被検体発光経時変化装置及び方法
【課題】被検体発光に経時変化を与えられる被検体発光利用手法を提案する。
【解決手段】流路母材上に形成した流路に複数個の被検体20,22をめいめい通し、励起装置10を稼働させて個々の流路区画12,14内で励起光16,18を浴びせる。そのスペクトラムは、波長、強度双方共、励起光16,18に発光24,26を引き起こす励起エネルギ域内ノンバイナリスペクトラムとする。また、同じ励起エネルギ域内の別々の小範囲で発光するよう、或いはその間の遷移が非干渉的になるよう、それら流路区画12,14のうち少なくとも2個の間で励起光16,18のスペクトラムを変える。こうして流路区画12,14単位で励起光16,18のスペクトラムを変化させると、被検体20,22についての情報を示す符号が、その発光24,26に流路内移動に伴う経時変化という形態で重畳する。
【解決手段】流路母材上に形成した流路に複数個の被検体20,22をめいめい通し、励起装置10を稼働させて個々の流路区画12,14内で励起光16,18を浴びせる。そのスペクトラムは、波長、強度双方共、励起光16,18に発光24,26を引き起こす励起エネルギ域内ノンバイナリスペクトラムとする。また、同じ励起エネルギ域内の別々の小範囲で発光するよう、或いはその間の遷移が非干渉的になるよう、それら流路区画12,14のうち少なくとも2個の間で励起光16,18のスペクトラムを変える。こうして流路区画12,14単位で励起光16,18のスペクトラムを変化させると、被検体20,22についての情報を示す符号が、その発光24,26に流路内移動に伴う経時変化という形態で重畳する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体発光を経時変化させる技術、例えばフォトセンサ等の部材に対して移動中の被検体による発光が経時変化するよう励起装置を動作させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体発光を利用する手法は幾つか知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、流路母材上に流路を形成しそれに沿って検知部材を設けている。その検知部材で被検体を検知し、得られた情報をプロセッサで処理することにより、被検体発光スペクトラムを知ることができる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第7358476号明細書
【特許文献2】米国特許第4573796号明細書
【特許文献3】米国特許第5324401号明細書(A)
【特許文献4】米国特許第5682038号明細書(A)
【特許文献5】米国特許第5880474号明細書(A)
【特許文献6】米国特許第6558945号明細書(B1)
【特許文献7】米国特許第7248361号明細書(B2)
【特許文献8】米国特許第7268868号明細書(B2)
【特許文献9】米国特許第7291824号明細書(B2)
【特許文献10】米国特許第5798222号明細書(A)
【特許文献11】米国特許第6816257号明細書(B2)
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0020915号明細書(A1)
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0038386号明細書(A1)
【特許文献14】米国特許出願公開第2004/0067167号明細書(A1)
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0128479号明細書(A1)
【特許文献16】米国特許出願公開第2007/0070347号明細書(A1)
【特許文献17】米国特許出願公開第2007/0145249号明細書(A1)
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0146704号明細書(A1)
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0147189号明細書(A1)
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0147728号明細書(A1)
【特許文献21】米国特許出願公開第2008/0013877号明細書(A1)
【特許文献22】国際公開第WO02/25269号パンフレット(A2)
【特許文献23】米国特許出願公開第2007/0148760号明細書
【非特許文献1】BASSLER, SCHMIDT, O., KIESEL, P.,JOHNSON, N. M., "Class Identification of Bio-Molecules Based on Multi-Color Native Fluorescence Spectroscopy", International Journal oh High Speed Electronics and Systems (IJHSES), Vol. 17, Issue 4, 2007, pp. 671-680
【非特許文献2】"Flow Cytometry", [online] Internet URL: http://www.wellscenter.iupui.edu/MMIA, printed on January 29, 2008, 4 pages
【非特許文献3】BHATTA, H., GOLDYS, E. M., and LEARMONTH, R., "Rapid Identification of Microorganisms by Intrinsic Fluorescence", Proc. of SPIE, Vol. 5699, 2005, pp. 9-18
【非特許文献4】SINGH, K., LIU, C., CAPJACK, C., ROZMUS, W., and BACKHOUSE, C. J., "Analysis of Cellular Structure by Light Scattering Measurements in a New Cytometer Design Based on a Liquid-Core Waveguide", IEE Peoc.-Nanobiotechnol., Vol. 151, No. 1, February 2004, pp. 10-16
【非特許文献5】LIANG, X. J., LIU, A. Q., ZHANG, X. M., YAP, P. H., AYI, T. C., and YOON, H. S., "Refractive Index Measurement of Single Living Cell Using a Biophotonic Chip for Cancer Diagnosis Applications", 9th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Science, October 9-13, 2005, pp. 464-466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被検体発光に経時変化を与えうる新たな被検体発光利用手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る方法及び装置では、例えば励起光を利用し被検体発光を経時変化させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
まず、本発明は、移動する被検体から情報を取得する上での諸問題を解決乃至緩和するのに有効である。例えば生物細胞、ウイルス、分子、サブ分子構造体(submolecular complex)等といった被検体を対象とするフローサイトメトリは、使用する装置(フローサイトメータ)が高価且つ大型であるため、臨床医療、水質管理、食品検査、鳥獣検診、脅威病原体警戒等での利用が不便乃至不可能であったが、本発明によればそうした制限を解消乃至緩和することができる。
【0007】
通常、フローサイトメータは、仕切りや十分な間隔で隔てられた複数個の検知区画内にそれぞれ励起光を合焦させる複数個の励起光源と、対応する検知区画で発生する光を解析することによってその検知区画内に存する被検体例えば細胞を含有色素や付着色素の違いに基づき検知及び弁別する部材、例えばビームスプリッタ、フィルタ、光電子増倍管(PMT)等とを、備えている。フローサイトメトリを使用する際には、例えば、染料入り溶液等を用い予め被検体に着色しておく。その色は被検体種別毎に変えておく。次いで、その被検体をフローサイトメータ内に搬入する。搬入された被検体は例えば最高数m/secの速度で検知区画に送られる。検知区画では、その被検体の含有色素又は付着色素が励起されるようレーザ光を合焦させる(例えば80μm×40μmの楕円合焦スポットを発生させる)。被検体はそのレーザ光で励起されて蛍光する。その蛍光を顕微鏡レンズで集光し、バンドパスフィルタで濾波し、そしてPMT又はアバランシェフォトダイオード(APD)で検知する。こうした仕組みでは、合焦スポット毎にレンズ、フィルタ、検知部材等が一組ずつ必要になり、またそうした光学装置の配置を精密に保つ必要があるので、フローサイトメータが高価で大きな装置になってしまう。また、短い検知区画内を被検体が高速通過するので、検知区画内被検体所在期間は例えば約10μsecといった短期間であり、従って被検体発光が弱いと検知することができない。即ち、フローサイトメータの信号対雑音(S/N)比が問題になる。これらの諸問題は、複数個の被検体の特性を調べて弁別しなければならないとき、例えばその個数乃至種数を数えたいときに先鋭化する。
【0008】
また、フローサイトメトリを使用した臨床診断では試薬例えば抗体、複合/接合色素等に多くの費用がかかる。この費用を抑えるには、マイクロ流路技術等を用い被検体所要量を抑えることでそうした消耗材の使用量を抑えるか、或いは被検体単位体積当たり消耗材使用量を抑えればよいが、量の抑制は蛍光強度の低下にもつながる。こうした板挟みを解消するには、弱発光細胞等も低コスト且つ確実に検知及び弁別できる手法があると都合がよい。
【0009】
そのため、単色空間変調光を励起光として用いることでS/N比を向上させ且つ被検体発光強度の検知限界を下げる手法も既に提案されている。この手法では、従前のものより長くした検知区画に沿って蛍光が空間変調されるため、従前のフローサイトメトリと同等以上の空間分解能、ひいては従前のフローサイトメータと同等以上の最大検知/計数速度を達成することができる。しかしながら、励起光の照射/非照射を切り替えるにせよ或いは複数個の光源を使用して単色干渉縞を発生させるにせよ、単色励起光を用いる手法には限界がある。また、波長感度(波長差弁別能)の低さやブリーチング(色落ち)による問題を回避するのが難しい。波長感度が低いと、フィルタ及びPMTを併用するフローサイトメータでは、その蛍光波長が大きく違った色素を用いざるを得なくなることが多い。
【0010】
これに対し、本発明の好適な実施形態では、被検体に発光を引き起こす光エネルギ域即ち励起エネルギ域に属する励起光を複数通り、その間の遷移が非干渉的になるよう1個又は複数個の励起光源によって発生させる。即ち、励起エネルギ域内で両極端に位置しない色を有する(例えば可視域の)光を複数通り使用し、或いはその励起エネルギ域内で両極端に位置しない強度の光(グレーレベル光等の中間強度光)を複数通り使用する。そのため、単色励起光の使用に起因する諸問題を発生させることなく空間分解能を高めることができる。中間強度光を使用する場合は単色でもよい。また、その色又は強度が異なる複数通りの励起光は、例えば、それらの照射先区画が指交差状、パッチワーク状等のパターンで並ぶよう照射する。これにより、波長感度やブリーチングにまつわる問題を抑えることが可能になり、ひいては細胞等の被検体の特性を励起光波長の違いに基づき調べそれら被検体を弁別することが可能になる。色の違いに基づき被検体を弁別できるということは被検体粒子のネイティブ蛍光スペクトラムを認識できるということであり、ひいては励起/吸収スペクトラムの違いによる蛍光スペクトラム及び強度の違いをおおよそ検知できるということである。ネイティブ蛍光スペクトラムの違いが非常に僅かであっても、検知できる可能性がある。
【0011】
図1に、本発明の一実施形態に係る被検体発光経時変調システムを示す。このシステムは、図中のA,B各照明光16,18を含め複数通りの照明光を個別に発生させ、それらを対応する区画12,14に照射する励起装置10を有している。各励起光16,18のスペクトラムは本システムで使用可能なエネルギ域に属しているが、励起光16・18間ではそのスペクトラムの波長、強度又はその双方が互いに異なっている。
【0012】
本願では、励起エネルギ域全域に亘りどの成分もほぼ最高強度を呈している状態を「白色」と呼び、その逆に最低強度を呈している状態即ち理想的には光が存在せず強度=0になっている状態を「黒色」と呼んでいる。「励起エネルギ域」とは本システムで使用できる光エネルギ域のことであり、「光エネルギ域」とはスペクトラムの波長及び強度の拡がりのことであり、「スペクトラム」とは広帯域光、RGB各色光その他の成分光で定義される組成又は成分自体のことである。また、そのスペクトラム強度が励起エネルギ域内のどの成分でも最高強度でない光、即ち白色と黒色の中間に位置する強度の光のことを「グレーレベル」光と呼び、そのスペクトラム波長が励起エネルギ域内の所定小範囲、例えば可視域、赤外域、紫外域、それらを組み合わせた波長域等の内部で分布している光のことを「有色」光と呼ぶ。本装置10で励起光16,18として使用するのはグレーレベル光や有色光、即ち白色でも黒色でもない「ノンバイナリ」(non-binary)なスペクトラム分布の光である。しかも、励起装置10からの励起光16,18は、例えば一方が赤色光で他方が緑色光といった色差や、一方がある強度及びスペクトラム分布形で他方がそれと異なる強度及び同様若しくは別様のスペクトラム分布形といった強度差や、それら色差及び強度差双方がある。そのスペクトラム分布にそうした差がある光を「異スペクトラム」(different spactra)な光と呼ぶ。図1では、こうした色差や強度差を表すために励起光照射区画12,14に別々のハッチングを付してある。励起光16,18は「ノンバイナリ異スペクトラム」光であり、それによる励起は「ノンバイナリ異スペクトラム」励起である。
【0013】
被検体20,22は励起装置10が稼働している状態で流路に通される。1本の流路内に相次いで通すこともあるし、スキャン動作によって互いに別々の流路内に通すこともある。また、被検体20,22が通される個々の流路の個々の部位・領域を流路区画と呼ぶ。この図では、流路区画のうち流路に沿って上流寄りにある区画12及び下流寄りにある区画14に、それぞれ励起光が照射されている。区画12,14に照射される励起光16,18は共にノンバイナリで互いに異スペクトラムな光であるので、被検体20,22は少なくとも二種類のノンバイナリ異スペクトラム光による励起を順繰りに受けることとなる。また、励起光16・18間の遷移は非干渉的遷移(non-interference-like transition)である。これは孤立干渉縞(single interference pattern)即ち孤立した単色の干渉縞をもたらさないタイプの遷移である。即ち、レーザその他の単色光源1個で干渉縞を発生させる手法やその他の手法で類似した干渉縞を発生させる手法では、こうした遷移は生じえない。ノンバイナリ励起光への遷移及びノンバイナリ励起光からの遷移は皆、またノンバイナリ励起光間の遷移も原則として、この種の遷移にする。非干渉的遷移に関するパラメタ例えば継続期間は適宜調整することができる。従って、非干渉的遷移を伴う形態で励起することで、白黒二値しか使用しない手法や孤立干渉縞が生じる手法ではまず以て達成しえないほど多様に、また有色光乃至グレーレベル光によるノンバイナリ励起だけでも達成しえないほど多様に、被検体発光を経時変化させることができる。また、トリガ信号に応じ励起光を経時変化させることによっても、被検体発光の経時変化を富ませることができる。これは非干渉的遷移の有無を問わない。
