説明

被移送物の位置調整装置および移送機械

【課題】上下の配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得る被移送物の位置調整装置および移送機械を提供する。
【解決手段】位置調整装置10は、その支持フランジ23を、ボールベアリング33及び36のボール34及び37が、ボール当て板31及び32との間で隙間なく挟持する。そのため、位置調整装置10は、上向き又はその逆さまの下向きに配置しても、ボール34及び37が支持フランジ23とボール当て板31及び32とに対して常に一定の当たりとなるので、位置調整装置10の動作に支障が生じることがない。従って、位置調整装置10はその上下の配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得るので、位置調整装置10を上向き又は下向きに兼用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンなどの被移送物を所定位置まで移送した後に、その所定位置で例えば微調整する被移送物の位置調整装置およびこの位置調整装置を備える移送機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送物を変位させたのち、正確に基本位置に戻すことができる搬送物の位置決め装置が開示されている。具体的には、下ブロックと軸部材との間に第1のバネ部材が取り付けられ、上ブロックと軸部材との間に第2のバネ部材が取り付けられる。上ブロック、リテーナ、下ブロックは、互いにスライドするように変位することができる。下ブロックと軸部材の対向部に第1の磁石対を形成し、上ブロックと軸部材の対向部に第2の磁石対を形成する(図3及び「要約」の欄参照)。
【0003】
そして、特許文献1では、上ブロックと軸部材、および下ブロックと軸部材にそれぞれ磁石対を形成することにより、これらの部材の基本位置において、対向する磁石が最も強く引き付け合い、上ブロック、軸部材、下ブロックを正確に基本位置に戻すことができる。対向する磁石が十分大きく、上ブロック、軸部材、下ブロックが基本位置から変位したときに、磁石の引き付け合う力のみで基本位置に戻す力がある場合、磁石の力だけを利用することができる(図14及び段落番号「0014」の欄参照)。
【0004】
また、特許文献1では、上ブロック、軸部材、下ブロックが基本位置から変位したとき、対向する磁石が大きく離れて、基本位置に戻す力が弱い場合、基本位置に戻すためのバネ部材を併用することができる。この場合、上ブロック、軸部材、下ブロックが大きく変位したとき、バネ部材が大きく変形するため、基本位置から大きく変位したところでは、バネ部材の力によって基本位置に戻ろうとする力が働く。そして、基本位置に近づいて、バネ部材による力が弱くなったとき、磁石の引き付け合う力によって、上ブロック、軸部材、下ブロックが、正確に基本位置に引き戻される(図14及び段落番号「0014」の欄参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−132369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、その図14に示すように、一対の磁石を配置している軸片(中間体)のフランジ部が、それぞれ上ブロック及び下ブロックに対して離間している。即ち、特許文献1では、中間体が上ブロック及び下ブロックに対して浮いているような状態でクリアランス(隙間)を設けている。従って、特許文献1では、その位置決め装置を逆さまに配置したりすると、位置決め装置(本発明の位置調整装置として適用した場合)の動作に支障が生じる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上下の配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得る被移送物の位置調整装置およびこの位置調整装置を備える移送機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置調整装置は、移送体に固定される固定手段と、上記固定手段の軸心に対して直交する平面上でスライド可能に配置される可動手段と、上記固定手段の軸心に対して直交する平面上でスライド可能に配置され、且つ上記可動手段および上記固定手段をそれぞれ連結する連結手段と、を備え、上記連結手段は、その軸心方向への移動が制限されるよう上記固定手段に締め込まれることを特徴とする。ここで、本発明に係る位置調整装置は、上記可動手段は上記固定手段の軸心に対して直交する平面を一対有する支持部を備え、上記連結手段は上記支持部の平面をそれぞれ挟持するように配置される一対のボールベアリングを備えるようにしても良い。
