説明

被検体情報取得装置およびその制御方法

【課題】光音響撮影において、撮影指定領域を音響波探触子が走査する際の走査効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】被検体から伝播する音響波を受信して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、探触子と、被検体の保持部材と、探触子を保持部材に沿って第一の方向および第二の方向に移動させる走査手段と、被検体における特性情報を取得する指定領域を受け付ける領域指定手段と、指定領域の特性情報を取得するための走査軌道を少なくとも決定する情報処理手段とを有し、情報処理手段は、第一の方向を主走査方向として第二の方向を副走査方向とした場合の走査領域における走査軌道と、第二の方向を主走査方向として第一の方向を副走査方向とした場合の走査領域における走査軌道のうち、走査領域における走査時間が短くなるほうを走査軌道とする被検体情報取得装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体情報取得装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、光を使用して生体画像を撮影する技術に関して多くの提案がなされており、その中の1つに光音響撮影装置がある。光音響撮影装置は、特に皮膚がんや乳がんの診断での有用性が示されており、同診断で従来使用されてきた超音波診断装置、X線装置、MRI装置などに代わる医療機器としての期待が高まっている。可視光や近赤外光等の計測光を生体組織に照射すると、生体内部の光吸収物質、特に血液中のヘモグロビン等の物質が、計測光のエネルギーを吸収して瞬間的に膨張した結果、音響波が発生することが知られている。この現象を光音響効果といい、発生した音響波を光音響波とも呼ぶ。光音響撮影装置では、この光音響波を計測することで生体組織の情報を可視化する。このような光音響効果を利用した断層撮影の技術を光音響トモグラフィー(Photoacoustic Tomography:PAT)とも呼ぶ。この光音響撮影の技術により、光エネルギー吸収密度分布、即ち生体内の光吸収物質の密度分布を定量的に、また3次元的に計測することができる。
【0003】
一般に、乳腺科における乳がん診断では、触診や上述した複数のモダリティを使用した結果に基づいて、総合的に良悪性診断が行われる。また光音響撮影装置は、診断画像の撮像に光を用いることで無被爆、非侵襲での画像診断が可能なため、患者負担の点で大きな優位性を有しており、繰り返し診断することが難しいX線装置に代わり、乳がんのスクリーニングや早期診断での活用が期待される。
【0004】
乳がん撮影を行う光音響撮影装置では、保持板で被検体を保持しながら光源と音響波探触子を保持板に沿って走査して被検体の3次元の光音響波画像を得る。このときの撮影時間は、光音響波を取得するまでの時間を含んでいる。また、光音響波を取得するまでは、被検体を拘束し負担を強いる必要がある。この負担を軽減するため、診断のために必要な領域のみを撮影したいという要求がある。この要求を解決するため、ユーザが撮影する領域を指定できるだけでなく、ユーザが詳細に必要な領域を高分解能な狭領域として指定し、通常の画像で十分な領域を低分解能な広領域と指定して、低分解能画像に高解像画像を合成表示する技術がある。これにより、お互いの位置関係を容易かつ視覚的に認識できる。更には、位置姿勢検出器を搭載し、狭領域の走査と広領域の走査時の音響波探触子の位置及び姿勢を求め、狭領域を変更しても、低分解能画像に高解像画像を正しい位置に自動で合成できる技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−152346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来技術では、ユーザにより指定された撮影領域(撮影指定領域)を効率的に走査する走査軌道を算出する手段はなかった。そのため、音響波探触子を走査して光音響波を取得する光音響撮影装置の撮影において、撮影指定領域を効率的に走査して撮影することが課題となっている。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、光音響撮影において、撮影指定領域
を音響波探触子が走査する際の走査効率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体から伝播する音響波を受信して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、音響波を受信する探触子と、前記被検体を保持する保持部材と、前記探触子を、前記保持部材に沿って、第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に移動させる走査手段と、前記被検体における前記特性情報を取得するための領域である指定領域の情報を受け付ける領域指定手段と、前記指定領域の特性情報を取得するために必要な前記探触子の走査領域における走査軌道を少なくとも決定する情報処理手段と、を有し、前記情報処理手段は、前記第一の方向を、前記探触子が音響波を受信しつつ移動する方向である主走査方向とし、前記第二の方向を、前記探触子が音響波を受信しない副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、前記第二の方向を前記主走査方向として前記第一の方向を前記副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、のうち、前記走査領域における走査時間が短くなるほうの走査軌道を、前記探触子の走査軌道とすることを特徴とする被検体情報取得装置である。