【0014】
図中に矢印線で示した通り、被検体20,22は少なくとも2個の区画12,14で少なくとも二種類の励起光16,18を浴び、輻射、反射その他の散乱、透過又はそれらの複合作用で光24,26を発する(同順)。上掲の通り非干渉的遷移を伴う少なくとも二種類のノンバイナリ異スペクトラム励起光16,18を照射しているので、この被検体発光24,26にはその発光元被検体についての情報即ち被検体情報が重畳することとなる(符号化)。白黒二値しか使用しない手法や孤立干渉縞が生じる手法で課されるような制約は課されないので、この符号化では発光24,26に様々な情報を重畳することができる。即ち、例えばフローサイトメトリ、バイオチップ読取、検体検知等のように一群の被検体を調べる用途や文書をスキャンして読み取る用途でこのシステムを使用すると、励起によって生じる発光24,26のスペクトラムは、励起エネルギ域内外の波長に拡がり且つ励起エネルギ域内の強度を有するスペクトラムとなる。被検体発光強度が励起エネルギ域内になるのは、励起光16,18として中間強度光、例えばグレーレベル光を使用しているためである。中間強度とは、装置10で使用するスペクトラム形状の強度域内で、その最高強度及び最低強度の間にあり、しかも最高及び最低のいずれの強度でもない強度のことである。グレーレベルとは、その強度域内を概ね均等に分割した強度値のことである。
【0015】
他方、その励起光16,18が照射される被検体20,22に対しては、他の事物から区別可能で、その事物についての情報をセンサで検知でき、更にその検知結果を出力可能なものであることが求められる。逆にいえば、それらの条件を満たせばどのようなものでも被検体20,22にしうる。そのため、液滴、小体積流体、単分子、凝集分子、分子クラスタ、細胞、ウイルス、バクテリア、長大なポリマ、サブ分子構造体、マイクロパーティクル、ナノパーティクル、検体搬送小粒子(例えば特定の化学物質等と結合しそれを搬送するビーズ)、エマルジョン、アレイ内物体、面上の異質部分(例えば着色スポット)等、様々な物体を被検体20,22にしうる。いずれにしろ、被検体20,22からの発光24,26を検知すると、被検体情報が符号化された経時変化波形、即ち時間軸に沿って変化を呈する波形が得られる。従って、被検体情報を得るにはその経時変化波形から情報を復号すればよい。
【0016】
その経時変化は、システムを構成する部材(符号化部材や光検知部材)やシステム内で発生する模様乃至縞(励起光照射パターンやフィルタリングパターン)に対する被検体20,22の相対運動を反映する。即ち、励起光16,18に対する被検体20,22の反応は励起光毎即ち区画毎に変わる。励起装置10では、これを利用し被検体発光24,26を経時変化させることで、即ち経時変化例えば強度変化という形態で、その発光24,26に被検体情報を符号化する。例えば、A励起光16に対しては強くB励起光18に対しては弱く反応する被検体をタイプ1、またA励起光16に対しては弱くB励起光18に対しては強く反応する被検体をタイプ2とする。更に、図示の通り被検体20をタイプ1、被検体22をタイプ2とする。この場合、被検体20による発光24は強→弱の順で、また被検体22による発光26は弱→強の順で、それぞれその強度が経時変化する。従って、同じ色だがその強度が違う二種類の光を励起光16,18として用いそれらの間の遷移を非干渉的にすることで、発光元被検体のタイプについての情報が発光24,26に経時変化の形態で符号化されることとなる。
【0017】
光検知手段30は各被検体発光24,26の一部を検知しその結果32を例えばアナログ又はディジタル電気信号の形態で出力する。発光24,26にその経時変化として重畳、符号化されていた情報もこの信号32に含まれている。処理手段34は、光検知手段30から得られる検知結果信号32に基づき処理を実行し、重畳している情報、例えば被検体20,24のタイプを示す信号を導出する(復号)。
【0018】
このように、本システムによれば、その色又は強度(例えばグレーレベル)が異なる複数通りの励起光16,18を、流路に沿って複数個並ぶ区画12,14のうち対応するものへと、それらの間に非干渉的遷移が生じるようそれぞれ照射しているので、被検体発光24,26の色又は強度(例えばグレーレベル)が区画毎に変化し、その被検体20,22の吸収、蛍光、干渉特性等の被検体情報が発光強度等の経時変化の形態で被検体発光24,26に重畳する(符号化される)こととなる。また、期間と期間の間の遷移が非干渉的になるよう励起光の色や強度を期間毎に変化させることによっても、同様の経時変化を発生させることができる。
【0019】
図2に本システムの一例構成100を示す。このシステム100は、移動する被検体110を発光させその特性等の被検体情報が符号化された光120を出射する符号化部材102と、それを検知し光検知結果信号130例えば電気信号を出力する光検知部材104と、その信号を受け取り処理することによって被検体特性情報を示す特性データを発生乃至出力する処理部材106とを備えている。このシステム100では、被検体110が矢印方向112に相対運動しつつ励起光114の照射を受けて発光する。例えば紫外光に反応する色素で被検体110がタグ付けされていれば、紫外光を励起光114として照射するとそのタグが蛍光する。また、被検体110が例えば細胞なら、紫外光等の励起光114を照射すると細胞構成要素にネイティブ蛍光即ち自発蛍光が生じる。その他、ケモ蛍光、バイオ蛍光、吸収、散乱等のように同時励起が必要ない仕組みで発光させることもできる。部材102は、そうした被検体発光116を集めて光120を出射する。この出射光120には、図中矩形で示した被検体特性情報122を初めとする被検体情報が符号化されている。即ち、励起光照射パターン、被検体発光フィルタリングパターン又はその組合せを利用して被検体情報が符号化されている。部材104はこの光122の一部を検知し、得られた光検知結果に基づき電気信号130を発生させる。この光検知結果信号130がもたらされると、部材106は、それに含まれている情報122に基づき、被検体特性に関するデータを生成乃至出力する。
【0020】
図3に、符号化機能を励起装置の工夫で実現する例150を示す。この装置150は発光元被検体152の流路沿いに設けられている。「x又はt」との表記から理解できる通り、流路上における被検体152の所在は位置xでも時刻tでも表せる。若干の誤差は生じるが、被検体152の位置変化状況例えば速度がわかれば、トリガ信号に基づき位置xと時刻tの対応関係を決めることもできる。トリガ信号は、例えば被検体検知によって発生させてもよいし、復号結果を示す信号に基づき発生させてもよい。また、被検体152の流路沿いには、複数個の励起光照射区画が数珠つながりに且つ周期的、ランダム又はチャープに並んでいる。「周期的」とはこの励起光照射区画列内で同じパターンが繰り返されることをいい、「ランダム」とはそのような周期性がないことをいい、「チャープ」とはランダムであるが時間軸沿いの変化が直線的で周期的ともいいうること、即ち周波数又は波長の直線的変化が周期的に繰り返されることをいう。
【0021】
この励起装置150は、図示の通り、K個の励起光源を第0励起光源154から第K−1励起光源156まで順に並べた構成を有している。これらの励起光源は流路周辺であればどこにでも配置できる。例えばx軸又はt軸沿いの同じ位置に励起光源を複数個設けてもよいし、x軸又はt軸に沿った励起光照射区画の拡がりが複数個の励起光源間で重なるようにしてもよい。また、流路に対する励起光源の向きを変えること、例えば部材154を図示の通り流路の逆側に移して第0’励起光源158とすることもできる。なお、図中の矢印線160,162,164は、順に、励起光源154,158,156から発せられる励起光である。
【0022】
そのうち第k1励起光源170は、図示の通り、1個又は複数個の干渉光源171によって互いに別種の励起光172及び174を発生させる構成である。励起光172は被検体152が区画176を通過しているときに、また励起光174は被検体152が区画178を通過しているときに、それぞれ発生させる。区画176に照射される励起光172のエネルギ及びスペクトラムは区画178に照射される励起光174のそれと異なっているので、区画176と区画178を併せ、その色又はグレーレベルが違う複数通りの励起光172,174からなる励起光照射パターンが形成されることとなる。他方、第k2励起光源180は、構造化光源182によってある空間パターン186で励起光を照射する構成である。図中の区画188は、パターン186に関わる複数個の区画のうち1個即ち励起光184が照射される区画である。
【0023】
そして、各励起光源154〜156に対しては、励起制御回路から信号線190を介し制御信号が供給されている。励起制御回路は、例えばトリガ検知器から供給される信号に応じ制御信号を発生させて励起光源に供給する。励起光源は、この信号を受けて定常状態の又は経時変化性のある励起光を発生させる。
【0024】
図4に、符号化機能をフィルタ装置で実現する例200を示す。この装置200は発光元被検体202の流路沿いにあり、複数個のフィルタアセンブリから構成されている。そのフィルタアセンブリは、それぞれ、例えば周期的マスク、ランダムマスク、チャープマスク、シャドウマスク等のフィルタから構成されている。「周期的」とはフィルタアセンブリ列内で同一パターンが複数回繰り返すことをいい、「ランダム」とはそのような周期性がないことをいい、「チャープ」とはランダムだが時間軸沿いの変化が直線的で周期的ともいいうること、即ち周波数又は波長の直線的変化が周期的に繰り返されることをいう。「シャドウマスク」は強度領域フィルタの一種で、注目しているエネルギ域内の光はそのまま透過させるが、それ以外のエネルギ域内の光は白、黒、別のグレーレベル等に強度を変えて出射する。
【0025】
このフィルタ装置200は、図示の通り、M個のフィルタアセンブリを第0フィルタアセンブリ204から第M−1フィルタアセンブリ206まで順に並べた構成を有している。これらのアセンブリは流路周辺ならどこにでも配置できる。例えば複数個のアセンブリをx軸又はt軸沿いの同じ位置に設けてもよいし、x軸又はt軸に沿った励起光照射区画の拡がりが複数個のアセンブリ間で重なるようにしてもよい。また、流路に対するアセンブリの向きを変えること、例えばアセンブリ204を図示の通り流路の逆側に移して第0’フィルタアセンブリ208とすることもできる。
【0026】
そのうち第m1フィルタアセンブリ210は複数個のフィルタ216,218を縦続配置した構成である。図中に矢印線で示す通り、被検体発光212はこのアセンブリ210への入射後その内部にあるフィルタ216,218を順繰りに通過し出射光214として出て行く。他方、第m2フィルタアセンブリ220は複数個のフィルタ226,228を流路沿いに配した構成である。図中に矢印線で示す通り、このアセンブリ220に入射する複数通りの被検体発光222は隣り合うフィルタ226,228のうち対応するものを通過しそれぞれ出射光224として出て行く。フィルタ226,228は共にバンドパスフィルタであり、被検体発光スペクトラムについての情報が得られるようその通過域を十分に違えてあるので、アセンブリ220内のこれらフィルタ216,218によって、ある空間パターン(フィルタリングパターン)にて光をフィルタリングすることができる。
【0027】
フィルタ226,228からの出射光224に符号化されている情報は、その光224をフォトセンサ等で検知しその結果を演算等に供することにより、復号、再生等することができる。また、フィルタ226,228を含めどのフィルタも、その長さを任意に設定することができる。例えば、x軸又はt軸に沿った被検体202の見かけ上の長さより短くしてもよいし、その逆に長くしてもよい。短くした場合は、その分解能に若干損失が生じるかもしれない。長くするとしても、そのフィルタアセンブリ例えば220を通過する間に被検体202が特性変化しない程度の長さに止める。
【0028】
こうした構成のフィルタ装置200は、その被検体202に流動性がある用途に限らず、その被検体202が一群となり他の構成部材に対して移動する用途でも、使用することができる。後者の例としては、紙シートその他の画像担持媒体をスキャンする用途がある。例えば、シート上に存する有色スポットを被検体202とし、装置200を通した被検体発光に基づきその被検体202の色、色変化乃至色差を精密に読み取る用途である。この用途では、シート上にある種々の有色スポット即ち被検体202のなかから、他のスポットと違う独特の色を有する基準位置マークを識別してその位置を検知し、検知したマーク位置を基準にその位置を定めてシートを画像検知、印刷等に供することができる。
【0029】
図5に、符号化機能を変位制御装置で実現する例250を示す。この装置250は移動及び発光する被検体252の流路沿いにあり変位制御部材を複数個有している。即ち、N個の変位制御部材254〜256を第0変位制御部材254から第N−1変位制御部材256まで順に並べた構成を有している。そのうち第n1変位制御部材260は輪郭整形部材262を有している。この部材262は流路を全周に亘り又は部分的に取り囲んでおり、その形状を変化させることで被検体252の移動速度等、その動き方を調整又は制御することができる。他方、第n2変位制御部材270は流路ずらし装置272を有している。これは、対応する流路区画の周壁を矢印線に沿って双方向にずらす装置である。トリガ検知器にてトリガ信号が発生すると、変位制御回路は制御信号を発生させ信号線276経由で装置272に供給し装置272を定常的に又は経時変化的に作動させる。
【0030】
図6に、符号化部材102等を制御するシステムの一例構成400を示す。このシステム400は、バス404等の回路を介しCPU(中央処理ユニット)402に種々の部材を接続した構成を有している。本システム400を構成する部材のうち外部I/O(入出力部)406は、システム400内のバス404に外部装置を接続するためのI/Oである。メモリ408も同じくバス404に接続されている。集積回路I/O410は、第0IC412から第P−1IC414まで合計P個あるIC(集積回路)をバス404に接続している。IC412〜414のうち第pIC416にはフォトセンサアレイ418が組み込まれている。そして、デバイスI/O420は、第0デバイス422から第Q−1デバイス424まで合計Q個あるデバイス、例えば検知、制御等のためのデバイスをバス404に接続している。デバイス422〜424に含まれるのは、例えば励起光源乃至装置、変位制御部材乃至装置、流路関連の諸装置等である。流路関連の装置とは、例えばポンプ、計測用電極、スマートゲート、流路開閉/分岐装置、バルブ、流量センサ、流体圧センサ等のことである。
【0031】
メモリ408内にはプログラムメモリ430がある。これは一群の命令を格納するメモリであるが、他種ソフトウェア、ハードウェア等で命令を保持しておくこともできる。メモリ430内に格納されているのは、例えば符号化ルーチン440、検知、読出及び結合ルーチン442、被検体弁別ルーチン444等のルーチンを構成する命令群である。そのうちルーチン440では、移動する被検体からの発光に情報を載せる(符号化する)。即ち、CPU402が諸センサから信号を受け取り、どのような流路操作が必要かを判別し、ポンプ、計測用電極、ゲート、バルブ等を稼働させることによって、被検体をシステム構成部材に対し相対移動させる。CPU402は、また、トリガ検知器からの信号に応じて制御信号を発生させ、励起光源、流路ずらし装置その他に送る。本ルーチン440では、こうして符号化を実行する。ルーチン442では、検知前読出を実行し、被検体情報及び検知周期を取得し、検知周期毎の検知結果読出及びアナログ調整を実行し、検知結果のディジタル調整及び被検体関連数値の保存を実行し、そして被検体関連数値同士を結合させて特性データを導出する。