【0009】
この場合、上記位置調整装置は、上記一対のボールベアリング及び上記支持部を、上記固定手段の平面と上記可動手段の平面とが対向する初期位置に復帰させるコイルバネを更に備えるようにしても良い。また、上述した各位置調整装置では、上記固定手段および上記可動手段は、それぞれの平面が対向する初期位置でそれぞれ対応するように配置される磁石を、更に備えるようにしても良い。本発明に係る移送機械は、被移送物を移送する移送機械であって、上述した各位置調整装置を搭載し、上記被移送物を予め設定される所定位置に移送して配置させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る連結手段は、その軸心方向への移動が制限されるよう固定手段に締め込まれるので、固定手段および可動手段に対して隙間がなくなり、連結手段の軸心方向への移動が制限される。即ち、本発明において、連結手段は固定手段および可動手段に対して隙間がないので、位置調整装置を上向き又はその逆さまの下向きに配置しても、連結手段が軸心方向へズレたりしない。そのため、本発明によれば、連結手段が軸心方向へズレないので、位置調整装置の動作に支障が生じない。従って、本発明によれば、位置調整装置はその上下の配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得るので、位置調整装置を上向き又は下向きに兼用できる。
【0011】
ここで、本発明においては、例えば可動手段に支持部を設けると共に、連結手段に一対のボールベアリングを設け、且つ支持部をボールベアリングのボールが挟持するよう固定手段に締め込むと、連結手段は可動手段および固定手段に対し隙間がなくなり、連結手段の軸心方向への移動が制限される。そのため、本発明によれば、連結手段はその軸心方向への移動が制限されるので、位置調整装置を上向き又はその逆さまの下向きに配置しても、ボールベアリングのボールが支持部に対して常に一定の当たりとなるので、位置調整装置の動作に支障が生じない。従って、本発明によれば、位置調整装置はその上下の配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得るので、位置調整装置を上向き又は下向きに兼用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例に係る位置調整装置の端面図である。
【図2】図1に示す固定体の平面図である。
【図3】図1に示す可動体の底面図である。
【図4】図1に示す位置調整装置が変位した変位状態の端面図である。
【図5】図1に示す位置調整装置の使用状態図である。
【図6】本発明に係る第2実施例の移送機械の一部を端面にした正面図である。
【図7】図6に示す移送機械における位置調整装置の端面図である。
【図8】図6に示す取付面の正面図である。
【図9】図6に示すチャック面の正面図である。
【図10】図6に示す移送機械の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、具体化した被移送物の位置調整装置に係る第1実施例および位置調整装置が搭載される移送機械(例えば組付けロボット)に係る第2実施例をそれぞれ説明する。ここで、第1実施例の位置調整装置は、センタリング装置(センタリングユニット)としても使用でき、例えばローラコンベア等で移送される被移送物(例えば、ガラス基板収納カセットなど)を所定の位置に配置した後に、図5に示すような被移送物Wの位置を例えば微調整させるものである。
【実施例1】
【0014】
以下、図1乃至図5に基づいて、本発明の第1実施例である被移送物の位置調整装置10について説明する。図1に示すように、本実施例に係る被移送物の位置調整装置10は、図示しない移送体のラインベース上に固定される固定体12と、この固定体12の平面上をスライド可能に配置される可動体20と、この可動体20および固定体12のそれぞれの平面上をスライド可能に連結する連結体30を備える。