【0009】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、保持部材によって保持された被検体から伝播する音響波を探触子により受信して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置の制御方法であって、走査手段が、前記探触子を、前記保持部材に沿って、第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に移動させる走査ステップと、領域指定手段が、前記被検体における前記特性情報を取得するための領域である指定領域の情報を受け付ける領域指定ステップと、情報処理手段が、前記指定領域の特性情報を取得するために必要な前記探触子の走査領域における走査軌道を少なくとも決定する情報処理ステップと、を有し、前記情報処理ステップでは、前記第一の方向を、前記探触子が音響波を受信しつつ移動する方向である主走査方向とし、前記第二の方向を、前記探触子が音響波を受信しない副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、前記第二の方向を前記主走査方向として前記第一の方向を前記副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、のうち、前記走査領域における走査時間が短くなるほうの走査軌道が、前記探触子の走査軌道とされることを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光音響撮影において、撮影指定領域を音響波探触子が走査する際の走査効率を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】光音響波撮影装置の構成を示す図。
【図2】X方向を主走査方向とした場合の探触子の走査軌道を示す図。
【図3】撮影指定領域内の探触子の走査軌道を示すフローチャート。
【図4】撮影指定領域内の探触子の走査軌道を示す図。
【図5】Y方向を主走査方向とした場合の探触子の走査軌道を示す図。
【図6】走査軌道を算出するフローチャート。
【図7】撮影指定領域の設定画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。本発明において、音響波とは、音波、超音波、光音響波、光超音波と呼ばれる弾性波を含み、受信器(探触子)は、被検体内を伝播した音響波を受信する。本発明の被検体情報取得装置とは、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体内の特性情報を取得する光音響
効果を利用した装置を含む。光音響効果を利用した装置の場合、取得される被検体内の特性情報とは、光照射によって生じた音響波の初期音圧や、あるいは、初期音圧から導かれる光エネルギー吸収密度や、吸収係数、組織を構成する物質の濃度等を反映した被検体情報を示す。物質の濃度とは、例えば、酸素飽和度やオキシ・デオキシヘモグロビン濃度などである。また、特性情報としては、数値データとしてではなく、被検体内の各位置の特性を示す分布情報として取得しても良い。つまり、吸収係数分布や酸素飽和度分布等の分布情報を画像データとして取得しても良い。
【0013】
以下の説明においては、被検体情報取得装置の代表例として、かかる光音響効果を利用した光音響撮影装置について説明する。
なお、本発明において撮影とは、被検体からの音響波を受信し、被検体の特性情報を3次元画像データ等の形式で取得することを示す。撮影領域とは、被検体内の特性情報を取得する領域であり、3次元画像等を生成する領域のことである。特に、ユーザにより撮影領域として指定された領域のことを、撮影指定領域とも呼ぶ。
【0014】
また、本発明の被検体情報取得装置は、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波を受信して、被検体内の特性情報を取得する超音波エコー技術を利用した装置であってもよい。この超音波エコー技術を利用した装置の場合、取得される特性情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。
【0015】
[実施形態]
本発明の光音響撮影装置を用いる実施形態を図に従って説明する。図1に示す通り、本実施形態の光音響撮影装置は、光音響波信号計測部100と光音響波情報処理部101から構成される。光音響波信号計測部100は、被検体を保持する保持板1001A、1001B、計測光を発生させる光源1002、発生した計測光を所望の形態にする光学装置1003を有する。光音響波信号計測部100はさらに、光照射により生じ、被検体を伝播する光音響波を検出する音響波探触子(以下は、探触子とも表記する)を含む検出装置1004、光源1002と光学装置1003と検出装置1004を制御する計測制御部1005を有する。
【0016】
また、光音響波情報処理部101は、ユーザによる撮影領域の指定を受け付ける撮影領域指定部1011、効率的に走査する走査軌道を算出する走査軌道算出部1012、撮影データから光音響波画像の生成を行う画像生成部1013を有する。光音響波情報処理部101はさらに、撮影領域指定部1011と走査軌道算出部1012と画像生成部1013を制御する情報処理制御部1014、光音響波画像等を表示する表示部1015を有する。