【0032】
ルーチン444では、各被検体の生データ即ちルーチン442で得られたデータを使用する。そのため、図7に示すステップ470では、ルーチン440とルーチン442の連携で生データ例えば光検知結果を示す数値を取得する。ステップ472では、ステップ470で得られた生データに基づき、その被検体の特性データを取得する。例えば、その被検体がどのような種類の被検体かを比較判別し、その被検体が注目被検体即ち更なる解析が必要な被検体か否かを示す特性データを導出する。ステップ480では、その被検体が注目被検体か否かを判別する。注目被検体でない場合はステップ482に移行し、スマートゲートを開放する等してその被検体を流路から排出させる。注目被検体である場合はステップ484に移行し、スマートゲートを閉鎖する等してその被検体を下流に移送し更なる解析に供する。
【0033】
図8に、これらの解析を実行するアナライザの一例構成500を示す。このアナライザ500は流路母材502に載っており、その母材502には蛇状の流路504が形成されている。被検体506やそれを搬送する流体はこの流路504に通される。コールタカウンタ510及びミー散乱センサ512は粒子サイズ検知器である。被検体発光エンコーダ/フォトセンサ520は、例えば励起/変位制御部材522、フィルタ部材524及び光検知部材526から構成されている。部材530、532及び534のうち2個は蛍光検知部材、1個はラマン散乱検知部材である。そして、バルブ540の位置は被検体506についての種類弁別結果に応じて変わり、あるタイプの被検体506は矢印線542の方向にまた別のタイプの被検体506は矢印線544の方向にそれぞれ排出させる。
【0034】
図9に流路504への接合部の一例構造600を示す。この接合部600は、その間に隙間ができるよう2枚の透光部材を重ね、その隙間に二種類の主な部分、即ち流体が通る流路部分602とそれを囲む非流路部分604を設けた構造である。ポート608は流路部分602に流体を入れ又は流路部分602から流体を出すためのポートである。また、図中の励起光照射パターン610は二色からなる周期的パターンである。このパターン610は、区画612、614及び616に照射されるあるスペクトラムの励起光と、区画618及び620に照射される別のスペクトラムの励起光とによって、形成されている。更に、区画間遷移を非干渉的にするため、これら励起光照射区画間のスペクトラム差は、孤立干渉縞が生じないように設定されている。各励起光照射区画のx軸沿い寸法は互いにほぼ等しい。
【0035】
図10に、透光部材630,632及びその間にある非流路部分604の一部を示す。部材630,632の素材は水晶、ガラス、アクリル等であり、その厚みは数mm以下、例えば0.3mm、0.1mm或いはそれ未満である。部材630・632間隔は例えば約20〜50μmであり10μmサイズの生物細胞を通すことができる。非流路部分604はこの隙間を確保するための部分であり、SU−8等のフォトレジストやそれに類するポリマで形成されている。流路部分602は、例えば非流路部分形成素材をフォトリソグラフィでパターニングすることにより、非流路部分604によって囲まれるように形成する。また、流路部分602の輪郭に相当する位置に壁を設け、その壁の外側をエポキシで充填することでも、流路部分602並びにそれを周囲から封止する非流路部分604を形成することができる。励起光源634はその流路部分602内に励起光照射パターン610を発生させる。この図では光源634が透光部材632下面の上にあるが、これ以外の場所例えば透光部材630内に設けることもできる。被検体636は流路部分602内を相対移動しつつ励起光を浴び、そのパターン610に従い発光する。その被検体発光の一部は部材630内を伝搬してフォトセンサ638に達する。この図ではセンサ638が部材630上面の上にあるが、部材630上にスペーサを配してその上に載せるようにしてもよいし、その感光面が流路部分602に面するよう部材630内に配置してもよい。センサ638としては、例えば単体の大感光面フォトセンサ(PMT)を用いることも、また複数個の感光セルをアレイ化してその光検知出力(例えば強度出力)の加算値を使用することも可能である。
【0036】
被検体636からの発光は、パターン610をなす励起光の照射下をその被検体636が過ぎるにつれて、またその被検体636の蛍光、吸収乃至散乱特性に従い、経時的に変化していく。この変化をフォトセンサ638で捉えると、例えば図中の2個のグラフに示す如き被検体発光強度検知結果が得られる。これらのグラフのうち下側のグラフは、区画612、614及び616で照射される励起光、即ちある色乃至グレーレベルAを有する励起光に反応して発光するタイプの被検体における発光強度IexcAを表している。上側のグラフは、区画618及び620で照射される励起光、即ちまた別の色乃至グレーレベルBを有する励起光に反応して発光するタイプの被検体における発光強度IexcBを表している。曲線640から読み取れるように、A励起光に反応する方の被検体は区画612、614及び616で強くまた区画618及び620で弱く発光する。また、曲線642から読み取れるように、B励起光に反応する方の被検体は区画612、614及び616で弱くまた区画618及び620で強く発光する。なお、これらの曲線640及び642は互いにほぼ相補的であるが、励起光照射パターン610によってはいずれの被検体636も反応できないことがある。また、例えば区画612、614及び616で赤色、区画618及び620で緑色の励起光を、赤色光及び緑色光のいずれにも反応しうる被検体636に照射すると、どの区画でも被検体発光が検知されることとなる。
【0037】
フォトセンサ638はこうした被検体発光を捉え、被検体種別を示す信号を出力する。この信号から被検体種別を求めるには、例えば励起光照射パターン610に基づく計算を行えばよい。その被検体種別判別をあまり失敗しないで行えるようにするには、例えば、励起光照射パターン610を、そのデューティ比が0.5から十分に離れた値(0.1や0.9といった値)の周期的パターンにするか、或いは非周期的パターンにするとよい。非周期的パターンといっても様々であるが、なかには簡便な割に有用な追加情報を得やすいものがある。例えばその長手方向に沿って非周期性を呈するランダムパターンや、ランダムの定義を充足するが時間軸に沿った変化が直線的且つ周期的なパターン、即ちその周波数乃至波長の直線的変化が周期的に繰り返されるチャープパターンである。
【0038】
なお、流路部分602の端部は開口させてポート650にすることができる。このポート650は流路部分602に対する流体の出し入れに使用できる。また、接合部600を更に延ばしてその先に別のポートを設けること、例えば面652を中心に左右折り返して対称形状の構造にすることもできる。
【0039】
図11に、流路部分602に対する励起光源634の配置の別例を二種類示す。まず、図中左半部に示した例では、透光部材632の一部を流路に沿って取り除き、流路部分602の一壁面になるよう代わりに光源634を組み込んである。光源634は、非干渉的遷移を呈するよう区画682及び684内に互いに別々の色乃至グレーレベルの励起光を照射して励起光照射パターン680を発生させる。次に、図中右半部に示した例では、光源634を部材632の下面から離して配置してあり、また励起光を流路部分602上に照射できるようレンズ、レンズ系、マイクロレンズ、Selfoc(登録商標)アレイ等の光学部品690を配置してある。光源634は、非干渉的遷移が生じるよう区画694及び698と区画696に互いに別の色乃至グレーレベルの励起光を照射することによって、区画694、696及び698に亘る励起光照射パターン692を発生させる。
【0040】
図12に、フォトセンサ638配置の別例を二種類示す。まず、図中左半部に示した例では、流路部分602の一壁面になるよう流路に沿ってフォトセンサ638を組み込んである。センサ638は励起光照射下の被検体636による発光を検知する。その励起光は区画712、714及び716に亘るパターン710を形成している。そのパターン710は、隣接区画間で非干渉的遷移が生じるよう区画712及び716と区画714に互いに別の色乃至グレーレベルの励起光を照射することで形成されている。次に、図中右半部に示した例では、センサ638を透光部材630から離して配置してあり、また被検体636に発する光円錐がその感光面に達するようレンズ、レンズ系、マイクロレンズ、Selfoc(登録商標)アレイ等の光学部品720を配置してある。センサ638は励起光照射下の被検体636による発光を受光する。その励起光は区画724及び726に亘るパターン722を形成している。そのパターン722は、非干渉的遷移が生じるよう区画724と区画726に互いに別の色乃至グレーレベルの励起光を照射することで形成されている。
【0041】
図13に励起光源634の別例を示す。これは2個の光源750,752によって干渉光源を形成したものであり、例えば流体アナライザシステムで用いるのに適している。壁状部品740,742は流路の輪郭を画定する部材であり、その流路に流す被検体636は例えば生物細胞やウイルスである。被検体636は、層流を保ちまた流路中心でアンプル流を呈する高速流体によって、その流路内を運ばれていく。干渉光源を構成する個々の光源750,752は、いずれも狭帯域な平行光を出射する光源例えばレーザであり、干渉縞の重なりで区画712,714に亘る励起光照射パターン710が形成されるよう、その位置が互いにずらされている。また、透光部材632内には、空隙、金属層、分散ブラッグミラー構造等、相応の仕組みで光を反射させるミラー744,746が配置されている。光源750から発せられる励起光はある色Aの光であり、角度αで入射した後ミラー744によって反射される。他方、光源752から発せられる励起光は別の色Bの光であり、角度βで入射した後ミラー746によって反射される。ミラー744とミラー746の間に位置ずれΔがあるので、複合的な干渉縞が励起光照射区画712、714等々に発生する。光源750から発せられるノンバイナリ励起光が照射される区画と光源752から発せられるノンバイナリ励起光が照射される区画との間の遷移は、孤立干渉縞を発生させ得ない非干渉的遷移である。なお、ミラー744及び746の位置や傾斜角は互いに独立に調整することができる。
【0042】
また、励起光照射パターンは構造化光源、ホログラフィ等によっても発生させることができる。図14〜図18に示す例では、空間変調信号(発光)を被検体から取得するため、隣り合う励起光照射区画間で遷移が非干渉的になるよう複数の区画にノンバイナリ励起光を照射している。流路例えばマイクロ流路内の被検体にはそれらのノンバイナリ励起光が順繰りに照射されるので、その励起、吸収乃至散乱特性に応じ且つ空間変調即ち経時変調された信号が得られる。
【0043】
まず、図14に示す例では、壁状部品740,742によって形成された流路内に被検体636を通し、あるパターン762を有する励起光をその被検体636に浴びせている。その励起光を発する光源760は構造化多色光源、即ちその色が異なる複数の励起光をあるパターンで出射できる光源であり、発光ダイオード、レーザダイオード、単独レーザで励起される蛍光体等の能動又は受動光源複数個で実現できる。励起光照射パターン762のMFS(最小構造サイズ)を被検体636のオーダとすれば、その変調深さ乃至振幅が一定の経時変化信号を得ることができる。
【0044】
励起光照射パターン762のうち励起光照射区画764、766、768及び770上に存する部分はランダムな二色パターンであり、それらの区画間の遷移は非干渉的である。区画764〜770の長さは均一でなくまた周期性も持っていない。区画764及び768には例えば赤色の励起光を、また区画766及び770には緑色の励起光を照射する。区画770・774間の隙間772にはまた別様の非干渉的遷移を発生させる。例えば励起光源760からは励起光を照射しないようにするか、広帯域光、白色光等、相応の中間強度光即ち非有色励起光を光源760から照射するとよい。残る励起光照射区画のうち、区画774には青色の励起光を照射し、区画776には青色励起光に重ねて区画764のそれと同程度の強度の赤色励起光を照射し、区画778には区画764及び776のそれと同程度の強度の赤色励起光を照射し、区画780にはそれより強い赤色励起光を照射する。区画776で青色光と赤色光を重ねるのは、二種類の非干渉的遷移を引き起こすため、並びに二光子プロセス等で更なる情報を付加するためである。区画780で赤色を強くするのは区画778・780間にまた別種の非干渉的遷移を引き起こすためである。
【0045】
曲線790及び792は、被検体636を均一速度で通し又はテストパターンで校正したときにその被検体636から得られる信号(発光)の経時変化、即ちx軸又はt軸沿い位置による変化を表している。特に、曲線790は赤色光に対しては強く反応するが青色光や緑色光に対してはさほど強く反応しない被検体についてのものであり、曲線792は緑色光に対して強く反応する被検体についてのものである。励起光照射区画764、766、768及び770での反応を表す部分ではこれら曲線790及び792はほぼ相補的である。励起光照射パターン762がランダムパターンであるため、曲線790,792の形状の違いにあまり曖昧さがない。なお、信号の変調深さ乃至振幅とは、励起光照射区画764〜770に亘る曲線790・792間相違分のスペクトラムのことである。
【0046】
次に、図15〜図17に示す諸構成では、層流によって不均等変位その他の変化を発生させている。
【0047】
そのうち図15に示す構成では、色間の遷移が非干渉的になるよう二種類の有色光を指交差状に配したパターン610にて励起光を浴びながら、流路内を被検体636が進んでいく。壁状部品810・812間隔が直線的に先窄まりになっているので、曲線820として示す通り、被検体636の速度vは位置変化即ち時間経過につれ直線的に上昇していく。そのため、信号たる被検体発光には、曲線822に示す如く速度上昇につれ直線的に周期が短くなるという変化即ちチャープな経時変化が生じる。図中、IAは区画612、614及び616での強度を、またIBは区画618及び620を表している。曲線822から読み取れるように、遷移時間の直線的な短縮は流路の窄まり方よりも極端である。更に、非平面ミラーを用いれば、例えば図13の構成で生じる干渉縞をチャープ化することができる。
【0048】
図16に示す構成では、流路形状の工夫によって流れの方向を例えば周期的、チャープ的或いはランダムに変化させる手法を採っている。被検体が電荷を有しているのなら電界変動によっても流れの方向を変えることができる。図示の通り、その形状が正弦波様の壁状部品840及び842を互いに平行に配置しているので、流路の形状は正弦波状になる。区画844及び846に照射される励起光は、前者の色乃至グレーレベルがA、後者のそれがBというように互いに異なっているが、その区画844,846内では均質な光である。被検体636は区画844、846及びその隙間を縫うように正弦波状流路850に沿って進むので、励起光の遷移はやはり非干渉的になる。また、曲線860はその色乃至グレーレベルがAの励起光には強く反応する(強度IA1)がBの励起光に対する反応が弱い(強度IB1)被検体について、また曲線862はその色乃至グレーレベルがBの励起光には強く反応する(強度IB2)がAの励起光に対する反応が弱い(強度IA2)被検体について、被検体発光強度を表したものである。曲線860,862は相応に相補的であるが、流路850と隙間の交差部分では非干渉的遷移が生じるのでどちらも強度がほぼ0になる。