【0015】
連結手段である連結体30は、固定体12および可動体20の軸心P1およびP2(図4の1点鎖線参照)に対して直交する平面上でスライド可能で、可動体20および固定体12をそれぞれ軸心方向への移動を制限するように介在して連結する。また、上述したように、可動手段である可動体20は、図4に示すように、固定手段である固定体12および連結体30の軸心P1およびP3(図4の1点鎖線参照)に対して直交する平面上でスライド可能に配置される。
【0016】
(固定体12に関する構成)
図1に示すように、固定体12には、ストッパ15、磁石16A、底板17、蓋体18及びピン19が配置されている。また、略円筒状の固定体12には、その基端に取付フランジ13が形成されている。この取付フランジ13には、図2に示すように、90度の角範囲で貫通された取付孔13Aが複数箇所(本例では4ヶ所)に形成されている。そして、この取付孔13Aに図示しないボルトがそれぞれ取付けられ、固定体12が図示しないラインベース上で締結される。
【0017】
図1に示すように、固定体12には、その他端の平面14Aに90度の角範囲で有底の有底孔14Bが複数箇所(本例では4ヶ所)に形成されている(図2参照)。これらの有底孔14Bには、図2に示すように、一対のストッパ15及び一対の磁石16Aが、固定体12の貫通孔12A(軸心P1と同義)を中心に対向するようそれぞれ嵌め込まれた状態で固定されている。即ち、図1及び図2に示すように、円柱のストッパ15は、有底孔14Bよりも若干径大で、その軸心より有底孔14Bよりも小径のピン部15Aが突設している。そして、このピン部15Aは、固定体12の平面14Aより突出している。一方、円柱の磁石16Aは、有底孔14Bよりも若干径大となっており、嵌め込まれている。
【0018】
図1に示すように、略円板状の底板17には、その外周面に雄ネジ17Aが形成されている。この雄ネジ17Aに対応する固定体12には、その取付フランジ13に対応する内周面に、雌ネジ14Cが形成されている。そして、この雌ネジ14Cに雄ネジ17Aを締め付けることにより、底板17は固定体12に固定される。また、底板17には、その連結体30側の面に、円状の段部17Bが凹設されている。更に、固定体12には、その段部17Bに対向する面に、段部17Bと同一径の段部14Dが形成されている。なお、底板17には、その軸心及びその回りに孔17Cが、それぞれ形成されている。
【0019】
図1に示すように、略円板状の蓋体18には、その外周縁上部にカシメ部18Aが上方へ向かって突設されている。一方、固定体12には、その取付面側に蓋体18に対応する段部14Dが凹設されている。また、段部14Dには、カシメ部18Aに対応して斜状のカシメ溝14Eが、連続して形成されている。また、ピン19は、底板17が固定体12に対し回り止めするよう、雌ネジ14C及び雄ネジ17A間のピン孔11内に配置している。
【0020】
(可動体20に関する構成)
図1に示すように、可動体20には、固定体12の平面14Aに対向する平面20Aに90度の角範囲で有底の有底孔20Bが複数箇所(本例では4ヶ所)に形成されている(図3参照)。一対の有底孔20Bには、一対の磁石16B(図3参照)が、磁石16Aに対向するようそれぞれ嵌め込まれた状態で固定されている。ここで、対向している磁石16A及び16Bは、互いに引き付け合うようN極及びS極が、向き合うように配置されている。
【0021】
また、可動体20の有底孔20Bには、図1に示すように、固定体12に配置されたストッパ15のピン部15Aが、挿入されている。このピン部15A(図3の破線参照)は、固定体12に対して可動体20の回り止めをするものである。更に、可動体20には、その平面20A側に軸部21が、軸心P2から突設されている。この軸部21には、軸部22及び支持フランジ23を一体形成した断面T字状の支持部24が連結されている。
【0022】
そして、軸部21及び22には、ネジ孔21A及び22Aなどが連通するようにそれぞれ形成されている。軸部21及び22の連結は、雄ネジ25をネジ孔21A及び22Aにねじ込むことによって行う。支持フランジ23には、軸部22寄りに複数の孔24Aが形成されている。この支持フランジ23は、その直径が段部17B及び14Dと同一径になっている。また、支持フランジ23には、固定体12の軸心P1に対して直交する平面23A及び23Bが、一対形成されている。