【0017】
図1において撮影対象の被検体1006は、これを両側から圧迫固定する保持板1001に固定される。保持部を成す保持板1001は、1001Aと1001Bの2枚1対で構成され、保持間隙と圧力を変更するために、図示しない保持機構によって保持位置を制御される。保持板1001Aと1001Bを区別する必要がない場合には、まとめて保持板1001と表記する。保持板1001で被検体を挟むことで装置に固定し、被検体1006が動くことによる計測誤差を低減できる。また、計測光の浸達深度に合わせて、被検体1006を光音響の計測に適した厚さに調整することができる。保持板1001は、計測光の光路上に位置するため、計測光に対して高い透過率を有すると同時に、特に保持板1001は、検出波装置1004内の計測部である探触子との音響整合性が高い部材であることが好ましい。例えば、超音波診断装置等で使用されているポリメチルペンテンなどの部材が使用される。保持板は、本発明の保持部材に相当する。
【0018】
被検体1006に照射される計測光は、光源1002にて発生される。本実施形態では
、光源1002は不図示の光源Aと光源Bの二つの光源から成る。光源Aと光源Bはそれぞれ異なる波長の光を発生する。光源1002は、一般的に、近赤外領域に中心波長を有するパルス発光が可能な個体レーザ(例えば、Yttrium−Aluminium−GarnetレーザやTitanium−Sapphireレーザ)が使用される。計測光の波長は、撮影対象とする被検体1006内の光吸収物質(例えばヘモグロビンやグルコース、コレステロールなど)に応じて、530nmから1300nmの間で選択される。例えば、撮影対象とする乳がん新生血管中のヘモグロビンは、一般的に600nm〜1000nmの光を吸収し、一方、生体を構成する水の光吸収体は830nm付近で極小となるため、750nm〜850nmで光吸収が相対的に大きくなる。また、ヘモグロビンの状態(酸素飽和度)により光の吸収率が変化するため、この変化を比較することで生体の機能的な変化も計測できる可能性がある。
【0019】
なお、本実施形態においては、2つの光源の例を示しているが、単一もしくは3つ以上の光源を用いても良い。また、光源は通常、照射周波数が決まっている。これは、所望の強度のパルス光を継続的に照射するために、設計値として定められるが、照射周波数は、単位時間に伝える光音響測定の回数に影響するため、照射周波数が高いものほど、好ましい。本実施形態においては、光源A、光源B共に、照射周波数を20Hzとする。なお、複数の波長の光を照射するために、複数の光源を用いずに、波長可変レーザを用いることも可能である。また、本発明においては、複数の波長の光を用いることに限定されず、単一の波長の光のみを用いる場合であっても適用できる。
【0020】
光源1002からの計測光を被検体1006に所望の形状で照射するための光学装置1003は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学系と、保持板に対して走査する走査機構から構成されている。光学系は、光源1002から発せられた計測光が被検体1006に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いても構わない。
【0021】
光源1002で発生させた計測光を、光学装置1003を介して被検体に照射すると、被検体内の光吸収体1007が光を吸収し、光音響波1008を放出する。この場合、光吸収体1007が音源に該当する。
【0022】
光吸収体1007で生じた光音響波1008を受信して電気信号に変換する検出装置1004は、探触子と探触子を保持版に対して走査する走査機構から構成される。探触子は、光音響波1008を検知し、電気信号に変換するものである。生体から発生する光音響波1008は、100KHzから100MHzの超音波である。そのため、検出装置1004には、上記の周波数帯を受信できる探触子が用いられる。圧電現象を用いたトランスデューサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量の変化を用いたトランスデューサなど光音響波を検知できるものであれば、どのような探触子を用いてもよい。本実施形態の探触子は、複数の受信素子が2次元的に配置されたものとする。このような2次元配列素子を用いることで、同時に複数の場所で光音響波を検出することができ、検出時間を短縮できるとともに、被検体の振動などの影響を低減できる。特に、本実施形態では、受信素子ピッチは縦横方向共に4mm間隔で受信素子配列は縦横方向共に20素子が配列されているものとする。また、本実施形態においては、探触子の前面において被検体1006を計測光で照射する。そのため、光学装置1003と検出装置1004を、被検体1006を挟んで対向する位置に配置する。そして、その位置関係を保つように、光学装置1003と検出装置1004を連動させた走査制御がなされる。
【0023】
計測制御部1005は、検出装置1004から得られた光音響波の電気信号を増幅し、アナログ信号(アナログの電気信号)からデジタル信号(デジタルの電気信号)に変換する。また、ノイズ低減のためのデジタル信号同士の積算処理や光源1002、光学装置1003、検出装置1004の制御を行う。また、不図示のインターフェースを介して、計
測制御部1005から、例えば情報処理制御部1014のような外部機器に光音響波信号(積算処理後のデジタル信号)を送信する。