【0049】
図17に示す構成では、励起光が均質に照射される区画880及び882に対して、その外側にあり真っ直ぐで互いに平行な壁状部品740及び742を相対移動させている。即ち、制御回路894からの信号例えば電気信号によって流路ずらし装置890を制御し周期的又は非周期的に部品740及び742を動かすことで、被検体636と区画880及び882の間に矢印線892の如き双方向的な相対移動を発生させている。但し、区画880及び882に励起光を照射する励起光源を動かすようにしてもよいし、流路ずらし装置890以外の手段で部品740及び742と区画880及び882の間に相対移動を発生させるようにしてもよい。流体の流れに流速変化等の経時変化を与えてもよい。流路ずらし装置890はトリガ信号に応じて作動させればよい。
【0050】
曲線900として示されているのはy軸に沿った被検体636の動きである。この例では、被検体636が励起光照射区画880(縦軸上の「帯A」)と励起光照射区画882(同「帯B」)との間を行きつ戻りつするよう、また区画880・882間遷移が非干渉的になるよう、ランダムパターンに従い壁状部品740及び742を動かしている。区画880に照射される励起光の色乃至グレーレベルをA、区画882のそれをBとすると、その色乃至グレーレベルがAの励起光に対し強く反応する種類の被検体636の発光強度曲線は例えば902、Bの励起光に対し強く反応する種類の被検体636の発光強度曲線は例えば904となる。区画880・882間の隙間を被検体が通るとき即ち非干渉的遷移が生じている期間は、どちらの強度も急峻に0に低下している。
【0051】
そして、図18に示す構成では、ある単一の励起光照射区画920内で励起光の強度を経時変化させ、互いに励起光の状態が異なる複数の期間の間で非干渉的遷移を発生させている。そのため、励起光源634としては、その区画920における励起光スペクトラムを切り替えることができるもの、例えばある順序で切り替えていくものを使用している。その上流にあるトリガ検知器922は被検体通過に応じてトリガ信号を発生させ、制御回路894はそのトリガ信号に応じ光源634に制御信号を供給して切替動作を行わせる。
【0052】
区画920に照射される励起光は、曲線930に示す通り、例えば色A・B間で切り替えるとよい。図では切替間隔がランダムであるが、周期的な又はチャープ性のパターンで切り替えることもできる。別の色があると孤立干渉縞は発生しえないので、どの色間遷移も非干渉的遷移になる。なお、色A,Bは、そのスペクトラムがノンバイナリなものでもよいし、黒及び白でもよい。また、区画920に照射される励起光を、曲線932として示す通り、最高強度の0.3倍及び0.6倍等といった複数通りの中間強度間で切り替えてもよい。これらの中間強度を得るため、光源としてはその出射光強度を複数通りに高速切替可能なものを使用する。こうした中間強度間遷移もまた非干渉的である。更に、区画920内を通る被検体636の個数がいちどきに1個ずつであり、且つトリガ信号が十分に正確であれば、被検体発光の経時変化と被検体位置とを関連づけること、更には被検体の粒径等を求めてスケール選択や励起手順調整に利用することもできる。
【0053】
図19に、被検体についての情報、例えばその種別、位置、スペクトラム差等を導出し被検体を弁別する手順を示す。この手順では、まず、被検体発光の経時変化を表す符号化された信号をフォトセンサアレイ等の装置から取得する(ステップ970)。次に、ステップ970で得られた信号について相関処理を実行する(ステップ972)。この相関処理は、例えば符号化されている二種類の信号同士を比較し、或いは符号化されている信号を対応するテンプレートに照らすことで実行する。ここでいう「相関処理」には、単純な比較にとどまらず、経時変化性の関数を処理し時刻を変数とする類似度指標を求めることが可能な様々な数学的処理が包含される。スケーリングの有無乃至要否は問わない。枠974内に示した2本の曲線は相関処理結果の例である。そのうち上側の曲線は二種類の処理対象信号波形間に相関が存する場合の相関値を、下側の曲線は逆相関が存する場合の相関値を、それぞれ表している。上側の曲線では正の振幅Aのピークが発生している(時刻tp)のに対して、下側の曲線ではこれに近い振幅だが凹凸逆のピークが発生している(時刻tp’)。
【0054】
その次は、ステップ972で得られた個々の相関処理結果の時間導関数(d/dt)を表す経時変化波形又はそれを近似する経時変化波形を導出する(ステップ980)。相関が存している場合は枠982内に示すような微分波形が得られ、逆相関が存する場合は枠984内に示すような微分波形が得られる。前者の波形には正のピーク、ゼロクロス(時刻tp)及び負のピークがこの順で現れ、またそのピークトゥピーク値がAになるが、後者の波形には負のピーク、ゼロクロス(時刻tp’)及び正のピークがこの順で現れ、またそのピークトゥピーク値がA’になる。A’は枠974内の下側の曲線における凹ピークの振幅に等しい。次に、ステップ980における微分結果から被検体についての情報を抽出する(ステップ986)。例えば、相関の正逆、強弱等に基づき被検体種別を求め、ゼロクロスタイミングから被検体位置を求め、また相関時と逆相関時の微分波形のピークトゥピーク値に基づき輻射、吸収乃至散乱特性の違いを求める。なお、同一の被検体が別々の励起光に対して同一強度の被検体発光をもたらすこと等があるので、一種類のピークトゥピーク値では励起光間スペクトラム差を求めることができない。相関時ピークトゥピーク値と逆相関時ピークトゥピーク値の差は被検体発光強度差の増大につれて増大するので、それら二種類のピークトゥピーク値を併用すればスペクトラム差(特性差)を求めることができる。そして、ステップ988ではステップ986で得られた情報に基づき被検体を弁別する。
【0055】
以上の処理のうちステップ972、980及び986における処理は、図6に示したルーチン442、444又はその双方の一部として実行することができる。ステップ988における処理はルーチン444の一部として実行することができる。これらのステップにおける処理は、総じて、個々の被検体から得られた信号に対する個別操作として、或いは複数個の被検体から同時に又は相次いで得られた信号に対する操作として実行できる。後者の操作で信号発生元被検体毎に信号を分別するには、被検体間に僅かでも違いがあること、例えば位置や速度に違いがあることが必要になる。また、それらのステップにおける処理は、相応の回路を使用し、シリアル処理やパラレル処理を適宜組み合わせた形態で実行することができる。波形やそのテンプレートを記述するデータ構造やデータストリームは、ルーチン442及び444にて随時、例えば図6中のメモリ408に書き込みまたそのメモリ408から読み出すことができる。同様に、ステップ972、980、986及び988での処理における中間処理結果や最終処理結果も随時書込/読出が可能である。
【0056】
また、経時変化信号検知結果には、通常、テンプレートに従い発生させた符号の他に、雑音が重畳している。相関処理はそうした雑音、例えば交流電源周波数の雑音の影響を受けにくい。更に、時間軸スケーリング等の処理を経時変化信号に適用することによって、雑音の影響を更に受けにくくすることができる。例えば、計測前の時間軸スケールがわかっていない経時変化信号を相関処理に供するとする。実験結果によれば、時間軸スケーリング無しで処理できるS/N比の下限が0.5である場合、時間軸スケールを施せばそのS/N比が0.1の経時変化信号でも好適に相関処理できるようになる。なお、この実験では0.5m/secの最高速度で移動する粒子を被検体として用いたが、その速度が数m/sec程度以下、実効粒径が0.6μm以上、粒子間隔がその装置のMFS以上の粒子であれば、同様の結果が得られるであろう。この条件を満たす用途としては、例えば血中CD4抗原の全数計数がある。タグを個別に検知することも可能である。
【0057】
周期的パターンに従い変調された信号が経時変化信号検知結果に含まれ又は付随している場合には、当該周期変調信号からスケーリング係数を導出し、その係数に従いテンプレート波形を時間軸スケーリングし、そのテンプレートを用いて相関処理を行うことができる。この相関処理では、相関の正逆がよりはっきりわかる処理結果の他にスペクトラム情報も得られる。従って、大面積フォトセンサ等の検知器1個で複数色を同時に検知する構成を採ることもできる。その場合、1個の被検体に対し複数通りの励起光(指交差状、パッチワーク状等のパターンを形成する励起光)が概ね一斉に照射されることとなるので、吸収スペクトラムや励起スペクトラムの違いを非常に高精度で計測することができ、また数々の誤差を打ち消すことができる。打ち消せるのは、例えばブリーチング、混色、拡散等のような経時変化性の誤差や、温度誤差等のような励起誤差起因性の誤差や、光学部品の配置ずれによる誤差である。相関処理結果の細部構造から粒子位置を精密に求めることもできる。実験結果によれば、1.0μm未満の空間分解能にて前掲の通り個別のタグを検知することが可能であるので、検知時にタグとして使用する蛍光マーカ等、消耗材の使用量を抑えることができる。更に、ネイティブ蛍光も好適に検知できるので、いわゆるタグ等を使用しないエージェントレス検知も可能である。
【0058】
以上、図1〜図19を参照して説明した諸実施形態は、様々な検知分野に好適に適用することができる。例えば、蛍光式フローサイトメトリ、インピーダンス式フローサイトメトリ等、未知速度粒子のシグネチャを探すバイオディテクタに適用すれば、その流量が不均一で粒子速度がばらつくマイクロ流路でも利用可能なバイオディテクタが得られる。また、タグ付き細胞、粒子、タグ付きDNA等、蛍光を発する被検体の個数や異種蛍光被検体間の個数比率を調べる分野にも、上述の諸実施形態を好適に適用することができる。その種の分野では、タグ付きビーズ等の既知速度被検体を用い既知波形(従前の検知結果やテンプレートの波形)を校正するとなおよい。校正したテンプレート波形に経時変化波形検知結果を照らすようにすれば、そのテンプレート波形に製造起因誤差が含まれていてもそれに煩わされずに、未知被検体についての情報を得ることができる。また、S/N比を向上させるには、例えば個々の既知波形に時間軸スケーリングを施した上で、その既知波形に基づき経時変化波形検知結果を相関処理すればよい。更に、周期的パターンに基づく符号即ち周期変調分が経時変化波形検知結果に内在又は付随している場合には、その周期を表す数値例えば周波数を用いてスケーリング係数を求め、相関処理に先立ちその係数に基づく時間軸スケーリングを実行するとよい。そのようにすると、ちょうどよいスケーリング係数を力ずくで探す手法に比べて迅速に、相関処理を実行することができる。
【0059】
上述の諸実施形態は、生体物質間のネイティブ蛍光の違いを検知する分野にも、好適に適用することができる。生物細胞はほんの数種類の基本要素から形成されているのでそのネイティブ蛍光スペクトラムにほとんど違いがないのが普通だが、上述した通り励起光空間パターン等を使用する手法ならば、各被検体から得られるネイティブ蛍光信号に基づき被検体間の違いを弁別することも十分に可能である。これは、感度が高いので個々の細胞のネイティブ蛍光を検知でき、また弁別指標例えば輻射又は励起スペクトラム強度比を直接計測できるためである。加えて、上述の諸実施形態によれば、励起及び輻射分光の併用によって頑丈且つコンパクトなシステムを得ることができる。
【0060】
上述の諸実施形態は、更に、その発光スペクトラム等が異なる複数個の被検体を伴う文書又はバイオチップのスキャンにも、適用することができる。上述の諸実施形態は、また、未知速度で移動する被検体によって既知信号を反射させる各種低S/N比システム、例えば信号伝搬速度に近い速度で被検体が移動するソナー等のシステムにも、適用することができる。上述の諸実施形態は、とりわけ、被検体の位置、速度又は種類情報を精密に求めたい場合に有益である。
【0061】
そして、上述の諸実施形態ではその構成に特徴のあるフォトセンサやインピーダンス式センサを用いているが、それ以外にも種々のセンサを使用することができる。即ち、その経時変化から被検体情報を読み取れるパラメタは被検体発光強度以外にもあるので、そうしたパラメタを検知できるセンサであればどのようなセンサでも使用することができる。同様に、上述の諸実施形態では流路内を移動する移動体やスキャン中のセンサに対して移動する被検体から被検体情報を検知、取得しているが、上述したものとは別種の流路内を別様に移動する被検体から上述の諸実施形態で使用できる別種の情報を検知するようにしてもよい。例えば、空気流によって運ばれている粒子のネイティブ蛍光から情報を取得してもよいし、固定された検体粒子例えばタグ付き細胞、DNAスポット等をガラススライド越しに且つある種の励起光照射パターンでスキャンし、その被検体に発する蛍光を捉えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】被検体発光経時変調システムの概要を示す図である。
【図2】そのシステム構成の一例を示す図である。
【図3】励起装置の一例構成を示す図である。
【図4】フィルタ装置の一例構成を示す図である。
【図5】変位制御装置の一例構成を示す図である。
【図6】制御/処理システムの一例構成を示す図である。
【図7】被検体弁別ルーチンの一例を示す図である。
【図8】アナライザの一例構造を示す図である。
【図9】接合部の一例構造を示す図である。
【図10】その接合部の機能を示す図である。
【図11】励起部材の一例構成を示す図である。
【図12】フォトセンサの一例配置を示す図である。
【図13】励起部材の別例構成を示す図である。
【図14】励起部材の更なる別例構成を示す図である。
【図15】変位制御部材の一例構成を示す図である。
【図16】変位制御部材の別例構成を示す図である。
【図17】変位制御部材の更なる別例構成を示す図である。
【図18】励起光源の更なる別例構成を示す図である。
【図19】制御/処理手順及び各段階での波形を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体発光を経時変化させる技術、例えばフォトセンサ等の部材に対して移動中の被検体による発光が経時変化するよう励起装置を動作させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体発光を利用する手法は幾つか知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、流路母材上に流路を形成しそれに沿って検知部材を設けている。その検知部材で被検体を検知し、得られた情報をプロセッサで処理することにより、被検体発光スペクトラムを知ることができる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第7358476号明細書
【特許文献2】米国特許第4573796号明細書
【特許文献3】米国特許第5324401号明細書(A)
【特許文献4】米国特許第5682038号明細書(A)
【特許文献5】米国特許第5880474号明細書(A)
【特許文献6】米国特許第6558945号明細書(B1)
【特許文献7】米国特許第7248361号明細書(B2)
【特許文献8】米国特許第7268868号明細書(B2)
【特許文献9】米国特許第7291824号明細書(B2)
【特許文献10】米国特許第5798222号明細書(A)
【特許文献11】米国特許第6816257号明細書(B2)