【0023】
(連結体30に関する構成)
上述した連結体30は、図1に示すように、一対のボール当て板31及び32と、一対のボールベアリング33及び36と、コイルバネ40を備える。即ち、連結体30は、支持フランジ23を、ボールベアリング33及び36などで介在させて挟持するように構成している。円板状のボール当て板31及び32は、その直径が支持フランジ23と同様に同一径となっており、段部14D及び17Bに嵌め込まれている。なお、ボール当て板31及び32には、その軸心に孔31A及び32Aが形成されている。
【0024】
ボールベアリング33及び36は、複数のボール34及び37と円板状のリテーナ35及び38を備え、ボール当て板31及び32と支持フランジ23の間に介在している。リテーナ35及び38には、その外周側にボール孔35A及び38Aが形成されている。これらのボール孔35A及び38Aには、リテーナ35及び38の板厚よりも径大なボール34及び37が挿入されている。ボール34及び37は、支持フランジ23の平面23A及び23Bとボール当て板31及び32にそれぞれ点接触している。
【0025】
また、リテーナ35及び38は、その直径がボール当て板31及び32と支持フランジ23よりも若干小径となっている。なお、リテーナ35及び38は、その外周端形状が断面V字状となっている。また、リテーナ35及び38には、その軸心に孔35B及び38Bがそれぞれ形成されている。ここで、孔17C、32A、38B及び24Aをそれぞれ設けたのは、組付け時に底板17、ボール当て板34、リテーナ38及び支持部24をそれぞれ塑性変形し易くさせ、ボール34及び37が支持フランジ23とボール当て板31及び32との間に隙間なく配置させるためである。
【0026】
コイルバネ40は、底板17の裏面(段部17Bが形成されている側の面)と、この裏面に対向する固定体12の間に弾装している。このコイルバネ40は、その内径がボール当て板31及び32と支持フランジ23の直径と同一径となっている。そして、コイルバネ40は、その伸縮方向への付勢力(弾性力と同義)とは異なり、伸縮方向と直交する平面方向(側圧方向)での復帰力(いわゆる側圧力と同義)を作用させるものである。即ち、コイルバネ40は、その復帰力に基づき、平面方向へ移動するボールベアリング33及び36と支持フランジ23(可動体20と同義)を、固定体12の平面と可動体20の平面とが対向する初期位置(図1に示す位置)に復帰させるものである。
【0027】
(本実施例の組付ける手順)
位置調整装置10の組付ける手順について、図1に基づき説明する。先ず、固定体12の組付けは、有底孔14Bの所定箇所へ一対のストッパ15及び一対の磁石16Aを、それぞれ挿入して固定する。可動体20に関する組付けは、一対の磁石16Bを所定箇所の有底孔20Bへそれぞれ固定した後に、ボール当て板31を段部14Dに嵌め込む。次は、ボールベアリング33をボール当て板31及び支持フランジ23に挟み、且つ可動体20の軸部21を固定体12の貫通孔12Aに挿通した状態で、支持部24を雄ネジ25で軸部21に締め付けて固定する。
【0028】
その後は、ボールベアリング36及びボール当て板32を支持フランジ23の平面23A側に配置させ、且つコイルバネ40で支持フランジ23を介在させた連結体30のボール当て板31乃至32間を内包させる。即ち、本実施例では、コイルバネ40が一対のボールベアリング33(36)及び支持フランジ23を初期位置に復帰させる構成となっているので、簡易な構成で且つ位置調整装置10を小型にする。次の組付けは、ボール当て板32を底板17の段部17Bに嵌め込み、ボール34及び37が支持フランジ23とボール当て板31及び32との間に隙間がなくなるまで底板17を締め込む。
【0029】
ここで、底板17の緩み防止のため、ピン孔11をドリル等で雌ネジ14C及び雄ネジ17A間に設ける。このピン孔11内にピン19を挿入した状態で、蓋体18を固定体12の段部14Dに装着する。具体的には、直立状態にある蓋体18のカシメ部18Aを、カシメ溝14E内に圧入してカシメる。そして、図5に示すように、組み付けられた複数の位置調整装置10を、図示しないラインベース上の所定位置にそれぞれ上向きで固定する。