積算処理は、被検体1006の同じ個所の計測を繰り返し行い、加算平均処理を行うことでシステムノイズを低減して、光音響波信号のS/N比を向上するために行われる。具体的な例を説明する。探触子が有する複数の受信素子(m個)のうちの一部のl個の受信素子(以下、第1〜第l番目の受信素子とする)が、異なる時刻に被検体に対して同じ走査位置で音響波を受信した際に、第1〜第l番目の受信素子が夫々出力する電気信号同士を積算する。ここでmとlは正の整数であり、l<mとする。この複数の電気信号の積算数(積算回数)によって、受信器の走査幅が決定する。走査幅が小さければ小さいほど、走査領域は重畳するので積算回数が増え、S/N比は向上することになる。
【0024】
光源1002の制御の内容としては、光源A、光源Bの選択、レーザの照射タイミング等がある。光学装置1003、検出装置1004の制御については、光学装置1003、検出装置1004を適切な位置に移動させる等がある。詳細は後述するが、被検体に対して光学装置や検出装置を2次元走査して各走査位置で計測を行うことで、小型の探触子でも広い撮影領域に必要な光音響波を取得できるようになる。例えば、乳房撮影ではフルブレストの光音響波画像の撮影が可能になる。
【0025】
光音響波情報処理部101は、光音響波信号計測部100から受信した光音響波信号を元にした光音響波画像の生成と表示、指定した撮影領域からの効率的な走査軌道の
算出を行う。光音響波情報処理部101としては、パソコンやワークステーション等の、高性能な演算処理機能やグラフィックス表示機能を備える装置を用いることができる。
【0026】
情報処理制御部1014は、信号計測部100と同等のインターフェース(不図示)を有し、撮影データや、光音響波情報処理部101の制御命令などの送受信を行う。
【0027】
受信した光音響波信号に基づいて、被検体の光学特性分布の情報を画像化して光音響波画像データを生成する画像生成部1013は、次のようなことを行うことができる。すなわち、生成した光音響波画像に対して、輝度の調整や歪補正などの各種補正処理を適用して、より好ましい情報を生成することもできる。ここで生成した光音響波画像は、表示部1015にて表示される。
【0028】
撮影領域指定部1011は、マウスなどの入力手段によって、ユーザからの撮影領域の指定を受け付けるインターフェースである。入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッドでもよい。撮影領域の指定については、被検体を圧迫保持する保持板に対して直交する方向に設置されたカメラ(不図示)によって撮影された画像を元に、撮影領域を指定できるようになっている。
【0029】
走査軌道算出部1012は、詳細は後述するが、指定された撮影領域を効率的に走査する走査軌道を算出する。走査軌道算出部1013にて算出された走査軌道は、情報処理制御部1014を介して計測制御部1005に送信される。
【0030】
以上の構成を有する光音響撮影装置において、光音響効果に基づいて撮影することで、被検体の光学特性分布を画像化し、光音響波画像を提示することができる。なお、図1では、光音響波情報処理部を別々のハードウェア構成としているが、それぞれが有する機能を集約して、一体とする構成でも構わない。また、一部の構成、例えば表示部を外部のハードウェアとして設けても良い。
【0031】
<撮影領域の指定と走査領域>
撮影領域の指定については、被検体を圧迫保持する保持板に対して略直交する方向に設
置されたカメラ(不図示)によって撮影された画像を元に、撮影領域を指定できるようになっている。保持板に直交する方向にカメラを設置できない場合は、画像補正によりユーザに見やすいような被検体の画像を合成しても良い。ユーザは、カメラ画像を参照しつつ、その内部である奥行き部分までを含めた3次元ボリュームデータが取得されることを想定して撮影領域を指定する。入力手段を経由した撮影領域の指定内容を装置が受信する。この撮影領域の3次元ボリュームデータを取得できるように、探触子は、保持板に沿って2次元的に走査することになる。これが走査領域となる。また、指定された領域を、カメラ画像の座標系から、装置座標系の走査領域に変換し、実物の被検体において対応する位置に探触子が走査されるように制御する。
【0032】
<撮影領域指定時の探触子走査>
次に、撮影領域を撮影領域指定部1011で指定した場合の、探触子走査について説明する。
【0033】
図2の概念図は、撮影領域を指定した場合の探触子の中心の走査軌道である。また、撮影を実施する方向を主走査方向、実施しない方向を副走査方向として、X方向を主走査方向とした場合を示してある。主走査方向に交差するY方向が副走査方向である。X方向は本発明の第一の方向に、Y方向は本発明の第二の方向に相当する。
【0034】
走査可能領域200は、走査面上の走査可能な最大領域を表し、走査指定領域201は、指定された撮影領域に対応する走査面上の走査領域を表している。探触子の走査は、探触子初期位置202から走査指定領域の初期位置203まで移動(矢印204)する。続いて、走査指定領域201の全領域を主走査方向205Aと副走査方向205Bに走査して光音響波計測を行う。ここで、詳細は後述するが、指定される撮影領域によっては、主走査方向と副走査方向が逆になる場合もある。続いて、走査終了位置206から音響波探触子初期位置202に移動(矢印207)する。
【0035】
<走査指定領域における走査軌道の詳細>
次に、走査指定領域内の探触子走査の詳細を説明する。