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0020915号明細書(A1)
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0038386号明細書(A1)
【特許文献14】米国特許出願公開第2004/0067167号明細書(A1)
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0128479号明細書(A1)
【特許文献16】米国特許出願公開第2007/0070347号明細書(A1)
【特許文献17】米国特許出願公開第2007/0145249号明細書(A1)
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0146704号明細書(A1)
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0147189号明細書(A1)
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0147728号明細書(A1)
【特許文献21】米国特許出願公開第2008/0013877号明細書(A1)
【特許文献22】国際公開第WO02/25269号パンフレット(A2)
【特許文献23】米国特許出願公開第2007/0148760号明細書
【非特許文献1】BASSLER, SCHMIDT, O., KIESEL, P.,JOHNSON, N. M., "Class Identification of Bio-Molecules Based on Multi-Color Native Fluorescence Spectroscopy", International Journal oh High Speed Electronics and Systems (IJHSES), Vol. 17, Issue 4, 2007, pp. 671-680
【非特許文献2】"Flow Cytometry", [online] Internet URL: http://www.wellscenter.iupui.edu/MMIA, printed on January 29, 2008, 4 pages
【非特許文献3】BHATTA, H., GOLDYS, E. M., and LEARMONTH, R., "Rapid Identification of Microorganisms by Intrinsic Fluorescence", Proc. of SPIE, Vol. 5699, 2005, pp. 9-18
【非特許文献4】SINGH, K., LIU, C., CAPJACK, C., ROZMUS, W., and BACKHOUSE, C. J., "Analysis of Cellular Structure by Light Scattering Measurements in a New Cytometer Design Based on a Liquid-Core Waveguide", IEE Peoc.-Nanobiotechnol., Vol. 151, No. 1, February 2004, pp. 10-16
【非特許文献5】LIANG, X. J., LIU, A. Q., ZHANG, X. M., YAP, P. H., AYI, T. C., and YOON, H. S., "Refractive Index Measurement of Single Living Cell Using a Biophotonic Chip for Cancer Diagnosis Applications", 9th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Science, October 9-13, 2005, pp. 464-466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被検体発光に経時変化を与えうる新たな被検体発光利用手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る方法及び装置では、例えば励起光を利用し被検体発光を経時変化させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
まず、本発明は、移動する被検体から情報を取得する上での諸問題を解決乃至緩和するのに有効である。例えば生物細胞、ウイルス、分子、サブ分子構造体(submolecular complex)等といった被検体を対象とするフローサイトメトリは、使用する装置(フローサイトメータ)が高価且つ大型であるため、臨床医療、水質管理、食品検査、鳥獣検診、脅威病原体警戒等での利用が不便乃至不可能であったが、本発明によればそうした制限を解消乃至緩和することができる。
【0007】
通常、フローサイトメータは、仕切りや十分な間隔で隔てられた複数個の検知区画内にそれぞれ励起光を合焦させる複数個の励起光源と、対応する検知区画で発生する光を解析することによってその検知区画内に存する被検体例えば細胞を含有色素や付着色素の違いに基づき検知及び弁別する部材、例えばビームスプリッタ、フィルタ、光電子増倍管(PMT)等とを、備えている。フローサイトメトリを使用する際には、例えば、染料入り溶液等を用い予め被検体に着色しておく。その色は被検体種別毎に変えておく。次いで、その被検体をフローサイトメータ内に搬入する。搬入された被検体は例えば最高数m/secの速度で検知区画に送られる。検知区画では、その被検体の含有色素又は付着色素が励起されるようレーザ光を合焦させる(例えば80μm×40μmの楕円合焦スポットを発生させる)。被検体はそのレーザ光で励起されて蛍光する。その蛍光を顕微鏡レンズで集光し、バンドパスフィルタで濾波し、そしてPMT又はアバランシェフォトダイオード(APD)で検知する。こうした仕組みでは、合焦スポット毎にレンズ、フィルタ、検知部材等が一組ずつ必要になり、またそうした光学装置の配置を精密に保つ必要があるので、フローサイトメータが高価で大きな装置になってしまう。また、短い検知区画内を被検体が高速通過するので、検知区画内被検体所在期間は例えば約10μsecといった短期間であり、従って被検体発光が弱いと検知することができない。即ち、フローサイトメータの信号対雑音(S/N)比が問題になる。これらの諸問題は、複数個の被検体の特性を調べて弁別しなければならないとき、例えばその個数乃至種数を数えたいときに先鋭化する。
【0008】
また、フローサイトメトリを使用した臨床診断では試薬例えば抗体、複合/接合色素等に多くの費用がかかる。この費用を抑えるには、マイクロ流路技術等を用い被検体所要量を抑えることでそうした消耗材の使用量を抑えるか、或いは被検体単位体積当たり消耗材使用量を抑えればよいが、量の抑制は蛍光強度の低下にもつながる。こうした板挟みを解消するには、弱発光細胞等も低コスト且つ確実に検知及び弁別できる手法があると都合がよい。
【0009】
そのため、単色空間変調光を励起光として用いることでS/N比を向上させ且つ被検体発光強度の検知限界を下げる手法も既に提案されている。この手法では、従前のものより長くした検知区画に沿って蛍光が空間変調されるため、従前のフローサイトメトリと同等以上の空間分解能、ひいては従前のフローサイトメータと同等以上の最大検知/計数速度を達成することができる。しかしながら、励起光の照射/非照射を切り替えるにせよ或いは複数個の光源を使用して単色干渉縞を発生させるにせよ、単色励起光を用いる手法には限界がある。また、波長感度(波長差弁別能)の低さやブリーチング(色落ち)による問題を回避するのが難しい。波長感度が低いと、フィルタ及びPMTを併用するフローサイトメータでは、その蛍光波長が大きく違った色素を用いざるを得なくなることが多い。
【0010】
これに対し、本発明の好適な実施形態では、被検体に発光を引き起こす光エネルギ域即ち励起エネルギ域に属する励起光を複数通り、その間の遷移が非干渉的になるよう1個又は複数個の励起光源によって発生させる。即ち、励起エネルギ域内で両極端に位置しない色を有する(例えば可視域の)光を複数通り使用し、或いはその励起エネルギ域内で両極端に位置しない強度の光(グレーレベル光等の中間強度光)を複数通り使用する。そのため、単色励起光の使用に起因する諸問題を発生させることなく空間分解能を高めることができる。中間強度光を使用する場合は単色でもよい。また、その色又は強度が異なる複数通りの励起光は、例えば、それらの照射先区画が指交差状、パッチワーク状等のパターンで並ぶよう照射する。これにより、波長感度やブリーチングにまつわる問題を抑えることが可能になり、ひいては細胞等の被検体の特性を励起光波長の違いに基づき調べそれら被検体を弁別することが可能になる。色の違いに基づき被検体を弁別できるということは被検体粒子のネイティブ蛍光スペクトラムを認識できるということであり、ひいては励起/吸収スペクトラムの違いによる蛍光スペクトラム及び強度の違いをおおよそ検知できるということである。ネイティブ蛍光スペクトラムの違いが非常に僅かであっても、検知できる可能性がある。
【0011】
図1に、本発明の一実施形態に係る被検体発光経時変調システムを示す。このシステムは、図中のA,B各照明光16,18を含め複数通りの照明光を個別に発生させ、それらを対応する区画12,14に照射する励起装置10を有している。各励起光16,18のスペクトラムは本システムで使用可能なエネルギ域に属しているが、励起光16・18間ではそのスペクトラムの波長、強度又はその双方が互いに異なっている。
【0012】
本願では、励起エネルギ域全域に亘りどの成分もほぼ最高強度を呈している状態を「白色」と呼び、その逆に最低強度を呈している状態即ち理想的には光が存在せず強度=0になっている状態を「黒色」と呼んでいる。「励起エネルギ域」とは本システムで使用できる光エネルギ域のことであり、「光エネルギ域」とはスペクトラムの波長及び強度の拡がりのことであり、「スペクトラム」とは広帯域光、RGB各色光その他の成分光で定義される組成又は成分自体のことである。また、そのスペクトラム強度が励起エネルギ域内のどの成分でも最高強度でない光、即ち白色と黒色の中間に位置する強度の光のことを「グレーレベル」光と呼び、そのスペクトラム波長が励起エネルギ域内の所定小範囲、例えば可視域、赤外域、紫外域、それらを組み合わせた波長域等の内部で分布している光のことを「有色」光と呼ぶ。本装置10で励起光16,18として使用するのはグレーレベル光や有色光、即ち白色でも黒色でもない「ノンバイナリ」(non-binary)なスペクトラム分布の光である。しかも、励起装置10からの励起光16,18は、例えば一方が赤色光で他方が緑色光といった色差や、一方がある強度及びスペクトラム分布形で他方がそれと異なる強度及び同様若しくは別様のスペクトラム分布形といった強度差や、それら色差及び強度差双方がある。そのスペクトラム分布にそうした差がある光を「異スペクトラム」(different spactra)な光と呼ぶ。図1では、こうした色差や強度差を表すために励起光照射区画12,14に別々のハッチングを付してある。励起光16,18は「ノンバイナリ異スペクトラム」光であり、それによる励起は「ノンバイナリ異スペクトラム」励起である。
【0013】
被検体20,22は励起装置10が稼働している状態で流路に通される。1本の流路内に相次いで通すこともあるし、スキャン動作によって互いに別々の流路内に通すこともある。また、被検体20,22が通される個々の流路の個々の部位・領域を流路区画と呼ぶ。この図では、流路区画のうち流路に沿って上流寄りにある区画12及び下流寄りにある区画14に、それぞれ励起光が照射されている。区画12,14に照射される励起光16,18は共にノンバイナリで互いに異スペクトラムな光であるので、被検体20,22は少なくとも二種類のノンバイナリ異スペクトラム光による励起を順繰りに受けることとなる。また、励起光16・18間の遷移は非干渉的遷移(non-interference-like transition)である。これは孤立干渉縞(single interference pattern)即ち孤立した単色の干渉縞をもたらさないタイプの遷移である。即ち、レーザその他の単色光源1個で干渉縞を発生させる手法やその他の手法で類似した干渉縞を発生させる手法では、こうした遷移は生じえない。ノンバイナリ励起光への遷移及びノンバイナリ励起光からの遷移は皆、またノンバイナリ励起光間の遷移も原則として、この種の遷移にする。非干渉的遷移に関するパラメタ例えば継続期間は適宜調整することができる。従って、非干渉的遷移を伴う形態で励起することで、白黒二値しか使用しない手法や孤立干渉縞が生じる手法ではまず以て達成しえないほど多様に、また有色光乃至グレーレベル光によるノンバイナリ励起だけでも達成しえないほど多様に、被検体発光を経時変化させることができる。また、トリガ信号に応じ励起光を経時変化させることによっても、被検体発光の経時変化を富ませることができる。これは非干渉的遷移の有無を問わない。
【0014】
図中に矢印線で示した通り、被検体20,22は少なくとも2個の区画12,14で少なくとも二種類の励起光16,18を浴び、輻射、反射その他の散乱、透過又はそれらの複合作用で光24,26を発する(同順)。上掲の通り非干渉的遷移を伴う少なくとも二種類のノンバイナリ異スペクトラム励起光16,18を照射しているので、この被検体発光24,26にはその発光元被検体についての情報即ち被検体情報が重畳することとなる(符号化)。白黒二値しか使用しない手法や孤立干渉縞が生じる手法で課されるような制約は課されないので、この符号化では発光24,26に様々な情報を重畳することができる。即ち、例えばフローサイトメトリ、バイオチップ読取、検体検知等のように一群の被検体を調べる用途や文書をスキャンして読み取る用途でこのシステムを使用すると、励起によって生じる発光24,26のスペクトラムは、励起エネルギ域内外の波長に拡がり且つ励起エネルギ域内の強度を有するスペクトラムとなる。被検体発光強度が励起エネルギ域内になるのは、励起光16,18として中間強度光、例えばグレーレベル光を使用しているためである。中間強度とは、装置10で使用するスペクトラム形状の強度域内で、その最高強度及び最低強度の間にあり、しかも最高及び最低のいずれの強度でもない強度のことである。グレーレベルとは、その強度域内を概ね均等に分割した強度値のことである。
【0015】
他方、その励起光16,18が照射される被検体20,22に対しては、他の事物から区別可能で、その事物についての情報をセンサで検知でき、更にその検知結果を出力可能なものであることが求められる。逆にいえば、それらの条件を満たせばどのようなものでも被検体20,22にしうる。そのため、液滴、小体積流体、単分子、凝集分子、分子クラスタ、細胞、ウイルス、バクテリア、長大なポリマ、サブ分子構造体、マイクロパーティクル、ナノパーティクル、検体搬送小粒子(例えば特定の化学物質等と結合しそれを搬送するビーズ)、エマルジョン、アレイ内物体、面上の異質部分(例えば着色スポット)等、様々な物体を被検体20,22にしうる。いずれにしろ、被検体20,22からの発光24,26を検知すると、被検体情報が符号化された経時変化波形、即ち時間軸に沿って変化を呈する波形が得られる。従って、被検体情報を得るにはその経時変化波形から情報を復号すればよい。
【0016】