【0030】
(本実施例の作用)
位置調整装置10上には、図示しないローラコンベアで移送される被移送物(図5の2点鎖線参照)Wが載置される。この載置される被移送物Wは、図示しない押圧アームで押されることにより、可動体20の可動範囲内で位置調整される(図5の矢印参照)。図1に示す初期位置での可動体20は、図4に示すように、固定体12の軸心P1に対して直交する平面上を所定量L1(軸心P1及びP2の距離)の円範囲で適宜スライドする。
【0031】
即ち、ボール34及び37間に挟持される支持フランジ23は、ボールベアリング33及び36と供に、コイルバネ40の軸心P1と直交する平面方向への復帰力および磁石16A及び16B間の引付け合う磁力(以下、単に「磁力」ともいう)に抗して平面方向へスライドする(図4の矢印参照)。この際、可動体20は、その有底孔20Aにストッパ15のピン15Aが挿入されているので、固定体12に対して回り止めされる。一方、可動体20に対し平面方向の荷重がなくなると、磁石16A及び16B間の磁力およびコイルバネ40の上述した復帰力に基づき、可動体20は図1に示す初期位置に復帰する。
【0032】
本実施例では、図4に示すように、連結体30(ボールベアリング33及び36)を固定体12の軸心P1に対して直交する平面上でスライド可能に配置し、且つ連結体30をその軸心P3方向への移動が制限されるように介在して連結する。即ち、本実施例では、支持フランジ23を一対のボールベアリング33及び36のボール34及び37が挟持するよう固定体12内に締め込まれるので、連結体30は可動体20および固定体12に対し隙間がなくなり、連結体30の軸心方向への移動が制限される。そのため、本実施例においては、連結体30はその軸心方向への移動が制限されるので、位置調整装置10を上向き又はその逆さまの下向きに配置しても、連結体30がその軸心P3方向へズレたりしない。即ち、本実施例によれば、連結体30がその軸心P3方向へズレないので、位置調整装置10の動作に支障が生じない。
【0033】
具体的には、支持フランジ23をボールベアリング33及び36のボール34及び37が、ボール当て板31及び32との間で隙間なく挟持する。そのため、本実施例では、位置調整装置を上向き又はその逆さまの下向きに配置しても、ボール34及び37が支持フランジ23とボール当て板31及び32とに対して常に一定の当たりとなるので、位置調整装置10の動作に支障が生じない。従って、本実施例によれば、位置調整装置10はその上下の配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得るので、位置調整装置10を上向き又は下向きに兼用できる。
【実施例2】
【0034】
以下、図6乃至図9に基づいて、第2実施例である位置調整装置49を下向きに搭載する組付けロボット(以下、単に「ロボット」ともいう)Sについて説明する。このロボットSは、被移送物となるピン48等を所定箇所へ圧入などする移送機械である。ここで、ピン48は、その先端48Aなどが6角柱となっている取付部品である。なお、上述した実施例1の図1に示す位置調整装置10と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0035】
(ロボットSに関する構成)
図6に示すように、ロボットSは位置調整装置49及びエアーチャック装置70を備え、且つ位置調整装置49はロック機構を備える。また、ロボットSは、図示しない油圧装置及び移送体を連結し、この移送体および位置調整装置49を、取付板46及び47を介して連結している。ここで、油圧装置は、シリンダ内を摺動する油圧ピストンを備える。先ず、位置調整装置49の構成について、図7に基づき説明する。なお、図7は、図6に示す吊下がった状態(下向き)の位置調整装置49を、図1に対応するよう反転(上向きに)させた図である。
【0036】
(位置調整装置49に関する構成)
図7に示すように、位置調整装置49は、その固定体12にロック機構が配置されている。ロック機構は、ロックピストン54及び複数のコイルバネ56を備える。ここで、本実施例の固定体50は、基部50A及び本体部50Bで2分割されており、これらの基部50A及び本体部50Bをネジ部50Cで締結している。ロックピストン54は、基部50Aに形成されたシリンダ52内に摺動可能に配置されている。ロックピストン54の外周壁には、Oリング55を嵌めるための外溝54Aが形成されている。このOリング55は、シリンダ52内の気密性を保持する。