ここで、本実施形態では、一画素あたりの電気信号の積算回数は40回が設定されているものとする。本実施形態の場合は、探触子の素子数が縦横方向共に20素子、積算回数が40回設定なので、探触子を受信素子1素子分ずつ移動させて、1往路で20回積算が行える(1復路でも同様に20回積算が行える)。
【0036】
ここで、探触子を主走査方向に移動させて光音響測定される領域を、ストライプと定義する。本実施形態では、一度の光源からの発光によって光音響波が取得できるサイズが、探触子の全素子領域のサイズである。実際には、光音響波計測が行われる領域は、奥行き方向を含む三次元領域であるが、特に断りがない限りは、前記光音響波計測が行われる領域を、探触子の走査と平行な面で切り出した平面をストライプと表記する。
【0037】
光音響波計測の流れを示した図3のフローチャートを用いて、走査指定領域の探触子走査の詳細を説明する。
装置がユーザによる撮影領域の入力を受け付けて、探触子が走査指定領域初期位置203に移動後、光音響波計測が開始される。
【0038】
ステップS300では、次の計測ストライプが走査指定領域の最上部ストライプもしくは最下部ストライプ、即ち計測の最初もしくは最終ストライプであるかを判定する。
次の計測ストライプが最初もしくは最終ストライプであった場合(S300=Y)、探触子は対象ストライプを2往復する(ステップS301からS303を2回繰り返す)。ステップS302では、光源を光源Aに切り替えて1ストライプ(往路)の光音響波計測
が実施される。ステップS303では、光源を光源Bに切り替えて1ストライプ(復路)の光音響計測が実施される。ここで探触子が2往復するのは、本実施形態では光源A、光源B共に積算回数が40回に設定されており、1ストライプでの積算回数が、1往路または1復路でそれぞれ20回だからである。
【0039】
次に、ステップS304では、今計測したストライプが走査指定領域の最下部ストライプかを判定する。計測したストライプが最下部ストライプだった場合(S304=Y)、撮影指定領域の光音響波計測は終了となる。計測したストライプが最下部ストライプではなかった場合(S304=N)、即ち最上部ストライプだった場合は、ステップS305に進み、探触子を、副走査方向に探触子サイズの半分だけ移動させる。ここで、探触子サイズの半分だけ移動するのは、撮影指定領域のすべての画素において、できる限り探触子の様々な受信素子で計測を実施させるためである。本実施形態では、1回の副走査方向の移動距離を探触子サイズの半分としたが、例えば、探触子サイズと同じ距離や、探触子サイズの2/3倍の距離だけ移動させても良い。
【0040】
一方、本フローの開始後、計測ストライプが走査指定領域の最上部ストライプもしくは最下部ストライプではなかった場合は(S300=N)、ステップS306に進む。そして、光源を光源Aに切り替えて1ストライプ(往路)の光音響波計測が実施される(ステップS306)。続いて、光源を光源Bに切り替えて1ストライプ(復路)の光音響波計測が実施される(ステップS307)。続いて、探触子が副走査方向に探触子サイズの半分だけ移動される(ステップS305)。ここで、1ストライプ毎に探触子サイズ半分だけ移動させているので、最上部もしくは最下部ストライプを除いては、1往復で光源A、光源B共に積算回数が40回に達する。
【0041】
次に、図4を用いて、上述した走査軌道を概念的に詳述する。走査指定領域初期位置203から、最上部ストライプ400の往路において光源Aで光音響波信号計測を行い、最上部ストライプの復路401において光源Bで光音響波信号計測を行う。なお、ストライプの実際の高さは探触子初期位置203の高さ、すなわち探触子のY方向のサイズと一致するが、図4においては副走査方向において隣接するストライプ同士に重複部分があるため、その部分については後から走査したストライプを示している。
【0042】
続いて、2往復目を行う(矢印402)。続いて、2ストライプ目から、(最下部−1)ストライプ目まで(403)について、往路は光源A、復路は光源Bで光音響波信号計測を行い、1往復する(矢印404)。最下部ストライプ405においては、上述した最上部ストライプと同様の走査がなされる。ここで、最上部ストライプの下半分ストライプ、もしくは、少なくとも最下部ストライプの上半分ストライプは、積算回数が40回を超えるが、S/N比向上に繋がるので問題は無い。406が、積算回数が40回を超える領域である。
本実施形態では、以上のような装置構成、探触子走査をする装置を前提とする。
【0043】
次に、実際の走査軌道の算出について詳述する。
図5は、図2に対して、主走査方向をY方向にした場合の探触子の中心の走査軌道である。
本実施形態の走査軌道は、図2のようにX方向を主走査方向とした場合と、図5のようにY方向を主走査方向とした場合の後述する走査時間を比較し、短い方を採用する。ただし、走査軌道は、本実施形態で例示する軌道に限らず、例えば、渦巻状(螺旋状)を描くような軌道を用いてもよい。
【0044】
<光音響波取得時間と拘束時間及び走査時間の説明>
光音響撮影装置の正確な撮影には、体の一部を固定する等の方法で被検者を拘束する必
要がある。特に被検者の乳房の撮影においては、乳房を圧迫した状態で固定し、被検者を拘束する。被検者の拘束は、多くの場合苦痛を伴うため、測定開始から被検者が解放されるまでの時間が短縮されることは、被検者、および撮影を行う医師や技師に有用である。このような時間を拘束時間として、以下の説明を継続する。
【0045】