その経時変化は、システムを構成する部材(符号化部材や光検知部材)やシステム内で発生する模様乃至縞(励起光照射パターンやフィルタリングパターン)に対する被検体20,22の相対運動を反映する。即ち、励起光16,18に対する被検体20,22の反応は励起光毎即ち区画毎に変わる。励起装置10では、これを利用し被検体発光24,26を経時変化させることで、即ち経時変化例えば強度変化という形態で、その発光24,26に被検体情報を符号化する。例えば、A励起光16に対しては強くB励起光18に対しては弱く反応する被検体をタイプ1、またA励起光16に対しては弱くB励起光18に対しては強く反応する被検体をタイプ2とする。更に、図示の通り被検体20をタイプ1、被検体22をタイプ2とする。この場合、被検体20による発光24は強→弱の順で、また被検体22による発光26は弱→強の順で、それぞれその強度が経時変化する。従って、同じ色だがその強度が違う二種類の光を励起光16,18として用いそれらの間の遷移を非干渉的にすることで、発光元被検体のタイプについての情報が発光24,26に経時変化の形態で符号化されることとなる。
【0017】
光検知手段30は各被検体発光24,26の一部を検知しその結果32を例えばアナログ又はディジタル電気信号の形態で出力する。発光24,26にその経時変化として重畳、符号化されていた情報もこの信号32に含まれている。処理手段34は、光検知手段30から得られる検知結果信号32に基づき処理を実行し、重畳している情報、例えば被検体20,24のタイプを示す信号を導出する(復号)。
【0018】
このように、本システムによれば、その色又は強度(例えばグレーレベル)が異なる複数通りの励起光16,18を、流路に沿って複数個並ぶ区画12,14のうち対応するものへと、それらの間に非干渉的遷移が生じるようそれぞれ照射しているので、被検体発光24,26の色又は強度(例えばグレーレベル)が区画毎に変化し、その被検体20,22の吸収、蛍光、干渉特性等の被検体情報が発光強度等の経時変化の形態で被検体発光24,26に重畳する(符号化される)こととなる。また、期間と期間の間の遷移が非干渉的になるよう励起光の色や強度を期間毎に変化させることによっても、同様の経時変化を発生させることができる。
【0019】
図2に本システムの一例構成100を示す。このシステム100は、移動する被検体110を発光させその特性等の被検体情報が符号化された光120を出射する符号化部材102と、それを検知し光検知結果信号130例えば電気信号を出力する光検知部材104と、その信号を受け取り処理することによって被検体特性情報を示す特性データを発生乃至出力する処理部材106とを備えている。このシステム100では、被検体110が矢印方向112に相対運動しつつ励起光114の照射を受けて発光する。例えば紫外光に反応する色素で被検体110がタグ付けされていれば、紫外光を励起光114として照射するとそのタグが蛍光する。また、被検体110が例えば細胞なら、紫外光等の励起光114を照射すると細胞構成要素にネイティブ蛍光即ち自発蛍光が生じる。その他、ケモ蛍光、バイオ蛍光、吸収、散乱等のように同時励起が必要ない仕組みで発光させることもできる。部材102は、そうした被検体発光116を集めて光120を出射する。この出射光120には、図中矩形で示した被検体特性情報122を初めとする被検体情報が符号化されている。即ち、励起光照射パターン、被検体発光フィルタリングパターン又はその組合せを利用して被検体情報が符号化されている。部材104はこの光122の一部を検知し、得られた光検知結果に基づき電気信号130を発生させる。この光検知結果信号130がもたらされると、部材106は、それに含まれている情報122に基づき、被検体特性に関するデータを生成乃至出力する。
【0020】
図3に、符号化機能を励起装置の工夫で実現する例150を示す。この装置150は発光元被検体152の流路沿いに設けられている。「x又はt」との表記から理解できる通り、流路上における被検体152の所在は位置xでも時刻tでも表せる。若干の誤差は生じるが、被検体152の位置変化状況例えば速度がわかれば、トリガ信号に基づき位置xと時刻tの対応関係を決めることもできる。トリガ信号は、例えば被検体検知によって発生させてもよいし、復号結果を示す信号に基づき発生させてもよい。また、被検体152の流路沿いには、複数個の励起光照射区画が数珠つながりに且つ周期的、ランダム又はチャープに並んでいる。「周期的」とはこの励起光照射区画列内で同じパターンが繰り返されることをいい、「ランダム」とはそのような周期性がないことをいい、「チャープ」とはランダムであるが時間軸沿いの変化が直線的で周期的ともいいうること、即ち周波数又は波長の直線的変化が周期的に繰り返されることをいう。
【0021】
この励起装置150は、図示の通り、K個の励起光源を第0励起光源154から第K−1励起光源156まで順に並べた構成を有している。これらの励起光源は流路周辺であればどこにでも配置できる。例えばx軸又はt軸沿いの同じ位置に励起光源を複数個設けてもよいし、x軸又はt軸に沿った励起光照射区画の拡がりが複数個の励起光源間で重なるようにしてもよい。また、流路に対する励起光源の向きを変えること、例えば部材154を図示の通り流路の逆側に移して第0’励起光源158とすることもできる。なお、図中の矢印線160,162,164は、順に、励起光源154,158,156から発せられる励起光である。
【0022】
そのうち第k1励起光源170は、図示の通り、1個又は複数個の干渉光源171によって互いに別種の励起光172及び174を発生させる構成である。励起光172は被検体152が区画176を通過しているときに、また励起光174は被検体152が区画178を通過しているときに、それぞれ発生させる。区画176に照射される励起光172のエネルギ及びスペクトラムは区画178に照射される励起光174のそれと異なっているので、区画176と区画178を併せ、その色又はグレーレベルが違う複数通りの励起光172,174からなる励起光照射パターンが形成されることとなる。他方、第k2励起光源180は、構造化光源182によってある空間パターン186で励起光を照射する構成である。図中の区画188は、パターン186に関わる複数個の区画のうち1個即ち励起光184が照射される区画である。
【0023】
そして、各励起光源154〜156に対しては、励起制御回路から信号線190を介し制御信号が供給されている。励起制御回路は、例えばトリガ検知器から供給される信号に応じ制御信号を発生させて励起光源に供給する。励起光源は、この信号を受けて定常状態の又は経時変化性のある励起光を発生させる。
【0024】
図4に、符号化機能をフィルタ装置で実現する例200を示す。この装置200は発光元被検体202の流路沿いにあり、複数個のフィルタアセンブリから構成されている。そのフィルタアセンブリは、それぞれ、例えば周期的マスク、ランダムマスク、チャープマスク、シャドウマスク等のフィルタから構成されている。「周期的」とはフィルタアセンブリ列内で同一パターンが複数回繰り返すことをいい、「ランダム」とはそのような周期性がないことをいい、「チャープ」とはランダムだが時間軸沿いの変化が直線的で周期的ともいいうること、即ち周波数又は波長の直線的変化が周期的に繰り返されることをいう。「シャドウマスク」は強度領域フィルタの一種で、注目しているエネルギ域内の光はそのまま透過させるが、それ以外のエネルギ域内の光は白、黒、別のグレーレベル等に強度を変えて出射する。
【0025】
このフィルタ装置200は、図示の通り、M個のフィルタアセンブリを第0フィルタアセンブリ204から第M−1フィルタアセンブリ206まで順に並べた構成を有している。これらのアセンブリは流路周辺ならどこにでも配置できる。例えば複数個のアセンブリをx軸又はt軸沿いの同じ位置に設けてもよいし、x軸又はt軸に沿った励起光照射区画の拡がりが複数個のアセンブリ間で重なるようにしてもよい。また、流路に対するアセンブリの向きを変えること、例えばアセンブリ204を図示の通り流路の逆側に移して第0’フィルタアセンブリ208とすることもできる。
【0026】
そのうち第m1フィルタアセンブリ210は複数個のフィルタ216,218を縦続配置した構成である。図中に矢印線で示す通り、被検体発光212はこのアセンブリ210への入射後その内部にあるフィルタ216,218を順繰りに通過し出射光214として出て行く。他方、第m2フィルタアセンブリ220は複数個のフィルタ226,228を流路沿いに配した構成である。図中に矢印線で示す通り、このアセンブリ220に入射する複数通りの被検体発光222は隣り合うフィルタ226,228のうち対応するものを通過しそれぞれ出射光224として出て行く。フィルタ226,228は共にバンドパスフィルタであり、被検体発光スペクトラムについての情報が得られるようその通過域を十分に違えてあるので、アセンブリ220内のこれらフィルタ216,218によって、ある空間パターン(フィルタリングパターン)にて光をフィルタリングすることができる。
【0027】
フィルタ226,228からの出射光224に符号化されている情報は、その光224をフォトセンサ等で検知しその結果を演算等に供することにより、復号、再生等することができる。また、フィルタ226,228を含めどのフィルタも、その長さを任意に設定することができる。例えば、x軸又はt軸に沿った被検体202の見かけ上の長さより短くしてもよいし、その逆に長くしてもよい。短くした場合は、その分解能に若干損失が生じるかもしれない。長くするとしても、そのフィルタアセンブリ例えば220を通過する間に被検体202が特性変化しない程度の長さに止める。
【0028】
こうした構成のフィルタ装置200は、その被検体202に流動性がある用途に限らず、その被検体202が一群となり他の構成部材に対して移動する用途でも、使用することができる。後者の例としては、紙シートその他の画像担持媒体をスキャンする用途がある。例えば、シート上に存する有色スポットを被検体202とし、装置200を通した被検体発光に基づきその被検体202の色、色変化乃至色差を精密に読み取る用途である。この用途では、シート上にある種々の有色スポット即ち被検体202のなかから、他のスポットと違う独特の色を有する基準位置マークを識別してその位置を検知し、検知したマーク位置を基準にその位置を定めてシートを画像検知、印刷等に供することができる。
【0029】
図5に、符号化機能を変位制御装置で実現する例250を示す。この装置250は移動及び発光する被検体252の流路沿いにあり変位制御部材を複数個有している。即ち、N個の変位制御部材254〜256を第0変位制御部材254から第N−1変位制御部材256まで順に並べた構成を有している。そのうち第n1変位制御部材260は輪郭整形部材262を有している。この部材262は流路を全周に亘り又は部分的に取り囲んでおり、その形状を変化させることで被検体252の移動速度等、その動き方を調整又は制御することができる。他方、第n2変位制御部材270は流路ずらし装置272を有している。これは、対応する流路区画の周壁を矢印線に沿って双方向にずらす装置である。トリガ検知器にてトリガ信号が発生すると、変位制御回路は制御信号を発生させ信号線276経由で装置272に供給し装置272を定常的に又は経時変化的に作動させる。
【0030】
図6に、符号化部材102等を制御するシステムの一例構成400を示す。このシステム400は、バス404等の回路を介しCPU(中央処理ユニット)402に種々の部材を接続した構成を有している。本システム400を構成する部材のうち外部I/O(入出力部)406は、システム400内のバス404に外部装置を接続するためのI/Oである。メモリ408も同じくバス404に接続されている。集積回路I/O410は、第0IC412から第P−1IC414まで合計P個あるIC(集積回路)をバス404に接続している。IC412〜414のうち第pIC416にはフォトセンサアレイ418が組み込まれている。そして、デバイスI/O420は、第0デバイス422から第Q−1デバイス424まで合計Q個あるデバイス、例えば検知、制御等のためのデバイスをバス404に接続している。デバイス422〜424に含まれるのは、例えば励起光源乃至装置、変位制御部材乃至装置、流路関連の諸装置等である。流路関連の装置とは、例えばポンプ、計測用電極、スマートゲート、流路開閉/分岐装置、バルブ、流量センサ、流体圧センサ等のことである。
【0031】
メモリ408内にはプログラムメモリ430がある。これは一群の命令を格納するメモリであるが、他種ソフトウェア、ハードウェア等で命令を保持しておくこともできる。メモリ430内に格納されているのは、例えば符号化ルーチン440、検知、読出及び結合ルーチン442、被検体弁別ルーチン444等のルーチンを構成する命令群である。そのうちルーチン440では、移動する被検体からの発光に情報を載せる(符号化する)。即ち、CPU402が諸センサから信号を受け取り、どのような流路操作が必要かを判別し、ポンプ、計測用電極、ゲート、バルブ等を稼働させることによって、被検体をシステム構成部材に対し相対移動させる。CPU402は、また、トリガ検知器からの信号に応じて制御信号を発生させ、励起光源、流路ずらし装置その他に送る。本ルーチン440では、こうして符号化を実行する。ルーチン442では、検知前読出を実行し、被検体情報及び検知周期を取得し、検知周期毎の検知結果読出及びアナログ調整を実行し、検知結果のディジタル調整及び被検体関連数値の保存を実行し、そして被検体関連数値同士を結合させて特性データを導出する。
【0032】
ルーチン444では、各被検体の生データ即ちルーチン442で得られたデータを使用する。そのため、図7に示すステップ470では、ルーチン440とルーチン442の連携で生データ例えば光検知結果を示す数値を取得する。ステップ472では、ステップ470で得られた生データに基づき、その被検体の特性データを取得する。例えば、その被検体がどのような種類の被検体かを比較判別し、その被検体が注目被検体即ち更なる解析が必要な被検体か否かを示す特性データを導出する。ステップ480では、その被検体が注目被検体か否かを判別する。注目被検体でない場合はステップ482に移行し、スマートゲートを開放する等してその被検体を流路から排出させる。注目被検体である場合はステップ484に移行し、スマートゲートを閉鎖する等してその被検体を下流に移送し更なる解析に供する。
【0033】
図8に、これらの解析を実行するアナライザの一例構成500を示す。このアナライザ500は流路母材502に載っており、その母材502には蛇状の流路504が形成されている。被検体506やそれを搬送する流体はこの流路504に通される。コールタカウンタ510及びミー散乱センサ512は粒子サイズ検知器である。被検体発光エンコーダ/フォトセンサ520は、例えば励起/変位制御部材522、フィルタ部材524及び光検知部材526から構成されている。部材530、532及び534のうち2個は蛍光検知部材、1個はラマン散乱検知部材である。そして、バルブ540の位置は被検体506についての種類弁別結果に応じて変わり、あるタイプの被検体506は矢印線542の方向にまた別のタイプの被検体506は矢印線544の方向にそれぞれ排出させる。
【0034】
図9に流路504への接合部の一例構造600を示す。この接合部600は、その間に隙間ができるよう2枚の透光部材を重ね、その隙間に二種類の主な部分、即ち流体が通る流路部分602とそれを囲む非流路部分604を設けた構造である。ポート608は流路部分602に流体を入れ又は流路部分602から流体を出すためのポートである。また、図中の励起光照射パターン610は二色からなる周期的パターンである。このパターン610は、区画612、614及び616に照射されるあるスペクトラムの励起光と、区画618及び620に照射される別のスペクトラムの励起光とによって、形成されている。更に、区画間遷移を非干渉的にするため、これら励起光照射区画間のスペクトラム差は、孤立干渉縞が生じないように設定されている。各励起光照射区画のx軸沿い寸法は互いにほぼ等しい。
【0035】