【0037】
一方、固定体12の基部50Aには、Oリング55よりも取付板46寄りの側面に、軸心P側へ向かう孔51が、シリンダ52に連通するよう形成されている。この孔51は、図示しないエアー装置に連通しており、このエアー装置で生成される圧縮空気(以下、「エアー」ともいう)がシリンダ52内へ送入または送出される。そして、ロックピストン54は、シリンダ52内に送入されるエアーに基づいて、シリンダ52の軸心Pに沿って昇降する。
【0038】
ロックピストン54には、コイルバネ56を挿入する有底孔54Bが軸心P回りに複数形成されている。そして、ロックピストン54の基部は、コイルバネ56の付勢力に基づき、シリンダ52の取付板46側へ常に当接している。一方、ロックピストン54は、上述したように、シリンダ52内にエアーが送入されると、コイルバネ56の付勢力に抗してシリンダ52内を摺動する。また、ロックピストン54は、その先端部54Cが支持フランジ23の支持面23Aを押圧し、可動体20をロックする。
【0039】
ここで、本実施例では、軸部21及び22を連結する雄ネジ25(図1参照)の代わりに、図7に示すボルト58を用いている。また、本実施例では、回り止め用のピン19(図1参照)の代わりに、図7に示す雄ネジ60が、ネジ部50Cの基部50Aまで本体部50Bの外周から軸心Pへ向かって締結している。そのため、本体部50Bは、基部50Aに対して回り止めされる。なお、基部50Aはボルト44を介して取付板46に締結される。
【0040】
本実施形態によれば、ロック機構によって可動体20をロックできるので、図5に示す被移送物Wなどを所望の位置で位置決め(固定)し得る。その他の位置調整装置49に関する構成及び作用効果は、実施例1と同様であるので、その詳述は省略する。ここで、図8に示すように、取付板46は、ボルト45を介して取付板47(図8の2点鎖線参照)に締結されることより、位置調整装置49を図示しない移送体に連結する。また、移送体には、位置出し用のピン(図8の1点鎖線参照)62が突設されており、このピン62に基づき位置調整装置49が位置出しされる。
【0041】
(エアーチャック装置70に関する構成)
図6及び図9に示すように、エアーチャック装置(以下、「チャック装置」ともいう)70は、チャック本体72及びこのチャック本体72に対し可動可能な複数のチャック爪(図6及び図9の1点鎖線参照)74を備える。チャック本体72は上述したエアー装置(図示省略)に連通しており、チャック爪74はエアー装置のエアーに基づいて同時に可動する(図9の2点鎖線参照)。
【0042】
図9に示すように、チャック装置70には、ピン48の基部48C(図6の2点鎖線参照)などを挿入しうる孔76が形成されている。この孔76は、図9の1点鎖線に示す初期位置におけるチャック爪74の接線で形成される孔径となっている。そして、図10に示すように、チャック装置70では、ピン48の基部48Cが、孔76(図9参照)内に挿通される状態において、複数のチャック爪74で挟持(チャッキング)される。
【0043】
ここで、図6に示すように、ピン48の先端48A及び基端48Cには、面取り48B及び48Dがそれぞれ形成されている。また、ロボットSには、図示しないホストコンピュータが接続されている。このホストコンピュータには、ロボットSの移送先における位置データなどが予め入力されている。位置データとしては、例えばピン48が搬入される搬入位置データ及びピン48を圧入する圧入部80(図10の2点鎖線参照)の圧入位置データなどである。圧入部80は、ピン48に対応する形状の孔80Aとなっている。
【0044】
(本実施例の作用)
先ず、図6に示すように、ロボットSは、その移送体(図示省略)をピン48の搬入位置データに基づいて移送させ、ピン48の基部48Cを図9に示す孔76に挿入及び複数のチャック爪74でチャッキングさせる(図10の破線参照)。次に、ロボットSは、図10に示すように、ピン48を圧入部80まで圧入位置データに基づいて移送する。この移送後において、ロボットS(ピン48も同様)は、その軸心Pが圧入部80の軸心Qに対して若干ズレることがある。
【0045】
