い。
装飾部材は、好みのもので良い。例えば、おはじきを薄くしたような形状のものでも良い。
【0011】
閉鎖空間の形状は任意である。形状の違うものを混在させても良い。縫い目が曲線であっても良い。閉鎖空間は完全に閉鎖されていなくても良い。装飾部材が当該閉鎖空間から脱出しなければ良い。それも完璧に防止されている必要はない。脱出できにくければ良い。自由に脱出できると、装飾部材が1箇所に集まる虞れがあり、それでは装飾の目的が達せられないからである。
表地と装飾用生地の結合は縫付け以外でも構わない。要は閉鎖空間が形成できれば良く、例えば布地用接着剤による接着でも構わない。生地の性質上可能なら融着でも構わない。
適用対象はワンピース、ツーピース、スカート、スラックスなどであっても良い。男性用の被服でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態例の女性用上着20を示す正面図。
【図2】実施の形態例の女性用上着20の左又は右の前身頃1又は2の中央付近を拡大して示す正面図。
【図3】図2のX−X’矢視で示す左又は右の前身頃の断面図。
【符号の説明】
【0013】
1…左前身頃
2…右前身頃
3…表地
4…オーガンジー
6…七分袖
7…縫い合わせ
8…閉鎖空間
9…ボタン(装飾用)
11…ボタン(本来用途)
20…女性用の上着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する装飾用生地が被服の表地表面の所要範囲に重ねて配置され、
該装飾用生地と前記表地とが結合手段で結合され、両者の間に所望数の閉鎖空間が形成され、
該閉鎖空間には、所望の装飾部材が所望数封入され、該各装飾部材の姿が前記装飾用生地を透過して外側から視認される
ことを特徴とする被服の装飾構造。
【請求項2】
前記表地が紬であり、前記装飾用生地がオーガンジーである
ことを特徴とする請求項1に記載の被服の装飾構造。
【請求項3】
前記閉鎖空間が菱形である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被服の装飾構造。
【請求項4】
前記装飾部材が円形の平坦なボタンである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の被服の装飾構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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