図10に、透光部材630,632及びその間にある非流路部分604の一部を示す。部材630,632の素材は水晶、ガラス、アクリル等であり、その厚みは数mm以下、例えば0.3mm、0.1mm或いはそれ未満である。部材630・632間隔は例えば約20〜50μmであり10μmサイズの生物細胞を通すことができる。非流路部分604はこの隙間を確保するための部分であり、SU−8等のフォトレジストやそれに類するポリマで形成されている。流路部分602は、例えば非流路部分形成素材をフォトリソグラフィでパターニングすることにより、非流路部分604によって囲まれるように形成する。また、流路部分602の輪郭に相当する位置に壁を設け、その壁の外側をエポキシで充填することでも、流路部分602並びにそれを周囲から封止する非流路部分604を形成することができる。励起光源634はその流路部分602内に励起光照射パターン610を発生させる。この図では光源634が透光部材632下面の上にあるが、これ以外の場所例えば透光部材630内に設けることもできる。被検体636は流路部分602内を相対移動しつつ励起光を浴び、そのパターン610に従い発光する。その被検体発光の一部は部材630内を伝搬してフォトセンサ638に達する。この図ではセンサ638が部材630上面の上にあるが、部材630上にスペーサを配してその上に載せるようにしてもよいし、その感光面が流路部分602に面するよう部材630内に配置してもよい。センサ638としては、例えば単体の大感光面フォトセンサ(PMT)を用いることも、また複数個の感光セルをアレイ化してその光検知出力(例えば強度出力)の加算値を使用することも可能である。
【0036】
被検体636からの発光は、パターン610をなす励起光の照射下をその被検体636が過ぎるにつれて、またその被検体636の蛍光、吸収乃至散乱特性に従い、経時的に変化していく。この変化をフォトセンサ638で捉えると、例えば図中の2個のグラフに示す如き被検体発光強度検知結果が得られる。これらのグラフのうち下側のグラフは、区画612、614及び616で照射される励起光、即ちある色乃至グレーレベルAを有する励起光に反応して発光するタイプの被検体における発光強度IexcAを表している。上側のグラフは、区画618及び620で照射される励起光、即ちまた別の色乃至グレーレベルBを有する励起光に反応して発光するタイプの被検体における発光強度IexcBを表している。曲線640から読み取れるように、A励起光に反応する方の被検体は区画612、614及び616で強くまた区画618及び620で弱く発光する。また、曲線642から読み取れるように、B励起光に反応する方の被検体は区画612、614及び616で弱くまた区画618及び620で強く発光する。なお、これらの曲線640及び642は互いにほぼ相補的であるが、励起光照射パターン610によってはいずれの被検体636も反応できないことがある。また、例えば区画612、614及び616で赤色、区画618及び620で緑色の励起光を、赤色光及び緑色光のいずれにも反応しうる被検体636に照射すると、どの区画でも被検体発光が検知されることとなる。
【0037】
フォトセンサ638はこうした被検体発光を捉え、被検体種別を示す信号を出力する。この信号から被検体種別を求めるには、例えば励起光照射パターン610に基づく計算を行えばよい。その被検体種別判別をあまり失敗しないで行えるようにするには、例えば、励起光照射パターン610を、そのデューティ比が0.5から十分に離れた値(0.1や0.9といった値)の周期的パターンにするか、或いは非周期的パターンにするとよい。非周期的パターンといっても様々であるが、なかには簡便な割に有用な追加情報を得やすいものがある。例えばその長手方向に沿って非周期性を呈するランダムパターンや、ランダムの定義を充足するが時間軸に沿った変化が直線的且つ周期的なパターン、即ちその周波数乃至波長の直線的変化が周期的に繰り返されるチャープパターンである。
【0038】
なお、流路部分602の端部は開口させてポート650にすることができる。このポート650は流路部分602に対する流体の出し入れに使用できる。また、接合部600を更に延ばしてその先に別のポートを設けること、例えば面652を中心に左右折り返して対称形状の構造にすることもできる。
【0039】
図11に、流路部分602に対する励起光源634の配置の別例を二種類示す。まず、図中左半部に示した例では、透光部材632の一部を流路に沿って取り除き、流路部分602の一壁面になるよう代わりに光源634を組み込んである。光源634は、非干渉的遷移を呈するよう区画682及び684内に互いに別々の色乃至グレーレベルの励起光を照射して励起光照射パターン680を発生させる。次に、図中右半部に示した例では、光源634を部材632の下面から離して配置してあり、また励起光を流路部分602上に照射できるようレンズ、レンズ系、マイクロレンズ、Selfoc(登録商標)アレイ等の光学部品690を配置してある。光源634は、非干渉的遷移が生じるよう区画694及び698と区画696に互いに別の色乃至グレーレベルの励起光を照射することによって、区画694、696及び698に亘る励起光照射パターン692を発生させる。
【0040】
図12に、フォトセンサ638配置の別例を二種類示す。まず、図中左半部に示した例では、流路部分602の一壁面になるよう流路に沿ってフォトセンサ638を組み込んである。センサ638は励起光照射下の被検体636による発光を検知する。その励起光は区画712、714及び716に亘るパターン710を形成している。そのパターン710は、隣接区画間で非干渉的遷移が生じるよう区画712及び716と区画714に互いに別の色乃至グレーレベルの励起光を照射することで形成されている。次に、図中右半部に示した例では、センサ638を透光部材630から離して配置してあり、また被検体636に発する光円錐がその感光面に達するようレンズ、レンズ系、マイクロレンズ、Selfoc(登録商標)アレイ等の光学部品720を配置してある。センサ638は励起光照射下の被検体636による発光を受光する。その励起光は区画724及び726に亘るパターン722を形成している。そのパターン722は、非干渉的遷移が生じるよう区画724と区画726に互いに別の色乃至グレーレベルの励起光を照射することで形成されている。
【0041】
図13に励起光源634の別例を示す。これは2個の光源750,752によって干渉光源を形成したものであり、例えば流体アナライザシステムで用いるのに適している。壁状部品740,742は流路の輪郭を画定する部材であり、その流路に流す被検体636は例えば生物細胞やウイルスである。被検体636は、層流を保ちまた流路中心でアンプル流を呈する高速流体によって、その流路内を運ばれていく。干渉光源を構成する個々の光源750,752は、いずれも狭帯域な平行光を出射する光源例えばレーザであり、干渉縞の重なりで区画712,714に亘る励起光照射パターン710が形成されるよう、その位置が互いにずらされている。また、透光部材632内には、空隙、金属層、分散ブラッグミラー構造等、相応の仕組みで光を反射させるミラー744,746が配置されている。光源750から発せられる励起光はある色Aの光であり、角度αで入射した後ミラー744によって反射される。他方、光源752から発せられる励起光は別の色Bの光であり、角度βで入射した後ミラー746によって反射される。ミラー744とミラー746の間に位置ずれΔがあるので、複合的な干渉縞が励起光照射区画712、714等々に発生する。光源750から発せられるノンバイナリ励起光が照射される区画と光源752から発せられるノンバイナリ励起光が照射される区画との間の遷移は、孤立干渉縞を発生させ得ない非干渉的遷移である。なお、ミラー744及び746の位置や傾斜角は互いに独立に調整することができる。
【0042】
また、励起光照射パターンは構造化光源、ホログラフィ等によっても発生させることができる。図14〜図18に示す例では、空間変調信号(発光)を被検体から取得するため、隣り合う励起光照射区画間で遷移が非干渉的になるよう複数の区画にノンバイナリ励起光を照射している。流路例えばマイクロ流路内の被検体にはそれらのノンバイナリ励起光が順繰りに照射されるので、その励起、吸収乃至散乱特性に応じ且つ空間変調即ち経時変調された信号が得られる。
【0043】
まず、図14に示す例では、壁状部品740,742によって形成された流路内に被検体636を通し、あるパターン762を有する励起光をその被検体636に浴びせている。その励起光を発する光源760は構造化多色光源、即ちその色が異なる複数の励起光をあるパターンで出射できる光源であり、発光ダイオード、レーザダイオード、単独レーザで励起される蛍光体等の能動又は受動光源複数個で実現できる。励起光照射パターン762のMFS(最小構造サイズ)を被検体636のオーダとすれば、その変調深さ乃至振幅が一定の経時変化信号を得ることができる。
【0044】
励起光照射パターン762のうち励起光照射区画764、766、768及び770上に存する部分はランダムな二色パターンであり、それらの区画間の遷移は非干渉的である。区画764〜770の長さは均一でなくまた周期性も持っていない。区画764及び768には例えば赤色の励起光を、また区画766及び770には緑色の励起光を照射する。区画770・774間の隙間772にはまた別様の非干渉的遷移を発生させる。例えば励起光源760からは励起光を照射しないようにするか、広帯域光、白色光等、相応の中間強度光即ち非有色励起光を光源760から照射するとよい。残る励起光照射区画のうち、区画774には青色の励起光を照射し、区画776には青色励起光に重ねて区画764のそれと同程度の強度の赤色励起光を照射し、区画778には区画764及び776のそれと同程度の強度の赤色励起光を照射し、区画780にはそれより強い赤色励起光を照射する。区画776で青色光と赤色光を重ねるのは、二種類の非干渉的遷移を引き起こすため、並びに二光子プロセス等で更なる情報を付加するためである。区画780で赤色を強くするのは区画778・780間にまた別種の非干渉的遷移を引き起こすためである。
【0045】
曲線790及び792は、被検体636を均一速度で通し又はテストパターンで校正したときにその被検体636から得られる信号(発光)の経時変化、即ちx軸又はt軸沿い位置による変化を表している。特に、曲線790は赤色光に対しては強く反応するが青色光や緑色光に対してはさほど強く反応しない被検体についてのものであり、曲線792は緑色光に対して強く反応する被検体についてのものである。励起光照射区画764、766、768及び770での反応を表す部分ではこれら曲線790及び792はほぼ相補的である。励起光照射パターン762がランダムパターンであるため、曲線790,792の形状の違いにあまり曖昧さがない。なお、信号の変調深さ乃至振幅とは、励起光照射区画764〜770に亘る曲線790・792間相違分のスペクトラムのことである。
【0046】
次に、図15〜図17に示す諸構成では、層流によって不均等変位その他の変化を発生させている。
【0047】
そのうち図15に示す構成では、色間の遷移が非干渉的になるよう二種類の有色光を指交差状に配したパターン610にて励起光を浴びながら、流路内を被検体636が進んでいく。壁状部品810・812間隔が直線的に先窄まりになっているので、曲線820として示す通り、被検体636の速度vは位置変化即ち時間経過につれ直線的に上昇していく。そのため、信号たる被検体発光には、曲線822に示す如く速度上昇につれ直線的に周期が短くなるという変化即ちチャープな経時変化が生じる。図中、IAは区画612、614及び616での強度を、またIBは区画618及び620を表している。曲線822から読み取れるように、遷移時間の直線的な短縮は流路の窄まり方よりも極端である。更に、非平面ミラーを用いれば、例えば図13の構成で生じる干渉縞をチャープ化することができる。
【0048】
図16に示す構成では、流路形状の工夫によって流れの方向を例えば周期的、チャープ的或いはランダムに変化させる手法を採っている。被検体が電荷を有しているのなら電界変動によっても流れの方向を変えることができる。図示の通り、その形状が正弦波様の壁状部品840及び842を互いに平行に配置しているので、流路の形状は正弦波状になる。区画844及び846に照射される励起光は、前者の色乃至グレーレベルがA、後者のそれがBというように互いに異なっているが、その区画844,846内では均質な光である。被検体636は区画844、846及びその隙間を縫うように正弦波状流路850に沿って進むので、励起光の遷移はやはり非干渉的になる。また、曲線860はその色乃至グレーレベルがAの励起光には強く反応する(強度IA1)がBの励起光に対する反応が弱い(強度IB1)被検体について、また曲線862はその色乃至グレーレベルがBの励起光には強く反応する(強度IB2)がAの励起光に対する反応が弱い(強度IA2)被検体について、被検体発光強度を表したものである。曲線860,862は相応に相補的であるが、流路850と隙間の交差部分では非干渉的遷移が生じるのでどちらも強度がほぼ0になる。
【0049】
図17に示す構成では、励起光が均質に照射される区画880及び882に対して、その外側にあり真っ直ぐで互いに平行な壁状部品740及び742を相対移動させている。即ち、制御回路894からの信号例えば電気信号によって流路ずらし装置890を制御し周期的又は非周期的に部品740及び742を動かすことで、被検体636と区画880及び882の間に矢印線892の如き双方向的な相対移動を発生させている。但し、区画880及び882に励起光を照射する励起光源を動かすようにしてもよいし、流路ずらし装置890以外の手段で部品740及び742と区画880及び882の間に相対移動を発生させるようにしてもよい。流体の流れに流速変化等の経時変化を与えてもよい。流路ずらし装置890はトリガ信号に応じて作動させればよい。
【0050】
曲線900として示されているのはy軸に沿った被検体636の動きである。この例では、被検体636が励起光照射区画880(縦軸上の「帯A」)と励起光照射区画882(同「帯B」)との間を行きつ戻りつするよう、また区画880・882間遷移が非干渉的になるよう、ランダムパターンに従い壁状部品740及び742を動かしている。区画880に照射される励起光の色乃至グレーレベルをA、区画882のそれをBとすると、その色乃至グレーレベルがAの励起光に対し強く反応する種類の被検体636の発光強度曲線は例えば902、Bの励起光に対し強く反応する種類の被検体636の発光強度曲線は例えば904となる。区画880・882間の隙間を被検体が通るとき即ち非干渉的遷移が生じている期間は、どちらの強度も急峻に0に低下している。
【0051】
そして、図18に示す構成では、ある単一の励起光照射区画920内で励起光の強度を経時変化させ、互いに励起光の状態が異なる複数の期間の間で非干渉的遷移を発生させている。そのため、励起光源634としては、その区画920における励起光スペクトラムを切り替えることができるもの、例えばある順序で切り替えていくものを使用している。その上流にあるトリガ検知器922は被検体通過に応じてトリガ信号を発生させ、制御回路894はそのトリガ信号に応じ光源634に制御信号を供給して切替動作を行わせる。
【0052】
区画920に照射される励起光は、曲線930に示す通り、例えば色A・B間で切り替えるとよい。図では切替間隔がランダムであるが、周期的な又はチャープ性のパターンで切り替えることもできる。別の色があると孤立干渉縞は発生しえないので、どの色間遷移も非干渉的遷移になる。なお、色A,Bは、そのスペクトラムがノンバイナリなものでもよいし、黒及び白でもよい。また、区画920に照射される励起光を、曲線932として示す通り、最高強度の0.3倍及び0.6倍等といった複数通りの中間強度間で切り替えてもよい。これらの中間強度を得るため、光源としてはその出射光強度を複数通りに高速切替可能なものを使用する。こうした中間強度間遷移もまた非干渉的である。更に、区画920内を通る被検体636の個数がいちどきに1個ずつであり、且つトリガ信号が十分に正確であれば、被検体発光の経時変化と被検体位置とを関連づけること、更には被検体の粒径等を求めてスケール選択や励起手順調整に利用することもできる。