この場合でも、ロボットSは、その軸心Pに沿って下降するが、ピン48の面取り48Bが圧入部80の孔80Aに沿って軸心Q側へスライドする。このスライドは、ロボットSに配置された位置調整装置49の可動体20が、固定体50の軸心Pに対して直交する平面上を所定量L1(図4参照)の円範囲で適宜スライドする。引続き、ロボットSは、図示しない圧力ピストンでピン84を圧入部80へ圧入させる。
【0046】
この圧入後、ロボットSは、そのチャッキングを解除(図9に示すチャック爪74を初期位置に復帰)させると共に、図示しない圧力ピストン即ちロボットSを上昇させる。この上昇に伴い、可動体20に対し平面方向の荷重がなくなるので、図7に示す磁石16A及び16B間の磁力およびコイルバネ40の復帰力に基づき、可動体20は初期位置(図6に示す位置)に復帰する。
【0047】
本実施例においては、第1実施例と同様に、支持フランジ23をボールベアリング33及び36のボール34及び37が、ボール当て板31及び32との間で隙間なく挟持する。そのため、本実施例によれば、位置調整装置49を上向き又はその逆さまの下向きに配置しても、ボール34及び37が支持フランジ23とボール当て板31及び32とに対して常に一定の当たりとなっているので、位置調整装置10の動作に支障が生じることがない。従って、本実施例によれば、位置調整装置49はその配置方向を問わず円滑かつ適正に動作し得るので、位置調整装置49を上向き又は下向きに兼用できる。
【0048】
なお、本実施例では、固定体50の本体部50Bを、その基部50Aに対して昇降可能としても良い。また、本発明は、実施例1及び2の構成(例えばロック機構など)を、適宜組合せても良い。更に、本発明に係る移送機械は、ピンを圧入させる組立てロボットなどの他に、ボルトなどの被移送物を移送する移送機械などとしても良い。
【符号の説明】
【0049】
10、49…被移送物の位置調整装置、12、50…固定体(固定手段)、14A…平面、16…磁石、20…可動体(可動手段)、20A…平面、23…支持フランジ、23A、23B…支持面(平面)、24…支持部、30…連結体(連結手段)、31、32…ボール当て板、33、36…ボールベアリング、34、37…ボール、40…コイルバルブ、48…ピン(被移送物)、P(P1〜P3)、Q…軸心、W…被移送物、S…ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送体に固定される固定手段と、
上記固定手段の軸心に対して直交する平面上でスライド可能に配置される可動手段と、
上記固定手段の軸心に対して直交する平面上でスライド可能に配置され、且つ上記可動手段および上記固定手段をそれぞれ連結する連結手段と、を備え、
上記連結手段は、その軸心方向への移動が制限されるよう上記固定手段に締め込まれることを特徴とする被移送物の位置調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置調整装置において、上記可動手段は上記固定手段の軸心に対して直交する平面を一対有する支持部を備え、上記連結手段は上記支持部の平面をそれぞれ挟持するように配置される一対のボールベアリングを備えることを特徴とする被移送物の位置調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位置調整装置において、上記一対のボールベアリング及び上記支持部を、上記固定手段の平面と上記可動手段の平面とが対向する初期位置に復帰させるコイルバネを更に備えることを特徴とする被移送物の位置調整装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の少なくとも一項に記載の位置調整装置において、上記固定手段および上記可動手段は、それぞれの平面が対向する初期位置でそれぞれ対応するように配置される磁石を、更に備えることを特徴とする被移送物の位置調整装置。
【請求項5】
被移送物を移送する移送機械であって、
請求項1乃至請求項4の少なくとも一項に記載の位置調整装置を搭載し、上記被移送物を予め設定される所定位置に移送して配置させることを特徴とする移送機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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