拘束時間は、測定開始後に被検者の拘束を行うか、測定開始前に拘束を行うかで撮影時間の算出方法が異なるが、本発明における拘束時間の算出は、いずれの方法を適用してもよい。即ち、測定開始後に被検者の乳房を自動的に圧迫して固定するような拘束処理を行う場合は、光音響波取得に要する時間に、拘束処理時間と解放処理時間に基づいて算出された時間を被検者の拘束時間とする。測定開始前に、医師や技師による手技と手動の装置走査で被検者の乳房の圧迫と固定が終了している場合には、光音響波取得に要する時間と解放処理時間に基づいて算出された時間を被検者の拘束時間とする。本実施形態においては、後者を例として説明する。
【0046】
また、光音響波取得に要する時間は、探触子が保持板に沿って移動している時間(以下
、走査時間と記載する)が大勢を占めている。よって、拘束時間は、走査時間と被検者を
解放する時間を足した時間に、おおむね相当する。ここで、被検者を解放する時間は、どのような走査軌道であっても、一般的に大差無い。以上から、本実施形態においては、走査軌道を算出する際に使用する時間は、走査時間のみとする。即ち、走査時間が短くなるように走査軌道を算出することで、被検者の拘束時間を短縮する。
【0047】
走査時間は、次の(1)〜(4)から成る。
(1)探触子初期位置202から走査指定領域初期位置203(もしくは503)までの単純移動する時間である走査指定領域初期位置移動時間Ta1(もしくはTb1)。
(2)走査指定領域の主走査方向205A(もしくは505A)の光音響波取得をしながら移動する時間である主走査方向移動時間Ta2(もしくはTb2)。
(3)走査指定領域の副走査方向205B(もしくは505B)の単純移動する時間である副走査方向移動時間Ta3(もしくはTb3)。
(4)走査終了位置206(もしくは506)から探触子初期位置202まで単純移動する時間である探触子初期位置移動時間Ta4(もしくはTb4)。
【0048】
<走査軌道の算出>
次に、図6のフローチャートに沿って走査軌道の算出について説明する。図6(a)が算出処理全体のフローを示している。図6におけるステップS601の処理の詳細が図6(b)、ステップS602の処理の詳細が図6(c)である。
【0049】
ステップS600では、ユーザが撮影領域指定部1011を介して指定した撮影領域を、装置が受信する。撮影領域指定の例を図7に示す。700は、ユーザが指定した撮影指定領域である。またこのとき、光音響測定の計測条件設定も可能である。例えば、積算回数設定ウィンドウ701において積算回数を設定することができる。
【0050】
ステップS601では、図2のようにX方向が主走査方向の場合の走査時間Taの算出を行う。この処理の詳細を図6(b)のフローを参照して説明する。
ステップS6010では、主走査方向の走査速度を算出する。音響波探触子のX方向の素子数をEnxa(個)、素子ピッチをEpitcha(mm)、光音響測定の積算回数をMn(回)、1回の副走査方向の移動距離を探触子サイズの1/2倍、レーザの光源数を2(個)、レーザ光源の発光周波数をLHz(Hz)とする。説明を簡便にするため、積算回数Mnが素子数Enxaの倍数であるものとする。このとき、音響波探触子およびレーザ光源の主走査方向の走査速度Vax(mm/sec)は次式(1)で、走査回数San(回)は次式(2)で算出される。

Vax = Epitcha×LHz …(1)
San = (Mn/Enxa)×2×(1/2) …(2)
【0051】
本実施形態の場合は、上述したように、探触子の素子数がX方向で20素子(Enxa=20)、積算回数が40回(Mn=40)なので、式(2)より走査回数San=2となる。よって、音響波探触子104を受信素子1素子分ずつ移動させて、一往復で40回の積算が行える。
また、一往復素子ピッチ4mm(Epitcha=4)、レーザ光源の発光周波数20Hz(LHz=20)なので、式(1)より、測定時の測定系の走査速度Vaxは80mm/secとなる。
上記のようにして求めた測定のための走査速度は、以降で説明する計測時間の算出で使用される。
【0052】
より複雑な条件では、積算回数が主走査方向の素子数Enxaより小さい場合や、Enxaより小さい値の倍数であった場合には、探触子移動一往復あたりの積算回数が小さくなる。この場合においては、探触子の移動量は、単位時間あたり、2画素以上ずらしながら走査できるので、走査速度の設定は高くなることがわかる。探触子の移動速度は、本実施形態で例示した方法に限らず、測定条件や、装置構成に依存して、走査速度を調整するために様々なアルゴリズムを適用することが予想される。
本実施形態における走査速度算出機能は、光音響波計測のための探触子移動速度を求めることが目的であるので、参照パラメータやアルゴリズムは、本実施形態で記述している方式に限らない。
【0053】
ステップS6011では、走査領域初期位置移動時間Ta1を算出する。探触子初期位置202の座標を(0,0)とし、走査指定領域初期位置203の座標を(Xa_1,Ya_1)、光音響計測時以外での探触子の走査速度をVxy(mm/sec)とする。このとき、走査領域初期位置移動時間Ta1は、次式(3)で表される。
【数1】

【0054】
ステップS6012では、主走査方向移動時間Ta2を算出する。ここで、副走査方向の移動距離を探触子サイズの1/2とした場合の、走査指定領域を網羅するストライプ数Naは、次式(4)で表される。なお、Yasは走査指定領域のY方向の長さ208、Enxbは音響波探触子のY方向の素子数、Epitchbは素子ピッチである。ここで求められたNaは、走査指定領域の主走査方向において、探触子が端から端まで移動する回数を表している。
【数2】

【0055】