【0053】
図19に、被検体についての情報、例えばその種別、位置、スペクトラム差等を導出し被検体を弁別する手順を示す。この手順では、まず、被検体発光の経時変化を表す符号化された信号をフォトセンサアレイ等の装置から取得する(ステップ970)。次に、ステップ970で得られた信号について相関処理を実行する(ステップ972)。この相関処理は、例えば符号化されている二種類の信号同士を比較し、或いは符号化されている信号を対応するテンプレートに照らすことで実行する。ここでいう「相関処理」には、単純な比較にとどまらず、経時変化性の関数を処理し時刻を変数とする類似度指標を求めることが可能な様々な数学的処理が包含される。スケーリングの有無乃至要否は問わない。枠974内に示した2本の曲線は相関処理結果の例である。そのうち上側の曲線は二種類の処理対象信号波形間に相関が存する場合の相関値を、下側の曲線は逆相関が存する場合の相関値を、それぞれ表している。上側の曲線では正の振幅Aのピークが発生している(時刻tp)のに対して、下側の曲線ではこれに近い振幅だが凹凸逆のピークが発生している(時刻tp’)。
【0054】
その次は、ステップ972で得られた個々の相関処理結果の時間導関数(d/dt)を表す経時変化波形又はそれを近似する経時変化波形を導出する(ステップ980)。相関が存している場合は枠982内に示すような微分波形が得られ、逆相関が存する場合は枠984内に示すような微分波形が得られる。前者の波形には正のピーク、ゼロクロス(時刻tp)及び負のピークがこの順で現れ、またそのピークトゥピーク値がAになるが、後者の波形には負のピーク、ゼロクロス(時刻tp’)及び正のピークがこの順で現れ、またそのピークトゥピーク値がA’になる。A’は枠974内の下側の曲線における凹ピークの振幅に等しい。次に、ステップ980における微分結果から被検体についての情報を抽出する(ステップ986)。例えば、相関の正逆、強弱等に基づき被検体種別を求め、ゼロクロスタイミングから被検体位置を求め、また相関時と逆相関時の微分波形のピークトゥピーク値に基づき輻射、吸収乃至散乱特性の違いを求める。なお、同一の被検体が別々の励起光に対して同一強度の被検体発光をもたらすこと等があるので、一種類のピークトゥピーク値では励起光間スペクトラム差を求めることができない。相関時ピークトゥピーク値と逆相関時ピークトゥピーク値の差は被検体発光強度差の増大につれて増大するので、それら二種類のピークトゥピーク値を併用すればスペクトラム差(特性差)を求めることができる。そして、ステップ988ではステップ986で得られた情報に基づき被検体を弁別する。
【0055】
以上の処理のうちステップ972、980及び986における処理は、図6に示したルーチン442、444又はその双方の一部として実行することができる。ステップ988における処理はルーチン444の一部として実行することができる。これらのステップにおける処理は、総じて、個々の被検体から得られた信号に対する個別操作として、或いは複数個の被検体から同時に又は相次いで得られた信号に対する操作として実行できる。後者の操作で信号発生元被検体毎に信号を分別するには、被検体間に僅かでも違いがあること、例えば位置や速度に違いがあることが必要になる。また、それらのステップにおける処理は、相応の回路を使用し、シリアル処理やパラレル処理を適宜組み合わせた形態で実行することができる。波形やそのテンプレートを記述するデータ構造やデータストリームは、ルーチン442及び444にて随時、例えば図6中のメモリ408に書き込みまたそのメモリ408から読み出すことができる。同様に、ステップ972、980、986及び988での処理における中間処理結果や最終処理結果も随時書込/読出が可能である。
【0056】
また、経時変化信号検知結果には、通常、テンプレートに従い発生させた符号の他に、雑音が重畳している。相関処理はそうした雑音、例えば交流電源周波数の雑音の影響を受けにくい。更に、時間軸スケーリング等の処理を経時変化信号に適用することによって、雑音の影響を更に受けにくくすることができる。例えば、計測前の時間軸スケールがわかっていない経時変化信号を相関処理に供するとする。実験結果によれば、時間軸スケーリング無しで処理できるS/N比の下限が0.5である場合、時間軸スケールを施せばそのS/N比が0.1の経時変化信号でも好適に相関処理できるようになる。なお、この実験では0.5m/secの最高速度で移動する粒子を被検体として用いたが、その速度が数m/sec程度以下、実効粒径が0.6μm以上、粒子間隔がその装置のMFS以上の粒子であれば、同様の結果が得られるであろう。この条件を満たす用途としては、例えば血中CD4抗原の全数計数がある。タグを個別に検知することも可能である。
【0057】
周期的パターンに従い変調された信号が経時変化信号検知結果に含まれ又は付随している場合には、当該周期変調信号からスケーリング係数を導出し、その係数に従いテンプレート波形を時間軸スケーリングし、そのテンプレートを用いて相関処理を行うことができる。この相関処理では、相関の正逆がよりはっきりわかる処理結果の他にスペクトラム情報も得られる。従って、大面積フォトセンサ等の検知器1個で複数色を同時に検知する構成を採ることもできる。その場合、1個の被検体に対し複数通りの励起光(指交差状、パッチワーク状等のパターンを形成する励起光)が概ね一斉に照射されることとなるので、吸収スペクトラムや励起スペクトラムの違いを非常に高精度で計測することができ、また数々の誤差を打ち消すことができる。打ち消せるのは、例えばブリーチング、混色、拡散等のような経時変化性の誤差や、温度誤差等のような励起誤差起因性の誤差や、光学部品の配置ずれによる誤差である。相関処理結果の細部構造から粒子位置を精密に求めることもできる。実験結果によれば、1.0μm未満の空間分解能にて前掲の通り個別のタグを検知することが可能であるので、検知時にタグとして使用する蛍光マーカ等、消耗材の使用量を抑えることができる。更に、ネイティブ蛍光も好適に検知できるので、いわゆるタグ等を使用しないエージェントレス検知も可能である。
【0058】
以上、図1〜図19を参照して説明した諸実施形態は、様々な検知分野に好適に適用することができる。例えば、蛍光式フローサイトメトリ、インピーダンス式フローサイトメトリ等、未知速度粒子のシグネチャを探すバイオディテクタに適用すれば、その流量が不均一で粒子速度がばらつくマイクロ流路でも利用可能なバイオディテクタが得られる。また、タグ付き細胞、粒子、タグ付きDNA等、蛍光を発する被検体の個数や異種蛍光被検体間の個数比率を調べる分野にも、上述の諸実施形態を好適に適用することができる。その種の分野では、タグ付きビーズ等の既知速度被検体を用い既知波形(従前の検知結果やテンプレートの波形)を校正するとなおよい。校正したテンプレート波形に経時変化波形検知結果を照らすようにすれば、そのテンプレート波形に製造起因誤差が含まれていてもそれに煩わされずに、未知被検体についての情報を得ることができる。また、S/N比を向上させるには、例えば個々の既知波形に時間軸スケーリングを施した上で、その既知波形に基づき経時変化波形検知結果を相関処理すればよい。更に、周期的パターンに基づく符号即ち周期変調分が経時変化波形検知結果に内在又は付随している場合には、その周期を表す数値例えば周波数を用いてスケーリング係数を求め、相関処理に先立ちその係数に基づく時間軸スケーリングを実行するとよい。そのようにすると、ちょうどよいスケーリング係数を力ずくで探す手法に比べて迅速に、相関処理を実行することができる。
【0059】
上述の諸実施形態は、生体物質間のネイティブ蛍光の違いを検知する分野にも、好適に適用することができる。生物細胞はほんの数種類の基本要素から形成されているのでそのネイティブ蛍光スペクトラムにほとんど違いがないのが普通だが、上述した通り励起光空間パターン等を使用する手法ならば、各被検体から得られるネイティブ蛍光信号に基づき被検体間の違いを弁別することも十分に可能である。これは、感度が高いので個々の細胞のネイティブ蛍光を検知でき、また弁別指標例えば輻射又は励起スペクトラム強度比を直接計測できるためである。加えて、上述の諸実施形態によれば、励起及び輻射分光の併用によって頑丈且つコンパクトなシステムを得ることができる。
【0060】
上述の諸実施形態は、更に、その発光スペクトラム等が異なる複数個の被検体を伴う文書又はバイオチップのスキャンにも、適用することができる。上述の諸実施形態は、また、未知速度で移動する被検体によって既知信号を反射させる各種低S/N比システム、例えば信号伝搬速度に近い速度で被検体が移動するソナー等のシステムにも、適用することができる。上述の諸実施形態は、とりわけ、被検体の位置、速度又は種類情報を精密に求めたい場合に有益である。
【0061】
そして、上述の諸実施形態ではその構成に特徴のあるフォトセンサやインピーダンス式センサを用いているが、それ以外にも種々のセンサを使用することができる。即ち、その経時変化から被検体情報を読み取れるパラメタは被検体発光強度以外にもあるので、そうしたパラメタを検知できるセンサであればどのようなセンサでも使用することができる。同様に、上述の諸実施形態では流路内を移動する移動体やスキャン中のセンサに対して移動する被検体から被検体情報を検知、取得しているが、上述したものとは別種の流路内を別様に移動する被検体から上述の諸実施形態で使用できる別種の情報を検知するようにしてもよい。例えば、空気流によって運ばれている粒子のネイティブ蛍光から情報を取得してもよいし、固定された検体粒子例えばタグ付き細胞、DNAスポット等をガラススライド越しに且つある種の励起光照射パターンでスキャンし、その被検体に発する蛍光を捉えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】被検体発光経時変調システムの概要を示す図である。
【図2】そのシステム構成の一例を示す図である。
【図3】励起装置の一例構成を示す図である。
【図4】フィルタ装置の一例構成を示す図である。
【図5】変位制御装置の一例構成を示す図である。
【図6】制御/処理システムの一例構成を示す図である。
【図7】被検体弁別ルーチンの一例を示す図である。
【図8】アナライザの一例構造を示す図である。
【図9】接合部の一例構造を示す図である。
【図10】その接合部の機能を示す図である。
【図11】励起部材の一例構成を示す図である。
【図12】フォトセンサの一例配置を示す図である。
【図13】励起部材の別例構成を示す図である。
【図14】励起部材の更なる別例構成を示す図である。
【図15】変位制御部材の一例構成を示す図である。
【図16】変位制御部材の別例構成を示す図である。
【図17】変位制御部材の更なる別例構成を示す図である。
【図18】励起光源の更なる別例構成を示す図である。
【図19】制御/処理手順及び各段階での波形を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内に被検体を通しながら励起装置を稼働させ励起エネルギ域内スペクトラムを有する励起光を浴びせることでその被検体を発光させる方法であって、
流路を構成する個々の流路区画における励起光スペクトラムを励起エネルギ域内ノンバイナリスペクトラムとし、且つ
同じ励起エネルギ域内の別々の小範囲で発光するよう或いはその間の遷移が非干渉的になるよう、それら流路区画のうち少なくとも2個の間で励起光のスペクトラムを変えることにより、
流路内移動につれ被検体発光が経時変化するよう流路区画単位で励起光のスペクトラムを変化させつつ被検体を発光させる励起装置使用方法。
【請求項2】
本装置稼働中に複数個の被検体をめいめい通せるよう流路母材上に形成された流路と、励起エネルギ域内スペクトラムを有する励起光を流路内被検体に浴びせて発光させる励起装置を有する符号化部材と、を備える装置であって、
流路を構成する個々の流路区画における励起光のスペクトラムを励起エネルギ域内ノンバイナリスペクトラムとし、且つ
同じ励起エネルギ域内の別々の小範囲で発光するよう或いはその間の遷移が非干渉的になるよう、それら流路区画のうち少なくとも2個の間で励起光のスペクトラムを変えることにより、
流路内移動につれ被検体発光が経時変化するよう流路区画単位で励起光のスペクトラムを変化させつつ各被検体を発光させる装置。
【請求項3】
本装置稼働中に複数個の被検体をめいめい通せるよう流路母材上に形成された流路と、符号化部材と、を備える装置であって、
その符号化部材が、
励起エネルギ域内スペクトラムを有する励起光を発生させ被検体に浴びせて発光させる励起光源であって励起光のスペクトラムを少なくとも二通りに切り替えうる励起光源と、
励起光照射区画より上流で被検体の流路内通過を検知してトリガ信号を発生させるトリガ検知器と、
励起光照射区画を通過中の被検体に照射される励起光が経時変化するようそのスペクトラムを経時的に切り替えつつ励起光を照射する動作を、トリガ信号に応じ励起光源に行わせる回路と、
を有する装置。
【請求項1】
流路内に被検体を通しながら励起装置を稼働させ励起エネルギ域内スペクトラムを有する励起光を浴びせることでその被検体を発光させる方法であって、
流路を構成する個々の流路区画における励起光スペクトラムを励起エネルギ域内ノンバイナリスペクトラムとし、且つ
同じ励起エネルギ域内の別々の小範囲で発光するよう或いはその間の遷移が非干渉的になるよう、それら流路区画のうち少なくとも2個の間で励起光のスペクトラムを変えることにより、
流路内移動につれ被検体発光が経時変化するよう流路区画単位で励起光のスペクトラムを変化させつつ被検体を発光させる励起装置使用方法。
【請求項2】
本装置稼働中に複数個の被検体をめいめい通せるよう流路母材上に形成された流路と、励起エネルギ域内スペクトラムを有する励起光を流路内被検体に浴びせて発光させる励起装置を有する符号化部材と、を備える装置であって、
流路を構成する個々の流路区画における励起光のスペクトラムを励起エネルギ域内ノンバイナリスペクトラムとし、且つ
同じ励起エネルギ域内の別々の小範囲で発光するよう或いはその間の遷移が非干渉的になるよう、それら流路区画のうち少なくとも2個の間で励起光のスペクトラムを変えることにより、
流路内移動につれ被検体発光が経時変化するよう流路区画単位で励起光のスペクトラムを変化させつつ各被検体を発光させる装置。
【請求項3】
本装置稼働中に複数個の被検体をめいめい通せるよう流路母材上に形成された流路と、符号化部材と、を備える装置であって、
その符号化部材が、
励起エネルギ域内スペクトラムを有する励起光を発生させ被検体に浴びせて発光させる励起光源であって励起光のスペクトラムを少なくとも二通りに切り替えうる励起光源と、
励起光照射区画より上流で被検体の流路内通過を検知してトリガ信号を発生させるトリガ検知器と、
励起光照射区画を通過中の被検体に照射される励起光が経時変化するようそのスペクトラムを経時的に切り替えつつ励起光を照射する動作を、トリガ信号に応じ励起光源に行わせる回路と、
を有する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−180730(P2009−180730A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19272(P2009−19272)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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