よって、走査指定領域における主走査方向の総移動距離は、走査指定領域のX方向の長さ209をXasとすると、Xas×(Na+2)×Sanとなる。従って、主走査方向
時間Ta2は、次式(5)で表される。
【数3】

【0056】
ステップS6013では、副走査方向時間Ta3を算出する。副走査方向移動時間Ta3は次式(6)で表される。

Ta3=Yas/Vxy …(6)
【0057】
ステップS6014では、探触子初期位置移動時間Ta4を算出する。走査終了位置206を(Xa_2,Ya_2)とすると、探触子初期位置移動時間Ta4は、次式(7)で表される。
【数4】

【0058】
ステップS6015では、走査時間Taを算出する。走査時間Taは、次式(8)で表される。

Ta=Ta1+Ta2+Ta3+Ta4 …(8)
【0059】
ここで、走査時間算出における走査速度は、すべて一定として計算したが、初期加速等を考慮した、より厳密な走査速度を用いてもよい。走査時間算出に使用する走査速度は、本件で記述している方式に限らない。
【0060】
ステップS602では、図5のようにY方向が主走査方向の場合の走査時間Tbの算出を行う。図6(c)のフローに記載されているこの処理は、基本的には図6(b)の処理と同様に行われる。
ここで、各パラメータを以下の通りとする。また、ストライプ数Nbは式(9)で表される。
【0061】
音響波探触子のY方向の素子数 :Enxb
素子ピッチ :Epitchb(mm)
走査回数 :Sbn(回)
Sbn = (Mn/Enxb)×2×(1/2)
走査指定領域初期位置503 :(Xb_1,Yb_1)
走査指定領域のY方向の長さ208b :Ybs
走査指定領域のX方向の長さ209b :Xbs
ストライプ数 :Nb
【数5】


走査指定領域における主走査方向の総移動距離:Ybs×(Nb+1)×Sbn
走査終了位置506 :(Xb_2,Yb_2)
【0062】
すると、ステップS6020からステップS6025までに算出される主走査方向の走査速度Vbx(mm/sec)、Tb1、Tb2、Tb3、Tb4、Tbは、ステップS6010からステップS6015と同様、次式(10)〜式(15)で算出される。
Vbx=Epitchb×LHz …(10)
【数6】


Tb=Tb1+Tb2+Tb3+Tb4 …(15)
【0063】
ステップS603では、走査軌道を決定する。算出したTaとTbの比較を行い、走査時間の短い方を走査軌道とする。TaとTbが同一の場合は、XY方向のどちらを主走査方向とした走査軌道としても構わない。
【0064】
本実施形態においては、式(8)や式(15)に示すように、走査指定領域における移動時間だけでなく、走査指定領域初期位置移動時間Ta1(もしくはTb1)及び探触子初期位置移動時間Ta4(もしくはTb4)も含めて走査時間として算出した。そして、走査時間を短くするように走査軌道を決定した。しかしながら本発明においては、走査指定領域初期位置移動時間Ta1(もしくはTb1)及び探触子初期位置移動時間Ta4(もしくはTb4)は考慮せずに、走査軌道を決定してもよい。すなわち、走査指定領域における主走査方向移動時間Ta2(もしくはTb2)と副走査方向移動時間Ta3(もしくはTb3)とだけを走査時間として、走査軌道を決定してもよい。つまり、本発明においては、少なくとも走査指定領域における走査時間を考慮して、走査時間が短くなる走査軌道を、探触子の走査軌道として決定するとよい。
【0065】
本実施形態の装置は、ユーザにより指定された撮影指定領域に基づき、対応する走査領域を算出し、効率的な走査軌道を決定して、光音響撮影を行う装置である。走査軌道を効率化することにより、被検者を拘束する時間が減少するので、被検者の負担を軽減することが可能になる。
【0066】
かかる本実施形態の効果について、具体例を参照して説明する。
第1の具体例においては、各パラメータは次の通りである。走査領域サイズは、X方向の長さXas=100mm、Y方向の長さYas=40mmである。走査指定領域初期位置の座標は、(Xa_1,Ya_1)=(50,70)mmである。素子数は、X方向に20個(Enxa=20)、Y方向に20個(Enxb=20)である。素子ピッチは、X方向に1mm(Epitcha=1)、Y方向に1mm(Epitchb=1)である。積算回数は40回である。副走査方向への移動距離は、探触子サイズの1/2である。光源数は2個とする。光源の発光周波数は、LHz=2Hzである。光音響計測時以外での探触子の走査速度は、Vxy=50(mm/sec)である。
【0067】
このとき、式(1)〜式(8)より、X方向を主走査方向とした時の走査時間は、Ta=504.9secとなる。一方、式(9)〜式(15)より、Y方向を主走査方向とした時の走査時間は、Tb=565.7secとなる。よって、本発明を適用することによって、通常通りのX方向の測定を選択できる。その結果、測定に要する時間を短縮し、被検者の負担を軽減できる。
【0068】
第2の具体例においては、各パラメータは次のとおりである。走査領域サイズは、X方向の長さXas=100mm、Y方向の長さYas=41mmである。その他の条件は第1の具体例と同様とする。
このとき、式(1)〜式(8)より、X方向を主走査方向とした時の走査時間は、Ta=605.0secとなる。一方、式(9)〜式(15)より、Y方向を主走査方向とした時の走査時間は、Tb=572.7secとなる。よって、本発明を適用することによって、通常のX方向ではなく、Y方向を走査方向とした測定を選択することが可能になる。その結果、測定に要する時間を短縮し、被検者の負担を軽減できる。
【0069】
第3の具体例においては、各パラメータは次のとおりである。走査領域サイズは、X方向の長さXas=100mm、Y方向の長さYas=50mmである。走査指定領域初期位置の座標は、(Xa_1,Ya_1)=(50,65)mmである。素子数は、X方向に20個(Enxa=20)、Y方向に10個(Enxb=10)である。その他の条件は第1の具体例と同様とする。
このとき、式(1)〜式(8)より、X方向を主走査方向とした時の走査時間は、Ta=1105.1secとなる。一方、式(9)〜式(15)より、Y方向を主走査方向とした時の走査時間は、Tb=985.8secとなる。よって、本発明を適用することによって、通常のX方向ではなく、Y方向を走査方向とした測定を選択することが可能になる。その結果、測定に要する時間を短縮し、被検者の負担を軽減できる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
100:光音響波信号計測部、1001:保持板、1004:検出器、1005:計測制御部、101:光音響波情報処理部、1011:撮影領域指定部、1012:走査軌道算出部、1014:情報処理制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から伝播する音響波を受信して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
音響波を受信する探触子と、
前記被検体を保持する保持部材と、
前記探触子を、前記保持部材に沿って、第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に移動させる走査手段と、
前記被検体における前記特性情報を取得するための領域である指定領域の情報を受け付ける領域指定手段と、
前記指定領域の特性情報を取得するために必要な前記探触子の走査領域における走査軌道を少なくとも決定する情報処理手段と、
を有し、
前記情報処理手段は、前記第一の方向を、前記探触子が音響波を受信しつつ移動する方向である主走査方向とし、前記第二の方向を、前記探触子が音響波を受信しない副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、前記第二の方向を前記主走査方向として前記第一の方向を前記副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、のうち、前記走査領域における走査時間が短くなるほうの走査軌道を、前記探触子の走査軌道とする
ことを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記探触子は、前記音響波を受信し電気信号にそれぞれ変換するm個の受信素子を有し(mは正の整数)、
前記情報処理手段は、前記m個の受信素子のうちの一部のl個の受信素子(lは正の整数であり、l<m)が前記被検体に対して同じ走査位置で音響波を受信した際に前記l個の受信素子からそれぞれ出力される複数の電気信号同士を積算する積算回数を用いて、前記走査領域における走査時間を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
被検体から伝播する音響波とは、光を照射された被検体から発生する光音響波である
ことを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記情報処理手段は、
前記主走査方向における走査速度と前記副走査方向における走査速度とを、前記受信素子の素子ピッチと前記積算回数と前記光の照射周波数とを用いて算出し、
算出された主走査方向および副走査方向における走査速度に基づいて、前記走査領域における走査時間を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
保持部材によって保持された被検体から伝播する音響波を探触子により受信して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置の制御方法であって、
走査手段が、前記探触子を、前記保持部材に沿って、第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に移動させる走査ステップと、
領域指定手段が、前記被検体における前記特性情報を取得するための領域である指定領域の情報を受け付ける領域指定ステップと、
情報処理手段が、前記指定領域の特性情報を取得するために必要な前記探触子の走査領域における走査軌道を少なくとも決定する情報処理ステップと、
を有し、
前記情報処理ステップでは、前記第一の方向を、前記探触子が音響波を受信しつつ移動する方向である主走査方向とし、前記第二の方向を、前記探触子が音響波を受信しない副
走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、前記第二の方向を前記主走査方向として前記第一の方向を前記副走査方向とした場合の前記走査領域における走査軌道と、のうち、前記走査領域における走査時間が短くなるほうの走査軌道が、前記探触子の走査軌道とされる
ことを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94539(P2013−94539A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242272(P2011−242272)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】